2010年11月26日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説220

黒猫ルルにゃん17



 あの時…ルルーシュの衝撃的な言葉により、再起不能になったかと思われたルルーシュの異母兄…シュナイゼルは…。
「ロイド!私のルルーシュはどこへ行った!!」
もの凄い剣幕でロイドの職場に乗り込んできていた。
そして…
「まぁ…シュナイゼル異母兄さま!ルルーシュは私のルルーシュです!ルルーシュにあんな事とか、こんな事とか、あまつさえそんな事までしていいのは私だけです!」
「シュナイゼル異母兄さま!ユフィ異母姉さま!全力で間違っています!お兄様は私のお兄様です!ユフィ異母姉様…思いっきり物騒な発言をかまさないで下さい!」
「何を云っているの!ナナリーだって同じ事を考えているくせに!」
「いいえ!私はそんな事を考えてはいませんわ…。ただ、お兄様が眠っている時…猫の姿になってパジャマの中にコソコソっと…」
「おや…ナナリー…君は意外といい事を思いつくんだね…。私もそれをしてみたいね…」
とまぁ…完全に煩悩を吐きだしている状態となっていた。
尤も、シュナイゼルに関しては、今のところ、ロイドにルルーシュの行方を訊ねているだけで、煩悩を暴露はしていないのだが…。
物騒な発言をかましているのはユーフェミアとナナリーだ…。
「ナナリーったらズルイ!私もそれをやりたい!」
既に話しの種子が変わっている様である…。
そのうるさい云い争い(?)を背後に聞きながら…。
ロイドはルルーシュが作って置いて行ったプリンの最後の一つに手をつけようとしていた。
プリンと云うのは市販のぷっちんプリンならともかく、手作りのプリンの賞味期限は非常に短い。
前日にルルーシュがスザクに休みをくれたお礼と云う事でルルーシュがロイドの為に10個、プリンをおいて行ったのだが…。
一晩で残り一つとなっていた。
「ん…この匂いは…」
シュナイゼルがどうやらプリンの匂いに気づいたらしい。
人間であるセシルは驚いた顔を見せるが、猫の嗅覚は人間の嗅覚よりも遥かに鋭いのだ。
「あ…これはルルーシュのカスタードプリン…」
「お兄様のプリンですか?あ、ロイドが持っています!」
「ゲッ…」
このメンツが揃っている中で食べようとしているロイドが間抜けなのだが…。
ロイドがそのプリンを守る様に3人を恐る恐る見ている。
ルルーシュの手作りプリンはここには一つしかない。
昨夜、ロイドは一人で9つ食べてしまっていたのだ。
何故、この時間に1つだけ残っていたのかと云えば…。
単純に仕事で呼び出しをくらったからであり…実は、楽しみを先延ばしにされそうになったところをセシルに首根っこを掴まれてずるずると引っ張って行かれたのだ。
そして、ようやくありつけたプリンだから…守る為に必死である。
気持ちは解らないでもないが…このメンツがいる中で食べようと思うこと自体、少々無理があるのではないかと云うツッコミは敢えて、明後日の方向に追いやっておこう。
「ロイド!私のルルーシュを隠した上に更にはルルーシュ手作りのプリンまでも一人占めしようと云うのか!」
「ロイド!貴方は皇族に対して逆らうのですか?」
「それは…国家反逆罪に問えないんですか???」
3人が好き勝手な事を云っている。
こう云った時にこの発言を一つ一つ実行されていたら、恐らくロイドは100回死んでも足りないだろう。
今更なので、ロイドも動じないが…そんなロイドにセシルが一喝入れる。
「ロイドさん!あんまりバカな事ばかりしているとプリンは没収です!」
その一言で、ロイドは押し黙り…。
セシルのそのオーラを見た皇族3人…ポカンとその姿を見ていた。

 職場ではそんな騒ぎとなっていたのだが…。
当のルルーシュとスザクは…。
大掃除の疲れでそのまま寝てしまったらしく…到着当日はとりあえずルルーシュを溺愛する異母兄妹達にとっては『事なきを得た』ようである。
とはいっても、まだ二日目だ…。
スザクがそんな風に構えていたら、さっさと1週間など過ぎ去って行くだろう。
ただ…今回は天もスザクに味方をしたらしい。
「みゃあ!」
そう云って寝室のベッドから這い出てカーテンを開けたルルーシュがまだ、ベッドにもぐりこんだ状態のスザクに声をかけた。
一応、解説すれば、この寝室には二つのベッドがあり、ルルーシュが窓側のベッドを使い、スザクが廊下に続く扉側のベッドを使っていたわけだが…。
「ん…どうしたの…?ルルーシュ…」
「みゃあ!みゃあみゃあ!」
ここは山間部の別荘地…。
平地よりも冬の訪れは早い。
そして、今年はラニーニャ現象と恐らく、地球規模の異常気象によって夏が長く、秋はあっという間に消え去ったと云う…中々寂しい年ではあったのだが…。
ルルーシュの声に促されて外を見ると…
「ああ…雪だね…。僕、多分、この時期に雪を見るのは初めてだな…。この辺り、冬が早いとは聞いていたけれど…今年は変な気候だったからかな…」
スザクがそう云いながらルルーシュの後ろに立った。
窓からはひんやりとした空気を感じる。
いくら暖房があるとは云っても、パジャマ姿で外は雪が降っている状態で窓際に立っていたら寒いに決まっている…。
「ルルーシュ…そんなカッコで寒いだろう?それにこれだけの降りだと…お昼頃には地面も白くなるかもしれないよ…」
「みゃ?みゃみゃあ…。みゃあ…」
ルルーシュがスザクに促されつつも…何となく名残惜しそうに窓を見ながらそんな事を云った。
「東京じゃ、滅多に雪なんて降らないしね…。ルルーシュはあの時、どのくらいこの世界にいたの?」
「みゃあ…。みゃあ…みゃあ…」
考え込んでいるそぶりを見せて…。
そして、スザクの手に『紅葉は見た』と書いた。
「そっか…あの時点でこっちに来てからそれほど経っていなかったって事か…。まぁ、あの状態では放っておいたらルルーシュ…飢え死にしていたかもしれないもんね…」
スザクは自分でそこまで云って…さぁ〜〜〜と青ざめてきた。
―――もし…僕がルルーシュと出会わなかったら…世知辛いこの日本の中でも更に世知辛い東京では…
そう考えると、あの時、驚きはしたものの、ルルーシュを連れて帰った自分を褒めてやりたくなった。
「あの時の僕…偉いぞ…。良くやった…」
口の中でぼそりと呟いた。
「みゃ?」
ルルーシュがスザクのその一言をきちんと聞いていたかどうかは知らないが、怪訝そうにスザクを見た。
「ううん…何でもないよ…」
スザクが適当に笑って誤魔化した。

 外の天気は…どんどん雪が強くなって行っている。
「みゃ…みゃみゃあ…。みゃあ…」
ルルーシュが外を見ながら不思議そうに何かを云っている。
何か、納得できないと云った感じなのだが…。
恐らく、ルルーシュは、ネットか何かで『雪』の資料を見たのだろう。
そして、ルルーシュにしてみると、何となく違うと云いたいと判断した。
雪と一口に云っても霙の様な水っぽい雪であれば、粒が大きく、そして落ちたらすぐに消えてしまう。
しかし、粉雪の様な雪は粒が小さい。
そして、その粉雪に近い雪は解けにくく、積り易い。
今降っている雪は…どうやら、積もるタイプの雪らしい…。
「ああ、それは上空の気温の問題もあると思うんだけど…雨粒が凍って雪になるんだけど、気温が高めであれば雪は落ちてくる間に水っぽくなって、低いと凍った状態でさらさらした雪になるんだ…」
「みゃあ…みゃみゃあ…」
ルルーシュがスザクの言葉にそう返した。
何を云っているのか、良く解らないけれど…。
そう云えば…初めて会った時にはルルーシュは猫の姿で…。
でもって、猫の姿のまま食べ物を強請ってきた…。
人間の言葉で…。
それが…今は一緒に暮らして…ルルーシュは人間の事をちょっと勘違いしながらも、頑張って勉強して、スザクと一緒にいる為に色々してくれている。
「ルルーシュ…雪は初めてなの?」
スザクがそう訊ねるとルルーシュはこくこくと頷いた。
きっと、ルルーシュの暮らしている『猫帝国』とやらは温暖な気候なのだろうと思った。
「じゃあ…こう云う寒いのって…辛いと思う事はある?」
スザク自身、一体何を訊いているのだろうと…思いながら、質問を続けている。
その質問にはルルーシュはふるふると横に首を振った。
「どうして?」
ルルーシュのその返事にスザクがそう、訊ねた。
猫の鳴き声しか音に出す事の出来ない今のルルーシュに…。
スザクに解る言葉で答える事が出来ない事を解っているのだけれど…。
思わず訊ねてしまった。
スザクの解らない言葉で話す時のルルーシュだから…訊けた事なのかもしれない…。
暫くの沈黙が続く。
スザクはルルーシュが困ってしまっているのだろうと…そんな風に思っていたが…。
「……から…」
今、言葉を出したのはスザクではない。
スザクは声を出していないのだから…。
しかし…猫の鳴き声以外の『言葉』を聞いた…。
「え?」
スザクが一瞬止まって、やっと出てきたのは、ひらがな一文字だった。
「…って…スザクの…傍にいれば…温かいから…」
その先に続いたルルーシュの言葉は…。
ここまで、ルルーシュが猫の鳴き声しか出せなくなってしまったのは、スザクの所為だと云う思いがあっただけに…。
スザクは動きを止めた。
「ルルーシュ…?」
恐る恐る、スザクがルルーシュの名前を呼んだ。
「あ…俺…」
どうやら、ルルーシュも気付いていなかったらしく…本人も驚いている様子だ。
二人の間にある空間は約1.5メートル…。
その空間に…静寂が訪れた…。
その時間が一体どれほどの時間なのか…。
長いようにも…短いようにも…感じてしまうその時間…。

 先に動いたのは…
「ルルーシュ!」
そう、ルルーシュの名前を呼んでその二人の間の距離を簡単に狭めて…。
そして、抱きしめたスザクだった…。
人間の姿でも…きっと苦しい程の力で…。
その時のスザクに、その力加減を出来る程の精神的余裕はない。
自分が何を考えているのかも解らないし、何を感じたのかも解らない。
ただ…ルルーシュの細い身体を力いっぱい抱きしめていた。
そして、抱きしめられているルルーシュに伝わる…。
スザクの身体の震え…。
小刻みにスザクの身体が震えている事が解るし、泣きそうになって我慢していて、逆に嗚咽が我慢できなくなっていると云う…。
そんな感じに思えた。
そんな状態のスザクに…スザクの力で力いっぱい抱きしめられて、苦しいし、接触している部分は相当痛いのに…。
でも、ちょっとの間だけ…ルルーシュはそんな状態にある事を体で感じる事が出来なかった。
ただ、ルルーシュの身体に触れているスザクの身体が震えていて、力いっぱいルルーシュの身体を抱きしめていると云う事だけは…きちんと解るが…。
苦痛を感じる事はなく…。
スザクのぬくもりとスザクの気持ちをひしひしと伝えて来るその震えと必死にスザクが我慢している嗚咽を感じていた。
「ルルーシュ…ルルーシュ…」
スザクがやっと、声を出したかと思ったら…ただ、ひたすらルルーシュの名前を呼び続けていた。
ずっと、心配していたのは知っている。
頭の中で理解していた。
でも、こんなに全身で感じさせるのは…。
スザクの中で緊張の糸が切れたからなのかもしれないと…ルルーシュはぼんやり思った。
普段であれば、これだけ強い力で抱きしめられていたなら、痛みとか、息苦しさとか、感じている筈なのに…。
でも、今はそう云った物は一切感じる事が出来なかった。
そして、ルルーシュが自分の両腕をそっと持ち上げて…スザクの背中にまわした。
背中にまわした腕から更にスザクが震えていて、嗚咽を漏らしている事が良く解った。
「ごめん…スザク…。心配…かけた…」
ルルーシュが小さくそう云った時…初めてスザクの抱きしめているその力が強過ぎて、呼吸がうまくできておらず、声がうまく出て来ない事に気が付いた。
「違う…ルルーシュの所為じゃない…。僕が…僕が…」
これほどまでにスザクは自分を責めていたのかと…初めてルルーシュは知った。
そして、少しだけもがいて、スザクの腕を緩めて欲しいと云う意思を伝える。
その事から、スザクは少し不安になった様で、顔をみるとすごく不安そうな顔をしている。
ルルーシュは少しだけ困った顔をしてスザクの頬に流れている涙をぺろりと舐めた。
スザクの表情が不安そうな表情から、驚いている顔に変化する。
そして、何かを耐えているような表情になる。
「スザク…?どうした?どこか…痛いのか…?」
ルルーシュの子供みたいな質問…。
普段ならここで止める事が出来たのに…。
今は…。
「ごめん…ルルーシュ…」
そう云って、スザクがルルーシュの身体をふわりと持ち上げた。
そして、先ほどまで眠っていた寝室へとルルーシュを運んで行く…。
流石のルルーシュも…スザクが何を考えているのかが解り…胸がドキドキし始めていた。

 先ほどまでスザクが眠っていたベッド…。
二つあったとはいえ、二人で眠っても大丈夫なほど大きなベッドで…。
ビジネスホテルなら普通にダブルとして利用されている様な大きさだった。
そのベッドの上にルルーシュをそっと下ろした。
それこそ、大切な…壊れものを、クッションに置く様な…そんな感じだ。
スザクの表情は…。
―――こんなスザクの顔…見た事無い…。
そんな風に思えるほどその顔は…真剣で…。
と云うか、いつもルルーシュの心配をして説教する時の真剣な顔ともちょっと違うと思った。
なんだか…怖いと思えてくるような…。
そんな表情…。
さっきまで泣いていたのに…と思うが…。
「ルルーシュ…この先…ずっと…僕と一緒にいて…。僕と一緒にこの世界で泣いたり、怒ったり、笑ったり、時にはけんかしたり…。そんな風にしたい…。だから…僕とずっと一緒にいて下さい…」
ルルーシュの上に覆い被さる様な体勢でスザクがルルーシュに告げている。
まるで、逃げる事は許さない…もし、断る様な事をしたらルルーシュが『はい』と云うまでそこを動かないし、ルルーシュも動かさない…と…。
無言でそう云っている様な表情だ。
敬語を使っているくせに…雰囲気が命令的である事に…ルルーシュの身体がふるりと震えた。
返事をしなければ…と思うのに…。
スザクのその、これまで見た事のないまなざしにルルーシュは言葉を紡ぐ事も、こくりと頷く事も出来なくなっていた。
「ルルーシュ…返事は…?」
スザクはそんなルルーシュの事情を知ってか知らずか、中々返事が出来ずにいるルルーシュに訊ねてきた。
―――答えたいのに…。俺、スザクと契約して、一緒にいたいって…そう云いたいのに…。
ルルーシュの頭の中ではそんな焦りで満たされている。
こんなスザクを見るのは初めてだったから…と云う事もあるかもしれないし…。
まるで予想外の状態で、ルルーシュの優秀な頭もうまく機能していない様である。
何となく察したのか…スザクがクスッと笑った。
「じゃあ、これから、僕がルルーシュにキスするから…もし、『はい』って事だったらちょっとだけ口を開いて…。口を開かなかったら…僕がこじ開けてあげるから…」
云っている事がむちゃくちゃだ…。
ルルーシュはそんな風に思う。
ルルーシュの意思なんて聞くつもりはないと…はっきりそう云っているのと同じだから…。
でも…いつもと違うスザクに…胸がドキドキしているのは解る。
そして…スザクがルルーシュの両頬をスザクの両手で包みこんで…。
ルルーシュの唇にスザクの唇が重なった…。
ルルーシュの答えなんて決まっていたから…。
最初から…その答えの状態になっている。
―――なんで…目を閉じているんだよ!
心の中で悪態づきながらも…ルルーシュにとって、初めての『恋人』のキスを…受け入れていた…。
最初は悪態づく余裕があったルルーシュだが…スザクのその口付けに頭がぼんやりして来て…。
自分自身も目を閉じてしまった事に…。
気付いていたのか、いなかったのか…。
知る術はないのだが…。
ただ、ルルーシュはスザクのキスをひたすら…『OK』の返事の状態で受け入れていたのだった…。

END

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posted by 和泉綾 at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年11月03日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説219

決別の決意と未来への扉



※設定:『ロスカラ』の『黒の騎士団編』ベースです。
CPは和泉としては珍しいライ×ルル←スザです。
和泉の作品はスザルルしか読まないと思われている方は引き返して下さい。

 カーテンの隙間から差し込む光で目を醒ました。
隣では、まだ、ルルーシュが寝息を立てている。
彼が『ゼロ』だと知って、その後、『行政特区日本』での合意文書に同意していくらか時間が経っている。
それでも、『行政特区日本』成立ともなると、ブリタニアは勿論、日本国内でも様々な意見の相違があり…。
そして、『ゼロ』に対しての反発を示す者達もいた。
確かに、問題はたくさんあるし、これから解決しなければならない事、考えて行かなければならない事はたくさんある。
それ故に、ルルーシュはそれまで以上にハードな生活を強いられていた。
ルルーシュが『ゼロ』だと…彼は自ら話してくれた。
それだけ、彼の中でライを信頼してくれた…と云う事で誇りに思った。
その分、ライもルルーシュに対して特別な感情を持ち合わせているから、あまりにハードな彼の生活を見ていて…心配になる。
ルルーシュを起こさないように…ゆっくりと身を起こす。
そして、布団から出ている手をそっと持ち上げて…彼の手首に自分の指を巻き付けると…
「また…痩せたな…」
そんな事を漏らしてしまう。
昨夜だって帰って来たのは日付が変わるか、変わらないかくらい…。
『黒の騎士団』のトップは『ゼロ』なのだから仕方ないと云えば仕方がない…。
『ゼロ』の正体を誰も知らない以上、誰もルルーシュの事を気遣う事は出来ない。
学校の授業を休む事も増えてきた。
それと比例してルルーシュの幼馴染だと云う、イレヴン…否、今では『行政特区日本』の中では日本人となっている枢木スザクも授業を欠席している。
スザクの場合は、それでも学校側が考慮してくれている。
それは、スザクがブリタニアの軍人であり、あの『ランスロット』のパイロットであり、今は皇族としての身分を失ったが、『ユーフェミア皇女』の騎士と云う事で、最大限の配慮がなされている。
でも、ルルーシュの場合はそれを望む事が出来ないから…ハードな生活に身を置いている。
ルルーシュはライの秘密を知っている。
だから、ライがそう云った交渉の場に出て行っても問題ない事は解っている筈なのだけれど…。
それでも、ルルーシュは決して首を縦に振らない。
ルルーシュが云うには、ユーフェミアは既にルルーシュが『ゼロ』である事を知っていると云うのだ。
確かに…ユーフェミアが主催している会議ではルルーシュの立場を考慮した招集がかかっている様には見えるけれど…。
でも、細かい事務手続きはブリタニアの他の文官達が行っている。
『黒の騎士団』から副官である扇が出席すればいいと思った時期もあったが…。
―――あの男ではブリタニアの云い分を全て聞き入れて帰ってきそうだな…。
そんな風に思えた。
あくまで対等の立場で駆け引きをしなければならないのだ。
それが出来ない人間にそんな交渉事の席に一人で行かせるなど、自殺行為に等しい。
ユーフェミア個人がどう思っていようと、交渉の席に着くのはブリタニアの文官であり、ブリタニアの国益の為に動く。
そもそも『行政特区日本』を成立させたこと自体ブリタニアはかなりの譲歩である。

 そんな事情からルルーシュは学校と『ゼロ』としてブリタニアとの会談と生活費を稼ぐために色々とやっている。
出来ることなら、少しでも彼の負担を減らしたいと思うのだけれど…。
「ルルーシュ…あまり…無理しないでくれ…」
そう云いながら、ルルーシュの額にかかっている黒髪をそっと上げて、その額に口づけた。
本当に疲れているのか、この程度では起きる気配が全くない。
とりあえず、ルルーシュは昨夜、帰って来たままルームウェアに着替えて眠ってしまったのだ。
「起きたら入浴できるように準備するか…」
そう呟いて、ライがベッドから降りて、バスルームに向かう。
そして、湯を溜める為に蛇口をひねって、廊下に出た時…。
「あの坊やはまだおねんねか…」
「C.C.…。どうしたらルルーシュはあんな風に無理をしなくなる?」
目の前の魔女に対して、そんな事を訊いてしまう。
本当は彼女に訊くなんて…絶対に避けたかったけれど…。
こうなってしまうと背に腹は代えられないと…本当に思えて来るものだから…。
「お前…何故そんな事を私に訊く?と云うか、アイツの素性を知っているのだろう?アイツだって必死なんだよ…。愛していた異母妹に、唯一の友達を奪われて、後に引けなくなった時に…」
魔女はそこまで云って言葉を切った。
ルルーシュは異母妹のその案を受け入れた…。
そこに潜むあらゆる不安と問題を全て…ルルーシュが受け入れる形で…。
今回のこの施策は…。
余りにルルーシュ一人への負担が大き過ぎる…。
ただ、『ゼロ』は既に、世界に名を知られており、そして、ブリタニア人の中にさえ、彼を特別視しているものがいる程だ。
日本人は当然の様に、彼に期待している。
確かにルルーシュ類稀な才を持っているかもしれないが…。
それでも、ルルーシュはまだ17歳の少年…。
一人の少年が背負うには…きっと…
―――みんなの期待が大き過ぎる…。みんな…『ゼロ』に…ルルーシュに頼り過ぎだ…
そんな風に思う。
ライも…この現世で目覚める前…王として、国を治めていたのだ。
国を治めて、民が生きる為に必要な物を最低限与えることの難しさを…
―――僕も…知っている…。僕は…自分の謝った統治に耐えきれずに…眠りに着いたのだから…。
「あの坊やは、頭がいい癖にバカだ…。ちゃんとお前が見張ってやれ…。あの、枢木スザクがあちらについてしまった今、あの坊やが心のよりどころと出来るのは…恐らくお前だけだ…」
「僕が…?」
「あの坊やがあんな風に安心してお前の隣で眠っているんだぞ?本来なら、ナナリー以外の人間に対してはあり得ない行為だ…」
C.C.の言葉に…少しだけ縋りたくなった。
それが真実であれば…どれほど嬉しい事だろうかと…。
「とりあえず、あの坊や、いい加減休ませないと本当に倒れて、お前がブリタニアとの交渉に出て行かなければならなくなるかも知れんな…。まぁ、少なくとも扇よりはまともな会談が出来ると私は思っているが…」
「それは、自惚れではなく僕もそう思っているよ…」

 その言葉を残し、ライはルルーシュの部屋のクローゼットからルルーシュの着替えを出して、バスルームの脱衣場に準備しておく。
そんな事をしている内にちょうどいい量の湯が溜まっていた。
ライが流れている湯を止めて…その湯船の湯に映し出されている自分の顔を見つめる。
あの頃のライとは…別人の様な顔をしていると…ふっと笑ってしまった…。
そうして、ルルーシュが眠っている部屋に戻ると…ルルーシュがうっすらと瞼を開け始めているところだった。
「ルルーシュ…起きたか?」
「…ん…。今…何時だ…?」
「7時だよ…。風呂の準備ができているけれど…入るかい?」
「あ、有難う…」
ルルーシュがゆっくりと身を起して、ベッドから降りた。
本当に深く眠っていたのか…まだ、頭がぼーっとしている様にも見える。
普通なら、こんなルルーシュを見る事は殆どない。
ライがルルーシュの部屋に泊まる時もこんな風に疲れている顔を見せた事はない。
余程疲れているのだろうと、予想が出来る。
「着替えとかも用意しておいたから…はいって目を醒まして来るといいよ…。あと、今日は、学校を休むかい?」
ライが心配からそう訊ねると…。
ルルーシュはまだきちんと覚醒していないと思われる頭ではあったのだろうが…。
首を横に振った。
「否…今日は何もないし…。スザクと違って、俺には何のフォローもないからな…。朝のホームルームはさぼるが…授業には出るよ…。また、寝ているかもしれないけれどな…」
そんな事を云いながらバスルームへと入って行った。
ルルーシュの足取りに…少しだけ心配になってしまうが…ルルーシュの云っている事も本当だから、何ともできない。
ここのところ、かなり会談が続いているから…余り授業に出ていないのはライも知っている。
成績だけで云えば、ライがノートを取って見せればテストでしっかりとトップクラスの成績を修めている。
最近では、学年トップはルルーシュかライになっている事が殆どだ。
それでも、授業の出席日数が足りなければ単位が足りなくなるから…。
今日みたいに授業に出られる日はしっかりと授業に出ようとする。
ため息を吐きながらライも学校へ行く為に制服に着替える。
着替えてリビングに行こうと廊下に出た時…
「ライ…」
その声の主は…
「スザク…。こんな朝早くに…どうしたんだ?」
スザクのその表情に思わず挨拶も忘れてしまっていた。
尤も、スザクも人の事を云えないのだが…。
「ライこそ…なんでこんな時間に…こんなところに…?君は…確かにクラブハウスで暮らしているけれど…」
スザクのその言葉は…心なしか、震えているように聞こえた。
多分、気の所為ではない。
彼も…ルルーシュに対してライと同じ気持ちを抱いている事を…ライも気がついている。
でも…スザクは…あの『ランスロット』のパイロットで…。
既に、あの戦いの時に…ルルーシュは絶望を味わっていたから…。
ライ自身、スザクに対して譲る気はなかった。
「昨夜、ルルーシュの帰りが遅くて…。で、ナナリーも心配していたから…待っていたら遅くなって…」

 ライがそこまで云った時、スザクがライの襟首を掴んでいた。
ライもそれなりに武道の心得がある。
スザクが怒りを抱いている事を解っていたから、顔色一つ変えずにそれを受け入れた。
殴ってくれば、それ相応に対応しようと考えている。
「ライ…君は…ルルーシュに何をした!」
「君にとやかく云われる覚えはないよ…。君は…ルルーシュの立場を知っていて…『黒の騎士団』に対して敵対していたのだろう?」
ライが冷静にスザクに返した。
スザクはライが『黒の騎士団』のメンバーで『ゼロ』の補佐役を務めている事を知っている。
そして、スザクと対等に戦えるだけのナイトメアフレームの操縦が出来る事も…。
「僕は…あんな間違ったやり方で…」
スザクが更に怒鳴ろうとした時にライがその言葉を遮った。
「スザク…君は日本人なんだろう?なのに…何故、ブリタニアのルールを順守して日本を何とかしようと考えているんだ?」
「今の日本は…ブリタニアの占領下にあるから…ブリタニアに納得させて、日本を…」
スザクのその綺麗事に聞こえてしまう言葉に…ライはただ、苦笑した。
それは…ただの夢物語でしかない…。
それが良く解る。
それは、ライがかつて、国を治める立場にあったから思う事なのだろうか…。
そんな事を考えてしまうけれど…。
「スザク…君は仮にも日本国首相だった人の息子なんだろう?そんな綺麗事で国を守るとか、解放するなんて…出来ないとは思わないのかい?」
「最初から出来ないと決めつけなくても…」
「出来ないから云っている…。それに、日本人には日本人のルールがあるだろう?それを踏みにじったブリタニアに対してそんな従順に従っていても…ただ、付け込まれて、利用されるだけだ…」
ライはスザクの言葉をさらりと切って捨てた。
国を治めると云う事は…国を解放すると云う事は…人々を導くと云う事は…。
―――綺麗事だけではやっていけないんだよ…スザク…。それを無理に押し通そうとすれば…結局、要らぬ犠牲者をいたずらに増やすだけだ…。
「そんな事無い!ユーフェミア皇女殿下なら…。だから『ゼロ』だって…」
「その為に『ゼロ』にどれほどの負担をかけているか…君は知らないだろう?その行く末次第でルルーシュとナナリーの運命だって変わるんだぞ?君の綺麗事は…あの二人を窮地に追い込んでまでやる程勝ちがあるのかい?」
相手は…様々な事が理解できていない相手だ。
知っているライがどれほど云ったところで、スザクは綺麗事で返してくる。
「僕は傍で『ゼロ』を見ている。なんとか…日本人にとって平和的にと…そして、あの『行政特区日本』の山積みの問題点について解決するべく…寝食を二の次にして頭を悩ませているなんて…君も、君の仕えているお姫さまも知らないだろう?」
何も出来ないもどかしさをぶつけている様な…そんな気がしてきた。
「君も、君の仕えているお姫さまも…ブリタニア皇族の一言がどれほどの影響力があるか…考えた事無いだろう?そして、それをなんとしても成功させる為に『ゼロ』がどれほど心血を注いでいるか…知ろうともせずに…。これからの世界の動向を考えずに、個人的感情をぶつけて僕に対してヤキモチかい?少しは…」

―――シュッ…
 ライがそこまで言葉にした時、バスルームの扉が開いた。
「どうした…?あ、スザクか…どうした?」
どうやらルルーシュが風呂から出来た様で…。
まだ、髪が濡れていた。
ルルーシュの登場によって、スザクは掴んでいたライの襟首を放した。
「なんでもない…。僕がスザクの逆鱗に触れる無神経な事を云っただけだ…。済まない…スザク…」
ライはそう云ってその場を取り繕った。
しかし、スザクを見るライの目は…相当厳しいものである。
この場でごたごたしたい訳ではないスザクも…ライの言葉に乗る事にした。
「否…。僕の方こそ…熱くなってしまって…ごめん…」
何となく、解らないこの空気に…ルルーシュは首を傾げるが…。
深く詮索するつもりはない様である。
「ライ…いろいろ有難う…。朝から済まなかったな…」
ルルーシュがそう云うと…ライとスザクが正反対の表情を見せる。
「否…少しは役に立てたなら…嬉しいよ…」
「朝からって…君達…」
二人の正反対の表情と言葉…。
そんな事を特に気にする事もなくルルーシュが続けた。
「ああ、昨夜、ちょっと遅くなってしまって…。ライが遅くまでナナリーに付き合ってくれていたんだ…。で、遅くなってしまったから…ここに泊まって…」
ルルーシュがそう云い終える前に…スザクが数歩…後ろに後ずさった。
「ルルーシュ…ライを…ここに泊めたの…?」
「?ああ…。スザクにもこれまで色々面倒をかけたけれど…もう…」
ルルーシュが特に悪意なくそんな事を云っている事は…。
ライには解っている。
頭に血が上っているスザクがどこまでその辺りを冷静に受け止めているか解らないが…。
「待ってよ…。だって…ルルーシュは…君の帰りが遅い時には…」
「スザク…お前はユーフェミア皇女殿下の騎士…枢木スザク少佐…だろう?もう…お前にそんな事は…頼めない…」
ルルーシュが視線を少し下に落としてそう告げた。
「大丈夫だ…。ライだってここに暮らしていて…俺が帰って来るまで…」
「…めない…」
ルルーシュの言葉を最後まで聞かずに…スザクが小さく低い声でそう、音に出した。
「え?」
「認めない…認めないよ…僕は…。だって…ライが来るまでは…その役目は僕が…。僕の役目…」
スザクの言葉に…ルルーシュが少し辛そうな瞳でスザクを見た。
「スザク…もう、俺達の事は忘れてくれ…。お前は…ユーフェミア皇女殿下の騎士なんだ…。自覚しろ…」
「でも!」
「その事を議論するつもりはない…。そんな事を云いたいなら…帰れ…」
ルルーシュのその言葉は…どこまでも冷静で、どこまでも冷たく…そして、どこか、悲しげだった…。
多分、ルルーシュにとっての…過去との決別…なのだろう…。
ここまで、難題を抱えていて…。
そして、今もまだ…ふらふらになる程、その難題を解決する為に尽力している。
恐らく、余計な事を考えていられる程の余裕がないのだ。
ルルーシュはスザクの方から目を背けていた。
スザクはその空気に耐えきれず…その場から走り出した…。

 スザクの姿が見えなくなると…。
ルルーシュはライに背を向けていたけれど…。
その細い背が…震えている事が解った…。
「ルルーシュ…我慢しなくていい…。少なくとも…僕の前で…我慢する必要はない…」
ライの言葉に…ルルーシュは少し声を震わせて…一言告げた。
「もう一度…風呂に入って来る…」
そして、そのままバスルームに入って行った…。
ライは黙ってその後ろ姿を見ていた。
―――いつか…きちんと…スザクと話しが出来る日が来ればいいと…願ってしまうな…。
そんな事を思ってから、踵を返して…もう一度、先ほど眠っていたその部屋へと足を向けたのだった…。

END

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2010年10月30日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 218

黒猫ルルにゃん 16



※設定:
ルルーシュは人間界に迷い込んできた、猫の国の皇子様です。
スザクはそんなルルーシュに一目惚れしてさっさと連れて帰ってしまった心優しい(一歩間違えれば誘拐犯と云うツッコミはなしです)一人暮らしの軍人さんです。
ルルーシュは魔法を使って人間の姿になれますが…うっかり屋さんで、時々ドジる事があります。

 とりあえず…。
ほぼ、セシルの脅しと云うか、凄みによってスザクは貯まりに貯まっている有給を貰って…。
そして、ロイドの別荘を借りて、ルルーシュと1週間…過ごす事となったわけだけれど…。
現在、その第一日目…。
到着した途端…ルルーシュが始めた事と云えば…。
「みゃ???みゃみゃあ…」
そう、猫の鳴き声で何かを云ったかと思うと…
すぐさま、別荘内を物色して、掃除道具を引っ張り出し始めた。
そして…
「みゃあ!みゃあ!」
そう云ったかと思うと、スザクに向かって掃除道具を突きだして来た。
「え?」
「みゃあ!みゃみゃあ!みゃあ!」
どうやら…結構埃っぽくなっているこの別荘をまず、大掃除しようと云う事らしい。
まぁ、そう云う意味では取っても神経質なルルーシュならそういう行動に出ても別に不思議に思わないけれど…。
だから、スザクは手渡された箒を手にしてルルーシュが何を云っているのか解らなくても、何となく何を伝えたいのか解るから…。
まず、リビングの掃除を始めた。
そんなスザクを見て、ルルーシュは何かを思いついたように、二枚のバンダナをスザクに渡した。
「ん?何?」
スザクが訊ねるとルルーシュも自分の分と持っていたバンダナを頭に巻いて、その後、もう一枚のバンダナで顔の下半分を覆った。
つまり、ほこりよけ…と云う事だ。
「みゃあ…みゃみゃあ…」
どうやら、大掃除をするのを手伝えという事らしい…。
確かに…長い事使われていなかったのか…結構埃が溜まっている。
スザクがルルーシュから箒を受け取った後、ルルーシュは窓を全開にする…。
秋に入り、山手にあるこの別荘の外は東京と同じ恰好では少々寒い感じがする。
ルルーシュは元々猫の性質も持ち合わせているから寒さにはあまり強くないと思われるが…。
潔癖症なルルーシュの事だ。
完璧に掃除をするに決まっている。
―――だとするなら、僕がしっかり手伝いをしてさっさと終わるようにしておかないと…。と云うか、ルルーシュ、体力ないのに…大丈夫かなぁ…
そんな事を心配しつつも、しっかりと、スザクは身体を動かす。
テーブルや棚などを動かすのはスザクの仕事だ。
早めに出てきて良かったと思った。
結構広い別荘の中は、ルルーシュ基準で行くと相当頑張って掃除をしなくてはならない感じがする…。
正直、ここに来て思ったのは…。
―――ひょっとして、僕達に普段あんまり使わない家屋に風邪を通して来いって事だったのかなぁ…
確かに、二階建てのこの別荘に、更に地下にロイドの研究室があるらしい。
流石に研究室への入り口のカギまでは預かっていないから、そこまでは掃除できないが…。
セシルがなんだか複雑そうな顔をしていた理由が解った気がした。
それにしても…
―――ルルーシュ…ホントに家事が得意なんだなぁ…。凄く手際がいいや…
そんな事を考えつつも、テキパキ動いているルルーシュに見惚れているわけにもいかず…。
スザクもさっさと掃除を終わらせようと手を動かし始める。
それにしても…
―――個人の別荘にしちゃ…結構広いなぁ…
そんな事を思いつつも、フローリングの床に放棄を走らせる。

 ルルーシュがあまりに神経質に掃除をしようとしているのを時々、
「そこまでやったら、絶対に僕の有給、この別荘の大掃除で終わっちゃうから…。とりあえず、人の暮らせるというか…箒で掃いて、モップがけだけすればいいから…。あ、床のワックスがけしようなんて思わないでね!」
と、声をかけるようにしていた。
放っておくとどこまでも掃除にのめり込んで行きそうな感じがしたから…。
そのセリフを云う度にルルーシュが少し不満そうな、納得出来ていないと云う様な顔を見せるけれど…。
確かに、かなり広いこの別荘内を全て、隈なく掃除していたら、時間がいくらあっても足りない気がした。
セシルが色々とアドバイスしてくれたというか、ああ云ったセシルの顕著な反応がこの別荘の状態を物語っていたという事だ。
実際に、長い事使われていないから誇りが溜まっているのは確かだし、家屋と云うのは人が住んでいないとどんどん傷んで行くものだ。
だから、別荘地には管理人がいる訳だ。
家屋に風を通してやらないと壁がかびたり、シロアリの巣が出来たりと…。
色々と問題が出てくるのだ。
一応、この別荘地の管理人が時々風は通していたようだけれど…入った時に少々人の住んでいない事が解るにおいがしたのだ。
だから、ルルーシュが即行で掃除道具を探しだし、窓を開け放ち、掃除を始めたのだろう。
―――ロイドさんも…管理しきれない別荘なんて持たなきゃいいのに…。と云うか、僕達にも鍵を預けなかった研究室とやらには、キッと管理人さんも入れてないだろうし…。否、考えるのはやめよう…。
そんな事を一人悶々と考えていた。
鍵がなければ入る事もない。
「みゃあ…みゃあ…」
スザクが考え事をしながら掃除をしているとルルーシュが声をかけてきた。
とはいっても猫の鳴き声にしか聞こえないから何を云っているか解らないけれど…。
でも、スザクの事を読んでいる事は解る…。
「どうしたの?買い出し?」
スザクがそう訊ねると、ルルーシュがこくこくと頷いた。
流石に猫の鳴き声しか出せないルルーシュが一人で買い物に行くのは色んな意味で問題が起きそうだ。
勝手知ったるスーパーであれば声を出す事も基本的にないけれど。
しかし、知らない土地の知らないスーパーでは誰かに何かを訊ね意図も限らない。
だから、スザクに頼もうと思った判断は間違っていないだろう。
「何を買ってくればいい?」
スザクが訊ねると、ルルーシュは胸ポケットから丁寧に折り畳んだメモをスザクに渡した。
「食料とか、洗剤とかだね…。解った…。このくらいなら僕一人で十分だから…」
「みゃあ…」
ルルーシュが少し多めの買い物リストに申し訳なさそうな顔をした。
もし、こんな状態でなければ確実に一緒に行ったのに…と云う表情だ。
「大丈夫だって…。なるべく早く帰って来るからね…」
そう云って、スザクはルルーシュからお金を受け取って出かけて行った。
それを見送って…ルルーシュは別荘の中の掃除に精を出した。
ルルーシュにとってもスザクにとっても…二人での外泊と云うのは初めてなのだ。
と云うか、ルルーシュがスザクと暮らし始めてから、あのスザクのアパートをこんなに長期にわたって出ると云うの初めての事だった…。

