2011年02月01日

It's Destiny40

唐突な出来事



 ルルーシュが病室で着替え、そして、ロイドからの退院許可証を手にする。
何か持っていく…としても、携帯電話くらいか…。
それと…
―――マンションに行かないと…あれを持って来られない…。
そう思い、正直、まともにマンション内に入れるのかどうか、不安でもあったけれど…。
それでも、決して手放したくないもの…だから…。
頭の中で色々考える。
あの頃だって、様々な策略を巡らせていたのだから…。
こんな民間のマンションに忍び込む事など何ともない…。
考えている事がおかしいと、少々笑ってしまうが…。
あのマンションは自分の住まいだ。
確かに自分自身で金を稼いで、借りているものではないにしても…。
それでも、今の自分の帰るべき家はあのマンションなのだが…。
あの頃の記憶があると、奇妙な気持ちが生まれて来るものだ。
しかし、どの道、未成年…しかも中学生と云う状態の中で…。
あの頃とは違う時代背景で…どうやって…生活基盤を確保するべきかを考えなくてはならない。
これまで、大金持ちで権力者の両親の下、なんだかんだ不満を抱きながらもその保護下で生活していたのだ。
現在のこの日本で、中学生が自分で生活すると云うのは難しい…。
と云うか、殆ど不可能に近い。
両親の保護下で生活をしているという事は、両親の監視の下、生活をしているということだ。
確かに、普段、両親ともに多忙で一緒に暮らすという事もないが…。
ただ、シュナイゼルもギネヴィアも時々、部下を通してルルーシュの様子を見に来ている事は知っている。
学校へ色々話しを聞きに来ている事も…。
彼らの部下がルルーシュの様子を聞きに来た日の翌日の担任は…顔色が悪くなっている事も多い。
それに、校長がルルーシュに話しかけて来る事さえある。
だからこそ、ルルーシュは現在の立場を思い知らされているという事でもあるのだが…。
そう云った立場にずっと、慣れられず…また、そう云った大人たちに対して嫌な感情を抱き続けてきたが…。
―――俺が…あのまま、皇子のままだったら、ああ云うのも…受け流せていたのだろうか…。まぁ、どうでもいい事だが…。
そうでなくとも大人びていたルルーシュが…。
記憶を取り戻して更に年齢を考えた時には不相応な雰囲気を醸し出すようになっていた。
そんなものはルルーシュ自身が気付く筈もないが…。
ただ、この病院で、以前からルルーシュの事を知っているスタッフ達はそんなルルーシュの変化に多少なりとも気付いていたが…。
特にその事をルルーシュに指摘する者もいなかった訳だが…。
ただ、ルルーシュがその自覚がなかった事によって、この先…ルルーシュ自身が追い込まれていく事にもなる訳だが…。
記憶を取り戻している人間がルルーシュとスザク以外にいて…しかも、それぞれが複雑な立場にいる事を…。
この時にルルーシュの頭の中になかった事が…大きな要因となった訳だが…。

 ルルーシュは一通り身支度を終えて、病室を出た。
ロイドの退院許可証があるから別に問題はないが…。
ただ、荷物そのものはそのままだ。
変に持ちだすのは一人では無理だと判断したから…。
それに、そう云った時には確実にシュナイゼルかギネヴィアが動くから…と云う事で、病院側も特に気にしない。
「あ…ランペルージさん…」
廊下を歩いていれば、確実に人と会う事も多い訳で…。
そんな時もルルーシュは動じない。
「あ、アスプルンド医師から退院許可証を頂きましたので…。俺、受験生だし…そろそろ帰らないと…」
そう云いながらにこりと笑ってみせる。
相変わらず、こうした時に対応が出来たというのは正直苦笑ものであるが。
それでも、あの頃に培ったスキルの一つだ。
ロイドからの退院許可証を見て、看護師がふっと笑った。
「そう、良かったわね…。いつも急だからびっくりしちゃうわ…」
「父さんが心配し過ぎなんですよ…。ただの風邪なのにこんな風に入院させるなんて…」
「でも…栄養状態とかあんまりよくなかったし、おうちに帰ってもあんまり無理しちゃだめよ?あと、退院手続きは後でお父様かお母様がいらっしゃるのかしら?」
「ええ、いつもの通りです…」
こうしたシュナイゼルやギネヴィアによって強引に入院させられる事は何度かあった。
ただ、それまではこんな形で策略を巡らせながらの退院の仕方はした事がなかった。
これまで、シュナイゼルもギネヴィアも忙しいという事で、退院の時にはルルーシュを迎えに来た事はなかったし、大抵の場合、マオが病院に来るか、一人で帰るか…だった…。
病院側としてはきちんと誰かが迎えに来る事が望ましいのだが、そう云う事の出来ない患者も増えている中、帰宅時の事故などは病院に責任を問わないという形で一人で帰るという事を黙認しているところも多い。
「お世話になりました…。俺のせいで、本当に入院の必要な方が入院出来なくなっているのを考えると…いつも心苦しくて…」
とりあえず、悪い印象を与えないようにと愛想を振りまいておく。
こうした形である程度、味方にもならないが、敵にもならない存在は必要だったから…。
シュナイゼルとギネヴィアの持つ財力、権力を考えた時に、いざという時には確実にルルーシュよりもシュナイゼル、ギネヴィアに情報を渡す人間の方が多い。
それは、あの、ブリタニアの独裁の頃ほど酷くはなくとも、そう云った傾向は確実にある。
現在、この時代ではある程度熟した民主主義で資本主義が根付いている。
少なくとも、この日本では…。
それでも、権力と財力は人を動かす力となるのは…。
これまでこの世界で、そして、前世で学んできた事だ。
だとするなら、何も持たない自分がどう生きて行かなければならないか…。
自分の意思に反する事からどうやって抗うか…。
それを考えるのは至極当然であり…頭を悩まさなければならない事だ。
相手は、記憶は戻っていないとは云ってもシュナイゼルだし、シュナイゼルの側近であるカノンが記憶を取り戻しているのだから…。
正直、自分も含めて何故、こうした形であの頃の記憶を持つ者が存在しているのか…と思えてくるが…。
何故…記憶があるのか…。
記憶がないままでも…あの時、自分のやったことで涙を流した者達にとって、不幸とならない形で幸せになることだってできたと思うのに…。

 そう思いながら…病院の玄関を出て行く…。
すると…そこにちょうど到着した車が…一台…。
そして、ルルーシュの姿を見つけたからなのか…その車がルルーシュの目の前で停まった。
―――見付かったのか…?しかし…父さんはこんな時間にこんなところに来られる状態じゃない…。母さんだって…。
頭の中で様々な可能性を巡らせるが…。
その答えはその後部座席のドアが開いて解る事となる。
「ルルーシュ!」
その明るい声がルルーシュに驚愕の表情を作らせる。
まさか…ここに来るとは…。
「ユ…ユフィ…」
声が震える。
記憶が戻ったからこその…複雑な感情…。
彼女の存在は…ルルーシュの中で大きく、重く圧し掛かっている。
それは、ルルーシュの中にある…罪悪感…。
彼女に前世の記憶がないのは解るが…。
でなければ…
―――ユフィが俺に対してこんな笑顔を作る訳がない…。
「お嬢様…このような人の往来では…」
そう云ってユーフェミアの後、車から降りて来たのがニーナだった。
こうして、記憶を取り戻してから改めてみると…。
本当にあの時、自分に深く関わった者達が周囲を取り巻いている事が良く解る。
こう云った状況も…まるで、自分に対する嫌がらせなのか…。
思わず、そんな事を頭に過って行くほど…ルルーシュにとっては、過去をほじくり返され、抉られているような気分になる。
それでも…彼女はずっと、ルルーシュの婚約者としてルルーシュに対して笑顔を向け続けてきた。
でも…あの時の事を知ったら…きっと彼女は…。
そう思えてしまう程、あの時の出来事は、ルルーシュの心に深い傷を負わせている。
それは…不可抗力だった…なんて云ったところで何も救われないし、云い訳にもならない。
人ならざる力によってユーフェミアの気持ちを強引に捻じ曲げて…あの様な結果に至らせてしまった…。
ユーフェミアの望まない事をさせて、ユーフェミアの望まない結果を招いた…。
「あ、そうね…。ね、ルルーシュ…今日退院だったの?私、知らなかったわ…」
ユーフェミアが少し、不思議そうな顔で訊ねてきた。
知らないのは当たり前だ。
両親であるシュナイゼルとギネヴィアだって知らないのだ。
事後報告と云う形で報告する事にはなっているが…。
忙しい二人に報告するのはいつも、こんな感じだ。
ただ、今回は…。
ユーフェミアを利用しているのは…ギネヴィアであるが…。
それにしても…
―――このタイミングとは…
思わず、そんな事を思ってしまう…。
せっかく…この先…あの時、互いの言葉が足りず…互いに誤解し合ったスザクと…。
解り合えるかもしれないと…そんな希望を持ち始めたのに…。
そうあろうと…努力しようと思い始めていたのに…。
それが…こんな形で…。
「どうしたの?ルルーシュ…。ね?乗って?マンションまで送るわ…。それに、私もね、お引っ越しの準備も兼ねて日本に来たのよ?」
「引っ越し?」
ルルーシュが怪訝そうに訊ねると…
「ええ、実はね…来年から日本の学校に通うの…。ルルーシュと同じ高校に通う為に、日本で受験生をするのよ…」

 嬉しそうに話すユーフェミアに…驚愕の表情を強引に隠そうとするが…。
顔が引きつっている事が解る。
流石に…財力と権力を使い、ルルーシュを自分の許に…と思う母親のやる事だ…。
前世でギネヴィアがルルーシュに対してそんな愛情を抱いていたとは思わない。
と云うよりも、接触自体それほどあった訳でもないし、寧ろ、出自の関係でさげすまれている立場だった。
「そ…そうなのか…。どこに…引っ越すんだ?」
大体、答えは解っているが…。
ここでそれを訊ねないのはあまりに不自然だ。
表情をうまく誤魔化せていない事は解っているが…。
それでも…。
「流石のルルーシュも驚いたみたいね…。でも、私の引っ越し先を聞いたらきっと、もっと驚くわ…」
その答えに…やはりと思う。
「へぇ…どこだい?」
平坦な道のりではない事くらいは解っている。
しかし、ここで、ルルーシュにとってもスザクにとっても…。
様々な思いを抱えるユーフェミアが現れた事によってルルーシュの気持ちも…ひょっとしたらユーフェミアにあったらスザクの気持ちも…。
―――動くに違いない…。
ルルーシュの中でまた…あの時の様な思いをしなければならないのかと…そんな思いに駆られる。
スザクが…ユーフェミアの騎士となった時の…あの時の様な思いを…。
無邪気で、優しくて、慈愛に満ちていて、そして…残酷な…。
あの時…ルルーシュから全てを奪い去って行った…。
あの頃…ナナリーの次に愛した異母妹…。
そして、ルルーシュが初めて女性として好きになった相手…。
「ルルーシュが暮らしている部屋のお隣よ…。おばさまがね…私の為に用意して下さったの…」
決定的な言葉に…。
ルルーシュの目の前が真っ暗になる。
「あら…ルルーシュ…顔色が…」
「お嬢様…。ルルーシュ様は今さっき、退院されたばかりなのです…。このようなところで立ち話をしていては…お疲れになって当然です…」
先ほどから嬉しそうに話しているユーフェミアを諭したのはユーフェミアの世話役であるニーナだった。
「あ、大丈夫だ…。ちょっと、色々驚いてしまっただけだ…」
「とりあえず、車に乗って下さい。マンションまでお送りしますから…」
そうニーナがルルーシュを促す。
流石に、イレギュラーに弱いルルーシュとしてはこのタイミングでユーフェミアが現れる事を想定などしていなかったし、そこまでギネヴィアが考えていたとは思わなかった。
「そうね…。ルルーシュ…荷物はそれだけ?」
ユーフェミアも、ルルーシュがこう云う時に荷物は基本的に後からシュナイゼルかギネヴィアの部下がマンションまで運ぶ事は知っている。
だから、答えの解っている質問だ。
「あ…ああ…」
「じゃあ、ルルーシュ…車に乗って?早くおうちに帰ってゆっくり休んだ方がいいわ…」
ユーフェミアがそう云い終えた時…車の後方から大きなバイクのエンジン音が聞こえてきた…。
そして、ルルーシュの身体がふわりと…浮き上がった。
本当に…あっという間の…出来事だった…。

 何が起きたのか…。
ユーフェミア達も解らないと云った感じだし、ルルーシュも状況を飲み込めない。
ただ…解るのは…警察に見つかれば普通に道路交通法違反と未成年略取だ…。
それは解る…。
しかし、病院の角を曲がった細い通りでそのルルーシュをあの場から攫ったバイクの運転手がルルーシュを下した。
「遅くなってごめん…」
フルフェイスヘルメットを脱ぎながら、そう、ルルーシュに謝って来たのは…。
「スザク…お前…相変わらず…無茶な奴だ…」
流石に先ほどまでの様々な驚愕など吹っ飛んでしまう。
あんな拉致の仕方があるか…と云う思いはあるが…。
と云うか、何故、あのタイミングでスザクが現れるのだ…と云う気持ちもある。
本当に…イレギュラーばかりだ…。
確かに、あの頃も色んな意味でイレギュラーな事ばかりするコンビだったが…。
そんな事より気になるのは…。
「スザク…さっき…」
ルルーシュがそう云いかけた時にスザクが言葉を遮った。
「ユフィ…だろ?偶然だけど、ばったり会って、僕も驚いたよ…。で、その後、カノンが現れて、色々教えて貰った。ブチ切れそうになった時にロイドさんが現れて…」
スザクがそこまで云った時…背後から多数の人間の声がしてくる。
「話しは後…。このヘルメット被って、後ろに乗って…」
「お前…バイクなんて…」
「免許くらいは持ってる。因みにこのバイクはジノから借りた…。レンタルは無期限って事で…」
こいつは…あっけらかんと何を云っているのやら…。
損な事を考えている暇もなく、スザクはルルーシュにヘルメットを被せて、自分もヘルメットを被り直して…。
その細い路地を猛スピードで走り抜けていく。
―――こいつ…昔も無茶な奴だとは思っていたが…。それは今も同じなのか…。と云うか、流石にあの時の車みたいに無免許って事はなかったな…。
免許を持っているとは云われていても…。
やはり、蘇る過去の、恐怖体験…。
思わず、スザクの身体をぎゅっと強く抱きしめてしまう。
この恐怖から解放される方法はただ一つ…。
とりあえず、逃げ切ってこのバイクから降りる事だ…。
あの頃は一応、四方、ボディがあって、とりあえず、ささやかながらの防御へ気があったが…。
バイクの場合、全身が完全に外に出てしまっている状態…。
落ちたら確実に死ぬ…。
―――いくらなんでも…こんなところでバイクから落ちて死ぬのは…御免だ…。
過去の恐怖体験の記憶がそれほど鮮明であるのか…。
少々涙目になっている事にルルーシュはまだ…気付いていない。
それほどまでに…あの時の…思い出は忘れられないものになっている…と云う事か…。
どちらにせよ…今は猛スピードで風を切っている(恐怖と認めたくはないのだが)恐怖と真正面から向き合わなくてはならなくなっている。
と云うか、今回のこのイレギュラーでとにかく…自分自身が振り回されっぱなしになっている事に…。
後になって気付く訳だが…。
その時のルルーシュの複雑な気持ちはいかばかりか…。
今のところ、誰にもその時の気持ちを知る事など出来ないのであった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | It's Destiny

2011年01月31日

ダメ人間とダメ悪魔 08

お人好し悪魔と堕天使



 シュナイゼルと神楽耶がスザクの家へ押し掛け、魔界で姉妹たちが妙な妄想を膨らませていた頃…。
ルルーシュはと云えば…。
云い知れぬ寒気に襲われていた。
そして、背筋の寒さはいくら着こんでも、温かい飲み物で体を温めようとしても、風呂に入ってみても、まったくもって改善されて行かない。
単純に、ルルーシュの身近な存在達が奇妙な事を考えているという事なのだが…。
ルルーシュはそれを認めた途端にその災いが降りかかって来るような錯覚を覚えてそれを認めようとしない。
それまでだって、仕事を終えて魔界に帰る度におもちゃにされ続けて来ていた。
それこそ、ルルーシュを見つけた者は早い者勝ち…と云う感じで…。
「気の所為だ…。そう…気の所為だ…」
なんだか虚しく自分に言い聞かせているが…。
そうでもしないと自分があまりに哀れに思えて来てしまい…。
恐らく、こう云ったところも『悪魔』としての資質に問題があると云えるのかもしれないが…。
今回のスザクの願いは何を持って叶えた事になるのかさっぱり解らない願い事なので、暫くはこの人間界でその危険を回避する…つもりだったのだが…。
既にルルーシュをおもちゃにしている異母兄がこの世界の人間と契約を済ませてしまっている状態だ。
ルルーシュの目の前に現れたという時点で既に誰かと契約をしているという事だ。
あのシュナイゼルと云う悪魔…。
それこそ、悪魔の中の悪魔…と、魔界の中では誉れ高い存在である。
巻き舌親父に『ぬぁんたる愚かしさぁぁぁ』などと、云われた事は一度もないようだ。
尤も、そんな事を云われてしまうルルーシュの方が悪魔としてどうなの?と云う事ではあるのだが…。
それにしても、なんでこの時期にシュナイゼルが人間界に来たのか…。
これまでだって、魔界でルルーシュをおもちゃにしている事はあっても仕事で人間界に来ているルルーシュを追いかけてきた事なんて一度もなかったのに…。
―――そう云えば…最近、異母姉達との俺をおもちゃにする権利の争奪戦が激しくなっていたっけ…。
本人の事なのに結構第三者的に見ている自分がいる。
と云うか、こう云う事を考える時くらい、自分の中にもう一人の自分を存在させておかないととてもではないが、冷静に考えをまとめる事が出来ない。
そのくらい壮絶なやり取りが繰り広げられているのだ。
人間界では悪魔の魔力と云うのは人間にはない能力で、物理的に普通の人間相手なら撒ける事はない。
勿論、悪魔だって完璧ではないのだから、弱点はある。
人間が信じている『宗教』とやらで、悪魔祓いでも、ひょっとしたら、その記録を残した者が悪魔と契約していたのではないかと思う程的確なものもある。
ただ、悪魔の主食が人間の魂ではなくなったという事もあり、現在、存在している悪魔に通用するか否かはまた、別の話しではあるが…。
人間を含め、地球上の生物全てが臣下を続けているのだから、悪魔も進化していても別に不思議はない。

