2010年04月07日

騎士皇子シリーズ 9

ひなたぼっこ



 年若いながら…
政略、戦略については、母君であるマリアンヌ皇妃のお陰もあるのか…
非常に優秀な結果を残している。
本当は遊びたい盛りだ。
普通の17歳の少年なら…
両親の存在が鬱陶しくなり、
その言葉はしっかりシカトをぶっこく様な…
そんなお年頃だ。
しかし…
生まれた場所の環境でここまで非凡な少年時代を送っている。
救いは…
ルルーシュ皇子が自ら選び、滅多に云わない我儘を云って任命した…
枢木スザク卿の存在だろう。
ルルーシュ皇子は、母君であるマリアンヌ皇妃の方針で、時々、お付きの者を付けているけれど…
城下町を歩かせて、庶民の生活と云うものに触れさせている。
そんな中で出会ったのが枢木卿だった。
その頃の枢木卿はブリタニアに留学に来ていた学生だった。
そして、日本国首相の嫡男で、日本の権威をになっている皇家と所縁が深い家柄だと云う。
そんな相手に対してルルーシュ皇子は我儘を云ったのだ。
それは…
日本にとって様々な波紋を呼ぶこととなったが…
それでも、その時のルルーシュ皇子を見て、枢木卿は自分からルルーシュ皇子の騎士になると云う決意表明をした。
今にして思えば、
―――相当強引な事をしている…
と、誰もが認めるところだろう。
当時だっていろいろ問題になったし、ルルーシュ自身、日本人の組織に誘拐された事だってある。
ルルーシュ皇子自身の環境も…
相当複雑な状況と云えるのだけれど。
それは、まぁ、お互い様…と云うことなのだ。
そして、現在…
この二人が組んだ作戦に関しては、全勝していると云う快挙が続いている。
そんなだから、異母兄君であるシュナイゼル皇子もまだ、年若いルルーシュ皇子にそこまでの無理を強いることを望んでいるわけではないけれど…
それでも、前線ではルルーシュ皇子と枢木卿の力を求められる事も多くなっている。
それは、実力を発揮した者の定め…
生きるためには仕方ないとは云え…
本当はこんな子供達を戦場や政争の場に立たせるなどしたくないと思う大人もいる。
数は少なくとも…
一人一人のその思いはとても強いものだ。
マリアンヌ皇妃が自分の立場を自覚していたし…
ルルーシュ皇子も、本人が望むと望まざると…
そのことを思い知らされて来ていた。
だから、ルルーシュ皇子は他の皇子や皇女と比べ
『我儘を云わない皇子』
と評されていた。
だからこそ…
枢木卿の件では一つ間違えれば…
ブリタニアと日本の外交関係にも影響しかねない問題になるかもしれない…
そんな事実があったにもかかわらず
『僕の騎士は…彼だけだ!』
そう云って引かなかった。
流石にブリタニアの皇族であるとは云え…
両国間の外交に関わる者たちは非常に困っただろう。
それでも、ルルーシュ皇子に好意を抱いている優秀な異母兄姉達の尽力もあり、彼の望みは叶えられた。
枢木卿も…
ルルーシュ皇子と離れたくないと云い張り、普段は枢木卿をおもちゃにしていて…
少々、苛めの入っていそうな従妹、皇神楽耶姫にも尽力をして貰ったのだ。
こうして…二人の我儘が叶えられた。
その時、彼らの尽力をした者たちは…
彼らがこれほどまで優秀なコンビであるとは…
その時にはある一部の人間を除いては誰も気づかなかった…

 そんな状態だから、ルルーシュ皇子たちは忙しい日々を送ることになるのだけれど…
しかし、彼らだって人間…
と云うか、ルルーシュ皇子に関しては完全に人並みの体力があるとは云えない。
恐らく、人並み外れた頭脳に全ての才能を持って行かれてしまったのかもしれないと思えるほど…
その分、枢木卿が体力バカを発揮しているのだが…
それ故に二人がコンビを組んだ時には信じられない力を発揮している…
表向きの彼らだけを見ている者たちはそう考えていた。
しかし
確かにその部分は否定はしないが…
彼らのコンビがこれほど優秀に働くのにはもっと違う部分にある。
それを履き違えて、二人をばらばらの部隊に配属させて戦場に立たせたある貴族出身の指揮官がいた。
その時彼らは…
考えているような結果を出さなかった。
と云うか、出せなかった。
それをルルーシュ皇子や枢木卿を責めた将軍もいたが…
それは、勝手な思い込みで二人を別々の部隊に配属させた方が悪い。
見る目がある者たちは誰もが思った。
機械とは違うのだ。
二人コンビを組めば、2倍以上の力を発揮するかもしれない。
しかし、バラバラにしてしまったら…
確実に一人前の力を発揮する事も出来ない事もある。
それは、二人の少年達が誰とも変わらない『人間』であると云う証明だった。
それを理解できなかった者は…
その時から何年も経っていると云うのに…
今でもくどくどとその事を論う。
ルルーシュ皇子自身、それについては
『僕がちゃんと力を発揮出来なかったことが原因だ…』
と、潔過ぎる言葉を返す。
枢木卿も
『俺がちゃんと出来なかったから…それで、その方の出世が遅れたと云うなら、俺に責任がある…』
と、日本男児らしい潔さを見せる。
そのお陰で、二人の評価は更に上げることとなり…
その時に謝った配置をした者は…
自分の年齢の半分も生きていない少年達に未だに過去のことをくどくど言って…
自分の評価を下げ続けているわけだけれど…
そんな器の違いを見せてしまった為、
今ではルルーシュ皇子が総指揮官、
枢木卿が前線の総責任者…
などと云う事も出て来るようになってしまい…
そうやって、過去の二人についてただの八つ当たりに近い様な云いがかりを付けていた貴族は…
年若い二人の指揮下に入ることとなっている。
まぁ、この二人に関しては…
そう云ったエピソードは結構あるので、割愛しよう。
ただ…
それだけ有能だと云ったところで…
二人はまだ、10代の少年たち…
そんな大人たちのヤッカミを受け続け、神経をすり減らすのは辛いものがある。
全てを受け止めるような真似はしていない。
しかし、全てをスルーする術はまだ知らない。
だから…
時々与えられる休みには…
二人きりでのんびり…
と云うことも多い。
と云うか、最近ではそればかりだ。
妹姫のナナリー皇女は
『私だって…お兄様と…』
そんな事を云うのだけれど…
二人に与えられる休みと云うのは非常に少ない。
だから…
マリアンヌ皇妃は
『ナナリー…もう少し待ってお上げなさい…。もう少し、ルルーシュが大人になれば…ルルーシュ自身ももう少し、上手に立ちまわれるようになりますからね…』
妹姫の我儘をそっと諭し続けている。

 マリアンヌ皇妃がナナリー皇女に諭している頃…
ルルーシュ皇子と枢木卿は…
今は使われていない…
殆ど廃墟に近い様な離宮跡の中庭…
普通の皇族ならこんなところには来ることはない。
廃墟に近いとは云っても、王宮内にある離宮だ。
一応…庭の手入れなどはされている。
中に入ることはできない。
いつ、この離宮に誰かが入る事になるか解らないから…
でも、庭に入ることはできる。
そして…
見つかると恐らく、すぐに出て行くように言われてしまうかもしれないけれど…
二人で良く、そこの中庭に忍び込む。
忍び込んで、ただ…時を過ごしている。
話しをしている事もある。
ただ、そこにいてぼぉーっとしている事もある。
手入れされた芝生の上で寝転がって空を見ている事もある。
空を見ている内に二人して眠ってしまう事もある。
その離宮の手入れをしている庭師やメイドたちは最近ではいつものことと据えている。
それでも、放っておくわけにもいかず、必ず声をかけてから、自分の仕事をし始める。
二人がどこから忍び込んでいるのか…
全員解っているけれど。
でも、彼らは貴族や皇族ではない。
マリアンヌ皇妃を支持する平民だ。
それ故に云うだけは云って…
後は自分たちの仕事をして、去っていく。
ルルーシュ皇子の評判は彼らも知っている。
年若いながら…
神聖ブリタニア帝国宰相である、第二皇子、シュナイゼル皇子のお気に入りで、有能な文官…
普通なら、こんなところに忍び込んで…
などと、最初は考えられなかった。
でも、彼らがここで、息を抜いている。
緊張が続いているであろう、少年たち…。
いつしか、彼らが管理している、主のない離宮に…
誰も入って来ない事を祈ってしまう。
―――それが罪であったとしても…
王宮内にある、皇帝の后の為の離宮なのだから…
皇帝が新しい妃を迎え、この離宮を与えると…
そう云った時点で、ここは彼らの憩いの場とはならなくなる。
彼らが…きっと…
―――子供の顔に戻れる…数少ない場所なのに…
最近ではルルーシュ皇子も枢木卿も
『これは口止め料だ!』
そう云って、ここの管理をしている者たちに菓子を持ってくるようになった。
普通なら、平民の彼らが口にする事の出来ない様な…上品な菓子を…
最初は
『そんな恐れ多い…』
と驚いていたものの…
『黙っていて下さい。お願いします…』
ルルーシュ皇子が菓子を押しつけた後、枢木卿がそう云って頭を下げる。
彼らは
―――別にそんな事をしなくても、云いやしませんから…
と云う思いはあるのだけれど…
ここなら、危険な目に会う事も基本的にはない。
こんな、王宮のはずれにある離宮に足を運ぶ皇族はいないし、主のいない離宮に立ち寄る貴族もいない。
何より、ルルーシュ皇子の騎士である、枢木卿がルルーシュ皇子に傷を負わせるような真似はしないと思われる。
ルルーシュ皇子が自ら望んだその騎士は…
これまで彼らが見て来た皇族の騎士たちの中でも、ずば抜けた強さだったから。
『大丈夫ですよ…殿下…。我々は誰にも云ったりしませんから…』
そう、責任者の男が云った時…
二人が少しだけ安心したような表情を見せた。
『ありがとう…。じゃあ、これ、持って来てしまったから…休憩のときにでも食べてくれ…』
と、結局、買収に使おうとした菓子は彼らの手に渡り、休憩時間に彼らの腹の中に入るのだった。

 そんなことが、今でも続いている。
ルルーシュ皇子と枢木卿は…
今でも人数分の菓子を手にここにやってくる。
数少ない休みの日にだけ…
ここの管理は毎日施される。
いつ、新しい主を迎える事になってもいいように…
本当に時々しか訪れる事が出来ない彼らを、痛々しく思わないわけではないけれど…
今日も、その時間が来て、その離宮に入って行くと…
中庭のいつもの場所で、二人が横になって眠っていた。
春の日差しと風が心地よさそうだ。
「ここは後でいい…」
管理責任者の男がそう云って、仕事の割り振りを変更する。
ここが彼らにとって居心地のいい場所であることは…
いつの間にか彼らの中で誇りとなっていた。
高貴な貴族や皇族は決してここには来ない。
だからこそ、二人がここを選んだに違いない。
庶民での母君を持つ皇子と、外国人の騎士…
このブリタニアの王宮で暮らすには聊か居心地がいいとは云えないだろう。
解ってはいるけれど…
でも、この二人だから、彼らもこんな風に、見守ってやりたくなるのかもしれない。
こんなところが居心地がいい…
確かに彼らにとっては誇りなのかもしれないけれど…
でも、当人たちは本当にあの皇族、貴族に囲まれる生活が辛いのかもしれない。
ルルーシュ皇子は…
自分の立場をよく理解していた。
そして、妹姫には、そんな思いをさせまいと…
大人の目から見て
『そんな頑張り方をしなくていいんだよ…』
と…
否、
『そんな頑張り方をしちゃいけないんだよ…』
と云ってやりたくなる。
ナナリー皇女だって、今はまだ、マリアンヌ皇妃が生きていて、その地位もあるから…
ただ守られていればいいけれど…
いずれ、大人になって行けば…
彼女自身、このブリタニアの皇族の責務と義務と役割を背負わなくてはならなくなる。
ルルーシュ皇子は、今のナナリー皇女の年齢の時には前線に立っていたのだ。
そう考えると…
ルルーシュ皇子を心配する者たちは心を痛める。
それでも…
救いがあるから…
彼が、
我儘を決して云わなかった彼が…
自ら選んだ騎士…枢木スザク卿の存在…
いつもここに来るときは、枢木卿と一緒だ。
二人の姿を、微笑ましいと思いながら見つめている。
二人の強い絆を見ていると、何故か安心している。
二人とも、本当に優しくて、強い心を持っているのだろう。
そんなことがよく解る。
だからこそ、自分で背負いこみ、辛くなる。
辛くなっても、支えがあると云うのは心強いのだろう。
ルルーシュ皇子もいずれ、専任騎士を選ばなくてはならなかった。
貴族の中から推薦されて…と云う事だったら…
こんな風に心を通わせていたのか解らない。
本気でそんな風に思えるような…
二人の寝顔…
二人の隣にはルルーシュ皇子曰く『口止め料』である菓子が入ったバスケットが置かれていた。
いつも、見た事もない様な菓子を持って来て貰って…
休憩時間には歓声が上がっている。
庶民では口にする事の出来ない、皇族が口にする菓子なのだ。
当然と云えば…当然だ。
ここの管理をしている者たちは…
彼らの眠りの妨げにならない様に作業を始めていた。

 そして…
ルルーシュ皇子と枢木卿が目を醒ます頃…
作業の残りが、彼らの眠っていた一角だけとなった。
「ん…」
先に目を醒ましたのは枢木卿…
これはいつも通りだ。
そして、むくりと起き上がり、少しずつ覚醒し始めているルルーシュ皇子の肩を揺さぶった。
「ルルーシュ…ルルーシュ…」
どうやら、周囲でこの場所があくのを待っている人々がいる事に気づいたようだ。
そんな枢木卿の姿を見て…
「あ、よろしいですよ…。もう少し、眠らせて差し上げて下さい。我々の事は気になさらず…。折角のいい天気ですし…」
ここの作業の責任者の男がそう笑いながら云った。
しかし、枢木卿は横に首を振った。
「いえ…皆さんのお邪魔をしているわけですし、それに、殿下も…こんな時間にあんまり眠ってしまうと…夜、眠れなくなってしまいますから…」
そう云って、枢木卿は再びルルーシュ皇子を起こそうと努力する。
「ん…なんだ…スザク…。あと5分…」
ルルーシュ皇子が寝ぼけた状態でそんな事を云う。
恐らく、枢木卿を見ているとは思えないし、この状況でどこまで枢木卿の声を判別できるのかが疑問だ。
それでも、ルルーシュ皇子を起こす役割は枢木卿…
それを示しているような光景だ。
余程気持ちよく眠っていたようだ。
「殿下…殿下…」
枢木卿は寝ぼけていなければルルーシュ皇子を『殿下』と呼んで返事はしない事をしている。
だから、ここで本当に眠っているのか、タヌキ寝入りなのかを確かめる。
解っていて、ルルーシュ皇子は枢木卿に『殿下』と呼ばれることを嫌うので…
確実に確かめられるのだ。
「だから…あと5分…」
そのルルーシュ皇子の一言に…
枢木卿は脱力する。
ひなたぼっこをしている内に眠ってしまい…
そして、ここの管理をしている人々に迷惑をかけている始末。
枢木卿は少し考え込む。
「枢木卿…なんなら、ここは明日にしますから…」
これほど気持ちよさそうに眠って、目を覚まそうとしないルルーシュ皇子を見ていて…
流石に無理に起こすのは気の毒だと思ったのだろう。
「でも…」
枢木卿はやはり彼らの事は気になるけれど…
ルルーシュ皇子の事も気になっている様子で…
少々歯切れ悪く言葉を口にする。
「誰も住んでいないこの離宮…。毎日手入れをしているんですから…大丈夫です。それに、今日、突然どなたかが入られるとなっても、大丈夫ですよ。我々が叱られればいい事です…」
にこりと笑って、別にかまいませんよ…と答える。
周囲にいた庭師やメイドたちもそんな表情だ。
「すみません…。何かあった時には…これを…」
そう云って、ルルーシュ皇子の印章を押した紙を一枚、渡した。
こうしておけば…彼らに全責任が向けられることはなくなる。
その代わり…この憩いの場所はなくなる。
「別に…こんなものはいりませんよ…。我々も殿下の持ってきて下さるお菓子を楽しみにしているんですから…」
そう云いながらその紙を破いてごみ入れに使っている袋に入れてしまった。
枢木卿は『申し訳ありません』そう云って頭を下げた。
そして、彼らにバスケットを渡し、彼らを見送った…
彼らの姿が見えなくなった時…眠っているルルーシュ皇子にこう告げた。
「今度来るときは…もっと、沢山、美味しいお菓子を作れよ?ルルーシュ…」

END


あとがきに代えて



久しぶりの『騎士皇子シリーズ』
ひょっとしたら、このブログで読むのは初めて…と云う方もいらっしゃるかも知れません。
でも、この話は、結構以前から書いているものだったりします。
数は少ないですが…
かつて、拍手ページ読破して下さった方で『キーワード』を送って頂いた方にはぇろ作品をお送りしていたのですが…
その中で一度、このカップルでぇろ書いております。
殆どの方は知りません。
実際に、キーワードを送って下さった方が非常に少なかったので…
今はその企画…やめちゃいましたけどね…。
やっていても送って下さる方がいないので、書くだけ無駄になることが多いので…
あまりに少なかったので、オフラインのコピー本で掲載したほどです。
まぁ、そんなことはともかく…
この騎士皇子…戦闘シーンがないので安心して書けます。
まぁ、書き始めた頃、それこそ、『皇子とレジスタンス』を書き始める前だったと思います。
ひたすら甘っちょろい騎士皇子を目指しておりまして…
ただ、定期的に掲載していなかったので…回数は非常に少ないんです。
また、反応を見て、もっと頻繁に書こうかどうかを決めます。
既に忘れ去られていそうなシリーズものもありますしね…
すこし、『Amethyst Eyes』の方も整理しようかなぁ…
結構ごちゃごちゃして来たので…

あと、今回のリクエスト企画、
リクの数はホント、心優しい方々がお一人で幾つも送って下さり、まぁ、時間的には1ヶ月くらい持ちそうな感じになりました。
ただ、人数が少ないので、現在、リクを送って下さった方にはスペシャル企画をしたいと思います。
いずれ、また告知すると思いますが、フリーメールでいいので、和泉に教えてもいいぞ!と云うメアドをご用意ください。
リクエスト企画が終わりましたら、そのメアドを教えて下さい。
今回、ごちゃごちゃした中でリクを下さった方へのお礼企画です。
これから…
送って下さった方にはこのお礼企画の対象とさせて頂きます。
宜しくお願いします。


☆拍手のお返事


紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
連載もの…そんなに楽しんで頂けてホント、光栄です。
ちゃんと完結させますので…これからも楽しんで頂ければ幸いです。

『騎士皇子シリーズ』
色々ごちゃごちゃしすぎて…
書いている本人が、書いている最中にスクランブルに陥りそうになるのですが…(←ダメじゃん)
やっぱり、この話は暴走するルルーシュを止めようと頑張る騎士二人…
そして、命知らずな事ばかり考える無茶ぶり皇子のお話なので…
今回は星刻も曲者で出しているので…
色々めんどくさい事を考えてくれまして…ヾ(▽^;)ゞうへへ
書いている方が相当大変な思いをしている訳ですが…
まぁ、監視だらけの状態なので、そうそう誰かに相談して…という事も難しいでしょうし…
どこまで、濃い話しに出来るか…
頑張ります!

『幼馴染シリーズ』
ゼロに関しては…
あまり悪役にするつもりはないんですよ。
少々悲しみを背負っていると云うのはありますけれど…
マオを付けたのもそのためですし…
ゼロ自身、自分の生い立ちを知っているので、自分の貢献をしてくれている老人たちと思いは違います。
ただ、色々な駆け引きをしている真っ最中という感じです。
あと、ルルーシュ…
まぁ、過去のスザクの事を考えれば、ある意味仕方ないんですが…
うちのルルーシュ…いつも犯罪的な鈍感なので…
スザクに頑張って貰いましょう!
邪魔する人たちはいっぱいいると思いますが…(笑)

『It's Desitny』
シュナ兄…
やっぱり黒くないと…こういう話では…(笑)
まぁ、元々、ルルーシュとスザクが幸せになれるかどうかのカギは…(ルルーシュにとっての)敵のポジションに立つシュナ兄にかかっていますしね…
マオ自身は、まっすぐ過ぎて少々かわいそうな気がしますけれど…
でも、ここまでかわいそうなキャラになっているので、ちゃんと救いは作ろうと思います。
スザク…
ホントにお兄さんですね(笑)
ルルーシュが違和感を抱いてちょっと困っている姿はちょっと好きかも知れません。
前世の事を知って、二人はどうこたえを出すのか…
そして、どう歩んでいくのか…
ぜひとも温かい目で見守ってやって下さい。

『僕は…君が為に裏切り続ける…』
これは…毎回ご無沙汰になっちゃって申し訳ないんですが…
やはり、気になりますか…
『ゼロ』の正体…
まぁ、意外と、『なんだ…そこに行くのか…』とおもわれるか、『え?そうだったの?』と思われるか…
ユーフェミアとの会話で少しずつ解ってきそうな感じなので、でも、確信が持てない…と云った感じでしょうか?
多分、これからの話の展開上、少々強引な感じもしない訳じゃないんですが…
楽しみにして頂けると幸いです。

いつも、励ましのお言葉、そして、お気遣い、有難う御座居ます。
これからも、紫翆さまのご期待に添えるように頑張って参ります。
暖かくなったり、寒くなったりと…体調管理が難しい時期ですので、体調を崩されないようにお気を付け下さい。

まりもこさま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
色々、ご指摘、御助言、有難う御座居ます。
色々工夫をしようと思うのですが…
どうにもこうした長文の書き方に関してはまだまだ、勉強しなくてはならない事が多くて…
オフラインの場合、
あまり短い文できってしまうとかえって読みにくくなるんですよね…。
携帯やパソコン(特にブログ)は短い文章を開業した方が読みやすいと思いますが…
その辺りはもう少し和泉自身勉強しなくてはならない部分です。
だから、ウェブ再録の作品のオフラインで、小説本の中には非常に読みにくいものもあります。
というのも、オンライン仕様の書き方でそのままオフラインにしているからです。
オフラインでも長い文章の句読点がいくつも付くのは非常に読みにくいです。
その辺りは本当に難しいです。
和泉自身、どちら仕様で書いているのか…正直解らないんですけれど…
ただ、和泉も『皇子とレジスタンス』はオフラインにしているんですが…
そのままオフライン原稿にすると凄く読みにくいんです。
このあたりは、和泉も勉強したいと思います。
色々御助言、お気遣い、有難う御座居ました。
また、何かありましたらコメントで色々指摘してやって下さい。
こうした形で具体的にご指摘いただく事は大歓迎です。
これからもよろしくお願いします。




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posted by 和泉綾 at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

騎士皇子シリーズ 9

ひなたぼっこ



 年若いながら…
政略、戦略については、母君であるマリアンヌ皇妃のお陰もあるのか…
非常に優秀な結果を残している。
本当は遊びたい盛りだ。
普通の17歳の少年なら…
両親の存在が鬱陶しくなり、
その言葉はしっかりシカトをぶっこく様な…
そんなお年頃だ。
しかし…
生まれた場所の環境でここまで非凡な少年時代を送っている。
救いは…
ルルーシュ皇子が自ら選び、滅多に云わない我儘を云って任命した…
枢木スザク卿の存在だろう。
ルルーシュ皇子は、母君であるマリアンヌ皇妃の方針で、時々、お付きの者を付けているけれど…
城下町を歩かせて、庶民の生活と云うものに触れさせている。
そんな中で出会ったのが枢木卿だった。
その頃の枢木卿はブリタニアに留学に来ていた学生だった。
そして、日本国首相の嫡男で、日本の権威をになっている皇家と所縁が深い家柄だと云う。
そんな相手に対してルルーシュ皇子は我儘を云ったのだ。
それは…
日本にとって様々な波紋を呼ぶこととなったが…
それでも、その時のルルーシュ皇子を見て、枢木卿は自分からルルーシュ皇子の騎士になると云う決意表明をした。
今にして思えば、
―――相当強引な事をしている…
と、誰もが認めるところだろう。
当時だっていろいろ問題になったし、ルルーシュ自身、日本人の組織に誘拐された事だってある。
ルルーシュ皇子自身の環境も…
相当複雑な状況と云えるのだけれど。
それは、まぁ、お互い様…と云うことなのだ。
そして、現在…
この二人が組んだ作戦に関しては、全勝していると云う快挙が続いている。
そんなだから、異母兄君であるシュナイゼル皇子もまだ、年若いルルーシュ皇子にそこまでの無理を強いることを望んでいるわけではないけれど…
それでも、前線ではルルーシュ皇子と枢木卿の力を求められる事も多くなっている。
それは、実力を発揮した者の定め…
生きるためには仕方ないとは云え…
本当はこんな子供達を戦場や政争の場に立たせるなどしたくないと思う大人もいる。
数は少なくとも…
一人一人のその思いはとても強いものだ。
マリアンヌ皇妃が自分の立場を自覚していたし…
ルルーシュ皇子も、本人が望むと望まざると…
そのことを思い知らされて来ていた。
だから、ルルーシュ皇子は他の皇子や皇女と比べ
『我儘を云わない皇子』
と評されていた。
だからこそ…
枢木卿の件では一つ間違えれば…
ブリタニアと日本の外交関係にも影響しかねない問題になるかもしれない…
そんな事実があったにもかかわらず
『僕の騎士は…彼だけだ!』
そう云って引かなかった。
流石にブリタニアの皇族であるとは云え…
両国間の外交に関わる者たちは非常に困っただろう。
それでも、ルルーシュ皇子に好意を抱いている優秀な異母兄姉達の尽力もあり、彼の望みは叶えられた。
枢木卿も…
ルルーシュ皇子と離れたくないと云い張り、普段は枢木卿をおもちゃにしていて…
少々、苛めの入っていそうな従妹、皇神楽耶姫にも尽力をして貰ったのだ。
こうして…二人の我儘が叶えられた。
その時、彼らの尽力をした者たちは…
彼らがこれほどまで優秀なコンビであるとは…
その時にはある一部の人間を除いては誰も気づかなかった…

 そんな状態だから、ルルーシュ皇子たちは忙しい日々を送ることになるのだけれど…
しかし、彼らだって人間…
と云うか、ルルーシュ皇子に関しては完全に人並みの体力があるとは云えない。
恐らく、人並み外れた頭脳に全ての才能を持って行かれてしまったのかもしれないと思えるほど…
その分、枢木卿が体力バカを発揮しているのだが…
それ故に二人がコンビを組んだ時には信じられない力を発揮している…
表向きの彼らだけを見ている者たちはそう考えていた。
しかし
確かにその部分は否定はしないが…
彼らのコンビがこれほど優秀に働くのにはもっと違う部分にある。
それを履き違えて、二人をばらばらの部隊に配属させて戦場に立たせたある貴族出身の指揮官がいた。
その時彼らは…
考えているような結果を出さなかった。
と云うか、出せなかった。
それをルルーシュ皇子や枢木卿を責めた将軍もいたが…
それは、勝手な思い込みで二人を別々の部隊に配属させた方が悪い。
見る目がある者たちは誰もが思った。
機械とは違うのだ。
二人コンビを組めば、2倍以上の力を発揮するかもしれない。
しかし、バラバラにしてしまったら…
確実に一人前の力を発揮する事も出来ない事もある。
それは、二人の少年達が誰とも変わらない『人間』であると云う証明だった。
それを理解できなかった者は…
その時から何年も経っていると云うのに…
今でもくどくどとその事を論う。
ルルーシュ皇子自身、それについては
『僕がちゃんと力を発揮出来なかったことが原因だ…』
と、潔過ぎる言葉を返す。
枢木卿も
『俺がちゃんと出来なかったから…それで、その方の出世が遅れたと云うなら、俺に責任がある…』
と、日本男児らしい潔さを見せる。
そのお陰で、二人の評価は更に上げることとなり…
その時に謝った配置をした者は…
自分の年齢の半分も生きていない少年達に未だに過去のことをくどくど言って…
自分の評価を下げ続けているわけだけれど…
そんな器の違いを見せてしまった為、
今ではルルーシュ皇子が総指揮官、
枢木卿が前線の総責任者…
などと云う事も出て来るようになってしまい…
そうやって、過去の二人についてただの八つ当たりに近い様な云いがかりを付けていた貴族は…
年若い二人の指揮下に入ることとなっている。
まぁ、この二人に関しては…
そう云ったエピソードは結構あるので、割愛しよう。
ただ…
それだけ有能だと云ったところで…
二人はまだ、10代の少年たち…
そんな大人たちのヤッカミを受け続け、神経をすり減らすのは辛いものがある。
全てを受け止めるような真似はしていない。
しかし、全てをスルーする術はまだ知らない。
だから…
時々与えられる休みには…
二人きりでのんびり…
と云うことも多い。
と云うか、最近ではそればかりだ。
妹姫のナナリー皇女は
『私だって…お兄様と…』
そんな事を云うのだけれど…
二人に与えられる休みと云うのは非常に少ない。
だから…
マリアンヌ皇妃は
『ナナリー…もう少し待ってお上げなさい…。もう少し、ルルーシュが大人になれば…ルルーシュ自身ももう少し、上手に立ちまわれるようになりますからね…』
妹姫の我儘をそっと諭し続けている。