 外を歩いていると…今年の夏の猛暑から一気に寒くなったというのが良く解る空気だ。
この辺りは標高が高いから結構肌寒い。
「ルルーシュ…大丈夫かなぁ…」
ルルーシュはあれで、結構寒がりだから少々心配になっているのだ。
スザクは普段から鍛えているから、ルルーシュほど気温の変化に弱くはないのだけれど…。
それでも、肌寒い感じがするのだ。
「猫の姿になったルルーシュをぎゅってしながら眠ったらあったかそうだなぁ…」
思わずそんな事を呟いてしまう。
正直、ここにツッコミを入れられる人物がいたら確実にこう突っ込むだろう…。
『お前…ここまで一体何をしに来たんじゃい!』
と…。
ルルーシュが猫の姿になってしまったら、スザクはルルーシュと契約出来ないのだ。
「あ、でも…猫になったら僕…ルルーシュと契約…って…」
その後、二の句を出す事が出来なくなった。
流石に、それを意識すると顔が真っ赤になり、肌寒い筈なのに、汗をかきそうなほど熱くなってくる。
そして、思わず、ある疑問が頭の中を過って行った…。
―――やっぱり…着けた方が…いいのかなぁ…
なんだか間抜けな悩みとも思えるのだけれど…。
しかし、相手が大切だと思うと、その辺りは機を使わなくてはいけないと思うし…。
そして、軍の中にはそう云った趣向の先輩やら同僚やら後輩やらがいるから…。
時々話しを聞く事があったのだけれど…。
その話しを聞くたびに…
―――結構大変なんだなぁ…
などと思ってしまっていたわけで…。
相当痛いらしい事とか、女性でも初めてに時には辛いという…。
男性の場合、本来あり得ない場所に挿入るわけだから、初めての相手に対して、すぐに挿入られるものでもないらしいという話しをしていた。
正直、絶対に『女役』は嫌だ…と思ったのは事実だ…。
それに、ルルーシュがそんな知識なんてある訳もないし、スザクだって、基本的に数えるほどしか異性との関係も持った事がないのだ。
なんでこんな事になったのだろうか…などと考えていたのだけれど…。
正直、色々考えていると、怖くなってくるし…。
でも、ルルーシュとずっと一緒にいたいという気持ちは変わる事はないし…。
ルルーシュに痛い思いをさせたい訳じゃない。
でも、スザク自身、最近、ルルーシュへの気持ちが大きくなっている事は事実だったし、ルルーシュとの契約がそう云った事である知った時点で、仕事ばかりの日々にうんざりしている反面…。
ルルーシュと契約をする為に行為を考えた時、怖さもあって、忙しいという大義名分に甘えていた部分も否定できなかった。
―――ルルーシュは…自分が何をされるのか…解っているのかなぁ…。
そんな事を考えてしまう。
しかし…この男…完全に自分が挿入る側になる事しか考えていないが…。
ルルーシュが『俺がお前を抱くんだ!』などと云い始めたら一体どうするつもりなのだろうか…
尤も、力勝負に持ち込んでしまった場合、ルルーシュがスザクに勝てる訳がないのだけれど…。
それでも、スザクの頭の中から半分くらい消え去っているルルーシュの魔法とやらは何があるのか解らないが…。
どの道、どちらも結構契約すると決めたはいいが、その先の事は一切考えていないようだ。

 スーパーについて、渡されたメモに書かれているものをかごに入れて行く…。
流石に、スザクが暮らしている地域とは物価がかなり違っている。
尤も、生活用品など、スザクが買って来る事などあまりないのだけれど…。
こう云った仕事はいつもルルーシュ任せになってしまっている事に気づかされる。
たかが買い物の筈なのだけれど…。
ルルーシュと出会う前には買った事のない日用品やら、食材やらで…。
ぶっちゃけ、スザクが一人で買い物に出て、このメモにある様な商品を自分の為に勝った事があっただろうか…などと考えてしまうが…。
現在、自分の家にある家具はルルーシュがスザクの前に現れてから買い揃えた物であり、それ以前の家具と云うのは…。
―――ホントに生活感がなかったなぁ…。テレビとかに出て来るようなかっこいい雰囲気とは正反対の意味で…
と考えてしまっている。
と云うのも、スザクの場合、あのロイドが上司なので、そうでなくとも軍と云う組織の中で国の定める『労働基準法』など遵守していたら仕事にならない空守られていない上に更にこき使われている状態だった。
基本的に、『本籍地』が必要だったからあのアパートを借りている様な気もしないでもないと思っていた時期もあったくらいだ。
だから、洗濯機、冷蔵庫など家電製品も最低限はあったけれど…。
ルルーシュと出会ってからの事を考えた時、本当に使用頻度が低かったと思える。
ルルーシュと一緒に暮らすようになってから、既に掃除機は2台目だ。
ルルーシュ自身は本当に大切に使っているのだけれど…ルルーシュの使用頻度の問題と、1台目を買う時にルルーシュが遠慮して安物を買ってしまった為だ。
ルルーシュからなぜ、そこまでお金に関して…云い方は悪いが、ケチくさい事をするかと訊ねた時には…
『俺の母上は、庶民の出で、皇族は国民の税金で食べさせて頂いているのだから、大切に使わなくてはいけないと…そう仰っていた…。だから、お金は大切に使わなくてはいけないと…』
そんな事を云っていたが…。
だからと云って、庶民より庶民染みた皇族ってありなのだろうか?
ルルーシュは猫帝国とやらの皇子様らしいし、ロイドもルルーシュの事を『殿下』と呼んでいた。
お陰で、ルルーシュは夏バテになり、ぶっ倒れた事もあるのだ。(SUPER COMIC CITY関西15無配ペーパー参照)
庶民よりも節約術を知っている皇子って…ありなのだろうか…?
そんな事を考えてしまうのだけれど…。
しかし、実際にそう云う皇子が存在し、そして、スザクと一緒に暮らしているのだから、世の中解らないものだ。
そして、『契約』と云う名の人間で云うところの『結婚』をしようとしているのだが…。
しかし…そこまで考えた時…思わず顔から火が出そうになる…。
恐らく、事情を知る者が見たら想う事はほぼ共通しているだろう…。
『何を今更…』
と…。
そもそも、ここまでのんびりしていたこと自体にびっくりの状態なのだから…。
まぁ、周囲の云う事と云うのは、兎角にして、勝手な事を云うものである。

 そして、全ての売り場を回って、ルルーシュから渡されたメモに書かれているものはすべて揃えてレジに向かう。
そして、ルルーシュに持たされたエコバッグ…。
何でも…
『今はレジ袋が5円もするからな!レジ袋なんて石油精製の際に捨てられる筈のものからできているし、今じゃ、殆ど二酸化炭素など排出したりしないのにな…。割り箸は輸入品を使うようになってから森林伐採が問題になっているが、日本国内で作られたものはすべて間伐材だ…。そうやって割り箸批判して現在の日本で伐採される間伐材は一体どこに行っているのやら…。一度で捨ててしまうのももったいないと思うが、それでも、間伐材利用が地球温暖化の原因とか云いだす様なバカが居るのは困ったものだな…』
などと、何故にそこまで人間の世界の事情に詳しいのか尋ねたくなる様な事を云っていた。
最近では、様々なエコバッグが売り出されており、バラエティに富んでいるし、スーパーのロゴが入っていないものが出回っているので、1枚のエコバッグを買っておけばどこでも使えると云うのは有難い話しだが…。
ただ、買い物量が多い時には結局レジ袋を買わなければならないという事でブツブツ言っていた。(スーパーやドラッグストアによってはエコバッグに入り切らなかった分の袋は無料で配布しているところもあります)
レジで会計を終えて…スーパーの建物内に店舗を置いているドラッグストアの前を通りかかった時…。
―――やっぱり…あった方が…いいよね…。
そんな事を考えつつ、一旦スーパーを出た。
そして、スーパーに来る途中で見かけたドラッグストアに寄って行く。
あるものを買って…店を出たが…。
「こ…こんなに…緊張するものだとは…思わなかった…」
そのあるものを買う為の所要時間…およそ30分…。
買った物はたった二つなのだけれど…。
その商品の前でウロウロし続けて、なおかつ、レジに行くまでにも色々と決心が必要だったようで…。
そして、ドラッグストア空でたと同時に…
―――♪♪♪♪♪
携帯の着信音が鳴った。
それはルルーシュからかかってきた事を知らせる着信音で…。
「あ、もしもし…」
『みゃあ!みゃみゃあ!みゃぁ…みゃぁ…』
最初は大声で怒鳴られている様だったけれど…。
段々声が小さくなり、そして、しまいにはグスグス云っているのが聞こえてきた。
―――しまった!時間をかけ過ぎた…
スザクはそう思って、ばつが悪い顔をする。
「ごめん…ルルーシュ…。えっとね…ちょっと、僕、他に買いたいものがあって…。で、色々、迷っている内に…時間が経っちゃって…」
『みゃ???』
「ごめんね…すぐ帰るから…。残りの掃除…僕も全力で手伝うからさ…」
『みゃあ…みゃみゃん…』
ルルーシュが少しほっとしたような声をしていたけれど…。
電話を切ると同時に、スザクは全速力で走りだした。
それは…買い物荷物を持っているとは思えない程の速さで…。
こんな田舎町ではすぐに、その全速力で走っているスザクの姿は妙な揶揄交じりに噂で広まって行った…。
『人間にターボエンジン付けたみたいなやつが走っていた…』
と…。
勿論、そんな事を考えていないスザクの頭の中は…。
ルルーシュの事で満たされていた。

To Be Continued

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2010年10月23日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 217

Ein Zögern



※『ゼロ・レクイエム』直後のスザクの様子…。

 祭りが…終わった…。
世界を巻き込んだ…大きな祭りが…。
やっと、これで世界はスタートラインに…立てたのだろうか…。
確かに、一人の独裁者が倒れた。
しかし、それによって、再び世界は混乱する事になる。
古今東西、クーデターであれ、革命であれ、その大きな力を打ち破った直後から…短くても10年…長ければ100年も混乱状態が続く事がある。
結局、その先の展望を見ていないから…そう云う事になる。
ルルーシュ自身、その事を考えていたのだろうか…
そんな風に思えて来てしまう。
ルルーシュに訊ねようにも…それはもう叶わないけれど…。
でも、ちょっと考えてみると…彼の返して来る答えは何となく…解る気がした。
『スタートラインとは…そう云うものだ…』
一つの国が、その国のすべてをかけて自分の意思を貫き通そうとすれば…それこそ、その持てる力全てを駆使して納得できない事がらから自国を守らなくてはならない。
人間一人一人だって、考え方、価値観が違うのだ。
その求めるものが一致している内はいい…。
これまでは…『悪逆皇帝ルルーシュを倒す』と云う事が、世界の目的となっていた。
本当なら、ここで『目的』となっている時点で間違っているわけなのだけれど…。
『独裁からの解放』は、その先の自分達の運命を変えるための手段であって、目的ではない。
確かにその時、『独裁者』が倒れ、この世のものでなくなれば、『独裁者』はそこで、ジ・エンド…。
しかし、残された…勝者と呼ばれる者達はそこからまた、新たな自分達の運命を切り開いていかなければならない。
確かに、『独裁者からの解放』という、その手段は、困難であり、恐らく、目的を果たす為に一番高いハードルとも云えるだろう。
だから、それが達成されれば力が抜けてしまうだろうし、その『独裁者からの解放』があまりに高いハードルだから、その時にはその先を考える余裕などありはしないのだ。
そう云った失敗を…人類は繰り返して来た。
ピューリタン革命然り、フランス革命然り…。
その先の事を考えられず、結局、独裁者を排除したものの、ピューリタン革命ではその後、それまでの絶対王政ではないにしても、その一族であるスチュアート家のチャールズ2世が王位について王政復古しているし、フランス革命ではナポレオンと云う独裁者を生んでいる。
その革命直後はそれぞれ…ひどい混乱状態となっている。
ピューリタン革命などはイギリス革命であり、当時のイングランド統治下の土地の中で多方面にわたってのものであったから、クロムウェルは革命を起こした中心人物とされているが、反面、多くの虐殺を行ったり、強奪を行ったりしている。
つまり、革命、独立戦争と云うのはそう云うものである。
『ゼロ・レクイエム』の場合、これが全世界に渡っているのだ。
その後、それぞれの国の統治者がどれほど優秀と称賛されるべき執政を行ったとしても混乱を抑え込む事など…出来る筈がなかった。
考えてみれば…それは至極当然だし、『独裁者の排除』を願った者達が背負うべき『業』であり、『義務』だ。

 お膳立てされた世界革命…。
相手がその先を考えていなければ、何にもならない…。
現在の各国代表は、世界を巻き込んだ革命だったというのに、自国の事で精いっぱい…。
『ゼロ』の存在に縋らなければ、自国の事で精一杯の集団をなんとかする事が出来ない状態だった。
全ての国が鎖国でもするというのなら、それはそれで一つの方法だ。
しかし、物資の出入りだけでも相当なやり取りのある国々で…そんな事が叶う筈もない。
そして、それぞれがそれぞれの都合と価値観で動いているものだから、世界を一つに…などと云うのはお伽噺の世界でしかありえず、現実世界では余程の妄想か出ない限り、
『世の中そんなに甘くない…』
と云い放つ者が大多数だ。
しかし、それが現実世界の中での真実だ。
強引に一つの価値観としたならば、彼らが否定した『ルルーシュ皇帝』よりもさらに強力な独裁を行わなければ出来る事ではない。
ただ、世の中にはいろんな人々が居る訳で…。
その色んな人々の中の一部はそう云った妄想を抱いている。
その妄想を抱いている人間を国のトップに戴いてしまった国の場合には、その国の国民もだが、周囲の国々も迷惑する。
理想は必要であるが…。
それでも、その理想を抱きながらも現実を受け入れていくだけの器も必要であるという事だ。
「これが…僕の祖国…なんだな…。今の…」
枢木神社の鎮守の森の中で…。
黒ずくめの恰好でマスクを手に持って、暗がりに光広がっている町の光を見つめいてる人物がそう呟いた。
確かに、こうした夜の光を見ているだけなら本当に…穏やかな世界になったと思えてくるけれど…。
実際には…。
「僕達は…本当に…こんな世界を望んでいたのか?これが…彼が命を賭して作り上げた世界なのか…?」
思わず出てしまう…。
自分の現在の立場を考えた時に、決して人に聞かれてはならないセリフだ。
そもそも、こんなところでマスクを脱いで素顔を晒していること自体、本来ならタブーだ。
それでも、ここでマスクを脱いでいるのは、ある程度の確信があるからだろう。
ここは…日本人にとって、『裏切りの騎士』縁の地だ。
日本人にとっては忌むべき存在の縁の地…。
しかし、そこは神社であるという事からただ、焼き払う事も出来ない。
日本人にとって神社とは特別な場所だ。
いくら、そこに縁のある者が忌むべき人間であっても、神社は神の宿る場所だ。
一部の例外な人間以外、この場所には誰もよりつかない。
そして、彼は時々、この神社の様子を見に来る人物達にも見つからない鎮守の森の解り難い場所に…時々訪れるのだ。
そこには…彼にとって特別な場所があるから…。
そう…。
彼が、彼にとって大切な存在二人の…彼だけの為に作った碑があるからだ。
ただの飾りだけれど…。
それでも、スザクにとっては、そこにそれがあると云うだけで十分だった。
そして、そこが、スザクにとって唯一、その仮面を外し、彼らの最期を悼む事が出来る…。
その碑の前に『スザク』としてしゃがみこんで、その碑の高さに視線を合わせた。
「なんだか…二人の望んだ世界から…どんどん遠ざかっているような気がして…どうしたらいいのか…解らなくなっているんだ…」

 本来、『ゼロ』として零してはならない、外に出してはならない弱音…。
そして、不安…。
もし、『ゼロ』がそんな不安を抱えていたともなれば、世界は確実に不安の渦に飲み込まれていく事になるのだ。
それでは、ルルーシュがスザクに託した『ゼロ』の役目を果たせなくなる。
それでも、ここであれば、誰も見ていないからと…つい、そんな事を云ってしまう。
―――カサリ…
背後から足音が聞こえてきた。
ここには恐らく、ここを管理する為に時々足を踏み込ませている藤堂や千葉でも来る事はあり得ない。
ここは、それほど神聖な場所で、本来、枢木神社の神主のみが足を踏み入れる事を許されている場所だ。
そこにルルーシュとユーフェミアを悼む碑をスザクが建てたのだ。
「誰だ!」
スザクは思わず、背後のその気配に対して問う。
しかし、その足音は特に怯むでもなく、かといって、驚いている様子もない。
「あの頭でっかち坊やの想像力のなさがお前を苦しめているというわけだな…」
その声は…。
スザクとしては、ただ、憎いだけのその存在だった。
正直、今更何をしに来たのかと云いたくなる程に…。
もし、彼女がいなければ、ルルーシュはもっと他のやり方でブリタニアに対してその反発するエネルギーを向けていたかもしれないのだ。
『ギアス』を手に入れて、その力を使い、そして、その力によってルルーシュは追い詰められていったのだ。
「わざわざ、そんな事を云いに来たのかい?君は…」
不機嫌である事を隠そうとしない。
それでも、スザクの背後の存在は、そんなことはお構いなしだ。
そんなその存在に対して、スザクはイライラ度を増して行く。
「まぁ、アイツの場合、人間の醜さを知りながら、人間に対して理想を求めていたという矛盾を抱えていたからな…。お前に対しても…今になって思えば、相当な理想像を抱いていたのは事実だな…」
本当に遠慮がない。
こうした遠慮のない言葉と云うのは、あの時から聞く事はなくなっていて…。
もし、相手がこの存在でなければ、素直に安らぎの場となっていたと思うが…。
それでも、スザク自身、自分自身にそんな安らぎなど、許されるものではないという思いもある。
「解っていて…ただ、見ているだけだったのかい?君は…。結果がこうなってしまう事が解っていて…。君は、ルルーシュと契約をしたんだろう?」
「まぁ、それを云われてしまうと…どう答えていいのか解らないがな…。ただ、何故かな…。あの時のお前達を見ていて…止めようとは思わなかったのは事実だ…」
その彼女の言葉は…。
なんだか、とても複雑な心情を表している気がした。
結局、あの大芝居で一体誰が救われたのだろうか…。
恐らくそれを考えてしまっては、先に進めない。
そんなものは、スザク達がこの世の存在として生きている内に答えの出るものではない。
これまでの歴史の中で、革命は数多くあれど、その直後にそのやってきた事の評価などでる訳がなく…。
歴史が培われていく中で、その答えが少しずつ導き出されていく事になるのだ。

 暫くの沈黙が続く。
二人ともそこを動こうとはしない。
先に口を開いたのは…
「君は…結局ルルーシュの事を…どう思っていたんだい?」
スザクが…きっと、ずっと抱いていたその疑問…。
今、こうして、過去を振り返っている状態だから訊ける事なのかもしれない…。
「ただの契約者だ…。本来なら契約者として契約を果たして貰わなければならなかったんだがな…。そして、やっと、アイツはその契約者としての力を得てくれたというのに…お前の所為で、せっかくの契約者を手放す事になったんだ…」
その一言に、スザクとしては言葉が出て来なくなってしまう。
その様子にC.C.がクスッと笑ってしまう。
―――これだけ世界の複雑さに触れてもこいつはこいつでしかないな…。
彼女の思うところはそんなところだろう。
彼女だって、ここまで客観的に見られるようになったのは、『コード』を手にして何度も人間の過ちを見続けてきたからであり、最初からこう考える事が出来た訳ではない。
「冗談だ…。この程度の事で考え込んでいて、この先、『ゼロ』なんてやっていけるのか?」
C.C.の言い草にスザクもどうやらカチンときたようだ。
スザクはC.C.の方を見てキッと睨みつけた。
「君に…何が解る…。ルルーシュの何を知っていたと云うんだ…」
殆ど、逆恨みの八つ当たり…。
そう見えるけれど…。
恐らく、スザク自身もかなりしんどい状態であることが良く解る。
これ以上、このまま続けさせていいのかと…考えてしまう程に…。
ただ、C.C.自身はそうは思っても、それに対して何かを施そうと云う意思は持ち合わせない。
彼女自身が、既に、この世界に対して見ているだけの立場として存在しているのだから…。
契約者がいない今、本来、こんな形で人と会う事もあまりない筈なのだ。
「まぁ、あの坊やの事よりもな…。私としては、心地いいんだよ…。お前…私に対して、憎しみしか抱いていないからな…。『コード』を継承した後も、自分の持っていた『ギアス』の能力が確実に影響して来るんだよ…。確実にな…。あの坊やはそれに左右されなくて助かったんだが…。でも、アイツは…もういないからな…。邪魔をする気はないから、時々、お前で遊ばせるくらいはしろよ…。私の大切な契約者を掻っ攫って行ったのだからな…」
「僕に…そこまでの義理はない筈だけど?まぁ、邪魔しないなら、たまになら…いいよ…」
スザクのその一言が予想外でC.C.の方が驚いた顔をするけれど…。
しかし、今の状態を考えた時に何となく納得してしまっていた。
「お前…辛いならそこまでして二人の為に生きる事はないだろう?何故…そこまでできるんだ?」
「二人が…望んだからだよ…。否、あの二人の望みがあるから…僕はこうして立っていられる…」
スザクらしいと云えばスザクらしいけれど…。
まぁ、今の彼にこれが人間だというものだと口で云うのは簡単だが…。
今のスザクにそれを云ったところで、彼女のその言葉の真意を悟る事は出来ないだろうし、これで理解出来たらそれはそれで、ある意味人間離れしている。
C.C.がそこまでの考えに到達するには人の平均寿命の数倍の時間を経ているのだから…。

 スザクのその一言は…。
結局、ルルーシュもスザクも、互いに『憎み合っている』と云うのは本当だったのかもしれないけれど…。
でも、その『憎しみ』の大きさと比例して、相手を思う気持ちが強かったと今の姿は物語っていると云える。
「まぁ、私がお前のその気持ちをとやかく云うつもりはない。ただ…自分の今の立場は自分で選び、決めた事だという事だけは忘れるな…。お前は、その二人の為ではなく、自分の為に…その今の自分を選び決めたという事を肝に銘じておけ…。死んだ相手にまで、その責を負わせるな…」
C.C.の言葉に…スザクは僅かに表情を変えた。
意外と図星を突かれていたようだ。
それまでの本人にその自覚があったかどうかは別にしても…。
「自分で決めた事…か…。そうだね…。これは、僕が選んだ道…だ…。あの時…『ゼロ・レクイエム』の結末を変える事が出来た立場に…僕はいたのに、僕はそれをしなかったのだから…」
「あの坊やを云い包めるだけのものがお前にあったとは思えんが…」
「別に、ルルーシュを云い包める必要なんてない…。ただ、ストレートに云えばそれで終わりだよ…。ルルーシュは頭が良過ぎる分、直球には弱いから…」
スザクの言葉にC.C.はクスッと笑った。
本当に、スザクはルルーシュを理解していた…。
それで、あの結末に持って行ったのであれば、既に、C.C.が心配する事でもないと云えるだろう。
「解っているなら…二人の前で愚痴を云ったりするな…。必要なら私が聞いてやってもいいぞ?勿論、対価はピザだ…」
「今の僕にそんなものをあげられるだけの余裕があるとでも思っているわけ?」
「じゃあ、自力で何とかするんだな…。墓参りに来てそんな顔をしていたら、二人が心配して化けて出てくるぞ…」
「それで会えるなら…それでもいいかな…。僕、二人に謝りたい事も、云いたい事もあるから…」
「生きている内に出来なかったのは…まぁ、同情しないでもないが…失ってから気付くと云うのは、恐らく人間の持つ愚かさの中で最上級の愚かさだと思うよ…」
「本当にそうだね…」
スザクはそう云って、また、身体の向きを変えた。
そして、二人を悼む為に作ったその碑を見つめた。
あれから…どれほどの時間が経っているのか…。
まだまだ、世界は…。
と云うよりも、いいにつけ、悪いにつけ、『独裁者』と云う、世界を一つにまとめる支柱が崩れた段階で、世界の結束は脆くも崩れた。
そこは完全にルルーシュの読み違いと云える。
それに気づかなかった、あの時、『ゼロ・レクイエム』に携わった者達も様々な形で驚愕し、愕然とした。
―――世界は…何が欲しかったのだろうか…。
いつの間にか、抱くようになったその思い…。
それは、『ゼロ』が決める事ではない…。
それは、世界が決めることだ。
結局、『悪逆皇帝』と云う一つの支柱を失って、世界はまた、迷走してしまったのだ。
あの頃、『超合衆国』が望んだ事は…国際社会の中で傍若無人を働いていたブリタニアを何とかすることであり、そして、独裁者となった『ルルーシュ皇帝』を排除する事…。
その先を考えていなかったのは、ルルーシュの責任でも、『ゼロ』の責任でもない。
世界が自らなんとかせねばならない事である訳で…。
「さて…そろそろ僕は行くよ…。君は…ルルーシュと話しがあるんだろう?」
そう云ってスザクはC.C.に訊ねた。
C.C.は何も返す事はないが、スザクはその事を気にする事もなく、歩を進めて行った。

 スザクが見えなくなり、C.C.がスザクが作ったその碑を見つめた。
「ルルーシュ…お前がいたところで、なんとかなるとも思わんが…せめて…夢の中でくらい、あの男の心を支えてやれ…」
そう云って、彼女もまた、どこへともなく歩を進めて行った。
そして、それから暫くの間、その場所は人の気配の全くない…時々、野生動物達が集まって来るだけの静かな場所となるのだった…。

END

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posted by 和泉綾 at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年10月15日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説216

未来へ



※長い事放置となっていた、『My Dear』『願う心』『理想と現実』の続きで、最終章となります。

 胸ポケットに忍ばせている小型通信機のバイブレーションが動きだした。
今は、紛争地域から紛争地域に移動している最中だった。
だから、目立つ『ゼロ』の恰好はしておらず、今の混乱状態だからあまり怪しまれない帽子を深めに被り、顔の半分を完全に隠している黒いサングラスを着けている。
その通信機の存在自体を知っている人間は限られている。
―――何か…あったのか?まさか…
慌てて、物陰に隠れてその通信機に応答する。
「どうしました?」
相手が誰であるのか解っているから、こんな風に出られる。
この通信機は…ルルーシュにも隠していたあの策に乗った人物しか知らないのだ。
当然、ナナリーもシュナイゼルも知るところではない。
『反応が早いねぇ…。今はどこだい?』
相手の声は…何となく緊張状態に追いやられている状態の彼に多少の安堵感とこの通信機を使う時のパターンを考えた時の焦燥感が入り混じる。
「そんな事より…」
『ああ、目を醒まされたんだ…。いつ頃…戻って来られるかなぁ…。ちょっとだけ…困った事になっちゃっていてねぇ…』
「何が…あったんです?」
『口で説明しても実感ないだろうし…一応、君の任務を最優先するけどさぁ…。個人的感情を今は、最優先したいんだよねぇ…。心情的にはさ…』
元々、こう云うまどろっこしい説明をする人ではあったし、話しはある程度考える頭がないと理解出来ない内容で話される事も多い。
「今、恐らく、世界的にニュースになっている中華連邦北部の紛争地域に向かっているんです。少し…回り道…しましょうか?」
『出来るのかい?なら、お願いしたいねぇ…。今のところ、あそこはシュナイゼル殿下が何とか抑えているでしょ?』
「本当は…そんな形で世界を守っていては困るんですけれどね…。何の為の『ゼロ』だと思っているんです…?」
『そんな事を云ったって、たかが一人の英雄でまとまる程世界は優しくないよ?それは、君も良く解っているんじゃないの?』
「……」
通信機の向こうから聞こえてくる言葉に…スザクは黙りこんでしまう。
そんな様子にその相手もそんな風に黙りこませる為にこの通信を送っているわけではない。
『帰って…来てくれないかい?本当に…僕たちじゃ、どうにもならないんだ…』
通信機から聞こえてくるその声…。
確かに…自分には役目がある…。
それは解っているけれど…。
それでも、今回、この提案をして、彼らを巻き込んだのは…
「解りました…。とりあえず、一旦、そちらに行きます…。今、どちらからですか?」
『一応、なんとか、ジェレミア卿のところに連れて来ているよ…』
「解りました…。そちらに行きます…」
そう云って、通信を切った。
わざわざ、世界情勢の事ではなく、スザクが強引に命をこの世に繋ぎとめたルルーシュの事で入ってきた通信だ…。
気にならない筈はなかった。

 その通信から数日後…。
スザクは初めて見る、ジェレミアの新しい住居に着いた。
一体、何があったと云うのか…。
そんな思いはあったものの…今はただ…
―――ルルーシュ…云いたい事が…たくさんあるんだ…
そう思っている。
正直、色々と複雑な気持ちだ。
ひょっとしたら、ルルーシュが『ゼロ』であったと知った時と同じくらい…様々な思いを抱えているかもしれない。
そう思いながら…ゆっくりと中へと入って行く。
勿論、『ゼロ』の恰好ではない。
そんな目立つ格好で普段、移動はしていないのだから…。
そして、中に入った時…廊下を歩いているニーナに出くわした。
「あ、ニーナ…。ここに…いたのか…」
「あ…おかえりなさい…。えっと…その…」
ニーナはきっと、ルルーシュの看護をしているのだろう。
何かを手に持っていた。
「あ、御免…。ただいま…。えっと…ルルーシュは…?」
スザクが彼女に対してそう訊ねると…。
ニーナが下を向いてしまった。
なんだか、とても云い難そうだ。
「会ってみれば…解る…。多分、今のルルーシュ…知っている人が誰もいないの…」
ニーナの言葉…。
スザクの中で…なんだかよく解らないという思いを生みだした。
「どう云う…事…?」
「会ってみれば…解る…。少なくとも、私達が知っているルルーシュじゃない…。スザクなら…ひょっとしたら…って思ったんだと思うの…ロイド先生…」
そう云いながら、ニーナは奥へと歩き出した。
そして、スザクはその後に着いて行く。
さっきまで、ルルーシュに対しては云いたい事がたくさんあると…。
そう思っていたのだけれど…今はそれどころじゃないらしい…。
ニーナはルルーシュに与えられている部屋の前まで行き、扉を開けた。
ニーナの持っているものは…どうやら、ルルーシュの衣類らしい…。
あれから、確かに時間は経っているが、目を醒ましたのはつい最近の事らしいから…。
確かに、自分の事も自分でこなす事は難しい状態だろう事は予想出来る。
実際に、ルルーシュは瀕死の重体の状態となったのだから…。
ニーナがその部屋に入って行き…。
少し、不安を抱えながら、スザクがその後に着いて行くと…。
その中は、普通の部屋と変わらない感じがした。
一応、いくつかの医療機器らしい物が置いてあるが…。
それ以外は普通の部屋だ。
そして、窓際に置かれているベッドの上には、ルルーシュの着ているパジャマの隙間から、包帯が見えている。
それでも、起き上がる事が出来るらしく、身体は起こして窓の外を眺めている状態だ。
背中には幾つものクッションを重ねて身体を支えている様ではあったけれど…。
「ルルーシュ…気分は?」
ニーナが訊ねる。
すると、ルルーシュはニーナの方を見た。
表情は…何となく見覚えがある様な気がするのだけれど…。
でも、今のこの姿のルルーシュでは…多分、何か違うと思った…。
この時点でスザクは何か…違和感を抱いた。
何かがおかしいと…
そして、次のルルーシュの言葉で、その違和感が何であるのか…何となく解り始めるのだった。
「すみません…ニーナさん…。いつも、僕の為に…」

 そのルルーシュの言葉に…。
ただ、ただ、驚く事しか出来ない。
「ニーナ…これは…」
スザクのその驚いた表情は…ニーナの中で想像が出来ていたのか…。
そのスザクの姿に驚くと云った感じはない。
ただ、小さく息を吐いて、スザクを見た。
「うん…。ルルーシュは…記憶がないの…。と云うか、今のルルーシュは…9歳の時のルルーシュなの…」
その言葉に…。
スザクは目を見開いてルルーシュを見た。
9歳のルルーシュ…。
そんなルルーシュが現在の…。
ナナリーのいない現在をどう…受け止めているのだろうか?
と云うか…
「じゃあ…えっと…」
「ロイド先生が色々訊いてくれてね…。今のルルーシュは…ブリタニアが日本に戦争を仕掛ける直前のルルーシュなの…。小鳥がどうとか…云っていたって…」
小鳥…。
そう…あの時…二人はその時のささやかな幸せをぶち壊される現実を目の前に突き付けられたのだ。
「一応、自分の身体が9歳のルルーシュではないという事は解っているようだし、それに伴って、時間が立っている事も認識はしているけれど…。でも、私達の事は勿論、ミレイちゃんの事さえ解らないの…。ミレイちゃんは…毎日のようにテレビに出ているから…映像を見せているんだけど…。でも…」
そこまで云ってニーナは言葉を切った。
と云うのも、スザクのその様子にその先の言葉が出て来なくなってしまったからだ。
「じゃあ…ナナリーは?」
「テレビに出てきた時に訊いてみたんだけど…。『ナナリーが大きくなったら、この人みたいになるのかな…』なんて呟いてた…。確かに、本人だしね…。似ていて当然だし、面影もあって当然…」
時間の流れの認識はあっても、ルルーシュの中のナナリーはあの、枢木神社で一緒にいたナナリーなのだろう。
それに、今のナナリーは目が開いているのだ。
その違いに気付かない筈がない。
「ショックなのは…解るんだけど…。ロイド先生がなんであなたを呼んだのか…解るでしょう?まぁ、あなたの事も、どこまで解るか…私達にも解らないけれど…」
それだけ云ってニーナは部屋を出て行った。
持っていたルルーシュの着替えを、部屋の真ん中に置いてあるテーブルの上に乗せて…。
ルルーシュを見ると…。
話しを聞いていたのか、聞いていなかったのか…。
窓の外を眺めていた。
恐らく…ずっとこんな調子なのだろう。
元々、日本に来たばかりの頃はそれこそ、野良猫が人間を見るみたいな目で彼らの傍に近寄る人間達を見ていたし…。
スザクと打ち解けてからだって、スザク以外に心を許していたとは思えなかった。
となると…。
―――今のルルーシュは…本当に誰もいない…と云う事なのか…。
スザクの中でそう認識した。
ルルーシュを死なせないと決めたのはスザクだ。
そして、ジェレミアやロイド達を巻き込んだ。
恐らく、ルルーシュが目覚めた時、ルルーシュが彼らに対してり不審な怒りをぶつける事を解っていて…。
それでも、死なせる事がスザクの中では出来なかったし、彼らもそれは同意してくれた。
それなのに…。

 スザクは…ゆっくりとルルーシュに近付いて行った。
身体は…痩せた…。
元々、あまり肉のついていない身体ではあったけれど…。
それに輪をかけて細くなっている。
仕方ないだろう。
あれだけの傷を負って、やせない方がどうかしている。
「えっと…ルルーシュ…」
スザクが恐る恐る声をかける。
正直、ルルーシュが目を醒ましたら説教をしてやろうとは思っていたけれど…。
こんな展開が待ち受けているなど考えもしなかったのだ。
「え?」
いきなり声をかけられて、ルルーシュは驚いた顔をしてスザクを見た。
「あ、ニーナさん…部屋を…出て行ったんですね…」
ルルーシュのその言葉に…。
スザクは更に戸惑ってしまう。
「さっきまで、僕と話しをしていたんだけれど…ね…」
「あ、すみません…。僕、時々、周囲の事が全く目に入らない、耳に聞こえて来ない事が合って…。特に何がある訳じゃないんですけれど…」
淡々と説明している。
一応、敵と認識されているわけではなさそうなのでほっと安心した。
「名前を…教えて頂けますか?どうやら、あなたは、僕の名前は知っているようだけれど…」
その言葉に…心の中でぐさりと何かが刺さった。
それでも、今のルルーシュには…。
「僕は…えっと…『ゼロ』だ…」
スザクはただ、そう答えた。
もし、あの時のルルーシュであるとするなら…『スザク』と名乗ってしまうのは…。
少し酷かもしれないと思ってしまったから…。
どこまで知っているのかも解らないし、これは、『真実』ではないかもしれないが、『ウソ』でもない。
「そうですか…。改めて…僕はルルーシュ…。宜しくお願いします…」
ルルーシュがそう云って殆ど作り笑顔の様な表情を向けてきた。
恐らく、今のルルーシュにとって、一番の得策と考えての態度だろう。
「こちらこそ、よろしく…」
少し、胸の痛みを感じつつもスザクはそう云って笑って返した。
今のルルーシュに…目の前の存在を『スザク』だと認識するだけの材料が何もないのだ。
「僕…記憶喪失…なんですよね…。良く解らないけれど…。でも、自分の身体を見て、声を聞けば…まぁ、云われてみればその通りかな…なんて思いますが…」
ルルーシュが…自分に対してこんな風に…。
自分を守る為だけに…こうして敬語を使っている。
それがなんだか…辛いと思えてくるけれど…。
「君は…どこまで…覚えているんだい…?」
「云って…解るとも思えないんですけれど…」
「知りたいんだよ…。云いたくなければ…いいんだけれどね…」
ルルーシュは本当に云いたくなければ云わない…。
それを解っていたから、敢えて付け加えておいた。
本当は、ルルーシュの口から聞きたいと思うのだけれど…いざとなれば、ロイドに訊けばいいだけの話しだ…。
「小鳥…」
「え?」
ルルーシュの、小さな呟きにスザクが反応した。
「僕…友達と…小鳥を返しに行ったんです…。その友達…凄い奴で…。テレビゲームでしか運転した事のない車に運転して…。怖かったけれど…。でも…彼と友達に慣れて本当に…良かった…」
その言葉に…スザクはただ…驚いて、何も云う事が出来なくなった。

 その後…暫くして、ロイドが部屋に入って来て、スザクを連れだした。
そして、ルルーシュは、その後すぐに眠ってしまっていた。
「感想は…?」
妙な訊ねられ方をしている気がするけれど…。
「なんて…云ったらいいのか…。記憶は…戻るんですか?」
「それは…何とも言えないねぇ…。でも、これはこれで、ルルーシュ陛下にとってはねぇ…。結構しんどい状態だと思うけどねぇ…」
ロイドの言葉に…。
スザクはルルーシュをブリタニア皇帝の前に引きずり出した時の事を思い出した。
そう…記憶を失うという事は…。
「それでも…思いださなくちゃいけないと…僕は思います…。どうしたら、思い出せるのか…なんて…解らないけれど…」
「ラクシャータも同じような事を云っていたねぇ…。まぁ、確かに、ルルーシュ陛下が生きておられるなら…やって頂きたい事はたくさんあるだろうし、出来る事もたくさんあるだろうしねぇ…。『死』は…世界を導いた君達にとっては、多分、『逃げ』でしかないよ?」
このロイドの言葉…。
今のスザクだから解る…。
「そう…ですね…。とりあえず、ルルーシュが自力で動けるようになるまでは…治療をして頂けますか?その後は…」
「また…思いきった事を考えるねぇ…。まぁ、それはそれで一つの方法だとは思うけれど…」
「僕には…責任が…あります…。本来…あの場所で死ぬべきだったルルーシュを…強引に生かしている僕には…」
「そんな風に難しく考える事はないよ?あの時、それに賛同した人だけが協力しているんだからさぁ…。まぁ、みんなの思いはそれぞれだけれど…。多分、それが一番いいと思うよ…。ジェレミア卿が起こりそうだけれどねぇ…」
「そちらは…お任せしてもいいですか?」
「最初からそのつもりだったくせに…」
スザクの心が決まった。
そして…
「じゃあ、そう決まったところで…僕は中華連邦の北部の地域に逝って来ますね…」
「あれ?もう行くのかい?」
「ここで時間をロスしているんですから…。僕は本来、『スザク』の名前で呼ばれてはいけない人間なんですから…」
「ったく…。そのまじめ過ぎる性格を何とかしないと…まとまるものもまとまらないよぉ?」
「だから、必要なんでしょ?彼が…」
「まぁ、二人とも真面目だけれど…種類が違う真面目だから…。だから、二人で一つ…って感じなのかなぁ…。面白いよね…君達…」
「そんな事より…これからも、ちゃんと情報を送って下さいよ?」
「それは大丈夫…。って云うか、そんな事ばかりで辛く…ないのかい?」
「これで…二人揃って年をとって行けるんです…。だから、僕達が天寿を全うした時に…笑って逝ける世界にしたいとは…思っているんで…」
「壮大な夢だねぇ…」
そう云いながら、ロイドはスザクにあるものをスザクに渡す。
それは…小さなモニターと電源スイッチだけついて居るシンプルな作りの小型の機械だ。
「それで、陛下の様子を教えてあげるから…。必要だと思ったら、すぐに帰ってくればいいよ…。この世界…君一人が背負える程軽くはないし、君が犠牲にならなければならないほど重くはないからね…」
ロイドのその言葉に、スザクは苦笑したけれど、素直にポケットにしまった。
そして、黙ってその家を出て行った…。
これからまだまだ続く…彼らの望んだ世界を創造る為に…