 そんな事はともかく…。
人間の敵は人間…と云う様に、悪魔の敵は悪魔である。
ルルーシュは魔界の中では他の悪魔たちに遊ばれる為に追いかけ回されている。
これまで、ルルーシュと契約した人間達は、あからさまにその結果が解ってしまう具体的…と云うか、物理的な結果の出る願い事ばかりだった。
例えば…。
国の皇帝になりたい…だの、恨みを晴らしたい…だの、敵をぶちのめしたい…だの…。
人間の事情によって彼らは『悪魔』と云う名で呼ばれているが、実際には契約を交わしてそれを全うに遂行してその代償を貰う…。
無料奉仕で尽くせと云っている『神』よりも遥かに良心的だと思われる。
『神』にとって都合の悪い事をした人間は地獄に堕ちる…と云うのだが…。
そもそも、そんな口約束だけ…と云うのでは昨今流行りまくっている詐欺行為と紙一重である。
不確かなものに対して色々貢いだり、自分の為の時間を費やしたり…と云うのは、現代の先進国では余り現実味がないようにも見えるが…。
それでも、1つのものが手に入ると人間とは欲の深い生き物で…。
また、新たに欲しいものが生まれて来る。
尤も、そう云った人間の貪欲さがあるからこそ、悪魔も悪魔稼業が成立する訳なのだが…。
しかし、人間の詐欺師と云う奴はルルーシュとしても見習いたい程見事に人を騙す…。
否、悪魔と云うのは別に人間を騙す事が仕事ではなく、人間の欲に付け込んで契約にこぎつけると云う奴なのであるが…。
しかし、今回のスザクみたいな相手は初めてだし、人間にして、これほどまでに物欲の乏しい人間がいたとは…。
そんな思いもある。
ただ、ルルーシュにとって救いとなったのは…
『友達になって欲しい』
と云う、結果があまりに曖昧で解り難いものである。
今の段階でもひょっとしたら『友達』と云う奴なのだから、このままスザクの魂を頂いて…と云う事も考えられる訳なのだが…。
ただ、そのまま魔界に帰ると富士山ハゲの巻き舌親父に『ぬぁんたる愚かしさぁぁぁぁ』と延々(魔界時間の)1週間くらい(人間時間にして約1年と云うところか)説教されるのだ。
一応、あのハゲ親父が誰を自分の跡取りに考えているかは知らないが、他の異母兄姉妹達が『めんどくせぇからルルーシュやってね…』と云う方向で話しが進んでしまっている。
ルルーシュだってんな事をやりたい訳じゃない。
適当に人間界に遊びに来て魂頂いて、時々魔界に帰る…と云う形でいいのだ…。
基本的にルルーシュにとって魔界と云うところはルルーシュの家族におもちゃにされるところと云うイメージしか持っていないし、あんまり長時間魔界にいると本当に次期魔界王にされてしまいそうだし、何よりルルーシュをおもちゃにする輩が多くて困る…。
しかも、体力に少々自身のないルルーシュに対して力技で来るから困ったものである。
そんな貧弱設定のお陰で身に付けたのが、この、自分の危機を悟る時にこの微妙な寒気が来ると云う…本人はあまり自覚がないのだが、これがずばり当たっているのだ。

 とりあえず、そんな背筋の悪寒を感じた時点でルルーシュの頭の中で無意識に決定事項が通達される。
―――今日は外に出ない…。大丈夫だ…。今日は買い物をしなくても食料はある…。
と…。
そして、学校で出された宿題を黙々と始める。
しかし…災いと云うのはどれほど気を付けていても訪れる時には訪れる。
そんなにあくどい悪魔稼業はしていない筈なのだけれど…妙にこうした災いの神には好かれているのか嫌われているのか解らない仕打ちを受けている。
尤も、『悪魔』を名乗っていて『神』の類に好かれるとは思っちゃいないのだが…。
それにしたって、体力のないルルーシュに対して元気の有り余っている連中が構いに来るものだから…。
多分、少し可愛く、解り易く云うと、クマの子供が段々大きくなって行き…飼い主より大きくなってからもその飼い主に甘えてじゃれている…。
しかし、飼い主である人間は大きくなってしまったクマの相手を出来る訳がない…。
様々なキャパシティ的に考えて…。
クマの方はじゃれているつもりなのだろうが、じゃれられている方は命懸けである…と云うところだ。
まぁ、たとえとして、ルルーシュは飼い主じゃないのだが、そんなところだろう。
雰囲気だけは掴んで頂ければ…と云う事で…(え?)
とりあえず、ルルーシュを弄りたくて仕方がない連中がたくさんいて…。
しかも、完全にルルーシュのキャパシティを超えているという事は解って頂けただろう。
具体的にお話ししようと思うと、結構長い時間とぇろ覚悟が必要になって来るので、そう云った話しはおいおい…と云う事で…(するのか…)
で、現在、ルルーシュを弄りたくて仕方ない連中の筆頭であるシュナイゼルがこの人間界に来ている。
恐らく、シュナイゼルの口車に乗せられた哀れな人間だとは思われるのだが…。
今のところ、シュナイゼルの契約者がスザクの天敵である神楽耶である事を知らない。
ただ、ひたすら嫌な予感と戦っている状態ではあるのだが…。
損なものと戦っていても仕方ない事は…。
恐らく、ルルーシュの中では今は、気付いていないと思われる。
と云うか、テンパっていると云うべきか…。
確かに…シュナイゼルの姿を確認した時点で、ルルーシュは無駄にあらゆる可能性を考えている訳だ。
流石に仕事中のルルーシュを無理矢理魔界に連れ帰る事は出来ないのだが…。
それでも、彼が来てしまったという時点で色々と問題は発生して来る事は目に見えている…。
人間の宿題などとっとと終わってしまい、結局うんうん考え込んでいる状態だ。
そんな時…
『大丈夫…?兄さん…』
その声はルルーシュ以外には聞こえない声…。
そして、恐らく、ルルーシュにとっては小さな救いの種になる(かもしれない)存在の声だ…。
実は、元々神の使いで、たまたま神様が悪魔を見つけたという事で無条件で云う事を聞いてくれる天使の立場だった彼をルルーシュを退治させるべく遣わしたのだが…。
そして、彼は神様のゴメイレイを忠実に守っていたのだが…。

しかし、その神様と云う存在…。
天使を差別するし、偉そうだけど、なんでそんなに偉いのか解らない…と云う、そう思ってしまった時点で身も蓋もない事を考えてしまい…。
そして、とある事故でその天使が死にそうになった時…その天使の命を救ったのが、これまでコキ使っていた神様ではなく…。
ルルーシュであったというオチ…。
で、ルルーシュに惚れてしまい、そのままルルーシュの弟分…と云う形でルルーシュが人間界に来る度に色々手助けしてくれるようになっていた。
「ロロか…」
『なんだか…大変そうだね…。僕も何か手伝おうか?』
「お前…早く天界に帰れ…。俺に付きまとっていると…」
ルルーシュがそこまで云った時に、その声の主が姿を表した。
天使の姿の状態で…。
一応、白い羽はあるものの、その羽には古傷のような跡がたくさん残っている。
「何云っているのさ…。僕は兄さんに助けて貰ったんだ…。だから、ずっと兄さんが人間界にいる時には兄さんの手助けをするよ…」
きっと、このご時世のこの国では可愛い男の子と云う事で評価を受けるであろうその見た目…。
確かに『元』天使と云うだけの事はある。
「お前…堕天使になってどうする…。と云うか、俺は天界には行けないし…。だから、俺の翼の羽をやっただろう?」
一応、そう云った余り決定的でない証拠でも悪魔の羽を一枚でも持ちかえれば天界ではある程度の罪は許されるのだ。
ルルーシュはこれでも魔界の皇子だ。
その皇子の羽を一枚持ちかえればそれこそ、VIP待遇が待っている。
「この羽は…僕のお守りだもの…。天界に持って帰ったら取り上げられちゃうし…。それに、あの『オウギ』(←神様の名前)…嫌いだし…」
天使がここで神様の悪口を云っちゃっている時点で天界も終わっていると思ってしまうが…。
しかし、その辺りは神様も完璧じゃないという事なのだな…と実感してしまう。
「ロロ…それでは…」
「でも、結構いるよ?人間界に…。天界に嫌気がさして堕天使になって…。で、僕みたいに悪魔に惚れこんじゃって、その悪魔が人間と契約するのを心待ちにしている天使…」
それってどうなの???
と思ったら負けなのだろうか?
しかし…まぁ、ヒーローものアニメだって元々悪役で出てきたと思ったら、主人公の情にほだされたか、主人公側の女の子(もしくは男の子)に惚れちゃって、最初の信念はどこへやら…って感じの展開で裏切っちゃう敵からもいる訳で…。
こうした形で裏切りもありって事で…。
と云うか、信念を貫いて元々いたところから袂を別った事を裏切りと云うなら、世の中結構裏切りだらけかもしれないが…。
そんな事はともかく…
「天界…本当にそれでいいのか…?」
まぁ、悪魔の中には流石に『悪魔』と呼ばれるだけあって、『これぞ悪魔!』と…魔界では称えられる存在もいるが…。
しかし、損な悪魔でも自分が悪魔であるということに誇りを持っているものだから、とりあえず、魔界から出て行くという事もない…。
と云うか、いるかも知れないが、そう云った存在が魔界の邪魔となれば追跡して、叩き潰す事はあっても、そうでなければ放置状態だ…。

 まぁ、ルルーシュの方も結構そう云った存在を無碍にできない性格をしているのでつい、構ってしまう。
「久しぶりだな…ロロ…。人間界での生活も…慣れたみたいだな…」
「うん…。天界なんかよりもずっと楽だし、楽しいよ…。あの問答無用で『悪魔』を敵視して、『人間』を奴隷だと思っている方がよっぽどあくどいって思うんだ…。最近…」
あ、云っちゃいけない事云ってるし…。
まぁ、神様ってのは基本的に死後の生活保障…って事の様なので…。
それでも、神様の云う事を聞かないと地獄に落とされるらしいが…。
中々面倒だ…。
と云うか、『神様』ってのは中々面倒な存在である。
『悪魔』にとっても『人間』にとっても…。
まぁ、向こうは向こうで色々都合があるのだから仕方ないかもしれないが…。
「お前…本当に天使なのか?」
「元だよ…。僕、猛天使じゃないから、もし、『オウギ』の仲間の『カレン』とか『タマキ』に見つかったら八つ裂きだよ…きっと…」
結構物騒な世界だと…うっかり思ってしまう。
『悪魔』も掟には厳しいが…。
魔界に対して脅威になる裏切りでない限り、そこまではしない。
そういや…。
日本と云う国の江戸時代とやらに『キリシタン狩り』なることをしていた。
国を治める上で『神様』の云うことであれば国の転覆さえも考えかねないと弾圧していたのだ。
そして、日本列島の九州沖にある五島列島と云う場所で隠れキリシタンがずっと、キリシタンにとって非常に厳しい江戸時代を乗り切ったというが…。
そして、そのキリスト教の経典である『聖書』の冒頭…。
キリスト教徒でなくとも知っているアダムとイブのお話し…。
リンゴ食ってエデンを追い出され、様々な困難の待ち構えている地上に追い出されたというお話し…。
そのお話しを見た経験な五島列島のキリシタンの皆さまはなんと仰ったかと云えば…。
『御心の広い神様がそんな事をなさる筈がない…。アダムとイブを地上に修行の旅に出されたのだ…』
と書き変えたとか…。
まぁ、簡単に云うと、『たかがリンゴ食ったくらいで…。神様そんなケチな事いわねぇよ…』って事である。
日本が開国してキリスト教が日本国内でも容認された後、五島列島でそう云った教えを信じて来たのだが…。
ローマ法王には認めて貰えんかったそうだ。
どこまでもケチだ…確かに…。
「兄さん…今度の兄さんの仕事もちゃんと手伝うからね?僕、『信じる者しか救わないセコイ神様』じゃないし…。ただ、僕は兄さんの為にしか動かないけどね…」
ホントに元神の使いだったのか、甚だ疑問であるが…。
一応、外見上は何となく天使の名残を残しているが…。
多分、本気で堕天使一掃作戦でも発動されたら、ひとたまりもないと思われるが…。
最近の人間界では訳の解らない新興宗教が流行り始めており、神様も暇じゃないって事で…。
「兄さん、僕もここにいていい?ちゃんと役に立つから…」
流石元天使と云うだけのキラキラした顔で云われてしまうと…。
ルルーシュとしては無碍に出来ず…結局、承諾してしまう…。
この先…色んな意味でルルーシュとスザクの周囲は嵐の様に様々な事が起き始めるのである。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 19:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ダメ人間とダメ悪魔

2011年01月29日

皇子とレジスタンス 〜渦巻く思惑〜

 突然現れたカノンに対して、それぞれが個性的な表情で出迎えている。
カノンがシンジュクゲットーのレジスタンス達と顔を合わせるのは初めてであるから、無理ない事だ。
「おんやぁ…。マルディーニ伯爵…もうこのエリアに来たって事は…」
「ええ、もう、見つけたわ…。それに、先方も随分焦っているみたいで…ルルーシュ殿下から送られて来る資料もたくさんあったもの…。これで、後は仕上げだけよ…」
この中でこの話の細部を解るのはロイドとカノンだけだ。
ただ、この場に居合わせている元日本軍の士官であった藤堂はその話しの内容から大体の予想を付けている。
恐らく、その予想そのものはほぼ、外していない状態で…。
「貴方か…。常に神聖ブリタニア帝国宰相である、シュナイゼル=エル=ブリタニアの傍らにいると云う、カノン=マルディーニ…と云うのは…」
そこにとりあえず、状況の把握を図るべく藤堂が口を挟んだ。
カノンの言葉を聞いている限り、自分達の準備もさっさと済ませてしまわなければならない…と云う事だ…。
「あら…。私の事も御存じだなんて光栄ね…。私はカノン=マルディーニ…。シュナイゼル殿下の補佐役をしている…と云うのは御存じよね…。今日は、シュナイゼル殿下の使いで貴方方にも色々お願いと説明をさせて頂こうと思って…」
あくまで、カノンは彼らに対して、『支配者側の人間』として接している。
これは今の状況であるのなら、彼の態度は正しい。
ただ、藤堂の背後でその態度に腹を立てているのが良く解る…と云うか、隠そうとしていない連中はこの状況の中でははっきり云って邪魔な存在であった。
「扇…お前たちはこの出陣に際し、一兵士としての志願はしていないのだろう?ならば、さっさとアジトへ帰れ…。前線に立たない者が聞くべき話しではない…」
藤堂もまた、至極当然の態度で彼らに接している。
今のあのグループのトップは藤堂だ。
彼らは藤堂の言葉に従わなくてはならない。
だが…
「ちょっと待てよ…。藤堂中佐やカレンが前線に立つつもりでいるんだろう?それに、ラクシャータやディートハルトも…」
「黙れ!戦争の話しは前線に立つ気のない人間が聞くべき話しではない。こうした戦いの中で一番恐れるべきは情報漏れだ。それを防ぐために、まず、前線に立つ気のない人間に話しを聞かせない事が重要だ…」
状況の把握が全くできていない扇たちに対して一喝する。
その言葉を理解出来ているのか、いないのか…。
これ以上不満の声を出す事はなかったが、納得など全く出来ていないという表情を隠そうとしていなかった。
そんな彼らを見て、カノンは考えていた。
―――とりあえず…ここまで解り易いと…助かるんだけど…。
既にシュナイゼルはルルーシュを皇帝の座に着けるべく、着々と準備を始めていて…後は仕上げ…と云うところまで来ている。
残った問題は…。
ルルーシュが、周囲の目から見たら甘やかしすぎたこのエリア11のシンジュクゲットーでスザクと共にレジスタンス活動をしていた連中だった。