 マリアンヌ皇妃がナナリー皇女に諭している頃…
ルルーシュ皇子と枢木卿は…
今は使われていない…
殆ど廃墟に近い様な離宮跡の中庭…
普通の皇族ならこんなところには来ることはない。
廃墟に近いとは云っても、王宮内にある離宮だ。
一応…庭の手入れなどはされている。
中に入ることはできない。
いつ、この離宮に誰かが入る事になるか解らないから…
でも、庭に入ることはできる。
そして…
見つかると恐らく、すぐに出て行くように言われてしまうかもしれないけれど…
二人で良く、そこの中庭に忍び込む。
忍び込んで、ただ…時を過ごしている。
話しをしている事もある。
ただ、そこにいてぼぉーっとしている事もある。
手入れされた芝生の上で寝転がって空を見ている事もある。
空を見ている内に二人して眠ってしまう事もある。
その離宮の手入れをしている庭師やメイドたちは最近ではいつものことと据えている。
それでも、放っておくわけにもいかず、必ず声をかけてから、自分の仕事をし始める。
二人がどこから忍び込んでいるのか…
全員解っているけれど。
でも、彼らは貴族や皇族ではない。
マリアンヌ皇妃を支持する平民だ。
それ故に云うだけは云って…
後は自分たちの仕事をして、去っていく。
ルルーシュ皇子の評判は彼らも知っている。
年若いながら…
神聖ブリタニア帝国宰相である、第二皇子、シュナイゼル皇子のお気に入りで、有能な文官…
普通なら、こんなところに忍び込んで…
などと、最初は考えられなかった。
でも、彼らがここで、息を抜いている。
緊張が続いているであろう、少年たち…。
いつしか、彼らが管理している、主のない離宮に…
誰も入って来ない事を祈ってしまう。
―――それが罪であったとしても…
王宮内にある、皇帝の后の為の離宮なのだから…
皇帝が新しい妃を迎え、この離宮を与えると…
そう云った時点で、ここは彼らの憩いの場とはならなくなる。
彼らが…きっと…
―――子供の顔に戻れる…数少ない場所なのに…
最近ではルルーシュ皇子も枢木卿も
『これは口止め料だ!』
そう云って、ここの管理をしている者たちに菓子を持ってくるようになった。
普通なら、平民の彼らが口にする事の出来ない様な…上品な菓子を…
最初は
『そんな恐れ多い…』
と驚いていたものの…
『黙っていて下さい。お願いします…』
ルルーシュ皇子が菓子を押しつけた後、枢木卿がそう云って頭を下げる。
彼らは
―――別にそんな事をしなくても、云いやしませんから…
と云う思いはあるのだけれど…
ここなら、危険な目に会う事も基本的にはない。
こんな、王宮のはずれにある離宮に足を運ぶ皇族はいないし、主のいない離宮に立ち寄る貴族もいない。
何より、ルルーシュ皇子の騎士である、枢木卿がルルーシュ皇子に傷を負わせるような真似はしないと思われる。
ルルーシュ皇子が自ら望んだその騎士は…
これまで彼らが見て来た皇族の騎士たちの中でも、ずば抜けた強さだったから。
『大丈夫ですよ…殿下…。我々は誰にも云ったりしませんから…』
そう、責任者の男が云った時…
二人が少しだけ安心したような表情を見せた。
『ありがとう…。じゃあ、これ、持って来てしまったから…休憩のときにでも食べてくれ…』
と、結局、買収に使おうとした菓子は彼らの手に渡り、休憩時間に彼らの腹の中に入るのだった。

 そんなことが、今でも続いている。
ルルーシュ皇子と枢木卿は…
今でも人数分の菓子を手にここにやってくる。
数少ない休みの日にだけ…
ここの管理は毎日施される。
いつ、新しい主を迎える事になってもいいように…
本当に時々しか訪れる事が出来ない彼らを、痛々しく思わないわけではないけれど…
今日も、その時間が来て、その離宮に入って行くと…
中庭のいつもの場所で、二人が横になって眠っていた。
春の日差しと風が心地よさそうだ。
「ここは後でいい…」
管理責任者の男がそう云って、仕事の割り振りを変更する。
ここが彼らにとって居心地のいい場所であることは…
いつの間にか彼らの中で誇りとなっていた。
高貴な貴族や皇族は決してここには来ない。
だからこそ、二人がここを選んだに違いない。
庶民での母君を持つ皇子と、外国人の騎士…
このブリタニアの王宮で暮らすには聊か居心地がいいとは云えないだろう。
解ってはいるけれど…
でも、この二人だから、彼らもこんな風に、見守ってやりたくなるのかもしれない。
こんなところが居心地がいい…
確かに彼らにとっては誇りなのかもしれないけれど…
でも、当人たちは本当にあの皇族、貴族に囲まれる生活が辛いのかもしれない。
ルルーシュ皇子は…
自分の立場をよく理解していた。
そして、妹姫には、そんな思いをさせまいと…
大人の目から見て
『そんな頑張り方をしなくていいんだよ…』
と…
否、
『そんな頑張り方をしちゃいけないんだよ…』
と云ってやりたくなる。
ナナリー皇女だって、今はまだ、マリアンヌ皇妃が生きていて、その地位もあるから…
ただ守られていればいいけれど…
いずれ、大人になって行けば…
彼女自身、このブリタニアの皇族の責務と義務と役割を背負わなくてはならなくなる。
ルルーシュ皇子は、今のナナリー皇女の年齢の時には前線に立っていたのだ。
そう考えると…
ルルーシュ皇子を心配する者たちは心を痛める。
それでも…
救いがあるから…
彼が、
我儘を決して云わなかった彼が…
自ら選んだ騎士…枢木スザク卿の存在…
いつもここに来るときは、枢木卿と一緒だ。
二人の姿を、微笑ましいと思いながら見つめている。
二人の強い絆を見ていると、何故か安心している。
二人とも、本当に優しくて、強い心を持っているのだろう。
そんなことがよく解る。
だからこそ、自分で背負いこみ、辛くなる。
辛くなっても、支えがあると云うのは心強いのだろう。
ルルーシュ皇子もいずれ、専任騎士を選ばなくてはならなかった。
貴族の中から推薦されて…と云う事だったら…
こんな風に心を通わせていたのか解らない。
本気でそんな風に思えるような…
二人の寝顔…
二人の隣にはルルーシュ皇子曰く『口止め料』である菓子が入ったバスケットが置かれていた。
いつも、見た事もない様な菓子を持って来て貰って…
休憩時間には歓声が上がっている。
庶民では口にする事の出来ない、皇族が口にする菓子なのだ。
当然と云えば…当然だ。
ここの管理をしている者たちは…
彼らの眠りの妨げにならない様に作業を始めていた。

 そして…
ルルーシュ皇子と枢木卿が目を醒ます頃…
作業の残りが、彼らの眠っていた一角だけとなった。
「ん…」
先に目を醒ましたのは枢木卿…
これはいつも通りだ。
そして、むくりと起き上がり、少しずつ覚醒し始めているルルーシュ皇子の肩を揺さぶった。
「ルルーシュ…ルルーシュ…」
どうやら、周囲でこの場所があくのを待っている人々がいる事に気づいたようだ。
そんな枢木卿の姿を見て…
「あ、よろしいですよ…。もう少し、眠らせて差し上げて下さい。我々の事は気になさらず…。折角のいい天気ですし…」
ここの作業の責任者の男がそう笑いながら云った。
しかし、枢木卿は横に首を振った。
「いえ…皆さんのお邪魔をしているわけですし、それに、殿下も…こんな時間にあんまり眠ってしまうと…夜、眠れなくなってしまいますから…」
そう云って、枢木卿は再びルルーシュ皇子を起こそうと努力する。
「ん…なんだ…スザク…。あと5分…」
ルルーシュ皇子が寝ぼけた状態でそんな事を云う。
恐らく、枢木卿を見ているとは思えないし、この状況でどこまで枢木卿の声を判別できるのかが疑問だ。
それでも、ルルーシュ皇子を起こす役割は枢木卿…
それを示しているような光景だ。
余程気持ちよく眠っていたようだ。
「殿下…殿下…」
枢木卿は寝ぼけていなければルルーシュ皇子を『殿下』と呼んで返事はしない事をしている。
だから、ここで本当に眠っているのか、タヌキ寝入りなのかを確かめる。
解っていて、ルルーシュ皇子は枢木卿に『殿下』と呼ばれることを嫌うので…
確実に確かめられるのだ。
「だから…あと5分…」
そのルルーシュ皇子の一言に…
枢木卿は脱力する。
ひなたぼっこをしている内に眠ってしまい…
そして、ここの管理をしている人々に迷惑をかけている始末。
枢木卿は少し考え込む。
「枢木卿…なんなら、ここは明日にしますから…」
これほど気持ちよさそうに眠って、目を覚まそうとしないルルーシュ皇子を見ていて…
流石に無理に起こすのは気の毒だと思ったのだろう。
「でも…」
枢木卿はやはり彼らの事は気になるけれど…
ルルーシュ皇子の事も気になっている様子で…
少々歯切れ悪く言葉を口にする。
「誰も住んでいないこの離宮…。毎日手入れをしているんですから…大丈夫です。それに、今日、突然どなたかが入られるとなっても、大丈夫ですよ。我々が叱られればいい事です…」
にこりと笑って、別にかまいませんよ…と答える。
周囲にいた庭師やメイドたちもそんな表情だ。
「すみません…。何かあった時には…これを…」
そう云って、ルルーシュ皇子の印章を押した紙を一枚、渡した。
こうしておけば…彼らに全責任が向けられることはなくなる。
その代わり…この憩いの場所はなくなる。
「別に…こんなものはいりませんよ…。我々も殿下の持ってきて下さるお菓子を楽しみにしているんですから…」
そう云いながらその紙を破いてごみ入れに使っている袋に入れてしまった。
枢木卿は『申し訳ありません』そう云って頭を下げた。
そして、彼らにバスケットを渡し、彼らを見送った…
彼らの姿が見えなくなった時…眠っているルルーシュ皇子にこう告げた。
「今度来るときは…もっと、沢山、美味しいお菓子を作れよ?ルルーシュ…」

END


あとがきに代えて



久しぶりの『騎士皇子シリーズ』
ひょっとしたら、このブログで読むのは初めて…と云う方もいらっしゃるかも知れません。
でも、この話は、結構以前から書いているものだったりします。
数は少ないですが…
かつて、拍手ページ読破して下さった方で『キーワード』を送って頂いた方にはぇろ作品をお送りしていたのですが…
その中で一度、このカップルでぇろ書いております。
殆どの方は知りません。
実際に、キーワードを送って下さった方が非常に少なかったので…
今はその企画…やめちゃいましたけどね…。
やっていても送って下さる方がいないので、書くだけ無駄になることが多いので…
あまりに少なかったので、オフラインのコピー本で掲載したほどです。
まぁ、そんなことはともかく…
この騎士皇子…戦闘シーンがないので安心して書けます。
まぁ、書き始めた頃、それこそ、『皇子とレジスタンス』を書き始める前だったと思います。
ひたすら甘っちょろい騎士皇子を目指しておりまして…
ただ、定期的に掲載していなかったので…回数は非常に少ないんです。
また、反応を見て、もっと頻繁に書こうかどうかを決めます。
既に忘れ去られていそうなシリーズものもありますしね…
すこし、『Amethyst Eyes』の方も整理しようかなぁ…
結構ごちゃごちゃして来たので…

あと、今回のリクエスト企画、
リクの数はホント、心優しい方々がお一人で幾つも送って下さり、まぁ、時間的には1ヶ月くらい持ちそうな感じになりました。
ただ、人数が少ないので、現在、リクを送って下さった方にはスペシャル企画をしたいと思います。
いずれ、また告知すると思いますが、フリーメールでいいので、和泉に教えてもいいぞ!と云うメアドをご用意ください。
リクエスト企画が終わりましたら、そのメアドを教えて下さい。
今回、ごちゃごちゃした中でリクを下さった方へのお礼企画です。
これから…
送って下さった方にはこのお礼企画の対象とさせて頂きます。
宜しくお願いします。


☆拍手のお返事


紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
連載もの…そんなに楽しんで頂けてホント、光栄です。
ちゃんと完結させますので…これからも楽しんで頂ければ幸いです。

『騎士皇子シリーズ』
色々ごちゃごちゃしすぎて…
書いている本人が、書いている最中にスクランブルに陥りそうになるのですが…(←ダメじゃん)
やっぱり、この話は暴走するルルーシュを止めようと頑張る騎士二人…
そして、命知らずな事ばかり考える無茶ぶり皇子のお話なので…
今回は星刻も曲者で出しているので…
色々めんどくさい事を考えてくれまして…ヾ(▽^;)ゞうへへ
書いている方が相当大変な思いをしている訳ですが…
まぁ、監視だらけの状態なので、そうそう誰かに相談して…という事も難しいでしょうし…
どこまで、濃い話しに出来るか…
頑張ります!

『幼馴染シリーズ』
ゼロに関しては…
あまり悪役にするつもりはないんですよ。
少々悲しみを背負っていると云うのはありますけれど…
マオを付けたのもそのためですし…
ゼロ自身、自分の生い立ちを知っているので、自分の貢献をしてくれている老人たちと思いは違います。
ただ、色々な駆け引きをしている真っ最中という感じです。
あと、ルルーシュ…
まぁ、過去のスザクの事を考えれば、ある意味仕方ないんですが…
うちのルルーシュ…いつも犯罪的な鈍感なので…
スザクに頑張って貰いましょう!
邪魔する人たちはいっぱいいると思いますが…(笑)

『It's Desitny』
シュナ兄…
やっぱり黒くないと…こういう話では…(笑)
まぁ、元々、ルルーシュとスザクが幸せになれるかどうかのカギは…(ルルーシュにとっての)敵のポジションに立つシュナ兄にかかっていますしね…
マオ自身は、まっすぐ過ぎて少々かわいそうな気がしますけれど…
でも、ここまでかわいそうなキャラになっているので、ちゃんと救いは作ろうと思います。
スザク…
ホントにお兄さんですね(笑)
ルルーシュが違和感を抱いてちょっと困っている姿はちょっと好きかも知れません。
前世の事を知って、二人はどうこたえを出すのか…
そして、どう歩んでいくのか…
ぜひとも温かい目で見守ってやって下さい。

『僕は…君が為に裏切り続ける…』
これは…毎回ご無沙汰になっちゃって申し訳ないんですが…
やはり、気になりますか…
『ゼロ』の正体…
まぁ、意外と、『なんだ…そこに行くのか…』とおもわれるか、『え?そうだったの?』と思われるか…
ユーフェミアとの会話で少しずつ解ってきそうな感じなので、でも、確信が持てない…と云った感じでしょうか?
多分、これからの話の展開上、少々強引な感じもしない訳じゃないんですが…
楽しみにして頂けると幸いです。

いつも、励ましのお言葉、そして、お気遣い、有難う御座居ます。
これからも、紫翆さまのご期待に添えるように頑張って参ります。
暖かくなったり、寒くなったりと…体調管理が難しい時期ですので、体調を崩されないようにお気を付け下さい。

まりもこさま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
色々、ご指摘、御助言、有難う御座居ます。
色々工夫をしようと思うのですが…
どうにもこうした長文の書き方に関してはまだまだ、勉強しなくてはならない事が多くて…
オフラインの場合、
あまり短い文できってしまうとかえって読みにくくなるんですよね…。
携帯やパソコン(特にブログ)は短い文章を開業した方が読みやすいと思いますが…
その辺りはもう少し和泉自身勉強しなくてはならない部分です。
だから、ウェブ再録の作品のオフラインで、小説本の中には非常に読みにくいものもあります。
というのも、オンライン仕様の書き方でそのままオフラインにしているからです。
オフラインでも長い文章の句読点がいくつも付くのは非常に読みにくいです。
その辺りは本当に難しいです。
和泉自身、どちら仕様で書いているのか…正直解らないんですけれど…
ただ、和泉も『皇子とレジスタンス』はオフラインにしているんですが…
そのままオフライン原稿にすると凄く読みにくいんです。
このあたりは、和泉も勉強したいと思います。
色々御助言、お気遣い、有難う御座居ました。
また、何かありましたらコメントで色々指摘してやって下さい。
こうした形で具体的にご指摘いただく事は大歓迎です。
これからもよろしくお願いします。




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posted by 和泉綾 at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2009年08月20日

騎士皇子シリーズ8

皇子の我儘2



 軍の訓練中…ルルーシュ皇子の指揮の下…枢木卿は集中攻撃をくらっていたが…
しかし…ルルーシュ皇子は枢木卿の運動能力を見誤っていた…
実は、枢木卿…切り傷や擦り傷はわざと付けていたらしい…
ルルーシュ皇子に手当てをして貰おうと…
あの程度の攻撃であれば、無傷でかわす事も出来たのだが…
しかし…あんまり目立つとルルーシュ皇子の騎士であっても、色んな軍からお呼びがかかる事になりそうだったし、編の上官に目を付けられる事になりそうだったので、なるべく目立たないように…と思っていた。(あの時点で充分目立っている事に気づかないのが流石ルルーシュ皇子の騎士である)
それに…枢木卿の中ではこうも思っている。
『ルルーシュの騎士たる者…このくらい出来なくてどうするんだ!?』
と…。
まぁ、どっかの執事さんのパクリである事はスルーして頂くとして…
それでも、枢木卿の心の中ではルルーシュ皇子の騎士として恥ずかしくない程度の力は欲しいと思っていた。
ここまで出来る必要があるかどうかは…甚だ疑問が残るが…
それでも、ルルーシュ皇子が剣術だとか、武術に関してはあまり得意ではない。
頭がいいから作戦を考えたり、戦略を提案したりする事がルルーシュ皇子がシュナイゼル皇子の下で任務をこなす上での役割だ。
そんなポストについていると…当然ながら…命を狙われる事が多い。
まして、体力や運動能力に関しては…女の子である、コーネリア皇女の妹姫にして、ルルーシュ皇子の異母妹姫であるユーフェミア皇女にも負けてしまうのだから…
枢木卿はよく、ルルーシュ皇子の母君であるマリアンヌ皇妃の特訓(と云う名目の下のしごき)を受けているのだが…マリアンヌ皇妃は流石庶民の出でありながら騎士候にまで上り詰めた功績があるだけの事はある…。
彼女に子供が出来たからという事で、第一線を退いているが…このまま軍に戻ってもすぐに戦力になれそうなほどの実力の持ち主だ。
枢木卿をしごく上で色々と体力や体術を鍛え直さなくなってしまったから、マリアンヌ皇妃も日ごろ、それなりに努力はしているらしいが…
しかし、それでも、人間の最も充実した肉体を持つ年齢の枢木卿を相手に互角に戦える子持ちの女性など…探してもなかなか見つからないだろう…
恐らく、軍としてはマリアンヌ皇妃の引退は…非常に残念がられたに違いない…。
コーネリア皇女もマリアンヌ皇妃に対して尊敬の念を抱いているので…未だにアリエスの離宮に来るとマリアンヌ皇妃に教えを乞うているのだ。
枢木卿自身、そんな母親の下に生まれたルルーシュ皇子が何故にそこまで運動を苦手とするのか…疑問に思うが…
しかし、ルルーシュ皇子の遺伝子はマリアンヌ皇妃の遺伝子が半分、ブリタニアの皇帝陛下の遺伝子が半分だ…
―――つまり…運動能力に関しては皇帝陛下の遺伝子が表に出てきちゃったんだろうな…

 ルルーシュ皇子の指揮の訓練生の軍とたたかっていたとは気づきもせず…
ただ…今日は大変だったなぁ…くらいの状態で枢木卿がやっと終わった訓練から好意室へと向かい…シャワー室でシャワーを浴びていた。
身体中には切り傷やら擦り傷がいっぱいで…お湯が当たると結構痛い…
「いててて…」
そんな声を出しながら、枢木卿はシャワーで汗や土で汚れた身体を洗い流している。
隣のシャワーブースには…枢木卿と同じ部隊にいた訓練生がシャワーを浴びていた。
「あの…枢木卿…」
隣から声をかけられる。
「はい?」
その声に返事すると…その相手はなんとなく…身体を辛そうにしている。
「あの…枢木卿はルルーシュ殿下の専任騎士でしたよね?」
今更な事を訊かれて枢木卿は不思議そうな顔をする。(もちろん、シャワーブースにいるので尋ねてきた相手にはその表情を見る事が出来ないが…)
「はい…そうですが…。それが…何か…?」
意味も解らず答えるが…
その後に彼が尋ねてきた内容で…彼の質問の意味を知る事になる。
「ルルーシュ殿下と喧嘩でもされたんですか?最後のあの実戦シミュレーションの時の…相手の軍の指揮官…ルルーシュ殿下だったそうですけれど…」
「え?」
こいつもどこでそんな事を聞いてきたか知らないが…あの時の相手方の指揮官はルルーシュ皇子だった事に驚く。
しかも…明らかに枢木卿を集中攻撃していたフシがある…
しかし…
昨日…ルルーシュ皇子に『病気になれ!』などと云う無茶振りな命令をされた。
これも…何か関係があるのだろうか…
―――そう言えば…俺の看病したいとか云っていたな…
「今回…あからさまに自分たちの隊に攻撃が集中していたでしょう?いつもなら、ラスター教官はあんな攻撃の仕方をしないから…ちょっと気になって共感室へ行った時…ちらっと聞いちゃったんですけど…」
隣のシャワーブースから聞こえてくる声に…枢木卿は大きくため息をついた。
そして…ある意味お互い様なのだが…今回のルルーシュ皇子のやった事に関しては少々憤りを覚えない訳にいかない。
枢木卿だけが痛い目に遭う分にはまぁ…ある意味仕方ないが…
今回は完全に越権行為だ…。
訓練生に対して…そんな事をしてしまっては…そして、こんな形でばれてしまっては…
「あの…ルルー…じゃなくて、殿下は…最近、お疲れのようでしたので…。ちょっと采配を間違えてしまったのかと思われますが…」
苦しい云い訳だが…
これで納得してもらうしかない。
一応、軍の中の官位は枢木卿の方が上だし…と云うか、ルルーシュ皇子の騎士と云う事もあり、訓練生としてはあり得ないのだが…実は教官も、枢木卿に対しては礼を払う形になっている。
だから…尋ねてきた訓練生も…枢木卿の話を聞いて…
「そうですか…。だったらいいんですけど…。自分…こんなに身体中が傷だらけになった訓練…初めてですよ…」
「まぁ…前線だと、あれくらいの戦闘はありますけれど…」
フォローになっているかどうか全く解らない一言を置いて…枢木卿はシャワーブースを出て行った…

 身支度をして、すぐにルルーシュ皇子の待つアリエスの離宮に向かう。
流石に…(現場ではあの程度の戦闘は結構当たり前だが)訓練生に対してあんな形で自分のやりたい事の為の越権行為は…
騎士として諌めなくてはならない…
解っていない訳でもないだろうが…
確かに…枢木卿も骨折くらいしてやればよかったのかもしれない…
負けず嫌いなルルーシュ皇子の事…最初はそんなつもりはなかったと思われる。
普通に枢木卿だけを狙った攻撃だったが…段々、枢木卿が頑張ってしまって…ルルーシュ皇子も頑張ってしまったのだろう…
枢木卿が変に頑張ってしまったおかげで、ルルーシュ皇子がその負けず嫌いな性格をフル回転させて…頑張ってしまい…
そして…他の訓練生たちに影響が出てしまった…
―――どうりで…教官たちが俺に対して妙な態度を取っていた訳だ…
そう思いながら、アリエスの離宮に戻ると…
「あら…お帰りなさい…枢木卿…」
「あ…マリアンヌ様…。あの…ルルーシュは…?」
最初に出迎えてくれたのはルルーシュ皇子の母君である、マリアンヌ皇妃だった…。
「ルルーシュなら…自室にこもって何か色々と考えているみたいだけど…。折角のお休みなのに…何をしているのかしら…」
マリアンヌ皇妃が頬に人差し指を当てながらそんな事を呟いている。
枢木卿は大体、今ルルーシュ皇子が何を考えているのかが解っている。
「あ…ルルーシュが休みなのに…自分は軍の訓練に出かけてばかりなので…退屈をしておられるんでしょう…。ストレスもたまっているみたいですし…」
枢木卿がそんな風にフォローすると…マリアンヌ皇妃がにっこりと笑って枢木卿にこう告げる。
「ごめんなさいね…あの子…我儘で…。でも…あなたがいてくれて本当によかったわ…。どうせ、後先考えずに自分のやりたい事をごり押しして…人に迷惑をかけちゃったんじゃないの?」
「え?」
枢木卿がマリアンヌ皇妃の言葉に目を丸くしていると、マリアンヌ皇妃がころころと笑いだした。
「母親って…面白いものね…。自分の子供の事だと…何でもわかっちゃうのよね…。あなたも大変かもしれないけれど…あの子の事…よろしくね…」
改まってマリアンヌ皇妃からこんな事を告げられてしまうと…なんて答えていいのか解らない。
どうやら…マリアンヌ皇妃はルルーシュ皇子が(具体的に何をしたかは解っていなくても)何かをして人様に迷惑をかけた事を察知していたのだろう。
そして…枢木卿のこの態度で確信を得てしまったらしい…
「申し訳ありません…マリアンヌ様…。自分の力が至らないばかりに…」
枢木卿が深々と頭を下げてマリアンヌに謝った。
「いいのよ…。まぁ、明日、私が出向いて、訓練生の教官たちには私から謝罪しておきます。あなたは…あの子にしっかりとお灸をすえてやって頂戴ね…」
そう言って…マリアンヌ皇妃は離宮の奥の…自室へと入って行った…

―――コンコン…
 枢木卿がルルーシュ皇子の部屋の扉をノックする。
流石に…マリアンヌ皇妃にまであんな風に言われてしまうと…
大体、お灸をすえると云うのも…どうしたらいいのか解らない…。
でも、ルルーシュ皇子の騎士である以上…ルルーシュ皇子が間違った事をしたのであれば、専任騎士である枢木卿が諌めなくてはならないと…
そんな風に思う。
何も。主の云う事を全部聞く事が忠誠ではない。
間違った事をした時にはちゃんと諌めてやるのも…忠義の形だ…
『どうぞ…』
中から…ルルーシュ皇子の入室を許可する返事がある。
枢木卿は静かに扉をあける。
実際に、どうやって諌めるのがいいか…迷うところだ。
いくら騎士だと云ったって…枢木卿だってルルーシュ皇子と同じ歳だ。
ただ…今回のルルーシュ皇子のやった事が…越権行為であり…この先…ルルーシュ皇子の支配下に置かれるかもしれない訓練生たちの不安を煽った事に対しては…ちゃんと、指摘して、改めさせる必要があると…そう考える。
「ルルーシュ…」
いつもより低い声で枢木卿がルルーシュ皇子の名前を呼ぶ…。
ルルーシュ皇子は枢木卿の普段とは違う雰囲気に気づいていないらしく…パソコンに向かって何かを打ち込んでいる。
「お帰り…スザク…」
この状態を見ると…恐らくルルーシュ皇子に自覚はないと思われる。
「ルルーシュ…話がある…。だから…手を休めて…俺の方を見ろ…」
ルルーシュ皇子はここまで云われて枢木卿がいつもと違う雰囲気である事に気が付く。
しかし…それほど深刻に考えている様子はない。
「なんだ?」
「ルルーシュ…お前は…今日…軍の訓練の野戦シミュレーションで…指揮をしていたらしいな…。しかも…俺を集中攻撃する為のプログラムで…」
枢木卿の声の様子がいつもと違う…
その事に気がついたルルーシュ皇子が…少しだけ表情を変える。
「あれは…。でもスザクはぴんぴんしているじゃないか…」
「ああ…俺はな…。確かに俺と同じ隊にいた訓練生たちにも普段と変わらない程度のけがしかなかった…。でも…ルルーシュの指揮で…訓練生全体に不安を残した事を自覚しているか?」
枢木卿の言葉に…流石のルルーシュ皇子もびくっと身体を震わせた。
「俺の看病をしたいなんて言っていたが…そんな事の為に皇族の権力を使って…あんな越権行為をしたのか?ひょっとしたら…あの訓練生の中に将来、お前の手足となって働く者もいるかもしれないのに…。今日…シャワーを浴びている時に…俺と同じ隊にいた訓練生に聞かれたよ…。『ルルーシュ殿下と喧嘩でもしたんですか?』ってね…。確かに今日の事はそう言われても仕方ないと思う…。俺だって、何か変だと思っていた…」
段々…枢木卿の言っている事が理解出来てきて…ルルーシュ皇子も顔色を変えて行く。
そう…ルルーシュ皇子はシュナイゼル皇子の下で作戦指揮を執っている。
作戦指揮を円滑に行っていく場合…兵士たちとの信頼感が不可欠なものだ…。
今日のルルーシュ皇子の行為は…確かに軽率と言えば…軽率な行為であった事は…認めざるを得ない…