END

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posted by 和泉綾 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年10月01日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 215

理想と現実



※『My Dear』『願う心』の続きです。

 ルルーシュはとりあえず、一命を取り留めて、眠っている。
あれから、どれほどの時間が経っただろうか?
この、地下施設では…時間の経過も良く解らない。
ただ、やはり、外の世界がどうなっているのか気になるし、何も知らないまま、この変革期に外にのこのこ出て行くのは危険だ。
だからこそ、情報を得る為にメディアが流す情報を仕入れているが…。
その情報を仕入れる時だけ…時間の流れを感じている。
『ゼロ』のその存在で、やっと、民衆の暴走を抑えているような状態…とも云える。
『革命』の時に、最も神経を使うのが、敵とみなした『為政者』を倒したその後だ。
どんな形であれ、その『為政者』によって、その秩序を守られていた事は事実であり、『革命』とはその秩序さえもぶち壊して新しい物を作り上げて行く事だ。
その意味をルルーシュは承知していた。
だから、こんな茶番劇でなければ、『革命』を起こして、その後、統制を取って行く事が不可能である事も…承知していた。
『ゼロ』の存在感と、シュナイゼルの政治センス…。
それが揃わなければ恐らく、いくらルルーシュの存在が世界の憎しみを集め、世界の目の前で『英雄』に倒されても意味を成さない。
だからこそ、シュナイゼルを殺さずに、『ゼロ』のサポート役にした。
全て…綿密に練られた計画の下…今も世界は動き始めている。
その、ルルーシュが練り上げた計画通りに世界が進んでいるのを見ると…。
実際に現場の中心人物となっている『ゼロ』と、その『ゼロ』の補佐役として『ギアス』をかけられて、『ゼロ』に従っているシュナイゼルのその、有能さに感服する訳だけれど…。
何となく違和感を覚えるのが…。
それを支えているのが、ルルーシュとスザクではないから…なのだろうか…。
ここにいるメンバーは、『ゼロ・レクイエム』までの二人のコンビプレイをよく知るだけに…そう思ってしまうのかもしれないが…。
そんな事を考えていても仕方がない…。
いずれ、ルルーシュは目覚める…。
その時の世界が…どんな姿になっているのか…。
早く目を醒まして欲しいと思う反面…。
現在の様な、混乱状態の中、目を覚まさせるのも…なんだか気が引けてしまうけれど…。
しかし、『革命』の後の世界が落ち着くのには、それこそ10年以上がかかる。
そこまで彼を眠らせたまま…と云う訳にもいかないけれど。
ただ…ルルーシュは…その先の世界を信じて…その身を世界の贄とした事は…。
ここに顔をそろえている者たち全員が知っている事…。
そして、ここにいる全員と、現在、メディアに否応なくその姿を見せている『ゼロ』が…。
ルルーシュの意思に逆らって…彼の命を救おうとしている。
それは…必要だからなのか…。
各自の感情なのか…。
それとも、これが『間違っている』と思うからなのか…。

 ルルーシュに着けられているバイタルモニターは規則正しくグラフを描いている。
恐らく…ルルーシュが、気がついた時には…ルルーシュは相当驚くだろう。
あの時…云い方は悪いが、ルルーシュ自身、その覚悟を決めていたし、『死ぬ気満々』と云った感じだった。
それが…自分が生きて、目を醒ました…ともなった時には…
元々、イレギュラーに対して対応力のないルルーシュだ。
現実を受け入れるまでにそれなりに時間がかかるだろうし…。
受け入れてからは、恐らく、混乱状態となり、彼らへの怒りを全力で向けて来るだろう。
ただ、その時のルルーシュの全力などたかが知れてはいるけれど…。
それでも『生きたい』と願うルルーシュが『死を覚悟』する時のその時の気持ちを考えた時…。
その、怒りを買う事は…恐らく、ここにいる全員何かを感じざるを得ないだろうが…。
「おい…アスプルンド…。ルルーシュ様は…」
ジェレミアが心配で仕方ないと云った様子でロイドに声をかける。
今、C.C.はどこかで放浪している状態…。
スザクは『ゼロ』の仮面を被って恐らく、古今東西世界的にこれほど混乱した事はない状態の中、世界を飛び回っている状態だ。
ラクシャータ達はあの混乱状態の中、行方不明と云う事になり、ロイドとセシル、ニーナは重要参考人として捜索されている。
今のところ、ここが見つかる心配はないけれど…。
あれから、それなりの時間が経っているというのに、外の騒ぎは治まる気配を感じさせない。
あれだけの世界革命なのだから、仕方ないと云えば仕方ない訳だけれど…。
「これって…」
「ホントにねぇ…。この子が皇帝やっていた時の方が犠牲者が少ないんじゃないのぉ〜〜〜?」
確かに変革期である事は確かだし、その際には必ず犠牲者が出る事は仕方がない事だ。
いくら勝った側に立ち、世界的に『正義』とされた者であっても、否、世界を治めて行く上で必要として、人殺しは行われるし、弾圧は行われる。
そう云った混乱を重ねながら、人々はまた、あるべき姿として、穏やかな世界へと向かって行く事になる訳だが…。
そこまでに、世界を巻き込んだ混乱状態となっていたわけなのだから…。
ルルーシュがその先に望んだ世界になるまでには…相当の時間がかかる事は解る。
いつ目覚める事が幸せであるのか…。
実際に、自分達が生きている間は混乱状態が続く様な気がする。
それに、平和になるのを待っていたら、それだけの時間が経ってしまい…。
ルルーシュ一人、置いてきぼりになる可能性だってある。
「結局…何をしたかったんだろうねぇ…僕達はさ…」
ロイドの一言…。
それは…多分、彼らが共通して持つ複雑な気持ちを…簡単に、解り易くまとめた言葉だ…。
今の、こうして送られて来る毎日の世界の変化の…その報道は…。
きっとそう思わざるを得ない報道で…。
それを配信する側に立っているミレイの姿も…見ていて痛々しさを感じる。
彼女は…ここにいる誰も知らない…。
ルルーシュを知っている…。
様々な物を抱えていたとは云え…。
それでも、ナナリーを守りながら…普通の少年であろうとしたルルーシュの姿を…。

 ルルーシュが静かに眠っている。
機械を付けている状態で…。
実際にいつ目覚めてもいいように、全ての準備は出来ている。
そして、ルルーシュの体自体は、そう云う状態になっている。
後は…。
ルルーシュ次第…。
そんなところまで来ているのだけれど…。
ただ、今、彼らが知ることができるその、外の世界の情報は…。
きっと目を醒ましたルルーシュにとっては酷なものである事が手に取る様に解る。
混乱状態…。
確かに…それなりの時間は経っているが…。
世界が一応でも落ち着いたとみなす事が出来るまでに必要な時間にはまだ足りない…。
「あの…ロイド先生…」
ニーナが、外の世界の報道を見ながら、ロイドに声をかけた。
元々…それほど人と話しをする方ではないし、自分の考えている事をその口で伝える事も得意ではない彼女だが…。
『ゼロ・レクイエム』を経験して…。
そして、ルルーシュを救おうとする、ここに集まっている大人達を見て…色々と変わってきている様である。
元々…ニーナは人と話すという点に置いて、欠けているものがあった訳だけれど…。
ユーフェミアとの出会いがきっかけで、彼女自身、変わってきた。
色々な寄り道をしつつも…。
彼女は変わってきた…。
そして、いつしか…自らの目で物を見て、自らの頭で考え、自らの力で動こうと云う…そこまで変わってきた。
そして、彼女は自分の頭で考えた結果で…自分で決めた結果で…今、ここにいる。
ルルーシュの命を助ける為に尽力しているのだ。
彼女は…『ゼロ』を決して許さない。
それは自分の中でもどうにもならない気持ちとしてあるのだけれど…。
ただ、『ルルーシュ皇帝』のやった事に対して…彼女自身、納得できない事があった。
ルルーシュ自身に、訊かなければならないと思ったから…。
だから、彼女は、ここにいる。
「どうしたんだい?ニーナくん…」
彼女の気持ちを知ってか知らずか…。
ロイドはセシル同様、彼女に仕事をさせている。
勿論、ニーナが医療に関しては素人だけれど…。
ルルーシュの命を助けるためのチームがここにあるのだ。
いざとなった時には、ジェレミアにこの場を守って貰わなくてはならない。
流石にKMFを維持する事は出来ないが…。
それでもある程度の武器は必要になって来るし、もし、ここから逃げる際の移動手段は必要だ。
その時の為のメカニックとして…。
そして、ルルーシュの生命維持の機械の維持を彼女が担当している。
彼女に、ルルーシュを殺す気があったのであれば…。
いつでもできる立場にあるけれど。
ここにいるメンバー達はその事を彼女に対して不安を持ってはいない。
全面的に信用しているのだ。
否、信用出来ている。
ルルーシュはニーナにとって憎むべき『ゼロ』であったけれど。
今では、ニーナが『フレイヤ』と云う大量破壊兵器を作った『罪』に対してどうするべきかを指示したその、存在でもあったから…。
ユーフェミアを殺したこと自体は許せないし、云い訳の一つもして欲しいとは思ったけれど…。
でも、ルルーシュは決してその事を口にしない。
けれど…ロイドから渡された…あるロムを見て…。
ニーナの瞳から涙が流れて止まらなくなった…。
その時に…『ゼロ』に対する憎しみは消えないまでも…それでも…自分の気持ちの整理をするきっかけとなったのは事実であった。

 世界が向かう場所は…一体どこなのだろうか…。
そう思えてきた。
「何をそこで考え込む必要がある?元々『超合衆国』が望んだ事は叶っているではないか…」
ジェレミアの一言に…。
その場の人間すべてが驚いた顔をした。
否、ロイドだけは別だったが…。
「確かにねぇ…。その先を考えていなかった連中も…悪いわよねぇ…」
ジェレミアとロイドのやり取りで、何を云いたいのか解ったらしいラクシャータがそう、口に出した。
他のメンバー達は良く解らないと云う顔をしている。
そんなメンバー達を一回だけため息吐きながら見て、ジェレミアが口を口を開いた。
「彼らの…『超合衆国』の協力関係の契約を交わした芯となった部分はなんだ?」
そのジェレミアの一言で、全員がハッとした。
その先は…。
「そっ…。彼らが協力体制を取れたのは、ブリタニアがあったから…。今ではブリタニアはナナリーさまが治めていて、彼らの敵ではなくなってしまったからねぇ…。となると、彼らに共通の敵がいなくなる…」
ロイドが続けて…。
「で、共通の敵がいなくなった時点で、あの連中の弱々しい協力関係なんてあっという間に切れちゃうってわけ…。その結果が、今のこの混乱って事…」
クスッと笑いながらラクシャータが締めくくった。
確かに…彼らの協力関係はそこにあり、その協力関係の理由となった敵がいなくなった時点で、協力関係など簡単に崩れる。
『昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵』
良く云ったものである。
共通の敵がいなくなった時点で、彼らの結束などたやすく切れる。
元々、『ゼロ』のカリスマによって一つにまとまっていた脆い関係…。
『ゼロ』の死亡が発表された時点で、『黒の騎士団』への求心力はそれこそ格段に落ちてしまう。
その辺りの事を、どこまで考えていたのか解らない。
現状をみると、そんな事を考えてはいなかった…と思う事しか出来ないが…。
ここまで…『超合衆国』で発言力を持っている国が完全に偏っていた。
その理由は…。
『黒の騎士団』とのつながりの深い国々だったから…。
元々、『ゼロ』は日本に置いて『合衆国日本』の建国を宣言し、そして、それが世界に伝播して、『超合衆国』となったのだ。
元々、各国の目的は、ブリタニアの侵略からの解放、もしくはその脅威からの解放…。
その目的が果たされて…今のところは、各国それぞれの国の事情で外に目を向けられる状態ではない。
それでも、徐々に国内が安定し始めると…かつて共に戦った国との軋轢が見え隠れし始める。
当然、犠牲者の多かった国もあれば、物資や金銭的に負担の大きかった国もある。
その負担によって国の復興が遅れる国は…どうしたって、その物理的にどうしようもない状態を不満に思い、あの時の戦いについて考え始め…。
やがて、それは外部への不満が思いとなり、そして、それが表面化して本格的に対立する事になる。
同じ目的のみで結束した絆など…所詮はそんなものだ。
そこまで考える事の出来なかった者たちが『超合衆国』や『黒の騎士団』のトップに立っていたわけだから…。
ある意味、なるべくしてなった現実と言えよう。

 それでも、ルルーシュが望んだ事はそんな事ではない。
だからこそ、スザクは『ゼロ』の仮面を被り、今現在、ここでルルーシュの治療に当たっている者たちの前でさえ、その仮面を外そうとはしない。
きっと、彼は現在の混乱を治めるまではその仮面を外す事はないのかもしれない。
そんな事は…。
いくら『罪』に対しての『罰』であるからと云って、そこまでの『罪』を彼らは犯したのだろうか…。
そう考えた時…。
今の『ゼロ』の仮面を外せる場所を作れるのは、ルルーシュだけなのかもしれないとさえ思えてくる。
現在の世界と『ゼロ』の活躍を見ている限り…。
本当に痛々しい程、彼は世界を飛び回っている。
『ゼロ』への求心力と云うのは、ルルーシュであったから培えてものだし、『ゼロ』の伝説はルルーシュが作り上げたものだ。
それが云い方は悪いかもしれないが、偽物であるスザクがどれほど尽力したって、仮面を被っている人間が違うのだ。
スザクなルルーシュと同じ事が出来る訳がない。
それはスザクが悪い訳ではなく、スザクはスザクであって、ルルーシュではないという事…。
段々…世界も気付き始めている…。
あの頃の…。
世界最大の影響力を持つブリタニアに対して脅威を抱かせた『ゼロ』ではない事を…。
「人は…どうして争うんですか?」
ニーナの…恐らく非常に素直にその気持ちを表した言葉だろう。
その言葉に対して、ロイドが答えた。
「人だから…だよ…。人は、人であるからこそ…譲れないものがある。それを強引に抑えつけようとしたって、結局は反発の力を強くしてしまうだけさ…。僕みたいにただ、流されるだけの人間になったら、それはそれで困るけどねぇ…」
その言葉に…ニーナは少しだけ、複雑だという表情を見せた。
「まだまだ続くよ…この状態はさぁ…。だから、この坊やの力が必要なんだと思うけどねぇ…。あたしとしちゃ、このボウヤを甘やかす気はないし、目覚めたらやるべき事きちんとやるべきだと思っているからねぇ…。それに、それが出来るのは、『ゼロ』とこのボウヤだよ…」
ラクシャータが付け加えた。
確かに…この状態を治められるのは、皇帝位を父から簒奪して、いくら反発が強かったとはいえ、財閥解体やら植民エリアの解放までやってのけたのに、たった2ヶ月で全世界を敵に回す程の手腕を持ったルルーシュくらいだろう。
「このままじゃ、手遅れになりそうだしさぁ…。早いところ…」
ラクシャータがそう云いかけた時…。
ルルーシュの状態を示すモニタに変化が現れた。
「陛下の意識レベルが回復し始めています!」
そう云ったのは…セシルだった…。
「ルルーシュ様!」
「陛下?」
「ボウヤ!」
「ルルーシュ!」
4人が一斉にその名前を呼んだ。
そして…その声に呼応するかのように…。
その閉じていたその瞼が…ゆっくりと開き始めた…。
まだ、周囲を見る事も出来ていない状態だろう…。
しかし…ここまでずっと変化のない状態が続いていたのだから…望みが生まれてきたという事…。
そこにいた者達は…。
ほっと安心する気持ちと、これから待つ、彼の過酷な運命を思い…。
複雑な心に戸惑っていた…。

END

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2010年09月29日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 214

願う心



※昨日の『My Dear』の続きです。

 世界を騙す為の『祭り』が終わった。
外は大騒ぎだ。
そんな騒ぎに乗じて、ジェレミアがルルーシュをその騒ぎの中から連れ出した。
そして、ロイド達の待つ…彼らがルルーシュにも秘密で作り上げた…その施設に運び込んだ。
「アスプルンド!」
ジェレミアがその身体を横抱きにした状態で飛び込んだその場所には…。
既に準備万端と云ったロイドが待っていた。
そして…ジェレミアとしては驚く人物達も立っていた。
「準備は出来ていますよ…ジェレミア卿…。早く陛下を…」
ロイドのその言葉に…ジェレミアは躊躇する。
そこにいたのは…
「今は余計な事を考えている時間があるなら、さっさとそのボウヤをそこに寝かしな!いくら急所から少し外しているからって一刻を争う傷に間違いないんだ!」
そう叫んだのは、褐色の肌をした白衣の女…ラクシャータ=チャウラーだった…。
その一喝でジェレミアははっと我に返り、ルルーシュをその場所に横たえた。
そして、ジェレミアがその場所から一歩離れると、早速、超一流の博士たちがその周囲を取り囲み、作業を開始する。
彼らの腕も超一流だが…。
それでも、一刻を争う傷である事は間違いないのだ。
ジェレミアの目の前では、ジェレミアのその目には不思議に思える光景が映っていた。
その人物がルルーシュに仇成す事をしている様には確かに見えはしないが…。
ついさっきまで、『反ルルーシュ』一派の義勇軍に助け出されるのを待っていた者たちだ。
ロイドとセシルは解る…。
この計画に加担していたのだから…。
しかし…。
今目の前では『黒の騎士団』に所属していた研究者達が一緒に…ルルーシュの救命作業をしているのだ。
驚いているジェレミアの横を、慌しく移動している研究者達…。
「血圧が低下しています…。急いで下さい!」
セシルがバイタルチェックしながらその部屋にいる者たちに伝える。
実際に、世界に対してルルーシュの『死』を偽装をしなければならなかった。
ルルーシュにも秘密で…。
そして、世界に露呈しない様に…。
流石にその偽装をする為には…ルルーシュ自身にそれ相応の深手を負って貰わなければならなかったし、スザクの時の様に、KMFの大爆発で死んだ事にすると云う事も出来ない。
ルルーシュが…世界の目に晒されて、死んだ事にしなければならないのだから…。
だから、スザクのその剣の腕を信じるしかなかったし、ロイドのその医療技術を信じるしかなかった。
そして、その計画は実行され…。
現在、ルルーシュのその傷を塞ぐ事に彼らは尽力している。
そんな緊張状態の中…。
この中に入って来た者がいた…。
流石にジェレミアは警戒する。
ここが見つかったとなれば…その存在が邪魔をするなら、排除しなければならないのだから…。
ジェレミアがその、改造されている腕から剣を出し構えた。
そして…その相手を目視確認すると…
「C.C.…キサマ…」

 そこに立っていたのはC.C.だった。
この場所を知っているのはジェレミア、ロイド、セシル、そしてスザクだけの筈だ。
尤も、現在『黒の騎士団』で研究員をしていた連中と、『ゼロ』を憎んでいたニーナがそこにいる訳だが…。
「私はC.C.だぞ…。お前たちの考えている事などお見通しだ…。お前たちの何倍生きていると思っているんだ…」
不敵に笑う彼女に、ジェレミアはくっと奥歯を噛み締めつつも、剣を収めた。
彼女ならルルーシュの命を救う事を邪魔するとは思えないからだ。
「で、こいつは助かりそうなのか?」
C.C.がロイドに訊ねた。
ロイドはルルーシュのその傷から目を離す事無く、答えた。
「助けてみせるよ…。結構きわどいところに来ちゃっているけどね…」
「まぁ、こいつの事だ…。そのくらいやらないとばれるからな…」
「スザク君の件の腕は確かだねぇ…。感心するけど…こっちも正直、いっぱいいっぱいだ…」
そんなロイドの言葉にC.C.が苦笑した。
確かに…。
普段は変に間抜けな事をする癖に、こうした時には本当に鋭い。
困った相手ではあるのだけれど…。
それでも、スザクのその腕にかけた彼らの選択は正しいと思っている。
実際、ルルーシュは完全に自分は『死ぬ』つもりでいたのだから…。
目を醒ました時には相当驚きもするだろうが…。
「何も出来ない連中はここから出て行きな!邪魔だよ!」
そこにラクシャータの叱責は入る。
確かに…ロイドがいつものふざけた口調で話せない程の状態なのだ。
ラクシャータがここにいる事は確かに驚きの種ではあるけれど…。
彼女自身も相当真剣にその傷と向き合っている。
彼女自身、あの『黒の騎士団』の中に居ながら、唯一第三者的に物事を見ていたのかもしれない。
そう思えてきた。
「解った…。退散しよう…。必要な物があれば云ってくれ…。私なら大抵のところで大抵のことはしてやれる…」
そう云いながらジェレミアと出て行こうとした時に…。
再びラクシャータが声をかけてきた。
「なら、そこの入り口まで人が来ない様にしてな!私達がいなかった事で、きっと、義勇軍連中がプリン伯爵たちはともかく、あたし達の事は探している筈だからさ…」
確かに…。
ラクシャータとラクシャータが連れている研究員たちは『黒の騎士団』の研究員だ。
ロイド達がいなくなった事に関してはどさくさの中スルーして貰えるかもしれないが、彼女達の場合、そうはいかないかもしれない。
きっと、『黒の騎士団』たちは探しているに違いない。
「そうだな…解った…。行くぞ…ジェレミア…」
ラクシャータの指摘に、ジェレミア自身気付いていなかった事に彼自身、少々不覚を取ったと思えてしまうが…。
今はそこで悪態づいている暇はないのだ。
「解った…。ここの外からの出入り口は封鎖しておく。全てが終わったら、連絡をくれ…」
ジェレミアがそう云った時、ラクシャータの助手の一人が黙ってこくっと頷いた。
今のところ、ルルーシュの傍らに立っている連中にそれを返事するだけの余裕がないようだ。
それを見て、ジェレミアがそっとC.C.とそこから出て行った。

 外に出た時…周囲は確かに騒がしい。
「私達も身を隠しながら入口を見張っていた方がよさそうだ…。確かに、長距離移動は無理だとは云え、あの現場から近過ぎだな…。とは云っても、あのボウヤがあの傷で移動できる距離など知れていたか…」
「枢木もギリギリのところに刺したようだからな…。世界を欺くよりもルルーシュ様を欺く方が難しい…」
「ふっ…アイツ自身、世界を欺く為に尽力していたのだからな…」
皮肉な話しだが…。
見事にルルーシュは世界を欺いた。
そして、世界は今のところ、そんなルルーシュの策略に気づく者などいない。
シュナイゼルがもし、『ギアス』のかかっていない状態だったら…ルルーシュのやろうとしていた事に気づいて、何か云ったかもしれないが…。
止めるか、止めないかは別にして…。
それでも、あのルルーシュの茶番劇に気付けるのは恐らく、世界広しといえどもあの時点ではシュナイゼルくらいのものだ。
現在は、義勇軍たちに解放されて、『ゼロ』の命令の下、義勇軍たちを動かして、騒ぎの鎮静化を図っているに違いない。
ルルーシュもそこまで見込んでシュナイゼルを殺す事をせず、『ゼロ』に従うようにとの『ギアス』をかけたのだから…。
彼らは、高い、崩れかけの建物の上に立っている。
きちんと整備されたメインストリートから少し入ったところは…。
既にあの、ルルーシュの率いるブリタニア軍とダモクレスと『黒の騎士団』の連合軍の戦いの際に、ルルーシュに捕らえられた者達を救い出す為と称して、統制されていない連中が壊して回っていたのだろう。
こんな事を想定していたから、ジェレミアも秘密裏に今回の施設を作る際には苦労していたのだ。
地下に作らねばらないが、地下にはインフラ整備の為に様々な施設が作られていて…。
更に奥深くに作らなくてはならなかった。
尤も、見つかり難いという点ではそれはそれで好都合とも云えるが…。
ルルーシュもあの戦いの後、『超合衆国』の平定とまだ、『超合衆国』への加盟を決めていなかったEUの中の僅かな国々に対しての圧力をかけるべく、忙殺されていたから出来た事…とも云える。
そして、あの戦いで逃げた敗者達の残党狩りを表向きにはしなくてはならなかった。
主だった者たちは残しておかなくてはならないから、蓬莱島に対してはかなり苦しい云い訳をしながら敢えて、外交交渉と云う形でしか接触する事はなかった。
そんな事をして彼らが折れる訳がない事を承知の上で…だ。
そこに疑問を持つ者も早々いなかったし、他のニュースの方が大きく報道されていたから、基本的には世界の目はそちらの方には向いていなかった。
そして、あのパレードでも蓬莱島に残っていた連中が潜んでいる事も全て焼死していたのだから…。
あの『人質』達を解放しようとしたあの、行動は…。
とんだ喜劇にしか見えない。
少なくとも事情を知ってしまっていては…あの、救出劇を湛える事が出来る者などいないだろう。
ただ、あれは、後に『ルルーシュ皇帝から世界を解放した』聖戦として語り継がれる事考えて…ルルーシュは考えていた。
正直、その辺りは読みが深いのか浅いのか解らない。
どれだけ言論統制したところで、人の心までコントロールできないという事だ。
ルルーシュの『絶対遵守の力』を使いでもしない限り…。
それでも、奥底に眠る気持ちまで買える事は出来まい…。
そう思うと…C.C.はふっと笑ってしまう。

 そんな風に笑うC.C.を見て、ジェレミアが怪訝そうな顔を見せる。
「何がおかしい?」
そう訊ねると…C.C.は平然とした顔で答えた。
「アイツのバカさ加減に…だ…」
「ルルーシュ様を愚弄するとは!」
「お前…本気で云っているのか?」
意味深な笑みをジェレミアに見せて、訊ねると…ジェレミアもぐっと黙ってしまう。
「ほら見ろ…。お前だって…思っているんだろ?あのボウヤ達のバカさ加減に…『困った連中だ…』と…」
「別に…私は…」
「アイツらにそう教えてやれる人間がいれば…良かったんだがな…。何も…『ゼロ』を称える者もいれば、憎む者もいる。それと同じように『ルルーシュ皇帝』を称える者がいれば、憎む者もいる…。そう云う事だ…。人が自由意思を持つ…と云う事は…」
こればかりは彼女が正しいから、ジェレミアも何も云えない。
現に、ニーナはずっと、『ゼロ』を憎んでいた。
当のスザクだって『ゼロ』を憎んでいた。
彼ら二人の他に『ゼロ』を憎むものだっているに違いないのだ。
そして、『ギアス』をかけられていなくとも、ブリタニアからの支配から解放された国の者たちの中にはルルーシュを憎む者たちばかりではないだろう。
それに感謝している者もいただろう。
そもそも、たった2ヶ月で一度得た信用を失う事など土台無理な話しだ。
ルルーシュは、あの時点で…ブリタニアの植民エリア全てを無条件に解放した時点で…。
たった2ヶ月では消し去れない程の感謝の念を抱かれてしまっているのだ。
恐らく、そんな形で解放されてしまい、困ってしまったのは、ブリタニアの支配から逃れて亡命政府としてその国の権力者であった者たちの方だろう。
突然の植民エリア解放によって、国内はとんでもない混乱状態に陥る事になる。
植民エリアを解放した時点で、ブリタニアからはブリタニア人の帰国命令が出されて、チャーター便まで出ていたのだ。
そこにはブリタニアの資本が多く入っていたが…。
それさえも引き上げる事になれば、国が混乱し、成り立たない事くらいは簡単に予想がつく。
「そこまで、ルルーシュ様達に押し付けるほど愚かな世界であるのなら…いっそ滅んだ方がいいだろう…」
「それを望まないから…ルルーシュが贄となったのだろう?まぁ、アイツは自分に向けられる感情に対しては、鈍感過ぎる…。特に…アイツに対して行為を抱く者たちの気持ちに対しては…」
彼女の言葉は…本当にその通りで…。
ジェレミアとしてもその辺は心が痛む。
確かに…育った環境を考えれば、自分への『負の感情』に対しては慣れていても、逆の感情は慣れていないのだろう…。
「とにかく…我々はここを守るのが使命だ…。お前とて、ルルーシュ様の『死』を望んでいるわけではあるまい…」
「当たり前だ…。アイツは私の契約者だ…。契約不履行のまま…あっちに逝かれては困るからな…」
そんな、C.C.の言葉に、今度はジェレミアがふっと笑った。
下を眺めていると…。
恐らく、単純に感情だけで、その雰囲気の高ぶりだけで…ルルーシュ皇帝を守っていた兵士達を狩ろうとしている感じだ。
「さて…ジェレミア…アイツらをどうする?」

 C.C.の問いに…ジェレミアは特に顔色を変える事もない。
と云うか、それに関しては我関せずと云ったところだ。
「奴らは…私が選りすぐった清栄だ…。この事を想定しての人選をしている…。きちんと逃げ切るさ…。ルルーシュ様が…そう命じたからな…」
ジェレミアがそう云って下を眺めている。
本当に…こうなると、『勝利側の人間』の方が遥かに残酷だ。
逃げまどう相手を無差別に追いかけ回し、最終的にはなぶり殺しだ。
これまで、C.C.はそんな人間の歴史を見て来ている。
ルルーシュもその歴史を学んでいた。
だからこそ、確実に逃げ切れるであろう者たちで固めたのだ。
「こうなると…『悪逆皇帝』と『英雄を戴いたあの連中』と…どちらが残酷かな…」
彼女の言葉は…。
本当に真を突いている。
確かに、ルルーシュの弾圧と云うこれまでの表向きの口実はあったにしても…。
ただ、ルルーシュに操られていたとする者たちをここまで無慈悲に追いかけ回す連中を見ていると、その人物達に殺意さえ覚えるが…。
しかし、我慢できなくなる…その直前に…。
『待て!』
現れたのは…
『ゼロ』…。
恐らく、あのパレードの現場の騒ぎをコーネリア達に任せて来たのだろう…。
こうした、末端の人間まできちんと掌握しなければならない。
ただ単に、流れに乗って人を殺したりしたら、後で苦しむのは彼らの方だ。
『武器を捨て逃げて行く者たちを殺せば…お前達も『悪逆』の名を背負う事になる。その名を背負うだけの覚悟がないのなら、感情に流されて、武器を取る様な真似をするな!』
彼の叱責で、逃げて行くルルーシュの護衛隊達を追いかけ回していた者たちの動きが止まる。
「しかし!俺の家族は…」
『だからと云って、お前の家族に直接手をかけた訳でもない者を殺すのか?ただ、感情に流されてそんな事をすれば、お前の方が『悪逆非道』の人間となる!』
『ゼロ』のその一言に、男が黙り込んでしまった。
『その覚悟がないのであれば、コーネリアが指示した持ち場に戻れ!そして、混乱状態の中にいる一般人達を助けることに専念しろ!』
そう命じると、彼らも言葉なく、持ち場へと戻って行った。
そこには、あの混乱に巻き込まれて逃げまどう一般人達がたくさんいた。
その持ち場に戻った彼らを見届けて…『ゼロ』はジェレミア達の方を見た。
そして、ジェレミアが恐らく、離れていたら、解らない程度に首を動かした。
『ゼロ』がそれを見て少しだけ安心したようにその場を去って行った。
それを見送り…息を吐いた時…。
ロイド達から連絡が来た…。
それは…すぐにあの場所に来るようにと云う合図だ。
「C.C.…どうやら…終わったようだ…」
「一応、アイツの生命力を信じてやる…」
そう云って、二人はそこからその入り口に向かって飛び降りた。
『ゼロ』が人払いをしてくれたから…出来た芸当だ。
そうして、中に入って行くと…。
ルルーシュは…。
落ち着いたようで、酸素マスクをして、体中に様々なコードやチューブを付けた状態で眠っていた。
「ホントに…器用な刺し方をしたわね…。あと数ミリずれていたら、助からなかったわよ…」
「そのくらいしないと…世界は欺けても、ルルーシュ様は欺けないからねぇ…。それでも…良かったよ…。君に礼を云わなくちゃね…ラクシャータ…」
「よしてよ…気持ち悪い!正直、あんな終わり方をするのは…気持ち悪かっただけだし…。って云うか、目を醒ましたら云いたい事、いっぱいあるんだけど?」
ラクシャータの言葉に、その場にいた者たちが『同感だ』と笑った。
「とりあえず、落ち着くまでここで治療して、後でジェレミア卿の家に運ぶから…。完治するまでは僕とラクシャータで診ないとまずいからね…」
「また、あんたと仕事をする事になるとはね…。でも、少しだけ…この子たちに教えられた事だし…この子たちに免じて我慢してあげるわ…」
その一言で…この部屋の雰囲気が少しだけ和らいだ。
まだ、一段落したと云うだけで、目を離せない状態だが…。
「さて、私は暫くその辺をふらついて来るからな…。それまでにそのボウヤの目を醒ましておけ…」
そう云って、C.C.が部屋を出て行った…。
とりあえず…この時点での…彼らの願いは…店に届いたのだった。
ルルーシュはまだ…静かに眠っていた…。

END

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2010年09月28日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 213

My Dear



※『ゼロ・レクイエム』から2年が経ちました。完全妄想の、完全捏造のお話しです。

 ルルーシュから『ゼロ・レクイエム』の概要を聞いた時…。
スザク自身、何をどう云っていいのか…解らなかった。
確かに…ユーフェミアの仇となったルルーシュを憎んだ。
恨みもした…。
でも…シャーリーに諭されて…。
『Cの世界』で知らなかった事を知って…。
やはり、ルルーシュを嫌いになる事は出来なかった。
憎しみとは…その相手に気持ちが残っているから抱ける感情だ。
憎しみはあったとしても…嫌いだと思う気持ちは…なかった。
だから、枢木神社の時でも…殺しきれなかった。
あの時、殺すことだってできた。
絶望のまま、ルルーシュを葬ることだってできたのだ。
スザクのラウンズになった目的は…その為でもあったのだから…。
自分の手で…『ゼロ』を殺す…。
誰にも譲る気はなかった。
それなのに…あの時、ルルーシュを殺しきれなかったのは…スザクの中にルルーシュに対する気持ちが残っていたからだ。
ただ、自分の主の仇と云うポジションに立っていたという事では…。
当然、憎しみを抱く事になるのは、致し方ない。
それでも…。
それと同時に、ルルーシュを止められなかった自分自身も許せなかった。
ルルーシュに対して、彼への信用がルルーシュへの『負の感情』をさらに増幅させた。
と云うのも…
―――ルルーシュだったら…そんな手段を取らなくても…
そう思えたからだ。
その時には…それこそ感情的になり、ただ、ただ、ルルーシュを責めた。
全てはルルーシュに責があると思い、そして、憎んだ…。
でも…本当なら…神根島で殺すことだってできた…。
特に生け捕りにしろと云う命令ではなかったのだから…。
あの時…本当に、ルルーシュに対して恨みも憎しみも最大限まで達して、その存在そのものも認める事ができなければ…。
あの時に…殺すことだってできた。
スザクは軍人だ。
相手を自分の恨みを全てぶつけて殺すことだってできた。
それでも…それをしなかったのは…。
出来なかったのは…。
そこまで考えられるようになったのが…。
あの、『Cの世界』でルルーシュと対峙して、その後、共に行動することを決め…『ゼロ・レクイエム』の概要を聞いてから…と云う自分に、あまりに笑えてしまった。
だから…。
その計画を知って…。
ジェレミアが『ゼロ』からあれだけの屈辱を受けながらも無二の主として忠誠を誓っている事を知って…。
だから…スザクは彼に相談を持ちかけたのだ。
きっと、ルルーシュにばれたら、スザクもジェレミアも…ルルーシュの傍にはいられなくなる事を覚悟で…。
ジェレミアにその話しをした時に…ジェレミアは驚いた顔をしていたけれど…。
でも、ジェレミアは少し涙ぐんで、スザクのその言葉に乗ってくれた。
ばれた時に…ルルーシュがどのような行動に出るかを承知の上で…。
スザクはそんなジェレミアに…心から感謝した。

 日は…時間は…容赦なく進んでいった。
そして、ルルーシュはその時には、本当に憎たらしい程スムーズに事を進めて行った。
その、ルルーシュの有能さによって、世界は…世界中の人間が本当のバカに見える程、ルルーシュの思い通りに進んで行った。
最初の内は…ルルーシュのやっている事に拍手喝采を送っていた。
ただ、『黒の騎士団』は、完全にシュナイゼルの掌の上で踊らされている状態だった。
神楽耶があそこまで頭の悪い人間だと思いたくなかったが…。
スザクの目の前に突き付けられた彼女の姿がすべてだった。
いっそ、ルルーシュがこれからやろうとしている戦争で消えてくれればいいとさえ思ったが…。
ただ、彼女はルルーシュにとってのコマだから….
今は、生きていて貰わなくては困る…。
それに、スザクも現在忙殺されている状態だ。
ジェレミアも…。
そんなザコの事を構っていられるだけの時間はない。
お互いに、ルルーシュの計画と共に、二人で共犯となったその企ての準備を念入りにしなければならないのだ。
そんな忙殺されている毎日の中…
「スザク…お前は何を考えている…?」
そう、声をかけて来たのは…
「C.C.…君には関係ないよ…」
「まぁ、別に云いたくなければ云わなくてもいいが…。こそこそやりたいならアイツにはばれない様にしろよ?」
その一言だけで、彼女は踵を返した。
本当に、何を考えているか解らず…正直、あまり関わりたくないと思う。
そう云う意味ではルルーシュに対しての感情とは全く違う『負の感情』を持っている。
それこそ、彼女に対しては『嫌い』と云う感情だろう。
理由をあげれば、きっと、いくらでも出てくるし、いざ訊かれれば、そう簡単に出て来ないかもしれないが…。
それでも、スザクとジェレミアのたくらみの邪魔をするつもりはなさそうだから…。
敢えて放っておく。
彼女は『魔女』なのだ。
自分達と考えることや、価値観は少々違うところにあると考えるのが利口である。
自分達のやる事に邪魔をしなければ別にどうでもいいのだ。
スザクの気持ちの中にはただ…。
ルルーシュへの感情がなんであるのかよく解らない状態ではあるけれど…。
でも、一つだけはっきりしている事がある…。
『ゼロ・レクイエム』は…阻止したい…。
否、周囲にその事を示す事は構わない…。
でも…ルルーシュが…そうやってこの世界から逃げる事を許す事が出来ない。
そう思った。
ルルーシュは自分のその、勝手な思いによって、スザクは『死』を許されなくなった。
確かに…『死』とは逃げかもしれないと…最近になって思うようになった…。
否、ルルーシュの提示した『ゼロ・レクイエム』の概要を知った時に思った。
それは…『逃げ』だと…。
別に本当に死ぬ必要がどこにあるのだろうか?
その、何も出来ない中に生き続ける事を…見続ける事の方が、余程『罪』に対しての『罰』ではないのか…。
あの、死に際にもユーフェミアは『ゼロ』の正体を云わなかった。
シャーリーだって、その心の中に『ゼロ』の正体を隠したまま、ルルーシュが『死ぬ』事を望まなかった。
彼女達の命を考えた時に…。
やはり、ルルーシュの考えているその先は…ルルーシュにとっての『罰』ではない。
ただの『逃げ』だ…。
ルルーシュに対して、情けをかける事なんて…到底できない…。
少なくとも、今のスザクはそう思っていた。