 カノンの中でこのメンバーの中で排除すべき存在と別に取り立てるつもりはないが、排除しなくてもいい存在を選別しているのだ。
それも…シュナイゼルが望む未来の為であるし、たとえ、ルルーシュが皇帝にならずともこうした存在は危険でしかない。
決して有能ではないのに、そう云う自覚がなく、感情だけで動く存在は組織にとって危険でしかない。
流石に藤堂や四聖剣は元々軍人だったという事もあり、その辺りを弁えている。
そして、ロイドが恐らく、ルルーシュが皇帝になった暁にはスザクがルルーシュのナイトオブワンになる…と云う説明も施されている事も解る。
カレンがこうした形で素直に受け入れているのはそう云った事からだろう。
「確かに…そうですね…。前線に立つおつもりのない方々は退室を願った方がよろしいわ…。前線に立たない者がこれからの戦場での話しを聞いた時には確実に命を狙われる事にもなるわ…」
カノンが静かに目の前で色々と自覚の足りない連中にそう説明する。
こんな連中を率いていた事を考えると、あれで、スザクも中々のリーダーシップであると思ってしまった。
否、自分の率いている者たちの自覚不足と云うのは、普通にリーダーに問題があるという事でもあるのだから…。
これで、スザクへの評価を上げる事は出来ないと思い直した。
カノンのその言葉に…扇たちはビクリと身体を震わせた事が解った。
ブリタニアの支配下になる前には一般人であったのだろう…。
確かに、軍人の様な『戦争とは何か』とか、『信念を貫く事』など…。
前線に立つ者の心得の様なものは一切なかったと思われる。
それでも、彼らは反ブリタニア勢力として、相手は軍人であったとはいえ、ルルーシュがこのエリア11の総督となる前にはブリタニア兵の命を奪っていたのだ。
これで、ルルーシュが皇帝となり、このエリア11が安定した時に…。
彼らはきちんとその時の事を思い出し…様々な思いに苛まれる事になるだろう。
元々、人を殺す事など一切考える事もなかった人間たちだ。
そして、自分の信念を貫く為に人殺しをすると云う事がどういう事であるのかなど、考えてもいないのだろう。
そんな罪悪感さえ生じなければ人間としてどこか欠落していると云える。
ブリタニアにしても他の国にしても自国の軍隊に入った者達にはそう云った事まで教育され、叩きこまれる。
それでも、戦後、力が抜けた時には自分のしてきた事への罪悪感や加害者意識に苛まれ、生涯消えない心の傷で人生が狂ってしまう者もいる…。
軍人でさえ、そう云った事が起きるのに…。
ここで、見当違いな感情を抱いている目の前の存在達は普通に誰かの一臣下としてここにいたとしても不愉快であるし、危険な存在であるということでは意見が一致するに違いなかった。
カノンのその言葉に、不満を示していたが、あまりに理不尽なことであればリーダーである藤堂が口を挟むけれど…。
そう云った事もなく、ただ、ここに自分達の居場所はなく、居心地が悪いというそんな理由から不満そうな顔をしてその部屋から出て行ったのだった。
そんな彼らを見て、カノンはただ…『やれやれ』と心の中でため息を吐いていた。

 その頃…ルルーシュは…。
周囲には今のところ自分の目で確認できないが…確実に自分の命を狙う重工に取り囲まれているという自覚を持ちながら、ラティス国王の前に座っていた。
ここで、怯えている表情を一切見せない。
そこで怯んだら確実にそこを付け込まれる。
それに、ここで、ルルーシュが殺されてしまったとなれば、逆にブリタニアの大義名分が立つ。
今のところは暗殺と云う形だし、全てのアサシンをルルーシュ自身が片っ端から捕らえてしまっている。
流石に中々情報を得る事は出来なかったが、ここで、シュナイゼル配下の者達がいてくれた事に感謝した。
こうしたアサシンやスパイから情報を引き出すには技術が必要だ。
そう云った心得はルルーシュ自身にはない。
これまでそう云った事はジェレミア達に任せていたからだ。
しかし、流石にシュナイゼルの配下ともなると、そう云った事がルルーシュと比べ物にならない程経験している。
シュナイゼルの様に、有望視されていて、力のある人間の場合、媚びる存在もいるが、逆にその力を恐れて闇に葬ろうとする者もいると云う事だ。
ルルーシュの場合、王宮内のマリアンヌに対して複雑な感情を持った后妃たちの逆恨みを買っている事もあれば、ルルーシュの力を恐れた者が色々謀略を施して来る事もある。
ブリタニアの王宮は常にこうした策略と謀略の中で生き残れるだけの力を持つ事が最低条件だ。
それは自分の後見をしてくれる者を集めるか、自分自身で自分の身を守るか…。
ルルーシュの場合、後者しか選択肢がなかったから…こうした四方八方から命を狙われているという空気には慣れていた。
―――あまり、慣れたくはないものだが…
いつも、こうした空気に包まれている時にはそう思うのだが…。
今の状況ではそんな事を考えていても仕方がないという状況だ。
ルルーシュの護衛に回っているスザクは気が気ではない様子だけれど…。
ただ、スザクも自分の父親は元々、一国のトップであり、あの不安定な情勢の中、常に暗殺をはじめとした謀略に対して目を光らせていた。
結局、自分の政権の中で働いていた者の謀略によって…殺された訳だが…。
そう云った経験もあるから、スザク自身、緊張を崩す事が出来ない。
今、彼らの目に見えている範囲でルルーシュの護衛となるのはスザクのみ…。
他の者達はこの部屋の外に控えているが…。
もし、国王が合図した時には…間に合わない…と云う事になる。
ルルーシュとスザクの距離は約2メートル…。
これだけ、ラティスの人間(大臣やら召使やら)が取り囲んでいる状態でこの2メートルが…。
今のスザクには広く感じてしまう距離だ。
会談は…まだ続いている…。
あれだけのデータをシュナイゼルに送っている…。
なのに…ここまでシュナイゼルからの連絡は何もない…。
確かに、こちらからのデータ送信だって専用チャンネルを使っているのだ。
向こうからデータを受け取ると云うのは…かなり難しい状況だ。
スザクの中で…焦りの気持ちが大きくなって行くが…ルルーシュの方は相変わらず眉一つ動かさない。

 かなりきわどい話しが続いて…どれほど経っただろうか…。
突然、この会談の為の部屋に一人のこの王宮の衛兵が入ってきた。
「し…失礼します…」
ブリタニアの皇子が列席している中、このような形で無関係の人間が入って来ると云うのは、相当重要な事でもない限り、重罪に処せられる事になる。
ここは、国際的な会談の場だ。
ルルーシュはブリタニアからの使者としてここにいるのだ。
その、違和感のある光景をずっと眺めている。
そして、その入ってきた人物が『御無礼をお許し下さい』とだけ云って、国王に何か耳打ちしている。
そして、その話しの内容は聞こえて来ないが、国王の表情がみるみる変わって行く事が解る。
その表情の変化に…ルルーシュがピンと来た。
―――準備が…整った…と云う事か…。
冷静に分析する。
確かに、そのくらい重要な事でなければこんな形で会談を中断させるなど、あり得ない話しだ。
そこで、この状況に驚いているスザクに目配せした。
それは、恐らく、ルルーシュの騎士だから…解る様になったという…。
そんな合図だ。
今は動く必要はない。
ただ、国王の出方を見なければならない。
ここまで、この王宮にいたが、国王以外の人間が何か国を動かす為にその権限を使っているところを見た事がない。
常に、国王が決めて発表は国王の宰相が行っているという感じだ。
尤も、ブリタニアのそれともちょっと違う様な気もするが…。
―――確かに…国力の差を考えた時には…ブリタニアと同じである筈もないか…。
ルルーシュは静かにこの状況を観察する。
事と次第によってはルルーシュを含め、この王宮にいるブリタニア人が全員死ぬ思いをしなければならないかもしれないのだ。
この様子は恐らく、ブリタニアの『ルイ家』から来ているものだろう。
それとも、シュナイゼルが情報を流したか…。
どちらにせよ、ブリタニア王宮の中の準備は整ったというサインである事は間違いない。
こちらとしても、会談が終わったら、ルルーシュに付いて来た者達にその準備を指示しなければならない。
ここまで、ルルーシュの心の中で秘めてきた事だ。
しかし、彼らはいつ、どんな命令を受けてもそれをこなす様に訓練され、命令されている。
この重大な場面で何も出来ない者であったなら、シュナイゼルも今回のキーポイントになる様なルルーシュのラティス訪問について行かせる事はなかっただろう。
ただ、シュナイゼルに長年仕えている者たちであったなら、シュナイゼルの作戦の為の唐突なその動きに関してはある程度把握出来ているとは思われるが…。
どの道、近いうちにここは…。
―――戦場となる…。あの時と同じように…。
ルルーシュは心の中に何か引っかかっている者がある事に気がつくが…。
すぐにそれは気のせいであると…。
そう思いこませるのだった。

 そして、エリア11では…。
「……と云う事になるんだけど…」
カノンが今回の戦いの策と彼らの役割を説明した。
それは…藤堂たちにとってその様な戦い方をした事がないと思うが…。
しかし、これがシュナイゼルがあの若さでブリタニアの宰相の地位にいる理由が解った様な気がした。
「で、我々はどの艦に配置されるのだ?そして、そこで我々が働く事が出来ないという事はないのだな?」
藤堂が日本人とブリタニア人の確執を気にしての言葉…。
いくら有力な兵士がいたとしても、きちんと働けなければ意味がない。
「それは大丈夫…。今回はジェレミア卿がある艦の責任者と云う事でそこに貴方達は配属されるわ…。そして、基本的にはルルーシュ殿下と枢木卿をその艦に収容した後、ルルーシュ殿下の指示に従って頂く事になっているわ…」
カノンの言葉に納得の色が見えてきた。
また…ルルーシュの指揮のもとで働くと云う事だ…。
ひょっとしたら、これが最後となるかもしれない…。
シンジュクゲットーでの『リフレイン』の事件の時も中華連邦との戦いの時にも、本当に子供とは思えない程の采配を振るっていた。
それこそ、この子供を向こうに回してレジスタンス活動をしていたら…と思うと、恐ろしくなる。
彼らの中で勝てる要素が見つからなかったからだ。
そして、それほどの戦略を練る事が出来ながら、常に、誰よりも傷ついていた。
その采配の見事さもさることながら、ルルーシュのその姿勢に心を打たれたというのは、確実にある。
「じゃあ、彼を救い出すまでは?」
「ジェレミア卿の指示に従って頂くわ…。少なくとも、ルルーシュ殿下と枢木卿の身柄に関しては貴方達の肩にかかっているのよ…?」
これが本当に自分達がきちんと働ける為のものであるのか…。
カレンは未だに不安をぬぐい切れないでいるが…。
ただ、こんな形でウソを吐いたり、彼らを殺したりしても何の得にもならない。
損になる事も余り考えられないが…。
「ねぇ…さっきの話しは…」
やはり、一抹の不安が消えないのか…。
カレンがおずおずとカノンに訊ねた。
カノンの方は穏やかな表情を崩さずに答える。
「本当よ…。と云うか、そんな事をウソ云ったって意味はないわ…。枢木卿がナイトオブワンになると云うのも可能性の話しだけれど…。でも、順当に行けば彼がそうなるのは死ごく自然に出て来る予想でしょう?」
確かに…不確かな事はあるし、ルルーシュが救えなかったらこの話しもなくなるのだ。
せっかく…そこまで考える事が出来ているというのに…。
「じゃあ、私、ちょっとナナリー殿下とユーフェミア殿下に用があるの…。貴方達は出陣の支度をして頂戴…。あと、ないとは思うけれど、貴方達は志願兵よ?もし、命を落とす様な事があってもブリタニアは関与できないわ…。解っているのでしょうね?」
この辺りははっきりさせておきたいという事だ。
後々、もめ事にならぬようにする為の布石の一つだ。
「解っているわ…。これは戦争よ…。綺麗事は忘れたくないけれど、通用しないってことくらいは肝に銘じるわ…」
「その言葉…忘れないで頂戴ね…。ルルーシュ殿下に何かあった時には…シュナイゼル殿下はこんなエリア…向こう10年、草一本はえない様な状態にしてしまうかもしれないから…」
これは…本当ではないかもしれないがウソでもない。
そんな言葉を残しつつ…カノンは総督代理となっているナナリーの許へと足を進めて行くのだった。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2011年01月28日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 10

コードギアス メガ萌えのルルーシュ 1



※設定:今年度のイベントについて、生徒会メンバーで反省会と称して面白話をしていたのですが…。

このリクエストは紫翠さまから頂きました。
リクエスト、有難う御座居ました。

 某月某日放課後…。
今日は珍しくスザクも軍の仕事が休みでアッシュフォード学園の生徒会メンバーが全員揃っている。
まぁ、今年度のイベントを振り返って見ているという事なのだが…。
まぁ、コスプレ付きのイベントが多かったので、話しはなかなか盛り上がっている様である。
ただ…この中でこの場にいた事を全力で後悔する事になる人物が…。
その人物とは…
「ねぇ…会長…今度は犬を拾ってきて犬祭りをしましょうよ…」
シャーリーが何故、そんな事を云いだしかと云えば…。
先ほどまで猫祭りのコスプレの話題で盛り上がっていたからである。
猫をやるなら犬も…と云う事らしい…。
「犬って…。シャーリー…流石にクラブハウスでは大型犬は飼えないわよ?」
ここで何故かミレイの頭の中では大型犬と云う発想になってしまうらしい…。
「別に…大型犬じゃなくてもチワワとか、トイプードルとか…室内犬だって…」
一応、ここでカレンがツッコミを入れておく。
ここでツッコミを入れた時点でミレイのイジリモードが全開となる。
ターゲットは勿論…。
この生徒会…と云うよりもアッシュフォード学園全体が彼をイジリ倒したくて仕方ないと云っていいであろう…人物…。
いやいや…現在、父親と喧嘩をしたままで8年くらい家出中なのだが、実家であるブリタニア皇室の中にもその人物をイジリ倒したくて仕方ない輩はたくさんいる…。
現在彼が名乗っているのは…
姓はランペルージ、名はルルーシュ…。
本名、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアと云う、どう考えても製作スタッフが単純に彼をイジリ倒したくて仕方ないという意思を丸出しにしているようにしか見えない裏設定満載の人物だ。
そんな会話を聞きつつ…何か、その身に危険を感じたのか…。
そろり、そろりと生徒会室から出て行こうとしている人物が約一名…。
そんなものはルルーシュ≂ランペルージしかいない訳だが…。
しかし、ここでルルーシュを弄る事にかけては確実に命さえもかけている様に見えなくもないミレイ=アッシュフォードがそんなルルーシュを見逃す筈がない。
「ストォォォォ〜〜〜〜〜ップ!ルルーシュ…。どこに行くのかなぁ〜〜〜」
「あ、えっと…今日はナナリーの…」
「あれ?ナナリーの診察って確か、明日だったんじゃ…」
ここで意識的か、無意識にか解らないがスザクがミレイの側に付き、ミレイに情報を送る…。
スザクはルルーシュの敵となった瞬間だった…。
「スザク〜〜〜〜俺を裏切ったなぁぁぁぁぁ〜〜〜」
本編のあの『萌え♪』…じゃなくて、悲しい場面の再現であった…。
ここで涙目になってスザクを睨みつけているルルーシュではあったが…。
そんなものは『萌え♪』ネタでしかあり得ない。
と云うか、何故にそこまで『萌え♪』をばら撒いているのか、少々疑問を抱いてしまわなくもないこのルルーシュ≂ランペルージ…。
これがあるから、血縁者にも生徒会メンバーにも…それどころか、名もなきモブキャラにさえ『萌え♪』対象にされている始末である。

 まぁ、そんな事はともかく…。
ここで、この話の中でいたいけなコヒツジとなるのはルルーシュと決まった。
「ルルーシュに犬のコスプレかぁ…何がいいかなぁ…」
ミレイのその一言を皮切りに…話しが盛り上がり始める。
まぁ、こう云ったルルーシュを吊るし上げる(?)様なネタとなると何故か、この生徒会、とっても盛り上がる傾向にある。
今回もその危機を察知したのか回避しようと思ったが、みごとに失敗してしまったルルーシュだが…。
「そうですねぇ…ルルなら、ミニチュアシュナウザーなんてどうですか?」
と、シャーリーが乗って来る。
こう云う時、誰もルルーシュを庇おうとしないのは一体なぜなのか…。
結構疑問なところだが、ルルーシュほど弄り易い人間がいないというのもある意味、原因の一つになっているのかもしれない。
「でも、ミニチュアシュナウザーってとっても運動量が多いんじゃなかった?頭はいいとは云われているけど…。トリミングとブラッシングが大変だって、クラスの子が云っていたわ…」
そうシャーリーの言葉に反応したのが、一応、表向きはお嬢様のカレンだった。
確かに…。
運動量の多いルルーシュは想像しにくい…。
「お前ら!何故俺をネタにする!」
奇妙な想像をしているらしい生徒会室内の空気を破ったのは、ルルーシュの怒鳴り声だった。
「あ、別に、ルルーシュだけじゃないわ…。この後は他のメンツも…」
「俺は多分、雑種認定されそうだし、その方が気楽でいいや…」
そう云ってとっとと戦線離脱を図ったのはリヴァルだった。
これはもっとも賢いやり方だとも云える。
自分をやり玉に挙げられない様にするにはまず、自分からとっとと結論を出す。
ここで重要なのは、誰もが納得する…但し、ここに自分の感情を含めてはならないという結構、めんどくさいテクニックが必要なのだ。
リヴァルの場合、正直、そう云い切ってしまう事にある程度の抵抗感を抱かない訳でもないのだが…。
これで、とりあえず、自分がやり玉に挙げられる事は亡くなるという事で…。
こう云うのは弄る方は楽しいが、弄られる方は…弄られ方によっては1週間くらい立ち直れないくらい色々云われる。
尤も、リヴァルの場合、ルルーシュほど弄って楽しいとは思われていないのだが…。
しかし、一応こうして宣言しておかないと、ルルーシュほど弄られ慣れていないリヴァルとしてはルルーシュをいけにえ…もとい、隠れ蓑にするというのが賢い選択とも云えるのだ。
尤も、今回はスザクも参加しているので、ルルーシュを庇わなければリヴァルに被害が及ぶ事はない。
リヴァルにとって、ミレイは想い人ではあるが、変に弄られターゲットにされるとかなり大変だ。
基本的にはその役目はルルーシュが担っているのだが…。
時々、妙な話しを振られてルルーシュを弄らなくてはならなくなった時…。
リヴァルとしてはテストの時、賭けチェスの時など、ルルーシュの力が必須の時に困ってしまうので、とっとと傍観者に徹する努力を続けている訳だが…。
今も…一応、ルルーシュには悪いという思いはあるものの、わが身が大事だし、奇妙な無茶ぶりを強要された時には、ミレイに逆らう事はしない。
その後、色々困る事になろうとも…。
で、今も傍観者に徹して、適当に相槌を打っている。