 ルルーシュ皇子の表情が変わって行くのを見て、内心、枢木卿は安心する。
枢木卿の言葉を理解して、自分のやった事についてきちんと振り返っているという証拠だから…
しかし…きちんと云うべき事は云って、ルルーシュ皇子の行動を改める方向に向けて行かなくてはならない。
「ルルーシュ…お前は自分の皇族としての立場とその権力を知らな過ぎる…。マリアンヌ様がいくら庶民の出だと云ったところで…皇族だし、お前だって、マリアンヌ様の長子であり、しかもシュナイゼル殿下の片腕とまで言われている皇子殿下なんだ…。お前の行動は…下々の者に大きな影響を与える事を自覚しろ…」
枢木卿がそこまで云うと…ルルーシュ皇子が身体を震わせ…声も震わせながら…一言言葉にした…
「ごめん…なさい…」
今にも泣きそうになっているルルーシュ皇子の顔を見て…やっと、大きく息を吐いた。
元々頭の悪い皇子殿下ではない。
人の言っている事をきちんと理解できる…だからこそ、あのシュナイゼル皇子の下で様々な功績をあげているのだろう。
「俺に謝っても仕方ない…。明日…訓練生たちに謝りに行こう…。俺も一緒に謝るから…」
「謝る…?」
「そうだ…。いくら皇族だって人間だ…。間違いを犯すことだってある…。間違いを犯した時にしなくてはいけない事は…迷惑をかけた相手にきちんと謝る事…。二度と同じ間違いを犯さない事…。その二つだ…」
枢木卿の言葉にルルーシュ皇子がこくんと頷いた。
いくらなんでもルルーシュ皇子は調子に乗り過ぎた…と…今更ながら気がついた。
枢木卿が指摘してくれなければ…気付かなかったかもしれない…。
これから先、皇位継承順位の高くないルルーシュ皇子がこのブリタニア帝国の皇族として生きて行く為には…母君同様…実力を認められて、自分の地位を築き上げる事が必須だ。
皇族の中では人一倍努力して、功績をあげて行かなくては生きていけない立場なのだ…
「ごめん…スザク…。ごめん…」
ルルーシュ皇子はついに泣き出した。
こんな時に涙を見せるのは卑怯だと思う…
でも…それでも…
「解ったならいいよ…。明日…ちゃんと謝りに行こう…。それに…俺もごめん…。ルルーシュがそこまで色々ストレス溜めている事に…気付かなくて…」
「え?」
ルルーシュ皇子は枢木卿の言葉に驚いた表情を見せた。
「ルルーシュは普段は…そんな事はしないだろ?俺に我儘を云う事はあってもさ…他人には絶対に迷惑をかけていないから…。だから…色々辛かったのかな…と思ってさ…」
少しだけ目を潤ませながら枢木卿の顔を見つめているルルーシュ皇子に…さっきとは打って変わって優しい表情になった。
「明日…きちんと謝る事…。そしたら…明後日…俺、病気になるから…。そしたら…一緒にいよう?」
「でも…」
「仮病も病気の一つ…。看病はさせてやれないけど…一緒にいられるだろ?マリアンヌ様とジェレミア卿から怒られちゃうかもしれないけどさ…」
ルルーシュ皇子に悪戯っぽく笑いかけると…ルルーシュ皇子は枢木卿に抱きついて…暫くの間…声をあげて泣いていた…

END


あとがきに代えて



今回は…昨日の話の結末を書いてみました。
あのまま放置では…ちょっと…色々不都合だなぁ…と思いまして…
で、昨日のコメディとは違ってちょっとシリアスになって…最後はバカップル…
これはこれで楽しいかなぁ…と…
うちの騎士皇子のルルーシュ君は…何かと頭でっかちで変なところで優秀なので、ちょっと人より成長していない部分があるって事で…
と云うか、この話を描き始めた頃と…随分話が変わっていますね…
まぁ、昨日の段階で相当久しぶりでしたしね…
こうした子供っぽいルルーシュと、それを兄のような気分で見つめているスザクは書いていた楽しいです。
本編で必要以上に大人びていたルルーシュを見ていて…
少しは子供の時間を作ってあげたくて…(笑)
この話は…書いていて妄想が膨らむので…
次はこんなに間を開けないで書きたいと思います。


☆拍手のお返事


水流さま:こんばんは、いつもコメントありがとうございます。
昨日、感想を頂けたので…ちょっと続きを描いてみました。
実は…このシリーズは久しぶりに書いているんですけど…結構好きなんですよね…
『皇子とレジスタンス』とはまた、ちょっと違った雰囲気の騎士皇子で…
昨日頂いた感想を参考にいろいろ弄って続きを書いてみました。

しかし…ここのところ…と云うか7月の入院を境に…いろんな意味でこちらへの反応が激減しているんですけど…
読み手様の立場から見て…和泉の文章…そんなに変わりましたか?
ホント、アクセスログを見るとすっごいあからさまに結果が出ているんですが…
文章…疲れているのかなぁ…
それとも飽きられたのかなぁ…
確かに…『ギアス』人口は減っているのは解りますけどね…(涙)


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posted by 和泉綾 at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

騎士皇子シリーズ8

皇子の我儘2



 軍の訓練中…ルルーシュ皇子の指揮の下…枢木卿は集中攻撃をくらっていたが…
しかし…ルルーシュ皇子は枢木卿の運動能力を見誤っていた…
実は、枢木卿…切り傷や擦り傷はわざと付けていたらしい…
ルルーシュ皇子に手当てをして貰おうと…
あの程度の攻撃であれば、無傷でかわす事も出来たのだが…
しかし…あんまり目立つとルルーシュ皇子の騎士であっても、色んな軍からお呼びがかかる事になりそうだったし、編の上官に目を付けられる事になりそうだったので、なるべく目立たないように…と思っていた。(あの時点で充分目立っている事に気づかないのが流石ルルーシュ皇子の騎士である)
それに…枢木卿の中ではこうも思っている。
『ルルーシュの騎士たる者…このくらい出来なくてどうするんだ!?』
と…。
まぁ、どっかの執事さんのパクリである事はスルーして頂くとして…
それでも、枢木卿の心の中ではルルーシュ皇子の騎士として恥ずかしくない程度の力は欲しいと思っていた。
ここまで出来る必要があるかどうかは…甚だ疑問が残るが…
それでも、ルルーシュ皇子が剣術だとか、武術に関してはあまり得意ではない。
頭がいいから作戦を考えたり、戦略を提案したりする事がルルーシュ皇子がシュナイゼル皇子の下で任務をこなす上での役割だ。
そんなポストについていると…当然ながら…命を狙われる事が多い。
まして、体力や運動能力に関しては…女の子である、コーネリア皇女の妹姫にして、ルルーシュ皇子の異母妹姫であるユーフェミア皇女にも負けてしまうのだから…
枢木卿はよく、ルルーシュ皇子の母君であるマリアンヌ皇妃の特訓(と云う名目の下のしごき)を受けているのだが…マリアンヌ皇妃は流石庶民の出でありながら騎士候にまで上り詰めた功績があるだけの事はある…。
彼女に子供が出来たからという事で、第一線を退いているが…このまま軍に戻ってもすぐに戦力になれそうなほどの実力の持ち主だ。
枢木卿をしごく上で色々と体力や体術を鍛え直さなくなってしまったから、マリアンヌ皇妃も日ごろ、それなりに努力はしているらしいが…
しかし、それでも、人間の最も充実した肉体を持つ年齢の枢木卿を相手に互角に戦える子持ちの女性など…探してもなかなか見つからないだろう…
恐らく、軍としてはマリアンヌ皇妃の引退は…非常に残念がられたに違いない…。
コーネリア皇女もマリアンヌ皇妃に対して尊敬の念を抱いているので…未だにアリエスの離宮に来るとマリアンヌ皇妃に教えを乞うているのだ。
枢木卿自身、そんな母親の下に生まれたルルーシュ皇子が何故にそこまで運動を苦手とするのか…疑問に思うが…
しかし、ルルーシュ皇子の遺伝子はマリアンヌ皇妃の遺伝子が半分、ブリタニアの皇帝陛下の遺伝子が半分だ…
―――つまり…運動能力に関しては皇帝陛下の遺伝子が表に出てきちゃったんだろうな…

 ルルーシュ皇子の指揮の訓練生の軍とたたかっていたとは気づきもせず…
ただ…今日は大変だったなぁ…くらいの状態で枢木卿がやっと終わった訓練から好意室へと向かい…シャワー室でシャワーを浴びていた。
身体中には切り傷やら擦り傷がいっぱいで…お湯が当たると結構痛い…
「いててて…」
そんな声を出しながら、枢木卿はシャワーで汗や土で汚れた身体を洗い流している。
隣のシャワーブースには…枢木卿と同じ部隊にいた訓練生がシャワーを浴びていた。
「あの…枢木卿…」
隣から声をかけられる。
「はい?」
その声に返事すると…その相手はなんとなく…身体を辛そうにしている。
「あの…枢木卿はルルーシュ殿下の専任騎士でしたよね?」
今更な事を訊かれて枢木卿は不思議そうな顔をする。(もちろん、シャワーブースにいるので尋ねてきた相手にはその表情を見る事が出来ないが…)
「はい…そうですが…。それが…何か…?」
意味も解らず答えるが…
その後に彼が尋ねてきた内容で…彼の質問の意味を知る事になる。
「ルルーシュ殿下と喧嘩でもされたんですか?最後のあの実戦シミュレーションの時の…相手の軍の指揮官…ルルーシュ殿下だったそうですけれど…」
「え?」
こいつもどこでそんな事を聞いてきたか知らないが…あの時の相手方の指揮官はルルーシュ皇子だった事に驚く。
しかも…明らかに枢木卿を集中攻撃していたフシがある…
しかし…
昨日…ルルーシュ皇子に『病気になれ!』などと云う無茶振りな命令をされた。
これも…何か関係があるのだろうか…
―――そう言えば…俺の看病したいとか云っていたな…
「今回…あからさまに自分たちの隊に攻撃が集中していたでしょう?いつもなら、ラスター教官はあんな攻撃の仕方をしないから…ちょっと気になって共感室へ行った時…ちらっと聞いちゃったんですけど…」
隣のシャワーブースから聞こえてくる声に…枢木卿は大きくため息をついた。
そして…ある意味お互い様なのだが…今回のルルーシュ皇子のやった事に関しては少々憤りを覚えない訳にいかない。
枢木卿だけが痛い目に遭う分にはまぁ…ある意味仕方ないが…
今回は完全に越権行為だ…。
訓練生に対して…そんな事をしてしまっては…そして、こんな形でばれてしまっては…
「あの…ルルー…じゃなくて、殿下は…最近、お疲れのようでしたので…。ちょっと采配を間違えてしまったのかと思われますが…」
苦しい云い訳だが…
これで納得してもらうしかない。
一応、軍の中の官位は枢木卿の方が上だし…と云うか、ルルーシュ皇子の騎士と云う事もあり、訓練生としてはあり得ないのだが…実は教官も、枢木卿に対しては礼を払う形になっている。
だから…尋ねてきた訓練生も…枢木卿の話を聞いて…
「そうですか…。だったらいいんですけど…。自分…こんなに身体中が傷だらけになった訓練…初めてですよ…」
「まぁ…前線だと、あれくらいの戦闘はありますけれど…」
フォローになっているかどうか全く解らない一言を置いて…枢木卿はシャワーブースを出て行った…

 身支度をして、すぐにルルーシュ皇子の待つアリエスの離宮に向かう。
流石に…(現場ではあの程度の戦闘は結構当たり前だが)訓練生に対してあんな形で自分のやりたい事の為の越権行為は…
騎士として諌めなくてはならない…
解っていない訳でもないだろうが…
確かに…枢木卿も骨折くらいしてやればよかったのかもしれない…
負けず嫌いなルルーシュ皇子の事…最初はそんなつもりはなかったと思われる。
普通に枢木卿だけを狙った攻撃だったが…段々、枢木卿が頑張ってしまって…ルルーシュ皇子も頑張ってしまったのだろう…
枢木卿が変に頑張ってしまったおかげで、ルルーシュ皇子がその負けず嫌いな性格をフル回転させて…頑張ってしまい…
そして…他の訓練生たちに影響が出てしまった…
―――どうりで…教官たちが俺に対して妙な態度を取っていた訳だ…
そう思いながら、アリエスの離宮に戻ると…
「あら…お帰りなさい…枢木卿…」
「あ…マリアンヌ様…。あの…ルルーシュは…?」
最初に出迎えてくれたのはルルーシュ皇子の母君である、マリアンヌ皇妃だった…。
「ルルーシュなら…自室にこもって何か色々と考えているみたいだけど…。折角のお休みなのに…何をしているのかしら…」
マリアンヌ皇妃が頬に人差し指を当てながらそんな事を呟いている。
枢木卿は大体、今ルルーシュ皇子が何を考えているのかが解っている。
「あ…ルルーシュが休みなのに…自分は軍の訓練に出かけてばかりなので…退屈をしておられるんでしょう…。ストレスもたまっているみたいですし…」
枢木卿がそんな風にフォローすると…マリアンヌ皇妃がにっこりと笑って枢木卿にこう告げる。
「ごめんなさいね…あの子…我儘で…。でも…あなたがいてくれて本当によかったわ…。どうせ、後先考えずに自分のやりたい事をごり押しして…人に迷惑をかけちゃったんじゃないの?」
「え?」
枢木卿がマリアンヌ皇妃の言葉に目を丸くしていると、マリアンヌ皇妃がころころと笑いだした。
「母親って…面白いものね…。自分の子供の事だと…何でもわかっちゃうのよね…。あなたも大変かもしれないけれど…あの子の事…よろしくね…」
改まってマリアンヌ皇妃からこんな事を告げられてしまうと…なんて答えていいのか解らない。
どうやら…マリアンヌ皇妃はルルーシュ皇子が(具体的に何をしたかは解っていなくても)何かをして人様に迷惑をかけた事を察知していたのだろう。
そして…枢木卿のこの態度で確信を得てしまったらしい…
「申し訳ありません…マリアンヌ様…。自分の力が至らないばかりに…」
枢木卿が深々と頭を下げてマリアンヌに謝った。
「いいのよ…。まぁ、明日、私が出向いて、訓練生の教官たちには私から謝罪しておきます。あなたは…あの子にしっかりとお灸をすえてやって頂戴ね…」
そう言って…マリアンヌ皇妃は離宮の奥の…自室へと入って行った…

―――コンコン…
 枢木卿がルルーシュ皇子の部屋の扉をノックする。
流石に…マリアンヌ皇妃にまであんな風に言われてしまうと…
大体、お灸をすえると云うのも…どうしたらいいのか解らない…。
でも、ルルーシュ皇子の騎士である以上…ルルーシュ皇子が間違った事をしたのであれば、専任騎士である枢木卿が諌めなくてはならないと…
そんな風に思う。
何も。主の云う事を全部聞く事が忠誠ではない。
間違った事をした時にはちゃんと諌めてやるのも…忠義の形だ…
『どうぞ…』
中から…ルルーシュ皇子の入室を許可する返事がある。
枢木卿は静かに扉をあける。
実際に、どうやって諌めるのがいいか…迷うところだ。
いくら騎士だと云ったって…枢木卿だってルルーシュ皇子と同じ歳だ。
ただ…今回のルルーシュ皇子のやった事が…越権行為であり…この先…ルルーシュ皇子の支配下に置かれるかもしれない訓練生たちの不安を煽った事に対しては…ちゃんと、指摘して、改めさせる必要があると…そう考える。
「ルルーシュ…」
いつもより低い声で枢木卿がルルーシュ皇子の名前を呼ぶ…。
ルルーシュ皇子は枢木卿の普段とは違う雰囲気に気づいていないらしく…パソコンに向かって何かを打ち込んでいる。
「お帰り…スザク…」
この状態を見ると…恐らくルルーシュ皇子に自覚はないと思われる。
「ルルーシュ…話がある…。だから…手を休めて…俺の方を見ろ…」
ルルーシュ皇子はここまで云われて枢木卿がいつもと違う雰囲気である事に気が付く。
しかし…それほど深刻に考えている様子はない。
「なんだ?」
「ルルーシュ…お前は…今日…軍の訓練の野戦シミュレーションで…指揮をしていたらしいな…。しかも…俺を集中攻撃する為のプログラムで…」
枢木卿の声の様子がいつもと違う…
その事に気がついたルルーシュ皇子が…少しだけ表情を変える。
「あれは…。でもスザクはぴんぴんしているじゃないか…」
「ああ…俺はな…。確かに俺と同じ隊にいた訓練生たちにも普段と変わらない程度のけがしかなかった…。でも…ルルーシュの指揮で…訓練生全体に不安を残した事を自覚しているか?」
枢木卿の言葉に…流石のルルーシュ皇子もびくっと身体を震わせた。
「俺の看病をしたいなんて言っていたが…そんな事の為に皇族の権力を使って…あんな越権行為をしたのか?ひょっとしたら…あの訓練生の中に将来、お前の手足となって働く者もいるかもしれないのに…。今日…シャワーを浴びている時に…俺と同じ隊にいた訓練生に聞かれたよ…。『ルルーシュ殿下と喧嘩でもしたんですか?』ってね…。確かに今日の事はそう言われても仕方ないと思う…。俺だって、何か変だと思っていた…」
段々…枢木卿の言っている事が理解出来てきて…ルルーシュ皇子も顔色を変えて行く。
そう…ルルーシュ皇子はシュナイゼル皇子の下で作戦指揮を執っている。
作戦指揮を円滑に行っていく場合…兵士たちとの信頼感が不可欠なものだ…。
今日のルルーシュ皇子の行為は…確かに軽率と言えば…軽率な行為であった事は…認めざるを得ない…

 ルルーシュ皇子の表情が変わって行くのを見て、内心、枢木卿は安心する。
枢木卿の言葉を理解して、自分のやった事についてきちんと振り返っているという証拠だから…
しかし…きちんと云うべき事は云って、ルルーシュ皇子の行動を改める方向に向けて行かなくてはならない。
「ルルーシュ…お前は自分の皇族としての立場とその権力を知らな過ぎる…。マリアンヌ様がいくら庶民の出だと云ったところで…皇族だし、お前だって、マリアンヌ様の長子であり、しかもシュナイゼル殿下の片腕とまで言われている皇子殿下なんだ…。お前の行動は…下々の者に大きな影響を与える事を自覚しろ…」
枢木卿がそこまで云うと…ルルーシュ皇子が身体を震わせ…声も震わせながら…一言言葉にした…
「ごめん…なさい…」
今にも泣きそうになっているルルーシュ皇子の顔を見て…やっと、大きく息を吐いた。
元々頭の悪い皇子殿下ではない。
人の言っている事をきちんと理解できる…だからこそ、あのシュナイゼル皇子の下で様々な功績をあげているのだろう。
「俺に謝っても仕方ない…。明日…訓練生たちに謝りに行こう…。俺も一緒に謝るから…」
「謝る…?」
「そうだ…。いくら皇族だって人間だ…。間違いを犯すことだってある…。間違いを犯した時にしなくてはいけない事は…迷惑をかけた相手にきちんと謝る事…。二度と同じ間違いを犯さない事…。その二つだ…」
枢木卿の言葉にルルーシュ皇子がこくんと頷いた。
いくらなんでもルルーシュ皇子は調子に乗り過ぎた…と…今更ながら気がついた。
枢木卿が指摘してくれなければ…気付かなかったかもしれない…。
これから先、皇位継承順位の高くないルルーシュ皇子がこのブリタニア帝国の皇族として生きて行く為には…母君同様…実力を認められて、自分の地位を築き上げる事が必須だ。
皇族の中では人一倍努力して、功績をあげて行かなくては生きていけない立場なのだ…
「ごめん…スザク…。ごめん…」
ルルーシュ皇子はついに泣き出した。
こんな時に涙を見せるのは卑怯だと思う…
でも…それでも…
「解ったならいいよ…。明日…ちゃんと謝りに行こう…。それに…俺もごめん…。ルルーシュがそこまで色々ストレス溜めている事に…気付かなくて…」
「え?」
ルルーシュ皇子は枢木卿の言葉に驚いた表情を見せた。
「ルルーシュは普段は…そんな事はしないだろ?俺に我儘を云う事はあってもさ…他人には絶対に迷惑をかけていないから…。だから…色々辛かったのかな…と思ってさ…」
少しだけ目を潤ませながら枢木卿の顔を見つめているルルーシュ皇子に…さっきとは打って変わって優しい表情になった。
「明日…きちんと謝る事…。そしたら…明後日…俺、病気になるから…。そしたら…一緒にいよう?」
「でも…」
「仮病も病気の一つ…。看病はさせてやれないけど…一緒にいられるだろ?マリアンヌ様とジェレミア卿から怒られちゃうかもしれないけどさ…」
ルルーシュ皇子に悪戯っぽく笑いかけると…ルルーシュ皇子は枢木卿に抱きついて…暫くの間…声をあげて泣いていた…

END


あとがきに代えて



今回は…昨日の話の結末を書いてみました。
あのまま放置では…ちょっと…色々不都合だなぁ…と思いまして…
で、昨日のコメディとは違ってちょっとシリアスになって…最後はバカップル…
これはこれで楽しいかなぁ…と…
うちの騎士皇子のルルーシュ君は…何かと頭でっかちで変なところで優秀なので、ちょっと人より成長していない部分があるって事で…
と云うか、この話を描き始めた頃と…随分話が変わっていますね…
まぁ、昨日の段階で相当久しぶりでしたしね…
こうした子供っぽいルルーシュと、それを兄のような気分で見つめているスザクは書いていた楽しいです。
本編で必要以上に大人びていたルルーシュを見ていて…
少しは子供の時間を作ってあげたくて…(笑)
この話は…書いていて妄想が膨らむので…
次はこんなに間を開けないで書きたいと思います。


☆拍手のお返事


水流さま:こんばんは、いつもコメントありがとうございます。
昨日、感想を頂けたので…ちょっと続きを描いてみました。
実は…このシリーズは久しぶりに書いているんですけど…結構好きなんですよね…
『皇子とレジスタンス』とはまた、ちょっと違った雰囲気の騎士皇子で…
昨日頂いた感想を参考にいろいろ弄って続きを書いてみました。

しかし…ここのところ…と云うか7月の入院を境に…いろんな意味でこちらへの反応が激減しているんですけど…
読み手様の立場から見て…和泉の文章…そんなに変わりましたか?
ホント、アクセスログを見るとすっごいあからさまに結果が出ているんですが…
文章…疲れているのかなぁ…
それとも飽きられたのかなぁ…
確かに…『ギアス』人口は減っているのは解りますけどね…(涙)


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posted by 和泉綾 at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2009年08月19日

騎士皇子シリーズ7

皇子の我儘



 ルルーシュ皇子は枢木卿が守るべき皇子である。
この皇子様…普段は、帝国宰相である第二皇子のシュナイゼル皇子にも覚えがめでたい程有能な皇子様なのだが…
だが…年若いうちからそんな風に有能な皇子様をやっていて…ストレスがたまらない筈もなく…
そんな時はいつも枢木卿に我儘を云っている。
普段はちょっと幼い気もする様な我儘程度なのだが…
例えば、王宮を抜け出して城下を探検しようだとか…ルルーシュ皇子の異母姉君であるコーネリア皇女に剣術で勝つ為に勝てるようになるまで特訓しろ(←無茶言うな!)だとか…その程度なら…まぁ、ルルーシュ皇子が納得するまで付き合ってやればいいのだが…
しかし…枢木卿も人間だ。
出来る事と出来ない事がある。
ある時…
ルルーシュ皇子は枢木卿におかしな…と云うか、無茶振りな要求を突き付けてきた。
自慢ではないが、枢木卿…ルルーシュ皇子に『体力バカ』と言われるだけあって、非常に身体が丈夫だ。
毎年のインフルエンザの予防接種もルルーシュ皇子にがたがた言われるから受けているが…基本的にそんなものに頼らなくても風邪ひとつひく事はない。
昨年のルルーシュ皇子の誕生日など…ルルーシュ皇子本人が風邪をひいてしまって、お祝いどころじゃなかったくらいだ。
それでも、枢木卿は風邪はひかないし、体調を崩したところを見た事も一度もない。
ルルーシュ皇子と一緒にルルーシュ皇子の公務には必ず付いて回っているし…
確かに頭を使う仕事の場合は、ルルーシュ皇子が頑張るのだが、体力勝負の場合は枢木卿が頑張っているのだ。
そんな枢木卿にルルーシュ皇子が付きつけた要求とは…
まぁ、シュナイゼル皇子直属の特別派遣嚮導技術部のロイド辺りに頼めば出来ない事もないだろうが…ルルーシュ直属の部署じゃないから頼む事も出来ない。(黙ってやればシュナイゼル皇子にばれる事はないだろうし、ばれたとしても特に怒られる事でもないと思われる)
ルルーシュ皇子の母君マリアンヌ皇妃に相談してみても…彼女がどれだけ枢木卿をしごいてもルルーシュ皇子が望む程の結果は得られなかった。(一体何をしたいんだ?)
ルルーシュ皇子は、普段ならその頭脳で前線では大人たちの度肝を抜いているが…こうして、自分の為に使おうとすると…どうもうまくいかないらしい…
考えてもダメなら…
なら、枢木卿に直接お願いしてしまえばいい…
最終的にはそういう結論に至ったのだ…
「スザク…病気になれ!」

 ルルーシュ皇子のその一言に…枢木卿は…
何と答えていいのか解らず…
と云うか、ここで、何か答える事が本当に正しいのかが良く解らない。
「は?ルルーシュ…自分で云っている言葉の意味…ちゃんと解っているのか?」
枢木卿はルルーシュ皇子のおでこに掌を当てながらそう尋ねる。
「う〜〜〜ん…熱はなさそうだけど…。何か悪いものでも拾い食いした?」
枢木卿はいたって真面目にルルーシュ皇子にそんな事を尋ねている。
ルルーシュ皇子は枢木卿のそんな態度に大層怒りを覚えたらしく、ルルーシュ皇子の額に当たっている枢木卿の掌を払いのける。
「スザク!僕をバカにしているのか!?僕はいたって健康だし、拾い食いなんて事していないのは四六時中僕と一緒にいるお前が良く知っているだろうが!」
ルルーシュ皇子が枢木卿に怒鳴り散らしているが…
しかし、普通に考えれば、枢木卿の対応はいたって自然だし、不思議はない。
公務の時には非常にその優秀明晰な頭脳を発揮するのだが…
一旦公務から離れてしまうと…どこか数本、きれちゃっている様にも見える…
と云うか、こんな事を言われたらそう思ってしまっても仕方ないだろう。
「あのさぁ…いきなり病気になれ…って云われても…。多分…ジェレミア卿も今の俺と同じ反応すると思うぞ…。と云うか、ジェレミア卿なら…その場で大泣きすると思うけど…」
枢木卿が呆れ顔でルルーシュ皇子にそんな風に言うが…
大体、そんな命令を下して、その命令を素直に聞いたところで、ルルーシュ皇子が何をしたいのか、よく解らない…
否、全然解らない…
そもそも、ルルーシュ皇子は枢木卿を『体力バカ』と呼んでいるくらいなのだから、命令されてそう簡単に病気になる事など出来る筈もない…
と云うか、普通の人だっていきなりこんな事を言われても困ってしまうだろう。
「僕はスザクだから頼んでいるんだ…。ジェレミアに云ったら…泣くと云うよりも、全力で氷水の風呂に入って翌日には高熱を出してくれるだろうな…。でも、ジェレミアは母上の部下だ…。僕の身勝手でそんな真似をさせられないからな…」
なんだか…尤もそうな事を云っておきながら、中身を分析するとめちゃくちゃである。
そんなルルーシュ皇子にツッコミを入れるべきかどうか…
正直悩んでしまう。
ここで、ご機嫌を損ねると色々あとが面倒だし…
しかし、ルルーシュ皇子の表情を見ていると本当に至って大真面目に云っているように見える。
流石にルルーシュ皇子の騎士をやっていれば、その程度の事は察しがつく。
枢木卿が一生懸命普段はあんまり使う事のない頭をフル回転していると…
「僕は…スザクの…看病をしてみたいんだ…」
と…ルルーシュ皇子が小さな声でそんな事を漏らした。
「へ?」
ルルーシュ皇子のその一言に…枢木卿も…ただ、ひらがな一文字しか出て来なかった。
とりあえず、もう一度、ルルーシュ皇子の小さな声で漏らした、(多分)ルルーシュ皇子の本音と思われる言葉を自分の頭の中で分析し始める。