 『超合衆国』への参加表明をして…そして、『超合衆国』加盟国代表を人質とした。
本当に…一石二鳥の方法だ。
その先、ルルーシュがこの世の存在ではなくなった時に…。
彼らの存在は必要だ。
独裁者がいなくなった世界で…。
せめて、各国を統べる存在がいなければ世界はそれこそただの無法地帯となりかねない。
だから、卑怯な手で人質にした事になったけれど…。
同時に、その代表者たちは、戦争に置いて、最も安全な場所に匿われていた…とも云えるのだ。
戦争に置いて、一番安全な場所は…どちらの陣営であれ、総指揮官の近くが一番安全だ。
その、ルルーシュ皇帝の傍で丁重にその身の安全を保証された状態だったのだ。
ルルーシュの思惑が完全に通っている状態だ。
ある意味、卑怯な手法を使って『超合衆国』加盟国代表を人質とした。
見た目的にはルルーシュのやっている事の方が反感を招くだろう。
しかし…シュナイゼルがそんな人質ごときで怯む訳がない。
それも承知の上での作戦だ。
シュナイゼルのやり方は…ルルーシュが良く知っているから…。
そして…スザクもシュナイゼルの狡猾さを知っている。
式根島で…『黒の騎士団』を殲滅の為に…スザクを犠牲にしようとしていた。
あの、世界最新のKMFもろとも…。
彼にとって、自分の目的の為であるのであれば…決して、何を犠牲にしようと構わない…。
死んでしまえば代わりを連れてくればいい…。
壊れてしまえば作り直せばいい…。
本気でそう考えている。
だからこそ…恐ろしさを感じるのだ。
ルルーシュもそう思ったからこそ…捨て身で事に当たっている。
『ゼロ・レクイエム』そのものが…完全にシュナイゼルを意識してのものだ。
シュナイゼルの存在がなければ…。
彼が『フレイヤ』を持っていなければ…。
もっと簡単に、ルルーシュの抱いている結末を阻止できたのに…。
こんな、まどろっこしい作戦を立てなくても…。
ルルーシュに『罰』を与える事が出来たのに…。
そう思う。
勿論、スザクも『罰』をうけなければならない事は解っているけれど…。
それでも、ルルーシュのやろうとしている事に…。
ルルーシュへの『罰』がない…。
その結果を見てしまっては…。
ユーフェミアもシャーリーも…きっと、報われない…。
命懸けでルルーシュの命を救ったという…ロロだって…。
それでは…何にもならないのだ。
それでは…散った命への償いにはならないのだ。
ルルーシュは…その辺りをちゃんと解っているのか…。
スザク自身、それまで『死ぬ』事ばかりを望んでいたのだから…。
最近になってようやく気付いた分際で、偉そうなことは言えないとは思うけれど。
それでも、気付いていないルルーシュ…。
残りわずかな時間…。
それを考えた時…なり振りなど構っていられないのだ。
どうせ、云ったところで聞く訳ないのなら…。
―――力ずくでなんとでもする…。
そんな事を考えつつ…中々会う事の出来ないジェレミアと…1週間ぶりに直接話す…。
世界は…ルルーシュの望むとおりに進んでいるのだから…。
それ以上…望んでなど欲しくない…。

 フォートレスから…ジェレミアが降りてきた…。
そして、ジェレミアがスザクの姿を確認すると…黙って頷き、スザクの歩く方に着いて行った。
「で、ルルーシュ様は…?」
「困った事に…相変わらずです…。C.C.がなんだか感づいている様ですが…。邪魔をする気はない様です…」
「まぁ、彼女の場合、ルルーシュ様を契約者として見ているのだからな…。彼女がルルーシュ様に『コード』を渡す気があるかどうかは知らんが…。それでも、ルルーシュ様がこのままこの世界から消えてしまう事は望んではおるまい…」
「確かに…」
二人の中で、着々と作戦を考え、そして、準備をしていた。
スザクもその後の事を考えている。
そう、ルルーシュの考えた脚本のラストを変える為の事を…。
スザクの中でルルーシュを許したつもりはない。
許していないから…なのかもしれないとも思っているが…。
―――そんな風に逃げるのは許さない…。ルルーシュ…君には絶対に生きていて貰う…。
スザクのその思いが…思わず顔に出る。
「枢木…その後の事は…」
「ジェレミア卿に…お願い…出来ますか?その後…僕は…」
「そうだな…。どう考えても、それ以外に方法は思いつかんな…」
「で、その後の事は…どうされるおつもりで…?」
「まぁ、ルルーシュ様から頂いた土地の一部を…私が自由に出来る形にしてくれている…。そこで、のんびり暮らそうと思う…」
「そうですか…その方がいいでしょう…。きっと、あなたの立場も…結構大変な事になるでしょうから…」
「確かに…。枢木も生活ががらりと…変わるな…」
「そんなもの、今更驚きはしませんよ…。僕は…ナンバーズの一兵卒でしたし…」
スザクが苦笑して、ジェレミアは少しだけ苦虫をかみつぶしたような表情をした。
二人とも…基本的にはそんな事はどうでもいいのだ。
「そんな事より…僕が『ゼロ』としての存在でいられる様には…して頂けるのですよね?」
「当たり前だ…。ルルーシュ様の御命令は絶対だ…」
「よかった…。僕も、滅多にジェレミア卿のところに行く事は出来ないとは思いますが…。目を醒ました後のルルーシュには…云いたい事がありますし…」
「気持ちは…解らんでもないが…」
様々な事を知ってしまったジェレミアとしては…。
こんな少年と呼べるような彼らにここまでの『業』を背負わせる事の『罪』を…。
いつか、世界が気付くのであろうかと…。
そんな事を考えてしまう…。
もし、そんな事にも気づかない世界であるのなら…。
ルルーシュやスザクがそこまでする価値のある世界だとは思えない。
元々、この火種を作ったのは別に『ゼロ』ではないのだ。
火種のあったところに『ゼロ』が現れただけだ…。
ブリタニアにとって、皇帝の独裁は至極当たり前の事…。
寧ろ『ゼロ』の存在の方が忌み嫌われているのだ。
ルルーシュがいくら独裁を敷いたからと云って、今更驚く事でもない。
シャルル皇帝の頃は、皇帝の事を悪く云えば『反逆罪』に問われる事もあったし、皇族や貴族を悪く云った時でさえ、『罪』に問われないだけで、私刑として、酷い目に遭っていたのだ。
「ホントに…ルルーシュって、頭いいくせに…バカですよね…。当日は…ジェレミア卿…宜しくお願いします…」
「枢木こそ…ぬかるなよ…」

 そして…その日が来た…。
ルルーシュがその日…世界の目の向けられた中、ルルーシュは『ゼロ』によって倒される…。
世界には…『ルルーシュ皇帝』が『ゼロ』に倒された事を示せればいいのだ。
ルルーシュが…パレードカーに乗り込んで行くのを見届けた後…。
スザクはロイドとセシルの収容されている牢へと向かった。
何故、日本の地にそんなものを作ったのかと云えば、彼らがすぐに救出される為だ。
「ロイドさん…」
「スザク君…まだ…そんなカッコしていたのかい?」
「この後、着替えに行きますよ…」
そこに収容されている『黒の騎士団』のメンバー達の驚きを完全に無視してスザクはロイドと話す。
「計画通りに…お願いしますね…」
「スザク君の手許が狂わなければね…」
「僕を…誰だと思っているんです?どの道、時間との勝負になります…。一応、これを渡しておきますね…。どうせ、彼らも解放される訳ですから…時間がまずいと思ったら自力で出て行って下さい…」
そう云って、ロイドに渡したのは…。
腕時計と、恐らくこの牢の鍵…。
「解ったよ…。グッドラック…」
ロイドのその言葉に、ふっと笑って、スザクはその場を去った。
背後からはギャーギャーと騒ぎ始めている連中がいる。
もはや、そんなものはどうでもいい…。
問題なのは…重要なのは…
―――その先の事だ…
スザクは自分に与えられている控室へ入って行き…。
その衣装に着替えた。
彼に、文句を云わせるつもりはない…。
その時の云い訳くらいいくらでも思いつく…。
スザクの中では絶対に認める事が出来なかった…。
だから、協力者…否、共犯者まで用意した。
後戻りできないなら…。
その先に出る結果を変えればいい…。
そう思ったから…。
「だから…ルルーシュ…。勝手は許さないよ…。僕は…君を手放す気はないから…」
その一言を呟いた時…。
その時間が来た…。
きっと、パレードは大混乱になる。
だからこそ、秒単位での計画を立てたのだ。
ルルーシュの知らないところで…。
ルルーシュにばれたら…終わりだったけれど…。
でも、ここまでばれる事はなかった。
あの『魔女』もルルーシュに告げ口する事もなかったようだ。
全ての準備を確認し、ロイドに渡した時計、ジェレミアの持つ時計、そして、スザクの持つ時計は…。
その、彼らの考えた計画の時間を指し示す様になっている。
スザクがその時計を動かしたと同時に…連動して彼らの時計も動き始める。
そうなると…
カウントダウン…開始…。
仮面を被り…そして…大きく深呼吸した。
スザクが時計を動かし始める…。
その事に気づいたジェレミアとロイドが、表情を一瞬だけ変わった。
その後は…その時計の動きに神経を集中させる。
「ミッション開始…」
スザクが小さく呟いて…。
その舞台へと上がって行った…。
一世一代の大芝居…。
世界中を…そしてルルーシュをも騙す…そんな大芝居だ。
緊張しない訳がないが…。
それでもスザクのその目は…。
その仮面を通して…真っ直ぐ前を見据えていた…。

END

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2010年09月16日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 212

木霊



※『ゼロ・レクイエム』後、ミレイ、リヴァル、ニーナ、カレンが、日本にある、ある場所に足を踏み入れた…。その場所とは…?(注:全員、ルルーシュが『ゼロ』であった事や、『ギアス』の事など、紆余曲折を経て知っていると云う設定です)

 そこは…本当にブリタニアに支配されていた土地とは思えないほど…日本の風景を見ているような…そんな場所だった。
「会長…ここは…?」
「えっとね…ちょっと調べてみたんだ…。ここ…スザク君の御実家…」
既に人の気配はない。
本当に…長い事、誰の目にも止まらない状態だったと…それがよく解る場所…。
あの、ルルーシュ率いるブリタニア軍とシュナイゼル率いるダモクレスと『黒の騎士団』の連合軍がそこからちょっと離れた上空で戦っていたとは思えないほど…。
「スザクの…実家…」
「枢木…神社…」
確かに…長く続く石段の登り口の両サイドに立てられていた石碑にはそう書かれていた。
「じゃあ…えっと…」
彼らも、その後、色々調べたのか…この場所がどういう場所であるのかを…知っていた。
よく…それだけの事を調べる事が出来たと…普通なら思うが…。
彼らの場合、同じ学校に現在のブリタニア代表がいたり、あのランスロットの開発者が会長と呼ばれているお天気おねえさんとなり、あの戦争を機にアナウンサーとなったミレイの元婚約者であったり…。
中々情報を得るには、普通と比べると非常に恵まれた環境にある事は事実だ。
ニーナだって、『ブラック・リベリオン』の後、シュナイゼルの下で『フレイヤ』の研究開発をしていたのだ。
当時のニーナにそれだけの意欲があったかどうかを考えた時、彼女がそれだけの情報を得るだけの事をしていたとは思えないが…。
ただ、『フレイヤ』のその爆発を抑える為のキャンセラーの開発を…ロイドと共にルルーシュの下で行っていた。
その時に…ロイドが色々話してくれた。
あまりにやろうとしている事が突拍子もないと云う話しから始まっていたのだけれど…。
それでも、彼らは本気であると云う事でロイドやセシルはその彼らのやろうとしている事に協力することを決めた。
自分の納得できない事はたくさんあったとは云っていたけれど。
でも、話しを聞いていて…彼らは二人の決意を曲げる事が出来ないと思ったとも、云っていた。
それほど…真剣な目をしていたと…。
そして、全てが終わった後…彼らの中には『後悔』が残ったという。
本来…大人のまいた種だったのに…。
何故、あんな、全ての罪をあんな少年達がすべて背負わなくてはならなかったのか…と…。
その話しを聞いて…アッシュフォード学園生徒会で、彼らと一緒に時間を過ごして来た彼らも、心の中に『後悔』と云う思いが残った事を知る。
知らなければ…そこまで考える事もなかっただろう。
そして、ここまで『後悔』と云う思いに苛まれる事もなかっただろう。
それでも、それだけの『後悔』の念を抱いていても…ミレイ達はその事実を知った事に後悔はなかったし、寧ろ、死ってよかったとさえ思った。
だから、今…ここに足を踏み入れているのだ。
ルルーシュとスザクとナナリーしか知らない…。
否、この石段や神社の敷地内にある建物、そして、その周囲に生えている木たちは…死っているだろうが…。

 長い石段を全員がゆっくり登って行く。
日本の寺社のこうした石段は長いとは聞くが…。
これを、毎日子供の足で上り下りしていたのかと思うと…中々大変な子供時代を送っていたと思うし…。
幼い頃から体力には自信がなかったであろうルルーシュが…。
見も知らぬ人間にナナリーを預ける訳がない。
きっと、あの非力なルルーシュがナナリーを背負ってここを昇ったのだと思う。
そして、スザクのあの体力はこうした環境によって培われたのだろうと…そんな風にも思った。
そんな風に考えれば…確かに笑みもこぼれて来るのだけれど…。
それでも、ルルーシュは日本に送られて…アッシュフォード学園で孤立していたスザクを自ら庇う程、大切に思っていたのは事実だ。
そして…その相手は…。
ルルーシュの全ての事情を知った彼らは…そんな中で複雑な彼の事情を思うと…ルルーシュの中でどれほどスザクと云う存在が大切であったかを…考えると心が痛んだ。
それこそ、心臓をわしづかみにされたような感じ…と云うのはこう云う事を云うのだろうか…と思う程…。
庶民であれば…他の皇族は知らずとも…ルルーシュの母であるマリアンヌ皇妃の名前くらいは知っていた。
庶民出身でありながら、その能力を認められて騎士候の位まで上り詰め、そして、皇子と皇女を1人ずつ生む程、皇帝の覚えめでたい皇妃となったのだ。
シャルル皇帝には多くの后がいた。
だから、基本的には同じ腹から生まれた皇子や皇女と云うのは双子である事が殆どで、基本的には一人の后に対して一人の皇子、または皇女である事が殆どだ。
『リ家』も二人の皇女がいるが…。
それ自体、非常に稀有なことであり、最悪の場合、本当に皇帝の血を引いているかを怪しまれる事さえあるのだ。
それ故に、庶民出のマリアンヌ皇妃に対しては相当な疑惑をかけられてはいたけれど…。
そんな事で潰れる様であれば、彼女自身、王宮に上がる事さえ叶わなかったであろう。
実際、軍で活躍する事と、王宮内で確たる地位を得る事とは勝手が違う。
そんな中で軍の中では大きな功績を上げて騎士候の地位を得るわ、それがきっかけで皇帝の目にとまり、皇子と皇女一人ずつ生む…そんな皇妃となったと云うことであれば、庶民たちにとっては、希望の星と云う存在になるのも無理からぬことであろう。
その、凄い女性と皇帝の間に生まれたのが、ルルーシュだと云うのだから…。
そして、稀有な運命の下、この枢木神社でスザクと出会い…。
心を通い合わせたものの…結局は…。
「ここで…ルルーシュとナナリーとスザクは…出会ったのね…」
石段を登り切って、境内に入って行き、周囲を見渡すミレイがそう、云ったのだ。
「って云うか…ルルーシュとナナリー…一体…どこで生活を…?」
リヴァルのその疑問は、誰もが思う、抱く、疑問であろう。
確かに、鳥居、注連縄を捲かれている御親睦と思われる大木、社殿、手水舎、社務所しか見えない…。
周囲を見回しても、鎮守の杜が広がっているだけだ。

 そんな時…
「あ、あそこに…何かある…」
そう云ったのはニーナだった…。
鎮守の杜に入って、少し、歩いたところ…。
境内からは解り難いところに…小さな建物があった。
「こんな神社の中に…何が…」
そう云いながらも、全員がその小さな建物に向かって歩いて行く…。
すると…。
小さな土蔵が…あった。
「まさか…ここに…?」
それを云ったのは誰だったのか…。
よく解らないけれど…。
でも、彼らの背後から声をかけられた。
「その通りだ…」
彼らは驚いて、振り返ると…長身の日本人が立っていた。
「藤堂…さん…」
そう驚いた声を出したのは…カレンだった。
その名前は…流石にここにいる全員が知っている。
顔までは…流石に見ただけで解る程ではないのだけれど…。
「珍しいな…。ここに客人がいて、しかも、こんなところに人が足を踏み入れられているとは…」
そう云いながら、手には庭掃除や庭の手入れに必要な道具を持っていた。
「藤堂さん…ここで一体何を…」
「久しぶりだな…紅月君…。もう軍人ではないし、まだ、自分の気持ちの整理が中々つかなくてね…。で、ここで、少し、考え事をしている…」
その言葉に…カレンははっとして…そして、他のメンバー達はあの場で戦っていた者達の中ではまだ…あの戦争…あの、混乱状態の世界が終わっていない…そんな風に思えた。
「あの…一つお訊きしたい事があるのですが…」
そこに口を挟んだのは…ミレイだった。
恐らく、ミレイだからこそ知っている事があって…気になっている事があるのだろうと…。
藤堂は思った。
確かに、云いたい事はたくさんあるのだろうとは思った。
テレビ報道でしっかり本名を名乗ってしまっているから…。
藤堂も恐らく、解るのだろう…。
彼女の、藤堂に訊きたい…と云う事が…。
「何かな?」
藤堂は静かに訊き返した。
その態度に少々ムカつくけれど…でも、今、藤堂がどんな態度を取ったとしてもミレイにはムカつくようにしか見えないだろう。
一回、深呼吸をして、ミレイが口を開いた。
「ルルーシュが…『ゼロ』だったと聞きました…。そして、ルルーシュは『ゼロ』の正体が『黒の騎士団』のメンバーにカミングアウトされた時に…『黒の騎士団』に裏切られた…と…」
リヴァル、ニーナ、カレンが…何か、ぎょっとした顔でミレイを見た。
ミレイは…それは本当に…真剣な顔をしていた。
そう、『ブラック・リベリオン』の時に、アッシュフォード学園が『黒の騎士団』に接収された時に…『黒の騎士団』のメンバーの一人に…銃を突き付けられて…。
そこで、学生達を守ろうとした時と同じ様な真剣な瞳をしていて…。
だから、その顔を見た途端に、何も云えなくなった。
ミレイは…何かを知っている…。
リヴァル達が知らない…何かを…。
だから、彼に対して訊ねているのだろう。
「あなたは…ルルーシュの事を知っていた…。そして、『ゼロ』の正体を知った時、ルルーシュが『黒の騎士団』にとって必要な存在であると…ルルーシュはあなた達を裏切ってなどいないと…知っていた筈…。なのに…何故貴方は…」

その声は…怒りに満ちていて…。
そして、涙にぬれていた。
ミレイは…ルルーシュを愛していた。
そして、あの戦いの中、ルルーシュの力になる事も、ルルーシュを止める事も出来ずにいた自分が歯がゆく思っていた。
少なくとも、藤堂は…ルルーシュの力になる事も、ルルーシュを止める事も出来た筈なのだ…。
ミレイ同様、ルルーシュの秘密を知っていたのだから…。
納得できない事、どうしても解らない事、そして、本当ならそんな事をしてはいけないとは解っていても…その相手に対して責めてしまう気持ち…。
藤堂はそっと目を閉じて、小さく息を吐いた。
カレンは…その言葉に目とぎゅっと閉じて、ぐっと奥歯を噛み締めている。
「あの時…100%理性的だった…とは云わない…。ただ…あの場で私一人が庇ったところで、逆に彼のプライドを傷つけていただろう…。あの時点で、彼は彼の最愛の妹を失い、生きる目的は既になくなっていた…」
藤堂の言葉にミレイはかっとなる。
そんな事を冷静に云われても…。
「でも!それでも!」
「私自身、彼の真意を気付く事が出来なかった罪がある。ただ…あの時点では…彼の妹が…死んだ事になっていた…と云うのは事実だ…。シュナイゼルの策に誰も気付けなかったのは…確かに我々の愚かさだ…」
ミレイの頬からは次から次に流れている涙が消えない。
これまで…きっと様々な思いを抑え込んで来たのだろう。
そして、今回、藤堂と会った事で、話しを聞いたことがきっかけで…解放されてしまったのかもしれない。
確かに藤堂が云っている事は事実だけれど…。
「そうやって…そうやって、あなた達は自分の罪までもルルーシュとスザクに押し付けるの!?元々、ルルーシュとスザクがあんな風に世界に対して戦争を仕掛けなくてはならない状態を作ったのは…あなたたち大人じゃないの?ルルーシュもスザクも…まだ、18歳だったのよ!そんな子供に…あなた達はすべて…責任を押し付けたの!?」
ミレイが感情的になって、藤堂に怒鳴りつけている。
リヴァルもニーナも…。
元々、日本人に対しての気持ちは違うし、『ゼロ』に対しての感情も全く違ったものだったけれど…。
ただ、ミレイのこの血を吐く様なこの叫びを…止める事が出来ない。
「そんなあなたたち大人が作った世界の所為で…シャーリーだって…ロロだって…死ななくてよかった筈なのに…。なんで…ルルーシュがあなた達に自分が『ゼロ』だと云う事を云えなかったか…考えた事はなかったの!?」
ミレイのその言葉は…。
本当にルルーシュの孤独を表している。
「待って…ミレイ会長…。ルルーシュには…ルルーシュには…」
カレンが必死にミレイを押さえようと…やっと声を出した。
「超能力って奴?じゃあ、あなた達は自分がやっている事、考えている事、すべて…自分で否定する気なの?あなた達は自分達の意思で日本独立を望んだんじゃないの?そんな…訳の解らない超能力とやらの所為で、そのすべてがルルーシュに操られて抱いた気持ちだって云うの?そんな人たちが…反ブリタニアのレジスタンスを名乗って…人殺しをしていたの?ふざけないでよ!」

 そこまで云ったミレイは…顔を涙でぐちゃぐちゃにして、肩で息をしていた。
どれほどの間…その気持ちを抑えつけていたのだろうか…。
そんなミレイの背中をリヴァルがさすっている。
リヴァル自身、ミレイの考え方と近いだけに…ミレイの言葉に、否定的な考えを持つ事は出来ない。
リヴァルにとっても、ルルーシュとスザクは…いい友達だったから…。
ルルーシュには何度も助けられていたし、事情を知ってしまっては…自分が何も出来なかった事に『後悔』しているくらいなのだから…。
ニーナも…アヴァロンの中でルルーシュと最後に話した時の事を…よく覚えている。
そして、その時、自分でも自覚していた。
ユーフェミアへの憧れの気持ちも、ユーフェミアの仇である『ゼロ』への憎しみも、全て自分のものであると…。
どれだけ、不思議な事を云われたとしても…ユーフェミアへの思いは否定できなかったから…。
「ごめんなさい…ごめんなさい…。会長…私が…私が…」
カレンが泣き崩れて…ミレイがはっと我に返った。
流石に…云い過ぎだと思い…表情が変わる。
「紅月君…ここで泣いて謝ると云うのは…逃げていると云う事だ。自分で、まだ、あの時の事から…逃げているという証拠だ…」
カレンのその行動にそう諭したのは藤堂だった。
藤堂は確かに…表にそう云った云い訳を出していないし、こうして、罪から逃れる為の謝罪は一切していない。
藤堂の言葉に、カレンが更に辛そうな顔をする。
流石に…20歳そこそこの彼女に…それを受け入れると云うのは難しい事だ。
そう、罪を犯して、謝って終わりとなってしまえば…それはそれで解決法だし、それは手っ取り早い方法でもある。
ただ、謝った方の自己満足で終わってしまっては意味がない。
「私は…私のあの時の『罪』から逃げるつもりはない…。ただ、最後の…『アヴァロン』との戦いについては…自分の意思で戦った。ルルーシュ皇帝の真意を知らなかったから…と云う云い訳もしない。自分の理念の下、自分の意思で戦った。『後悔』はあるが、『罪の意識』はない…」
藤堂のその態度は…自分でその『罪』を背負い、そして、自分一人で…抱いて行こうとしている様に見える。
「紅月君までは…責めないでやってくれ…。彼女は…銃口を向けられた『ゼロ』の前に…立ったんだ…。彼女だけが…」
藤堂はそれだけ云って、その場を去って行った…。
その顔を彼女たちに見せる事はなかったけれど…。
でも、その表情は…そうやって、ルルーシュを…スザクを…大切に思う者達に対して、本当に申し訳ないと云う…そんな後悔の念のこもった表情をしていた。
藤堂が見えなくなって…。
ミレイがカレンの方を向いた。
「御免…カレン…。私、感情的になって…あなたに酷い事を…。私だって…ルルーシュに何も出来なかったのに…。スザクの力になれなかったのに…。全部…知っていたのにね…。御免…私、一人で帰るわね…」
そう云って、ミレイは一緒に来たメンバー達をその場に遺して…歩いて行った…。
その背中は…なんだか…
―――一番許せないのは…自分だって云っているみたいですよ…
そんな風に思えた。

END

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posted by 和泉綾 at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年09月15日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 211

命の決意



※シャルルから不完全な状態で『コード』を継承してしまったルルーシュが眠り続けて約10年…。スザクは『ゼロ』の仮面を被りながらも、その秘密を知る数少ない人物の一人で…。

 黒ずくめの恰好をして、黒い仮面を被り、表情はおろか、その素顔さえ見えない人物が
とある場所へと…足を踏み込ませる。
その姿を見つけた…既に少女から女性へと成長しているアーニャがその存在に気付いた。
「おかえり…」
その人物は彼女のその言葉に何も反応せずにただ歩いて行く。
彼女も、そんなその人物の態度に対して不快感を示す訳でもない。
そして、踵を返し、この建物の持ち主のところへと駆けて行った。
「ジェレミア…『ゼロ』が…帰ってきた…」
「そうか…。もう…準備を済ませたようだな…」
「でも…いいの?これで…本当に…」
その短い言葉のやり取りの中で、二人はその意味を充分に把握している。
そして、その言葉の中にある深い意味を他のものに知られる訳にもいかないのだ。
もし、知られたりしたら、また、世界は過剰反応するに決まっているのだ。
「仕方ない…。私達にはどうする事も出来ないのだから…」
そう、小さく答えたジェレミアだったけれど…。
実際にはこれが最良であるとは思っていないようだ。
「どの道…いずれ我々もこの世界から消える存在となるのだ。その時…もし、ルルーシュ様が目覚めなければ…見守り続ける存在が必要だ…」
「C.C.は…?」
「ルルーシュ様の求めているのは…彼女じゃない…。それは、C.C.自身も良く理解しているから…ヤツの話しを黙って聞いて、承諾したのだろう…」
ジェレミアがそう云った後、小さくため息を吐いた。
何故…このような事に…。
そんな事を考えていても仕方がないのは解っているけれど…。
10年前…ジェレミアが運び出した筈の遺体は…。
実は、V.V.からシャルルに渡った『コード』が、本人の知らない内に…継承させていたと云う…。
ただ、ルルーシュの場合、その『コード』はすぐに発動される事無く…暫くの間、生きているルルーシュの身体の中にあった。
そして、その力は行き場のないままルルーシュの中に存在し続け…『ゼロ・レクイエム』が成功したと同時に…正式な警鐘が終わった。
それ故に、そのタイムラグが影響したのではないか…と、C.C.は云っていたが…本当のところは良く解らない。
継承した本人が継承を拒否しているのかもしれないし、V.V.の『コード』自体、『ギアス嚮団』で作られたものであり、オリジナルではない。
だからなのかもしれない。
原因はともかく、今、彼らの目の前にあるそれが現実であり、それを受け入れるしかないのだ。
「本当に…いいの…?」
「それの答えは、私は持っていない…。判断するのは…ヤツ自身だ…。私が…その役目を引き受けられれば…」
ジェレミアがそこで悔しそうにそう呟いた。
恐らく、そこにはジェレミアの本音が現れている。
「でも…ジェレミア…『ギアス』が…」
「解っている…解っているのだ…。だから…せめてルルーシュ様の眠りを…」
彼の中ではルルーシュへの忠誠が、彼を支えているすべてになっているかのようだ。
あのような…世界の変革の為に…その命を擲った彼だったけれど…。

 黒ずくめの人物は…勝手知ったる場所…と云うように、その建物の地下へと歩いて行く。
本当に…住居部分になど目もくれず、そして、久しぶりに訪れたその場所になどまるで興味がないと云うかのように…。
何重にもかけられているセキュリティシステム…。
それを次々に解除して行き、最後に重そうなその扉を一瞥して、開く。
本当にかなりの重さがあって、開く時には外に聞こえてしまうのではないかと心配になる程の音がするけれど…。
それでも、防音システムは完璧で…この建物の中でも、この地下の空間以外には絶対に聞こえないようになっている。
その扉の向こうには…。
まるで、神殿の様な場所があり…その中央には祭壇の様な場所があり、その上には眠った状態のルルーシュがいた。
首筋部分で光り続けている…その『ギアス』のマーク…。
それが光っている事で、彼には『コード』があると云う事が解る。
「C.C.…準備は…出来た…」
そう云って、そのマスクを外すと…以前は翡翠色だったその二つの瞳が…『ギアス』のマークの見える紅になっていた。
「本当に…お前はバカな奴だ…。と云うか、こいつもバカだな…。本当にそんなバカ二人を残して逝っていいものなのかどうか…正直迷うよ…」
「君と二人にするよりもましだ…」
「それは…単なるお前の中にある私に対するジェラシーだろ?」
そう云ってC.C.は笑った。
そんなC.C.を見ても一切表情を変える事はない。
彼女のこんな揶揄った言葉に一々目くじらを立てていてはやっていけない。
「そんな事より!」
「まったく…こいつといい、お前といい、せっかちだな…。ルルーシュはこのまま姿が変わらないし、スザク…お前は童顔だからな…正直、実年齢の姿には見えんぞ…」
くすくす笑いながら、恐らく、この中で一番姿では若いC.C.が笑った。
「どうでもいい話しはいい…。それとも、死ぬのが怖くなったのかい?」
まるで挑発するようなスザクの言葉に、彼女が少しだけ眉を動かすが…。
ただ、C.C.からみれば、スザクは幼い子供と一緒だ。
すぐに受け流す。
「解ってはいるんだがな…一つだけ…問題がある事は…解っているか?」
C.C.が少しだけ表情を変えてスザクに訊ねる。
「解っているけれど…。でもジェレミア卿に頼る事は…」
「頼らなければ…お前は『コード』を継承できんぞ?解っているのか?」
何の事を云われているのか…スザクも解っている。
そう…。
あの時…式根島でかけられた…ルルーシュの『ギアス』…。
それが障害となっている。
あの時…ひたすら『死』を求めていたスザクに対して…ルルーシュがどんな思いでいたのか…。
今は良く解る。
そして、どんな悲痛の中、スザクにその『ギアス』をかけたのか…。
ルルーシュが眠った状態で息をしている状態が…10年続いている。
まるで、ルルーシュが『生きる事』を拒否しているかのように…。
そう思うから…今だから…解る…。
「そうだね…。ルルーシュが目を醒ます前に…君から受け取らないとね…」
スザクはそんな事を云いながら笑っている。
その言葉の意味…あまり深く考えたくないと…C.C.は敢えて考えなかった。
「本当に…何故、自分の為に力を使えんのだ…お前たちは…」

 C.C.がルルーシュの方を見てから、スザクを見た。
「それはルルーシュに云ってよ…。僕の場合、完全に自己満足だし…」
「お前が自己満足ならこいつは自分勝手な妄想だな…」
本当に口が減らないが…。
こんな風に悪口を云っていれば怒って目を醒ますのかと思ってしまうけれど…。
でも、ルルーシュは眠ったままだ。
それでも、首筋にある『ギアス』のマークは光ったままだから…確実に『コード』が活きていると云う事になる。
であるなら、仮死状態であったとしても、彼は生きているのだ。
必ず、息を吹き返すのだ。
「確かに…ルルーシュは身勝手な妄想だよね…。人に理想を押し付け過ぎ…。正直、ルルーシュの事を知っている人も、ルルーシュが知っている人も全員いなくなってから、目を醒まして欲しいなんて思っているけれど…」
「お前…それ、あと一体何年かかると思っている?」
「君の生きて来た時間を考えれば、大したことないだろ?それに僕達は君異常に長い時をこの世界で過ごすんだから…」
こっちはこっちで口が減らない。
「お前の気持ちは…本当はどこにあるんだ?ユーフェミアの事で…あれほどルルーシュを憎んでいたくせに…」
呆れたようにC.C.がスザクに訊ねる。
スザクは一瞬表情を変えた様な気がしたけれど…。
それでも、そのすぐ後には普段の表情に戻っていた。
「そうだね…憎んだ…。ルルーシュだから…あんな風に憎んだんだと思うよ…」
「また…訳の解らない事を…」
スザクの言葉に本当に何を云っているのか解らないと云う様子でC.C.が零した。
そんなC.C.にスザクは小さく笑って続けた。
「知っているかい?憎悪と嫌悪は…違うんだよ…。僕はルルーシュに対して憎悪を抱いたけれど…嫌悪は抱いた事はないよ…」
まるで言葉遊びをしているようだ。
そして、ルルーシュが聞けば、面白い漫才を見せて貰えるかもしれないと思うけれど…。
「結局、似た者同士と云う事か…」
「?」
「コイツも…きっと、今のお前のセリフと…同じ事を云いそうだ…。確かに…憎悪と嫌悪は…違うな…」
そう云って、C.C.は笑った。
「解っていたから…君は『憎んでいた』と云う言葉を使ったんだろ?流石に10年経っているんだ…。僕だってあの頃ほど面白おかしく遊ばれたりはしないよ…」
スザクのその言葉に…。
C.C.が少しだけ、表情を変えた。
「そうか…もう…10年なのか…」
C.C.のその言葉に、スザクが不思議そうな顔をした。
「もう?まだ…じゃなくて…?」
「確かに長く生きていれば、時間の感じ方はどんどん短く感じるようになる。しかし、様々な事が起きたり、辛いと思う事があると、やはり、長く感じるんだよ…」
彼女の言葉は…。
一体何を云っているのだろうか…。
スザクは思うのだけれど…。
ただ、恐らく、聞いてみたところで、スザクには理解する事は出来ないと…そんな風に思った。
恐らく、ルルーシュに対して、少なからず、特別な感情を抱いていた彼女に対して…。
そして、ルルーシュの両親と協力関係にあり、最終的にルルーシュを契約者とした事でその心を変化させた彼女…。
ルルーシュに対して、特別な感情を抱いても不思議はない。
「とりあえず…僕がなんとか…ルルーシュの『ギアス』を克服しなくちゃ…行けないんだよね…」

 スザクのその言葉…
なんだか、変な使い方だ…と思う。
ただ、それ以外にしっくりくる言葉は解らない。
とりあえず、言葉など伝わればいい…。
特に今は…。
「ルルーシュは…お前に『生きろ!』と云う『ギアス』をかけたんだ…。その先、『コード』を誰かに渡すまで死ぬ事が出来ない状態となるんだ…。一度心臓が止まったとしても、それは『死』にはならないだろう?」
C.C.の言葉に…スザクがハッとする。
確かに…。
現在の医学なら心停止だけでは死ぬ事はないが…。
ただ、心停止=死ではない事も事実で…。
「まぁ、今ならまだ、『コード』は君にあるんだ…。僕がわが身を守ろうとして君に攻撃を仕掛けたとしても君は死ぬ事はないだろう?」
スザクのその言葉に…C.C.も流石に本気で驚く。
「随分…物騒な事を云ってくれるな…」
「でも、それしかないでしょ?それに、君は今でも本当に『死』を願っているなら…そのくらい協力してよ…」
更に続いたスザクの言葉にC.C.は乾いた笑いを零す事くらいしか出来なかった。
しかし、意外と理にかなった説で…云い返す事も出来ないから…。
「お前…ルルーシュタイプでなくてよかったな…」
C.C.は厭味を込めてぼそりと呟いた。
「褒めて頂けて光栄だよ…」
「誰も褒めとらん!」
「とにかく…その先、僕が行く場所は『あの世』じゃないんだ…。なら、心配する事はないだろう?もし、ジェレミア卿に協力させてしまったら…。きっと、ルルーシュが目覚めた時に…」
スザクのその言葉に、C.C.が『はぁ…』と大きく息を吐いた。
正直、こいつらは、頭がいいのか悪いのか、優秀なのか無能なのか…。
判断が付けにくい。
自分達が本当に必要だと信じた事に対してはそれこそ、120%の力を発揮する。
そんな状態で二人がぶつかり合って、『矛盾』と云うのをリアルに見せられた気分になったのは、恐らく、気の所為ではない。
「まぁ、ルルーシュなら…怒るだろうな…。私は恐らくその時にはいなくなっているから、構わんが…。ルルーシュの事だ、100年くらい口を聞いてくれないかもな…」
ある意味笑い話に聞こえる話しであるけれど…。
あまりシャレに聞こえない。
「100年か…それは…困るな…」
スザクがそう云って笑った…。
そして、いつも身に着けていた…MVSをC.C.に渡した。
「覚悟…決めてよね…」
「誰に云っている?」
「怖くないの?」
「恐らくこの程度の痛みなら…今更だ…。云っただろ?私は…『魔女』だと…。そんな存在で、中世のヨーロッパにいたことだってあるんだ…。その時の事を考えれば、こんなもの…痛みの内には入らん…。寧ろ…何も知らずに『コード』を継承させられた時の方が…痛いと思うぞ…」
彼女の言葉は…。
結構深く突き刺さってきた。
「流石に…経験者…だよね…」
「お前も経験者になるんだ…。きっとお前の事だ…。自分が死なないからと、色々無茶する事は目に見えている…。だから一つだけ云っておく…」
「何?」
「死ぬ時の痛みは…その度に感じる…。それは決して慣れる事はない…。むやみに助ける為にその力を使おうとするな…」