 まぁ、色々会話を聞いている分には楽しい。
正直、第三者として、テレビの向こう側の話しであれば素直に笑えてしまうが…。
しかし、それは現実であり…。
「ルルーシュはやっぱり、チワワでしょう…。チワワってすっごく寂しがり屋だし、構ってあげないといじけちゃうんでしょう?」
そう、云い放ったのは…。
今のルルーシュにとって最大の裏切り者であるスザクだった…。
「スザク…お前…俺をバカにしているのか!」
「なんで?ルルーシュってこんなツンデレやっているけど、とっても寂しがり屋さんだし、と云うか、僕、ルルーシュのツンデレって寂しがりの裏返しなんだと思っているんだけど…」
まるで空気を読まず、しかも全く悪気はないぞ…と云う顔で思いっきりルルーシュの逆鱗に触れそうな事を云っている。
「誰が寂しがり屋だ!」
「ルルーシュが…」
ルルーシュが怒鳴りつけても…流石スザクだ。
顔色一つ変えずけろりと返した。
(多分)スザクの云っている事は間違っちゃいないが…。
ただ、この男…本当に言葉をオブラートに包むという事が出来ない奴なので…。
もう少し云い方ってものがあるだろう…と思ってしまわなくもないのだが…。
しかし、そう云ったスザクの無神経…じゃなくて、無邪気なものの云い方が結構受けているのだろう…。
多分…。
あくまで、多分…。
しかしまぁ…『無神経』と『無邪気』…。
ちょっと言葉が違っているだけで、意味は大して変わらんのにこの二つの言葉についてはその人間のキャラクターによって使い分けされて、その言葉の印象ががらりと変わる不思議な言葉である…。
スザクの言葉にわなわなと怒りに震えているルルーシュだが…。
しかし、そんな仕草さえ『萌え♪』対象になってしまうのも、ルルーシュの人徳(ちょっと違うだろ)なのかもしれない。
そんな事はともかく…。
スザクが相手だとルルーシュ自身、何故か黙り込んでしまう。
それは、きっと、スザクがあんな顔しているのに、さりげなくルルーシュの弱みを握っちゃっていて、その自覚があるのか、ないのか、解らないけれど、ここぞというところでその決定打をルルーシュにブチ込んで来て、再起不能にするという得意技(?)を持つ。
ぶっちゃけ、ルルーシュにしてみればシャルルパパやシュナ兄を相手にするより厄介な相手と云える。
そう云う意味での厄介な相手と云うのはルルーシュ自身が自覚しているのかどうかはともかく、ナナリーと云う最愛の妹にも当てはまるのではないかと、最近になって気付いている節があるのだけれど…(書いている本人が)
この様子を見ていて…。
楽しんでいる人間がいるからこそ、こう云ったシーンが必要なのだ。
そう、人生とは楽しみと云う物がなければ…。
しかし、ルルーシュも一方的にいいまかされ(そうになっ)ている訳ではない。
「そう云うスザクはいたいけな羊の皮を被った獰猛で手のつけられないドーベルマンの癖に…」
ルルーシュが強引にそう切り返してやるが…。
この続きはウェブで…じゃなくて、ここからが周囲も混じって楽しめるモードへと入って行くのだ。

 ルルーシュのその一言にスザクがちょっとムッとしている。
何が気に入らなかったのかは…とりあえず、本人に訊いてみなければ解らないのだが…。
「流石に羊の皮を被ったドーベルマンは…」
そう、遠慮がちにニーナが口を出すが…。
そこに追随したのは…スザク本人であった。
「そうだよ!僕はそんな卑怯な真似はしないよ!」
スザクのその一言に…その場の空気は一体何を云われたのか解らない…と云う意味だろう。
時間が止まった様にピタリと止まった。
「僕はちゃんとオオカミの皮を被ったオオカミだ!」
あれ?
何を云い始めたのか…この男は…。
そんな空気が漂い始める。
そんな感じである。
正直、どう返せばいいのか…。
これだけ自信満々に云われてしまうと…逆にこちらが困ってしまう。
「僕はチワワなルルーシュを襲うオオカミなの!」
……
恐らく、この場にいる(スザク以外の)メンバーの心境はこんな感じだろう。
ここは…どこから突っ込むべきなのか…微妙に悩むところなのだが…。
確かにこのストーリーはギャグでお笑いなのだが…。
しかし、そこで、ある意味笑えないオーラを醸し出している事からツッコミを入れるべきか…とか…。
そこではっきりと『ルルーシュを襲う!』などと云う宣言をしちゃっていること自体にツッコミを入れるのが先か…とか…。
否、まず、ここで(気持ちは解らんでもないが)本人を目の前にして『襲っちゃうぞ!』宣言ってどうなんだろう…とか…。
ワンコ属性キャラにされていた本編は結局幻だったのか…とか…。
あくまでルルーシュ限定のオオカミなのかなぁ…とか…。
これで、『萌え♪』を提供してくれるならそのままここで襲っちゃっていいぞって云いそうになっている…とか…。
まぁ、他にもありそうだが…。
そう…こいつは天下無敵の『空気を読まないキャラ!』であった事を忘れていた。
ここで間違ってはいけないのは『空気を読めない』のではなく、『空気を読まない』と云うところだ…。
『空気が読めない』と云うのは本人にそう云った事に気づけないという、本人だけではどうにもならないと云う部分があるが…。
『空気を読まない』と云うのは本人が解っていてやっている…と云う事だ。
意図的にやっているし…しかも、天然キャラと云う設定でやりたい放題やっているスザクの事だ。
ここは、本編では…実は一番気の毒なキャラだったという事で許してやるべきなのか…。
それともスザクの将来を考えて優しく諭してやるべきか…。
もしくは、そのままひっくるめてルルーシュに押し付けるか…(え?)
微妙に迷うところだが…。
そもそも、話しに趣旨が完全にずれている。
ここにルルコンなブリタニア皇族の面々がいなくて良かったとも云える。
ここでそんな話しをしていたともなれば、下手をすると地を見る事にもなりかねない。
それか、ルルーシュが完全にいたいけなコヒツジとなっていけにえになるか…。
まぁ、どの道、ルルーシュにとってはあまり喜ばしくない結果を招くことは間違いない。

 そんな、スザクの独演場の中…。
「あ…あの…スザク君…?今は…その…イベントの話しで…」
そう、遠慮がちに指摘したのはシャーリーである。
スザクとルルーシュを除いたメンバー達で色々、こそこそと話し合ってスザクを止める為に誰かが声をかけようと云う決断に至った訳だが…。
しかし、その中の人選は肝心である。
下手な事を云うと、命も危ぶまれそうなほど、スザクは握り拳をぎゅっと握りながら熱演(熱弁?)を振るっていたのだから…。
そして、ここでクジやジャンケンで決めた場合、その白羽の矢に当たった人間がスザクのくるくるキックの餌食になるかもしれないという危険性も考えて…。
そこで、スザクの性格を考えて…。
スザクは基本的に一般人には手を出さない。
あと、意外とフェミニストだから女の子には手を出さない。
そう考えた時…。
カレンは断固拒否しているし、ニーナは今のスザクの微妙なオーラにすっかりびくついてしまっている。
で、こう云った時のなごみキャラとしてシャーリーが選ばれた。
リヴァルの場合は口下手なところがあり、時々地雷を踏むし、ミレイの場合、今回の話しを振った張本人でもあるので、その時点で却下されている。
シャーリーとしても苦笑いするしかなかったが…。
それでも、ルルーシュの為に…と云う事で頑張っているようだ。
「あ、そうだった…」
意外とけろりと返して来たスザク…。
しかし、ここで終わらないのが枢木スザクと云う人物である。
「今年度のイベントの反省会だったのに…。なんでこんな話になったんだっけ???」
そこで、シャーリーが『うっ』と声を詰まらせてしまう。
元々『犬祭り』をしようと云いだしたのはシャーリーだったから…。
とりあえず、そこはスルーして貰えると有難いと思いながら…。
どこまでその願いが届くのか…。
「まぁ、いいか…」
あ、いいんだ…。
それでいいんだ…。
まぁ、枢木神社で1回頭をぐりぐりしてそれまでの事を許せちゃうキャラだしね…。
と云うか、ルルーシュは完全に置いてきぼりである。
「それよりも、僕、ウサギ祭りがいいなぁ…。今年、ウサギ年だし…」
いきなり何だ???
と云う発言だが…。
しかし、この男は一体何を考えてこんな発言を…と云う感じだ。
ルルーシュは一瞬我に返りそうになって、スザクの一言で再び呆然自失の世界へと旅立っていく。
これで話しは終わらない。
それを察したらしい…。
ここで、カレンも顔を引き攣らせる…。
何となく…気持ちは…解らんでもないが…。
―――もう、あんなバニーちゃんのカッコなんて御免よ!
そんなところだろう…。
彼女の気持ちは…。
しかし、アッシュフォード学園であのカッコをしていたら、元々カレンファンだった生徒達はさぞ喜ぶ事だろう。
しかし、何故にこの学園のお祭りは『コスプレ系』が多いのだろうか…。
とりあえず、ネタはまだ尽きないようだ。
「ウサギ祭りかぁ…」
その話しに乗り始めたのは…。
この学園の支配者でもあるミレイ=アッシュフォードだ。
そして…ルルーシュにとっては嫌な笑み、腐女子にとっては期待に胸を膨らませる表情を見せるのだった…。
まだまだ…妄想ネタの発表会…もとい、イベントについてのお話しは続く…

To Be Continued

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2011年01月22日

皇子とレジスタンス 〜見え始めた未来〜

 シュナイゼルが動き出した事は…瞬く間にブリタニア王宮に知れ渡った。
そして、『ルイ家』にシュナイゼル自らが赴く事となった…。
「やぁ、パラックス…。久しぶりだね…」
いつもの穏やかなシュナイゼルの顔…。
でも、そのシュナイゼルから醸し出されているのは、隠しても隠しきれない…怒り…だ。
「あ…異母兄上…」
流石に事態を把握している異母弟は焦りと畏怖を隠しきれずにいる。
そんな怯えている異母弟に対してもシュナイゼルは容赦はない。
ルルーシュがシュナイゼルの一番のお気に入りだという事は、ブリタニアで知らない者などいない程既に有名な話しだ。
それこそ、一般市民に至るまでその事は知れ渡っているし、国際的にもかなり有名な話しだ。
それ故に、ルルーシュは外交面にしても侮られる事が多いが…。
ルルーシュに能力がなければシュナイゼルがこれほどまで目をかける事はなかっただろう。
元々、弱肉強食が国是のブリタニアだ。
シュナイゼルがどれほど実権を握ったところで何の力も持たない異母弟を守り切る事は出来ないのだ。
ルルーシュ自身にもシュナイゼルの寵愛の他にあるシュナイゼルとほぼ同等の実力があるからこそ、そして、対外的に示して来たからこそ、安易に暗殺…という手段に出られなかった…と云うよりも成功しなかったのはそう云った部分もある。
ルルーシュの母、マリアンヌは暗殺によってその生涯を閉じている。
それ故にルルーシュ自身、暗殺に対しての警戒は自分は勿論、ナナリーに対しても怠る事はなかった。
ルルーシュの場合、シュナイゼル一派の中でも暗殺対象だった時期もあるのだ。
今では流石にその様な事はなくなっているが…。
ルルーシュがシュナイゼルの軍に入った頃には、ルルーシュの実力を恐れた者達が暗殺者を送る事が多々あった。
その度に、ジェレミア達がルルーシュを守ってきた訳だが…。
「パラックス…私がここに来た理由は…解っているね?」
最初の内は決してその事実を認める事はないだろう。
『ルイ家』としても自分達が生き残るために必死だ。
こうした形での権力争いで負けた時の行く末は惨めなものである事は長い歴史の中でも証明されているし、この王宮内でもそう云った争いに負けた者達のその先は…。
それまでこの王宮の中で見てきたが…それは惨めなものだ。
「な…何の事…」
パラックスのその焦っている様子を見ると、最後の無駄な足掻き…と云う感じだろうか…。
シュナイゼルは表情を変えずに続けた。
「今更、知らないとは云わせないよ?君の母君がやった事であるとは承知しているが、それは『ルイ家』のトップである君が責任を負う事くらいは解っているね?それに、こうした形で権力争いに負けたのは…解っていない訳ではないだろう?」
誰でも我が身かわいさにこうした時には似たような反応を見せる。
そして、『ルイ家』は母が王族の姫と云う事で、彼自身は大きな力によって守られているだけの皇子だ。
そして、有力な後見を持つ皇子であれば…と云う思いもあったのかもしれない。

 確かに、シュナイゼル以外の有力皇族であったならそう云った考えも通用したかもしれないが…。
シュナイゼルはあくまで実力主義…。
シュナイゼルの周囲を固めている皇子、皇女はルルーシュ以外は確かにそれなりに強力な後見のある家ではあったが…。
しかし、シュナイゼルの下でその実力を発揮している者達だけだ。
そして、ルルーシュは後見が乏しい分、その実力を他の皇子や皇女よりもその実力を見せる必要があった。
ルルーシュにはその能力があった。
それ故にシュナイゼルの右腕とまで呼ばれるようになった。
それこそ、シュナイゼルがそこまでの実力を悲しんでしまう程…。
ルルーシュにそこまでの実力がなければ…シュナイゼルがルルーシュの身を真綿でくるむように守る事も出来たかもしれない…と思う程に…。
ただ、ルルーシュにそれだけの実力、気持ちがなかったなら、シュナイゼルはルルーシュに興味を持たなかっただろうという、皮肉さも見え隠れしているが…。
「パラックス…そろそろ君の母君も私の配下の者がその身を確保している筈…。そして、現在君の母君の御実家であるラティス公国から使者が訪れているのは…何も『ルイ家』へのご機嫌伺いではない事くらい…解っているのだろう?」
シュナイゼルは表情を変える事無く、淡々とそう云った言葉を並べて行く。
普段の優しげな笑みを湛えているというのに…。
背筋が寒いと感じる事が気の所為で会って欲しいと願っている自分がいる事に…パラックスは気がつく。
「異母兄上…それは…」
「君は…皇位が欲しかったのかな?それともユフィの関心を引きたかったのかな?まぁ、どうあれ、君がルルーシュに対して云い感情を抱いていなかった事は知っているし、私としてもいつか、私のルルーシュに対して何かいらぬ事をするのではないかと懸念はしていたんだよ…。ユフィはルルーシュの事が大好きだからね…」
本当に…世間話をしている様な口調で、表情もそんな感じだ。
しかし、その言葉が重なって行くにつれて、恐ろしい何かが自分を追いつめていると感じている。
そして、シュナイゼル自身もそう云ったプレッシャーをかけている自覚はある。
と云うか、そう云った形でのプレッシャーをかけているのだが…。
「…んで…。なんでみんな、ルルーシュばかりなんです!あんな、下賤な女の子供が!」
まるで何かブチ切れたかのようにパラックスがシュナイゼルに怒鳴りつけた。
それは、シュナイゼルがルルーシュに目をかけているという時点で多くの者が考えている事であろう。
特にこの魑魅魍魎の住まう王宮の中では…。
「私だって…チャンスさえ貰えれば…あんな奴なんかよりずっと功績を上げることだってできます!異母兄上に御満足頂けるだけの…」
―――パシン…
パラックスがそこまで云った時、シュナイゼルがその瞳の色が濃く、暗くなった状態でパラックスの頬を平手で打った。
手袋を外す事もなかったから…さして痛くはなかっただろうが…。
しかし、シュナイゼルに頬を撃たれたというその事実に驚愕を隠せない。

 驚いた顔をしてシュナイゼルを見ているパラックスの顔を見て、シュナイゼルは今度こそ、その瞳で体中が凍ってしまうのではないかと思えるほど冷たい瞳になっていた。
「ルルーシュを悪く云えるほど…君は偉いのかな?君ではルルーシュの足元にも及ばない。何故、皇帝陛下が御自身の後をルルーシュに継がせると決め、皆にそう告げたのか解らないのかい?」
呆然とシュナイゼルを見ているパラックスに向かって言葉を告げている。
ルルーシュの名前が出た途端にシュナイゼルの表情が変わった。
確かにシュナイゼルはルルーシュを溺愛しているという話しを聞いた事はあったし、実際にルルーシュがエリア11に赴任するまで、シュナイゼルは常にルルーシュを自分の傍らで働かせていたのだ。
「既に全ての証拠は出ている…。君達の身柄を確保だけして後は私もラティスに向かう事になっている。その後の事は…まぁ、決める権限を持つのは多分…」
シュナイゼルがそこまで云った時、パラックスががくがくと震え始めた。
これまで『ルイ家』に限らず、ルルーシュと懇意にしている皇子、皇女、貴族以外は基本的に『ヴィ家』に対していい感情を抱いてはいない。
ただ、ブリタニア皇帝のあの発言によってそれぞれがそれぞれの都合で様々な態度を示して来ている。
これまでに『ヴィ家』に対して云い感情を抱いていなかった家ばかりだから話しも面倒だ。
コーネリア、ユーフェミアの『リ家』も、クロヴィスの『ラ家』も当人たち以外は決して『ヴィ家』に対していい感情を抱いてはいなかったが…。
それでも今になって、その家の皇子、皇女がルルーシュやナナリーと懇意にしていた事を感謝している様だったが…。
それでも、彼らの母であるマリアンヌが元々庶民の出であるというこだわりがなかった訳ではなく…。
これで、ルルーシュが何かの失態を犯して、今回の皇帝の言葉がなかった事になれば今度はその家の皇子、皇女がルルーシュやナナリーに関わる事を拒絶するに違いない。
シュナイゼルの場合、既に『エル家』の中でシュナイゼルに意見できる者などいないが…。
「まさか…ルルーシュが…」
「ふっ…今に彼は君がそんな風に気易く呼べるような相手ではなくなるよ?それに、この事が露呈すれば君はユフィとも会う事が困難になる…。知っているのかな?権力争いの敗北とは…こう云う事なのだよ?」
それまで冷たい瞳でパラックスを見ていたシュナイゼルがにこりと笑ってそう説明した。
今回の事…シュナイゼルの中では本当にここまで我慢してきたらしい。
それが一気に噴出した…とでも云うかの様な…シュナイゼルの感情がそのシュナイゼルを取り巻いている空気から良く解る。
「異母兄上…何故そこまでルルーシュを…!貴方は…本当は皇帝に…」
「皇帝になる…と云うのは私がルルーシュを私の傍に置くという手段の一つにすぎない…。ルルーシュが皇帝であろうと私が皇帝であろうと、私の傍にルルーシュがいれば私はそれでいいのだよ…パラックス…」