 とりあえず、ここで、ルルーシュ皇子の一言だけで分析するのは不可能と云う結論に至るまで約3分…
ウルト●マンがその姿で地球にいられる時間…
一般的なカップラーメンが熱湯を入れて、美味しく食べられる頃合いになる時間…
その3分と云う時間…長いのか短いのか…今のところよく解らない…
と云うよりもそれどころじゃない…
「だって…スザクは…僕の誕生日の時…僕の看病をしてくれた…。でも…スザクは…風邪も引かないし、けがをしたって、入院したり、僕がスザクの面倒を見なくちゃならないって云うほどひどい状態になった事ないし…。それに…僕…」
ルルーシュ皇子の段々小さくなっていく声に…
枢木卿はちょっとかわいいと思ってしまったのだが…
しかし…
その感想はすぐに撤回したくなった…
「ほら…『バカは風邪引かない』って云うけど、『夏風邪はバカが引く』って云うだろ?だから…今は夏だし…スザクに頼めば…出来るかなって…」
その一言に、ぷっちんと切れてしまいそうになるが…
しかし、ルルーシュ皇子は枢木卿の守るべき皇子様だし、枢木卿はルルーシュ皇子の専任騎士で、主の事を守らなくてはならないのだ…
心身共に…
身体の方は守っていると思う…。
戦場でも身をタテにしてルルーシュ皇子を守っているし、平和な時に、食の細いルルーシュ皇子が食べたくないと云っても確実に食べさせている。
そして、読書に熱中して夜更かしをしようとすると、無理矢理でも寝かしつけている…
一体どこの保父さんだ?と聞かれそうなくらい甲斐甲斐しくルルーシュ皇子の傍にいて、ルルーシュ皇子を守っていると思っているのだが…
しかし…
ルルーシュ皇子にもストレスがあったらしい…
どこで、何を見聞きしてそんな事をしたいと云い始めたのかは知らないが…
それでも、真剣な目で…しかも恥ずかしそうに枢木卿にそんな事をぶっちゃけている(と云っては失礼かもしれないが…内容がこれでは『ぶっちゃけている』でももはや構わない)
確かに…内容がこれでなければ…枢木卿にとっては『萌え♪』要素たっぷりなルルーシュ皇子なのだが…
流石に、いきなり『病気になれ!』と云う命令に…素直に『イエス、ユア・ハイネス』と答えられるのは…多分、ルルーシュ皇子の教育係を任されているジェレミア卿と、コーネリア皇女の騎士であるギルバート=GP=ギルフォード卿くらいだろう…
否、ギルフォード卿の場合は、『私が風邪を引いて熱を出したとしても…姫様の為にこの身を持って姫様をお守り致す!』とか云って、看病させてくれるような状況にはなるまい…
そもそも、ルルーシュ皇子ではないのだから、コーネリア皇女がそんな無茶振りな命令を出すとも思えない…(まぁ、仮の話だから)

 枢木卿は大きくため息を吐いて、ルルーシュ皇子の両肩に自分の両手を乗せる。
「ごめん…ルルーシュ…。俺、夏風邪も引いた事ないんだ…。それに…俺が熱でも出したら誰がルルーシュを守るんだよ…」
普段よりも幼い雰囲気を醸し出しているルルーシュ皇子に枢木卿がちょっと困ったように…でも、バカな弟に色々諭す兄の気分でそんな事を云う。
枢木卿とルルーシュ皇子は、同じ歳であるが、枢木卿の方が5ヶ月程誕生日が速いのだ。
だから、『弟を諭すお兄ちゃん…でもいいよな…』と、枢木卿自身、ちょっと苦しいというか、無理があるというか…適当な言い訳を自分でしている。
「え?スザクは…熱を出したり、寝込んだりしたこと…ないのか…?」
ちょっとだけ悲しそうな顔をしているルルーシュ皇子を見て枢木卿はちょっぴりドキッとしてしまう。
しかし…ここで無茶振りをしているのはルルーシュ皇子の方である。
この可愛さに負けて氷水の風呂に一晩中浸かる事なんてできない…
まして、これまで風邪ひとつひいた事がなかった枢木卿が一晩氷水につけておいたところで病気になるかどうかは微妙なところだ…
「まぁ…俺の記憶の中で誰かに看病して貰った記憶って…ないんだよ…。だから…ルルーシュ…ごめん…」
とりあえず、ルルーシュ皇子が残念そうな顔をしているので枢木卿もちょっと謝っておく。
こうした表情も可愛いのだが…
その裏に隠れている悪魔のような無茶振りに付きあわされてたまるか…と云う部分は否めない。
そもそも、ルルーシュ皇子が枢木卿よりも寝込んじゃうことが多いのは、確かに若いながらにも大きな責務を負っている事もあるが…
普段の食の細さも絶対に起因している。
そして、自分が何かに夢中になると睡眠も食事もそっちのけになってしまうところだって絶対に原因になっているに違いないのだ。
「そうか…ごめん…スザク…。ひょっとしたら…そうやってスザクが具合悪くなれば…少しはスザクが身体を休める事が出来るし…僕と一緒の時間…僕に甘えても…誰にも怒られないかと思っただけなんだ…」
しゅんとなってルルーシュ皇子がここまで考えてきた事の真相を話している。
そんなルルーシュ皇子を見ていて…枢木卿自身、心臓が飛び出そうなほどドキッとしてしまう。
ちょっとだけ、子供っぽくなって、ちょっとだけ泣きそうになっていて、ちょっとだけ顔を赤らめていて…
そんなルルーシュ皇子の顔を見る事が出来るのは、ルルーシュ皇子の専任騎士の特権だと…枢木卿は思っている。
「有難う…ルルーシュ…。でも俺は大丈夫だから…。今度…二人で休みをもらえたら…また、離宮に行こうな…(オフラインの『素直な気持ち』を参照)」
そう云いながら…枢木卿はルルーシュ皇子の細い身体をぎゅっと抱きしめた。

 で、翌日…
枢木卿は軍の訓練で野戦訓練をしているのだが…
いつもとちょっとだけ様子が違う…。
実際の戦闘のシミュレーションとして行われる訓練だから…
気を抜けば怪我をする事は承知しているのだが…
しかし…枢木卿の他にもターゲットがいる筈なのに…
敵軍に扮した訓練生たちの枢木卿への攻撃は凄まじいのだ。
「っく…どうして…俺ばかり…」
最初の内はそんな事を口にする余裕があったが…
しかし、時間が経ち、体力の消耗が激しくなるにつれて、枢木卿への攻撃も激しくなっている。
勿論、他の訓練生たちがいるのだから、全て枢木卿に集中している訳ではないのだが…
どう、甘く見積もっても、敵軍に扮している訓練生の1割以上が枢木卿に割かれている気がする。
殺す気がない事は解る。
ただ…怪我をさせる気満々な攻撃が続いている。
そんな激しい訓練の中で身体中に切り傷やら擦り傷が無数にできた。
―――また…ルルーシュに手当てをして貰えるかな…
などと考えてみてはいるが…
しかし、訓練後半になってくると、そんな事を考える事すら出来なくなる。
そして…訓練用の司令室には…
「う〜ん…さすがスザクだな…」
モニタを見ながらそんな事を呟いている某第11皇子…
つまり、枢木卿の仕えるべき皇子様だ。
「あ…あの…殿下…。これでは…他の訓練生たちの訓練には…」
「まだ、スザクが入院して自分で身動きとれない程の怪我をしていないじゃないか…。僕は…スザクの看病をしたいんだよ…」
おろおろする訓練生たちの指導教官が遠慮がちに訴える。
しかし、そんな教官等目もくれずにルルーシュ皇子がモニタに目をやる。
「次…第三部隊は枢木スザクの背後に回り、半分が周囲にいる訓練生たちを攻撃…残りで枢木スザクを一斉攻撃…」
モニタを見ながらルルーシュ皇子がマイクに向かって命令している。
つまり、枢木卿の敵側に当たる訓練生たちの指揮官をルルーシュ皇子がやっていて、何としても枢木卿の看病をしたいルルーシュ皇子が必死になって枢木卿を攻撃しているのだ。
しかし、おろおろしながらも、指導教官が枢木卿の運動能力に目を丸くする。
あれだけの攻撃をくらって未だに擦り傷や切り傷程度のけがしかしていないのだ。
そして、ルルーシュ皇子には決して言えないが…
―――皇子殿下の騎士になんて…なんて勿体ない…。前線で先頭切らせた方が絶対に役に立つ人材だと云うのに…
と思っているのはこの教官以下、今回のこの枢木スザクの凄まじい戦いぶりを見ていた者たちが思っていたのだった…

END


あとがきに代えて



普段はあんまり書かない黒ルルーシュ…
黒ルルと云うか…無茶ぶりルルですね…
最初はどうやってこう言った話に持って行こうか悩んでいたんですけど…
それでも、病気ネタ、看病したいルルーシュネタで云ったら結構出来ました。
ちなみにすっごい久しぶりですね…騎士皇子シリーズ…
ここのところ、ずっと『ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説』でしたから…
それに、ちょっとネタ切れも入ってきているので…
で、気分を変えてみようかなと思いまして…

あと、2つ程イベントのサークル参加の申し込みをしました。
『HYPER CONTRAST』はこのブログに張っているバナーの下を見て頂ければわかりますね…
あと、冬コミ…申し込んでみました。
実際に当日、参加できるかどうかは、解らないのはいつもの事ですが…
和泉の場合、イベント参加の申し込みって、結構賭けに近いので…
今のところイベントと入院が被った事はないですが、名古屋のコミックライブは一回体調悪くて(しかも退院直後だった)申し込みしておいて不参加でしたし…
とりあえず、申し込んだからには。、参加出来るとなれば、イベントに合わせて体調管理をしっかりして行きますけど…
どうなる事やら…


☆拍手のお返事


水流さま:こんばんは、いつもコメントありがとうございます。
スザクをお坊ちゃまにするといつも、わがままでちょっと寂しいっぽいスザクになっちゃうんですよね…
多分、1期のSound Episodeの子スザルルネタの影響かもしれないんですが…
スザク自身、確かにお金持ちで有力者の家に生まれたかもしれないけれど…家族愛と云う点ではルルーシュと同じくらい飢えていたような気がします。
それゆえに、寂しさの裏返しのわがまま…とか、ぶっきらぼうな態度…と受け取っていたので…
でも、こういったほんわかスザルルもよいな…と思う今日この頃です。

委託をお願いしている分は今日、発送いたしました。
メールも送っておりますので…
届いたら、一応確認だけお願いします。


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こちらは、拍手ページと違って、10ページも読まなくちゃいけないなどと云う、無体な事はありませんので(爆)

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posted by 和泉綾 at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

騎士皇子シリーズ7

皇子の我儘



 ルルーシュ皇子は枢木卿が守るべき皇子である。
この皇子様…普段は、帝国宰相である第二皇子のシュナイゼル皇子にも覚えがめでたい程有能な皇子様なのだが…
だが…年若いうちからそんな風に有能な皇子様をやっていて…ストレスがたまらない筈もなく…
そんな時はいつも枢木卿に我儘を云っている。
普段はちょっと幼い気もする様な我儘程度なのだが…
例えば、王宮を抜け出して城下を探検しようだとか…ルルーシュ皇子の異母姉君であるコーネリア皇女に剣術で勝つ為に勝てるようになるまで特訓しろ(←無茶言うな!)だとか…その程度なら…まぁ、ルルーシュ皇子が納得するまで付き合ってやればいいのだが…
しかし…枢木卿も人間だ。
出来る事と出来ない事がある。
ある時…
ルルーシュ皇子は枢木卿におかしな…と云うか、無茶振りな要求を突き付けてきた。
自慢ではないが、枢木卿…ルルーシュ皇子に『体力バカ』と言われるだけあって、非常に身体が丈夫だ。
毎年のインフルエンザの予防接種もルルーシュ皇子にがたがた言われるから受けているが…基本的にそんなものに頼らなくても風邪ひとつひく事はない。
昨年のルルーシュ皇子の誕生日など…ルルーシュ皇子本人が風邪をひいてしまって、お祝いどころじゃなかったくらいだ。
それでも、枢木卿は風邪はひかないし、体調を崩したところを見た事も一度もない。
ルルーシュ皇子と一緒にルルーシュ皇子の公務には必ず付いて回っているし…
確かに頭を使う仕事の場合は、ルルーシュ皇子が頑張るのだが、体力勝負の場合は枢木卿が頑張っているのだ。
そんな枢木卿にルルーシュ皇子が付きつけた要求とは…
まぁ、シュナイゼル皇子直属の特別派遣嚮導技術部のロイド辺りに頼めば出来ない事もないだろうが…ルルーシュ直属の部署じゃないから頼む事も出来ない。(黙ってやればシュナイゼル皇子にばれる事はないだろうし、ばれたとしても特に怒られる事でもないと思われる)
ルルーシュ皇子の母君マリアンヌ皇妃に相談してみても…彼女がどれだけ枢木卿をしごいてもルルーシュ皇子が望む程の結果は得られなかった。(一体何をしたいんだ?)
ルルーシュ皇子は、普段ならその頭脳で前線では大人たちの度肝を抜いているが…こうして、自分の為に使おうとすると…どうもうまくいかないらしい…
考えてもダメなら…
なら、枢木卿に直接お願いしてしまえばいい…
最終的にはそういう結論に至ったのだ…
「スザク…病気になれ!」

 ルルーシュ皇子のその一言に…枢木卿は…
何と答えていいのか解らず…
と云うか、ここで、何か答える事が本当に正しいのかが良く解らない。
「は?ルルーシュ…自分で云っている言葉の意味…ちゃんと解っているのか?」
枢木卿はルルーシュ皇子のおでこに掌を当てながらそう尋ねる。
「う〜〜〜ん…熱はなさそうだけど…。何か悪いものでも拾い食いした?」
枢木卿はいたって真面目にルルーシュ皇子にそんな事を尋ねている。
ルルーシュ皇子は枢木卿のそんな態度に大層怒りを覚えたらしく、ルルーシュ皇子の額に当たっている枢木卿の掌を払いのける。
「スザク!僕をバカにしているのか!?僕はいたって健康だし、拾い食いなんて事していないのは四六時中僕と一緒にいるお前が良く知っているだろうが!」
ルルーシュ皇子が枢木卿に怒鳴り散らしているが…
しかし、普通に考えれば、枢木卿の対応はいたって自然だし、不思議はない。
公務の時には非常にその優秀明晰な頭脳を発揮するのだが…
一旦公務から離れてしまうと…どこか数本、きれちゃっている様にも見える…
と云うか、こんな事を言われたらそう思ってしまっても仕方ないだろう。
「あのさぁ…いきなり病気になれ…って云われても…。多分…ジェレミア卿も今の俺と同じ反応すると思うぞ…。と云うか、ジェレミア卿なら…その場で大泣きすると思うけど…」
枢木卿が呆れ顔でルルーシュ皇子にそんな風に言うが…
大体、そんな命令を下して、その命令を素直に聞いたところで、ルルーシュ皇子が何をしたいのか、よく解らない…
否、全然解らない…
そもそも、ルルーシュ皇子は枢木卿を『体力バカ』と呼んでいるくらいなのだから、命令されてそう簡単に病気になる事など出来る筈もない…
と云うか、普通の人だっていきなりこんな事を言われても困ってしまうだろう。
「僕はスザクだから頼んでいるんだ…。ジェレミアに云ったら…泣くと云うよりも、全力で氷水の風呂に入って翌日には高熱を出してくれるだろうな…。でも、ジェレミアは母上の部下だ…。僕の身勝手でそんな真似をさせられないからな…」
なんだか…尤もそうな事を云っておきながら、中身を分析するとめちゃくちゃである。
そんなルルーシュ皇子にツッコミを入れるべきかどうか…
正直悩んでしまう。
ここで、ご機嫌を損ねると色々あとが面倒だし…
しかし、ルルーシュ皇子の表情を見ていると本当に至って大真面目に云っているように見える。
流石にルルーシュ皇子の騎士をやっていれば、その程度の事は察しがつく。
枢木卿が一生懸命普段はあんまり使う事のない頭をフル回転していると…
「僕は…スザクの…看病をしてみたいんだ…」
と…ルルーシュ皇子が小さな声でそんな事を漏らした。
「へ?」
ルルーシュ皇子のその一言に…枢木卿も…ただ、ひらがな一文字しか出て来なかった。
とりあえず、もう一度、ルルーシュ皇子の小さな声で漏らした、(多分)ルルーシュ皇子の本音と思われる言葉を自分の頭の中で分析し始める。

 とりあえず、ここで、ルルーシュ皇子の一言だけで分析するのは不可能と云う結論に至るまで約3分…
ウルト●マンがその姿で地球にいられる時間…
一般的なカップラーメンが熱湯を入れて、美味しく食べられる頃合いになる時間…
その3分と云う時間…長いのか短いのか…今のところよく解らない…
と云うよりもそれどころじゃない…
「だって…スザクは…僕の誕生日の時…僕の看病をしてくれた…。でも…スザクは…風邪も引かないし、けがをしたって、入院したり、僕がスザクの面倒を見なくちゃならないって云うほどひどい状態になった事ないし…。それに…僕…」
ルルーシュ皇子の段々小さくなっていく声に…
枢木卿はちょっとかわいいと思ってしまったのだが…
しかし…
その感想はすぐに撤回したくなった…
「ほら…『バカは風邪引かない』って云うけど、『夏風邪はバカが引く』って云うだろ?だから…今は夏だし…スザクに頼めば…出来るかなって…」
その一言に、ぷっちんと切れてしまいそうになるが…
しかし、ルルーシュ皇子は枢木卿の守るべき皇子様だし、枢木卿はルルーシュ皇子の専任騎士で、主の事を守らなくてはならないのだ…
心身共に…
身体の方は守っていると思う…。
戦場でも身をタテにしてルルーシュ皇子を守っているし、平和な時に、食の細いルルーシュ皇子が食べたくないと云っても確実に食べさせている。
そして、読書に熱中して夜更かしをしようとすると、無理矢理でも寝かしつけている…
一体どこの保父さんだ?と聞かれそうなくらい甲斐甲斐しくルルーシュ皇子の傍にいて、ルルーシュ皇子を守っていると思っているのだが…
しかし…
ルルーシュ皇子にもストレスがあったらしい…
どこで、何を見聞きしてそんな事をしたいと云い始めたのかは知らないが…
それでも、真剣な目で…しかも恥ずかしそうに枢木卿にそんな事をぶっちゃけている(と云っては失礼かもしれないが…内容がこれでは『ぶっちゃけている』でももはや構わない)
確かに…内容がこれでなければ…枢木卿にとっては『萌え♪』要素たっぷりなルルーシュ皇子なのだが…
流石に、いきなり『病気になれ!』と云う命令に…素直に『イエス、ユア・ハイネス』と答えられるのは…多分、ルルーシュ皇子の教育係を任されているジェレミア卿と、コーネリア皇女の騎士であるギルバート=GP=ギルフォード卿くらいだろう…
否、ギルフォード卿の場合は、『私が風邪を引いて熱を出したとしても…姫様の為にこの身を持って姫様をお守り致す!』とか云って、看病させてくれるような状況にはなるまい…
そもそも、ルルーシュ皇子ではないのだから、コーネリア皇女がそんな無茶振りな命令を出すとも思えない…(まぁ、仮の話だから)

 枢木卿は大きくため息を吐いて、ルルーシュ皇子の両肩に自分の両手を乗せる。
「ごめん…ルルーシュ…。俺、夏風邪も引いた事ないんだ…。それに…俺が熱でも出したら誰がルルーシュを守るんだよ…」
普段よりも幼い雰囲気を醸し出しているルルーシュ皇子に枢木卿がちょっと困ったように…でも、バカな弟に色々諭す兄の気分でそんな事を云う。
枢木卿とルルーシュ皇子は、同じ歳であるが、枢木卿の方が5ヶ月程誕生日が速いのだ。
だから、『弟を諭すお兄ちゃん…でもいいよな…』と、枢木卿自身、ちょっと苦しいというか、無理があるというか…適当な言い訳を自分でしている。
「え?スザクは…熱を出したり、寝込んだりしたこと…ないのか…?」
ちょっとだけ悲しそうな顔をしているルルーシュ皇子を見て枢木卿はちょっぴりドキッとしてしまう。
しかし…ここで無茶振りをしているのはルルーシュ皇子の方である。
この可愛さに負けて氷水の風呂に一晩中浸かる事なんてできない…
まして、これまで風邪ひとつひいた事がなかった枢木卿が一晩氷水につけておいたところで病気になるかどうかは微妙なところだ…
「まぁ…俺の記憶の中で誰かに看病して貰った記憶って…ないんだよ…。だから…ルルーシュ…ごめん…」
とりあえず、ルルーシュ皇子が残念そうな顔をしているので枢木卿もちょっと謝っておく。
こうした表情も可愛いのだが…
その裏に隠れている悪魔のような無茶振りに付きあわされてたまるか…と云う部分は否めない。
そもそも、ルルーシュ皇子が枢木卿よりも寝込んじゃうことが多いのは、確かに若いながらにも大きな責務を負っている事もあるが…
普段の食の細さも絶対に起因している。
そして、自分が何かに夢中になると睡眠も食事もそっちのけになってしまうところだって絶対に原因になっているに違いないのだ。
「そうか…ごめん…スザク…。ひょっとしたら…そうやってスザクが具合悪くなれば…少しはスザクが身体を休める事が出来るし…僕と一緒の時間…僕に甘えても…誰にも怒られないかと思っただけなんだ…」
しゅんとなってルルーシュ皇子がここまで考えてきた事の真相を話している。
そんなルルーシュ皇子を見ていて…枢木卿自身、心臓が飛び出そうなほどドキッとしてしまう。
ちょっとだけ、子供っぽくなって、ちょっとだけ泣きそうになっていて、ちょっとだけ顔を赤らめていて…
そんなルルーシュ皇子の顔を見る事が出来るのは、ルルーシュ皇子の専任騎士の特権だと…枢木卿は思っている。
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そう云いながら…枢木卿はルルーシュ皇子の細い身体をぎゅっと抱きしめた。

 で、翌日…
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勿論、他の訓練生たちがいるのだから、全て枢木卿に集中している訳ではないのだが…
どう、甘く見積もっても、敵軍に扮している訓練生の1割以上が枢木卿に割かれている気がする。
殺す気がない事は解る。
ただ…怪我をさせる気満々な攻撃が続いている。
そんな激しい訓練の中で身体中に切り傷やら擦り傷が無数にできた。
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しかし、訓練後半になってくると、そんな事を考える事すら出来なくなる。
そして…訓練用の司令室には…
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つまり、枢木卿の仕えるべき皇子様だ。
「あ…あの…殿下…。これでは…他の訓練生たちの訓練には…」
「まだ、スザクが入院して自分で身動きとれない程の怪我をしていないじゃないか…。僕は…スザクの看病をしたいんだよ…」
おろおろする訓練生たちの指導教官が遠慮がちに訴える。
しかし、そんな教官等目もくれずにルルーシュ皇子がモニタに目をやる。
「次…第三部隊は枢木スザクの背後に回り、半分が周囲にいる訓練生たちを攻撃…残りで枢木スザクを一斉攻撃…」
モニタを見ながらルルーシュ皇子がマイクに向かって命令している。
つまり、枢木卿の敵側に当たる訓練生たちの指揮官をルルーシュ皇子がやっていて、何としても枢木卿の看病をしたいルルーシュ皇子が必死になって枢木卿を攻撃しているのだ。
しかし、おろおろしながらも、指導教官が枢木卿の運動能力に目を丸くする。
あれだけの攻撃をくらって未だに擦り傷や切り傷程度のけがしかしていないのだ。
そして、ルルーシュ皇子には決して言えないが…
―――皇子殿下の騎士になんて…なんて勿体ない…。前線で先頭切らせた方が絶対に役に立つ人材だと云うのに…
と思っているのはこの教官以下、今回のこの枢木スザクの凄まじい戦いぶりを見ていた者たちが思っていたのだった…

END


あとがきに代えて



普段はあんまり書かない黒ルルーシュ…
黒ルルと云うか…無茶ぶりルルですね…
最初はどうやってこう言った話に持って行こうか悩んでいたんですけど…
それでも、病気ネタ、看病したいルルーシュネタで云ったら結構出来ました。
ちなみにすっごい久しぶりですね…騎士皇子シリーズ…
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どうなる事やら…


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スザクをお坊ちゃまにするといつも、わがままでちょっと寂しいっぽいスザクになっちゃうんですよね…
多分、1期のSound Episodeの子スザルルネタの影響かもしれないんですが…
スザク自身、確かにお金持ちで有力者の家に生まれたかもしれないけれど…家族愛と云う点ではルルーシュと同じくらい飢えていたような気がします。
それゆえに、寂しさの裏返しのわがまま…とか、ぶっきらぼうな態度…と受け取っていたので…
でも、こういったほんわかスザルルもよいな…と思う今日この頃です。

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posted by 和泉綾 at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2009年06月24日

騎士皇子シリーズ6

懐郷病



 ルルーシュ皇子はちょっと昔の事を思い出していた…
それは…枢木卿と出会って、2年が経ち、ルルーシュ皇子の専任騎士となるべく、叙任式を迎える少し前の事だった。
枢木卿は、ルルーシュ皇子の知らない顔を見せていた。
最初は緊張しているのかと思っていたのだが…
実は…懐郷病…ホームシックにかかっていたと云う…。
2年間、軍の士官学校へ通っていて、そんな報告を受けた事がなかったと云うのに…
士官学校のカリキュラムを終えて、ルルーシュ皇子の指名を受け、これからだと云う時に…枢木卿は本当に落ち込んでしまっていた。
本人も…自分の変化に気づいていたようだが…
ただ、何が自分をそうさせていたのか…よく解らなかったという。
「スザク…」
「何?ルルーシュ…」
ルルーシュが自分のデスクで書類の山を捌きつつ、スザクはその資料を種類別に分けて、整理している。
単調な作業の繰り返しなので、時々、こうして会話を交わさないと、静かな部屋の中では二人とも安らかな眠りの世界へと旅立ってしまう事が多々ある。
そして、その際にかわされる会話の内容と云うのは、基本的に、どうでもいい事が多い。
或いは、どちらかが思い出したくない事…
大抵、話しかけられた方が思い出したくない話題を振られる事になる訳だが…(時々、ルルーシュ皇子が勝手に墓穴を掘って窮地に立つ事もあるが)
「まだ…日本が恋しいか?」
唐突なルルーシュ皇子の質問に、枢木卿が手にしていた資料をぱらぱらと床に落としてしまう。
「え?一体何の話…?」
突然そんな事を尋ねられたってどう答えていいのか解らない。
相手は枢木卿の主であり、枢木卿の人事権のすべてを握っている人物だ。
迂闊な事を云って騎士解任なんて事になったら現在の枢木卿は泣くに泣けない…
日本でだって相当揉めて、ごり押ししてルルーシュ皇子の専任騎士となったと云うのに…
しかも、ルルーシュ皇子の騎士となって既に3年が経っている…
今更『日本が恋しいか?』などと聞かれて、『はい…』と答えてしまったら…下手すると、騎士を解任されて、日本へ強制送還される憂き目に遭い兼ねない。
ルルーシュ皇子があまり考えずに話をする事もあるが…
特にこうした退屈な作業の最中の眠気覚ましの為の会話の時にはよくある。
ただ、たまに本気で考えている話までぶち込まれるものだから…枢木卿も時々返事に困ってしまう事もある訳なのだ。
「別に…正直に云っていいぞ…。なんだったら休暇をやるし…」
相変わらず、何を考えているか解らない自分の主にうっかり頭を抱えてしまう…