 これも経験者の言葉…。
「まぁ…肝に銘じるよ…」
「ルルーシュも同じ力を持っているんだ…。必ず戻ってくる…。だから、互いにそれを承知して、決してその力があるからとむやみに命を捨てる真似だけはするな…」
彼女の言葉は…一体何を意味しているのだろうか…。
正直よく解らないけれど…。
恐らく、長い時の中を生きて来た彼女の経験からの言葉…なのだろう…。
それ以上云わないのは、云っても今の段階では解らない事だろうからだ…。
「解った…約束するよ…。君が…決めた時にやってよ…。僕はいつでもいいからさ…」
「そうだ…これだけは…ルルーシュに伝えてくれ…」
C.C.がスザクがここに来てからの時間の中で…一番真剣な顔をした。
「?」
スザクがよく解らないと云った表情をした時、彼女が僅かにふっと笑った。
「済まなかったと…。もう、過去に縛られず…ルルーシュの求めた存在と共に…歩いて行け…と…」
その言葉に…スザクはふっと笑った。
彼女らしくないけど…彼女らしい…。
そんな風に思った。
「解ったよ…。きっと…伝える…」
スザクがそう云った時…一度、ルルーシュが横たわるその場所まで近づいて行き…ルルーシュに話しかける。
「もう…幸せになっていいんだ…。だから…幸せになれ…」
そう云ってルルーシュの額に軽く唇を当てた。
そして、スザクに渡されたMVSを鞘から抜き…その光を見つめてから…その刃をスザクに向ける。
「スザク…このバカの事は任せた…」
「云われなくても…」
その短いやり取りが…二人の最後のやり取りだった…。
そして…。
その神殿の様な作りのその部屋の中は…。
真っ赤な血の海となった…。
確実に…致命傷…。
二人が倒れて行く…。
C.C.の額から強い光が放たれて…そして、その光はスザクの額へと入り込むように、二人の間に光の帯を作っていた…。
その光が消えた時…。
C.C.の身体はすっかり冷たくなっていた…。
それは…『死』を表している…。
スザクの方は…。
暫くの間、身体が光に包まれ…その流血が少しずつ、治まって行く。
その強い光が治まった時…。
最初にスザクは彼女の亡骸を見つけた。
「有難う…C.C.…。そして…これまで…御苦労さま…」
そう云って、この部屋の隠し扉を開き、彼女を抱いて、その中へと入って行く…。
それは…スザクの義務だと…スザクは考えたから…。
そして、C.C.の亡骸を弔った後…戻ってきた。
眠っているルルーシュを見つめながら…一言…小さく呟いた。
「ルルーシュ…これで、ずっと一緒だ…。君が目覚めるのを…待っているから…。いつまでも…待っているから…。もう…ルルーシュ一人で背負わなくていいし、もう、僕一人に背負わせないで…。二人で…背負って行くんだ…」
そう云って、眠るルルーシュの頬に手を添えた。
それでも…まだ、ルルーシュは目覚める気配がない。
―――時間は…いくらでもあるんだ…。でも一つだけ…約束して欲しいな…
「僕がいない時に目覚めないで…。必ず、僕が傍にいる時に…目覚めて…」
その一言を云った時…。
ルルーシュの首筋の光が…強くなり…そして…。
その光景に…スザクは涙を流していた…。

END

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2010年09月14日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 210

上に立つ者



※『人の上に立つ』と云う事がどういう事であるのか…。その場に立って初めて思い知って、そして…愕然とする者…

 ここに…一人の国のトップとなった男がいた。
なったと云うか…今となっては、『なってしまった』と云う表現の方が相応しいかもしれない。
一人の『悪役』をただ、糾弾し、その『悪』を排除する為に戦っている時は…簡単に表現すれが簡単だった。
そう、小説であれ、マンガであれ、ドラマであれ…。
『正義の味方』が『正義の味方にとっての悪』…つまり『敵』を読む人間やみる人間に『悪』だとすり込み、最後に『正義は勝つ』と云う事でカッコよくエンディングを迎える…。
しかし、それは仮想空間内での事…。
現実には、その先があり、それを支えて行かなければならないのは自分達であるという現実だ。
あの時、『超合衆国』と契約関係にあった『黒の騎士団』のリーダーであった扇は、日本国のトップとして立つ事になった。
皇神楽耶は『キョウト六家』の最後の生き残り…。
『キョウト六家』とはこれまでの日本を陰から支え、支配していた存在…。
元々表に出て来ていた枢木家ならともかく、皇家は『キョウト六家』の長として表には決して出て来ない存在…。
それ故に、彼女は日本国のトップとなる事を拒んだ。
それ以前に、『黒の騎士団』への支援を始めてからここまでの皇コンツェルンの負担してきた全てを合わせるととんでもない大きな額であり、既に、日本を支える前に皇コンツェルンの再建の方が先だった。
と云うのも、日本屈指の企業グループである皇コンツェルンが存続できなかった時…日本は当然の事、世界にも大きな影響が出る。
それまで支えて来たものは確かに大きかった。
あれほどの軍隊を備える為の基礎を作ったのは皇コンツェルンだ。
それ故に、いいにつけ、悪いにつけ、あの企業グループは立てなおして貰わなければ、これから先、世界戦争をも巻き起こしかねない程の世界への影響が大きい事が予想された。
だから、本当なら、日本国としては一時的に皇神楽耶にトップに立って貰う…と云うのが理想だったと思われるけれど。
世界情勢を考えた時に、それが出来ず、『ゼロ』が死亡発表された後、『黒の騎士団』のトップに据えられた扇要が日本国の首相となった。
『ゼロ』が死亡発表された後に姿を表した事によって、『黒の騎士団』と『ゼロ』の関係について様々な憶測を呼んだけれど。
しかし、そんな事を一々気にしていられる程、世界情勢は優しい状態ではなく、結局、有耶無耶のまま…ただ、人々の心の片隅には様々な疑念を植え付けたまま、現在に至る。
あれから『ゼロ』は人々の前に立っても一言も喋らない。
それは、ブリタニアであっても『超合衆国』加盟国に対しても同じだった。
『超合衆国』加盟していた国の中では国民のその曖昧な状態について口にする事を一方的に禁止した国もあった。
それ故に、更なる疑惑だけが膨れ上がって行った…。
日本はそれを表向きにやると、『ゼロ』の死亡発表の後『黒の騎士団』のトップとなった扇要が首相となった為に、疑惑が大きくなると云う判断で、表向きには金氏はしていなかったが…。
暗黙の了解でそれを口にする事も、オンライン上で議論する事も出来ないのが当たり前となっていた。

 多くの書類を目の前に…大きくため息を吐いた。
あの後、子供が生まれた。
あの戦争の最中にヴィレッタのお腹に宿した子供だ。
そして、ルルーシュ皇帝が倒れて、その後すぐのルルーシュの誕生日と云う日に…その子供が生まれたのだ。
その事実を知ったのは、その子供が生まれてから数年後の事だった。
ヴィレッタは知っていた筈なのに、それを夫である扇には云わなかった。
恐らく、云えなかったのかもしれないとも云えるが…。
知ったきっかけは…ブリタニアとの外交会談をする為にブリタニアに渡った時だった。
その時、ブリタニアの代表となっていた、ルルーシュの妹であるナナリーと会談した後…少しの時間、私事で会話を交わしたのだ。
ナナリーは…表向きには特別な事は出来ずとも、その、扇の子供の事をよく気にかけている。
その理由を尋ねた時…彼女は切なそうに笑って云った。
『扇首相のお子さんの誕生日…実は、お兄様の誕生日と同じなのです…』
と…。
驚きを隠せなかった。
ただ、そんなものは偶然の産物であるし、その日に生まれた子供はたくさんいる筈だ。
でも、その日に…扇とヴィレッタの子供が生まれたと云うのは…。
何となく複雑な気持ちになる。
その時…思わず、尋ねてしまった。
『俺を…恨んでいますか…?』
正直、私事の会話でもあまりに失礼な質問だと…後になって思ったけれど…。
ただ、ナナリーはその時答えた。
『別に…。私も貴方も、ただ、お兄様の策略に乗せられただけです。だから、私はお兄様を恨んでも、貴方を恨む筋合いはないでしょう?』
静かに笑っていた。
ナナリーの中では扇は恨む価値すらない…と云う風に云われているような気がした。
少なくとも、扇にはそう見えた。
恨む事さえして貰えず…自分であの時の自分のやった事と、今、自分のやっている事の矛盾にぐるぐると考える事しか出来ず…。
そんな顔をしていたら…
『扇首相…誰かに恨んで貰おうなんて…甘えていては国は…守れません…。私も、貴方も、お兄様からこの世界を託され、そして、その為の力を与えて頂いたのです。私も扇首相も本来なら、トップに立てる器ではない…と云うのは、互いに自覚出来ているのでしょう?その為に、私にはシュナイゼル異母兄さまを…貴方様には皇神楽耶さまを…そして世界には…『ゼロ』を…』
そう云われて…扇は、思う。
あの頃やった事、今やっている事…。
全てを自分で受け止めて、責任を持たなければならないのだと…。
それは…自分の中でもばかばかしくなってしまう程…途方もない話しだと…思ってしまった。
しかし、その時の扇の中にもあったのは…。
―――時間は戻らない…。死んだ人間は還って来ない…。
それだけだった。
あの時感情に走ってしまった事は認める。
しかし、今でもあの時の『ゼロ』のやり方、そして隠された真実については…。
納得出来ていない。
それは…この先、どれほど彼の事情を知ったところで、変わらない…そう思っていた。
そんな扇を見ているナナリーの表情は…少しだけ…本当に少しだけ…。
いつもの温和な雰囲気が…歪んでいた…。

 もうすぐ、ルルーシュ皇帝が『ゼロ』に倒された日となる。
日本は当時、ルルーシュ皇帝の直轄領となっていて、その、舞台となった…。
ルルーシュ皇帝に作り上げられた、その革命劇の舞台…。
あれから何年も経っていて、各国の主要メンバーだけでなく、ある程度の情報通の一般人でもあの革命劇がどう云った者であったのかを知るものが増えてきた。
当時から既に、様々な形でオンライン情報媒体が発達していたから…。
そして、革命劇は確かに世界に配信されていたけれど…。
あの出来過ぎた革命劇は、様々な憶測を呼ぶ事になり、世界が落ち着きを取り戻し始めた頃から…。
政治評論家、戦争評論家は勿論、劇画監督や映画監督までも、あの出来過ぎた演出について論じるようになっていた。
そうなってしまうと、緘口令を敷く方が難しいけれど…。
ただ、裏から政治犯として捕らえられる者が少しずつ出てきた事は事実だ。
政府と云うのはマスコミをも操る。
それまで、頻繁にテレビに出演していた者をいきなり抹殺してしまうと目立ち過ぎるが…。
ただ、『病気療養中』と云うその一言である程度の国民を黙らせる事は出来るし、事情通になれば、どう云う事になっているかと云う事が解ってしまうから、口をつぐむようになる。
実際に反体制組織を作り上げて、抵抗運動がまともに出来るようになるまで、相当の時間と労力が必要である事は扇がよく知っている。
そして、それだけのものを懸けたとしても、それを引っ張り上げ、120%の力を発揮させるだけのリーダーが必要であり、そんなリーダーが生まれるのはそう滅多にない。
『黒の騎士団』があれほどまでに大きくなったのは『ゼロ』がお膳立てしていたからだ。
実際には普通の学生だった少年、一人があの組織を支えていたのだ。
それを扇が引き継いだ時、その力量差が表沙汰にならなかったのは、あの時、ルルーシュ皇帝反対派となったシュナイゼルが指導者となったからだ。
『黒の騎士団』内部…特に中枢部ではその力量差が既にばれていた。
本当は…扇自身、あの時はヒーローものの話しが、あの、人の目に触れている時はスタートラインまでの話しであり、本当のドラマはそこから始まり、そのスタートラインに立ってから先の方が重要であり、大変なことであると…解っていた筈なのだ。
それでも、今、自分が日本国の首相の椅子に座っていると云う事に…正直、自分のバカさ加減を思い知る。
全てをルルーシュの責任に出来た時は良かった。
それに同調してくれる者が多数いたし、責任の所在、誰が悪であるのかと云うのが解り易い形だと、人は簡単に動くのだ。
しかし、今はそのルルーシュの役目を自分が担わなければならない…。
ルルーシュはその細い身体で世界のそれとなったが、扇は、現在、日本国の小さな島国でその役目を果たさなければならないが…。
それでも、その権力を使って自分の一番嫌っていたやり方をせざるを得ない状態に陥っている。
自分の力量を…解っていた筈だ。
それなのに…。
否、それは、自分が選んだ道であり、自分が責任を持たねばならない現実だ…。

 日本国のファーストレディとなったヴィレッタ=ヌゥ…。
彼女もファーストレディとなったことで様々な形でその過去が明らかにされた。
勿論、様々な部分で覆い隠さねばならない事実はあった。
ああ云った、戦争の中で叩いて埃の出ない者などいない。
それでも、ナナリーにも同じ事が云えるが、政治の為に隠さなければならない真実がある。
その真実が公表されて、周囲からその真実に対しての批判を受けた方がまし…と思える程の大きな罪を抱えている者たちばかりだ。
それでも、その罪を忘れずに、それでも誰にも懺悔出来ない状態のまま、自分達は表舞台に立たなければならない。
ナナリーがフレイヤのスイッチを押していたと云う事実…。
それが、表沙汰になれば、日本国民は決して黙っていない。
そして、当時、日本の地に暮らしていたブリタニア人達だって黙っていない。
同胞が暮らしているその地に…彼女は大量殺人兵器のスイッチを押し続けていたのだ。
それさえも今はルルーシュの責として語られている。
矛盾があると云っても…それを全てごり押しする形で…。
それが政治だと云われればその通りだが…。
良心の呵責がある者であれば…通常の『人』の神経を持つ者であれば…それに耐える事は出来ないと思えるほどの惨劇だ。
その真実を訴える者は…国境関係なく捕らえられた。
現在、世界に存在しているのはあの時、ルルーシュ皇帝に対して多かれ少なかれ、敵対の意思を持った国々だけだ。
そんな真実が公となり、彼らの『正義』が覆された時、また世界は混沌の時代に戻ってしまうのだ。
世界に現存する国の中に、あの時の戦争の敗戦国はない。
全てがルルーシュ皇帝を倒す為に力を合わせたのだから…。
敗戦国がない戦争…。
この言葉にどうしても違和感を抱いてしまうけれど…。
結局、作り上げられた革命だ。
その中には必ず矛盾は生まれて来るし、所詮人間のやっている事で、完全なる正義も完全なる悪もない。
実際、戦争であった場合、敗戦国が『悪』とみなされて歴史が創造られる。
決着がつかない停戦状態と云うのであれば、敗戦国はないけれど、停戦状態と云う事は戦争は終わっていないのだ。
でも、現在、戦争は終わっていて…敗戦国がない…。
『悪』として糾弾できる相手は既に死んでしまっていて…。
だからと云って、当時、ルルーシュに従って戦っていた兵士達を糾弾したところで何もならない。
当時、ルルーシュがまとめ上げていたブリタニアはルルーシュの独裁国家…。
否、ブリタニアと云う国にはルルーシュが皇帝となる前から民主主義などなかった。
そんな中で、最高責任者が既に死んでしまい、責任追及できる相手がいない。
そうなると人々の関心は…あの戦争の裏側には一体何があったのか…と云う事だ。
あまりに解り易く矛盾が並んでしまっている。
その矛盾を訴える声が大きくなれば、また、現在の政府に対しての不満や不信が高まり、更には内乱となる可能性だってあるのだ。
現在、世界の国々で国民の不満と不信が集まった形で内乱が起きた場合、それを何とかできる国は一つもない。
それ故に、そう云った矛盾を訴える声は…抑え込むしかなかった。
そして、見た目にも、実質的にも弾圧と云う形となる。
扇は…それをせざるを得なかった。
そして、それは扇だけではなく、他の国々でも同じだった。

 結局、ルルーシュ皇帝への敵意だけが大きくなり過ぎて、将来展望が全くできていなかったと云う事だ。
ルルーシュ皇帝と刃を交える以前から、自分達はどうしたかったのかと云う事を一切考えていなかった事が現在の状況を作り上げた要因だ。
理念のない独裁程始末の悪いものはない。
やっている事はルルーシュ皇帝と大して変わらないのだ。
ポリシーがない分、ルルーシュ皇帝よりやっている事はタチが悪い。
古今東西、革命を起こすにしても、クーデターを起こすにしても、独立戦争を起こすにしても…。
その先にみる理想がある筈なのだ。
その理想を忘れてしまっていた、あの時の戦争だ。
「こんなはずじゃ…なかった…」
扇の口からこぼれた。
それは…政治家として、国のトップとして絶対に口にしてはならない一言だ。
国民は国のトップの施策の下、生きて行かなければならないのだ。
それが、見通しが甘くて、失敗してしまった…。
その時にその一言は絶対に云ってはいけない。
国のトップがそんな事を云ってしまっては、国民はどうしたらいいか解らない。
国を背負うと云う事…。
それは…一体何をしなければならないのか…。
あの時、武器を手にとってルルーシュ皇帝を『悪』として戦った。
あの時求めたものは…一体何だったのだろうか…。
あの戦争の直後に生まれた…自分の子供…。
その後も戦災孤児は増えて行く一方だった。
と云うのも、あの『フレイヤ』の破壊力…。
あの兵器で傷付けられた者達に多くの後遺症が残ったり、あの時被爆して両親を亡くした子供たちが多くいた。
あの『フレイヤ』が空中で爆発する度に、地上には様々なものが降り注いだ。
その際に、人体に悪影響のある灰やガスが充満していた。
自分の子供は…あの時、ヴィレッタは蓬莱島にいたから…その被害を受ける事はなかった。
その事実だけで…首相への非難の声はある意味仕方がない。
しかし、それを許しては、様々な形でそれが波及してやがて、大きな力となって混乱の元となる。
求めたものは…一体何だったのだろうか…。
今になってそんな事を考えるなど…。
本来なら政治家としてあり得ない。
そして…いつの間にか…自覚していた。
あの時…自分は何のポリシーもなかったと…。
ただ、裏切られたショックと衝動だけで…戦っていた…。
否、ルルーシュは何も『黒の騎士団』を裏切ってなどいなかった。
ただ、自分の求める為の手段を遂行する為の存在として見ていた事は事実だったけれど…。
しかし、それは日本解放を求めていた扇達だって同じことだ。
苦しい…。
辛い…。
逃げ出したい…。
今の扇の素直な気持ちだ。
表向きには民主主義を訴えて、そして、裏では政府にとって都合の悪い情報を流す者達を闇から闇へと葬り去っている現実…。
いずれにしても、この先、自分は殺される…そう思っていた。
確かに、この状態で命の危険を感じない者などいないだろう。
自分のやっている事に…自覚はある。
恐らく、自分より年若い彼は…もっとストレートに受け止めていた筈…。
それをもお首に出さなかった彼は…偉大だと…思ってしまった…。
あの時は確かに感情的になって、彼を『悪魔』の様に云ってしまったけれど…。
でも、シュナイゼルの出した『ギアス』にかかった可能性のある人物のリストの中には…自分達の名前はなかった。
―――今なら解る事が…どうして、本当に解らなくてはならなかった時に…気付かなかったのか…。
今更だ。
誰がその話しを聞いてもそう云うだろう。
そして、扇を庇う者は出ては来ない事は予想される。
今の扇に出来る事は…正直…何も解らなくなっている。
頭を過って行くのは…後悔の詰まった…過去の記憶だけ…。
それでも…時間は容赦なく…流れて行く…
―――なぁ…『ゼロ』…。もし、今なら俺を…討ってくれるのか…?
そんな事を考えた時、自分の甘えた心に皮肉な苦笑しか出て来なかった…

END

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2010年09月09日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 209

奇跡が見せた幻



※『ゼロ・レクイエム』からかなりの時間が経っているその時代の、リヴァルが…。街を歩いていて…

 この時期になると…彼はいつも、ある人物達を思い出す。
あの出来事の後、リヴァルはこの時期になると…思い出す。
あれから随分、年月が経ち、その時間の流れの中で新しい友達も出来たし、恋人も出来た。
今では妻子持ちで、小さな喫茶店を開いている。
あの、高校生時代、ずっと片想いだったミレイ=アッシュフォードは今では、世界的にも有名なベテラン女子アナとして活躍中だ。
元々、天気予報を伝えるのが仕事だったけれど…。
あの戦争の中で、彼女はアナウンサーとしての能力を身に着ける事となり…。
今でも、世界中を飛び回って世界に向けて、様々な情報を発信している。
本当にバイタリティがあると思う。
そして、ニーナは…。
彼女が開発して、多くの犠牲者を出した『フレイヤ』の犠牲者の冥福を祈りつつ、あの爆発で大きな後遺症を背負った人々の為の研究を続けている。
あれだけのエネルギーを有効利用しつつ、そのエネルギーを後遺症を背負ってしまった人たちの治療の為に役立てようと、今もアッシュフォード家傘下の研究所で日々、研究を進めている。
カレンは、あの戦争の後、世界の戦争によって貧困や飢餓に苦しむ人々の援助団体を、日本の皇コンツェルンの援助を借りて、設立して、世界中を飛び回っているという。
そして、ナナリーは…。
現在も不安定な世界の中で、世界で最も国力のあるブリタニアの代表として現在も世界の為に尽力している。
本来なら、民主主義の国で、これほど長い間、一人の人物が国の代表を務めると云う事は、独裁国家でもない限りあり得ない。
しかし、混沌としている世界情勢の中、ブリタニアの代表と云う立場は何のうまみもないポジションとなっている。
ナナリーが、あのルルーシュ皇帝が倒れた後、シュナイゼル、『ゼロ』と共にそう云ったシステムを作り上げた。
権力者には権力者の為のうまみがある。
だから、野望を持つ者はその権力にしがみつこうとする。
しかし、ナナリーはブリタニアの代表と名乗ってはいるものの、国土、人口、資金、技術力を考えた時、一人の人間にその権限を持たせる事の危険性を注視したのだ。
そして、ナナリーはブリタニアの執政の中で法案にしても予算案にしても成立させる為には3つの条件をクリアにしなければならないと云うシステムを作り上げた。
一つは、ナナリーがブリタニアの代表となった際に設立させたブリタニアの議会。
まず議会でその法案、予算案を審議して議会が承認した場合、次は納税者である国民にそれが発表される。
次に、その発表された法案、予算案について国民が賛成か、反対かを投票する。
その意思表示は国民の義務であり権利であるとして、納税者であれば15歳から、納税していなくとも成人となる20歳からその投票権を与えられ、国民に審査させる。
そして、そこで賛成と得られたものがシュナイゼル、『ゼロ』、ナナリーによって審議されて、最終的に代表であるナナリーがその結果を国民に発表する。

 確かに、まどろっこしい方法ではある。
だからこそ、毎年、予算案は単純明快であり、法案も誰もが何の為の法律案であるかを解り易くしたもの以外は却下されるようになった。
それ故に、ブリタニアとは非常に解り易い国となった。
価値観がどうであれ、満場一致で人の迷惑となる行為を犯罪となったのだ。
だから、国民に非常に解り易い法律となった。
但し、10年に一度、法律の大改革を行う。
その年だけは、それこそお祭り騒ぎのような状態となる。
基本的にナナリーが代表となった時点で定められた法律をベースに、生活に必要であるとか、時代の変化によって犯罪の質や種類が変わってきた事で法律解釈が変わってしまっているものなども出て来る。
そう云った法律を全て整理して、必要なものは残し、内容変更の必要な法律は審議して作り直し、時代にそぐわなくなった法律は削除する…。
10年に一度くらいやらないと、膨大な量の法律となってしまい、解り難い者になってしまう。
だから、法律に携わる職業の人間は、毎日が勉強だし、毎年、加えられて行く法律と共に、10年に一度、整理される法律をまた、把握し直さなければならない。
確かに大変ではあるけれど…。
そのお陰で、国民が法律に詳しくなった。
それ故に、警察の取り調べであれ、裁判であれ、ただ、専門家のいいなりになって…と云う事がなくなった。
どこの国へ行っても、法律に関しては専門知識が必要で、裁判となると、いかに優秀な弁護士を付けるかに…かかっている…。
最近のブリタニアではそう云った事に関しては、非常に解り易くなったおかげで、話しがスムーズに行くし、裁判所も民事である場合には、白黒つけると云うよりも、間に入って、冷静に話し合いができる場を作る…と云うポジションになってきた。
刑事に関しては、専門家が立ちあって、罪と刑罰のバランスを取る…と云った形になっている。
そのなかで、取り調べ中のビデオや音声テープが公表される。
取り調べの際にも弁護士と検事が立ち会い、その取り調べが正当に行われたものであるのか、監視体制を強化している。
証拠がこうして残る事により、その犯罪者もウソを吐けば、その後、新たな証拠が見つかった場合にはそれ相応の処罰が成されるし…。
誤認逮捕の場合は、全ての資料が残り、その資料の管理、管轄はブリタニア中王政府代表者…つまりナナリーやシュナイゼルが管理する事になる。
そんな事までやっているのだ。
月収が一流企業のトップ並みに貰えてもしんどいに違いない。
ナナリーはそれだけの報酬を受け取ってはいない。
過去10年の国民の平均所得の平均を調べて、その平均年収がナナリーやシュナイゼルへの報酬となっていた。
流石に外交で必要な物品に関してはその報酬以外から出されているが…。
これだけの大国の代表でありながら、国際的には仕事量を考えた時には最も年収の少ない主権国家の代表でもあった。
それを定着させたのはナナリーだ。
その後任がそれを変更させたら国民が黙っていないし、国のトップが強引にそのシステムを変えたら、今度は超大国であるが故に、周辺諸国が警戒を始める。
それだけのシステムを作ったナナリーの手腕も大したものだが…。
それ故に、後任者が出て来なくなったのもまた事実だった。

 そんなブリタニアの中で平凡に生きているリヴァルであったが…。
今年はその10年に一度の法律の見直しの年だ。
とにかく、日々、様々な資料が送られて来て…。
そして、それに目を通して、自分の中で何が必要なのか、何が不必要なのか…考える。
シャルル皇帝の時代、完全独裁で、国民には政治がみる事が出来なかった。
ルルーシュ皇帝の時代には、完全に恐怖政治が敷かれていたから、一般国民がそんな事を考える事さえできなかった。
そんな時代の後だったから、国民全体が、その、黒い独裁を見てきただけに、熱心なものが多かった。
勿論、温度差はあったし、意見も様々だった。
それでも、今のところはこのシステムがうまく動いている。
「今年も…お祭り騒ぎが始まったわね…」
「でも、こうして、自分達の事は自分達で考える事が出来るってのは…幸せだろ?」
ルルーシュ皇帝を個人的に知り、本当はそんな人間じゃない事を知るリヴァルだったけれど…。
ルルーシュと親友だったから…ルルーシュの事は良く解っている。
きっと、この今のブリタニアを見ていて、ルルーシュは笑っているだろう。
ルルーシュがブリタニアに対して複雑な思いを抱いていたのは、ルルーシュが皇帝となる前から知っていたし、何故…あんな事を…などと、あの時には考えてしまったけれど。
こうして、時間が経って、全てを冷静にみる事が出来るようになると…。
ルルーシュらしい手法だと思えてきた。
「確かに…。私もあなたも…シャルル皇帝、ルルーシュ皇帝の時代を…知っているんですものね…。今にして思うと…ルルーシュ皇帝が皇帝でいた時間って本当に短かったけれど…」
リヴァルの妻がそう云った。
確かに…あの時は暗黒に見えたのだけれど…。
実際にルルーシュの皇帝在位の期間とはほんの数ヶ月…半年足らずだった。
その間に世界を全て敵に回せるルルーシュとは…一体どんな奴だ…などと、今なら思える。
「本当に…短かったよな…。あんな短期間に世界すべてを敵に回せるだけの政治力があるなら…逆も出来た筈…なのにな…」
リヴァルがぼそりと呟いた。
確かに…今のナナリーが代表になったこのブリタニアは、他の国と比べれば確かに安定しているだろうけれど…。
しかし、今のシステムだって…いつまで続くのだろうか…と思える。
云い方は悪いが…ナナリーはルルーシュほどのカリスマはない。
現在のところ、シュナイゼルと『ゼロ』のフォローによって、今のブリタニアを支えている状態だ。
「あなたは…時々、そうやってルルーシュ皇帝の事を…よく知っているかのように云うのね…」
リヴァルはルルーシュが学生の頃、リヴァルと仲の良かった同級生であった事を、妻にさえ伝えていない。
「別に…そんなんじゃないよ…。たださ…今のナナリー代表ッて、ルルーシュ皇帝の妹だろ?それでも、ルルーシュ皇帝程のインパクトは…ないよな…。そう思っているだけだ…」
適当に選んだ、適当な言葉…。
勿論、彼女がそれで納得出来るとは思っちゃいないが、それでも、そこまで深く考えての言葉でもないと判断する。
「ちょっと…出かけて来る…」
「どこへ行くの?」
「散歩だ…。店の方は…頼むな…」

 そう云って、リヴァルは、法律改定のニュースに沸き上がっている街中を一人…歩いた。
ルルーシュならどうしていただろうか…。
こんな風に考えてしまうのも、この時期だからだろう。
ルルーシュが『ゼロ』の刃に倒れた時期に、このお祭り騒ぎが一番盛り上がる時期だから…。
それでも、リヴァルは町のこの騒ぎに参加する気にはなれない。
それでも、法律のあり方を考えている一人である事は確かだ。
「こんなお祭り騒ぎ…会長なら…楽しむんだろうな…。で、ルルーシュはその縁の下の力持ちやって、その為に俺達がそれぞれに割り当てられた仕事をして…」
懐かしむように…そんな事を呟く。
ブリタニアに戻ってから、日本には一度も足を運んでいない。
アッシュフォード学園も、あの戦争でほぼ半壊状態になり、そして、日本が主権を取り戻した時点で、日本政府に接収された。
表向きにはブリタニアが負けた事になっていたからだ。
あの時、ブリタニアの正規の旗を持っていたのはルルーシュだったから…。
だから、『超合衆国』が戦勝国、神聖ブリタニア帝国が敗戦国と云う位置づけとなった。
第三者肩見て、本当にばかばかしい戦勝国と敗戦国の位置づけだったけれど…。
ルルーシュと『ゼロ』がどう行った経緯の約束をしていたかは知らないけれど…。
最終的にはルルーシュのお膳立てによって『超合衆国』は戦勝国となっていたのだ。
あの『ゼロ』の演出だって、ルルーシュが考えたものに違いないのだから…。
あとから、ニーナから話して貰った事がある。
『本物の『ゼロ』はルルーシュなの…』
と…。
正直、聞いた瞬間には驚いたけれど…。
その直後に納得も出来た。
何故、気付かなかったのか…と…。
リヴァルも幼いころではあったけれど、ブリタニアの皇子と皇女が日本に送られた…と云うニュースは何となく覚えていた。
ブリタニア人としても、そこまで礼を払う必要のない日本に対して、そして、殆ど戦争状態に入りつつあった日本にブリタニアの皇族を送るなんて…。
ブリタニアとはどういう国なのか…などと、子供なりに考えていた。
ブリタニアと云うのは差別を悪とはしていない。
ブリタニア人が最も優れており、他の国の人間はブリタニア人より劣る。
そして、力を持つものが持たないものを差別する。
それが至極当然だった。
エリア11となった日本に渡ってから、様々な物を見ている内に、リヴァルの中にはそう云った差別意識と云う者はなくなって行った。
日本人でもリヴァルが好きだと思う人間はいるし、ブリタニア人であってもバカだと思うブリタニア人はいる。
リヴァルは国是とかそう云った事関係なく、個人を見ていたのだ。
だから、スザクが転校してきた時も、『大変そうだな…』とは思ったけれど、スザクがイレヴンだからと差別する気はなかったし、何より、ミレイ自身が日本に対してあまり負の感情を持っていなかった事も影響して、生徒会ではニーナ以外は日本人に対して負の感情を持っている者はいなかった。

 そんな事を考えながら歩いていて…。
街中で巨大なスクリーンをぼんやりと見ていた。
ミレイが、なにやら、国内のある地域の様子を伝えている。
相変わらず、人気のアナウンサーらしい。
流石に年を重ねているが…人気は不動のもののようだ。
どうやら、ペンドラゴンから離れた地方都市の様子を伝えているようだ。
その街には…たくさんの人が暮らしている様子で…。
ミレイはその街ゆく人たちにインタビューをしている。
どうやら、話題は今年行われる法律の改定の話しだ。
行き交う人々がミレイがインタビューをしている。
その行き交い、ミレイに声をかけられた人々の反応も様々だ。
そんな光景を見ながら少しだけ、笑みが零れてしまう。
「相変わらずだな…会長…」
そんな事を呟いて、立ち止まってそのスクリーンに見入っていた。
明るいキャラクターは…相変わらずなようだ。
あの頃から、ずっと、その姿勢が変わっていないようだ。
リヴァルはミレイのルルーシュへの気持ちを知っていたから…。
この時期の彼女の姿を見ていると…。
明るく振る舞っている彼女を見ていると…。
少しだけ、胸が痛くなる。
それは…あの時代であの時代の変革を生んだその存在を直接知っているものだから抱く感情か…。
リヴァルは…たった一人、平凡な一国民となった。
本当に…あの頃の生徒会メンバーを考えた時…自分だけは取り立てて目立つ事もしていないし、特別な事もしていない。
でも、こうした平凡な生活がこれほどまでに尊いと思えるのは…あの時を知るからだろう。
そんな事を考えながら…スクリーンを見ていると…
「え?あれ…」
その、まちなみの風景を映しているスクリーンの中に…見覚えのある面影が映ったように見えた。
まさかと思う。
あり得ないと思う。
それでも…。
幻であったとしても…それは…何かの奇跡がリヴァルの目に映してくれたのかもしれない。
そう思えた。
ひょっとしたら、あの中でたった一人、こうした平凡な幸せを掴んだリヴァルが…こんな暗い顔をしていたから…。
だから、何かが奇跡を起こしたのかもしれない…。
「アイツ…相変わらず…心配性だよな…。人を邪険にしている割にはさ…。なんで、あの時…俺も一緒に連れていかねぇんだよ…。俺も一緒に連れて行ってくれりゃ…殺されたって、止めてやったのにさぁ…」
そんな事を…零した。
そう零した後…目の前がかすんで行くのが解った。
「シャーリーの気持ち…考えたことあんのかよ…。ユーフェミア殿下の気持ち…考えたことあんのかよ…。あいつら…ホントにバカだよ…。特に…お前はさぁ…。頭いいくせに…なんで…そんなにバカなんだよ…」
そう、一言零して…ぐっとこぼれそうになった涙をぐっとこらえて、もう一度、スクリーンを見た。
既にそこには…。
その幻はなくなっていた。
ミレイが、街ゆく人たちにインタビューを続けていて…。
どうやら最後のインタビューだったようで…そのコーナーを締めくくろうとしていた。
そのコーナーが締めくくられた時…。
リヴァルもそこから踵を返して歩き出した。
自分に与えられた…平凡な幸せのある…その場所へ…

END

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posted by 和泉綾 at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年09月04日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 208

流れる時間と目に見える世界



※『ゼロ・レクイエム』から10年後のナナリーのお話しです。定期的に『ゼロ』が各国の国家元首に世界情勢の話しをしに来ます…。今年はナナリーのところに来る時期がこの時期に重なってしまったようです…。(注:ナナリーはブリタニアの国家元首です。そして、『ゼロ』の正体を知らぬ振りを通しています。相変わらず、世界は様々な問題を抱えています。)

 一通りの書類に目を通し、そして、パソコンに送られてくる膨大な量のデータに目を移す。
こんな事を…自分がやっていると云うのは…未だに信じられない。
かつては…。
アッシュフォード家に匿われて、隠れ暮らしていたとは云え…アッシュフォード学園で…笑っていたのに…。
最近、心の底から笑ったのは…いつの事だろう…。
そんな事を考えてしまう程…忙殺されている。
既に、誰かの前で笑顔を見せた事があっただろうかと思えてしまう程だ。
ブリタニア…。
それこそ、様々な形で世界を翻弄してきた、大国…。
ナナリーの兄であるルルーシュが皇帝となった時に、全ての植民エリアを解放したから、植民エリアと云うものはなくなっている。
しかし、あの、皇帝ルルーシュが『ゼロ』によって世界の目に晒された状態でその命を落とした後も…。
ブリタニアの世界に対しての影響力は大きい。
どれほど、平等を唱えたところで、全員全て、平等などと云う事はあり得ない。
全ての人々に優しい世界なんてあり得ない。
それぞれが、人としての意思を持ち、願い、希望、喜び、怒り、愛情、憎しみを抱いている限り…。
其々が何かを我慢しなければ世界は成り立たない。
あの時、世界はルルーシュの何に対して非難の声を上げていたのか…
今となっては、何故、あのような集団心理が働いてしまったのか…。
それも解らない。
正直、今、この世界に存在している、国家元首達は、あの時のルルーシュ皇帝が起こした世界戦争を…殆どはき違えている。
世界は『ゼロ』のお陰で救われたと…本気で思っているおめでたい国家元首もいるものだから、話しがとっちらかって面倒な事になっているのも事実だ。
戦争の根を…現在の世界は…何も知らぬまま、ただ、『悪逆皇帝ルルーシュ』と『ゼロ』の二人の名前によって、何とか、保っているようなものだ。
そもそも、『超合衆国』の国家元首達の殆どが、植民エリアになってしまい、政治の中心に立つ存在達が国外に亡命…。
そして、自国民がその支配に苦しむ中、何をする事も出来ず、亡命政府として自国を守れずにいた。
植民エリアになる事を恐れた国家元首達は、自らの力量ではどうにもならないと、『超合衆国』に参加してみたものの…。
結局、ルルーシュ皇帝によってあっさりと植民エリアは解放されてしまい、植民エリアになるかもしれないと云う恐怖から逃れた時点で、本来なら『超合衆国』に名前を連ねている理由さえなくなっていた筈なのだ。
元々、ブリタニアの侵略から逃れる術として存在し、その名前を連ねて来た『超合衆国』だ。
今にして思うと、『超合衆国』代表であった皇神楽耶の『永久に軍事力を放棄して、どの国にも属さない『黒の騎士団』と契約して、その他国の軍事力の脅威から守る…』との発言は…。
とんだお笑い草だとさえ思えてくる。
―――『黒の騎士団』の幹部はすべて…日本と中華連邦の人間で占められていたのだから…。その時点で、他の国は、ブリタニアから守られたとしても、日本と中華連邦に自国の軍人と国民の命を人質に取られているようなものだ…

 流石に、あれから10年の月日が経っていると…。
あの時には思いもつかなかった可能性が、見えて来るものだ。
当事者でいる内には見えない物が…後になって、見えて来る。
あの時、確かにブリタニアは恐ろしかった。
あの少年皇帝が世界に対して脅迫していたのだから…。
しかし、あそこまであからさまに恐怖を与えられていると、本当に集団心理が働きやすく、そして、心地のいい『正義』と『悪』に分類される。
あの時、自分の意思でその『正義』を信じて『超合衆国』の一員として尽力で来ていた国がどれほどあっただろうか…。
ナナリーとて、あの時、完全にルルーシュとシュナイゼルの勢いにのまれていた事は…。
最近になって認めている。
あの時、本当に冷静な目で世界を見続けていたものが…一体どれほどいたのだろうか…。
時々、あの時の戦争の記録をフォトエッセイで出版しようとする戦場カメラマンがいるけれど…。
あの時の『超合衆国』の存在意義や、自分達が一体何をしていたのかを考えて、その本が売り出されて、批判を浴びる事を恐れた執政者達はことごとく、それらの本を『有害図書』として発売禁止にした。
特に、あの時、『超合衆国』の中心にいた日本と中華連邦ではそう云った動きが著しい。
主権国家であり、民主主義国家である筈の日本で、このような出版物に対しての弾圧が公然と行われるようになっていた。
それ故に、政府の中枢の人間に目を付けられた、あの戦時下で戦場カメラマンをやっていた人間が行方不明になっていると云う噂も聞く。
聞くところによると、何者かがそう云った存在を地下に隠して、そして、安全な場所へ送り届けていると云う噂も聞くが…。
それでも、毎日流れる報道の中には国家に対しての反逆行為を行った者として名前を晒され、長い時間の懲役刑を課せられている者もいる。
―――日本がこんな国になってしまったなんて…。一体…どうしてなのでしょうか…。
新聞を読むたびにそう思えてくる。
ナナリーだって、日本に対しては愛着があるのだ。
ブリタニアから日本に送られ、こうして、現在の様に国家元首となる前まで、そこに暮らしていた時間が長かったのだから…。
そして、今でもあの時のなじみの存在達が…日本で暮らしているのだから…。
今のナナリーの立場では気易く会いに行く事も出来ないのだけれど…。
あの時、ルルーシュを相手に共に戦った存在が…。
日本の首相をしている。
そして、その首相の妻はブリタニア人であると云う事だけが公表されているけれど…。
それ以上の事は恐らく公表できないのかもしれないと云うのが、ナナリーの見解だった。
実際に、やっている事を見れば…当時、『超合衆国』に名前を置いていた国の当時の代表者であれば、ある一定の理解を示すだろうし、自国の事ではないから、どうでもいい事として処理されるだろうが…。
日本人にしてみれば…心中複雑になるに違いない。
後になって出てきた、当時の、ルルーシュの残した記録の中には…『黒の騎士団』の扇要がブリタニアの軍人で、その後、『ゼロ』のその秘密を知り、その功績で貴族となったヴィレッタ=ヌゥが恋人関係に会った事まで記されていた。
恐らく、ルルーシュ自身、それは何れ、役に立つ情報として、C.C.に残したものだったのかもしれない。