 シュナイゼルがここまで執着を見せたのは…少なくともパラックスがそんなシュナイゼルを見たのは初めてだった。
これまで皇帝の座に一番近い皇子とされてきたというのに…。
そんなものはどうでもいい…そんな風に聞こえる。
実際にシュナイゼルはそのつもりで云っているのだろう。
「る…ルルーシュに皇帝など…」
「あのエリア11でルルーシュはあの『イレヴン』達を掌握した手腕の持ち主だ。私などよりも人心掌握は上手だと思うよ?少なくとも、この王宮の中でぬくぬくと他人の手柄によって自分の立場を維持してきた君よりは…ね…」
そこまで云った時シュナイゼルが軽く右手を上げると…。
シュナイゼルについて来たシュナイゼルの配下達がパラックスを取り囲んだ。
「なっ!」
「パラックスを用意した屋敷へ…。勿論、彼の母君とは会わせない様にね…」
「「「「「イエス、ユア・ハイネス!」」」」」
シュナイゼルのその言葉に衛兵たちがそう答えて、パラックスを捕らえた。
流石に皇族と云う事で縛り上げるような真似はしないが…。
パラックスもここで抵抗しても意味がないと察知したのか、その衛兵らに素直に連れられて行く。
どこへ連れて行かれるのか…。
不安の色が見えている。
これまでこの豪華な離宮の中で、贅沢三昧に暮らして来た皇子だ。
一応皇族と云う事で、まだ罪状が確定していないという事でそれ相応に礼を払った形での身柄確保である。
ただし、この後、罪を問われた時の判断は…。
きっと彼らが一番望まない相手から判断が下されるだろう。
家が執り潰しになっても、その命を助けられても…。
彼らにとっては屈辱でしかない結果になるだろう。
尤も、ルルーシュに手を出した時点で、シュナイゼルは時が来れば潰すつもりでいた訳なのだが…。
もし、あの時、ルルーシュが五体満足で復帰できなかった時…もしくはその命を落とした時には…。
彼らは恐らく死ぬよりも辛い状況に陥っていただろう。
シュナイゼルの手によって…。
一人きりになったこの、離宮の部屋の中でシュナイゼルが小さく呟いた。
「あの時…ルルーシュが死なずに済んだ事を天に感謝する事だね…。あの子は優しいから…決して君たちに対して冷酷な事は出来ないだろう…。ただ…あの子の母親の死に君達が関わっていた…と云う事になれば…また違うのかな…」
そう云い捨てて、部屋を出て行く。
この先、この離宮は調査の為にシュナイゼルの手の者達が入って来る。
様々な真実がこの離宮から発見される事だろう。
『ルイ家』に関わっている貴族達も芋蔓式捕らえられていく事になる。
これが…ブリタニアの国是…。
力なき者は力ある者に服従するか、排除されるか…。
ルルーシュは確かに後見と云う意味ではこの王宮で力を持つ事は出来なかったが…。
その分、それを凌駕するほどの己が能力を発揮し続けた。
ただ、ルルーシュが求めたものは…権力でもなく、まして皇位でもない…。
ただ、愛する妹姫を守るだけの力が欲しかっただけなのだが…。
それを手に入れる為にここまで大きくならなければならなかった事には…シュナイゼルとしても心を痛め、そして、そんなルルーシュだからこそ…愛した…。

 ちょうどその頃…エリア11では…。
「そろそろシュナイゼル殿下がブリタニアから艦隊を率いて行くそうだよぉ?」
そうロイドがシンジュクゲットーからの志願兵たちに説明した。
数は決して多くはない。
それでも、ルルーシュに対して、スザクに対して思いの深い者達が集まっている。
「本当に…戦争に…?」
そう訊ねたのは藤堂だった。
何度もシンジュクゲットーでの騒ぎをルルーシュがその力で収めている事を知っていたし、スザクがひょっとしたら間接的にこの日本を治める事が出来るかもしれないという期待を込めて彼は志願したのだが…。
「まぁ、仕方ないだろうねぇ…。ラティス公国から送られてきたルルーシュ殿下の花嫁候補がアサシンだったって事で…。普通、国際的にあり得ない非常識だしぃ…。そんな事くらいは解るでしょぉ?」
確かに…国際ルールを完全無視していたのはラティス側の方だ。
戦争をしたい訳ではないが、放っておく訳にもいかない。
確かにブリタニア国内の問題も絡んでいる事は確かだが…。
「でもさぁ…本当にあの皇子様が皇帝になるの?」
そう訊ねて来たのは朝比奈だ。
確かにそれまで皇位継承順位的に見ても決して目立たない皇子だった。
皇位継承順位とは一体どうやって決めているのか、訊ねたくなるような今回の決定だ。
「まぁ、ブリタニアでは皇帝が黒と云えば黒だし、白といれば白…。こう云った形で皇位継承者が変わっちゃう事もあるんだよ…。ただ、ルルーシュ殿下見たいにそれ相応に実力があればいいけど、そうじゃない場合は普通に国内で内乱がおきるけどねぇ…」
ルルーシュに実力があったとしてもタダでは済まない気がする。
実際にこのエリア11と呼ばれている地域でもブリタニア人達が浮足立っている事が解る。
「ただ…私はルルーシュが皇帝になって、スザクがこの日本を間接統治とは云え、スザクが統治してくれるなら…って思っちゃうから…。だから、私…」
カレンがそう、言葉にする。
ただ、ここに扇たちの姿はない。
ルルーシュが皇帝になり、スザクが間接統治するという形が気に入らないらしい。
と云うのも、スザクが間接統治をしたところでブリタニアからの独立ではない…と云う事だからだそうだ。
確かに、彼らの言い分にも理解は出来るが…。
ただ、現在のところ、ブリタニアと睨み合っていた『日本』だった頃よりも現在のルルーシュが総督となっている『エリア11』の方が遥かに暮らし易くなっている事もある意味認めたくはない事実だ。
そこで、意見が分かれているのは確かだ。
「その辺りの事は…この戦いに勝ってからの議論にして頂きましょうか…。少なくとも、ルルーシュ殿下が皇帝となられた場合には、確実にブリタニアの国是は変わって行くでしょうから…」
そこに現れたのは…。
シュナイゼルの使いとしてエリア11に赴いた、カノンであった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2011年01月20日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 09

恩着せがましい…偽善(あい) Final



この記事には性的描写が含まれております。
18歳未満(高校生含む)の方、BLの性的描写に嫌悪感を抱く方、性的描写自体に嫌悪感を抱く方の閲覧は禁止致します。
なお、読み終えた方の苦情はご遠慮ください。


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2011年01月18日

It's Destiny39

そして…それから…



 ルルーシュは病室の中でロイドから渡されたメモを見つめる。
その内容は…。
ロイドに作らせた、ルルーシュの退院許可証…。
検査結果の一部を改竄させた。
これは、ロイドだから出来た事だし、恐らく、家宅捜索などが入らない限り、見つかる事はない。
それを確信してのルルーシュのロイドへの指示だった。
ロイド自身はルルーシュが入院している事でルルーシュの専任となっている訳だが、検査技師や看護師などは他の患者も受け持っている為に、ルルーシュのカルテの中身まで完璧に覚えている事はない。
―――このくらいしないと、俺はここから出られないからな…
そう、考えながらそれを封筒に入れて、備え付けのセキュリティボックスに入れた。
何があるか解ったものではないと云う思いもある。
改竄させたデータでは入院の必要性はないのだが…シュナイゼルの場合、それを理由にルルーシュを病院に縛り付けておく事を画策するに違いない。
シュナイゼルが自分の目の届くところにルルーシュを住まわせる準備が整うまでルルーシュをこの病院に閉じ込めておくつもりの様だった。
シュナイゼル自身、ルルーシュが他の誰かと笑って話していたり、ルルーシュにとってシュナイゼル以外の特別な存在が出来る事を理由はどうあれ、許さなかったのも事実だ。
だから、そう云うつもりだったと考えるのはごく自然なことだ。
記憶が戻る前から、シュナイゼルにしろ、ギネヴィアにしろ、ルルーシュにそこまで固執する理由が解らずにいたが…。
記憶を取り戻して更に解らなくなった。
前世ではシュナイゼルにとっては幼い頃はどうであったかは解らないが、エリア11、中華連邦で再会した時にはシュナイゼルにとって興味を失った存在だった筈だ。
ギネヴィアにとっては、卑しい身分の母を持つ、ルルーシュなどルルーシュが一方的に皇帝を名乗った時に初めて思い出した…と云うくらいの印象だ。
それが、生まれ変わって、こうした形で再会した途端にこれほどルルーシュに対して執着する人物になっていたとは…。
ルルーシュとしても戸惑いが大きい。
元々、皇族の中ではルルーシュは異質な存在であった自覚はあるし、基本的にルルーシュの出自や環境を考えた時に近付きたがる者は少なかったという自覚くらいはある。
―――それ故に…あれだけ非道な皇帝となれたわけだからな…。
そう思った時、ルルーシュはふっと笑ってしまうが…。
自分の中ではそんな風に前世を思い出して笑っていられるだけの暇などありはしないのだ。
スザクがああ云う形でルルーシュにメッセージを送ってきたという事は…。
その時が来れば必ず、ルルーシュに解る形で再び合図を送って来る。
そう…あの頃、襟を軽く上げることで…二人の意思を伝えあった時の様に…。
二人にしか解らない形で…。
でも、二人には確実に解る形で…。
そう考えながら…あらゆる可能性を考えていた…。

 その頃、ロイドに連れられて行ったスザクは…。
小さな喫茶店に連れて行かれた。
仕事一辺倒で接待の時に連れて行かれる店と自分の食事を確保する為のファーストフードくらいしか入った事がない。
それと…時々時間が出来るとよる事がある、リヴァルの飲み屋くらいか…。
「いらっしゃいませ…」
カウンターで背を向けて何かをしている…恐らくこの店の主人である女性…。
しかし、その後ろ姿を見て…少々、スザクが顔をひきつらせた。
それが…誰なのか解ったから…。
『スザク君…。あの頃と違うし、彼女はもう、君の敵じゃないよ?それに、彼女に記憶はないしね…』
そう、ロイドがスザクに小声で耳打ちした。
と云うのも…スザクのその顔をひきつらせた理由が解るだけに…ロイドとしても一応フォローを入れておかなければならないと判断したらしい。
それは、気遣いと云うよりも、スザクがそんな状態ではお話しにならないからだ。
その相手と云うのは…。
あの頃、スザクが1対1で最後の最後までKMFで戦った…紅月カレン…だった…。
今のスザクと同じくらいの年齢だろう…。
「あ、またサボり出来たの?ロイド先生?」
あのカレンがロイドを『先生』と呼んでいる事にも違和感があるが…。
今はあの頃とは違うのだ。
スザクは自分自身にそう言い聞かせる。
「違うって…。ちゃんとルルーシュ様の主治医をしているよぉ〜〜〜。で、ちょっとルルーシュ様のお使いの時に彼と会っちゃってさぁ…」
そう云ってロイドがスザクの話題を出した時に彼女がスザクの方を見た。
「へぇ…先生が誰か連れを連れて来るなんて珍しいわね…。今日はお兄ちゃん、いないわよ?」
「あ、そうなのぉ〜〜〜?じゃあ、ナオト君のプリンはないのかぁ…」
「一応、作り置きがあるけど…。一つ限定だからね…。ロイド先生にお兄ちゃんのプリンを食べちゃうと、全部食べきっても足りなくなっちゃうんだもん…」
そう云いながら、カレンがいつもロイドが座っているであろうその席に二つのお冷を置いた。
「で、そっちの彼の事、紹介してよ…。先生が誰かを連れてここに来るのってすごく珍しいから…」
「ああ、彼は枢木スザク君…。『A物産』の営業をしているんだって…。で、今はルルーシュ様の想い人だよぉぉぉ〜〜〜〜ん…」
凄い紹介のされ方の様な気がするが…。
ただ、彼女はルルーシュの事を知っているらしい。
「へぇ…アイツでも誰かに対して興味を持つの…。ちょっとビックリ…」
これまた、凄い発言を聞いた気がする。
「まぁ、少しは人間らしい感情が芽生え始めたのはいいことよ…。確かに複雑な事情ってのは解るけどさ…。あっと、私は紅月カレン…。この店のマスターの妹よ…。宜しくね…」
あの頃には考えられない程にこやかにスザクに話しかけている事に面食らうが…。
ただ、今は彼女にあの頃の記憶はないし、互いが敵同士なのではないのだ。
あの頃だって…あんな形の出会いでなければあんな風に接する事はなかったのだ。
「初めまして、枢木スザクです。よろしく…」
スザクは色々と複雑な気持ちを抱えつつも、それでもあの頃とは違うんだと云う事を自分に言い聞かせて自己紹介して頭を下げた。

 二人がその喫茶店のカレンがお冷を置いた席に向かい合って腰かける。
「で、オーダーは?」
「僕はいつものセットでぇ〜〜〜。スザク君はどうする?」
そんな事を訊ねられても初めて入る店だし、こんな店に入ったのだって一体何年ぶりの事なのやら…と云った感じなのだが…。
「じゃあ…えっと…ブレンドで…」
「解った…。なんか、込み入った話をするんなら私、奥にいるから…。ちょうど、新商品開発中だったから…。お客さん来たらちゃんと出て来るからね…」
そう云って、カレンがカウンターの中で手を動かし始める。
そして、ロイドの云った『いつものセット』とやらとスザクのオーダーしたブレンドコーヒーが運ばれてきた。
「ね、貴方、砂糖とミルクは?」
「あ、要らないです…」
「そ…じゃあ、これは片付けちゃっていいわね?」
そう云ってトレイの上のシュガーポットとミルクポットに目をやった。
「あ、はい。って云うか…なんでそんな事を…?」
「この先生ねぇ…すっごい甘党で…置いとくと丸ごと使われちゃう事もあるからよ…。まったく…それだけ砂糖とミルクを摂取して太らないなんてどうかしているわね…」
「そんな事ないでしょぉ?だって僕、必ず少しだけ残す様に…」
「中途半端に残されるのが困るっての!と云うか、これからはペットシュガーとポーションにしようかしら…」
カレンがブツブツ言いながらテーブルの上にオーダーされたものを置いて行く…。
二人のやり取りを聞いているとカレンの云っている事は本当らしい…。
「じゃあ、ごゆっくり…。帰る時にはちゃんと声をかけてね?食い逃げしたら、二人分を先生にツケておくからね…」
カレンの言葉に…この目の前のかつての上司で、現在はルルーシュの主治医と云うこの人物は一体、どんな生活をしているのか、無性に好奇心を抱いてしまうが、知るのが怖いという危機感を煽る脳内警報も鳴り響いている。
そして、ロイドの前に置かれたそのセットとやらを見ると…。
甘そうなプリンア・ラ・モードにこれまた甘ったるそうなミルクココアが置かれている。
―――この人…ここに更に砂糖とミルクを入れようなんて考えていたの???
ちょっと、想像して気持ち悪くなるような錯覚を起こした。
あの頃も…プリンが好きなのは知っていたが…。
それでも、ここまで甘党だったと云うのは知らなかった。
「ロイドさん…いつも…そんなものをオーダーしているんですか?」
「まぁねぇ…。ここのプリン、美味しいんだよ?ルルーシュ様もお気に入り…とはいっても今日は留守だったナオト君の作ったプリンだけどねぇ…。彼女は基本的に給仕や飲み物担当…」
そんな状態で店を開いていて大丈夫なのだろうか…と思うのだけれど。
それでも時間帯的に食事の時間でもないし、この店に今居る客はロイドとスザクだけだ。
そして、ロイドは一旦表情を変えて、そして、スザクの方を真っ直ぐ見据えていた。
あの頃も…時々見せていた…真剣な表情…。
普段ふざけている様に見えるから…時々見せる真剣な表情は…インパクトが強い。
「まぁ、そんな事より…。本題に入ろうか…」