 枢木卿が落としてしまった資料を拾い集めながらもう一度尋ねる。
「なぁ…ルルーシュ…。おまえ…俺を日本に還したいの?」
一応…この程度なら即刻解任と云う事はないだろう。
とりあえず、自分の主の真意を知らなくてはその話に乗って行く事は出来ない。
「あ…そうじゃないんだ…。ほら、スザクが僕の騎士叙任式の前に…ホームシックになっちゃったから…。この時期にはそう言う事…あるのかなって…」
枢木卿はルルーシュ皇子の一言で気がついた。
そう言えば、あと数日経つとルルーシュ皇子の騎士となってから丸3年になるのだ。
「否…別にこの時期だからなるんじゃなくて…あの時が…特別だったんだよ…」
枢木卿が何となく心配そうなルルーシュ皇子に返事した。
ルルーシュ皇子自身、枢木卿を手放したくないと思っているのは今も変わらないし、恐らく、ただ、枢木卿が『日本へ帰りたい!』と云ってみたところで、理由もなしに…と云うより、理由があってもルルーシュ皇子が納得できる理由でなければ還す気は毛頭ない。
恐らく、あの時が、最初で最後だった…
枢木卿があんな風に『日本へ帰りたい…』などと言い出したのは…
既に国内外からの来賓も集まっていたし、あの時、あの時点で撤回した場合、下手するとブリタニアと日本との国際問題にもなりかねなかった。
士官学校のカリキュラムを終えて、ルルーシュ皇子のところに来た時…確かに枢木卿は疲れた顔をしていたし、ルルーシュ皇子が心配しても『大丈夫だ…』の一点張りで…
どう見ても大丈夫には見えなかったルルーシュ皇子は枢木卿に黙って在ブリタニアの日本大使館に連絡を取った事もあった。
ルルーシュ皇子自身、初めて出来た同じ年の男の知人…
何の下心もなく、ルルーシュ皇子に接してくれた…唯一の人物だっただろう。
皇子と云う立場も、皇族であると云う立場も、すべて排除した関係…
だからこそルルーシュ皇子は手放したくなかったが…
ただ、これまで作った事のない友達…と云う存在をどうしたらいいのか…
こちらはこちらで悩みに悩んでいた。
母君に尋ねたら…
『なら…あなたのお友達がどうしたら笑顔になってくれるか…考えてごらんなさい…』
とだけ云われたのだ。
とは云われても、一体どうしていいか解らず…
枢木卿の傍にい続けて…ルルーシュ皇子はある事に気付いた。
枢木卿は…日本にいた頃の写真を眺めている時間が長くなった事に…
そして、ルルーシュ皇子の教育係だったジェレミア卿に尋ねたところ…
『恐らく、懐郷病…ホームシックなのでは?』
と云われて…
ルルーシュ皇子は泣きそうになりながら枢木卿にこう告げたのだ…
『スザク…君は日本に帰れ…。幸い…君のお父さんが来賓として王宮内の来賓室いらしているだろう?だから…』

 ルルーシュ皇子はそう言って、枢木卿を日本からの出席者であった枢木首相の元へと連れて行った。
そして、ルルーシュ皇子が枢木首相に頭を下げて、枢木卿を連れて帰って欲しいと云った時、枢木卿の父、枢木首相が烈火の如く怒りを露わにしたのだ。
それは…ルルーシュ皇子に向けられてのものではなく…
『スザク!お前は自分で決めた事も貫けんのか!』
そう言って枢木卿を殴り飛ばしたのだ。
ルルーシュ皇子は慌てて枢木首相を止めようとその華奢な身体で体当たりして行った。
『や…やめて下さい…。私が悪かったのです!彼の様子をちゃんと…見ていなかったから…。泥はすべて私が被ります…。枢木首相にはご迷惑が及ぶような事にはしませんから…だから…』
流石にブリタニアの皇子であり、ブリタニアの宰相であるシュナイゼル皇子のお気に入りにそこまで云われて、怒りは収まらなかったようだが…腕を下してくれた。
『ルルーシュ殿下…これは…あなた様の所為ではありません…。ただ…こんな脆弱者をあなた様の騎士として据えるには余りに問題がありますし、それに、日本としてもこんな情けない男をブリタニア皇族の騎士として送ったとあれば、日本は世界から蔑まれ、信用を失う事になるのです!』
枢木卿は二人のやり取りに呆然とするしか出来なかった。
確かに…日本が恋しいと思っていた事は本当だった。
厳しい士官学校でそんな事を考える余裕がなくなり、そんな余裕のない状況でなら余計な事を考える事もなかった。
しかし、カリキュラムを終えて、嬉しそうにしているルルーシュ皇子を見ている内に…よく解らないが…日本の事が気になって仕方なくなったのだ。
『スザク!この恥さらしめ!流石にこのままブリタニアの皇族の騎士に…と云う訳にもいかん…。ここは、私がブリタニア側に対して謝罪し、お前を日本に連れ帰って再教育してやる!』
枢木首相の言葉に…ルルーシュ皇子も枢木卿もピタッと動きが止まった。
いやな予感が頭を過ったからだ…
―――ここで…日本に連れ戻されたら…二度と…会えないかも知れない…
子供ながらに、こうした国際問題を抱えた場合、まして、当人たちが国のトップに近い存在であれば…可能性としては皆無とは云えない事は…何となく気付いていた。
―――もう…会えない…?
二人…同じ言葉が頭を過っていた…

 枢木首相が殴り飛ばされた勢いでへたり込んでいた枢木卿の腕を力いっぱい引っ張り、枢木卿を無理やり立たせようとした。
しかし…枢木卿は下を向いたままだ。
立ち上がろうとしない…。
静寂が続いて…
最初に口を開いたのは…
『俺は…帰らない…』
ずっと、黙ったままの枢木卿だった…
その声は…枢木卿が日本の写真を眺めていた時とは全く違う…
そんな声色で…口調もはっきりとしていた。
『スザク…?』
ルルーシュ皇子がおろおろしたように枢木卿の名前を呼んだ。
しかし、その声が聞こえているのか否か…枢木卿はもう一度、口を開いた。
『俺は…ルルーシュの騎士になる為に…ブリタニアに残ったんだ…。日本へは帰らない…』
そう言ったかと思うと、枢木卿が立ち上がった。
これまでのあの、落ち込んでいた枢木卿はいったい何だったのか…と云う程、強い光を宿した瞳で枢木首相を見つめる。
『父さん…ご心配おかけしました…。どうやら、俺の主は心配性らしい…。士官学校の厳しいカリキュラムの後で…少し緩んでいたようです…。その部分で叱責されるべき点はありますが…日本に帰りたいなどと…この栄誉あるし気の前にそんな事思う訳がありません…』
枢木首相の言葉で、『二度と会えない』と思った時…枢木卿の中の迷いが消えたらしい。
その一言を述べて枢木卿が父である枢木首相に頭を下げた。
『枢木首相…自分は神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下の専任騎士となります。そのご挨拶を…させて頂きます…』
枢木卿が自分の父を『枢木首相』と呼んだ。
それは…父と子としてのけじめなのだろう…
正式に枢木卿は『枢木家の跡取り』の座から降りた事になる。
枢木首相はまだ厳しい顔のままだ。
『そのような云い訳…通用するのはこれが最後だ…。二度と日本に帰りたいなどと云う事は許さん!』
枢木首相としても自分の跡取りがこうした形でブリタニアに渡ると云う事は本意ではなかった筈だし、様々な問題があった事も事実だろう。
しかし…枢木卿は自分の言葉で枢木首相をはじめとする日本国の重鎮たちを説き伏せたのだ。
二度と云い訳もしない、必ずやり遂げると云う覚悟の下に…
『はい…解っています…。この度は…申し訳ありませんでした…』
枢木卿が再び頭を下げた時…ルルーシュ皇子は見た…
枢木首相の顔が…父親の顔となっている事を…
自分には…皇帝である父からあんな眼差しを向けられた事はない…
『おまえが日本へ帰ってくる事は許さんが…いつか…お前の主が日本を訪問する際には…私の屋敷に立ち寄るがよい…』
ルルーシュ皇子は…この父子を見て…何とも云えぬ感情を抱いた事を…忘れる事が出来ずにいた…

 あの時の事を思い出すと…枢木卿が羨ましいと思ってしまう事もある。
ルルーシュ皇子の場合…と云うより、皇帝の子供とされる皇子や皇女が父である皇帝と二人きりで話せる事なんてありえない。
そもそも、親子の会話が出来る環境でもない。
それでも、ルルーシュ皇子やナナリー皇女の場合、母君が庶民出身なので、そう言った、親子のつながりと云うのは他の母君から生まれた皇子や皇女よりも知っていると云えるかもしれないが…
「ルルーシュ…心配するな…。俺はお前の傍を離れないよ…」
ルルーシュ皇子が何を思い出しているのか手に取るように解るし、あまりに恥ずかしい、思い出したくない過去なので、枢木卿はいつも、この事を思い出して落ち込むルルーシュ皇子にはそう言って後ろから抱き締めるのだ。
ルルーシュ皇子は…枢木卿がいなくなることを極端に恐れている。
枢木卿としても余りにそれは大げさではないかと思えるほどに…
「本当に…?」
どうやら、この時期に近づいて心配になるのはルルーシュ皇子の方らしい…
あの時には枢木首相を止める為に子供とは思えないほど毅然とした態度で一国の首相と接していたと云うのに…
それでも、こんなルルーシュ皇子の姿を知っていると思うと、枢木卿自身、ルルーシュ皇子に対して少しは悪いと思いながらも優越感に浸ってしまう。
何しろ、この王宮内にはルルーシュ皇子の事が大好きでたまらない彼の異母兄姉妹がこれでもかとばかりにいるのだ…。
枢木卿はこうしたルルーシュ皇子の姿は決して誰にも云わない。
それは、ルルーシュ皇子の名誉を守る訳ではない。
自分の優越感をぶち壊したくない…と云う、ルルーシュ皇子を主として掲げる騎士としては余りに個人的な理由なのだが…
「ああ…俺はルルーシュの騎士だ…。絶対にルルーシュから離れないよ…」
そう云いながら更にルルーシュ皇子を抱きしめる腕の力を込めてやると…ルルーシュ皇子はその細い腕で枢木卿の腕に縋りついてくる。
この瞬間ほど優越感に浸れる時はない。
本当は皇子殿下の専任騎士としてあるまじき事なのだが…
つい、こんな風に思ってしまう…
―――ルルーシュが…ずっと、あの時の事をこうして忘れずに気にしてくれますように…
と…
実際に枢木卿はルルーシュ皇子なしに日本に帰る気などさらさらない。
ただ…いつか、ルルーシュ皇子も興味を持っているらしいので、自分の生まれ故郷に連れて行ってやりたいとは思うが…
でも…それは…もう少し先の話…となる…

END

 

あとがきに代えて



久しぶりですねぇ…
『騎士皇子シリーズ』…
『皇子とレジスタンス』と違って、それほどギスギスした騎士皇子じゃないんですが…
こっちの皇子様はどうにも寂しがりや設定で、やきもち焼き設定で、ツンデレ設定なので…
書いていてこれはこれで楽しいです。
難しい設定はあまり出さないようにしているので…
多分、こっちの騎士様…とっても大人なんですよね…
お友達…とか、専任騎士…とか云う以前に皇子様のお守役って感じです。
このシリーズ…ハロウィンとかルル誕とかで番外編的に使われているので…(『僕たちの学園生活シリーズ』もそうですが)
まぁ、たまには書いて行かないとね…こっちのシリーズも…
そう言えば…『僕たちの学園生活シリーズ』最後に書いたのっていつだったっけ…?


☆拍手のお返事


未来さま:こんばんは、コメントありがとうございます。
『濡れた心』は…まぁ、あんまり見かけない設定ですよね…
和泉もいろんな同人誌を買っているし、小説、漫画含めていろんなギアスサークルさんのサイトを訪問しても見かけた事ないです。
どうも、書き手側さんにはあまり好まれない設定をよく書いているみたいです…和泉の場合…(勿論、王道も書きますけど)
この話に関しては、読み手側さんが色々と話を膨らませていって下さい。
その中で、作品が出来た人がいたらぜひとも、和泉に見せて頂きたいですが…
いろんな話の膨らませ方があると思います。

『もし、ルルーシュが○○だったら…』は…とにかく弾けましたね…和泉が…
シャルルパパも頑張っているんですが…
それでも、和泉の脳内ワールドではスザルルが最強なので…(爆)
空気を読まないスザクは…書いていて楽しい事に気づきました。
また、何かの形で使っていきたいと思います。
しかし、二次創作でもこれだけいじくり倒されているキャラクターなので…声を充てていた櫻井さん…とっても大変だったんだろうなぁ…と思います。
本編でもコロコロキャラクターが変わっちゃう役どころでしたからね…


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posted by 和泉綾 at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

騎士皇子シリーズ6

懐郷病



 ルルーシュ皇子はちょっと昔の事を思い出していた…
それは…枢木卿と出会って、2年が経ち、ルルーシュ皇子の専任騎士となるべく、叙任式を迎える少し前の事だった。
枢木卿は、ルルーシュ皇子の知らない顔を見せていた。
最初は緊張しているのかと思っていたのだが…
実は…懐郷病…ホームシックにかかっていたと云う…。
2年間、軍の士官学校へ通っていて、そんな報告を受けた事がなかったと云うのに…
士官学校のカリキュラムを終えて、ルルーシュ皇子の指名を受け、これからだと云う時に…枢木卿は本当に落ち込んでしまっていた。
本人も…自分の変化に気づいていたようだが…
ただ、何が自分をそうさせていたのか…よく解らなかったという。
「スザク…」
「何?ルルーシュ…」
ルルーシュが自分のデスクで書類の山を捌きつつ、スザクはその資料を種類別に分けて、整理している。
単調な作業の繰り返しなので、時々、こうして会話を交わさないと、静かな部屋の中では二人とも安らかな眠りの世界へと旅立ってしまう事が多々ある。
そして、その際にかわされる会話の内容と云うのは、基本的に、どうでもいい事が多い。
或いは、どちらかが思い出したくない事…
大抵、話しかけられた方が思い出したくない話題を振られる事になる訳だが…(時々、ルルーシュ皇子が勝手に墓穴を掘って窮地に立つ事もあるが)
「まだ…日本が恋しいか?」
唐突なルルーシュ皇子の質問に、枢木卿が手にしていた資料をぱらぱらと床に落としてしまう。
「え?一体何の話…?」
突然そんな事を尋ねられたってどう答えていいのか解らない。
相手は枢木卿の主であり、枢木卿の人事権のすべてを握っている人物だ。
迂闊な事を云って騎士解任なんて事になったら現在の枢木卿は泣くに泣けない…
日本でだって相当揉めて、ごり押ししてルルーシュ皇子の専任騎士となったと云うのに…
しかも、ルルーシュ皇子の騎士となって既に3年が経っている…
今更『日本が恋しいか?』などと聞かれて、『はい…』と答えてしまったら…下手すると、騎士を解任されて、日本へ強制送還される憂き目に遭い兼ねない。
ルルーシュ皇子があまり考えずに話をする事もあるが…
特にこうした退屈な作業の最中の眠気覚ましの為の会話の時にはよくある。
ただ、たまに本気で考えている話までぶち込まれるものだから…枢木卿も時々返事に困ってしまう事もある訳なのだ。
「別に…正直に云っていいぞ…。なんだったら休暇をやるし…」
相変わらず、何を考えているか解らない自分の主にうっかり頭を抱えてしまう…

 枢木卿が落としてしまった資料を拾い集めながらもう一度尋ねる。
「なぁ…ルルーシュ…。おまえ…俺を日本に還したいの?」
一応…この程度なら即刻解任と云う事はないだろう。
とりあえず、自分の主の真意を知らなくてはその話に乗って行く事は出来ない。
「あ…そうじゃないんだ…。ほら、スザクが僕の騎士叙任式の前に…ホームシックになっちゃったから…。この時期にはそう言う事…あるのかなって…」
枢木卿はルルーシュ皇子の一言で気がついた。
そう言えば、あと数日経つとルルーシュ皇子の騎士となってから丸3年になるのだ。
「否…別にこの時期だからなるんじゃなくて…あの時が…特別だったんだよ…」
枢木卿が何となく心配そうなルルーシュ皇子に返事した。
ルルーシュ皇子自身、枢木卿を手放したくないと思っているのは今も変わらないし、恐らく、ただ、枢木卿が『日本へ帰りたい!』と云ってみたところで、理由もなしに…と云うより、理由があってもルルーシュ皇子が納得できる理由でなければ還す気は毛頭ない。
恐らく、あの時が、最初で最後だった…
枢木卿があんな風に『日本へ帰りたい…』などと言い出したのは…
既に国内外からの来賓も集まっていたし、あの時、あの時点で撤回した場合、下手するとブリタニアと日本との国際問題にもなりかねなかった。
士官学校のカリキュラムを終えて、ルルーシュ皇子のところに来た時…確かに枢木卿は疲れた顔をしていたし、ルルーシュ皇子が心配しても『大丈夫だ…』の一点張りで…
どう見ても大丈夫には見えなかったルルーシュ皇子は枢木卿に黙って在ブリタニアの日本大使館に連絡を取った事もあった。
ルルーシュ皇子自身、初めて出来た同じ年の男の知人…
何の下心もなく、ルルーシュ皇子に接してくれた…唯一の人物だっただろう。
皇子と云う立場も、皇族であると云う立場も、すべて排除した関係…
だからこそルルーシュ皇子は手放したくなかったが…
ただ、これまで作った事のない友達…と云う存在をどうしたらいいのか…
こちらはこちらで悩みに悩んでいた。
母君に尋ねたら…
『なら…あなたのお友達がどうしたら笑顔になってくれるか…考えてごらんなさい…』
とだけ云われたのだ。
とは云われても、一体どうしていいか解らず…
枢木卿の傍にい続けて…ルルーシュ皇子はある事に気付いた。
枢木卿は…日本にいた頃の写真を眺めている時間が長くなった事に…
そして、ルルーシュ皇子の教育係だったジェレミア卿に尋ねたところ…
『恐らく、懐郷病…ホームシックなのでは?』
と云われて…
ルルーシュ皇子は泣きそうになりながら枢木卿にこう告げたのだ…
『スザク…君は日本に帰れ…。幸い…君のお父さんが来賓として王宮内の来賓室いらしているだろう?だから…』

 ルルーシュ皇子はそう言って、枢木卿を日本からの出席者であった枢木首相の元へと連れて行った。
そして、ルルーシュ皇子が枢木首相に頭を下げて、枢木卿を連れて帰って欲しいと云った時、枢木卿の父、枢木首相が烈火の如く怒りを露わにしたのだ。
それは…ルルーシュ皇子に向けられてのものではなく…
『スザク!お前は自分で決めた事も貫けんのか!』
そう言って枢木卿を殴り飛ばしたのだ。
ルルーシュ皇子は慌てて枢木首相を止めようとその華奢な身体で体当たりして行った。
『や…やめて下さい…。私が悪かったのです!彼の様子をちゃんと…見ていなかったから…。泥はすべて私が被ります…。枢木首相にはご迷惑が及ぶような事にはしませんから…だから…』
流石にブリタニアの皇子であり、ブリタニアの宰相であるシュナイゼル皇子のお気に入りにそこまで云われて、怒りは収まらなかったようだが…腕を下してくれた。
『ルルーシュ殿下…これは…あなた様の所為ではありません…。ただ…こんな脆弱者をあなた様の騎士として据えるには余りに問題がありますし、それに、日本としてもこんな情けない男をブリタニア皇族の騎士として送ったとあれば、日本は世界から蔑まれ、信用を失う事になるのです!』
枢木卿は二人のやり取りに呆然とするしか出来なかった。
確かに…日本が恋しいと思っていた事は本当だった。
厳しい士官学校でそんな事を考える余裕がなくなり、そんな余裕のない状況でなら余計な事を考える事もなかった。
しかし、カリキュラムを終えて、嬉しそうにしているルルーシュ皇子を見ている内に…よく解らないが…日本の事が気になって仕方なくなったのだ。
『スザク!この恥さらしめ!流石にこのままブリタニアの皇族の騎士に…と云う訳にもいかん…。ここは、私がブリタニア側に対して謝罪し、お前を日本に連れ帰って再教育してやる!』
枢木首相の言葉に…ルルーシュ皇子も枢木卿もピタッと動きが止まった。
いやな予感が頭を過ったからだ…
―――ここで…日本に連れ戻されたら…二度と…会えないかも知れない…
子供ながらに、こうした国際問題を抱えた場合、まして、当人たちが国のトップに近い存在であれば…可能性としては皆無とは云えない事は…何となく気付いていた。
―――もう…会えない…?
二人…同じ言葉が頭を過っていた…

 枢木首相が殴り飛ばされた勢いでへたり込んでいた枢木卿の腕を力いっぱい引っ張り、枢木卿を無理やり立たせようとした。
しかし…枢木卿は下を向いたままだ。
立ち上がろうとしない…。
静寂が続いて…
最初に口を開いたのは…
『俺は…帰らない…』
ずっと、黙ったままの枢木卿だった…
その声は…枢木卿が日本の写真を眺めていた時とは全く違う…
そんな声色で…口調もはっきりとしていた。
『スザク…?』
ルルーシュ皇子がおろおろしたように枢木卿の名前を呼んだ。
しかし、その声が聞こえているのか否か…枢木卿はもう一度、口を開いた。
『俺は…ルルーシュの騎士になる為に…ブリタニアに残ったんだ…。日本へは帰らない…』
そう言ったかと思うと、枢木卿が立ち上がった。
これまでのあの、落ち込んでいた枢木卿はいったい何だったのか…と云う程、強い光を宿した瞳で枢木首相を見つめる。
『父さん…ご心配おかけしました…。どうやら、俺の主は心配性らしい…。士官学校の厳しいカリキュラムの後で…少し緩んでいたようです…。その部分で叱責されるべき点はありますが…日本に帰りたいなどと…この栄誉あるし気の前にそんな事思う訳がありません…』
枢木首相の言葉で、『二度と会えない』と思った時…枢木卿の中の迷いが消えたらしい。
その一言を述べて枢木卿が父である枢木首相に頭を下げた。
『枢木首相…自分は神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下の専任騎士となります。そのご挨拶を…させて頂きます…』
枢木卿が自分の父を『枢木首相』と呼んだ。
それは…父と子としてのけじめなのだろう…
正式に枢木卿は『枢木家の跡取り』の座から降りた事になる。
枢木首相はまだ厳しい顔のままだ。
『そのような云い訳…通用するのはこれが最後だ…。二度と日本に帰りたいなどと云う事は許さん!』
枢木首相としても自分の跡取りがこうした形でブリタニアに渡ると云う事は本意ではなかった筈だし、様々な問題があった事も事実だろう。
しかし…枢木卿は自分の言葉で枢木首相をはじめとする日本国の重鎮たちを説き伏せたのだ。
二度と云い訳もしない、必ずやり遂げると云う覚悟の下に…
『はい…解っています…。この度は…申し訳ありませんでした…』
枢木卿が再び頭を下げた時…ルルーシュ皇子は見た…
枢木首相の顔が…父親の顔となっている事を…
自分には…皇帝である父からあんな眼差しを向けられた事はない…
『おまえが日本へ帰ってくる事は許さんが…いつか…お前の主が日本を訪問する際には…私の屋敷に立ち寄るがよい…』
ルルーシュ皇子は…この父子を見て…何とも云えぬ感情を抱いた事を…忘れる事が出来ずにいた…

 あの時の事を思い出すと…枢木卿が羨ましいと思ってしまう事もある。
ルルーシュ皇子の場合…と云うより、皇帝の子供とされる皇子や皇女が父である皇帝と二人きりで話せる事なんてありえない。
そもそも、親子の会話が出来る環境でもない。
それでも、ルルーシュ皇子やナナリー皇女の場合、母君が庶民出身なので、そう言った、親子のつながりと云うのは他の母君から生まれた皇子や皇女よりも知っていると云えるかもしれないが…
「ルルーシュ…心配するな…。俺はお前の傍を離れないよ…」
ルルーシュ皇子が何を思い出しているのか手に取るように解るし、あまりに恥ずかしい、思い出したくない過去なので、枢木卿はいつも、この事を思い出して落ち込むルルーシュ皇子にはそう言って後ろから抱き締めるのだ。
ルルーシュ皇子は…枢木卿がいなくなることを極端に恐れている。
枢木卿としても余りにそれは大げさではないかと思えるほどに…
「本当に…?」
どうやら、この時期に近づいて心配になるのはルルーシュ皇子の方らしい…
あの時には枢木首相を止める為に子供とは思えないほど毅然とした態度で一国の首相と接していたと云うのに…
それでも、こんなルルーシュ皇子の姿を知っていると思うと、枢木卿自身、ルルーシュ皇子に対して少しは悪いと思いながらも優越感に浸ってしまう。
何しろ、この王宮内にはルルーシュ皇子の事が大好きでたまらない彼の異母兄姉妹がこれでもかとばかりにいるのだ…。
枢木卿はこうしたルルーシュ皇子の姿は決して誰にも云わない。
それは、ルルーシュ皇子の名誉を守る訳ではない。
自分の優越感をぶち壊したくない…と云う、ルルーシュ皇子を主として掲げる騎士としては余りに個人的な理由なのだが…
「ああ…俺はルルーシュの騎士だ…。絶対にルルーシュから離れないよ…」
そう云いながら更にルルーシュ皇子を抱きしめる腕の力を込めてやると…ルルーシュ皇子はその細い腕で枢木卿の腕に縋りついてくる。
この瞬間ほど優越感に浸れる時はない。
本当は皇子殿下の専任騎士としてあるまじき事なのだが…
つい、こんな風に思ってしまう…
―――ルルーシュが…ずっと、あの時の事をこうして忘れずに気にしてくれますように…
と…
実際に枢木卿はルルーシュ皇子なしに日本に帰る気などさらさらない。
ただ…いつか、ルルーシュ皇子も興味を持っているらしいので、自分の生まれ故郷に連れて行ってやりたいとは思うが…
でも…それは…もう少し先の話…となる…

END

 

あとがきに代えて



久しぶりですねぇ…
『騎士皇子シリーズ』…
『皇子とレジスタンス』と違って、それほどギスギスした騎士皇子じゃないんですが…
こっちの皇子様はどうにも寂しがりや設定で、やきもち焼き設定で、ツンデレ設定なので…
書いていてこれはこれで楽しいです。
難しい設定はあまり出さないようにしているので…
多分、こっちの騎士様…とっても大人なんですよね…
お友達…とか、専任騎士…とか云う以前に皇子様のお守役って感じです。
このシリーズ…ハロウィンとかルル誕とかで番外編的に使われているので…(『僕たちの学園生活シリーズ』もそうですが)
まぁ、たまには書いて行かないとね…こっちのシリーズも…
そう言えば…『僕たちの学園生活シリーズ』最後に書いたのっていつだったっけ…?