 何故、そんな風に思えるかと云えば…。
今の日本はあれほど、独裁を非難していた扇要によって強固な独裁を敷かれているからだ。
ルルーシュも常に自分の命の危険を自覚していたのだろう。
そして、振りあげてしまった剣をきちんと振り下ろす為にあらゆる可能性を考えて、その為の策を施していたのだ。
あの当時、確かに、ルルーシュがそう云った情報を残して師匠のない相手と云うのはC.C.くらいしかいないだろう事は…想像に難くない。
本当なら、スザクと一緒に…と考えていただろう。
スザクがいたなら…あれほどまでに『ギアス』を乱用する事もなかっただろうと…今更ながら、ナナリーは思う。
既に、ルルーシュのその年齢を超えているナナリーだ。
あの頃とは違った形で物事を見る事が出来るし、様々な物を見ながら、いいにつけ、悪いにつけ、学んで来ていた。
本当に…後悔という言葉が本当に安売りされているかのように、ナナリーの中では存在し続けている。
―――コンコン…
そんなもの思いに耽っていると…ナナリーの執務室の扉がノックされた。
あの戦争の後、確かに一時的な平和を取り戻したものの、それでも、一つの問題が解決しても新たな問題が現れる…と云うのをしっかりと見せつけられている状態で…。
この執務室に来る事が出来るのは本当に限られた人間だけだ。
まず、補佐役となっているシュナイゼルとコーネリア、護衛役兼世話係になっている篠崎咲世子、そして、『ゼロ』だけだ。
現在のナナリーの状態はそのくらい、危険の中に身を置いているのだ。
確かに、それまで『悪逆皇帝ルルーシュ』という共通の敵がいたからこそ、団結出来ていたものが、その敵がいなくなった時点でその関係が簡単に瓦解すると云うのはある程度、政治に携わっているものであれば、すぐに解るものだ。
「どうぞ…」
ナナリーがそのノックに声をかける。
ノックの音で、誰がノックをしているのか…解っているから、敢えて、その相手が誰であるか、確かめる事はしない。
ゆっくりとその扉が開く。
『失礼します…。相変わらず…相手が誰なのかも確かめずに返事されるのは…』
その存在が、そう、声をかけてきた。
普段、あまり私用で話す事はない…その相手…。
でも、互いがよく知っているその相手…。
「あなたなら…私が何故確認しなくても平気なのか…お解りでしょう?それに、昨今、声の合成くらい、簡単にやってのける方もいらっしゃいますので…意味はないでしょう?」
確かに、2ヶ月ほど前に、ある国家元首が執務室に押し入ってきたテロリストに殺されたと云う事は…。
その存在も知っている。
そして、ナナリーの事をよく知るからこそ、それ以上何も返せない。
『まぁ…いいですが…。お久し振りで御座居ます…ナナリー代表…』
その存在は…丁寧な挨拶をしながら膝を突いた。
お互いに、こんな儀礼的な事をする必要はないと解っていながら…それでも、その形態を崩そうとはしない。
「お久しぶりです、ゼロ…。その後の事を…お聞かせ下さい…」

 ナナリーが『悪逆皇帝』と呼ばれたその存在の妹である事は既に全世界が知っている。
だからこそ、ナナリーが国家元首でいる事に不安を訴える者も当然の様に居る。
それゆえに、ナナリー自身、日本の事は気になっていても、自ら何かしようと云う事は出来ていないのだ。
そもそも、日本は主権国家であるのだから、ブリタニアの国家元首であるナナリーが自国の国益の為以外に、日本に口出しする事は出来ない。
政治とは…自国の国益の為に行う事だ。
それ故に、必要とあらば、そして、後に利益を齎すと判断すれば、他国への支援もする。
ただ、それが見いだせないものに対して、自国の税金を使ってまで支援する事は出来ないのだ。
それ故に、ナナリーも世界一の大国の国家元首として…世界情勢に対して気を使っている。
『ゼロ』は…国籍を持たない仮面の英雄…。
それは今でも健在で、国際的に様々な特例があり、そして、その為の義務と権利を持っている。
ただ、それは『ゼロ』と云う存在が機能しているからに他ならない。
今も、『ゼロ』と云う存在が機能して、その義務と権利を背負わなければならないこの世界に対して…ナナリー自身は思うところがある。
もし、必要なくなれば…。
会う事は叶わなくなるけれど、それでも、彼自身、ひっそりと、人前に出る事無く、暮らして行く事が出来るかもしれないのに…。
こんな…『英雄』として晒しものにされながら、様々な危険の伴う事をする為に世界を飛び回っている存在…。
仮面の下の顔は…誰も知らないのだから…。
その存在が必要なくなれば…恐らく、彼は…。
そんな事を考えていても仕方ないと思うけれど。
それを実現出来ない理由は、ナナリーも担っているのだ。
『ゼロ』が知る限りの必要事項をナナリーに伝えて行く。
それは、決してメモに書かれているものではない。
と云うのも、『ゼロ』の存在は人に掴まれてはいけないのだ。
あくまで『仮面の英雄』出居続けなければならない。
だからこそ、目撃はされても、テレビカメラに映っても、それ以外の痕跡を残す事は許されないのだ。
だからこそ…彼は、記録を取らず…報告に来るのだ。
それでも、一体いつからそこまでハードディスクが大きくなったのか…と思われるほど、大量の情報が出て来るから…驚いてしまう。
これを、ブリタニアにだけでなく、『ゼロ』を必要な存在としている国々すべてにやっているのだ。
スパイとしての発言は一切ない。
ただ、状況を伝える…。
ただそれだけなのだけれど。
未だに『ゼロ』の存在に縋っている国、地域は数多い。
それを考えた時…ナナリーはうっかり思ってしまう…。
―――お兄様じゃ…あるまいし…
そんな事を考えながら、報告を受けている。
今のところ、まだまだ、休息できる時間を取る事は出来ないようだと…。
そんな風に思えて来てしまう。
やはり、世界は一人の『悪役』がいなくなったくらいでは何ともならない。
そして、そんなたった一人の『悪役』を仕立て上げなければならない程勝ちのあるものでもない。
報告を受ける度に…そう思ってしまう。

 一通りの報告が終わると…
「相変わらず…なのですね…。人とは…本当に、何を求めてここまでするのでしょうか…」
『だからこそ…『人』なのではありませんか?それぞれに自身の意思を持ち、価値観を抱いている…。私はそれこそが…『人』らしさであると…思っています…』
『ゼロ』の言葉を、黙って聞いていたナナリーだけれど。
確かに、その通りだと思えるのだけれど…。
でも、その意思があって、価値観があるから…こうした形で争いが生まれると云うのもまた事実だ。
「確かに…その通りです…。でも、何故、人は…こうした形で、人同士で争うのでしょうか?お兄様のやった事に…何も意味はないのでしょうか…」
思わず出てしまった…その言葉…。
僅かに『ゼロ』が息をのんだのが解った。
でも、それもあえて無視している。
『それは…今我々が解る筈は…ないと思います。いずれ、こうした時代は、未来の歴史の中で、評価されるべき事です…。昔、聞いた事のある言葉です…』
『ゼロ』の言葉に…ナナリーは少しだけはっとした表情を見せた。
そして、すぐにいつものナナリーに戻る。
それが…一体誰の言葉であったのか…何となく解った気がした。
だから、何も云わない…。
「有難う御座居ます…ゼロ…。最近、様々なニュースを聞きながら、ブリタニアを見つめて来ていて…自信がなくなっていたのですが…。少しだけ…頑張れそうな気がしてきました…」
そう云って、ナナリーは『ゼロ』に笑みを見せた。
その笑みは…少しだけ、辛そうで、それでも、自分を奮い立たせているような…そんな風に見えた。
『一人で…頑張るのではなく…。国民が出来る事は、国民に任せた方が良いですよ…。一人で出来る事なんて本当に限られている…。一人で頑張ってもきっと、何一つ、出来る事なんてありませんよ…』
ナナリーが…その言葉を聞きながら、『ゼロ』を見ていた時に…。
その言葉が…少しだけ…懐かしい雰囲気が合った様な…そんな気がした…。
―――お兄様…
そんな事はある筈がないとは解っている。
そして、それは、恐らく、弱っている自分が自分に見せた幻であると云う自覚もある。
それでも…頭の中で呼んだ…その相手は…。
涙が出て来そうになるのをぐっとこらえた…。
「ゼロ…有難う御座居ました。まだ、行くところがあるのでしょう?お引き留めして…申し訳ありませんでした…」
そう云って、ナナリーは『ゼロ』に頭を下げた。
『ゼロ』はその仮面ゆえに、その表情は解らないけれど…。
でも、その雰囲気は…何か見守って貰っているような感じがした。
『いえ…。まだ、世界は混沌としています。この国を含めて…祖国を追われる存在がまだまだ沢山いるのが現実です。どうか…踏ん張って下さい…』
『ゼロ』がそう云って、部屋を出て行こうとした。
その時、思わず…ナナリーは車いすを前に進めた。
それに気づいた『ゼロ』は振り返る。
『まだ…何か…?』
『ゼロ』から声をかけられて、ナナリーははっと我に返った。
「あ、いえ、なんでもありません…。どうぞ…お気をつけて…」
そう云ってナナリーが微笑んだ。
きっと、自分でも解らない何かが…会ったのだろう事は予想できたけれど、『ゼロ』は部屋から出て行った…。

 廊下に出て…彼は…誰にも聞こえない程度の小さな声で…こう呟いた…。
「御免…ナナリー…。こんな事しか…出来なくて…」
その一言を零したものの…何ができる訳でもない事を承知している彼は…そのまま靴音を立てて、その場を後にしたのだった…。

END

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posted by 和泉綾 at 15:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年09月03日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 207

あなたの為に…灯されている…



※『ゼロ・レクイエム』直前の、ルルーシュとスザク…。互いに自分の本心を隠しながらのやりとり。

このお話しには性的描写が含まれます。18歳未満(高校生含む)の方、苦手な方の閲覧はお断り致します。


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posted by 和泉綾 at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年09月01日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 206

黒猫ルルにゃん 15



※設定:
ルルーシュは人間界に迷い込んできた、猫の国の皇子様です。
スザクはそんなルルーシュに一目惚れしてさっさと連れて帰ってしまった心優しい(一歩間違えれば誘拐犯と云うツッコミはなしです)一人暮らしの軍人さんです。
ルルーシュは魔法を使って人間の姿になれますが…うっかり屋さんで、時々ドジる事があります。

 シュナイゼルがルルーシュ(の大ウソ)によって追っ払われて…早3日…。
その時に、ルルーシュ大好きな妹姫たちも一旦、シュナイゼルと一緒に猫帝国に還って行ったのだけれど…。
スザクは…。
現在、スザクはすっかり、変態扱いだ。
こういった、お下劣ネタに関してはさっさと情報を手に入れて、面白おかしく話しを作り上げていく。
今ではスザクは、筋金入りのマゾ扱いだ。
「大丈夫かい?スザク君…」
げっそりとやつれているスザクに声をかけて来たのはロイドだった。
流石に、精神的ダメージが大きいらしい。
現在のスザクのシミュレーターの成績は史上最悪だ。
「えっと…ルルーシュ様も…結構過激な事を仰いますよね…」
何が云いたいのかよく解らないセリフをセシルが口にする。
「僕…絶対にマゾじゃないし…。というか、サディストの方が…」
「Σえ?そっちならいいわけ?」
スザクが恐らく無意識に口に出しているその一言にセシルが驚くけれど。
それでも、ロイドとしては、それほど驚いている様子もなく…。
「だぁって、シュナイゼル殿下を猫帝国に追い返すんだよぉ?スザク君がサディストになっちゃったら、ルルーシュ殿下、確実に強制送還だったよぉ?」
まぁ、確かにその通りなのかもしれないけれど…。
と云うか、頭がいい筈のルルーシュが何故にこんな口実を作らなくてはならなかったのか…。
正直、そちらの方が謎だ・
咄嗟に出てきた言葉とも思えない。
最初から、自分が話しをすると云っていたくらいだから、恐らく、時間をかけて考えていた筈なのだ。
「それにしたって…。と云うか、あの場に僕達しかいなかったのに…どうして、ここの施設の人があの時の話しの噂をしているんですか?なんだか…噂の中でルルーシュの云った様な僕からも、実際の僕からもかけ離れたキャラクターにされちゃっているんですけれど…」
結構涙目になって訴えている姿を見ていると、流石に哀れさを感じてしまうけれど…。
覆水盆に返らず…とはまさにこの事と云えるのだろうか?
「まぁ、人のうわさも49日って…」
「75日です…ロイドさん…」
どうでもいい、漫才ネタまで飛び出してきている。
「今日はまだ3日目です…。僕、72日間もこの状態を我慢しなくちゃいけないんですか???」
シュナイゼルがこの部屋から出て行く時、真っ青な顔をしていたようだけれど…。
その様子をこの施設の人間にみられて…そして、シュナイゼルがブツブツ何かを云っていたのを聞いてしまった人間がいたらしい。
「ま…まぁ…その内にそんな噂もなくなるから…。もしなんだったら、シミュレータに籠っちゃう?」
スザクの落ち込みように、セシルがまた、かなり恐ろしい提案をする。
そんなこと…2ヶ月半も続けていたら、いくらスザクでも、普通に過労死するに違いない。
少なくとも、ロイドはそこまでの気遣いも加減も出来る様な相手ではない。
「あ、セシル君…それ名案だねぇ…。スザク君…どう?」
「別に…それでも…」
スザクがそこまで云いかけた時に…その部屋の扉が開かれた。
「みゃあ!みゃみゃあ!」

 その扉を開いたのは…。
相変わらず、猫の鳴き声にしか聞こえない言葉しか喋れなくなっているルルーシュだった。
「おやぁ…ルルーシュ殿下…いらっしゃぁい…♪諸悪の根源は貴方でしょうが…」
恐らく、思っていてもこんな風にあからさまに云えるのはこの男くらいだろう。
「みゃあ!みゃみゃあ…。みゃあ!」
「そんな事云われましてもねぇ…。僕の云う事を聞くようなタマじゃないでしょう?あの殿下が…」
「みゃ…」
ロイドのその一言で、ルルーシュも黙ってしまう。
実際に、その異母兄の事について、良く知っているだけにルルーシュも何も言い返せないのだろう。
そもそも、あの破天荒皇子をコントロール出来る存在がいると云うのなら、一度お目にかかりたいと思っているのはルルーシュも同じだ。
「僕だけ…ルルーシュの云っている事が…解んないんだよなぁ…。というか、いつになったらルルーシュは僕に解る言葉を話せるようになるんです?」
ルルーシュとロイドのやり取りを見ながら、スザクがぼやくように云った。
「だぁかぁらぁ…君達が覚悟決めないからいけないんでしょうが…」
ロイドが更に面白そうにそんな事を云ってくる。
「ロイドさん…セシルさんとホントに…その…」
「ス…スザク君!」
本当にまともに頭が働いていない様で、普段ならスザクは絶対に口にしないであろうセリフをさらりと口にする。
流石にセシルもそんな事まで尋ねられそうになって、途中で制止するが…。
その焦った態度が既に答えになってしまっていると云う事を…恐らくセシルは気付いていない。
「みゃあ…みゃああ…」
「殿下…今度、スザク君の飲み物に催淫剤でも、混ぜておきましょうか?」
ロイドが何でもない事のようにそんな事をかますが…。
「ロイドさん!」
「みゃあ!」
ルルーシュとスザクが二人同時に反応した。
「だって…じれったいんですもん…。そんな風にぐずぐずしていると、今度こそ、帝国に連れ戻されちゃいますよぉ?ルルーシュ様の貞操狙ってるのは、何も、シュナイゼル殿下だけじゃないんですからぁ…」
結構物騒な発言をさらっとかましているロイドだけれど…。
その言葉には、あまりに真実味があり過ぎだ。
「みゃあ!みゃみゃあ!みゃあ…みゃあ…」
最初の内は勢いよくルルーシュがロイドを怒鳴りつけているが…。
ただ、最後の方が段々小さくなって行くのがあからさまに解る。
「そんな事を気にしているんですかぁ?いっそ、誰か、障害になってくれれば話しが早いかも…あはぁ…」
ルルーシュが何を云ったかはよく解らないのだけれど…。
ロイドの言葉から推察すると、まぁ、スザクにとってもあまりロクなことじゃないと思えるような発言をしたと云う事は…何となく解る。
おまけに思いっきり『襲って下さい!』と云わんばかりに顔を赤らめているものだからたちが悪い。
「障害って…ロイドさん…。ずっとスザク君に恋愛出来る様な時間を上げていなかったじゃないですか…。ルルーシュ様が国に還られたら困るのでしょう?少しくらい、スザク君にこれまで働いて貰っていた分のお休みを上げてはどうですか?」

 セシルのその言葉…。
確かに、スザクはルルーシュと一緒に暮らし始める前から、この職場と自分の住まいとの往復しかしていない。
その中で出会いなんてある訳もないし…。
それに軍と云う職場は、何せ、女性が少ない。
だから、独身女性が一人入って来ると、独身男性達の間で争奪戦が繰り広げられるのだ。
軍人と云うのは、中々そう云った出会いが少ない職業だ。
ここ最近、女性の軍志願者が出て来ている物の…。
未だに数は男の方が圧倒的に多い。
軍人だから、風俗を利用する事も多いけれど…所詮、相手は金を払う相手であり、自分の恋人になる事はあり得ない。
と云うか、そう云った店に通いつけている男ほど、彼女達を見ている内に、自分の本命には出来ないと思えて来る者だ。
職場内ではとてもじゃないけれど、恋愛なんてあり得ない。
中には耐えきれず、それまでノーマルだったのに、男に走ってしまう者も出て来る。
そんな状態の中…二人の間にファクターをかける障害と云ったら…ルルーシュが追い返したルルーシュの身内くらいだ。
ただ、あそこまで過激だと、無事、成就される可能性の方が低くなってしまうようにも思えてくるが…。
「確かに…しょっちゅうシュナイゼル殿下たちが乗り込んで来られても困るしねぇ…。さっさと殿下とスザク君が契約しちゃえばいいんだけどさぁ…」
結構さらりと言っているロイドだけれど。
二人の顔は真っ赤だ。
あまりにうぶ過ぎて、この先、この二人が契約できるのは一体何年先になるのだろうかと…。
素直にセシルは思ってしまった。
確かに初々しいと云えば可愛らしい物だけれど…。
ただ、この先このままその状態を続けて行ったら確実にこの二人、一生このままだ。
特に、スザクの場合、ルルーシュの言葉が解らなくなってしまうと云うのは結構問題の様に思える。
外国語を学ぶと云うのであれば、一緒にいれば、いずれ、身につくものであるけれど。
ルルーシュの場合、生物の壁を超えちゃっているものだから…話しが厄介なのだ。
「スザク君…。まぁ、ロイドさんほどあからさまに云うつもりはないんだけれど…。この先、きっと、シュナイゼル様…きっと、諦められる事はないと思うんだけど…」
セシルが遠慮がちにスザクに声をかけた。
スザク自身も、解っちゃいるのだけれど…。
そして、ルルーシュも解っちゃいるのだ。
「僕も…解ってはいるんですけれど…。でも…まぁ…その…」
スザクがしどろもどろにセシルに返すのだけれど。
セシル自身もスザクの云っている事が解るだけに…。
ただ、この二人は既に両思いだ。
ここまで気にしていると云うのは、恐らく、互いにその行為に対して、色々躊躇があると云う事なのだろう。
互いに大事に思っていれば、ある意味至極当然なのかもしれない。
「スザク君は…ルルーシュ様の事…好き?」
セシルが少しだけ、大人びた顔をしてスザクに尋ねてきた。
そのセシルの問いにスザクがきょとんとした顔でセシルの顔を見ている。
「ね?スザク君…ルルーシュ様の事…好き?」

 セシルのこの言葉の意味は…。
良く解らないけれど…。
「そりゃ…好きです…。今は…ルルーシュと離れて暮らすなんて…考えられないくらい…」
スザクは素直に答えた。
目の前にロイドやルルーシュがいるけれど。
ただ、ロイド自身、そのスザクの言葉に対してからかう気持ちはない様だ。
ルルーシュの方は、さっきから顔を真っ赤にしたままだ。
「でも、このままだと、いずれ、シュナイゼル様に連れ戻されちゃうのは…解るでしょ?」
セシルの問い…。
改めて、現在の状況を整理している様にも聞こえる。
「はい…」
確かに、ルルーシュがちょっと驚かしたくらいで、諦める訳はないと思った。
こんなところで、人の噂に惑わされて、落ち込んでいる場合じゃないと…改めて思う。
「ルルーシュ様…ルルーシュ様は…どうなんですか?」
今度は、ルルーシュの方に向き直ってセシルはルルーシュに尋ねた。
ルルーシュの方は、顔を真っ赤にしたままで…スザク程素直に言葉に出来ない様だった。
「……」
顔を赤くしたまま、俯いてしまった。
「ルルーシュ様…このままでは、スザク君と契約出来ません。契約出来なければ、また、帝国に連れ戻される事は…お解りでしょう?」
セシルは表情を変える事無く、ルルーシュに尋ね続ける。
「まぁ、次は皇帝陛下が出て来るかもしれませんよねぇ…」
ロイドがセシルの言葉を後押しするように一言、加えた。
それ以上、何か云うつもりもない様だけれど…。
「みゃ…」
ロイドの『皇帝陛下』と云うその単語にルルーシュの表情が変わった。
シュナイゼルに見つかった時とは…またちょっと違った感じだ。
違うと云うか…こちらの方がかなり深刻な様子に見える。
「でも、それを回避する方法は…解っているんでしょう?」
「みゃあ…」
「それに、ルルーシュ様がこうして、猫の言葉しか話せなくなったのは、スザク君が大ボケをかましたからでしょう?ひょっとしたら、ちゃんと契約できれば…その不安が拭い去られて、スザク君と、人間の言葉でお話しできるかもしれませんよ?なんだか、話しを聞いていると…ルルーシュ様の精神的なもののように思えてしまって…」
セシルの言葉に…ルルーシュは本当に言葉が出て来なくなった様で…。
黙り込んでしまった。
「ルルーシュ様、私はロイドさんほど、ルルーシュ様の事は存じ上げてはいませんが…。それでも、そんな風に見えるんですよ…」
セシルが最後にそう、付け加えた。
二人にとっては、考えるべき言葉だ。
ロイドの言葉も、セシルの言葉も…。
「仕方ないなぁ…。これ以上、シュナイゼル殿下に押しかけられても困っちゃうからねぇ…。この鍵…貸してあげるよ…」
そう云って、ロイドはちゃりんと、何かをスザクに投げた。
スザクはそれを受け取って、みると…。
「鍵…?どこの…?」
「僕のこの世界での別荘…。シュナイゼル殿下がいいお給料くれるし、意外と本国でも僕、お金もちなんだ…。だから、別荘を持っているんだけど…」
「と云うより…研究所ですよね…ロイドさん…」

 セシルはそのロイドが『別荘』と呼んでいるその場所を知っているのか…。
少々、呆れ顔でツッコミを入れた。
控え目ではあったけれど…。
「まぁ、それでも、ちゃんと普通に生活出来るからねぇ…。地下室へ行くと研究所になっているけれどねぇ…」
「と云うか…私が片付けて人の住める場所にしたんです!」
まるで…夫婦漫才に見える。
「えっと…これは…」
「1週間、これまでの有給をまとめてあげるから…」
「1週間じゃ足りないですよ…。有給って云うなら…。少なくとも1ヶ月はスザク君なら休めますけれどね…」
何かに付けてセシルがツッコミを入れて来るけれど…。
「とりあえず、1ヶ月もスザク君をここに来させないのは困っちゃうからねぇ…。ルルーシュ殿下と一緒に新婚旅行しておいで…。で、シュナイゼル殿下に諦めさせてあげないと…。いい加減、シュナイゼル殿下も最近、哀愁を感じるようになって来ちゃっているからねぇ…」
仮にも自分の直属の上司に対して、この言い草…。
しかし、こうした形で休みを貰って、泊まる場所まで提供してくれているのだ。
「みゃ?みゃみゃあ…?」
「大丈夫ですよ…。キッチンはシステムキッチンだし、スーパーも近所にありますからねぇ…」
黙って聞いていたルルーシュだけれど…。
こうした形で出かけると云うのはルルーシュにとっては初めてだ。
スザクと出かけると云うと、近所に散歩に行くとか買い物に行く…と云う程度だった。
「少し、雰囲気を変えて見て、色々遊んでくれば、違うと思いますよ…。きっと、デートとかってした事無いんでしょ?」
セシルがにこりと笑ってそう云った。
「休み…ルルーシュと…旅行…」
スザクがぼぉっとした状態でそんな事を呟いている。
今のところ、頭が少々混乱状態になっているようだけれど…。
色んな妄想が飛び交っているに違いない…。
「その代わりぃ…ちゃんと、契約…して来てね?シュナイゼル殿下も流石に一度、契約したものを破棄する事がどれほど面倒なことか、解っているだろうからねぇ…」
「え?破棄…?」
「結婚と一緒だって云ったでしょ?人間の世界だって、結婚するよりも離婚する方がよっぽど面倒なのよ?それと同じだと思えばいいわ…」
セシルがそう云ってくれたけれど…。
スザクの中で、何か、不安が過って行く…。
否、何か…と云うのは不正確か…。
―――って事は…面倒でも、破棄されちゃう事も…あるってことなんだ…
少しだけ…しょんぼりしてしまいそうになる。
「あの…ルルーシュ…。えっと…その…」
どうにも、その先の妄想が先に立ってしまっていて…。
中々言葉が続かないらしい。
「みゃみゃあ…。みゃん…みゃん…」
ルルーシュがスザクには良く解らないけれど…。
何か云っている。
少なくとも、一緒に行く事に対して抵抗はない様だ。
そんなルルーシュを見ていて…
スザクが、何か心に決めたかのようにロイドとセシルの方に向き直った。
「すみません…。1週間、休みを下さい…」
そう云って、スザクが頭を下げると、二人が少しだけ、笑みを浮かべるのだった…。

END

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2010年08月31日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 205

悲しみ乗り越えた微笑みに



※『ゼロ・レクイエム』から10年以上経っています。
その時のカレンを書いてみました。
カレンと玉城とちょっとだけC.C.が出て来ます。

 この時期になると…様々な後悔が過って行く。
10年が…経った…。
未だに…あの時の場面が夢に出て来る…。
やはり、まだ10代の少女であったカレンには…ショックが大きかったようだ。
結局、あの後…様々な形で問題が残っていたから…。
確かに、彼が倒れた後は…一時的に様々な緊張の中…世界の秩序が出来あがったかのように見えた。
しかし、やはり、『超合衆国』にしても『黒の騎士団』にしても…。
『ゼロ』…もしくは『シュナイゼル』の存在によって、まとまっていた。
『ゼロ』の正体がルルーシュであったと云う事が、シュナイゼルによってカミングアウトされた時…。
『黒の騎士団』は手のひらを返した。
それまでの全ての功績を否定したのだ。
彼らは、その後、ルルーシュのお膳立てによって世界の中心に立つ存在となった。
彼らの『ゼロ』への裏切りは…恐らくルルーシュのお陰だろう。
巧妙に隠されており、決して外に漏れる事はなかった。
ただ、彼らはその事を恐れた。
と云うのも、ルルーシュは『ゼロ』の存在は残したからだ。
『ゼロ』は決してその事を話す事はなかったし、基本的にその声を聞かせる事もなくなっていた。
それに、超合衆国でも主要国となっていた中華連邦やブリタニアの代表たちはその事実を知っていた。
それ故なのか…その事実が公になる事を極端に恐れた。
それは、恐らく、彼らの中にもあの時の自分達の彼に対しての仕打ちは…どう云ったものであるのか…理解出来た…と云う事でもあるのだろう。
その恐れさえ抱かなければ…彼女自身、呆れかえって、もはや、彼らから協力を請われようとも、決して顔を出す事はなかったに違いない。
ただ、最近では、そこから先に進まない彼らに…少々、辟易しているのは事実だ。
敢えて、まともに彼の事を話せるとしたら…
今では既に、出世欲と云うものから遠ざかった…。
自称、『ゼロの親友』である、玉城真一郎くらいか…。
「おう…久しぶりじゃねぇか…」
その店に入って行くと…そこのマスターが声をかけてきた。
「相変わらず、客の少ない店ね…。どうやって、経営してんのよ…」
カレンは、マスターに対してそう切り返した。
「別に…。それに、今、俺がやっている事、解ってんだろ?そうそう、客が押し寄せられても困るんだよ…」
「まぁ、確かにね…。と云うか、扇さん達にはばれてないわけ?」
「今は、日本のお偉いさんだろ?アイツも…。そんなお忙しい方がこんなしけた見せにくるかよ…。今頃、経済界のお偉いさんと料亭で内緒話でもしてんだろ…」
あれから…確かに時間が経ったのは事実だが…。
これほどまで変わると云うのも…中々だと…カレンは思った。
「そう…。見付からないと…いいわね…」
カレンが、カウンター席に腰かけながらそう云った。
そのカレンを見て、玉城が尋ねる。
「いつもので…いいのか?」

 本当にひっそりとした店で…。
カレンは忙しい合間を縫ってここに来る。
最近、扇たちの仕事を手伝っていても…息がつまってきている。
と云うのも…今、扇たちは…。
確かに、政治と云うものがそう云うものだと云われてしまえば、その通りだと云うしかないけれど…。
でも、今、扇がやっている事は…。
恐らく、それを嫌って…ルルーシュを…否、『ゼロ』を排除した筈なのに…。
そう思う。
玉城が扇に目を付けられ、排除の対象となった存在を地下に逃がしているのを知った時には…。
愕然とするしかなかった。
ルルーシュには、『悪逆皇帝』にならなければならかった…と云う理由がある。
それが、正しい選択であったのかどうかは別にして…。
その『悪逆皇帝』となったその先に、彼は彼の展望があった。
後から知った事ではあるけれど。
しかし、扇の場合…。
そこまで考えての行動には見えない。
玉城もそれを感じたから…そんな危険な真似をしているのだろう。
あの頃…
世界が恐怖した『ルルーシュ皇帝』と…何の違いがあるのだろうか…。
それでも、ルルーシュの場合には、それによって得る結果を見据えての行動だった。
その先には自分を世界の生贄にすると云う…その為の布石であった事は…今だから解る…。
でも…今の扇は…。
様々な恐怖心と、疑心暗鬼で…と云うのがよく解る。
「ねぇ…玉城…。なんで…今みたいな…そんな事をしようなんて…考えたわけ…?見つかれば…いくらあんたでも…」
カレンが、玉城が差し出したグラスを手に取りながら、尋ねた。
これは…多分、何度も訊いた。
玉城は、今ではもう、『またか…』と云う顔を見せる事もない。
でも、初めてその質問をした時から変わらない答えをいつも返してくる。
「別に…。たださ…『正義の味方』って奴に…なりたいんだよ…」
玉城はいつも、そう答えるだけだった。
『ゼロ』が強調していた…『正義の味方』。
それは…云ったなんであるのかなんて…あの、『ゼロ・レクイエム』を迎えた後、いくら考えても答えなんて出て来ない。
ただ、最近になって解った事は…。
玉城が今では、『自分の信じる正義』の為に動いている…と云う事…。
そして、あの日に近付くと…いつもは、ふざけた事を云って、周囲を笑わせるのだけれど。
この時期…多分、カレンにだけ見せる…押し殺している自分の本音を曝け出した顔…。
カレンも、この時期にしかそう云った表情をみる事はない。
と云うのも、カレンの方が、扇に近いところにいる分、玉城とは別の意味で…と云うよりも、直接的にみたくない現実を見ているからだ。
「ねぇ…これ飲んだ後…出してくれない?」
カレンが最初の一杯目のドライ・マティーニを半分くらい飲み終えたところで玉城に告げた。
「何を?」
「何すっ呆けてんのよ…。解っているんでしょ?」
「この時期になると…お前、それをオーダーするんだな…。結局、まだ引きずっているんだろ?」
「ほっといてよ…」
カレンは少しだけ、アルコールの所為ではなく、顔を赤くして、そっぽ向いた。
恐らく、玉城のその言葉は、ど真ん中に突き刺さったからだろう。

 この時期になると…カレンも玉城も…互いに複雑な表情を見せる。
勿論、この店が二人しかいないし、あの頃の事を知る者同士だから…だろう。
「お待たせ…。『ゼロ』だ…」
そう云って、カクテルグラスには、ルルーシュの瞳を思わせる紫色のブルームーンと、スザクの瞳を思わせるグリーンオリーブが添えられたカクテルが出される。
二人が勝手にそう呼んでいる…そのカクテル…。
味の方はともかく…カレンはその色合いを気に入っているらしい。
玉城はこのメニューを表に出してはいない。
恐らく、これがある事を知っているのは…作っている本人とカレンだけだ。
「ねぇ…玉城…。なんで…こんな事になっちゃったのかしらね…。扇さん…確かに『ギアス』はないけれど、自分の持つ権力を振りかざして…やっている事は…アイツと変わらないじゃない…」
カレンは、その差し出されたそのカクテルグラスを眺め、オリーブの刺さったトゥースピックを弄りながらそんな事を零した。
「ううん…その先に考えている事も、ポリシーもない分…アイツと一緒にするのは…アイツに失礼よね…」
カレンが、今の状態の中…本当に苦しんでいる事が解る。
あの時、結局、このバーのマスターになった玉城だったけれど…。
それが玉城の本位だったのかどうかは今でも解らないけれど。
でも、今は思えてしまう…。
こっちの方が…幸せだ…と…。
それが逃げである事は解っているし、玉城だって、危険を冒してまで扇の意に背いている事をしているのだ。
何故見つからないのか…少々、不思議に思えて来てしまうのだけれど…。
ただ、見つからないでほしい…そんな風に思う。
もし、見つかってしまったら…。
きっと、扇たちの意に沿わない者達の逃げ場がなくなってしまうから…。
「まぁ、そんな事、俺達が云っていても始まらねぇよ…。ただ、俺は、やっぱり、『正義の味方』でいたかった…。それだけだし、今の俺のやっていることだって、俺が『正義の味方』だと思っているだけで、本当はどうなのか、解らねぇしな…」
玉城が苦笑しながらそう零した。
正直、この時期は鬱になってしまう。
他の時期は…普通に笑う事も出来るし、普通に、自分でいられるのだけれど…。
でも…この時期になると…。
とても苦しい…。
「そう…なんだけどさ…。『ゼロ』って、今、どこにいるんだろうね…」
お互いに、今の『ゼロ』の正体を知っている。
でも、互いに『ゼロ』としか呼ばない。
それが、どうしてであるのか…なんて、気にもしない。
ただ、それが、『彼』の意思であると云うなら…自分達だけは…こうして、この時期になると、切ないと思えて来る自分達だけは…そう呼びたいと思っているのかもしれない。
それが意味する事など…何もないと云う事は…解っていても…。
そんな事を考えていること自体不毛だとは思うけれど。
そんな風に、考えて、ため息を吐いた時…
―――カラン、カラン…
この店の扉が開いた。
この店にはあまり客はいない…。
それでも、逃げ込んで来る人間は…時々みかけるけれど…そんな様子もなく、落ち着いた感じに扉が開いたのだ。

 そして、その扉を開けた存在に気がついた…。
「シ…C.C.!?」
「ああ…久しぶりだな…。あの連中は…?」
二人の反応は…正反対…。
「今日は…カレンが来ていたのか…。ちゃんと送り届けて来たさ…。まったく…アイツは人使いが荒い…」
黄緑の髪の魔女は…最後に会った時から姿が変わっていない。
今更、何を云われても驚かないけれど…。
「ああ…仕方ないだろ…。今の方が忙しいし、人材も不足しているんだからな…。いつもご苦労だな…」
「そっちもな…」
『黒の騎士団』にいた頃には、お互いに悪態づいていた…と云うか、玉城がバカな事を云って、C.C.がそのおかしな言葉に対してツッコミを入れていた…と云う感じではあったけれど…。
敵同士となった時には、そんな、ふざけた会話も聞く事が出来なくなった。
「ほらよ…ピザだ…」
「相変わらずピザなんだ…」
玉城が当たり前の用に出したピザに、さも当然のようにC.C.が手を伸ばす。
「今日は…客がいるのか…。と云うか…いいのか?」
C.C.がピザを口に運びながら玉城に訊ねた。
「カレンは知っているからな…。流石にてめぇが絡んでいる事は知らなかったけれどな…」
「そう云う意味じゃない…。相変わらずバカだな…お前は…」
「その心配もねぇよ…。ここは、最後の逃げ場なんだからな…」
二人の会話に…カレンはただ、ただ、目を丸くする事しか出来ない。
「ちょ…ちょっと…どう云う事?」
カレンが驚いて二人に尋ねる。
しかし、二人とも特に褪せている様子も驚いている様子もみられない。
「まぁ、巻き込んでしまう事になるが…事情を知っていると云う事で不運だと思え…」
相変わらず、肝心な部分は話さず、結論だけで話しを済ませようとする女である。
「相変わらず、本筋すっ飛ばして結論だけ話す奴だな…」
「めんどくさい…。お前が説明しろ…」
「……」
何となく、かつての漫才に聞こえなくもないけれど…。
ただ、こんなところ、本当に扇たちに見つかったりしたら…。
「カレン…安心しろ…。私は捕まりはしない…。捕まって拷問を受けて審問されるのはこのバカだけだ…」
「お前な…」
少し、玉城がこめかみをひくひくさせてC.C.を睨みつける。
「そんな事じゃなくて!どう云う事よ!」
カレンが半ば、怒鳴り声で二人に問い質し始める。
確かに、事情を知る者であれば至極当然の反応である事は確かだ。
「俺な…今、『ゼロ』のコマを…やっているんだよ…」
玉城からの意外な一言に…カレンは驚きを隠せない。
あれほど、彼があの戦いを『ゲーム』と称していた事にショックを受けていた玉城だったのに…。
それが…『コマ』などと云う言葉を使って…とんでもないカミングアウトをしているのだ。
「えっと…ルルーシュは…生きて…いるの…?」
それは…カレンの口からごく自然に出てきた、素直な疑問の言葉…。
そのカレンの言葉に…二人は顔を見合わせた。
その様子を見て…カレンは覚った…。
―――ああ…そっか…。あの…『ゼロ』じゃなくて…今の『ゼロ』か…
少しだけ期待してしまった自分に、苦笑してしまう。