 ロイドが甘そうなココアを一口啜りながらそう、切り出した。
そう、こうしてロイドについて来た理由はそこにあるのだ。
「本題…」
「そう…。一応ね…君の意思を聞いておきたいんだ…。あんな風にカノンに云われて…迷っている君を見てね…」
さっきの…ユーフェミアの話しをしていた時の事だ…。
確かに…ユーフェミアの姿を見て、スザクは…。
「ユーフェミア様がルルーシュ様の婚約者である事は事実だし、ユーフェミア様はそれはそれは、ルルーシュ様の事を想っていらっしゃる…。僕もね、この記憶が戻ってからも、君と再会するまではルルーシュ様は彼女と一緒になった方が幸せになれるんじゃないかって…そんな風に思った事もあったよ…。確かに、障害は大きいけれど、ルルーシュ様がその気になればそんなものを蹴散らす事が出来るだけのものは持っているし、ユーフェミア様だってあの頃ほど家柄だけのお姫さまじゃないよ?」
ロイドの説明に…スザクはぐっと言葉を飲み込んだ。
確かに、先ほど、スザクの中で複雑な思いが生まれてきたのは本当だ。
その気持ちが…どんな種類であったのかは…正直、何とも云い様がない訳なのだが…。
「ロイドさん…」
「もし、君が本気でルルーシュ様を幸せにするつもりがないのなら、僕としてはこれほどまで危険を冒してまで、君に協力する事は出来ないよ?僕だって、どこでだって確かに研究は出来るけど、今の環境を無駄に捨てるのは御免だよ?」
遠慮がない言葉…。
そして、その目は…真剣であり、真面目に云っている言葉で…本気である事が解る。
普段のロイドがこうした真剣な表情をする事が少ない為に、こうしてたまに真剣な顔をした時には本当にロイドの中で重要な問題であり、今の言葉が本気であり、そして…今のスザクに対して怒りと憤りしかなくなっている事が解る…。
「それにね…僕だってルルーシュ陛下の事…気に入っていたんだ…。僕はあの頃だって君の知らないルルーシュ陛下を知っている…。本当にお可愛らしい皇子殿下だった…。そして、賢くて、母君の身分の所為もあるだろうけれど、下々の者達にも優しくてね…。だから、エリア11に送られてしまった時…僕、本気で泣いちゃったよ…柄にもなく…。あの皇子殿下なら…きっと僕の期待通りに成長してくれるかもしれないって思っていたしねぇ…。それなのに…再会したと思ったら運命共同体になれず仕舞いだったでしょ?僕としては…せっかくあの時の記憶も一緒にこうして生まれ変わって来て、ルルーシュ様と再会する事も出来たんだ…。君にその気がないなら、僕が貰っても君に文句は言えないよねぇ〜〜〜?」
ロイドの言葉に…スザクは目を見開く…。
これまでそんな事をおくびにも見せて来なかった目の前の人物が…。
スザクに対して、こんな事を云っているのだ。
彼も…ルルーシュを欲しいと思っていると…。
そんなスザクを完全無視してロイドが更に続ける。
「まぁ、シュナイゼル様も色々邪魔してくれるだろうけれど、ルルーシュ様にそのお気持ちがないんだから…シュナイゼル様は僕の敵じゃないし…。そして、一番の敵と思っていた君がそんなんなら…」

ロイドがそこまで云った時…。
スザクが立ち上がり、バンと両手でテーブルを叩いた。
「…さない…」
下を向いた状態で…籠る様な声でスザクがそう…云い放った。
「え?」
良く聞こえなかったらしく、ロイドが何が起きたのかよく解らないと云った感じにひらがな一文字を声に出した。
「ルルーシュは…二度と手放さない…。誰にも…僕からルルーシュを奪わせない…。ルルーシュが嫌だと云ったって…ルルーシュは…僕のルルーシュだ…。その誓いがあったから…僕とルルーシュは『ゼロ・レクイエム』を…」
そこまで云った時…。
ロイドの表情が変わった。
少しだけほっとした様な…安心した様な…そんな表情…。
「なぁんだ…。ちゃんと解っているんじゃない…」
いつもの口調に戻ったロイドがそう、言葉を紡いだ。
その表情は本当に安心したという…優しい瞳をしていた。
「さっきまでのスザク君を見ていたら…ちょっぴり心配になっちゃってさぁ…。で、ちょっとカマカケてみたんだ…。安心したよ…」
その言葉に、スザクはきょとんとした表情を見せた。
「それは…?」
「ああ、でも勘違いしないでよぉ?僕としてはあの時のルルーシュ様のやり方は納得していないんだ…。今度こそ、ちゃんと幸せになるべきだと思っている。あんな自己満足な偽物の幸せなんかじゃなくて…周囲も笑顔になれる…少なくとも、ルルーシュ様を大切に思っている人たちが泣かずに済む幸せに…ね…。だから…」
ロイドはそこまで云った時に、一旦、言葉を切った。
そして、大きく息を吸ってもう一度さっきの真剣な目をしてスザクを見た。
「君がいい加減な気持ちだと…僕が判断した時には僕は全力で君からルルーシュ様を引き離す…。それをルルーシュ様が感情で嫌だと云ったとしてもね…。もう、ルルーシュ様に『裏切り』の痛みを感じて欲しくはないんだよ…僕は…」
そう云って、喫茶店の窓から外を眺めた。
あの時の…『ゼロ・レクイエム』の後の世界を思い出すと…。
確かに…あの世界はルルーシュを『裏切って』いた様に思える。
ルルーシュがどれほどの覚悟で…あの決断をしたのか…。
死んで尚、歴史の闇の部分として、誰にもその功績を正しくは認めて貰えない立場として…。
人々の心の中に存在し続けなければならなかったルルーシュだったが…。
「あの…済みませんでした…ロイドさん…」
スザクが深々と頭を下げてロイドに頭を下げた。
その姿にロイドはやれやれと云った感じにため息を吐いた。
「そんな事をしている暇があったらルルーシュ様を迎えに行って差し上げてよ…。もう、僕に君とルルーシュ様がいちゃいちゃしているところを見せないでよね…」
そう云ってふざけている様に見えているロイドの瞳の奥の奥に…。
何か深いものがあると気付いたけれど…あえて無視した。
「有難う御座居ます!ロイドさん!」
そう云って、財布から1枚紙幣を出してテーブルに置いて店を飛び出して行った。
ロイドはその紙幣を見て…クスッと笑った…。
「これなら…あと25杯はここのブレンド…飲める金額だよ…スザク君…」
そう呟いて、その紙幣は大切に自分の財布に入れて、カレンを呼び、代金を置いて店を後にするのだった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | It's Destiny

2011年01月16日

ダメ人間とダメ悪魔 07

ビビり人間と哀れ悪魔



 余り突然の事で頭の中が色々とスクランブル状態なスザク…。
そして、スザクが『悪魔が悪魔と契約した』などと評したその出来事があった事をルルーシュは知らない。
正直…。
―――人間の中には悪魔より恐ろしいものがいる事をすっかり忘れていた…。
スザクはすっかり青ざめて目の前の来客にお茶を出している。
なんだか、不条理なものを感じそうな気もしないでもないが…。
にしても、相手はスザクの天敵だ。
『天敵
 対象とする生物にとって、重要な捕食者か、それに変わり得る能力を持った生物のことである。
転じて、あるものにとって苦手とする人物や物事を指して、『あいつは俺の天敵だから』などと使う事がある。(wikipediaより引用)』
皇神楽耶、属性:人間 年齢15歳 能力:その一睨みで枢木スザクを撃退、もしくは無力化できる能力を持つ。
そこに…ルルーシュの異母兄であると云う…結構危ない考えにまで至っちゃっている様な気がしないでもないシュナイゼルも一緒である。
この二人が手を組んだら…。
この地球などあっという間にこの二人の手中に収められてしまう様な気がする。
「どうぞ…」
そう云いながら、応接間のテーブルの上にお茶を置いた。
正直、お茶を入れるのはあまり得意な方ではないけれど、そう云った事を一通り施しておかないと後が怖い。
そんなスザクの心中を知ってか知らずか…神楽耶はスザクの入れたお茶の入った湯呑を手に取った。
「相変わらずお茶の煎れ方が下手ですわね…」
いつもの事なので、そのセリフ自体にスザクは何も思わないが…。
神楽耶の家はスザクの平均サラリーマンの家と違ってお金持ちであり、そして、彼女自身、お嬢様として育っているからそう云った事にうるさいのは解っている。
お嬢様がこんな平均サラリーマンの家に入り浸ると云うのもいかがなものかと思うが…。
「えっと…なんでまた…神楽耶がこっちに?桐原のお祖父ちゃん…きっと反対したんじゃ…」
しどろもどろにスザクは神楽耶に訊ねる。
スザクよりも年下の従妹に対してスザクがしどろもどろになってしまうそんな彼女のオーラは一体何なのだろうかと云う思いはあるのだが…。
その隣に腰かけているシュナイゼルは物珍しそうにリビングを見まわしている。
「人間はこんな狭いところに暮らしているのかい?神楽耶の家は結構広くて快適だったが…」
「神楽耶の家と一緒にしないで下さい!僕のうち、都内ではかなり広い方です!」
日本は世界的に住宅が狭いという特徴を持っている。
国土の中で山林の割合が多く、平地が少ない為にどうしても居住可能な土地が限られている。
そんな中で1億人以上の人間が暮らしていて、その1割が東京都に集まっているのだからある意味仕方がない。
「それより…ルルーシュはどこだい?」
スザクの話しをちゃんと聞いていたのか、いないのか…シュナイゼルはそんな話にさらりと切り変えてきた。
―――この人…人の話しを聞かないところなんて、神楽耶にそっくりだ…
そう思うと、スザクは大きくため息を吐いてしまっていた…。

 その頃…ルルーシュはと云えば…。
現在のこの世界で自分の居住区としたスザクの自宅近くのマンションに帰って、とりあえず、面白くもないこの世界の学校の宿題に手を付けていた。
今更、数百年も生きている悪魔がやる様な事じゃないだろうに…とは思っているのだけれど…。
それでも、今はスザクがルルーシュの契約者でスザクに合わせた生活を送るのも悪魔としての仕事の一つだ…。
「しかし…どうすれば俺はスザクの願いを叶えた事になるんだ???」
『友達』と云う枠組みと云うのは様々だ。
それこそ、学校に行ってみても一言に『友達』と云っても様々な種類がある事が解る。
単純に同じクラスだから『友達』と云うカテゴリーに入る者。
割と気が合って、良く話しをするから『友達』と云うカテゴリーに入る者。
そして、恐らくスザクが望んでいるのは互いに気心が知れていて、一緒に戯れていたり、協力し合ったり、時に喧嘩をしたり…と云うそう云うカテゴリーに入る存在…。
ルルーシュは悪魔で、悪魔にはそう云った『友達』と云う概念が基本的にはない。
欲しいものがあれば自力で手に入れ、他の誰かの者であれば力ずくで奪い取る…。
そして、こうした仕事の時には誰かの協力は基本的にはしないし、求めない。
ただ、利害が一致した時に互いの利害の為に協力関係を結ぶ事はあるが…。
基本的には自分の利害に関係なく…と云う事で力を使う事もなければ、その為に労力を払う事を考える事もしない。
ルルーシュ自身、別に人間との契約が初めてな訳ではないし、契約者の中には自分の大切な存在…それが家族であったり、恋人であったり、友達であったり…直接自分の為にではなく、悪魔と契約する者達はいたにはいたが…。
まさか、人間との契約で、そう云った存在になれと云う願いを持ちかけられる事になろうとは思わなかった。
いくら父王から『なんたる愚かしさぁぁぁ』などと云われる様なちょっと悪魔としていかがなものかと思われるとは云っても…。
ルルーシュはあくまで『悪魔』なのだ。
『神』と云うカテゴリーの存在からは忌み嫌われ、基本的には『神』や『天使』に捕まった日には問答無用で消される立場にある事は確かだ。
まぁ、一言に『悪魔』と云っても色々いる訳で…。
それは、人間にもいろんな人間がいるのと同じで、それぞれがそれぞれの個性を持っている。
社会性は人間ほどある訳じゃないから、その各自の個性は十二分に発揮しながら生きている訳だが…。
人間の世界は兎角にして『統一した規律』を好む生き物で、とにかく、自分と違う存在に対しての迫害は強烈なものだ。
信じている神の違いだけで迫害の対象とされる事さえあるくらいだ。
と云うか、異宗教信者の場合、『悪魔の使い』とレッテルを張られているが…。
それは悪魔としては心外だ。
どこの宗教の神であれ、『悪魔』と云う存在に対しては容赦がないのだ。
そんな相手と一緒にされたら悪魔も迷惑この上ないだけである。
悪魔だって悪魔なりのプライドを持って悪魔をしているのだ。(ルルーシュの場合、やっている事とそのプライドが伴っていないという話しもあるが…)

 今更な宿題を終えて、リビングルームに入った時…。
ルルーシュの中に何か…嫌な感じが過って行った。
人間で云うところの嫌な予感が大き過ぎて背筋が寒くなると云う奴だろうか…。
尤も、今の段階でその嫌な予感の種となる存在がこちらの世界に来ている状態だ。
だからこそ、その原因はたった1つしかない。
思い当たる節があるだけに…嫌な予感は、どんどん嫌な方向へと向かって行く。
「あ…異母兄上…まさか…。人間界に来たついでに仕事をしようなんて考えているんじゃ…」
そこまで独り言で口に出した時点で…ぴたりと動きを止める。
否、止まったと云うべきか…。
こう云う時のいやな感じは基本的にルルーシュを裏切らない。
こうして嫌な感じを受けた時の未来は、確実にその嫌な感じの倍の大きさの災難に見舞われる事が殆どだ。
―――否…気の所為だ…。忘れよう…。ちゃんと忘れよう…。
なんだか間抜けな事を考えながらとりあえず、キッチンに向かう。
この世界では一人暮らしと云う事になっていて、色々と家事をしている毎日だ。
意外とこの時代の家事は楽しい…。
―――100年前の家事は大変だったからなぁ…。
などと、しみじみ思ってしまう。
蛇口をひねれば水が出て来るとか、洗濯機に洗剤と洗濯ものを入れて、スイッチ一つで選択をしてくれるとか、ボタンひとつで火が点いて、煮炊きが出来るとか、といだ米と水を入れてスイッチを押せばご飯が炊けるとか…。
確かに、これほど便利になった世界では神に頼らずとも生きていける人間は多くなるだろうと納得もできる。
神に頼らずに生きていけると云う事は悪魔の存在意義も失うという事だ。
これでは悪魔の中で人間の魂は単純に高級食材として希少価値がつくと云う物だ。
それに、確かに人間界の食べ物は随分進歩していて、悪魔の中でも人間の食べ物を食べに遊びに来ると云う奴も現れていて…。
今では本当に悪魔と云うのは人間にとって無害に近い存在となってきている。
それでも、時々、悪魔としても人間界との繋がりを維持する為に稀に現れる悪魔称感謝の為に道を開いている状態だ。
これほど恵まれた時代となっても悪魔に頼る人間はいるものだ。
ルルーシュの場合、完全に押し売り状態であったが…。
ルルーシュは一応、魔界の皇子で、周囲が勝手に次期魔王と云う事にしてしまっているので、時々、試練の為に人間界に強引に飛ばされる。
自分で来る分には人間で云うところの遊園地だとか、テーマパークの感覚なのだが…。
仕事の為と云う事となると、ルルーシュの場合、余り気分が晴れる事はないのだ。
本来、悪魔は人間と契約してその見返りに人間の魂を頂いて来ると云うのが慣わしだが…。
ルルーシュの場合、魂を取る時にいつも躊躇してしまい…。
これまでうまく魂を持ち帰る事が出来たのは本当に悪魔のルルーシュから見ても『人間っておっかねぇ〜〜〜』と思わされた人間だけだ。
今回…スザク相手に…
「俺…魂持って帰れるのかよ…」
うっかりそんな事を悩んでいた。

 さて、更に場所を移して…
「あら…お兄様…人間界に行っていたのですね…」
栗色のウェーブの髪をした少女の姿をしている悪魔が水晶玉を覗き込みながらそんな事を云っていた。
「そうか…人間界…と云う事は、やっと魔王になる気になったという事か…」
そう云って来たのは、プラム色をした髪をした大人の女性の姿をしている悪魔が返すが…。
「あら…ルルーシュの事ですもの…。きっと、シュナイゼル異母兄さまに追いかけ回されている内に…と云う事かも知れませんわ…。なんだか、ロイドに怪しげな機械を作らせていましたもの…」
そう云ったのはピンクの髪をした栗色の髪の悪魔と余りとしの変わらない姿をした悪魔だった。
どうやら、ルルーシュを取り巻く女悪魔たちらしい…。
「怪しげな機械?」
「ええ…。何でも…ルルーシュの魔力を封じて、天井からつるしたり、大の字に縛りあげたりする為の機械だそうですわ…。人間界の『SM』とか云うのに興味を持ったそうで…」
「えすえむ???なんだそれは…」
彼女達のやり取り…。
悪魔が見ればさして驚きはしないが…。
人間から見たら…うっかり萌え…じゃなくて、震えあがりそうな会話である。
「お姉さま…この本をご覧になってみて下さいな…。今の人間界にはいろんな人間がいるようで…悪魔も顔負けですよ?」
そう云って、ピンクの髪の悪魔がプラム色の髪の悪魔に一冊の本を渡した。
なんだか…怪しげなオーラを醸し出しているが…これは魔界の本から見えるオーラとはまた別物だ。
色んな意味で悪魔でも眉をひそめてしまいそうなオーラを発している。
そうは思いながらも、その怪しげなオーラへの好奇心に勝てず…その手渡された本を開いて一通り読んで行く…。
読み進めている内に読んでいる悪魔の顔が赤くなったり、青くなったりしていくのが良く解った。
色んな意味で色んな事を思うのだろう。
そして…全てを読み終わった時…。
「ユフィ…ナナリー…。人間とは…妙な事を考えるのだな…」
「コーネリア異母姉様は…こう云うの…お兄様にしてみたくはありませんの?」
栗色の髪の悪魔…ナナリーと呼ばれた方の悪魔がそう訊ねた。
「ふっ…私を誰だと思っている?あの偉大なる魔王の地を引く姫だぞ…」
「お姉さま…?」
「ユフィ、ナナリー…ロイドに開発を急がせろ!ルルーシュが戻り次第試してみようではないか…。シュナイゼル異母兄上などに横取りされてたまるか!ルルーシュは私達のおもちゃ…じゃなくて哀願人形…でもなくて…え〜〜〜〜と…」
段々酷い云われようになって行くルルーシュに対して、ユフィと呼ばれたピンクの姫もナナリーも同情を見せるどころか、瞳を輝かせている。