☆拍手のお返事


未来さま:こんばんは、コメントありがとうございます。
『濡れた心』は…まぁ、あんまり見かけない設定ですよね…
和泉もいろんな同人誌を買っているし、小説、漫画含めていろんなギアスサークルさんのサイトを訪問しても見かけた事ないです。
どうも、書き手側さんにはあまり好まれない設定をよく書いているみたいです…和泉の場合…(勿論、王道も書きますけど)
この話に関しては、読み手側さんが色々と話を膨らませていって下さい。
その中で、作品が出来た人がいたらぜひとも、和泉に見せて頂きたいですが…
いろんな話の膨らませ方があると思います。

『もし、ルルーシュが○○だったら…』は…とにかく弾けましたね…和泉が…
シャルルパパも頑張っているんですが…
それでも、和泉の脳内ワールドではスザルルが最強なので…(爆)
空気を読まないスザクは…書いていて楽しい事に気づきました。
また、何かの形で使っていきたいと思います。
しかし、二次創作でもこれだけいじくり倒されているキャラクターなので…声を充てていた櫻井さん…とっても大変だったんだろうなぁ…と思います。
本編でもコロコロキャラクターが変わっちゃう役どころでしたからね…


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2008年11月06日

騎士皇子シリーズ5

遠征の後…



 ルルーシュ皇子がシュナイゼル皇子の作戦指揮官として、シュナイゼル皇子の軍に従軍し、帝都に帰ってきた。
ルルーシュ皇子に従って、枢木卿も一緒に従軍していたのだが…
いつも、遠征から帰って来ると、ルルーシュ皇子は辛そうな顔をする。
それはそうであろう…。
ルルーシュ皇子は確かに、天賦の才に恵まれたのか…神聖ブリタニア帝国の第二皇子にして、帝国の宰相であるシュナイゼル皇子にも認められる程の功績を残している。
シュナイゼル皇子は自他共に認める、次期皇帝の最有力候補である。
シュナイゼル皇子自身、自身が皇帝になった時の宰相にはルルーシュ皇子を…と考えている。
そして、シュナイゼル皇子自身、ルルーシュ皇子を心から溺愛している。
しかし、ルルーシュ皇子の母君、マリアンヌ皇妃は庶民の出自であるという事から、ルルーシュ皇子を高い地位に置くには、周囲を納得させなければならない。
それ故に、シュナイゼル皇子はいつも、ルルーシュ皇子を遠征に連れていく。
ルルーシュ皇子の強さ、優しさを知るからこそ、シュナイゼル皇子自身も辛いと思う事は多いし、本当なら、ルルーシュ皇子を真綿でくるむように守ってやりたいとさえ思うのだが…。
でも、そんな事をしたら、ルルーシュ皇子はシュナイゼル皇子の後ろ盾がなければ何もできない事になってしまう。
頭の良いシュナイゼル皇子は現在の神聖ブリタニア帝国と言う国をよく理解していた。
だからこそ、ルルーシュ皇子に過酷な命令も下す。
ルルーシュ皇子が初めてシュナイゼル皇子の遠征についていったのはまだ、枢木卿がルルーシュ皇子の騎士となる前であった。
ルルーシュ皇子と枢木卿が初めて出会ったのが、12歳の頃…。
で、枢木卿がルルーシュ皇子の騎士となったのが、14歳の時…。
枢木卿はあまりその辺の詳しい事を聞いた事はなかったが、多分、初めて枢木卿がルルーシュ皇子に会った時には、シュナイゼル皇子について行って、戦地とか戦場と言うものを見ていたのかもしれないと思う。
確かに、ルルーシュ皇子の立場は、王宮の中では微妙ポジションなのかもしれない。
今はまだ、母君が健在でその母君が民衆の支持を集めているという事で、その母君の皇子ともなれば、大きな後ろ盾であろう。
しかし、親は子供より先にこの世を去る。
母君がいなくなった時、ルルーシュ皇子の身を守るのは、恐らく、母君の後見となってくれている貴族のアッシュフォード家ではなく、自身の能力…と考えた母君の決断で、ルルーシュ皇子は幼い頃から、他の皇子や皇女では考えられない努力をさせられている。
そして、ルルーシュ皇子もその努力に見合うだけの結果を出してきているのだ。

 でも、そうであったとしても、いつもそばでルルーシュ皇子を見ている枢木卿には辛いものであった。
戦場の惨劇に、ルルーシュ皇子はいまだに慣れる事が出来ずにいる。
当たり前だ。
ルルーシュ皇子の年齢はまだ、17歳…。
普通なら、学生をして、友達と遊んで、クラブ活動で好きな事をしたり、定期試験の度に慌てふためいたり…そんな事をしている年齢だ。
「ルルーシュ…大丈夫か?」
戦後処理が一通り終わり、ルルーシュ皇子が帝都に戻る帰路である。
ルルーシュ皇子はこの時、枢木卿以外、誰も寄せ付けない。
ルルーシュ皇子としては、同じ年で、そして、皇族以外で唯一、ルルーシュ皇子を『ルルーシュ』と呼んでくれる枢木卿が誰よりも信用しているのだ。
喧嘩もできるし、一緒に笑う事も出来る…
枢木卿を騎士にしたばかりの頃は、枢木卿が慣例に従ってルルーシュ皇子を『殿下』と呼ぶようになってしまって…悲しかったが…
でも、枢木卿は程なくして、二人だけの時には『ルルーシュ』と呼んでくれるようになった。
それが心地いい場所である事は間違いなくて…
「大丈夫…。ごめん…いつも…。情けない…な…。僕は…皇子なんだから…こんな事で…」
一生懸命強がるルルーシュ皇子の姿が余計に痛々しい…。
確かに、巨大帝国の皇子ともなれば、戦場に出て行く事、政治の中で政略を行う事は当たり前で…。
力がなければ…波に飲み込まれる。
ルルーシュ皇子がルルーシュ皇子でいるためには仕方がない事だと…力がなければ、この権力闘争の絶えない王宮内では、すぐに亡き者にされてしまうのだ。
「ルルーシュ…ここには俺しかいないから…。無理しなくていいから…」
膝の上で拳を握り、下を向いて肩を震わせているルルーシュ皇子に枢木卿がそっと、ルルーシュ皇子の髪を優しく梳いてやる。
シュナイゼル皇子の作戦指揮を執っているルルーシュ皇子の作戦で今回の戦いにも勝利した。
しかし、その時には当然…犠牲が出る。
戦争と言うものはそう云うものだと解ってはいる。
それに…枢木卿はシュナイゼル皇子の側近である、カノン=マルディーニ伯爵から言われたのだ。
『ルルーシュ殿下のおかげで、双方の犠牲は最小限に抑えられたわ…。他の作戦指揮官では…恐らく、こちらが負けるか…敵を全滅…と言うか、戦争ですらなくなってしまうような作戦だったかもしれないわ…』
マルディーニ伯爵のこの言葉をルルーシュ皇子は知らない。
ただ、この言葉を伝えたところで、ルルーシュ皇子にとって慰めにはならないだろう。
それでも、今回に限らず、ルルーシュ皇子は最小限の犠牲に抑える様に作戦を立てる。
中には、頭脳プレイで、相手に『卑怯者!』と罵られるような作戦もある。
それでも、ルルーシュ皇子は…その言葉を…甘んじて受け止めているのだ。

 ルルーシュ皇子は相変わらず、下を向いたまま…何かを話し始めた。
「スザク…僕が…スザクみたいに、強ければ…あんな、騙し討ちみたいなことをせずに…済むのかな…。僕は…弱いから…だから…卑怯な手しか…使えない…」
涙声に聞こえるのは枢木卿の気のせいではないだろう。
「ルルーシュ…別に、腕力が強かったり、戦術に長けていたりする事が正々堂々としている訳じゃないし、ルルーシュみたいに戦略に長けている事は、卑怯なことじゃないよ…。腕力が強い人間はその腕力を武器に戦う…。戦略に長けているなら、その戦略を武器に戦う…それだけのことだろう?」
ルルーシュ皇子は立場上、どうしても、戦後処理で敵将と顔を合わせたりしなければならない。
敵将も、こんな年端の行かない少年にしてやられたと思うのは癪なのだろう。
いらない事を云う輩が多い。
「俺は確かに…ルルーシュよりも腕力はある。この腕力で戦略を使わないルルーシュを叩きのめしたら、これも卑怯者だと思うけれどな…」
確かに、その通りである。
腕力を武器にするか、頭脳を武器にするか、それだけの違いなのだが、腕力に長けている者はどうしても、頭が足りないものも多いという事も事実なのだ。
「え?」
ルルーシュ皇子が驚いて枢木卿の顔を見上げた。
やはり、目元には涙をためている。
「ルルーシュは、自分の使える武器を使っただけだ。大人のくせに、子供に負けたからって、八つ当たりなんて…カッコ悪いよな…」
と、枢木卿はからからと笑って見せた。
「ルルーシュ…守りたいものがあるんだろう?」
ふと真剣な顔をして、枢木卿はルルーシュ皇子の眼を見る。
「守りたいもの…ナナリー…」
ルルーシュ皇子は枢木卿の顔を見ながら、そう呟く。
「そう、ルルーシュは、ナナリー皇女殿下を守りたいから…だから、強くあろうとするんだろう?それに…ナナリー皇女殿下も、ルルーシュに何かあったら、きっと悲しむ…」
ルルーシュ皇子は自分の複雑な立場をよく解っている。
そして、シュナイゼル皇子のルルーシュ皇子に対する溺愛ぶりに、周囲からあらぬヤッカミを受ける事もある。
それ故に、ルルーシュ皇子は強くあらねばならなかった。
「俺でよければ、いつでもルルーシュを守るし、一緒にいる。でも、外では…そんな顔を…絶対にしちゃダメだ!泣きたければ、俺のところで泣けばいい。弱音を吐きたければ、いつでも俺が王宮から連れ出してやる…」
「スザク…」
この時、ルルーシュ皇子は枢木卿を自分の騎士にした事を…否、自分の騎士に出来たこの事実に、心から感謝した。

枢木卿が騎士になる前は…ジェレミア卿が護衛役としてシュナイゼル皇子の軍に従軍していた。
初めて、シュナイゼル皇子の軍について行ったのは…後学の為と言う事で、軍人としての従軍ではなかった。
しかし、その時、シュナイゼル皇子と余暇の時間にチェスをしていた時の一言で、ルルーシュ皇子の策をとりいれられ、その時の戦いに勝利をもたらしたのだ。
以来、シュナイゼル皇子はルルーシュ皇子を連れて戦場に行く事が増えた。
シュナイゼル皇子もルルーシュ皇子の才能に気づいた。
そして、その才能が他の皇族に気づかれ、ルルーシュ皇子を亡き者とする輩が現れる事、シュナイゼル皇子と対立する輩に利用される事を極度に恐れた。
だから、シュナイゼル皇子はまだ、年端もいかないルルーシュ皇子には辛い事だと知りながら、シュナイゼル皇子の軍に従軍させていた。
これなら、シュナイゼル皇子の傘のもと、ルルーシュ皇子を守れるし、他の皇族達にルルーシュ皇子が有能な皇子である事を知らしめることが出来る。
そして、功績を上げさせ続ければ、他の皇族達も下手にルルーシュ皇子に手を出す事が出来なくなるのだ。
シュナイゼル皇子は、この時、ルルーシュ皇子の母君がせめて、貴族出身者であれば…と心から思ったものだった。
でも、今は、枢木卿がルルーシュ皇子を支えてくれている。
時に、あまりに仲睦まじいこの皇子と騎士に妬く事もあるのだが…今はそれでいいと思っている。
少なくとも、まだ、シュナイゼル皇子はやらなくてはならない事があり、ルルーシュ皇子個人にばかり目を向けている訳にも行かないのだから…。
しかし、最近のルルーシュ皇子を見ていて…利発に、聡明に、そして、美しく成長していく様を見ていると、気持ちが複雑になって来る。
―――私は、いつまで、国とルルーシュを天秤にかけた時に、国を選び続けられるのかな…
皇族が…まして、こんな大帝国の宰相が個人的な感情で軍を動かすなど…あってはならない事だ。
理屈でも、理性でも解ってはいるのだ。
―――かわいいルルーシュ…こんな形でしか、お前を守ってやれない無力な私を許して欲しい…
シュナイゼル皇子は目を瞑って、そんな風に考えていた。
―――コンコン
「どうぞ…」
執務室の扉をノックされ、扉を開けてやる。
「宰相閣下…ルルーシュ殿下が無事、帝都に戻られたとの報告が、先ほど、入りました。枢木卿の報告では…やはり…まだ、ルルーシュ殿下は…」
マルディーニ伯爵の報告をシュナイゼル皇子は黙って聞いている。
「そうか…優しい子だからね…あの子は…。一刻も早く、私もあの子にそんな思いをさせないだけの力を手に入れなければならないね…」
そう云って、シュナイゼル皇子は組んだ手の上に顎を乗せて呟いた。

 ルルーシュ皇子と枢木卿がアリエスの離宮に戻ると、母君とナナリー皇女が出迎えてくれた。
「おかえりなさい…お兄様、スザクさん…」
「よく生きて帰りましたね…ルルーシュ、枢木卿…。さぁ、二人とも、ゆっくりお風呂にでも浸かって、疲れを落としなさい…」
そう云って、二人を促した。
枢木卿が日本から来たという事で、この母君、アリエスの離宮の中庭に、日本式の露天風呂を作っていた。
ルルーシュ皇子がやたらと日本文化に興味を持つようになっていたので、母君がなかなか日本へ行くことを許されないルルーシュ皇子と、故郷を離れた枢木卿を慮って作らせたのだ。
「ありがとうございます…母上…」
「お気遣い…痛み入ります…皇妃殿下…」
そう軽く挨拶をすませて、母君が作らせた露天風呂に直行した。
そんな二人の後ろ姿にナナリー皇女はやや羨ましそうな表情を浮かべ、母君は嬉しそうに目を細めた。
「お母様、お兄様…スザクさんが来てから、いつも一緒ですね…」
やや面白くなさそうにナナリー皇女が母君に不満を漏らす。
ルルーシュ皇子がナナリー皇女を溺愛するように、ナナリー皇女もルルーシュ皇子が大好きな兄上であるのだ。
「ナナリー…ルルーシュもやっと、いいお友達が出来たのです。喜んで差し上げなさい…。ナナリーにも、そのうち解りますよ…」
ナナリー皇女はよく解らないと言った表情で母気味を見る。
「戦の後なのです…。妹姫のナナリーにも見られたくない部分がルルーシュにもあるのですよ…。それを理解して差し上げなさいな…」
そう云って、母君がナナリー皇女の車いすを押して、奥の部屋へと入って行った。
―――強くおなりなさい…ルルーシュ…。あなたが、守りたいと思う全ての者の為に…

END

 

あとがきに代えて



えっと…なんか複雑っぽいけど、単純に落ち込んだルルーシュを慰めるスザクって事で…。
で、シュナ兄はルルーシュLOVEって事で…。
えっと、ルルーシュの母君は正室ではないので、本当は、『皇妃』と云う呼び方もおかしいのですけれど…
本当なら『后妃』ですよね…。
でも、小説でも公式ガイドでも『皇妃』と言う書き方なので…
で、『皇妃』の場合、敬称は『殿下』ではなく、『陛下』です。
『后妃』なら、敬称は『殿下』です。
ちなみに、『陛下』の敬称は『皇』と『皇妃』にのみつけられるものです。
皇子や皇女は『殿下』です。
まぁ、その辺は…細かい事を気にすると書けないので、ねつ造と言うか、完全に逸脱した表現となっております。
と言うか、ルルーシュの母君、本編のマリアンヌ母さんを無視してくれるとありがたいです。
この話で、あんな破天荒な母君では書きにくかったので…(爆)





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posted by 和泉綾 at 20:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2008年10月17日

騎士皇子シリーズ 4

ルルーシュ皇子はヤキモチ焼き?



 今日も朝からルルーシュ皇子は執務室にて、異母兄君のシュナイゼル皇子から言い渡されている仕事をこなしている。
枢木卿はと云えば、書類仕事などで手伝える事は殆どないので、ルルーシュ皇子が仕事を施した書類を順番に並べ、コピーの必要なものはコピーをとり、冊子としなければならないものは製本する…と言った、雑用をしている。
ルルーシュ皇子は頭もよく、仕事も正確で速いのが、シュナイゼル皇子にも気に入られているらしく、いつも、シュナイゼル皇子の下で働いている異母兄君、異母姉君や、貴族たちよりもたくさんの仕事を持ってくる。
ただ、枢木卿としては、もっと、ルルーシュ皇子と遊びたい…じゃなくて、ルルーシュ皇子に外に出て欲しいと願っているので、いつもいつも、ルルーシュ皇子の仕事の速さを持ってしても、相当な時間のかかる綾の仕事を押し付けてくるシュナイゼル皇子が苦手だ。
「殿下…そろそろお茶でも淹れましょう…」
そう云って枢木卿はその場を立ちあがるが…
「……」
仕事に集中していても、枢木卿が二人きりの時に『殿下』と呼ぶ時には絶対に、返事をしない。
いつもの事ではあるのだが、いつ、あのおっかないジェレミア卿が入ってくるかも解らないので、毎回、『最初はきちんと呼んでいるけれど、ルルーシュ皇子が返事をしてくれない』と云う既成事実を作る為に、毎度、ご苦労な事だが、こんなやり取りをしているのである。
そして、いつものごとくため息をついて、もう一度、言い直す。
「ルルーシュ、お茶を淹れるから、少し手を休めて…」
枢木卿がそう云うと、ルルーシュ皇子がやっと書類から目を離し、枢木卿の方を見る。
「ああ…。今日はほうじ茶とみたらし団子がいいな…」
枢木卿の影響で、ルルーシュ皇子はどうも、日本茶と和菓子がお気に入りの様で…。
そんなルルーシュ皇子を見ていて、枢木卿も、ルルーシュ皇子付きのメイド、篠崎咲世子さんにそう言ったものを取りそろえてくれるよう、頼んでいる。
「ルルーシュは…本当に日本のものが好きになったね…」
嬉しそうに微笑みながら、急須に茶葉を入れながらルルーシュ皇子に話しかける。
「ああ…日本の文化とは面白い…。食べ物にしても、歴史にしても、習慣にしても…。一度、行ってみたい…」
ルルーシュ皇子が目を輝かせて枢木卿に自分の今の希望を話す。

ルルーシュ皇子がここまで日本文化に興味を持つとは思わなかった。
一度、枢木卿の従妹から来た、『富士山』の絵葉書を見てルルーシュ皇子はすっかり『富士山』を気に入り、枢木卿に、日本の事を聞き倒していた。
枢木卿の話を聞くたびに、ルルーシュ皇子は日本への興味が増していくばかりで…いつか、連れて行ってやりたいと思うのだが、ルルーシュ皇子はこれでも、ブリタニア帝国の皇子で、宰相閣下の片腕だ。
枢木卿の前では、好奇心旺盛に子供らしいところも見せるが、一歩外に出れば、ルルーシュ皇子は皇子としての顔となり、シュナイゼル宰相閣下の副官の顔になる。
そんなルルーシュ皇子を見ていると時々切なくなるのだが、枢木卿も出来るだけの事をしたいと思い、日本にいる両親に日本のお菓子やお茶、写真などを送って貰って、ルルーシュ皇子に見せている。
その度にルルーシュ皇子が嬉しそうに目を輝かせているのを見ると、枢木卿としては嬉しいのだが、反面、直接日本へ連れて行ってやれない自分の無力さに悲しくなる。
「なぁ、スザク…この間貰った、写真集…あれは、日本の秋の風景を写したものだろう?」
ルルーシュ皇子がほうじ茶のはいった湯呑を持ちながら、枢木卿に尋ねた。
「ん?そうだけど…」
「僕はあんな風にきれいに彩られた山なんて見た事がないから…。あまりピンとこないんだけど…実物は…綺麗なんだろう?」
数日前に、日本から届いた秋の風景写真を集めた写真集の話だ。
枢木卿が日本にいた頃にはそれほど意識をした事はなかったが、ルルーシュ皇子に言われてみると、確かに、日本の四季とは面白いものかもしれない。
ブリタニアに来て、帝都に暮らしていて…確かに四季はある。
しかし、日本ほど季節の変化がはっきりしている訳でもなく、ブリタニア人も季節に関して、日本人ほど楽しんでいるようには見えない。
ただ、その時々のフェスティバルでは大いに盛り上がるが、普段の生活の中で季節を感じるというのはあまりないかもしれない。
「まぁ…綺麗は綺麗だよ…。俺も、それほど、意識はしていなかったけれど…。それでも、その季節の変化は感じていたよ。『季語』なんて言葉もあったくらいだしね…」
「キゴ?」
初めて聞く言葉にさらにルルーシュ皇子が関心を示す。
「うん…。前に、俳句の話をしたよね?あと…川柳の話も…。『季語』って季節を表す言葉なんだけど、俳句には『季語』が使われていて、その季節の風景を詠んでいるんだ」
「そうなのか…本当に日本って、面白いな…。そうやって、五・七・五の言葉を組み合わせた詩でも、季節を表すか表さないかで名前が違うのか…」
ルルーシュ皇子はずっと表情が輝きっぱなしである。
そんなとき…

―――コンコン…
 執務室のドアがノックされた。
一体こんなに楽しい時間に誰だ?とルルーシュ皇子の機嫌は急降下する。
「どうぞ…」
ルルーシュ皇子がそのノックに返事をすると…
「やぁ…ルルーシュ…」
そこにいたのは、いつもルルーシュ皇子にチェスで負けるクロヴィス皇子であった。
「異母兄上…一体どうされたのです?シュナイゼル異母兄上から頼まれた仕事…もう終わったんですか?」
珍しい来客にルルーシュも目を丸くする。
時折、プライベートルームにはチェスの対戦をしに来るのだが…執務室にクロヴィス皇子が来る事は基本的にはない。
「否…ユフィから枢木卿に日本から荷物が届いたと聞いたので…。また、写真集を見せては貰えないかと…」
ルルーシュ皇子の異母兄君、ブリタニア帝国第3皇子、クロヴィス皇子は、シュナイゼル皇子から頼まれる仕事は好きではないのだが、絵を描いたり、楽器を弾いたりする事が好きで…。
で、ある時、ルルーシュ皇子のプレイベートルームで見つけた、枢木卿の故郷から届いた日本の風景写真を見て、ルルーシュ皇子同様、一目で気に入ってしまったらしい。
「クロヴィス殿下…あなたも日本の風景を気に入られたのですか?」
枢木卿は目を丸くしてクロヴィス皇子に尋ねる。
「私も?と云う事は、ルルーシュもかい?」
「ええ、ルルーシュもそうですけれど、ユーフェミア殿下やナナリー殿下もお気に召されたようで…。時々、ここに来ては、それは楽しそうに眺めて行かれます…」
枢木卿がクロヴィス皇子に丁寧に答えた。
枢木卿も、ブリタニア皇族の日本好きには驚かされる。
「まぁ、私たちは割と好みが似てくることが多かったね…。だから、時々、マリアンヌ様が遠征に出られて返ってきた時のお土産などは取り合いになったものだ…」
クロヴィス皇子の言葉に、ルルーシュ皇子は本当は認めたくない…と言った表情だったが、否定はしなかった。
どうも、アリエスの離宮に遊びに来る皇族は皆、好みが似ているらしい。
「クロヴィス異母兄上…僕は仕事中なんです!写真集は後でクロヴィス異母兄上の離宮に運ばせますから…」
ルルーシュ皇子が何となく不機嫌そうにクロヴィス皇子を追い出しにかかる。
「何を言っているんだい…。こんなにお茶の香りを充満させて、茶菓子まで出しておいて…」
クロヴィス皇子はくすくす笑いながらルルーシュ皇子に返す。
その時、枢木卿がはっとしたように席を立つ。
「申し訳ありません!クロヴィス殿下…。すぐにクロヴィス殿下の分もご用意いたします…」
「ああ…いいのかい?日本のお茶もお菓子も美味だからね…。飾り気がないのに…食べるとほっとする…」
クロヴィス皇子が嬉しそうに枢木卿にそう話す。

 クロヴィス皇子の穏やかな表情に対して、何故ルルーシュ皇子はこんなに愛想が悪いのか…枢木卿にはよく解らない。
嫌っている訳でもないようだが…
「クロヴィス殿下…日本のお菓子は別に、この団子のように地味なものばかりでもないんですよ?京菓子のように本当に、食べるのが勿体ないほど綺麗なものもありますし…」
枢木卿はクロヴィス皇子の分のお茶を淹れ、団子を用意しながら云った。
「キョウガシ?」
「ええ…繊細な作りなので、食べるのが勿体ないと眺めてばかりいる女性もいるくらいですよ…。また、両親に頼んで、送って貰いますよ…」
「スザク!僕にはそんな話をしてくれた事はないじゃないか!」
ずっと黙っていたルルーシュ皇子がいきなり大声を上げる。
『キョウガシ』という言葉をこの時初めて聞いたのだ。
しかも、最初に話したのがルルーシュ皇子にではなく、クロヴィス皇子にだった。
「え?興味…あったの?そんな事一言も言わなかったし…。それに、ルルーシュは団子とかまんじゅうを気に入っていたみたいだったから…」
「僕は、日本人じゃない!僕の日本に関する知識はスザクから教えて貰っている事しかないのに…」
いつも、どこから仕入れてきたのか…と云うような日本の知識をひけらかしているくせに、なんで、今は『僕は日本人じゃない!』とか言い出すかな…この皇子様は…と思いながら、枢木卿は苦笑して、クロヴィス皇子の前にお茶と団子を置いた。
「ん?私は何か、いけない事でも言ったのかな?」
「いえ…今回は自分のミスの様です。さぁ、クロヴィス殿下、冷めないうちに召し上がってください…」
そう云って、枢木卿はその場を取り繕った。
クロヴィス皇子も、これは、枢木卿も後が大変だ…と思いながら、差し出されたお茶と団子を楽しんでいた。
クロヴィス皇子がそう思うのも無理はない。
クロヴィス皇子の向かい側に座っていたルルーシュ皇子が今にも飛びかかりそうな勢いで睨んでいたからである。
意外とそう云う異母弟君を気に入っているので、クロヴィス皇子も、ルルーシュ皇子を怒らせる事を知りながら、ついつい、構ってしまう。
以前と違って、後始末は枢木卿がしてくれるので、今となっては遠慮なしである。

 やがて、クロヴィス皇子がお目当ての写真集を手に執務室から出て行った。
そして、枢木卿はお茶の片づけをしている。
ルルーシュ皇子は、さっきから不機嫌そうに書類を手にして黙々と仕事をしている。
枢木卿が湯呑などを全て洗い終えて、ルルーシュ皇子の仕事の雑用をしようとした時…
「ねぇ…ルルーシュ…。この書類、サインの場所…間違ってるよ?」
ふと目に入った書類のサインの場所を間違っていたのに気付く。
いつも正確に仕事をこなしているルルーシュ皇子にしては珍しい。
他の書類を見ると…日付が違っていたり、チェックする項目を間違えていたり…
「!」
ルルーシュ皇子ははっとして、お茶の後、処理した書類を枢木卿から取り上げる。
「ちょ…ちょっと考え事をしていただけだ…!ちゃ…ちゃんと訂正する…」
ルルーシュ皇子は枢木卿から書類を取り上げて、訂正印を押し、改めてサインを入れたり、日付を入れたりする。
そして、ほぅ…っとため息をついた。
「ダメだな…僕は…」
そんな一言を呟く。
枢木卿は何の事だか分らないと言った表情でルルーシュ皇子を見つめる。
「どうかしたの?」
「スザクは…僕の騎士で、僕の事が最優先だって解っている…。でも、異母兄上に僕の知らない日本の事を教えているスザクを見ていて…なんだか…」
ルルーシュ皇子は下を向いて、認めたくない事を認めるような…そんな気持ちで言葉を口にしている。
どうやら、さっきのクロヴィス皇子とのやり取りが気に入らなかったらしい。
「そんな事で怒っていたの?」
枢木卿がおかしそうに笑った。
「そ…そんな事とはなんだ!スザクはいいよ…僕と違って、誰とでも仲良く話せるんだ…。でも…僕には…それが出来ないし…」
ルルーシュ皇子が俯いて、自分の独占欲に嫌気がさしていると云いたいらしい。
枢木卿はそんなルルーシュ皇子を見て、優しく微笑んでルルーシュ皇子を背中から抱きしめた。
「ルルーシュ…俺にとって、クロヴィス殿下も、ユーフェミア殿下も、ナナリー殿下も…否、それ以外の人たちも、ルルーシュにとっての身内だったり、大切な人だったりするから、俺も愛想をよくしているんだよ?だって、そうしないと、ルルーシュに迷惑がかかるだろう?」
ルルーシュ皇子のそんな、子供じみた独占欲に、不謹慎ながらもちょっと優越感を感じてしまう枢木卿だったが…まさか、こんな形で表現されるなんて思ってもみなかった。
「だから…ルルーシュ以外の人に俺が笑うのは、社交辞令…。ルルーシュに対するそれとは全然違うんだよ?」
まるで、ルルーシュ皇子に言い聞かせるように枢木卿が言葉を紡いでいる。
「だから…ルルーシュはもっと、自信を持ってよ…。俺はルルーシュの騎士なんだから…」
「スザクは…僕の…騎士…」
ルルーシュ皇子がそっと呟く。
「うん…そう…。俺は、ルルーシュの騎士…」
最後に枢木卿が念を押すと、やっと、ルルーシュ皇子が笑った。
普段は、年齢以上に大人びているルルーシュ皇子ではあるが、枢木卿の前ではついつい、お子様な部分を見せてしまった…と云う、一幕であった…