 そんな風に落ち込んでいるカレンを見て、C.C.がカウンターテーブルの上に目をやった。
「また…悪趣味なカクテルだな…」
さっきから、ずっと、カレンが眺めていた『ゼロ』の事だった。
「別に…いいでしょ…」
「流石にここも一応表向きには客の少ないバー…だしな…。こうしてたまに人と出くわす事はあるが…。あの時に関わった人間と会うのは初めてだな…」
「私だって…しょっちゅう来ている訳じゃ…」
衝撃の事実に、頭の中がまとまらないらしい。
「カレン…もう、ここには来んな…。本当にお前まで巻き込む事になるぞ…」
「お前…相変わらずバカだな…。こいつがそんな事を云って来なくなると思うのか?来ないようにしたければ、『邪魔だから、二度と来るな!』と云うべきだ…。本当に大切ならな…」
二人のやり取りに…。
正直、ここに自分が来ていた事で、何かの妨げになっていた事があるのかもしれないとさえ思った。
「私…絶対に誰にも云わない!絶対…」
「疑われるだけで迷惑なんだ…。もし、ここに来たいなら、全てを捨ててこい…。今の環境も、人間も…。勿論、母親もな…」
C.C.の厳しいその一言に…あの時、自分がルルーシュに拒絶されたその意味を知った…。
あの時、ルルーシュにとって、カレンは邪魔だったから…。
だから…遠ざけたのだ…。
「C.C.!そこまで…」
「云う必要があるだろ?お前は…何故今、ここに立っている?どちらを取るんだ?もし、今の状態を捨てて、甘っちょろい事を考えるようなら、私はまた、別の場所で同じ事をする…。勿論、お前には見つからないところでな…。私は…アイツとの約束を果たす為に…こうして動いているんだ…。邪魔されるのは困る!」
きっぱりと言い放った…彼女の言葉に…。
カレンも玉城も言葉が出ない。
「カレン…お前を巻き込みたくはない…。玉城だって最初は巻き込むつもりはなかった。だが、こいつ、偶然とはいえ、私の姿を見つけてしまってな…。だから、こいつは全てを切り捨てた状態で私と共に行動している…」
「俺は…別に…親も兄弟もいないからな…。それに、扇も、俺なんかがいたら邪魔だろうからな…。で、距離を置いているうちに、色んなものが見えて来て…で、こいつと色々やってるってわけさ…」
「まぁ、こうなった以上、ここにはいられないな…。既に、この間でほぼ完了だろ?移動するか?」
C.C.の言葉に、玉城が少しだけ、ピクリとなったが…
「仕方ねぇな…。もし、扇の傍にいるのが辛いってんなら、ここで喫茶店でも開けよ…。バーだけれど、昼間は喫茶店だったからさ…」
あの頃から…10年…。
時間が経って、色々…自分の知らない内に、変わって行った…。
「有難う…玉城…。御免…私、何も知らなくって…。なら、お言葉に…甘えようかな…。最近、母さん、普通の家事くらいは…出来るようになったし…。一緒にこの店に立つのも…いいかもしれない…」
カレンがぼそりと呟いて、漸く、玉城もC.C.もほっとしたようだ。
「なら、俺は明日にでもずらかるからな…。ずらかる前に、お前たちが住んでるアパートの郵便受けに権利書と印鑑…入れておくからよ…」
「随分、急ぎなのね…」
「当たり前だ…。変に勘ぐられる前に行動しないとまずいからな…。カレン…世界は相変わらず、混沌としている…。でも、お前は戦う必要はない。否、戦うなら…自分の母親の為に…戦ってやれ…。それも全て、終わった時に…もう一度会いに来てやる。その時には捨てる物が何もない状態にしておけ…。ちゃんと、拾ってやる…。『ゼロ』の意思としてな…」

 その言葉から…何年が経っただろうか…。
相変わらず、姿を見せないけれど…時々、『ゼロ』のニュースは見かけている。
「カレン…そろそろ開店よ…」
その声に…カレンは表情を引き締めた。
母親が、カウンター内に立って、カレンが給仕する…。
それが今の当たり前…。
その裏にある、たくさんの物が積み重なっている事は解っているけれど…。
―――『ゼロ』…紅月カレンは…今日も笑っています…。

END

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posted by 和泉綾 at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年08月12日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 204

好きになってくれた人




※ルルーシュとスザクは両想いになっています。設定はパラレルです。ルルーシュもスザクも庶民です。ただ、最近、少々倦怠期の様ですが…

 ルルーシュ≂ランペルージと枢木スザク…。
学園内でその人気を二分していたのだけれど…ある人物の転入により、少々その勢力図が変わりつつあった。
ブリタニアの貴族だと云うジノ=ヴァインベルグが転入して来てから、少々学園内の女子の騒ぎ方の比率に変化が出てきた。
ただ、男子の場合は、どうも、ルルーシュ以外の人物にはファンがついている様子はないのだけれど。
尤も、特殊な趣向を持ち合わせていなければ、男子が男子に好かれても嬉しくはないだろう。
それに、ルルーシュの非力さを考えた時、考えるより先に、身体が動くと云うスザクタイプの人間に襲われでもした場合、ルルーシュはきっとひとたまりもないだろう。
それでも、襲われないのはスザクが目を光らせているからだと云う事と、ルルーシュについている女子ファンは結構過激な者もいて、変にルルーシュにちょっかいを出そうとした男子生徒がその日のうちに闇討ちに遭ったとか、遭わなかったとか…。
普通なら『冗談だろ…』と云う笑い話ですまされてしまいそうな話ではあるのだけれど…。
ルルーシュがその中心となっている場合、あまり『冗談』には聞こえない。
と云うか、寧ろ納得できてしまう。
スザクの場合は、どうやら、上級生のお姉さま方に人気の様だ。
と云うのも、スザクのソトヅラに騙されているお姉さま方が多いと云う噂もあったり、なかったり…。
ルルーシュとスザク…。
一応学園内では公認カップルなのではあるのだけれど…。
単純に今のところは『仕方ねぇなぁ…』と云う空気でスザクがその座に収まっている状態とも云える。
スザクの『ルルーシュの恋人の座』を虎視眈々と狙う者は数え切れないほどいるのだ。
スザク自身、学園では完全臨戦態勢でいるのは確かだ。
ちょっと油断していると、ルルーシュがどこかに連れ去られている事もある。
ルルーシュはスザクを…
『恐るべし!天然!』
とか云い放つけれど…それはあくまでも、スザクが周囲(ルルーシュ含む)の目を欺く為の演技である。
これで、スザクの『天然』演技でばれてしまうのは正直、スザクとしては余り都合がよろしくない。
『天然』と云うキャラクターは中々便利に使えるもので…。
余程、バカな事をしなければ、『こいつは天然だから…』とある程度許されてしまう事も結構ある。
ただ、最近ではルルーシュ以外の生徒の中でスザクのその『仮面』に気づき始めている者もいて…。
少し、対策を考えなければ…と思う事も多々あるのだけれど…。
とりあえず、今のところはルルーシュがそう認識していてくれればいいのだ。
スザクを『敵視』している連中も、ルルーシュに怒られてしまってはそれ以上何もできない。
ルルーシュにとってのスザクは『恋人』なのだ。
その立場とスザクの『天然』『わんこ属性』キャラを発揮していると、大抵の事は乗り切れていた…。
そう、ジノが転校して来るまでは…。
ジノが転校してきて、学園内のファン達の勢力図が変わったのだ。
まぁ、勢力図がバラけてしまえばそれはそれで良かったのだけれど…。
一部の生徒の中で、ルルーシュとジノ…とか、スザクとジノ…など…。
二人のアイドルを好きになっている…と云う形なのだろう…。

 ただ、アイドルのファンでも結構過激に考える者もいる。
そんな過激なファンの中にはその自分の好きなアイドルに特別な存在が出来たと知ると、普通なら考えられない様な行動に出る者も出て来る訳だが…。
ルルーシュの場合、そう云ったファンもいるのだ。
相手がスザクだから無傷で済んでいるのだ。
これが、他の者だったら、ルルーシュの恋人になった時点で、様々な試練が課される事になる訳だけれど…。
第一段階で逃げ出す事請け合いである。
なので、ルルーシュの恋人を3ヶ月も続けているスザクはある意味奇跡の存在と云っていいだろう。
ルルーシュの場合、男のファンもくっついているから、普通の女の子がルルーシュの特別の存在となった時…女子からだけではなく、男子からも様々な形で試練を課せられる事になる。
そんな時、過酷な状態に陥る事になる。
そんな状態に耐えられるだけの女子はそうそう考えられない。
男子だって、恐らくスザクだから耐えられる。
自分の都合のいい様に受け止め、そして、都合のいい時には空気を読み、都合の悪い時には空気を読まないと云う、ルルーシュは時々、
『スザクは、不器用で損をするタイプだから…心配だ…』
などと云って貰えちゃったりして、意外と、ちゃっかりしている部分を、ルルーシュだけが知らない…のかもしれない…。
否、それをうまく、偽物わんこ属性でスザクがルルーシュには甘えん坊を貫いているのかもしれない。
それまで、ルルーシュに近付こうとする輩に対しては男も女も関係なかった。
ただ、ルルーシュに見つかるとまずいと思いながら、一生懸命隠れて『スザクの恋路を邪魔する者達』を排除しているのだ。
完全にスザクルールなのではあるけれど…。
自らの幸せの為になり振りなど構っていられるか!
そんな綺麗事、云っていられる奴はそれを得なくても幸せな奴なのだ!
所詮、人は自分の幸せの為に生きている!
などと、スザクが考えているものだから…。
そのスザクの幸せの為には、ルルーシュを騙しながら、周囲と対峙し続け、そして、排除する…。
ぶっちゃけ、この思考は、ルルーシュの幸せな一切関係ない。
自分が幸せであればいいと云う事…。
それでも、ルルーシュが騙されてくれている内はいいか…と云う事で、ルルーシュの勘違いな心配をその身に一身に受けていると云うわけだ。
スザクの、ある意味、その為に世界のすべてを敵に回しても構わない…と云う、健気(?)な思いは、毎日のスザクの頑張りによって維持されており、そのスザクの頑張りを討ち崩そうとする輩は後を絶えない。
スザクはルルーシュと違って、とにかく、自分の幸せの為に着き進む事を決めている。
ルルーシュだって、いざとなれば、(ナナリーだったら話は別だけれど)自分を最優先すると思われる。
そんな、スザクの生活をちょっと、垣間見てみる事にしよう。
因みに、現在、スザクの一番の倒すべき目的は最近転校してきたジノ=ヴァインベルグである。
と云うのも、こいつは初めて会った時から『危険なにおい』がしたのだ。
その辺りは普通にわんこ属性らしい…。

 朝、7:45…。
BS2で朝の連ドラのオープニングの青い背景に『連続テレビ小説』と云う白い文字の画面が現れると同時に、ルルーシュはスザクの家の玄関のチャイムを鳴らす。
その辺りは、恐ろしく几帳面だ。
そして、スザクも、朝7:40から、まるで『忠犬ハチ公』にでもなったかのごとく、玄関の昇り口のところで正座をして、ルルーシュがチャイムを鳴らすのを待っている。
こんなスザクの姿、ルルーシュに対してだからやっているのであって、他の人物に対してなんて絶対にやらない。
尤も、これは、ルルーシュと一緒に通っていた保育園の頃から変わらないのだけれど。
スザクとルルーシュは幼馴染同士。
保育園に通っているくらいなので、両親共働きで、カギっ子である。
それ故に、ルルーシュがスザクを迎えに来て一緒に朝、出かけて行くと云うのが定着しているのだ。
そんなちびの頃からやっている事だから、スザクとしては別に、玄関先に正座して待っている事くらい、何とも思わない。
と云うか、ルルーシュ以外の人間にこんな『忠犬ハチ公』の真似をしているところを見られる方が遥かにスザクにとって問題は大きい。
ルルーシュに隠しながら、学校ではしっかりと傍若無人に振る舞っているスザクだ。
これが、ジノ辺りに知られる事になったら大変である。
チャイムが鳴って、すぐに玄関の扉は開かれる。
「おはよう…スザク…」
「おはよう!ルルーシュ!」
ルルーシュの姿を見た途端に、その正座は形を崩す。
そして、5分間、フローリングの上に正座をしていたとはとても思えないほど俊敏にルルーシュに抱きついて行くのだ。
本当に傍から見ている分には『忠犬ハチ公』である。
一度、スザクの母に
『あんた、頼むから進路調査票の希望進路に『ルルちゃんの忠犬』なんて書いたりしないでね…』
と、そんな事を考えつきもしなかったのに…そう云われてしまい、今は心の中で完全にスザクの進路が決まった。
元々、ルルーシュの中堅みたいな事はやっていたので、母に云われずとも、進路調査票に書かずとも、確実にそこに向かってまっしぐらに走り続けるに違いないのだけれど。
既に、スザクがルルーシュと出会った事で、スザクの中で自分の進路が決まってしまっていたのである。
母には悪いが、『これは僕の進路だから、口出ししないで!心配しなくても(ルルーシュの忠犬として)将来、立派に身を立てて見せるからさ…』と一応、伝えておいた。
勿論、( )部分は話してはいない。
ただ、最近ではスザクのこんな姿を見続けていて、母親もスザクの将来が何となく見えて来てしまった。
何を云ったところで、ルルーシュが絡むと、親さえも呪って来そうな勢いの目になってしまうスザクだ。
心境としては、
『もはや、何も云うまい…』
なのだろう。
そして、ルルーシュに対してこうも付け加える。
『不束な息子ですが…ルルちゃんへの忠犬振りは本物です。末永くよろしくね…』
などと、ルルーシュの知らないところでルルーシュにそう挨拶していたのだった。

 母のそんな思いをよそに、スザクはルルーシュと二人の楽しい登校時間だ。
学校の授業とか、勉強とかってあんまり好きな訳じゃないけれど。
朝の登校時間、夕方の下校時間はスザクにとって至福の時だ。
これを邪魔する者は何人たりとも許しはしない!
などと考えているし、そのオーラもルルーシュは何故か気付かないのだけれど、フルパワー全開にしている。
それで近づいて来る者は…そうはいない。
そんなオーラにも負けず、声をかけて来るのは…
「おっはよう!ルルーシュ先輩…。スザク、お前邪魔だからあっちへ行け…」
スザクの事を知っている人間であれば、それは…
『それって、スザクになぶり殺してくださいって云っているんですか?』
と尋ねてしまいたくなる様な一言なのだけれど。
しかし、ジノはボンボンの癖に結構強い。
スザクも体力バカだけれど、こいつもスザクと同レベルの実力の持ち主なのだ。
ルルーシュの絡んだ時のスザクと対等に戦えた人間など、見た事がない。
学校でも有名となり…。
ただ、ルルーシュは思いっきり天然ぶりを発揮していて…。
その時は流石にルルーシュにスザクのもう一つの姿がばれたかとひやひやしたものだけれど。
この時はルルーシュの天然に救われた気がした。
普段は、結構苦労が多いのだけれど。
二人の争いを見ていて云った、ルルーシュの一言は…
『スザク!良かったな!お前と対等に戦える人間がいて…。凄いな…お前…。この間この学校に来たばかりの転校生だろ?俺はルルーシュ≂ランペルージだ。宜しく…』
と、ジノに対して『宜しく』してしまった。
その時のスザクのショックはいかばかりか…。
正直、それまでのスザクの報われているんだか、いないんだか解らないその努力は一体何だったのか…と、うっかり同情してしまいそうになってしまったけれど。
でも、今はちゃんと両想い(になっているはず)なのだ。
「おはよう、ジノ…。ホントにお前たち、仲がいいんだな…。少し…妬けて来るな…」
この一言…。
スザクにとっては、幸せと『ルルーシュ!そこで天然を発揮しないで!』と云う思いが入り混じる。
ジノは思いっきりどん底に叩き落される。
今のルルーシュのその言葉はそのくらい破壊力があるのだ。
そこで、頭が真っ白になっているジノを『ふふん♪』と勝ち誇った目でスザクが見つめるが…。
正直、ルルーシュはそれをにこにこして云っているものだから、気持ちとしては複雑だ。
時々、ルルーシュとスザクは本当に両想いなのだろうか…などと、考えてしまうのだけれど…。
ただ、ここで、それを尋ねてしまうのも怖くて…。
確かに、スザクはルルーシュを着け狙う人間達に対しては鬼や悪魔など敵わない程の力を発揮して、恐れられてはいるものの…。
そのパワーもルルーシュの為に存在しているし、ルルーシュの前では完全無力だ。
「ルルーシュ先輩…何をバカな事を云っているんですか…。俺達、確実に本気で殺し合っているんですけど???」
ジノはルルーシュの言葉に叩き落された後、目いっぱい頑張って力を振り絞ってそう一言付け加えた。
確かに…スザクも、ジノが攻撃を仕掛けて来る時には相手を殺す気でいる。
それこそ、何故か致命傷に至らない事にいらつく事もあるが…。
―――それは多分、お互い様だろう…。
などとお互いに思っている。

 とりあえず、ルルーシュの前だからと、二人は決して肉弾戦をしないが…。
しかし、腹の中ではどうやってこいつを片づけるかのシミュレーションを繰り返している。
「ルルーシュ!早くいかないと…。こんな風に後輩にあんまりやさしくすると、誤解させちゃって可哀そうだからさぁ…」
スザクはそう云ってルルーシュの腕を引っ張って早歩きし始める。
出来ることなら、このジノの前から一刻も早くルルーシュを避難させたい。(あくまでスザクの中出はジノと云う存在は害虫でしかないのだ)
ルルーシュは訳解らないまま、スザクのバカ力に引っ張られて行って…。
「スザク…痛い!手…放せ!」
「ダメ…。ルルーシュはすぐにフェロモン撒き散らして、相手も犠牲者だけれど、ルルーシュも凄く危険な事をしているんだから…。その危険な事は普通経験して解る者って云うけれど、この危険な事って云うのは、経験してからじゃ、遅いんだからね!」
ルルーシュ以外の人間であれば、しっかり納得出来るだろう。
正直、ルルーシュが気付かないのがどうかしているし、危険過ぎる。
「な…何の事だ?それに、フェロモンを撒き散らしているのは…スザクの方…じゃないか…」
ルルーシュが少しだけむすっとしてスザクに云った。
スザクは今の言葉に…『何か、聞き間違い???』などと考えるけれど…。
「スザクは…いつも、その…体育の時間とか…その…。女子がいつもお前の事うっとりして見ているじゃないか…」
なんだか、もの凄く恥ずかしそうに、恥ずかしい事を云っている。
スザクとしては…。
まぁ、確かにスザクのファンの中の女の子の一部もいるかもしれないけれど…。
ルルーシュがそう勘違いしているその存在の半分はルルーシュファンで、スザクに対しては『どうやって刺してやろうか…』と考えているに違いない。
ルルーシュはあんなにもてるのにどうして、こうも鈍感で、危険極まりない存在なのだろうか…。
まぁ、ルルーシュに惹かれてしまう人物の気持ちは解る。
それこそ、スザク自身、両想いになっても、こんな形で苦労して、どっしり構えていられない程…。
しかし、そんな状況の中にいるルルーシュが何故に気付かないのだろうか…。
そして、妙な勘違いをするし…。
「ルルーシュ…それは違うって…。ほら、僕の場合、結構筋肉があるからさ…。物珍しさ…なんじゃないの?だって、部活やっていない生徒で僕ほど筋肉付いている人、あんまりいないし…」
まぁ、スザクは自分に筋肉がついている事は自覚している。
きっと、そう云う筋肉のついた人の身体に興味のある人も多いと云う事なのだろう。
「それでも…その…」
ルルーシュがなんだか子供みたいにいじけている。
これは…これは…
―――妬いていてくれてる…?のかなぁ…
淡い希望を持ってしまう。
両想いになった筈なのに、中々進展が望めないどころか、大いなる勘違いや誤解をたくさん抱えてくれている。
これからも苦労しそうだなぁ…などと思ってしまうけれど、ルルーシュがスザクの前でだけ見せてくれる姿を…これから開拓してみたいと思ったのは、ルルーシュのこのいじけた顔を見てしまったからだ。
思いっきり得した気分になってしまった。
天然は…確かに扱いに困るけれど。
でも、こうして見ていると、本当にルルーシュはルルーシュなりにスザクを好きでいてくれている…と思えてきた。
「大丈夫!僕が好きなのはルルーシュだけだからね…。ルルーシュにしか『忠犬ハチ公』の真似なんてしないんだからね!」
スザクのその言葉は…。
きちんとルルーシュに伝わっているのか解らないけれど…少しだけ、ルルーシュの顔がほころんだ気がした。
それを見てスザクは…
―――やっぱり、敵わないなぁ…
などと思ってしまっていた。

END

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2010年07月30日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 203

日本のお祭り



※アッシュフォード学園の生徒会メンバー達が出て来ますが、完全パラレル設定です。一応、ルルーシュは皇子様設定ですが、日本には留学を目的で来ています。

 日本の夏と云うのは…何とも各地で何かにつけて祭りが多い。
確かに、ブリタニアでもあるのだけれど…。
それでも、日本では人口が集中している都会から、それほど人口が多いとは云えない地方にある市町村にまで、何かにつけて夏の祭りがある。
花火大会であったり、盆踊りであったり、ずばりそのまま、『夏祭り』であったり…。
恐らく、1年の中で一番祭りが集中しているのではないかと思える程だ。
と云うか、その祭りがその地域おこしとなって、その地域の活性化に一役買っている事も多い。
世間がどれほど不景気だと云っても、祭りともなると、活気に沸く。
どう考えても、スーパーのファーストフードで買った方が遥かに安全性、味、値段的に優しいと思われる食べ物であっても、祭りの時には出店で出している食べ物を買ってしまう。
どう考えても割高感はぬぐえないし、事前の保健所の検査が通っていると云っても、作っている過程を見ている時に…あの食材の扱いを見てしまうと、少々気が引けてしまうのだけれど。
測り売りの駄菓子などは結構、子供が直接手で触っている事などざらである。
普段、公園に行く時などは母親が少し前までニュースで騒がれていた『新型インフルエンザ』のお陰で何かにつけて、手の消毒をしていたのだけれど。
こう云う祭りの時には、どう考えてもあまり綺麗とは云えない現金をその小さな手に握らせて、どこを触ったか解らない手で買い物をして、その買ったものを口にしているのだ。
普段の公園での散歩の時よりも、遥かに危険度の高い祭りでは結構そう云うところで無頓着となっているのだから、結構適当な感染症予防だし、それで病気にならないのだから、マスコミに煽られてマスクを大量購入したり、携帯消毒剤を買ったりと云うのを見ていると、結構滑稽な姿だ。
本当に感染症予防をしたいのであれば、あの、人混みの中で、何を触るか解らない祭りの時にマスクをするべきだと…まぁ、思ってしまうわけだけれど。
相当くそ暑い事になり、のぼせてぶっ倒れる危険性も孕んでいるわけだけれど…。(これはこの作品の執筆者が真夏でも人混みと解っているところにはマスクをして歩いているから云える事ですが。相当暑いです。相当しんどいです。見ている側もきっと暑苦しいです。と云うのも、免疫不全なので…)
どちらを取るか…と云う事になるわけだけれど、実際に普段、自分の身体に病気を抱えているとか、アレルギーがあるとか云う事でもない限り、そんな事は意識しない。
だから、ちょっと前まで、『新型インフルエンザ』と云う名前に踊らされて、マスクが本当に不足し、本当に必要な人々に渡らなかったと云う事は、相当問題だったと思われる。
実際に花粉症の時期と重なって、感染症対策用マスクだけではなく、アレルギー用は勿論、ガーゼマスクまで完売していたと云うのだから…。
これで喜んだのは誰であったのだろうか?
一応、マスク製造、販売の会社では工場フル稼働しても間に合わない状態となって、相当大変だったらしいけれど、相当儲かったのは事実だろう。
解っている人間はその騒ぎが始まる前に相当数を買いこんでいたが。(この作品の執筆者は都合半年分のストックがありました)
まぁ、今回のネタは感染症ではないので次に行ってみよう!

 不景気と云っても、祭りの時には気持ちがハイテンションになるのは何故だろうか…。
「ねぇ…スザク…。枢木神社でお祭りあるんでしょ?」
突然の生徒会長、ミレイの言葉に驚く…と云うレベルでは、このアッシュフォード学園生徒会メンバーは務まらない。
「また…どこでそんなネタを仕入れて来たんですか?」
スザクも突然のそのセリフに対して驚いている様子はない。
ただ、厄介な相手が、その事に気づいてしまった…そんな風に思えてしまう。
「え?いつ?夏休み中なの?」
「あ、そっか、これでもスザクって将来は神社の神主さんか…」
「スザクが神主…。じゃあ、巫女さんは?」
「その辺は、とりあえず、ルルーシュのコスプレで…」
「(怒)!!」
どのセリフをどのキャラが喋っていたのか…まぁ、適当に想像して頂くとして…。
どうやら、この生徒会メンバー達も会長の影響からか、『お祭り』と聞くと、ちょっとそわそわし始める。
と云うか、スザクとしても、こんな風に勝手な将来像を作られる事にだいぶ慣れて来た。
ちょっと前に、スザクの父親である枢木首相が身振り手振りで選挙の為の演説をしていたテレビ中継を見ていた時には、スザクの将来は
『父親の後を継いで、オーバーアクション、過剰演出な演説をする日本国首相…。おまけにあの、世界一の大国のブリタニアを脅してルルーシュを勝手に嫁にする…』
と云う、本当にあり得ないけれど、本当にそうなったら、どんなに幸せだろうと云う将来像を作られていた。
ルルーシュは現在、留学目的、そして、このアッシュフォード学園の一部の人間しか皇族であると云う事を知らせない状態で日本滞在中である。
と云うのも、ルルーシュが皇族であることがばれると何かと面倒だからだ。
神聖ブリタニア帝国の皇帝は、やはり、皇帝と云う地位と身分のお陰なのか…やたらと奥さんがいて、多分、公表されていなくて、ルルーシュも知らない兄姉弟妹がたくさんいるらしい。
だから、ルルーシュが皇子であると云う事を隠しての留学も…結構楽だった…(と思いたい)
ただ、問題としてはルルコン異母兄姉妹がぞろぞろ出て来た時には困ったものだが…それはまた、別の話しだ。
「枢木神社で盆踊り大会がありますよ…」
スザクがそんな彼らの妄想の中、リアルな話しを組み込んだ。
流石に『お祭りネタ』となるとリアルな話しに戻って来るらしい。
「ボンオドリ?」
「あれ?キモダメシは?」
「あの…神社では普通肝試しはしませんよ…。やりたいなら、お墓のあるお寺に行かないと…」
と、中途半端な知識ゆえのボケは置いておく事にして…。
「盆踊りって云うのは、本来日本の仏教の中に浸透している『お盆』と云う先祖の魂が現世に還って来る期間があるんですが…、その期間にその先祖の魂とお祭りするんです。その時に各地で人々が集まって、踊るんです…」
「元々お盆ってのは、江戸時代、日本で太陰暦を使用されていた頃に作られたものだ。神道の先祖供養の儀式や神事を幕府が庶民に檀家制度として仏教式に行う事も強制して、元々仏教にあった盂蘭盆が習合して現在の形になったとの事だ。(出典:wikipedia)」

 スザクの説明にルルーシュが補足説明する。
ここで、ここのメンバー達がどれだけ理解出来たかは解らないが…。
と云うのも、ここで漫才を始めてしまうと色々と面倒な事になるし、普段だって、漫才をしているつもりは毛頭ないのだ。
スザクの方が知識的に足りなくてルルーシュが一方的にツッコミを入れているだけだ。
時々、ルルーシュが致命的なボケをかますから、結果的にルルーシュが自滅していることが多いけれど。
「で、スザク〜〜〜その、枢木神社のお祭りって?」
夏休みだと云うのに、何かと学園の生徒会室に集まっている…(中には強制召集されている者もいるが)連中はやはり、人さまが準備してくれている『お祭り』は楽しみにしている。
普段は、縁の下の力持ちばかりさせられている。
確かに、主催と云う立場の準備と云うのは、意外と祭り本番よりも楽しいと思えてくる部分も無きにしも非ずなのだけれど。
ただ、ミレイの場合、本当に人をこき使うから、祭り本番が終わると、生徒会一の体力バカのスザクでさえぐったりしてしまう。
だから、そんな事にならないお祭りは…是非とも経験したいと思うのだ。
「えっと、一応8月13日から15日ですよ…。お盆がその期間なので…。お盆って、実は日本では公休日じゃないんですよね…。だから、その期間、休みになっている企業は多いんですが、役所とかは普通にやっているんですよね…。有給を取る職員が多いから、職員の数は少ないですけれど…」
そう云えば、日本のカレンダー…その期間、赤字になっていない。
日本のカレンダーは日曜日や祝日の休みの日は赤字で書かれている。
週休2日になっているのに、土曜日が赤字で書かれていない理由は良く解らないが…。
ただ、土曜日、まともに休みになっているのは役所と学校ぐらいのものだ。
「ただ、お盆の期間って、実は地域によって違うんですよ…。7月盆のところもあって…」
「え?そうなの?」
「さっきも言っただろ?元々太陰暦だったんだ…。元々は7月15日だった。勿論、太陰暦で…だがな…。明治6年に現在のグレゴリオ(太陽)暦を日本で使用すると云う事になった時、公には7月15日の盆を廃止して、8月15日とされたんだ。ただ、今でも7月15日の名残があって、7月盆の地域、8月盆の地域がある。一般的には8月盆が多いがな…」
「まぁ、ひな祭りでも月遅れの地域があるよね…。だから、お雛さまを3月3日に飾って4月3日に片付ける…って云う家もあるくらい…」
何となく、祭りの話しではなくなってきているが…。
しかし、この生徒会の場合、こう云う事は日常茶飯事だ。
一々驚いてなどいられない。
そもそも、こんな小難しい話し、半分は聞いていない連中の方が多いに違いない。
「で、つまりのところ…8月のその、『オボン』とやらに、スザクの御実家でお祭りがあるわけね?」
ミレイがこれまでの説明などどうでもいいと云わんばかりに結論を導き出そうとした。
勿論、それにも驚きはしない。
ただ、細かいところを説明してくれたルルーシュは少し、機嫌が悪そうだけれど。
尤も、この連中に自分の知識をひけらかしたところで、馬の耳に念仏…そのくらいに考えていないとやってなどいられないが…

 で、そこでミレイが思いつきそうなことと云えば…
「ねぇ…スザク…。お祭りで、みんなが踊るって云うくらいなんだから…簡単な踊りなんでしょ?」
なんだか、楽しそうに、ミレイが尋ねて来た。
ルルーシュはそこで思い切り顔を引き攣らせる。
思い切り嫌な予感がするからだ。
「え…ええ…。まぁ…。地域によって、音楽も踊りも違いますけれど…」
「別に、それを全部覚える気はないわよ…。どうせなら、楽しみたいでしょ?なら、その、スザクの御実家の『ボンオドリ』の為に私達もそれ、覚えて行って、楽しみましょうよ…」
どこまでもお祭り大好きらしい。
と云うか、100%楽しまなければ気が済まないらしい。
否、彼女の場合、120%と云うべきか…。
とりあえず、『お祭り』の為なら何でもありだ…。
「えっと…会長…それは…」
「なによぉ…。ルルーシュは日本文化を学びに来ているんでしょ?きっと、あの、ヘンタイ皇帝やヘンタイ異母兄君達…きっと、ルルーシュの浴衣姿を見たら喜ぶわよぉぉ〜〜〜」
世が世なら、普通に不敬罪で、システムによっては普通に首を飛ばされても文句は言えない。
しかし、現在の神聖ブリタニア帝国…。
帝国と云っていいのかどうか、解らない程、ルルーシュ一人のお陰で、穏やかなお国柄となってしまった。
ただ、ルルーシュは大変苦労しているようだけれど。
でも、その貴重で、偉大なる犠牲(?)によって、世界平和は保たれているのだ。
ずっと、軍国主義であった、ブリタニア帝国があんまり武力に訴えて来なくなったのは、ルルーシュが小さい頃、武人であった母親が戦争のたびにほったらかしにされてしまう事が寂しくて、つい、云ってしまった一言から始まった。
『父上!異母兄上!こんな風に戦争ばかりしているから…母上が帰って来ないのです!と云うか、何故、母上が戦争のたびになんで出て行かなくてはならないのです!戦争と云うのは男が前線で戦う物でしょう!』
うっかりそんな事を少し涙目になって(←ここ重要)怒鳴りつけたのだ。
いくら皇子と云っても二人ともルルーシュよりも身分も地位も上…。
ただ…この、シャルル皇帝、そして、シュナイゼルブリタニア帝国宰相は…この子供のこんな涙目で怒鳴りつけられた時に…すっかり落ちてしまった。
二人とも前線に出された時、ルルーシュの母であるマリアンヌ程の戦績をあげる事など出来る訳がない。
彼女の戦いぶりに憧れて本来なら許されない筈の皇女がブリタニア軍へ志願し、現在では
『平和過ぎてつまらん…』
などと問題発言をかましているのは、ルルーシュの異母姉である。
彼女が満足するほどの戦乱、騒乱の時代となったら、世界の悲劇だ。
まぁ、これほど平和な世界のお陰で、どこかで変なものを拾い食いして不老不死になってしまった伯父、V.V.(本名を何故か教えてくれない)は時々、ルルーシュを構いに来る。
何でも、ツンデレの癖にヘタレで、ドジっ子で、プライド高いと云う…何とも苛めて…じゃなくて、弄っていて、『萌え♪』てしまう…じゃなくて、楽しくなってしまう甥っ子は彼にとって可愛い甥っ子らしい。(本当に可愛いと思っている。愛情表現がこうすることで更に愛情が深まると云うものである)

 またもどうでもいい話になってしまったが…。
ただ、ルルーシュの(女ものの)浴衣姿は…誰もが見たいだろう…。
きっと、それを見る為に金を取ってもわんさか客が来る気がする…。
「そうだ!ねぇ、ミレイ会長…。ルルに(女ものの)浴衣を着せて、見せる小屋を作りましょうよ…」
「あ、どうだなぁ…最近、会長の突然のイベントで随分予算が切迫しているし…」
「あ、だったら、ガニメデのメンテナンスの費用も…稼げる?」
「ああ、ルルーシュなら平気でしょ?いっそ、スザクがエロ親父役で…」
その会話にミレイが何かピンと来たように笑った。
「カレン!中々の素敵なアイディアよ…。スザク…あんたはエロ親父役で、ルルーシュはそのエロ親父に襲われるルルーシュの役ね…」
なんだか…変な言葉を聞いている気がする。
「僕、一応顔が隠れるようにして下さいね?一応地元なんで…」
スザクがさらりと言った。
そんなスザクに…凍りついていたルルーシュがはっと我に返った。
「スザク!お前、そんな若い美空で『エロ親父』なんていいのか?間違っているぞ!」
「だって、相手はルルーシュがやっているルルーシュ役を相手にするんでしょ?別にいいけどなぁ…。と云うか、公募したら…絶対に応募者殺到して大変な事になっちゃうし…。それに、リヴァルには間違った道に進んで欲しくないし…。だから、僕がやるよ…」
にこにこと笑いながら、凄い事を云っている。
この辺りはスルーしておくべきなのか…どうなのか…。
―――スザク…お前は間違った道に進んでいないのか?
これは、今のスザクの言葉にリヴァルが抱いた素直な感想だ。
「し…しかし…出店は…出来ないだろ…。そう云うのは決まっているじゃないか…」
「大丈夫…。僕、これでも枢木家の跡取りだし…。ダテに跡取りしていないし、神楽耶に相談すれば、一発で承諾のハンコくれるよ…」
人はそれを…『権力の横暴』と呼ぶ…。
ここは日本…。
ルルーシュはブリタニアの皇子様だけれど、日本の事に口出しできる立場にはない。
「でも…異母兄上達が…」
こう云う時ばかり、普段は非常に迷惑だと思っている者の名前を出す。
「あ、大丈夫よ…。あのくるくる皇帝とヘンタイ宰相にはちゃんと、ルルーシュの浴衣選びの時の写真を送っておくから…。きっと、お忍びで来るんじゃないの?」
あの目立つ二人が…お忍びなんて…絶対無理だ…。
誰もがそう思った。
とにも、かくにも、一体何の話からここまで話しがすっ飛んだのか…位までは誰にも解らない。
でも、これで、一つ…彼らに青春時代の夏休みの素敵な(?)思い出が増える事になるのだ。
「じゃあ、私、カレンと浴衣選びに行って来ます…」
そう云ってカレンと生徒会室を出て行ったのはシャーリー…。
出て行く時、二人は色々楽しそうに話している。
カレンもやはり女の子なのだろうか?
楽しそうに話している。
「私は、リヴァルに手伝って貰って、お店の作りとか、設計図を作るね…」
そう云ってパソコンの前に座りリヴァルを呼んだのはニーナだった。
「じゃあ、僕、神楽耶と枢木神社に連絡入れておきます。多分、桐原のじいちゃんに云えばバッチリなんで…」
そう云って、スザクも出て行った…。
ルルーシュはその場に膝をついて、当日、どうやって逃げるかを画策する。
ミレイは…楽しそうに当日プランを練る為の資料を集めていた。
ルルーシュは、『お祭り』とは…色んな意味で魔物がいると…これほど感じた事は…なかった。

END

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2010年07月29日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 202

Ein Selbstmordbewerber



※ある時、自ら命を断とうとしているスザクの姿を見かけてしまったルルーシュでしたが…。ルルーシュがスザクにかけた言葉…とは?(注意:自殺と云う言葉が出て来ますが、執筆者は別に自殺を推奨しているわけではありません。それを御承知頂ける方のみ、閲覧して下さい。)

 残業も終わっての帰り道…。
正直、一般企業で労働基準法など、まともに守られる筈もない事は解っているが…。
不景気の昨今、仕事があるだけマシと云う事で、企業側もやりたい放題だ。
実際に、今の仕事にしがみついていなくては、仕事がない事も事実だ。
かつては、選ばなければなんとか…と云う事もあったけれど。
でも、昨今、選ばなくても仕事がない。
派遣社員に対する規制が緩和されて、ホントに日雇いの様な労働者が増えた。
アルバイトと違って、給料から税金を取ることができるから国としても派遣社員が増えても税収に問題はない…と踏んでいたわけだけれど。
その分、労働者の収入が減り、身分を保障されなくなったからこうした不景気が訪れた途端に、失業者があふれる事になる。
ルルーシュも、今の会社に不満がない訳ではないけれど、実際に贅沢を云っていられる状態じゃない。
「サービス残業くらいは…ある程度我慢しなければならないか…」
そんな独り言を零す。
それにしても、結構しんどい…と思いつつ、家路を急ぐ。
普段通る公園に、普段はあまり見る事のない…人影があった。
なんだか、微妙に様子が変だと思った。
恐る恐る、その人影の方に近付いてみる。
正直、こう云うところで、こう云うオーラを放っている人物は…翌朝になって死体になって御近所を探せると云う事もあり得る。
ベンチに腰掛けて、背中を丸くしている。
何日も風呂に入っていないのか…薄汚れた感じがする。
恐らく、ここのところの不景気で派遣切りで無職となったと考えるのが自然だろう。
「おい…」
普段なら絶対に声をかける事なんてない。
でも、不思議とその背中を丸めているその男に声をかけてしまった。
その男はゆっくりと顔をルルーシュの方へと向けた。
「誰…?」
その男はルルーシュの声に小さく尋ね返して来た。
―――とりあえず、意識はあった様だな…。
そんな事を思いながら、更にその男に話しかける。
「お前…こんな時間にこんなところで何をやっているんだ?」
とりあえず、相当ストレートな、単刀直入な質問の仕方だ。
この質問に答えが返って来るかどうかは…解らないけれど。
「あ、僕…行くところ…なくて…」
小さく答えるその声に…ルルーシュは小さくため息を吐いた。
本当にこのまま放っておいたら、普通に明日はあの世の住人になりかねない…そんな風に思った。
「行くところって…家は?」
「僕、仕事、リストラされて、それまで、会社の寮に住んでいたから…。寮にいられる内に仕事…見つかればよかったんだけど…」
彼のその言葉は…なんだか、本当に絶望している…。
そんな感じがしていた。
「両親は?身内とかは…」
「両親は僕が小さい頃に亡くなっているし、僕の両親、駆け落ちして、お互いの家から勘当されたんだって…」
見ず知らずのルルーシュにここまで話している辺り、正直、重症だと思えて来た。
極端な話し、どこかの怪しい会社の人間に連れ去られれば、雨風凌げるところくらい、提供して貰えるんじゃないかと思っているのではないかと思うくらい…。