 その辺り…この3人の女悪魔に期待するべきなのか、ルルーシュに同情するべきなのか、迷うところではあるが…。
それでも、この3人の期待に胸を膨らませている様子の中、この3人を止められる者などきっといない…。
否、確かにこの広い世界を探せば1人くらい止めようと実行する勇気ある者がいるかもしれないが、この3人に勝てるとはとても思えない。
「お姉さま…やっぱりお姉さまは私のお姉さまです…。同じ事に興味を抱いて下さるのですね…」
「ユフィ異母姉様…コーネリア異母姉様がこうして乗り気になって下されば鬼に金棒です…。早くお兄様が帰ってくればいいのに…」
多分、3人ともルルーシュを愛してやまないのだが、人間の立場としてはこう云う愛情表現は理解しにくいものがあるだろう。
しかし、それでも、この3人もシュナイゼル同様、ルルーシュを愛してやまないのだ。
そして、一応、立派な魔王になって欲しいと願っているのだ。
「でも…今人間界でお兄様の契約者となっているあの人間…」
「確かに…ちょっと時間がかかりそうな願い事をしてくれましたわ…」
「そうか…。困ったな…。楽しみは取っておくのがいいとは云うが…余り待たされるとその待たされた時間の分、ルルーシュを壊してしまいそうだな…」
「それについてはシュナイゼル異母兄さまもちゃんとお考えの様で…。その機械には悪魔の傷を瞬時に癒すシステムをつけるそうです…」
「ほぅ?なら好き放題できるという事だな…。ならば、早くルルーシュに帰って来て貰わなくては…」
ここで…話しの趣旨がずれてしまっている事を突っ込んだら…どうなるだろうか…?
ちょっと試してみたいものだ…。
他の人間に犠牲になって貰って…。
まぁ、そんな事はともかく…人間界でも魔界でもルルーシュと云うのは『愛されている』のだが、どうにも人間には理解しにくい愛情表現をする者達が多い様である。
シュナイゼルも部下にそんなものを作らせていたのか…などと突っ込んだら負けだろうか?
それとも、シュナイゼルの特性を考えた時には『ああ、らしいな…』と思うのが妥当なのだろうか…。
その辺りは人それぞれだろうが…。
それにしても、ルルーシュがやたらとスザクの契約に拘っていた理由がここで解った。
そして、少なくとも、ルルーシュにとってこう云う愛情表現は結構大変であるという認識である事も解った訳だが…。
「で、ユフィはルルーシュをつるしあげたら何をしたい?」
またも会話の内容が変わっている。
この辺りは血縁であり、人間の一生よりも遥かに長く生きていて、共に暮らしている者たちだからこの程度の会話の変化は平気なのだろうか…。
そんな風に話しが吹っ飛んでも彼女の妹二人は普通にその会話に乗って行く…。
そして…聞いている内にルルーシュの身の危険を感じざるを得ない会話へと嵌り込んで行く。
見てみたいという期待と…ルルーシュが壊れてしまわないかという心配…。
その場に立ち会った時には自分はどちらの立場になるのだろうか…と考えるのは愚問だろうか…?

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ダメ人間とダメ悪魔

2011年01月15日

皇子とレジスタンス 〜野望と希望〜

 今、ルルーシュはラティスの国王と会談している。
本来なら、相手は国王で、ルルーシュは大帝国の皇子とはいえ、第11皇子…。
その格の違いはある筈なのだが…。
しかし、現ブリタニア皇帝が次期皇帝に指名したのがルルーシュであると云う事で、以前、戦後の交渉の際の会談の時とは随分扱いが違うと思った。
―――まぁ…仕方ないな…。とは云うものの…半ば戦争状態の中…何を考えているのやら…。
そんな事を考えていても解らないものは解らないし、ラティスの場合、単純に関係の冷え切った間柄となった国として見るのは危険だ。
と云うのも、ブリタニアの皇族の中にラティスと関わりの深い存在がいて、実際に、その皇族の手によって動かされていることが明らかだったからだ。
あからさまにエリアの総督の任に就いている皇子に対して、あんなに堂々と暗殺をしかけて来るわ、国賓である筈のルルーシュに対して、王宮内でルルーシュの命を狙おうとするわ…。
そんなもの、露呈した時にはラティスの立場が悪く云われても文句は云えない。
確かに、いつ戦争が始まってもおかしくはないと云う事にはなっているものの、首脳会談をしての話しではないし、実際に互いに戦闘準備はしているが、その戦禍を開く為にはどちらの国もトップが『Go』サインを出さなければ互いにそのミサイルのスイッチを押す事は出来ないのだ。
だからこそ、末端の争いや領海侵犯をして侵犯した側の船を撃沈したとしても、それだけで戦争になる訳ではない。
戦争と云うのは国同士の外交がもつれた時に起きて、そして、それぞれの国がその国との外交関係の中でどうにもならなくなった時に取る、最終手段だ。
だから、ブリタニアと日本の時も、日本側がのらりくらりとブリタニアとの戦争を避けて外交努力をしていたが…。
しかし、それに業を煮やしてブリタニアが一方的に宣戦布告して、そして、日本側も何れそう云った事態に陥るという予想をしていた上で、強かに準備を行ってきていたのだ。
宣戦布告もしないで武力行使をした場合、それは侵略であり、戦争ではない。
あくまで、戦争とは外交手段であり、自国に有利に持っていく為に武力を使うと云う事だ。
ただ、そう云った武力を使った場合、自国であっても、相手であっても、あらゆる面での国力の消耗が激しい。
その国運をかけて国をあげて国同士で自己主張をし合うのだから…。
だからこそ、宣戦布告をすると決めるうえでも、宣戦布告をする上でも冷静さが要求される。
尤も、そんな状態になった時には頭に血が上ってしまっている状態だから、後になって何故こんな事になったのか…と云う事も多々ある。
今のところ、特使として送られているルルーシュ自身は冷静に事を見守っているが、ルルーシュのバックではシュナイゼルが確実に、いつその時が来てもいいようにと準備を整えている真っ最中である。
それに、ラティス側も、ブリタニアの内部からの情報でルルーシュに対しての暗殺者へのチェックが甘い状態なのだからラティスもきっかけを待っている状態だと云ってもいいだろう。
ルルーシュと入れ替わりでシュナイゼルに遣わされているラティスの特使はルルーシュの様にあからさまに命を狙われていなくとも、シュナイゼルの睨みの中で生きた心地のしない日々を送っているに違いない…。

 目の前にいる国王は…ルルーシュを見ながら過去の記憶を辿っていると云う感じだ。
かつて、ルルーシュはラティス侵攻に際し、指揮官であった事を国王だって知っているし、その時にラティスとの条約提携などはすべてルルーシュが指揮を執ってやっていたのだ。
「ルルーシュ殿下…あの頃も年相応に見えぬ子供だと思っていたが…。あれから…何年経ったかな…」
「恐らく…3年ほどでしょうか…。お久しゅうございます…国王陛下…」
周囲から見て言葉だけ判断するなら単純に挨拶を交わしている感じなのだが…。
その彼らを取り巻いている空気は相当物騒なものを感じている者も少なくはない。
ルルーシュの後ろに控えているスザクも正直気が気ではない。
ここにいるラティスの兵士達も国王の合図があれば確実にルルーシュを殺す為に襲いかかって来る事を容易に予想させる様な空気を醸し出している状態だ。
―――こんな、国王の前で流血沙汰も致し方なし…と云う事なのか…。まったく…ラティスとは確かに敵対しているのは知っていたけれど…ここまであからさまなのってありかよ…
それはスザクの素直な感想だ。
尤も、ラティスの場合、反シュナイゼル派の皇族からある事無い事情報を送られてきているからこんな緊張状態の中にいるのだろうが…。
元々、ラティスに関してはその武器製造技術に関してはブリタニアとしても一目置いていたし、脅威も抱いていた。
ただ、ラティスの作る武器と云うのはどちらかと云うとスパイやアサシンが使う様な見た目に解り難い武器が多い。
だからこそ、ラティスに対して警戒している国はブリタニアだけではないのだ。
実際に、ラティスの作った武器で国の要職に就いている人間が暗殺された事例もいくつか上がっているのだから…。
ここまで、ラティスの王宮の中でそう云った武器を使ったアサシンがいなかった訳ではないが、ブリタニアとしても解っていてそう云った武器に対しての対処を研究していなかった訳ではない…。
そして、ここにいるルルーシュも、ルルーシュのバックにいるシュナイゼルもそう云った暗殺と云う見えない脅威に関しては常に注意を払わなければならない状況下に身を置いていたから一々気にしていたらキリがないと云うのも事実であった事は確かだ。
「さて、国王陛下、本題へと入りたいと思うのですが…」
「ほう?本題とは…?」
非常に解り易い白々しいやり取りだ。
それでもこうした時にはこう云った、見ていてあまり愉快だと思えない会話は確実について回るものである。
「先日…エリア11にラティスより送られてきた私の花嫁候補の中に…帰国の姫を騙る女がおりました事…国王陛下は御存じであったのでしょうか?」
これは、既に水面下で双方の外交官や事務官レベルである程度情報のやり取りは交わされているが…。
ただ、ラティス側は正式なルルーシュの花嫁候補として送りこんで来ているのだから、こうした形で話しに蹴りを付けなければならない。
殆ど儀式みたいなものである事は確かなのだが…。

 ルルーシュのその言葉にラティス国王もふっと笑って答えた。
「既に調べは付いておられるのだろう?今更私に訊く事なのかな…?」
国の代表がこのような返答をすると云うのは…。
裏に何かあるのか、本当のバカなのか…。
ともあれ、これはラティス国王の正式な言葉であり、国際的には正式回答と云う位置づけになる。
「その答えの意味が…きちんとお解りの上で答えられておられるのか?」
「勿論…。元々貴殿もそのつもりで訊ねて来たのであろう?」
どうやら、国王としてはきちんと自覚はあるらしい。
だから、あの時、確実にルルーシュを殺す為に偽物の姫を送りこんで来たという事だ。
関係がぎくしゃくしている相手であろうとも、国際的には相当信用を失う行為である事は確かだが…。
ただ、ブリタニアの王宮の住人の一人がラティス皇族の親戚筋にあたり、そして、その家の数ある後見者の一人となっている状態だ。
それ故にラティス側もそう簡単にブリタニアはラティスに戦いを仕掛けては来ないと思ったのだろう。
数年前、ブリタニアがラティスと戦争した事を忘れている訳ではないだろうが、ここまでじっと、静かに息をひそめて来て…要らぬ情報を耳にして…。
ラティスは小国だ。
国土としてはブリタニアとは比べ物にならないほど狭いし、武器産業を主な産業として、全世界に影響を及ぼしている国であるからこそ、ブリタニアも攻め切れずにいた訳だ。
しかし、事がここに至ってしまっては、ブリタニアとしても決着をつけざるを得ない。
ルルーシュは確かに皇位継承権としては低い位置にいる皇子であったが…。
最近、皇帝の発言で立場が変わってしまい、今では彼に媚びようとする者、彼を殺そうとする者が入れ替わり立ち替わり現れる状態となってしまった。
そして、ラティスとしては王族の嫁ぎ先の皇子がルルーシュから遠い立場をとっているとなれば、心中穏やかではいられない。
ラティスとしてもその姫の皇子が有力な皇子として立ってくれなければ自国の安寧を保証される事がないのだ。
ルルーシュ自身も皇帝の言葉がなくとも…幼いながら、シュナイゼルの下でその力を発揮して、現在の地位を築いてきた。
庶民の出の母を持ち、その母もその実力で騎士侯に上りつめ、皇帝の寵愛を受けるまでになったのだ。
そんな母を持つルルーシュが皇帝に次期皇帝と指名されてしまった時…ただ、身分しかとりえのない姫の甘やかされた皇子では太刀打ちできるとも思えないのもまた事実…。
だからこそ、危機感を抱く存在が増えてルルーシュに近付いて来る人間が二つに分かれた訳だ。
今から媚を売ろうとする者と…その命を奪い存在そのものを消そうとする者と…。
ラティスとしてはその後者を選んだ訳だ。
今からどう頑張ったところで、『ルイ家』単独でラティスの未来を預けられるだけの力はないのだ。
どんな形であれ、力を必要とするのがブリタニア…。
それを知るからこそ…国王もこんな形でルルーシュと対峙している訳なのだが…。

 その頃、ブリタニアでは…。
「シュナイゼル殿下…この資料を…」
カノンがシュナイゼルにプリントアウトされた資料の束を渡した。
その中には様々な画像があったり、物的証拠の資料が掲載されていたりしている。
「意外と時間がかかってしまったね…。ただ、これだけの資料があれば、普通に宣戦布告も行えるだろうが…」
「ルルーシュ殿下はきっと嫌がると思いますが…」
「どの道、ラティスとの戦いは避けられないよ…。『ルイ家』が関わっている事もこの資料がしっかり証明しているし、画像だけでなく現物もカノンは手に入れているのだろう?」
シュナイゼルの言葉に、カノンが黙って頭を下げた。
それを見てシュナイゼルは資料から目を離し、窓の方に目を向けた。
「それに…私が皇帝になるにしろ、ルルーシュが皇帝になるにしろ、『ルイ家』はいずれ、我々の支障になる事は確かだ…。今、『ルイ家』まで叩く事は出来ないが…。それでもバックボーンは消しておくに限るよ…」
シュナイゼルの言葉に…カノンが苦笑しながら考えてしまう。
―――本当に…シュナイゼル殿下はこうした陰に徹するのがいいのかしら…。ルルーシュ殿下も同じ事が云えるけれど…。どちらも恐るべきカリスマがありながら…こうした、陰の部分まで担えるなんて…。そんな贅沢な悩みでありながら…同じ時代に生まれてきたこのお二人は…
この国で皇帝になれるのはたった一人だ。
シュナイゼルはその自覚を常に持ちながらここまで来た。
本当に皇帝の座につける、つけないはあるかもしれないが…。
それでも、その自覚がある人間が一人でもいないと国のトップが突然倒れた時には国をまとめられる存在がいなくなる。
トップ不在の国ほど他国に狙われ易い事はない。
トップがいないというのは船頭のいない船なのだから…。
そこに他の船の人間が入り込んで、多少の抵抗はあったとしても、トップが不在となれば簡単に制圧されてしまうのだ。
国のトップに立つ為に育てられて来た者であればそう云った事についても学ぶ。
シュナイゼルはそう云った事もしっかり学んで来て、実力を発揮している。
ルルーシュはそんな事を考える事さえなかった。
あくまで、自分の守りたいものの為に力をふるっていただけだ。
でも、皇帝の座につく事が自分の大切なものを守ると云う事になれば、それこそ、大切なものを守る為に完璧な皇帝を演じるだろう。
悲しいと思えるほどにルルーシュはそれだけの能力がある。
それは、シュナイゼルの目から見てもカノンの目から見ても良く解る。
「カノン…」
「なんでしょうか?」
シュナイゼルが少し、何か思うところがある…と云う感じにカノンの名前を呼んだ。
それにカノンはすぐさま返事する。
「君は…ルルーシュが皇帝になる事は…反対かい?」
シュナイゼルの問い…。
それはカノン自身もかなり悩む種でもあった訳だが…。
カノンの中ではシュナイゼルが皇帝になることを前提にシュナイゼルに仕えて来ていた。
「私は…シュナイゼル殿下の御心に従うだけです…」

 カノンらしい返事だとシュナイゼルがふっと笑った。
「そうか…。私はやはり、ルルーシュを手放さない為に…ルルーシュを皇帝にしたいと考えているんだ…」
シュナイゼルのこの言葉…。
カノンも何となく解っていた。
だから、先ほどのシュナイゼルの返事にはウソが少し入っている事に対しての自覚はある。
「殿下がそうお考えでしたら…私は殿下のお言葉に従います…」
「有難う…。なら、相談に乗ってくれないかな…」
シュナイゼルは窓の方から目を離さずカノンに語りかけている。
カノンの心の中で様々な自分の中の未来図を変更しなければならないという思いが過って行く。
「なんなりと…」
「ルルーシュはきっと、皇帝になどなりたくないと思っているだろう。元々、そう云った野心を一切持ち合わせていないからね…」
「確かに…」
「だからね…ルルーシュを皇帝即位から逃げられない策を…施したいと思うんだ…」
シュナイゼルの言葉に、カノンが少し、驚いた表情を見せた。
ただ、シュナイゼルがそのカノンの表情の変化に気付いていたかどうかは解らないが…。
「既に…エリア11のロイドには連絡を入れてある。ロイドは既に動いているんだ…」
そう云った話を一番にして貰えなかった事に悔しさを覚えるカノンだったが…。
今はそんな事を考えている時ではない。
これは…シュナイゼルの望む未来を作れるかどうかの瀬戸際なのかもしれない…。
「ロイドが?」
「ああ、エリア11出のルルーシュの支持率はかなり高いからね…。総督交代となれば色々面倒な事にもなるし…。だから、ちょっとルルーシュの協力者であるイレヴン達を動かして貰おうと思ってね…」
その言葉に…なるほどと思った。
そして、カノンの役割は…
「私は…ナナリー殿下の確保…ですね…」
「察しがいいね…。ナナリーはルルーシュにとってのアキレス腱だ。ただ、手荒な事をする必要はないよ…。ナナリーを説得して欲しいんだ…。ルルーシュに皇帝になって貰えるように…彼女自身がルルーシュに皇帝になって欲しいと思って貰えるように…」
なるほどと思いながら、本当にルルーシュには甘いと思ってしまったカノンだ。
自身の気持ちも切ないが、なんだか、シュナイゼルのそんなルルーシュへの気持ちもなんだか切なく見える。
―――本当に…あの異母弟気味を愛していらっしゃるのですね…。
カノン自身、シュナイゼルに対してきっと、永遠に届かない思いがあるから、シュナイゼルのその思いも何となく理解出来てしまった。
ルルーシュ自身、シュナイゼルを慕っているし、大切に思っている事は事実だが…。
シュナイゼルがルルーシュへ馳せるその思いとは種類が違っている…。
そんなシュナイゼルを見ていて…カノンは否とは云えない…。
「イエス、ユア・ハイネス…。その御命令、承りました…」
「では、私これでラティスに向かう…。私達がブリタニアに帰って来るまでに…頼むよ?」
「では、私はエリア11へ向かいます…。どうぞ…御武運を…」
そう云ってカノンは部屋から出て行った。
そうして、シュナイゼルからの命令を果たすべく…頭をフル回転させるのであった…。