END


あとがきに代えて



うう…うちの騎士皇子…なんでこんなにげろ甘なのでしょうか?
書いているうちに胸やけ起こしそうになります…。
だって…楽しいんだけど…騎士皇子は書いていて楽しいんだけど…うちの枢木卿、騎士皇子になったとたんに暴走するんだもん…。
誰か…騎士皇子にした時の枢木卿を止めてください( ┰_┰) シクシク
もはや、私では手の施しようが…
騎士皇子…これは書いていて楽しいけど…幸せな話になるから…
ただし…枢木卿が暴走しなければ…
いつも彼の暴走により、話が長くなる…
エ●ァじゃないんだから…そんなに暴走しないでくれ…


☆拍手のお返事


疾野 佑さま:コメント、相互リンクありがとうございました。
なにせ、ブロガー様の知り合いが少なくって…(; ̄ー ̄川 アセアセ)
と云うか、自分から、いろんなブロガー様のところにお邪魔しにいかないからいけないのでしょうが…(←それ、致命的)
私、最終回を見て以来、実は、R3は望んでいないんですね…。
だって、そこで、『ルルーシュが死んだ…』って事にされたら、立ち直れませんし…。
R3なら、過去話とか、スザク視点のコードギアスとかにして欲しいですねぇ…。
OVAかぁ…どちらかと云うと、劇場版で、大スクリーンでルルーシュ達に会いたいですね…。
私のつたない小説を読んで頂き、ありがとうございました。
なんだか、ちょっと不完全燃焼気味なのですが…また、いらしてください。
こちらからも伺います。

runeさま:いつもありがとうございます!
『死』って実は、私の中では償いにはならないと思っているので…。
本編でも結局、ルルーシュを知る人たちに悲しみを植え付けただけですしね…。
本編では大団円になっていましたけど、ルルーシュ一人が死んだくらいで、平和になるなら、とっくに世界は平和になっていると思いますしね…。
『業を残す者、業を残される者』はそんな本編に対するささやかな反逆と云ったところでしょうか…。
もっと、きちんと書きたかったのですが、長くなりすぎるし、書いている内に訳が分からなくなりそうで…。
最初、もっと長くなると思っていたんです。
ルルーシュとナナリーの対峙場面をもっと、深く追求したかったので…
でも、あまりに長くなるので、断念しました。

あと、小説の原案を頂き、ありがとうございます。
私の文章に対してそれほどの評価をして頂けると思うと、光栄ですし、頑張らねば…と云う思いも生まれます。
それに、そうやって、隅々まで読んで下さっている方がいると云うのは、書き手としてとても嬉しいものです。
小説の原案もさることながら、頂いて嬉しくなるおほめの言葉、指摘されて気づかされる言葉、お待ちしています。
そして、これからも、runeさまのご期待に添えるよう、頑張ります。





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posted by 和泉綾 at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2008年10月06日

騎士皇子シリーズ3

子供の喧嘩




 執務室でのルルーシュ皇子と枢木卿…。
今日は何だか様子が変です。
「スザク!なんで僕をそうやって子ども扱いする!?スザクだって僕と同じ年じゃないか…!」
「自分は殿下よりも、宮廷の外を知っていますからね…。子ども扱いではなく、殿下の知らない事をお教えしようと…」
枢木卿の言葉遣いがルルーシュ皇子の嫌いな騎士としての言葉遣いになっていて、ルルーシュ皇子も普段はあまり、大声で怒鳴り散らす事も少ないのだが、今日は、枢木卿に対して大声を出している。
どうやら、些細なことで喧嘩をしたらしい。
「僕だって、母上の言いつけで、城下を歩いている!スザクが云う程は…」
「なら、なんで、この間、城下に降りた時、あんな見え見えのだましの手口に引っ掛かりそうになっていたんです!ああやって、気の毒な身の上を装って…というのは彼らの常套手段です!。自分が行かなければ、今頃、怪しげな店に売り飛ばされていたところです!」
「怪しげって…彼らは…」
「実際には自分の恰好を見て驚いて逃げたでしょう?殿下に良からぬ事を考えていた輩ですよ…」
これは、数日前、ルルーシュ皇子と枢木卿が城下に降りた時の出来事だ。
身にまとった服があまりに粗末な少年たちがいて…ルルーシュ皇子に助けを求めてきたのだ。
実は、その少年たち、ある、違法な店の売り子を物色する少年たちだった。
世の中にはいろんな趣味の大人がいて…ルルーシュ皇子はそんな事とはつゆ知らず、その少年たちについていこうとしていた。
枢木卿がちょっと目を離した隙の、本当に短い時間の出来事だった。
まさか、ルルーシュ皇子をそう言った趣味の店に売り飛ばされたともなれば、ブリタニア帝国始まって以来、前代未聞の大事件である。
その少年たちも、正体を隠しているルルーシュ皇子の正体を知らずに声をかけてきたのだろう。
ルルーシュ皇子はどうも、自分の容姿が老若男女に好まれる傾向にある自覚が欠けている。
よって、城下の街の中でも、ちょっと、暗い通りに入ったりすると、そう言った悪い事を考える大人たちの町になっている事をよく解っていないルルーシュ皇子は、そう言った輩にのこのこついて行ってしまいそうになる。
この事が、ジェレミア卿にばれた時には、二人揃って、こっぴどくお説教を食らった。

 ルルーシュ皇子自身の自覚の足りなさに流石に枢木卿も頭を抱えてしまう。
まぁ、王宮育ちの世間知らずの皇子様だ。
人が人をだますのは、別に、政争や戦争のときばかりではない。
普通の生活を送っていく上でも、悪意の下のだまし合いがある事を覚えてもらわなくてはならないのだが…。
しかし、ルルーシュ皇子の優しさが、こういう時には災いする。
ルルーシュ皇子の本質はとても優しい。
助けを求められるとどうしても、放っておけなくなる。
確かに、ルルーシュ皇子の兄君、シュナイゼル皇子の手伝いをして、戦略や政略を考える事はある。
しかし、その犠牲者を見るたびに、ルルーシュ皇子は心を痛めている事を枢木卿はよく知っている。
そして、不運な事に、そう言った争い事が好きではないルルーシュ皇子ではあったが、シュナイゼル皇子と対等にチェス勝負が出来るだけの事はあり、そう言った事を考える才能は…兄弟の中でもずば抜けていた。
だからだろうか…城下町に暮らす人々に対しては、殆ど疑いと云うものをもたない。
というか、持ちたくないのだろう。
見ていると、とても幸せそうに暮らしているように見えるからだ。
笑いながら歩いている人や、何が原因か解らないが喧嘩をして言い合いをしている人、仕事でせわしなく歩いて行く人…そんな人々を見ていると、ルルーシュ皇子が王宮内や戦場で見ているような人々とは、違うと…そう思いたかった。
基本的には、ルルーシュ皇子の願望の混じった幻想に近いといえる。
そんな中、枢木卿と城下に出た時に、どこぞの怪しげな店に売り飛ばされそうになっていたのだ。
枢木卿も最初は喧嘩するつもりもなく、心配だったがゆえに、少し口調が強くなってしまった。
ルルーシュ皇子としては、確かに怖い目に遭ったのだけれど、やはり、一般の住民を疑うのが嫌で…つい、枢木卿に言い返してしまった。
「僕は…疑う事から始めるようなことはしたくない!」
と…。
それも正論ではあるが、それでも、もし、ルルーシュ皇子がそんなところに売り飛ばされた時、枢木卿だけではなく、ルルーシュの周囲の人々に責任が及ぶ。
枢木卿としてはそんな事はどうでもよかったが、ルルーシュの優しさを利用する輩が出てくることを恐れていた。
だからつい、
「ルルーシュ!世の中にいるのはルルーシュの思うような優しい人たちばかりじゃない!」
言葉足らずな一言を怒鳴ってしまった。

 その時のルルーシュの凍りついた顔が、枢木卿の頭からこびりついて離れない。
傷ついた顔をしていたが…。
『枢木…よく言ってくれた…。殿下のお優しさは美徳であると同時に、敵に付け入る隙を与える事になる…。少し、殿下にも自覚して頂かなくては…』
普段は、枢木卿のルルーシュ皇子への態度を渋い顔で見ているジェレミア卿が枢木卿にそう声をかけた。
今回の事は、ルルーシュ皇子の教訓にして欲しいとのジェレミア卿の思い出もあったのだろう。
『すみません…ジェレミア卿…。また、殿下に対して…』
『貴様のその、不敬な態度は、殿下も居心地が良いと気にいられている。私にはそのような事は出来ぬが、貴様なら…ルルーシュ殿下の御為によき助言者となってくれるであろう…』
そう言って、ジェレミア卿はルルーシュ皇子と目を合わせられなくなった枢木卿の肩をポンと叩いた。
そうは言われても、かなり、言葉の足りない形になってしまった。
そうして、そのまま落ち込む事になるかと思いきや…

 翌日の朝、ルルーシュ皇子は枢木卿のモーニングコールを無視、食堂、執務室でもいっさい目を合わせる事を避けていた。
最初は、枢木卿の一言に傷ついていたのかと思いきや…
単純に駄々っ子になっていただけだった。
枢木卿を一切近づけず、ジェレミア卿の部下であるヴィレッタ卿に用事を頼んだり、話しかけたり…。
そこまでなら分かるが、時々、なんだか、不機嫌そうな目つきで枢木卿を睨んでいるのだ。
いかにも
―――僕は悪くない!
と言わんばかりである。
枢木卿も、所詮はルルーシュ皇子と同じ年の少年である。
頭の中では
―――ルルーシュがちょっといじけているだけだ…
とは言い聞かせるのだが…。
しかし、時間が経つにつれてその態度がエスカレートしていく。
ルルーシュ皇子は枢木卿の主…枢木卿はそう、思うのだが…
そんな、対等の立場でものを言うべきではない…そう云い聞かせていた。
「ヴィレッタ…今度、僕が城下へ行く時、お前がついて来い!」
その一言に…枢木卿もぷっちーんと切れてしまった。
その一言にヴィレッタ卿も困り果てたような顔をして、ジェレミア卿と枢木卿の顔を交互に見る。
そして、枢木卿もよせばいいのに、売り言葉に買い言葉…と言うのはこの事を云うのだろう。
「ヴィレッタ卿…殿下はすぐに迷子になりますので…目を離さないようにお願いしますね…」
コメカミに青筋を立てながらひきつった笑顔を作ってヴィレッタ卿に頭を下げた。
「枢木?」
更に困った顔をして、今度はジェレミア卿に助けを求める。
しかし、この二人の状況を見て、ジェレミア卿も、子供の喧嘩に口を出す気もなかったようで、ヴィレッタ卿に目で合図する。
そのジェレミア卿の態度に、ヴィレッタ卿もただ…ため息をつく事しか出来なかった。

 数日後、ルルーシュ皇子は城下に出た。
その日は、枢木卿とではなく、ヴィレッタ卿とである。
「行ってらっしゃいませ…」
枢木卿はそう頭を下げてルルーシュ皇子とヴィレッタ卿を見送った。
そう言って、見送って、枢木卿はルルーシュの執務室へと戻っていく。
「枢木…本当に良かったのか?恐らく、ヴィレッタでは殿下の…」
「ええ…解っていますけれど…。殿下のご命令ですから…」
ジェレミア卿も流石に慣れないヴィレッタ卿にルルーシュ皇子のおもりをさせるのは流石に酷だろうと思い、枢木卿に声をかけた。
―――これは、ホントに子供の喧嘩だな…
そう思ってジェレミア卿がため息をついた。
とりあえず、この状態では枢木卿もルルーシュ皇子が帰ってくるまで仕事にはならないと思った。
そして、枢木卿に一言言った。
「お前は、ちょっと外の空気を吸って、頭を冷やして来い!」
そう言って、枢木卿を執務室から追い出してしまった。
執務室から追い出されてしまうと、何をしていいのかもわからない。
ただ、喧嘩したままのルルーシュ皇子の事は、やっぱりちょっと気になってしまって…。
ちょっと、王宮の外でも歩こうと王宮を出て行った。
執務室の窓から枢木卿が外に出て行くのを見たジェレミア卿がやれやれとため息をついた。
そして、ポケットの携帯電話で、電話をかける。
「キューエルか…枢木が、今、王宮を出て行った。ヴィレッタと殿下から目を離すなよ?枢木と違って、ヴィレッタは殿下の行動パターンを読み切れていない。万が一に事がないように!」
そう言って、携帯電話を切った。
何も起こらないとは思うが、枢木卿が城下に出ていてくれれば、ルルーシュ皇子の危険が少しは減る。
ルルーシュ皇子にとって、枢木卿は専属騎士以上の存在である事を、ジェレミア卿自身、認めていた。
ルルーシュ皇子の枢木卿への接し方を見ても、枢木卿のルルーシュ皇子への貢献を考えると、認めざるを得なかった。
やっと、ルルーシュ皇子が対等に付き合いたいと思う他人を見つける事が出来たのだと…。

 枢木卿は結局城下に来ては見たものの、歩いてるのは、ルルーシュ皇子が行きそうなところばかりだった。
本当は行ってみたいところとかもあったはずなのに…。
こうしてみると、専属騎士になってから、本当にルルーシュ皇子の事ばかりになっていた事に気がつく。
「本当に…ルルーシュ中心になっているんだな…」
そんな独り言をつぶやきながらつい笑ってしまう。
街ゆく人々は…ルルーシュ皇子が自分の中に描いているように、本当に幸せそうに歩いて行っている。
王宮内や戦場での、騙し合いの中、こういう普通に暮らす人々の姿が眩しかったのは事実だろう。
そんな中にも、悪い奴がいるという事を、信じたくなかったのかもしれない。
ふと、前を見ると、ルルーシュ皇子とヴィレッタ卿が二人で歩いている。
ルルーシュ皇子の様子が、いつもと違っていた。
いつもの楽しそうな表情ではない。
「ルルーシュ…?」
ルルーシュ皇子の表情だけでなく、何か…違和感がある。
枢木卿はすぐに二人のもとへ駆け寄った。
「ルルーシュ!」
そう言って、ルルーシュ皇子を抱き上げた。
「な…スザク…お前…何をする!おろせ!」
「枢木?」
ルルーシュ皇子がわめき散らし、ヴィレッタ卿が驚いた顔をしている。
そして、抱き上げたルルーシュ皇子の額に自分の額をくっつけた。
「やっぱり…」
そう言って、ヴィレッタ卿の方を向いた。
「すぐに殿下の寝室の準備と医者を呼んでください。殿下は、熱を出されています」
「え?」
ヴィレッタ卿が驚いて、枢木卿の顔を見る。
そうして、ルルーシュ皇子の額を触ると…確かにかなり熱い…。
「早く!自分は殿下に負担をかけないように王宮にお連れします。」
「わ…解った…」
そういって、ヴィレッタ卿はその場を走り出した。

 ヴィレッタ卿を見送って、枢木卿はゆっくり歩き出した。
何もしゃべらず、ただ、ルルーシュ皇子を抱き上げたまま、ゆっくり歩いている。
「スザク…」
やっとの思いで、ルルーシュ皇子が枢木卿に声をかける。
「ルルーシュ…俺は怒っているんだ…。なんで怒っているか解るか?」
「僕が、スザクを無視して、ヴィレッタと城下に来たことか?」
「違う!ルルーシュが、俺を嫌になって遠ざけるのは仕方ない。そんな事じゃない!なんで、具合悪いのに、ヴィレッタ卿に伝えない?俺と違って、ヴィレッタ卿はいつもお前の傍にいる訳じゃないんだ!」
怒りの翡翠がアメジストに向けられる。
「俺が嫌ならそれはそれで仕方ない…。でも、自分の事をちゃんと出来るようになれ!具合悪ければ、ちゃんと言わなければ、解らないんだ!」
「ごめんなさい…」
ルルーシュ皇子は枢木卿の本気の叱責に素直に謝る。
他人に対して気を使えること、優しく接する事は悪い事ではない。
しかし、それで、自分自身を傷つけていたら何にもならない。
「ルルーシュ…頼むから…もっと、自分に優しくなってくれ…。出来ないなら、お前が嫌がっても、俺がずっとそばにいて、お前を止めてやる!」
枢木卿の強い言葉に…ルルーシュ皇子は泣き出してしまった。
こんな風に言われた事などなかった。
「スザク…ごめん…ごめんなさい…」
そんなルルーシュ皇子にそっと微笑んで枢木卿が耳元で囁いた。
「もう、無茶しないでくれ…。俺が守れるところに、ちゃんといてくれ…」
こうして、くだらない子供の喧嘩が終わった。
というか、喧嘩の原因が吹っ飛んだ…

END


あとがきに代えて


今は懐かしい響きとも言える『騎士皇子』…
ちょっとアダルティな『騎士皇帝』よりも私はやや青臭い感じのする『騎士皇子』の方が好きです。
しかし、このゲロ甘スザルルは…
未だに、明るい新作が書けず、あんなにしぶっていた入院は今となっては有難いと思うくらいです。
そう、山ほど原稿を書けたから…
でも、そろそろ限界かなぁ…。
少しずつ書いていかないと、SSは残り少ないし…。
あ、まだ、名台詞まとめてないや…
とはいっても、コードギアス、CSの再放送すら見られないありさまでどうやってまとめるんだか…

☆拍手のお返事

日暮紅葉さま:拍手へのコメント、ありがとうございます。
激励のお言葉…涙が出るほどうれしいです。
ありがとうございます。
『幼馴染』シリーズはこれまで本編の感想を書いていた日曜日に掲載予定です。
よろしければ、続きも読んでやってください。





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posted by 和泉綾 at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2008年08月28日

騎士皇子シリーズ2

時々ある非日常(後篇)



 枢木卿に命じられ、シュナイゼル宰相のもとへ向かった使者がシュナイゼル宰相の側近であるマルティーニ伯爵に事の次第を伝えた。
「なんですって…!?ルルーシュ殿下が?」
マルティーニ伯爵が使者に怒鳴りつけて使者を睨みつけた。
使者の方はと言えば、マルティーニ伯爵の迫力にやや後方にのけぞる。
「シュナイゼル殿下がそれはそれはルルーシュ殿下を大切にしておいでなのよ!あなたたちは何をしていたの!」
「も…申し訳ありません…」
「こんなことなら…ルルーシュ殿下の我儘を通すんじゃなかったわ…」
そんな事をぶつぶつ言いながらその部屋から出て行き、シュナイゼル宰相閣下の執務室へと入って行った。
「カノン…どうかしたのかい?」
「先ほど、枢木卿からの使者がまいりまして…。その…ルルーシュ殿下が例の組織のものと思わしき連中に連れ去られたと…」
何とか顔色を変えないようにと事務的に説明しようとするが、ルルーシュ皇子を溺愛するシュナイゼル宰相にこの事実を教えたら、きっと、この宰相閣下も血相を変えて、軍を動かしかねない。
「!…ルルーシュが…?」
やはりシュナイゼル宰相が顔色を変える。
しかし、多少いつもよりは時間はかかったものの、いつものシュナイゼル宰相の顔に戻る。
「今回、ルルーシュにこのことを命じたのは私だ…。とりあえず、私たちも、現地に向かおう…。枢木卿もそこにいるのだろう?」
「はい…。使者の説明によると、護衛についていたものを一人だけ従えて、アジトに乗り込んでいったそうですが…」
「そうか…。我々も準備が出来次第、出発する!」
「イエス、ユア・ハイネス」

 ルルーシュ皇子は目隠しされた状態で狭い部屋に幽閉されていた。
人の気配が感じるので、捕虜などをとらえた時などに使用している牢にでもいるのだろう…。
カチャ…
カギの開く音がした。
「ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア様…このような手荒なご招待となってしまい、申し訳ありません。我が主があなた様にお会いするとのことです。」
女の声がしたかと思うと、目隠しと拘束が解かれた。
「あなた方の主とは…名前くらいは教えて頂けませんか?お会いしたら、私もきちんとご挨拶をしたい…」
「桐原泰三様…です。あなた様が大人しくされている限りはあなた様の身の安全の保障はこの私がいたしますゆえ…」
そう答えた女は、メイドの恰好をしていたが、その雰囲気は、普通のメイド・・・と言う感じではなかった。
「解りました…。では、桐原翁の元まで案内を頼みます。」
口元には笑みをたたえているが、目は決して笑っていない状態でルルーシュ皇子が答えた。
「私は篠崎咲世子と言います。あなた様の護衛とお世話をするよう、命じられております。」
そんな会話をしている内に桐原翁に会うための部屋に着いた。
「桐原翁、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア様をお連れいたしました。」
部屋の中に入ると、ブリタニア国内ではあまり見たことのない作りの部屋になっていた。
枢木卿から聞いた、日本の部屋の雰囲気に似ている…ルルーシュ皇子はそう思った。
「手荒なまねをして申し訳ない…。しかし、我々としても、それ相応に話をしないとまずい状況でね…。私は桐原だ…」
「……ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアです。で、早速ですが、ご用件は?」
ルルーシュ皇子がその、少年らしからぬ雰囲気を醸し出して桐原翁の向かいに正座をして答えた。

 桐原翁はルルーシュ皇子のその所作にやや驚いたようだが、すぐに表情を戻した。
「単刀直入に言いましょう。枢木スザクを日本に返して頂きたい…」
ルルーシュ皇子はその一事に眉をぴくっとさせた。
枢木卿の家庭事情は一応知ってはいたが、ルルーシュの騎士となる際に、日本国と外交レベルできちんと話し合われていた。
何かの事情でその約束を反故にするにしても、こんなテロまがいな事をして、どういうつもりなのかが解らない。
「いきなり、こんな、私たちが動き出すような事態に陥れなくても、外交レベルでの会談で何とか出来なかったのですか?第一、日本政府からの打診は一切なかったようですが?」
「ふっ…こちらとしても、色々事情がありまして…。それに、現日本国首相の嫡子が、ブリタニアの皇子…それも、第17位皇位継承者と云う特に、重要であるとは言えない皇子殿下の騎士と云うのも…おかしな話でしょう?」
「……」
ルルーシュ皇子はぐっと黙り込んでしまう。
確かに皇族ではあるけれど、母が庶民の出であり、他の皇族と同じ評価をされるためには他の皇族の3割増しの手柄を立てないと同じ評価される事はない。
今の地位は、シュナイゼル宰相の寵愛を受けているからだろう。
「恐らく、私たちが言ったところで、彼は首を縦には振らないでしょう…」
「なるほど…将を射んと欲するならまず馬を射よ…と言う訳ですか…」
やや声を震わせてルルーシュが声を絞り出した。
「あなた様は頭がよろしくて有難い…それに、誰に習ったのかは知らないが、日本の事も良く知っておいでだ…」
「何となく、答えは解るのですが、一応聞いておきましょうか…」
ルルーシュ皇子は、無理矢理気持ちを鎮めて口を開いた。
「なんでしょうか?」
「お断りします…と言ったら?」

 ルルーシュ皇子のその答えを予想していたように桐原翁がうっすら口元に笑みを浮かべた。
「なら…この地を…シュナイゼル宰相閣下に制圧して頂く事になりましょう…。シュナイゼル宰相閣下のあなたへの溺愛ぶりは海の向こうまで届いています。あなた様がここに捕らわれているともなれば…」
「では…ここ最近の、この街での地下の動きの糸を引いていたのはあなたですか!」
ルルーシュ皇子のその一言に桐原翁がくくっと笑って返事する。
ルルーシュ皇子はその返事に怒りを隠せなかった。
「ここが…日本ではないとは言え…この地には日本人もたくさん住んでいる…。そして、こんな騒ぎになるまでは…あの平和な状態がずっと維持される事が保障されていた…。桐原翁!あなたは仮にも、蔭からとはいえ、国の政治に携わる者として…恥ずかしくはないのですか!」
さっき、枢木卿と目にした街の風景を思い出すと怒りを抑えられない。
仮にもルルーシュ皇子とて、シュナイゼル宰相の配下の一員として、政治にも携わっている。
統治者が望むのは、その統治している土地と住民たちの平和…。
母君からはそう教わってきたし、統治者が自分勝手な事を射ている領内の惨事を見てきている。
「あなたは…天秤にかけるとしたら、どちらを選びますか?その土地の平和と、ご自身の騎士と…」
「なぜ…そこまで枢木スザクを…」
「今の日本に必要だからですよ…」
「なら、正式な外交ルートで交渉すればいい話です。少なくとも、皇族の専属騎士となった時点で、その者たちはブリタニア帝国から籍を外す事は出来ない…」
「それでも必要だから、このような方法を使ったのではありませんか…。外交ルートを使ってどうにかできるのであれば、とっくにそうしていますよ…」
ルルーシュ皇子はぐっと膝の上の握りこぶしに力を込める。
「私は…」

 ルルーシュ皇子がそう言いかけた時、部屋の外ががやがやと騒々しくなってきた。
「?」
「一体、何の騒ぎだ?」
咲世子が部屋から出て行き、状況の確認に行った。
ルルーシュ皇子も何が起きたのかと騒ぎのある方に顔を向ける。
そして、すぐに咲世子が戻ってきて、桐原翁の耳元で状況を知らせた。
その知らせを聞いた時、桐原翁が顔色を変えた。
ずっと、余裕を見せ続けて、不敵な笑みをたたえていたのに…
『…シュ……こだ…』
部屋の外から聞こえる声…。
いつも…自分の隣にいた騎士の声…。
そして、今回の交渉の主人公…
「ルルーシュ!」
バァンと襖を開けられ、そこには、数え切れないほどの擦り傷、切り傷を作った枢木卿の姿があった。
「ス…スザク…」
物凄い勢いで入ってきた枢木卿にルルーシュ皇子がその勢いに目を丸くして、のけぞって背中側に手をつく。
枢木卿がルルーシュ皇子の姿を見つけると、一直線にルルーシュ皇子の元に駆け寄って、ルルーシュ皇子に抱きついた。
「よ…良かった…無事で…。俺がいたのに…ごめん…」
「お…おい!スザク…」
周囲の人間も呆然とその姿を見ているしかなかった。

 そして、不意に枢木卿が立ち上がり、桐原翁の方を向く。
「桐原さん…一体どういうつもりですか?俺は、日本に戻る気はありません。まさか、今回の事件が、あなた絡みだったとは…俺は…」
「スザク…日本へ帰って来い!おまえは日本の…」
「帰りません!俺は、ブリタニア第11皇子ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア皇子の騎士です。それに、それについては、父と散々話し合って決めた事でしょう…。今さらあなたの出る幕ではありません…」
枢木卿がきっと桐原翁を睨んで言った。
「そのお前の父の力が足りないから、お前が必要になっているのだ…。日本の為に…」
「そこまでです…」
桐原翁が言い終える前に、枢木卿が入ってきた襖から聞き慣れた声がした。
「シュナイゼル宰相閣下…」
この騒ぎを聞きつけて、黙っているとは思ってはいなかったが、こんなに早く到着するとは思っていなかった。
「ルルーシュ…けがはないかい?」
「は…はい…」
そう言って、シュナイゼル宰相がルルーシュ皇子の手を取り立ちあがらせた。
「桐原泰三…あなたはすでに国際指名手配になっています。日本国内の騒動をわが国にまで火の粉を飛ばした事は万死に値します。とりあえず、ブリタニアの法廷で裁いた後、国際法廷に出廷して頂きます…」
マルティーニ伯爵が顔色ひとつ変えずに桐原翁に告げる。
そうして、シュナイゼル宰相の配下の者たちが近くにいた者たちを含めて連行していった。
しかし、そこに一人、篠崎咲世子だけが残っていた。

 ルルーシュ皇子が咲世子の傍に行く。
聞きたい事がたくさんある。
「ルルーシュ殿下…私はアッシュフォード家に仕えるメイドで、この度はマリアンヌ后妃殿下からも頼まれておりまして…」
「じゃあ…今回の事は…」
ルルーシュ皇子が驚いてシュナイゼル宰相の方に向き直る。
「今回はルルーシュの騎士の事もあったからね…。私たちだけで始末をしても良かったけれど、枢木卿の意志確認もしたかったからね…」
「そう…だったんですか…」
そう、今回、桐原翁は枢木卿を日本に連れ戻したいと思って、こんな事件を引き起こした。
一歩間違えれば、この土地に暮らす人々に犠牲が出たかも知れないような事件だった。
「スザク…お前はどうしたいんだ?桐原翁の事は別にして、私はお前の意志を聞きたい…。お前の口から…」
皇子としての口調で枢木卿に問いかける。
枢木卿はルルーシュ皇子の前に跪き、ルルーシュ皇子の右手を取る。
「私はルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下の騎士です。私の帰る場所は殿下の下だけです…」
そう言って、忠誠の証としてルルーシュ皇子の右の手の甲にそっと口付けた。
「そうか…なら、もう二度とは聞かない。だから、生涯、私のもとを離れる事は許さない…」
「イエス、ユア・ハイネス」
その場を見守っていた人々もほっと胸をなでおろした。
この地を戦場にしなかった事、何一つ失わずに済んだ事に、安堵した。

 二人はシュナイゼル宰相の反対を押し切って、チェックインしていたホテルに戻った。
「いて…」
「ほら、じっとして…一体、何人の人間と殴り合いをしたんだか…」
枢木卿のけがの手当てをしながらの会話…。
確かに枢木卿はよく、けがをして帰ってくるが、いつも、これだけ無数の傷を作る訳ではないので、基本的に手当てをしなくても治っていた。
しかし今回は数が半端じゃないので、消毒とばんそうこうを張っている最中なのである。
「頼むから…もうちょっと優しく手当てしてよ…本当に痛いんだから…」
「ごめん…僕、こう云うのも初めてやるから…。シュナイゼル異母兄上のところで手当てした方が良かったか?」
ルルーシュ皇子がしゅんとなって手を止める。
「あのね…消毒綿をもっと、そっとあてるだけでいいんだよ…。ルルーシュはギュッと押し付けるから痛いの…」
「そ…そうか…」
そう言ってルルーシュ皇子は消毒綿をつまんだピンセットを持ち直す。
そして、枢木卿に言われたとおりにやってみると、なるほど…さっきほど枢木卿は痛いと騒がない。
そんな一生懸命なルルーシュ皇子の姿に枢木卿はふっと微笑んでしまう。
あの桐原翁と対等に話をするのに、実際には世間知らずのお坊ちゃんなのだ。
「ルルーシュ…無事でよかった…」
「スザク…助けに来てくれて…ありがとう…。嬉しかった…」
ルルーシュ皇子が顔を赤くして枢木卿に感謝の言葉を並べる。
「ルルーシュ…俺は、自分でブリタニアに来るって決めたんだ…。ルルーシュの傍にいるから…」
「うん…ありがとう…」
今回の任務は、結局のところ、殆ど、シュナイゼル宰相とマリアンヌ后妃の茶番みたいなものだったが…。
でも、枢木卿の意志を確かめるうえでも、きっと必要な事だったのだ。
「あとで、異母兄上と母上に、いろいろ聞かないと…」
色々忙しかった一日も…こうして終わりを告げて行った…


あとがきに代えて


結構支離滅裂になっちゃいましたね…。
シュナイゼル兄様…暴走しそうになるの抑えるのが大変で…(; ̄ー ̄川 アセアセ)
まぁ、こうして、時々、この二人は愛を確かめ合っていく…と言う事で…。
次は、もうちょっと、まとまりのある話にしたいと思います。






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posted by 和泉綾 at 20:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2008年08月27日

騎士皇子シリーズ

時々ある非日常…(前篇)



 ガタン…ガタン…
電車が揺れている。
普通なら、皇族が乗るような列車ではない…。
と言うか、皇族が列車に乗る事など、このブリタニア帝国内において、考えられない事である。
VIP用の車両でもなく、一般人と一緒に一般の車両に少年が二人…。
一人はブリタニア帝国第11皇子 第17位皇位継承者ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア皇子…。
もう一人は、ルルーシュ皇子の専属騎士である、枢木スザク卿…。
しかも、二人とも、本当にただの学生らしい服装をしている。
ルルーシュ皇子は普段、王宮内で着ている窮屈な皇族用の服装から解放されて結構ご満悦の様子…。
一方、皇子である事を隠しているとはいえ、こんな、誰でも入ってこられるような一般車両に自分の主が乗っている事に気が気ではない枢木卿…。
あんまり気にし過ぎていると、かえって怪しまれる事は解ってはいるが、それでも、ルルーシュの傍にいる護衛は枢木卿一人である。
勿論、ブリタニアの皇子であるのだから、見えないところにはちゃんと護衛がいるのだが…それでも、今回の任務のためにいつもより距離を置いたところでの配置で、目の前に不届き者が現れたら、まずは一人でルルーシュ皇子を守らなくてはならない。
「おい!スザク…もっとくつろいで楽しまないか?」
ルルーシュ皇子は枢木卿の心配をよそに、初めて見るもの、初めて聞くもの、初めて体験する事にかなり興奮気味だ。
元々庶民出あった枢木卿としては、まさか、ここまでルルーシュ皇子が喜ぶとは思わず…この緊張感のかけらも見えない状況にちょっと頭を抱えていた。
「でん…」
枢木卿がそう呼びかけようとした時、ルルーシュ皇子があわてて枢木卿の口を自分の手でふさいだ。
「おい!ここではルルーシュと呼べ…。王宮じゃないんだぞ…」
枢木卿の耳元でルルーシュ皇子が小声で叱責する。
一応、自覚はあるらしいと、枢木卿は一安心した。

 今回の任務は、ブリタニア帝国第二皇子 ブリタニア帝国宰相であるシュナイゼルからのものである。
帝都から離れたある地域で、不穏な動きがあるとの情報が入り、ルルーシュに先行し、内情を調べておいてほしいとのことであった。
つまり、その地域の制圧前の事前調査である。
それほど大きな動きでなければ、ルルーシュが納めてくれば良し…ルルーシュの手に余るようなら、すぐにシュナイゼルに知らせるようにとの指令であった。
要するに、潜入捜査なので、あまり目立つ恰好も出来ないし、皇子である事がばれるわけにもいかない。
よって、普段とは違う、普通の少年の恰好をしており、一般人の使う列車で任地に向かっている。
「良かった…ちゃんと自覚はあるんだね…」
枢木卿の言葉にやや眉を吊り上げてルルーシュ皇子が反応した。
「どういう意味だ?」
「だって…ルルーシュってば、王宮出る時から完全に浮かれモードだったから…。大丈夫かなって…俺は心配だったんだよ…」
ほっとしたように、まるで弟を見る様な眼で枢木卿はルルーシュ皇子を見つめる。
「失礼だな…。僕だって、任務だと云う自覚は持っているさ…。ただ…見た事もないようなものが多いし、それに…」
そこまで口にすると、ルルーシュ皇子は下を向いてしまって、それ以上言葉に出来なくなってしまった。
「それに?」
きょとんとして、枢木卿はルルーシュ皇子に聞き返した。
「……」
聞き返しても返事は返ってこない。
枢木卿は何となく腑に落ちないながらもそこはスルーした。
ルルーシュ皇子は時々、恥ずかしいと思ったり、認めたくないと思ったりした時には下を向いて黙ってしまう。
枢木卿もそんなルルーシュ皇子には慣れているらしく、ふっと笑って、ふわっとルルーシュ皇子の髪をなでた。

 そんなこんなしている内に、列車は目的地の最寄りの駅に着いた。
「ルルーシュ…結構人が降りているから、離れないようにして…」
両手に荷物を持っている枢木卿はルルーシュ皇子に対してそう注意する。
なにせ、こうした鉄道を使うのは初めてのルルーシュ皇子…。
目を離すときっと迷子になってしまう。
実際に帝都の駅でも、迷子になりかけていた。
「わかった…。スザク…僕も荷物…持とうか?そしたら、僕の手、スザクが引っ張ってくれるだろう?」
「否…多分、ルルーシュじゃ持てないから…だから、絶対に俺の傍を離れないで…」
そう言って、枢木卿は二人分の旅行荷物を持っている。
確かにルルーシュ皇子の腕力では持ち歩くのは無理だろう。
「そうか…ごめん…スザク…」
しゅんとなって、ルルーシュ皇子が枢木卿に謝った。
「何言ってるんだ…。これは俺の仕事…。ルルーシュにはルルーシュの仕事があるだろ?」
「うん…」
何となく納得できているのか出来ていないのか解らないような返事をルルーシュ皇子が返した。
「とりあえず、ホテルにチェックインして、荷物を置いて来よう…。そうしたら、俺も身軽になれるよ…」
ルルーシュ皇子を安心させようと、枢木卿は柔らかく笑って言葉にする。
「うん…。そう言えば、僕、ホテルと言うところに泊まるのは初めてだ…」
また、ルルーシュ皇子は目を輝かせている。
そんなルルーシュ皇子にちょっと、微笑ましいなと思いつつも、不安がよぎる。
何でもかんでも王宮の給仕にやって貰っているルルーシュ皇子が中堅クラスのホテルで、とりあえず、本人がやらなくてはならない事もある状況にどれだけ対応できるのだろうか…。
恐らく、枢木卿が手とり足とり教えながらやる事になるだろう。
皇族と言う身分を隠してのお忍び任務とは、任務を仰せつかっている皇族本人よりも周囲の人間の方が大変なのだ。
そう言えば、同僚であるユーフェミア皇女の専任騎士もこうした任務の後はぐったりしていた。

 チェックインを済ませ、ルルーシュ皇子と枢木卿はホテルの部屋に入った。
ルルーシュ皇子は部屋に入って、またも驚いた様子である。
「狭いなぁ…」
「そりゃそうだ…。一般人が普通に使うホテルだからな…。アリエスの離宮と一緒に思う方が間違っている…」
荷物の整理をしながら、枢木卿がさも、当たり前のように言うが、ルルーシュ皇子としては、全てが珍しい。
確かに、ルルーシュ皇子の母君方針で、ルルーシュ皇子は良く、街に出てはいる分、他の皇族達よりも、庶民の暮らしを知っているが、本物の庶民である枢木卿ほど知っている筈もない。
「でも、僕はこのくらいの方がいいかも知れないなぁ…」
「?どうしてそう思うの?」
ルルーシュ皇子の一言に枢木卿が驚いて聞き返す。
「だって…誰かと話すときの距離が短いじゃないか…。広すぎて、大きすぎるテーブルを挟んでの会話は…どうしても話が遠くなるし、普通の会話でも、会話をしているって言う感じじゃない…。だから、僕はこの部屋、ちょっと気に入った…」
一通り部屋の中を眺めて、ルルーシュ皇子は荷物の整理をしている枢木卿の傍へ行き、荷ほどきの手伝いをし始めた。
「ル…ルルーシュ…。これは俺が…」
「僕もやる!」
「しかし…」
「これは命令…。僕にもやらせて…」
そういって、ルルーシュ皇子は枢木卿のまねをして、荷解きを手伝い始めた。
こんな時に…と思いつつも、嬉しそうに手を動かしているルルーシュ皇子にふっと、ため息をつきながら、様子を見る事にした。

 大体の荷解きを終えた。
「さて、そろそろ街に出ようか…」
「そうだな…。ルルーシュは、この町の配置は解るか?」
「地図は覚えている…。ただ、地図で覚えているだけだから…実際には歩いてみないと…」
「わかった…。とりあえず、市庁舎とその周辺を見て回ろう。実際の調査は明日からだな…」
枢木卿は自分のスーツの中に銃を忍ばせた。
今回の枢木卿の任務はルルーシュ皇子の護衛であり、この街は…かなり、危険な街である。
だからこそ、シュナイゼルが制圧のためにルルーシュ皇子を送り込んだのだ。
二人はフロントにキーを預けて、街の中を歩き始めた。
「見た感じは…凄く平和なのにな…。でも…」
ルルーシュ皇子が下を向いた。
この街にシュナイゼルの軍が来る事は決定事項である。
ルルーシュ皇子と枢木卿は街の配置や、施設の調査のために来ているのだ。
「でも…証拠はそろってしまっているんだろう?」
「うん…」
宰相のシュナイゼルが認めるほどの軍略、謀略を考案するルルーシュ皇子でも、所詮はまだ、16歳の少年…。
枢木卿は時々、ルルーシュ皇子は何故、普通の、凡庸な少年として生まれてこなかったのだろうと思ってしまう。
枢木卿がルルーシュ皇子と出会ったのが12歳の時…正式に専属騎士になったのは14歳の時だった。
初めて見た時から、なんだか、同じ年の筈の少年であるのに、自分とは全く違うものを感じていた。
それが、間違いではないと確信したのは、ルルーシュ皇子の専任騎士となり、常に、ルルーシュ皇子の傍にいるようになってからだ。
頭が良く、先の事を正確に予測出来てしまい、大人も顔負けの謀もできる。
ただ…そんな頭脳に、彼の精神がついていけていない気がしていた。
そんな彼を見ていて、時々切なくなった。
ルルーシュ皇子が望むのであれば…と、出来るだけ傍にいる様にしている。

 大体の街の下見が完了した頃には日も暮れかけていた。
「ルルーシュ…そろそろ帰ろう…。もうすぐ日が暮れる…」
「そうだな…。異母兄上にも報告しないとな…」
ルルーシュ皇子はなんだか元気がない。
今日の街の下見の中で、平和に暮らしている人々の姿を見ていたからだ。
統治者としては、問題分子は潰さなくてはならない…そんな事は解ってはいるが…
それでも…普通の生活をしているふつうの人々の笑顔を見ていると、これからなされる事を知っているルルーシュ皇子は切なくなるのだろう。
「スザク…できるだけ…犠牲は少ない方がいいよな…」
「ああ…そうだね…。俺も庶民だからな…。ルルーシュがそう思ってくれているのがうれしい…。統治者の中で、ちゃんと、そうやって、心を痛めてくれる人がいると云うのは庶民としては心強いよ…でも…」
「でも?」
「お前の騎士としては…お前を見ているのがつらいよ…」
枢木卿は切ない笑みをルルーシュ皇子に向けた。
「スザク…」
ルルーシュが何かを言いかけた時、細い通りから腕が出てきたかと思うとルルーシュの口をふさいでその細い路地に引き込んだ。
「ルルーシュ!」
「ん…んん…」
枢木卿がルルーシュ皇子の名前を呼んだ時には枢木卿の周囲には5〜6人の男たちが取り囲んでいた。
その程度なら枢木卿一人でも何とかするが…ルルーシュ皇子が…
「そこを動いたら…皇子の命はない…」
ルルーシュ皇子を捕まえている男が枢木卿ににらみを利かせて言い放った。
「ひ…卑怯者め…」

 その男はルルーシュ皇子を後ろ手に縛り上げていた。
「スザク!僕の事より、すぐに…異母兄上に…。それに、こいつらは、絶対に僕を殺さない!いや、殺せない!」
「ルルーシュ!」
その場で立ちつくしている枢木卿にルルーシュ皇子は必死に叫んだ。
「これは命令だ!ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアの名において、枢木スザクに命ずる!すぐに、異母兄上に連絡をとり、そして…僕を助けに来い!」
その一言を残し、ルルーシュは男たちに連れて行かれた。
その場に枢木卿と彼を取り囲んでいた男たちが残される。
「お前に、メッセンジャーになって貰っても困るんでな…」
「悪いが、死んでもらうぞ…」
そう言って一斉に襲いかかってきた。
「お前らにやられるような力量で…ルルーシュの騎士になんてなれないんだよ…」
口の中で低く呟き、枢木卿が襲いかかって来た男たちを粉砕した。
「枢木卿!」
異変を察知した護衛たちがやっと到着したらしい…。
「殿下が…連れ去られた…。相手は、調査書に会った連中に間違いない…。すぐに、シュナイゼル宰相閣下に連絡を…」
「イエス、マイ・ロード」
「そして、お前、俺と一緒に来い!アジトは解っているんだろう?」
「は…はい…」
「なら…殿下を…ルルーシュを救出に行く…」
怒りをたたえた枢木卿の目に護衛たちがひるんだ。
「し…しかし…」
「俺はルルーシュ殿下の騎士だ…。シュナイゼル宰相閣下の部下ではない!」
そう一言吐き捨てて、上着を脱ぎすてて走り出した…

To Be Continued


あとがきに代えて


騎士皇子シリーズ第二弾です。
もう、シリーズにしちゃいました。
ちょっと、緊迫感のある話にしたら…妄想ワールドで話が膨らみすぎまして…1回分でまとまらなくなってしまいました…。
明日、続きを載せます。

☆拍手のお返事
ildirey様
いつもありがとうございます!
あのジノルル…(ルルーシュ出てないけど)ちょっと、恥ずかしいくらい突貫工事でできた作品でしたが…一人でも、『萌え』を感じてくださっていたなら…本当に良かったです。
ジノルルは…書きたいんですけど、実際に絡ませると、スザクがうるさいので…なかなか実現しなくて…。
うちのスザク…ルルーシュに手を出そうとする人には男女問わず容赦しないので…(爆)
TURN20は…ルルーシュはかっこいいし、スザクも…頑張ってくれて…。悲しい涙がなくて私、何度も見返してしまっています!
でも…捨て身のルルーシュ…見ていて切ないですね…やっぱり…。
人間、誰か一人でも、理解してくれる人がいれば、救われるのに…今のルルーシュの中にはそんな存在が誰もいない事に悲しくなります。
スザクが…そう云う相手になってくれればいいのになぁ…



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posted by 和泉綾 at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ

2008年08月13日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 11

ルルーシュ皇子



 ここはブリタニア帝国。
そして、ここにいるのはブリタニア帝国第11皇子、第17位皇位継承者、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア皇子…。
その傍らでルルーシュ皇子の仕事を見守っているのが、ルルーシュ皇子の専属騎士である枢木スザク卿。
ルルーシュ皇子とは同じ年で、たまたま、ルルーシュ皇子のお眼鏡にかなった稀有な、とても人当たりが良く、優秀な人物である。
ルルーシュ皇子は、頭が良く、要領もいいのだけれど、運動がどうも苦手で、普段から『運動不足になっちゃいますよ…』と枢木卿に叱られてはいるのだけれど、何かと仕事を理由に、運動不足解消の努力はしていない。
もう少し、護身術くらい身につけて貰わないと、いくら体力馬鹿体力大魔王、体力と運動神経に自信のある枢木卿でも、大変である。
「殿下…」
「……」
枢木卿がいつものようにルルーシュ皇子の事を呼んでみるけれど、ルルーシュ皇子は書類から目を離す事もなく、そして、枢木卿に返事を返す事もしない。
また、いつものわがままが始まったようだ。

 もともと、ルルーシュ皇子と枢木卿の出会いと云うのは、ブリタニアに留学していた枢木卿を街で見かけたルルーシュ皇子が一目惚れ、一目見て気に入ったという。
その時、ルルーシュ皇子は、母君の側近であり、ルルーシュ皇子の教育係であったジェレミア卿と一緒に、市民の生活の視察をしに、王宮近くの町に出ていた。
お忍びの視察なので、自然体の市民の生活を垣間見る事が出来る。
しかし、皇子殿下と云う事は伏せられているので、当然と言えば、当然だが、世間知らずな皇子は危険な目にも遭う。
そして、皇子の悪戯心でジャレミア卿を撒いて、一人で街中を歩いている時、一応、一般市民の恰好をしていたのだけれど、もともと、皇子の気品と云うものが備わっているうえに、女の子とよく間違われてしまうようなかわいらしい顔をしていた為に、何も知らないちょっと不良さん達に絡まれてしまった。
その時、たまたま通りかかった枢木卿に助けられたという、妄想の世界であれば、絶対に使い古されている様な、でも、ネタとしては腐っていないような状況に陥った。
『君、大丈夫?』
見た感じ、ブリタニア人ではなさそうだった、
アジア系の民族だろうか…ルルーシュ皇子はその時に思った。
そして、『なんて綺麗な目をしているのだろう…』とその少年の瞳にすっかり魅入られてしまった。
『あ…助けてもらって感謝する…。お前…名は?』
皇子である事を隠してのお忍びでの外出と云う事をすっかり忘れて、しっかり皇子様の口調でその少年に話しかけたルルーシュ皇子…。
母君からも一般市民との話し方は教わってきたのに…。
何でも一度聞けば覚えられるルルーシュ皇子の頭から、そんな母君の教えが吹っ飛んでいた。

 そんなルルーシュ皇子にその少年は、むっとした表情を見せた。
ルルーシュ皇子はその時、はっとして、自分の間違いに気付いたのだが、後の祭りだった。
こんな失態をした事がなく、どうしようもなく動揺する。
『なんだよ…お前…ずいぶん偉そうだな…』
『あ…えっと…その…』
ルルーシュ皇子はその時、おろおろしてしまって、どうしていいか解らなくなっていた。
失敗そのものをした事があまりなく、そして、失敗したとしても、いつも、周囲にいる大人たちがフォローしてくれていて…人に対して謝ることなど殆どなかった。
相手が起こっているらしいと察してはいるが、どうしたらいいか解らない。
『で…殿下…』
後ろからジェレミア卿の声がした。
『あ、しまった…』
さらにルルーシュ皇子が困ったような顔をしたので、その少年が、きょとんとしていたが、後ろから目の前にいる女の子みたいな少年に声をかけた男が物凄い形相で走ってくる。
そして、思わずルルーシュ皇子の手を掴んで走り出す。
『来い!』
そう云うが早いか、ルルーシュ皇子はその少年に手を引かれて走り出す。
その少年に手を引っ張られて走るルルーシュ皇子は…なんだかとても楽しい気持ちでいた。
初めて経験する…こんな追いかけっこ…。

 そして、10分ほど走り続けただろうか?
普段あまり走ると云う事をした事のないルルーシュ皇子が声も出ないほど息を切らせていた。
『お前…体力ないんだな…。見た目だけじゃなくて中身も女の子みたいだな…』
『はぁ…はぁ…う…うるさい…』
息を整えながら必死に言葉を紡ぎだすが、こんなには知った事など、ルルーシュ皇子の記憶の中に殆どない。
膝に手をあてて下を向いて息を切らせているルルーシュ皇子を見て、その少年はちょっと呆れて言葉を発した。
暫くその少年はルルーシュ皇子に対して何を云うでもなく…ただ、ルルーシュ皇子の息が整うのを待っていた。
『少しは落ち着いたか?』
そう言いながらその少年はルルーシュ皇子に手を差し出した。
『あ…ああ…。ありがとう…』
そう言いながら、ルルーシュ皇子はその少年の手を取った。
『なんだ…普通に喋れるんじゃないか…。さっきのあの態度じゃなくて、そう云う風にしていれば、誰にでも好かれると思うぞ…。お前、見た目もかわいいし…』
『な…僕は男だ!かわいいなんて言われたって嬉しくはない…』
ぷいっと横に顔を向ける。
『なんだ…コンプレックスだったのか…ごめん、ごめん…』
これまで、ルルーシュ皇子に対してこんな風に話しかけてくれた者はいなかった。
皇子と云う立場だから仕方ないと言えばその通りなのだが…。
『なぁ、お前、名前は?』
『ルルーシュ…』
ぼけーっとしながらつい、本当の名前を云ってしまった。
お忍びで出てきたはずの街で市民に名前を云ってしまった。
『へぇ…綺麗な名前だな…。俺は枢木スザク…日本からブリタニアに留学しに来たんだ…』
『留学?』
『ああ、親父にもっといろんな世界を見て来いって…。もうすぐ、帰国なんだけどさ…。こんなことなら、もうちょっと早くルルーシュに会っておきたかったな…』
『?なぜ…そう思う?』
『だって…お前、凄く綺麗だし、それに、ちょっとの時間だけだったけど、凄く面白かったしな…』
枢木スザクと名乗ったその少年は太陽のような笑顔をルルーシュに向けた。

『……の方が…ずっと綺麗だ…』
 ルルーシュ皇子は俯きながらスザク少年に言った。
『え?』
『君の…その真っ直ぐな瞳の方が…ずっと綺麗だ…。』
なんだかよく解らないけれど、ルルーシュ皇子は泣きそうになっていた。
『お…おい…なんで、そんな泣きそうになっているんだよ…』
スザク少年は、ルルーシュ皇子のその様子に驚いて、おろおろし始める。
『スザク…君は…いつまでブリタニアにいるんだ?』
『来月の今頃は日本に帰るんだ…』
『え?』
こんな風に話をしてくれた人は初めてだった。
皇子だと云う事を知らないからかも知れないが…。
でも、スザク少年はもうすぐ日本に代えると云う…。
これまで、皇族の権力を使って何かを手に入れたことなどなかった。
でも、このスザク少年は、今までつかった事のない権力を使ってでも、日本に返したくない…そう思った。
『殿下…やっと見つけました…』
後ろからジェレミア卿の声がする。
『まったく…あなた様はもう少し、ブリタニアの皇子と云う…』
『わぁ…ジェレミア…』
スザク少年に、皇族である事を知られたくなかった。
その時、ルルーシュ皇子はそんな風に思っていた。

『殿下?皇子?』
『あ…あの…その…』
ルルーシュ皇子は困ったような顔で、切なそうな顔で、スザク少年の顔を見た。
『殿下?』
ジェレミア卿のとどめの一言だった…。
その場にいるのが辛くなり、ルルーシュはカタカタ震えだした。
『ご…ごめん…スザク…。今日はありがとう…楽しかった…』
その一言を残し、ルルーシュ皇子はその場を走り出した。
知られてしまった…。
ほんの短い時間だったけど…あんな新鮮な話し方をして、皇子と云う事を感じずに話す事が出来たのに…。
あのスザク少年も、ルルーシュ皇子がブリタニア帝国の皇子だと知れば、きっと態度が変わるに違いない…。
今までにもあんな風に接してくれた人はいた。
でも、それはルルーシュ皇子の事を何も知らない時間だけだった。
ルルーシュ皇子が皇子だと解ると、態度が一変した。
機嫌取りに必死になり、薄気味悪い猫なで声で話しかけてくる。
『また…僕は…』
皇子として生まれてきたかった訳ではない。
たまたま生まれた家がブリタニア皇家だっただけだ。
いつも、寂しくて、孤独で…ルルーシュ皇子は友達が欲しかった。

 とぼとぼ狭い路地を歩いていた。
周囲を見ると、どこにいるのかが解らなかった。
『しまった…』
一応、ジェレミア卿に直接つながる無線機は持っていたが、今のこの状況でジェレミア卿を呼びたくなかった。
やみくもに歩き出したが、その辺は、王宮育ちの皇子様…。
広い通りに出る事も出来ず、知らない人しか通らない狭い路地の中をさまよい歩く。
泣きそうな気持を必死に抑えて、なんとか、広い道に出ようと歩くが、絡んだ糸を解こうとして、さらに絡まっていくような感覚に襲われていた。
『ルルーシュ…』
後ろから…さっき聞いた声がした。
『え?』
振り返るとスザク少年が立っていた。
『ルルーシュ…道も解らないくせに、一人でどっかに行っちゃうなよ…』
さっきと変わらない態度のスザク少年が、ルルーシュ皇子に手を差し出した。
『……』
涙が出てきそうなのを必死でこらえる。
『ルルーシュ…帰ろう…。ジェレミアさんだっけ?心配してたよ…』
『スザク!』
スザク少年の変わらない笑顔にほっとしたのか、スザクに抱きついてわんわん泣き出した。
『ル…ルルーシュ…』
そんなルルーシュに驚いてスザクは困った顔をするが、そんな子供みたいなルルーシュを見て、優しく笑う。
『ルルーシュ…大丈夫だよ…』
それが、彼らの出会いだった…。

 執務室で相変わらず、枢木卿の言葉を無視し続けていたルルーシュ皇子であったが…。
「ルルーシュ!」
枢木卿がやや声を荒げてルルーシュ皇子の名を呼んだ。
「なんだ?スザク?」
やっぱりか…と云う表情を隠さずに枢木卿がため息をついた。
「もう…なんで、君はそうやって、わがままばかり…」
「公の場では、ちゃんとしているが?」
「だからって…この間だって、プライベートだからって『殿下』って呼ばなかった時にジャレミア卿が入ってきて…その時にさんざん俺は怒られたんだぞ…」
「僕の騎士になったんだ…それも仕事の内だ…」
さらっとルルーシュ皇子が笑顔で返す。
枢木卿自身、ルルーシュ皇子の子の笑顔に何度騙されてきた事か…。
そんな事を思うが、どうしても枢木卿はルルーシュ皇子に厳しく接する事が出来ない。
「とにかく…そろそろ、お時間です。早くお出かけの準備を…」
そう言ってルルーシュ皇子を促す。
「わかったよ…じゃあ、下で待っていてくれ…」
そう言って、ルルーシュ皇子は出かける準備をするために部屋を出て行った。
枢木卿はやれやれと言った表情で机の上の書類の整理を始めた。
「まぁ…惚れた弱みかな…」
と、ため息交じりに笑顔を作って、ルルーシュ皇子の後を追って部屋を後にした。



あとがきに代えて



暗い話ばかりだと気が滅入ってしまうので、ちょっと、ほのぼのスザルルにしてみました。
私、騎士皇子で書くのは初めてです!
騎士皇子って、書いていてこんなに楽しいんですね…。
ちなみにうちの皇子は『僕ルル』で騎士は『俺スザク』です。
そのまま育っていたら、多分、そう云う一人称だと思ったので…
なんか、シリーズものになりそうな気配ですが…また、書いたら掲載していきます。


posted by 和泉綾 at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 騎士皇子シリーズ