To Be Continued

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2011年01月14日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 08

恩着せがましい…偽善(あい) 4



 ルルーシュを探して…走り回っている…。
まだ…可能性はある…。
ちゃんと…お互いに冷静に話しをすれば…。
否、スザク自身はあの時点で冷静だった。
少なくともスザクはそう思っているが…。
ただ、焦りがあった事は…自覚があったかどうかは解らない。
「ルルーシュ…」
特派からの呼び出しなども完全に無視して、ルルーシュの行方を探しているが…。
ただ…もし、あのまま、『黒の騎士団』と合流していたら…と云う可能性を考えて、ずっと、ゲットー内を走り回っていたが…。
ただ、走り回っていたところで見付かる筈はない。
もし、ルルーシュが『黒の騎士団』と合流するつもりなら彼らのアジトへ向かう筈…。
今のところ、トウキョウ租界に駐留しているブリタニア軍が全力で捜索していても尻尾を掴ませていない状態だ。
うまく、住民の居住区に紛れていると思われる。
今のところ、シンジュクゲットー全体の掃討作戦を考えられている訳ではない。
それに、そんな動きがあれば、ルルーシュ自身、察知した時にアジトを変えてしまう事は解り切っている。
それに、今となっては、『黒の騎士団』を探す為にゲットー全体を捜索したところで多くの『イレヴン』が『黒の騎士団』に対して協力的だ。
それに、そんな力任せな事をしたら確実にあらゆる方面から抵抗運動が広まって行く事になる。
現在、エリア11は武力によって押さえ付けている状態だ。
日本人たちが本気でブリタニアに対して抵抗運動をするとするなら…その武力のみに訴える形ではこの先も…きっと、あの時の様な悲劇を繰り返すだけだと…スザクの中では思う。
だからこそ…ユーフェミアの『行政特区日本』に、ルルーシュも参加して欲しいと願っているのだが…。
もし…あの時の結果が違っていたなら…そう思う。
だからこそ、スザクはルルーシュを探す…。
―――ゲットーにはいないのか…
確かに…ルルーシュにとっては『ナナリーの為の『ゼロ』であり、ナナリーの為の『黒の騎士団』なのだ。
ナナリーにその存在を全否定された形となってしまった今…彼が『黒の騎士団』と合流する理由が見つからない。
と云うか、その存在意義そのものさえ見出せてはいないだろう。
そう考えた時…シンジュクゲットーからトウキョウ租界へと向かう方向を変えて行く…。
そして、日暮れのトウキョウ租界の街の中を探している…。
ユーフェミアの騎士がユーフェミアを放置したままこんな事をしていたら…最終的には解任されて降格させられても文句は言えない。
下手をしたら、特派ごと処罰対象にもなりかねない事でもある。
それでも…そんな事が解っていても、今のスザクはルルーシュを探す事しか頭になかった。
そして…漸くルルーシュの姿を見つけたと思い…近付こうとした時…。
下を向いているルルーシュに近付く影を見つける…。
それは…
―――シュナイゼル…
スザクの中で様々な可能性が過って行き…その中で一番的確であろう可能性が頭の中を支配した。
―――そうか…僕がここにいるのは…。
そんな事を思いながらも近付く事が出来ず…そして…ルルーシュは…シュナイゼルの腕の中に包まれたその光景を目にする事となる…。
―――ルルーシュ…
そう思った時…シュナイゼルがこちらに気づいたのか…にやりと笑った瞳をスザクに向けていた。

 シュナイゼルがルルーシュを抱きしめながら…スザクの姿を認め、そして、計算通りだと思う…。
この姿だけを見ていれば、ルルーシュがシュナイゼルに心を許したと思っても仕方ないし、そう思わせるには絶好の光景だろう。
―――ふっ…君は本当に扱い易いね…。これからは…私のそれまでの無念を思い知って貰おう…。今の君は『ゼロ』ではないのだから…。ルルーシュの『ギアス』は私には通用しなくなった…。
シュナイゼルがそう思って、スザクから目を離し、そして、ルルーシュを更に強く抱きしめる。
「異母兄上…これは…一体何の真似です…」
ルルーシュが静かにシュナイゼルに訊ねてきた。
シュナイゼルのこの行動は本当に訳が解らないと云っている感じだが…。
解らなくて当然だとも思える。
シュナイゼルは未来の記憶を持ち、そして、スザクも未来の記憶を持つ。
その未来を変えるべく、ルルーシュを翻弄している状態だ。
記憶を持つ二人が同じ方向を見ているのであれば、ルルーシュがこれほど苦しむ事はなかっただろうが…。
シュナイゼルはそんな自分の底意地の悪さに自分を嘲笑してしまう。
大切なのに…。
愛しているのに…。
否、その気持ちが大き過ぎるが故に、その大切なものが傷つくとしても手に入れたいと思うのか…。
確かに、今のルルーシュは確実に傷ついているし、シュナイゼルの言葉に憤りを通り越して怒りさえ抱いているだろう。
スザクの考える未来の変更の為に傷ついているルルーシュに対してだからこそ、こんな形でルルーシュを手に入れようと考えられるのだ。
そうでなければ…。
ルルーシュの精神状態がいつもの通りであれば…こんな言葉に乗って来る事などまずあり得ない。
『ナナリーを盾にする』との言葉に対して、確実に『必ず俺が守る!』と云い放って行くに違いないのだ。
その辺りも計算づくでやっている自分の底意地の悪さはどこまでも嘲笑に値する。
「ルルーシュ…君は…一体何を望んでいるんだい?ルルーシュ…君が私の傍にいてくれると云うのなら…ルルーシュの望むものを全て手に入れよう…。そして、それは君が私の傍にいる代償として君に差し上げよう。だから…私の許へ帰ってきておくれ…」
「俺がそんな…」
「受けるよ…君は…。ナナリーとユフィの騎士の安全がかかっていると思えば…」
「!!」
どこまでもルルーシュの神経を逆なでしていると云う自覚はあるが…。
勿論、ルルーシュがシュナイゼルの許に来ると云うのならそんな二人の事などどうでもいい…。
「知っているかな?彼の乗っている『ランスロット』は私の管轄下にあるんだよ?」
ルルーシュがその言葉に奥歯を強くかみしめている事が解る。
まだまだ…ルルーシュは初々しさを残していると…シュナイゼルはらしくもなく嬉しくなっている事に気付く。
そう…ルルーシュは頭がいいから自分がどのような選択をすればどのような可能性が発生するかをきちんと考えている。
ぐっと握り拳を作っている事が解る。
確かに…敵であるシュナイゼルの許へ…と云う事になれば…プライドの高いルルーシュの事だ…。
物理的な躊躇もあるし、精神的な拒否もあるだろう。
それでも…
「解りました…異母兄上…」
そのルルーシュの返事にシュナイゼルが満足そうに微笑んだ。

 その後…シンジュクゲットー内は日を追う毎に変化を見せ始めていた。
当然と云えば当然だろう。
これまで司令塔の役割、物資の調達などの殆どをルルーシュが担っていた組織だ。
ルルーシュを失った時点でタダの烏合の衆になるのは当然だ。
「そう云えば…コーネリアもそんな様な事を云っていたね…」
執務室でシュナイゼルがぼそりと呟いた。
本当にルルーシュ一人の力で支えられていた事が良く解る。
『キョウト六家』が『黒の騎士団』の援助をしていると云う噂を聞いた事があったが…『ゼロ』が姿を消した事でその話しも宙ぶらりんになっている事であろうことは簡単に予想がつく。
そして、シュナイゼルのその予想は本当に外してはいなかった。

 ルルーシュが用意した『黒の騎士団』のアジトでは…
「おい!『ゼロ』はどうしたんだ…」
玉城が怒鳴り声を上げる。
普段から短気な性格をしているから誰も驚きはしないが、ただ、ユーフェミアが『行政特区日本』の設立を発表した事と、『ゼロ』が姿を消した事で内部が混乱するのは至極当たり前の事であった。
「扇さん…これから…私達…どうしたら…」
「『ゼロ』は…一体どこへ行ったんだ…。こう云った決断は…」
「扇…お前…本当は『行政特区日本』に参加したいんじゃないのか?」
杉山がそう、扇に声をかけて来る。
彼らがゲットー内で小規模なレジスタンス活動をしていた頃から…扇がこうした戦いに身を投じる事は向いていないと解っていたからだ。
そして、今でも戦わずに済むのなら…と云う思いがある事も容易に想像がつく。
杉山のその一言に扇が図星だと云う表情を見せる。
「元々、俺達の活動が実ってここまで譲歩を引き出せたんだ…。そう考えれば…」
この場にいるメンバーがその一言で黙ってしまう。
ただ…『ゼロ』であれば、きっと、このようなこちらもかなりの譲歩をしなければならない政策に対して『是』と云うか…考えた時には…。
あの発表から数日が経つ。
本当ならこんな重要な時に姿を表さないと云う事を考えた時…。
様々な形で嫌な想像も出て来るものだ。
「でも…これって…」
カレンが何か訝しむように扇たちがユーフェミアの発言に傾倒していきそうな雰囲気に水を刺そうとするが…。
「元々は俺達が活動していたところに『ゼロ』が入ってきただけの事じゃねぇか…。ここまで来たのは俺達の力だろ?」
玉城のその言葉に…カレンはそれ以上言葉を出さなかったが…それでも、不安げなその表情は変わらない。
「紅月君…。『ゼロ』が不在の今…時間を無駄にする事は出来ない。もし、あの言葉が本当であれば、我々が反対する理由もない…。いよいよとなったら『キョウト六家』に指示を仰ごう…。我々に…あの言葉の真偽と真意を見極められるだけの材料が何もない…」
どうしたらいいか解らないと云うカレンに藤堂がそう声をかけた。
そう…。
まだ、あの言葉の真偽も真意も解っていないのだ。
確かにブリタニア帝国の第三皇女、ユーフェミア=リ=ブリタニアは慈愛の姫として知られているし、ナンバーズであるスザクを騎士にしている様な人物だ。
ただ…個人としてナンバーズに対しての差別はなくとも、植民エリアのナンバーズを差別し、搾取して行くのはブリタニアの国是だ。
個人でその方針を変えて行く事など出来ない事は自明の理だし、彼女の姉姫であるコーネリアはブリタニア人はブリタニア人、ナンバーズはナンバーズとはっきり分ける政策で現在のエリア11を治めている。
そんな中でユーフェミアの言葉だけでそのまま『行政特区日本』を受け入れてしまっていいのかは…正直解らない。
ただ、カレンも藤堂も…そうは思っていても、もし、『ゼロ』でなくとも『キョウト六家』の判断が『行政特区日本』への協力を示唆したら…そちらに傾いてしまう事は恐らく…逃れられない程度には…期待もしていたのだ。
ルルーシュの知らないところで…『黒の騎士団』自体が…『行政特区日本』と云う言葉に傾倒していく事となった…。

 そう云った周囲の動きを知らないまま、ルルーシュはシュナイゼルに連れられて、シュナイゼルのこのエリアでの居住区である屋敷に連れて来られていた。
「ルルーシュ…そんな風に不安そうな顔をしないでおくれ…。私は不必要なウソは吐かないよ?」
確かに…シュナイゼルは戦略的にウソを吐く…。
基本的に自分のやるべき事を成就させる為にウソを吐く。
その為には自身の云っている事がウソだとばれてしまっては元も子もないのだ。
だから…いつも計算の上でウソを吐く…。
―――ルルーシュはまだ…そう云った事がうまく使いこなせていないようだけれどね…。
真っ直ぐに自分の大切な存在を守ろうとするその姿を見ているとそう思えて来てしまう。
今は別に…ここにいてくれればそれでいい…。
一緒にいれば…必ずルルーシュの心を自分に向けさせる努力は惜しまないつもりだ。
あの、未来の世界でルルーシュを裏切った者達…。
あんな連中にこれ以上ルルーシュを踏みにじられる事は絶対に許せなかった…。
未来を知るからこそ…思う事なのだが…。
そして、シュナイゼルは今、このエリア11に関わっている存在全てを憎んでいると云ってもいいくらいなのだ…。
そう…ルルーシュを除いては…。
「異母兄上…貴方が俺に固執する理由が解りませんが…。確かに…あのブリタニアにいた頃には…俺は貴方に憧れていたし、いつもあなたの背中を見ていた…。でも…」
「そう…君はいつも私を見ていてくれた…。そして、私も君を見ていたんだよ?私は自分にとって興味のない者に対しては頭の片隅にも残しておく事はしないが…君はいつも私の心の中も頭の中もずっと…支配し続けていたんだよ?」
ここにウソ偽りなどないのだが…。
普段が普段なのでどこまで信用して貰えるかなど解ったものではない。
「俺は…貴方に一度も勝てた事がなかった…。だから俺は…」
「そうだね…。私に挑んで来る者はいたが、いつも私に対して負けを認めてしまうと誰も私と勝負しようと思ってくれなくなってしまってね…。だから…私にとっては君は特別だ…。君には君にとっての特別な存在がいるから…解るだろう?そう云う気持ちは…」
口で負けるとは思っていないし、ここで口で勝負するつもりもないのだけれど…。
ただ、訊ねられる事に対して返答しているとこんな形になってしまう。
「貴方の中に…そんな感情があったなんて…知りませんでしたよ…」
「おやおや…私だって人間だ…。ちゃんと喜怒哀楽は持っているよ?ただ、立場上…中々君の前でこんな風に接するように…自分の感情に素直になれるところが…中々なくてね…。でも…」
シュナイゼルがそこまで云った時…ルルーシュの頬に手を添える。
その動きにルルーシュは身体をビクリとさせた。
「ルルーシュ…君の前では…何故かな…。君に対して意地の悪い事も云えるし、こんな形で我儘も云える…。ずっと…会いたかった…ルルーシュ…」
そう云いながら…シュナイゼルがルルーシュの唇にそっと…キスをする…。
「!」

 流石にルルーシュも驚いたのか…。
目を見開いて、身動き一つ取れない状態となったようだ。
「ルルーシュ…」
ルルーシュの名前を呼ぶシュナイゼルのその瞳は…本当に愛おしい者を見る…それだった。
ルルーシュには全く信じられない…と云うこの…目に映されている現実…。
「ルルーシュ…愛しているよ…。もう…これで私の傍から放したりしないよ…」
そう、ルルーシュに云っているシュナイゼルの顔は…。
ルルーシュがまだ、ブリタニアの王宮で暮らしていた頃…ルルーシュに向けられていたその優しい表情…。
否…それとももっと違った…もっと深い思いを含んだ表情をしている。
「は…放して…下さい…」
ルルーシュがシュナイゼルのその表情から逃れようと顔を背けるが…。
でも、そのルルーシュに向けられているその視線…否、シュナイゼルのその醸し出しているそのオーラは…。
ルルーシュを本当に優しく包んでいる様な…そんな風に感じる。
そのルルーシュを取り巻いている空気が…ルルーシュの動きを封じ込めている。
それをいい事に…シュナイゼルがルルーシュの身体をそっと抱きあげる。
その動きにルルーシュも流石に驚いてその腕から逃れようと暴れ始める。
「下ろして下さい!俺は…帰りますから…」
ルルーシュが暴れているにも拘らず、シュナイゼルはルルーシュを落とすどころか、ピクリともしない。
頭脳プレイ専門だと思っていたのに…どこにそんな力があるのかと…そんな事を思ってしまう…。
「放さないと云っただろう?ルルーシュ…。君は…私の傍にいるんだ…これから…ずっと…」
そのシュナイゼルの真剣な瞳にルルーシュは押し黙ってしまう。
結局、成されるがまま…運ばれていく…。
そこは…
「あ…異母兄上…」
「ルルーシュ…今は…ゆっくりお休み…。君が目覚めた時には…全てを終わらせておくからね…。その後は…私と一緒に混乱した世界を…『優しい世界』に変えて行こう…」
シュナイゼルは心の中で続ける…。
―――君にとって…『優しい世界』に…ね…。
と…。
しかし、それはルルーシュには届いていない思い…。
だから…ルルーシュはその『優しい世界』と云う言葉に反応した。
「優しい…世界…」
「そう…『優しい世界』にね…」
その信じられないほど優しい光を称えているその瞳に…ルルーシュはベッドに下ろされながら…そっと目を瞑った。
その姿に…シュナイゼルはほっと胸を撫で下ろす。
そして、それと同時に心の中でふっと笑った。
一緒にこの世界に連れてきた…枢木スザクの手には…もう、ルルーシュは戻らない…と…。
そう思った時…ルルーシュがすぅ…と眠りについた事を確認した。
それと同時に…背中に気配を感じた。
「お前…こんな能力を持ったのか…」
その声にシュナイゼルが少しだけ後ろに視線を向けるように顔を動かして、恐ろしく冷たい目でその魔女に返した。
「これほど…私にとって有難い能力はないよ…。私はこれまで、何かに対して感謝をした事がなかったが…。柄にもなく、君に感謝してしまったよ…C.C.…」
シュナイゼルのその言葉に…C.C.はただ…にやりと笑って…姿を消した…。

To Be Continued

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