 ルルーシュは携帯電話のディスプレイを見た。
時間的に結構遅い時間だから、このまま放っておくのは気が引けた。
それに、自分で何を考えていたか解らないけれど…。
声をかけてしまったのだから。
声をかけてしまった以上、責任を持たなければならない。
このまま警察に保護を求めてもいいのだけれど、この時間だし…明日でいい…そんな風に思う。
「とりあえず、俺のアパートに来るか?風呂ぐらい、入れてやる…」
ルルーシュがそう云った時、その男は驚いた顔を見せる。
本当に…驚いていた。
「えっと…僕…今、一銭も持っていないし…それに…」
「いいから付いてこい…。お前が金を持っているなんて思っちゃいないよ。ただ、何となく、俺も独り暮らしで話し相手がほしかったんだ…」
ルルーシュのその言葉に…その男は何か救いを見出したらしい。
少しだけ、その瞳に光が宿った。
「まず、名前を教えてくれないか?俺はルルーシュ≂ランペルージ。普通のサラリーマンをしている…」
ルルーシュが名乗ると、その男ははっきりと顔をあげてルルーシュを見た。
「僕は…枢木スザク…。3ヶ月前にリストラされちゃって…。今は、ホームレス…」
その声は…本当に、力はないけれど、優しい声をしていると思った。
多分、そのお人好しで損をするタイプだ…とそんな風に思った。
「とりあえず、立て…。俺の住んでいるアパートはこの近くだから…」
同情で…こんな風に声をかけたとしたら、多分、ルルーシュは大きな罪を背負う。
ただの同情だったのなら、声をかけるべきではなかった。
それでも…ルルーシュは…明確な理由は解らないけれど、放っておく事が出来なかった。
この…疲れ果てている枢木スザクと云う存在を…。
よろよろと立ち上がると、意外と身長が高くてルルーシュと同じくらいだった。
ただ、ロクな物を食べていなかったのだろう。
身体はやせている。
身体は薄汚れているし、恐らく、こんな暗いところだと解らないけれど、顔色も良くないだろうと思った。
「ホントに…いいの…?」
「お前…今にも自殺しそうな顔をしているからな…。俺としては運が悪かったとしか言いようがないけれど…。ただ、本当にお前の死体が明日の朝になって転がっていたら、通勤し難いだろ?」
相当苦しい理由付けだけれど。
でも、今のスザクには自分に向けられる言葉が…何かを変えてくれていると云う感覚だった。
何も、誰も頼れなくて…。
仕事が見つからないし、行くあてもなかったから。
生きていても仕方ないと思えてしまった。
で、辿りついたこの公園で…小さく座り込んでいたのだけれど。
「僕…えっと…」
「話ならアパートに着いてからゆっくり聞いてやる。とりあえず、俺は夕飯もまだなんだ。うちに帰って作らなければならないんだ。だから、さっさと行くぞ…」
ぶっきらぼうな言い方だと思う。
ルルーシュ自身、こう云うもの云いに関しては少しは直さなければならないと…そんな風には思っているのだけれど…。
実際にはなかなかうまく行かないものだ。
でも、そんなぶっきらぼうなルルーシュの言葉に、スザクは嬉しそうに笑った。
「有難う…ルルーシュ…」

 アパートに着くとすぐに風呂の準備を始めた。
そして、明るい場所に来て、初めてスザクの顔を見た。
―――ちゃんとしていれば…ホントにもてそうな感じだな…。筋肉も…結構しっかりついているし…。
確かに風呂に入れていないから汚れてはいるけれど。
ちゃんときれいにしてやれば、結構整った顔をしていると思った。
「その辺に座ってくれ…。済まないな…。一人暮らしだから狭くて…」
ルルーシュがそう謝った時、スザクはフルフルと頭を横に振った。
「と…とんでもない…。と云うか…僕の方が…ついて来ちゃったんだし…」
結構しんどい生活をしていたのか…云う事がかなり卑屈だ。
仕方ないと云えば仕方ないのだけれど。
「もう少しで、風呂に湯が溜まるから…。お前の着ている物、洗濯するから、脱いだら脱衣所のかごに入れておいてくれ…」
ルルーシュがそう云った時、スザクはまた頭を横にフルフルと振った。
「え?でも…。そこまで迷惑をかける訳には…」
「ったく…。せっかく風呂に入ってもその汚れてしまっている服を着たら意味がないだろ?大丈夫だ。俺の服を貸してやるから…」
ルルーシュが少し呆れたように云うと、スザクはまた、しゅんとなってしまった。
そんなスザクを見ていて、ルルーシュは…
―――まるで捨て犬みたいだな…
そんな風に思えた。
まぁ、実際にスザクの心の中はそんな感じなのかもしれない。
「とりあえず、ちゃんと風呂に入って、ちゃんと綺麗にしてこい…。頼むから、ここで、自殺なんて考えるなよ?」
ルルーシュのその、これまで少しだけふざけた感じの入っていた言葉が、最後の部分だけ、かなり真剣に云った。
そのルルーシュの言葉にびくりとしたスザクを見て…図星だったのか…などと考えてしまった。
そんなスザクを見ていて、ルルーシュはもう一度口を開いた。
「まぁ、お前が自殺しようが、しまいが、俺には関係ないが…。ただ、ここでやられるのは困ると云ったんだ。別に、お前が何を考えていようと、何をしようとしているのか、解らんが、一つだけ…云わせろ…」
ルルーシュがスザクの目をしっかりと見ながら云った。
スザクもそんなルルーシュの瞳を…少しうるんだ目で見つめていた。
「俺は、自殺と云うのは人間の持って生れた権利だと思っている。生きる権利があるなら、死ぬ権利もあっていい筈だ。お前が何故、そこまで切羽詰まっているのか、俺には解らないし、何も解らない立場で、『元気出せ!』などと云う無責任な事を云うつもりは毛頭ない…」
ルルーシュの言葉に、スザクは本当に驚いている様子だ。
そこまで悟られていた。
そして、ドラマや小説に出て来るような陳腐な『命を大切にしなくちゃいけない!』と云うセリフは一切出て来ない。
驚いているけれど…。
でも、安っぽい『生きろ!』と云う言葉で叱咤激励されるよりも…遥かに心にしみわたっている気がした。
「ただ…死ぬにしても、自分勝手な思いで死ぬんだ…。他人に迷惑をかける様な死に方はするな…」

 ルルーシュが風呂の準備を始めた時にかけたタイマーが鳴り始めた。
「風呂の準備ができたようだ。とりあえず、お前の着替えとタオルと準備してやる。
そして、戻って来た時、スザクは本当に飼い主に忠実な犬のように、待っていた。
「風呂の準備ができた。入ってこい…。ゆっくり入って、少し、気持ちをリラックスしろ…」
ルルーシュがそう云った時、スザクはこくりと頷いた。
そして、立ち上がって、ルルーシュが準備してくれた風呂へと歩いて行く。
スザクの後姿を見て、ルルーシュは小さくため息を吐いた。
―――本当に、厄介な拾いものをしたもんだ…俺も…。
そんな事を思いつつも、キッチンに立って夕食の準備を始めた。
当然、二人分だ。
ここ最近、帰りが遅くて買い出しが出来なくて、冷蔵庫にも大した材料は残っていなかったけれど。
それでも、簡単なものであれば…二人分できる。
「スザク…ひょっとして暫く何も食べていなかったのか?だとするなら…あまり重たいものはまずいな…」
そんな独り言を呟きながら手を動かした。
シャワーの音が、暫く響いていた。
本当に暫く身体を洗う事が出来なかったのだろう。
スザクの姿は…あまり人ごとに思えない。
自分だって、いつ、リストラになるか解ったものじゃない。
今は、ちゃんと正社員と云う立場でいられて、派遣社員よりも少しだけ身分保障されているけれど。
リストラされる時なんて、本当に突然だ。
仕事ができるとか、出来ないとか…最近ではそれさえも関係ないかのような感じに見えている。
ルルーシュの会社でも正社員がリストラに遭っている事は知っている。
一応、希望退職と云う発表になるものの、実際にはそんな訳がない。
企業と云うのは従業員を儲けさせる為に雇っているわけではない。
企業が儲ける為に従業員を雇っている。
企業を守る為…その為のリストラと云うことだってあるけれど。
ただ、人が減った分、残っている社員に仕事が振り分けられる。
経費を浮かせる為にリストラしたのだから、仕事が増えたところで給料に反映する訳じゃない。
「いつ…俺がスザクになってもおかしく…ないんだよな…」
そう思うと気が重くなる。
今回の自分の行動は、自分でもモノ好きだと思ってしまうけれど。
でも、自分がそうなったとき、こんな自分みたいなモノ好きが自分の目の前に現れる可能性は限りなく低い。
―――そろそろ…決めなくちゃいけない頃か…?
ルルーシュはずっと、いつ、リストラ対象とされるか解らない現状を、放っておいていい訳がないと思っていた。
その為の準備も…随分以前からしていた。
そろそろ、その準備が整ってきた…。
そんなときに、スザクと出会ったのだ。
色んな意味でルルーシュに決断させるには充分だった。
このままいけば、今のスザクの姿が、未来のルルーシュの姿…。
そんな風に思えて来た。
―――やっと…決心がついた…。
ルルーシュがそう思いながら、夕食の準備を着々と進めて行った。
そして…シャワーの音が止まった事に気が付いた。
湯船に入って、一度だけ、『ザバァァァァ』と湯船からお湯が溢れ出た音がした後、スザクの
『気持ちいい…』
と云う言葉を聞いて、少しだけ安堵した。

 スザクは相当長いこと風呂に入っていた。
妙なもの音はしなかったものの、少し心配になってきた。
それでも、リストカット出来るようなカミソリのような刃物は置いていない。
尤も、昨今の安全設計になっているカミソリでリストカットしたところで、大した傷はできはしないが…。
暫くして、バスルームの扉が開いた音がした。
ルルーシュはやっと出て来たか…と思いながら、夕食の準備の仕上げを始めた。
そして、その匂いにつられた様に…スザクが出て来た。
「あ…あの…ありがとう…ルルーシュ…」
スザクがそう云いながら出て来た。
少しだけ、すっきりした顔をしている。
頬はこけているけれど…先ほどの様に瞳に力が全く入っていないと云う感じではなくなっている。
「少しは…落ち着いたか…?」
ルルーシュが尋ねた時…
―――ぐぅぅぅぅ…
スザクの腹が鳴った。
ルルーシュはそれを聞いて心の底から安心できた。
気持ちが切羽詰まっている時にはこうした形で人間の本能と云うのは外に出難い。
でも、こうして空腹を訴えるなら…生きる気力が出て来たと云う事だ。
「大丈夫なようだな…。とにかく…座れ…」
そう云って、先ほどスザクが座っていた場所に促した。
テーブルの上に並べられた夕食…。
「お前…いつから食べていないんだ?」
ルルーシュが尋ねると…スザクが指を折り始めた…
「えっと…1週間…くらいかなぁ…。水は…水道のある公園と転々としていたから…。でも、今日はもう、身体を動かす気力も…なくなっちゃって…」
流石に…そんな状態であったなら、気力もなくなると云うものだ。
「となると、消化のいいものにして正解だったな…。うどん…嫌いじゃないだろ?」
「うん…。僕、好き嫌いもアレルギーもないから…」
「なら、ゆっくりよくかんで食べろ…。それだけの期間、何も食べていなかったのだとしたら、消化器官も相当弱っている筈だからな…」
「うん…。ありがとう…」
そうルルーシュに答えながら、スザクはゆっくりとうどんを一本持ち上げて、小さく髪切った。
飲み込む時…少々苦しそうにしていたけれど…でも、なんとか食べる事が出来る様だと…そう思ってルルーシュも食事を始めた。
そして、スザクのうどんが半分くらいになった時、ルルーシュは口を開いた。
「なぁ…スザク…。俺がずっと準備してきた計画があるんだ…。スザク…それを手伝ってくれないか?」
ルルーシュの言葉にスザクはきょとんとした。
ルルーシュの言葉は…一体何を意味しているのか解らない様子だ。
「お前のお陰で…俺も決心がついたんだ…。だから…お前に手伝ってほしい…」
詳しい事、まだ云わない。
でも、ルルーシュはスザクに対して『ルルーシュを手伝う』と云う気持ちが生まれてくれれば、あんな辛い顔をしなくなるのではないかと…そんな風に思えた。
「僕で…出来る事…なのかな…?」
「お前が出来ない事は俺がフォローする。俺が出来ない事を、お前がフォローしてくれ…」
これで、フィフティーフィフティー…そう、云っているのだ。
「よく…解らないんだけど…。でも、僕、ルルーシュのお陰で変な方に進まずに済んだから…。ルルーシュの手伝いをすれば、恩返しになる?」
「ああ…」
「だったら…手伝う…。手伝わせて…」
スザクがルルーシュに、ウソでも何でもない、笑顔を初めてむけた。

END

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2010年07月28日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 201

Das Vorgeben dazu, schlecht zu sein



※スザルル歳の差です。スザクはルルーシュの家のお隣の大学生のお兄さん(19歳)で、ルルーシュは10歳の小学生です。

 ルルーシュは何となく日ごろから、不思議に思っている事がある。
隣の家に暮らす、枢木スザクと云う大学生の事だ。
いつも、違う女を連れていて…。
勉強の合間に自分の部屋の窓から隣の家の門のところを見ると、普通にスザクがどこかの女とラブシーンを繰り広げている。
そもそも、あんな風に、抱きあったり、キスしたり…なんて、何が楽しいのかよく解らない。
尤も、兄や姉がふざけてルルーシュを抱きしめたり、頬にキスをしたりするけれど。
それでも、彼のやっているような感じではない。
初めて見た時には…『まずいものを見てしまった…』と、思いもしたけれど。
誰が見ているか解らない状態であんな事をしている彼の方が悪い…と、自分に言い聞かせて、部屋に戻った。
その後、時々、窓の外を見ると同じようなシーンに出くわす様になった。
何故?と思う程、よく見かける。
そもそも、子供の教育上、あまりよろしくないとは思うのだけれど。
なんとなく、子供ながらルルーシュはそんな事を思った。
ルルーシュの兄と姉は、末っ子のルルーシュを凄く可愛がっていて、お隣のスザクに対してはあまり、いい印象を持っていない。
彼も高校卒業するまではルルーシュにとっていいお兄さん的存在だったのだけれど。
流石に高校生ともなると、色々忙しかったようだけど、スザク自身に時間があると、ルルーシュを構ってくれた。
そして、部屋が隣で、窓を通して会話ができたと云う事もあって…。
幼いルルーシュは、二人で決めた合図で、良く、スザクを呼びだして、話しをして貰ったものだった。
―――あれから…人間ってのは変われば変わるもんだ…。
齢10歳にして、そんな事を悟ってしまっていた。
スザクが大学に入ってから…スザクはルルーシュと話す事が極端に減った。
スザクの帰りが凄く遅くなったし、休日も、いそいそと出かけて行く事が増えた。
ルルーシュも小学校の友達との約束とか、あるにはあったけれど、スザク程ではない。
そして、スザクの家の玄関先でラブシーンを見かける事が増えた。
―――おじさんや、おばさんは…この事…知らないだろうなぁ…。
そんな風に思ってしまうのにも理由があった。
というのも、両親は共働きで…中々忙しい人たちであった。
スザクは一人っ子でルルーシュの兄や姉の様に、『弟(妹)の面倒を見なければ…』と云う、帰るための口実はない。
両親の稼ぎが多いから金に困る事もない。
夕食も結構外食とか、デリバリーを利用していたようだ。
時々、ルルーシュが子供料理ではあったけれど、作った事があった。
その時には…
『美味しいよ…ルルーシュ…。料理、上手なんだね…』
と、どう考えても子供料理で、見た目は勿論、味もそれほどうまいと云える代物じゃなかった筈なのだけれど。
その時のスザクの笑顔が好きで…。
ルルーシュはスザクの受験の時の夜食によく、おにぎりを作って、あの、窓から渡していた。
スザクは嬉しそうに受け取ってくれたし、それを見ていたルルーシュも、凄く嬉しかった。

 あれから…それほど時間は経ってはいない筈なのだけれど…。
スザクが大学受験の時に渡した、最後のおにぎりには、メッセージカードもつけた。
普段、そう云った事にあまり気の回らないルルーシュには珍しい事だったけれど。
でも、あの時は何となくそうしてしまった。
何故かは解らない。
ただ、あの時のおにぎりは、幾つも作り続けて来て、子供が作ったにしては、本当に形の整った、そして、塩加減も握り加減も抜群の自信作だった。
そして、それを渡されたスザクも…
―――嬉しそうにしてくれたのにな…
まぁ、ここまで色々考えてはいるのだけれど…。
ぶっちゃけ、スザクがルルーシュに構ってくれなくなって、寂しいのだ。
確かに、兄や姉が色々構ってくれるけれど…。
でも、それとは違う。
でも、スザクにはスザクの生活があって…それまで、ルルーシュに構ってくれていた事の方がおかしい…。
兄にはそう云われた。
確かに、兄や姉の生活を見ていると…その通りだと思わざるを得ない。
兄も姉もかなりもてるタイプで…。
で、兄は結構好きに遊んでいるみたいだし、姉は中学生の時から付き合っている彼氏と現在進行形で交際中だ。
兄の遊び人みたいなスザクは想像したくなかったけれど。
今のスザクはその兄よりもたちが悪いと思ってしまっている。
と云うのも、兄は少なくとも、自宅の玄関先であんなラブシーンを繰り広げたりはしないからだ。
ルルーシュの知らないところで何をしているか、解らないけれど。
そして、スザクが他の誰かと親密にしているのを見ると…。
凄く寂しくなる。
まだ10歳のルルーシュに愛だの恋だのと云う概念はないと思われるのだけれど。
だから、これまで大切にしてきたおもちゃを誰かに横取りされた気分…とでも云うのだろうか…。
そんな事を考えてしまう。
でも、兄や姉に恋人ができた時、こんな風に寂しいとか、悲しいなんて思わなかった。
と云うか、構い過ぎる兄や姉が少しでも弟離れをしてくれれば…などと考えてしまったものだけれど。
ただ、兄も姉も
『それはそれ、これはこれ』
と、恋人ができてもその辺りのスタンスは変わらなかったらしい。
姉の方はうまくやっているらしいけれど、兄の方は恋人ができてもルルーシュの方を優先してしまうものだから…。
それでうまく行かないと云う事は何度かある。
しかし兄の方は…
『それはね…ルルーシュよりも魅力的でない彼女が悪いんだよ…』
などと、のたまってくれたのだ。
ぶっちゃけ、これは迷惑以外の何物でもないのだけれど。
しかし、この兄姉のブラコンはきっと、一生続く様な気がしてきたので、ルルーシュは諦めた。
そんな事よりも…。
今はスザクの事…。
今も、恐らくデートの帰りなのだろう。
1週間前に目撃した女とは別の女とラブシーンを繰り広げていた。
それをちょっとだけずらしたカーテンの隙間から見ている。
スザクも女もその行為に夢中でこちらに気づいている様子は全くない。
そして、会話が…聞こえて来た。
これも時々ある話し。
こんな寝静まっている夜だから…声が響く。
御近所の迷惑を考えろと…ルルーシュは思っていた。
そして、それと同時に…何とも云い現わせない悲しさを…強引に押し殺している自分がいた。

 あの子と、最後に話したのはいつのことなのかな…。
そんな事を考えながら、目の前にいる女の唇を吸い上げている。
女の方は…多分、割と遊び慣れているのだろう。
大学に入ってからこうした形で異性との行為をする様になったスザクはそう思った。
いくら、この行為が物理的に気持ちいいと思っていても…。
自分の気持ちは全然気持ちよくない。
それでも、行為にのめり込んでいる時には…何となく忘れられる気がするから…。
大学に入ったばかりの頃は、初々しいボウヤ…と云うイメージだったらしい。
実際に、それまで女子と付き合った事なんてなかった。
そこまで思える相手がいなかったと云うのもあるけれど。
自分を慕ってくれていた…『あの子』を穢したくなかった。
物理的には勿論、精神的にも…。
だから、自分を軽蔑してくれればいい…。
そんな風に思っていた。
裏切られたと…そう思って、自分から離れてくれればいい…。
自分の気持ちが怖かったから。
純粋に『お隣のお兄さん』として慕ってくれている『あの子』を自分の激情に巻き込んではいけないと思ってしまっている。
スザク自身、元々はそんな趣味はない。
子供は子供だったし、同姓に対してそんな感情を持ち合わせた事なんて一度もない。
エロ本を見ればそちらで反応するし、男の裸を見たってそれだけのもの…。
でも…ある時、気付いてしまったから…。
大学も…本当は実家から離れるつもりだった。
でも、すべりどめで受けた実家から通える大学しか、合格出来なかった。
『あの子』はそんな僕に本当に…純粋な笑顔で
『おめでとう!スザク!僕、また、おにぎり作ってあげられるね!』
その言葉が痛かった…。
自分は、そんな風に笑いかけて貰える様な…そんな人間じゃない…。
そんな風に思っているから…。
この笑顔をいつか、壊してしまいそうで…怖くて堪らなかった。
それに、すべりどめの大学しか、合格できなかった。
毎日のように、一人で勉強している自分に、おにぎりを作って持って来てくれた。
最初の頃のおにぎりは不格好で…。
でも、一生懸命、その小さな手で握ったことがよく解る…そんなおにぎりで…。
食べて見ると、掴んだ段階で崩れかけていたし、食べていると、ぼろぼろと崩れて行く様な…そんなおにぎりだったのは、高校受験の時…。
大学受験の時には…しっかりとしたおにぎりで…でも、口に入れると心地よくほぐれる様な…。
おまけに形を変えて中身の違いを知らせてくれていた。
そんな事をしてくれるルルーシュを見ている内に…。
自分では認めたくない…と云うよりも認めてはいけない感情に支配されつつあることに気が付いた。
そして、そんな事に気が付いた自分に怖くなった。
モラルとか、世間的にどうとか…そんな事よりも…。
自分がそんな感情を抱いていることで、ルルーシュをいつか傷つけてしまうかもしれないと云う…。
そんな恐怖感…。
彼は…純粋にスザクを慕ってくれていて…スザクのその気持ちが凄くどろどろしていて、汚いものに感じてしまった。
だから…
ルルーシュの傍から離れられないなら…ルルーシュが自分に近付かないようにしてしまえばいい…。
そう思ったのは…大学の合格発表の日だった…。

 それから…大学に入って、確かに忙しい日々が続いた。
新入生と云うのは考えていたよりもかなり忙しい。
それでも、ルルーシュは結構夜遅くまで起きているから…。
なんとかしてルルーシュを自分から離れさせようと…画策した。
『彼女』と云うカテゴリーの存在は簡単に出来た。
コンパとか、あまり興味はなかったけれど、参加して、あまり飲みたくもないアルコールを口にしながら…
『俺…まだ、一度も女の子と付き合ったこと…ないんだよね…』
の一言で、飛びついてきた女子がいた。
同じ学部で、相手は1年浪人していたらしく、一つ年上だった。
割と、男と遊び慣れていたようで…キスもセックスも相手が勝手にそんな雰囲気を作って、スザクもその雰囲気に自ら呑まれて行った。
それからは、付きあっては別れ…の繰り返し。
今の『彼女』は3日前から付き合い始めた先輩の大学院生…。
スザクもそんな事をしていて、だいぶ手慣れて来ていて…。
相手がスザクのキスに酔っているのが解る。
気持ちは入っていないけれど、経験だけでそれなりに相手を酔わせることはできる事を知った。
あの、ルルーシュの部屋の窓から…今日も、カーテンの隙間からこちらを見ている視線を感じる。
―――ルルーシュは…俺の様にならないで…
そんな矛盾している事を考えている。
ルルーシュの…視線…。
見ているわけじゃないけれど…背中に突き刺さっている事は解るし、物凄く痛い。
漸く、唇を放した時、目の前の女がふっと笑ったけれど、その瞳はひどく冷たい色をしているのに気が付いた。
「ねぇ…お別れのキスの後…何を考えているのかしら?と云うか、私じゃ、テクが足りないのかしら?『来る者は拒まず、去る者は追わず…』がモットーのクルルギくん?」
女が尋ねて来た。
そんな彼女にスザクはへらっと笑った。
「そんな事は…。先輩とキスしながら考え事出来る男なんて…いる訳ないでしょう?あんまり、気持ちよくって…」
適当なウソが次から次へと出てくる。
自分がこれほど簡単に適当なウソが着ける人間だとは思わなかった。
「ウソを吐くにはまだ、君はボウヤ過ぎるし、経験も足りないわよ?ま、別にいいけど…。君、セックス、初心者の割に上手だし…」
女がそこまで云った時、スザクから身体を放した。
「でもね…そう云う、どうでもいいセックスフレンドなら、こんな、実家に連れて来るのはまずいわよ?御近所とか…色々うるさいんじゃないの?」
一応、大人の対応…だと思う。
セックスフレンド…そんなものが欲しい訳じゃない。
ただ、ルルーシュに軽蔑されれば…それでいい…。
だからこそ、どうでもいい女相手でもルルーシュの見ている前で汚い自分を見せる必要があった。
御近所と云ったって、この辺りの住人でこの時間に外を見ているモノ好きなど、ルルーシュくらいしかいないし、誰かに見られて、適当な噂が立てられたところで、そんなに気になる訳じゃない。
両親だって、現在、出張中で留守だし、この家にいる事はあまりない。
スザクのそんな様子を見て、女がクスッと笑った。
「なんだか…思い詰めた顔しちゃって…。まぁ、私は深入りする気はないわ。でも、君とのセックスはしたいから…いつでも声をかけてね?」
彼女はそう云ってスザクの頬に軽くキスをして、彼女が路駐した車の方へと歩いて行った。

 そんな女の背中を見えなくなるまで見送って…。
そして、玄関のかぎを開ける。
自分で電気を付けながら、風呂の準備をして、自分の身体にまとわりついている女の香水の強い香りを消す様に…シャワーを浴びた。
―――気持ち…悪い…
そんな風に思ってしまう。
さっきまで、あれほど熱く抱き合っていた…そのにおいが…酷く心地悪い。
いつも…そうだった。
ルルーシュの…あの目に映っている自分は…どんな姿に映っているのだろうか…。
自分でそう仕向けていると云うのに…。
そんな事が気になる。
ルルーシュは…綺麗なままで…。
こんな自分の様に汚くなって欲しくないと…穢れてしまわないようにと…。
自分の中で正反対の感情が渦巻いている。
ルルーシュを自分から離さなければいけない…。
ルルーシュが自分から離れて行って欲しくない…。
そんななかで、涙が出てくる。
いつもそうだ。
女を抱いていても…ルルーシュの事が頭を離れない。
あんな、まだ何も知らない、綺麗なルルーシュに対して抱いている…。
自分のどす黒い感情…。
ルルーシュの兄姉が…スザクを気に入らないのは…当然だ…。
そんな風に思える。
自分が彼らの立場でも、こんな自分を見ていたら気に入らないと思うだろう。
人心地ついて…身体を拭いて、下着だけ着けて、2階の自分の部屋に入る。
電気を点けた時…窓に『パチン』と何かが当たった音がした。
それは…以前、ルルーシュがスザクと話したいと云う時に送ってきた合図だ。
今は…会いたくない…。
話したくない…。
そう思いながら、その音を無視してベッドにごろりと横になった。
暫くして、また、『パチン』と音がする。
それもスザクは無視した。
一体何だと云うのか…。
それから、更に間隔が狭くなって音がする。
流石にうるさいと思い…カーテンを開けて、窓を開ける。
すると…外観の為の飾りとなっている出っ張り部分に…
「え?」
ルルーシュの部屋の窓は閉まっているし、既に電気が消えていた。
恐らく、スザクの影を見て、引っ込んだのだろう。
代わりにそこにおにぎりが3つのっている皿にラップフィルムをかけられたものとペットボトルの麦茶とカードがトレイに乗せられて、置かれていた。
カードを見ると…
『スザクへ
毎日夜が遅いみたいだし、最近、やせたみたいだから。
飲み過ぎるな。
ルルーシュ』
短い、簡潔な文章だったけれど…。
それだけに心にぐさりと来る。
―――頼むから…これ以上…俺を…ルルーシュにとっての危険な人物にしないでくれ…
そんな事を思いながら、窓を開けたまま床に膝をついて、ただ、肩を震わせていた。
その頬には…止まらない涙がボロボロと流れていた…。
本当に…。
まだ子供なのだから…きっと、スザクの中にある黒い感情を知らないから…こんな事をしてくれるのだと思う。
でも、本当の事を知ったら…きっと…ルルーシュは…。
この時、スザクは気付いていなかった。
自分の感情を抑える事が精一杯で…。
そのカードの…ルルーシュの筆跡が…少し震えている感じがしていた事を…。
そして、どんな思いで、ルルーシュがそのおにぎりを作り、カードを書いたか…をその時のスザクは…気付いてやることが出来なかった。

END

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2010年07月27日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 200

夏休みの悪巧み(?)



※子スザルルのお話しです。夏休みの…ある日のお話しです。

 朝から暑い…。
ここ最近、昼間は35度越えの恐ろしい暑さの中に晒されて、夜は日が落ちても、すずしさを感じる事はない。
夕立さえも降らない状況の置いては、このままの状態だと、あと1週間で自分が干からびてもおかしくはないのではないかと…。
そんな風に思えて来ているのだけれど。
それでも、人間と云うのは自分で考えている程、軟に出来ていない。
と云うか、いざとなると結構しぶとい。
ルルーシュもあまり体力に自信があるとは云えないけれど…。
梅雨明けからの猛暑の中、ちゃんと息をしている。
「いっそ、昇天してしまった方が楽な気がするな…」
山の様に出ている宿題の山を目の前に、そんな事を呟いた。
その時…
―――バァァァン!
勢い良く、ルルーシュの部屋の扉が開かれた。
「ルルーシュ!遊びに行こうぜ!」
そう、それこそ、今開けられた扉と同じくらい勢い良く、その人物の声が部屋の中に響き渡った。
「スザク…。相変わらず元気だな…。と云うか、宿題は?結構な量があるだろう?」
「ルルーシュのを見るから平気だ…。とりあえず、絵日記だけはちゃんと書いているぞ!」
「(怒)」
現在、夏休み中で、夏休みと云うのは、長い休みであると同時に、その分、この暑苦しい中…と云うか昨今の暑さで、病院に運ばれるとか、最悪、死に至ってしまう程の状況下で、かなりの量の宿題が出るのだ。
ルルーシュ自身、問題を解くこと自体にそれほど苦悩する事はないのだけれど、その量の多さにげんなりしている。
―――これは…確実に学校のエアコンによる電気代削減のための休みだな…
などと考えている。
昨今の国の政策では…。
子育て支援などと云って、各家庭に現金をばら撒いているが、学校の環境作りに対しては経費を削減している状態なのだ。
かなり矛盾しているのだけれど…。
それでも、それが国の政策であり、方針であると云うのなら、まだ、選挙権も持たないルルーシュ達はそれに従うしかない。
出来ることなら、このくそ暑い中、まるでいじめの様な量の宿題も削減して貰いたいと思ってしまう。
この、夏休みドリルだってタダではないのだから…。
その先、そのドリルを作っている出版社がどうなるか…と云う事を考える程、ルルーシュも大人になってはいない。
と云うか、慣れ合いで子供の夏休みに大量の宿題を出されたのでは堪らない。
確かに、何もしないと云うのはいかがなものかと思うけれど。
休みを休みとして堪能できない程の宿題、また、泊りがけでの旅行を不可能にする『●×の観察日記』と云うのは、その子供の両親にとっても迷惑以外の何物でもない。
夏休み中、毎日観察日記を吐けるように云われたとしても…。
国内であれば、100歩譲って持って行く事も可能な場合もあるが…。
海外に持って行くのは確実に不可能だ。
そう云う場合はどうすればいいのだろうか?
また、どうしてもと云う場合、観察日記の書かれていない日が出来るわけだけれど。
毎日観察日記をつけられている生徒と、そうでない生徒の家庭事情がはっきり分かれてしまい…。
見ていて何とも思わないのだろうか…と、それを見て、評価を下さなければならない現場の教員たちにもある意味、同情してしまう。

 そんな事はともかく…。
スザクがこの勢いで入ってきたと云う事は、ルルーシュがこれ以上何を云ったところで、引く訳がない。
それは、生まれた時から一緒にいるルルーシュには良く解っているから…。
とりあえず、今の今まで、うんざりした顔をして宿題の山を見ていたルルーシュは腰をあげた。
「で、今日はどこに引っ張り回されるんだ?僕は…」
ルルーシュは少々厭味を込めた声で尋ねる。
すると、スザクは少し、『心外だ!』と云う顔をしてルルーシュに返した。
「そんな…こんな引きこもり生活をしているルルーシュを心配したおばさんが遊園地の招待券をくれたんだよ…」
このくそ暑い時期に…。
炎天下で…。
遊園地などで遊ばなければならないのだ…。
ルルーシュの中ではそんな風に思うのだけれど。
ただ、スザクの方は嬉しそうにルルーシュを誘いに来ているものだから…。
昔から、ルルーシュはスザクに甘い。
と云うか、微妙に逆らえない雰囲気をスザクが醸し出しているのだけれど。
お互いにその自覚がないから、ルルーシュは『仕方ない』と思うし、スザクは『ラッキー♪』などと考えてしまっているわけなのだけれど。
まぁ、自覚のないうちはお互いに幸せって事でいいだろう。
と云うか、どんな状況であれ、互いに楽しいと、幸せだと思っていればそれで良しと云う事で…。
ルルーシュが自分のバッグに必要な物を詰めて、着替え始めた。
「おい…何をやっているんだ?」
「炎天下の遊園地に行くんだろう?なら、タオルとかあった方がいい。それに、帽子は必需品だ…」
「そんなに荷物持って行って大丈夫かよ…」
スザクがあまり力のないルルーシュに心配そうに声をかけるのだけれど。
ルルーシュにしてみれば、半ば、哀れみも含まれているような、痛々しさを感じています…な視線に相当複雑な気持ちを抱く事になるけれど。
しかし、ここで何を云っても遊園地に引っ張って行かれる事は必然なのだ。
それに、こんなスザクを…―――認めたくはないけれど―――結構気に入っているルルーシュだ。
普通なら、ルルーシュが可愛がっている妹のナナリーにそんな風に云われても、きっと、出かけようとまで、考えは及ばなかっただろう。
きっと、適当にその、子供ながらに恐ろしいと思ってしまう、逃げる為の理論武装…じゃなくて、弁舌の才を発揮して回避する。
でも…スザクの場合…。
スザクのその単純さにはルルーシュの屁理屈は通用しない。
ある意味、凸凹コンビなのだけれど。
だからこそ、気が合うのかもしれない。
それでも…。
気が合うとか、合わないとか云う問題は別にして…。
スザクのその、奔放な性格と、何かと体力に自信のないルルーシュに、体力バカのスザクと同じ事をさせようとするその姿勢を何とかしてほしいものだと思ってしまう。
それはある意味仕方ないとも思う。
―――大体…スザクの体力について行ける一般人なんているもんか…
客観的に見ても、そう思うのだけれど…。
それでも…
―――スザクと一緒にいると…楽しいのは…確かだけれど…な…

 目の前で出かける準備をしているルルーシュを見ながら…。
やっぱり、ルルーシュは凄いと思ってしまう。
絶対にスザクの体力についてなどいけないのに…。
それでも、スザクがちょっと我儘を云えば聞いてくれる。
今日だって、日中の予想最高気温は36度なんて天気予報で云っていた。
そんな中、絶対にルルーシュは出かけるなんて事を考える筈がない。
元々、インドアなルルーシュだ。
今日だって、抑え目にかけられているエアコンの効いている部屋で夏休みの宿題をして、その後は、自分の好きな事をやっているつもりだったに違いない。
ただ、ルルーシュのやろうと思う事に関しては、どう考えても、インドアで…。
と云うか、そんな事を続けていると確実に、引きこもりへの道へとまっしぐらになりそうな感じがする。
読書にパソコン…。
確かに灼熱の太陽が輝いている中にそんなルルーシュを連れ出すのは…何となくかわいそうな気もするのだけれど…。
スザクはどうしても、ルルーシュを連れて行ってみたい場所があった。
出来れば、地区の肝試しの前に!
と云う、なんだか…と云うか、本人にしか理解できない野望を持っていた。
まぁ、その中身を聞いてしまうと、何ともスザクらしいと思えてしまうのだけれど。
ただ、スザクはまだ、その理由を誰にも云わないし、これから先もとりあえず、いう予定はない。
―――だって、きっと、ルルーシュはバカにする。いつも、俺のこと、変な風に笑うけど…。今回の事は、それが実行される前にばれたら、確実にルルーシュは変に下準備して、俺の考えている方向に行かないようにしちゃうからな…
恐らく、これを読んで下さっている皆様の中で、スザクのこのトンチンカンな考えで、困惑されている方も多いと思うが…。
しかし、スザクの中ではちゃんと理屈が通っていて、うまく行けば、スザクの望む方へとむいて行くと信じているわけなのだ。
まぁ、肝試しなどと云う言葉が出てきた時点で何となく、お察しいただけた方もいるかとは思われるが…。
とりあえず、スザクの気持ちをくんで、先に行こうと思う。
まぁ、スザクはスザクなりに色々考えているのだ。
今は多分、スザクの幸せの為に…。
小学生の段階で
『誰かの為に…』
などと心の底から考えられる様であると、それはそれで気持ちが悪い。
と云うか、大人になってからもそんな事を考えて、それを実行出来ている人間を見た事がない。
そんな事はともかく、現在、スザクは自分の、今、心の中で温めている作戦(妄想とも云うが)の為に結構、ない知恵を絞っているわけだ。
尤も、ルルーシュがうまくそれに乗っかってくれればスザクとしては超ハッピーになれるのだ。
山の様にある、宿題をそっちのけで考えていたのだから。
それがいいとか、悪いとか云う問題は既にスザクの中にはない。
作戦が一応、一通りまとまったとはいえ、スザクとしては『ルルーシュ』と云う救世主が付いている限り、7月中から宿題に手を付けるなどと云う事は基本的にあり得ないだろう。
そもそも、毎日コツコツ大量の夏休みの宿題をこなしている小学生、中学生、高校生など見た事がない。
あれだけの量の宿題をこなしつつ、夏休み前から話に花が咲いている夏休み中の遊び計画をこなせるかどうか…。
物理的に考えて、精神的に考えて、かなり無理があるだろう。

 そんな事はともかく、スザクはとりあえず、作戦の為の第一歩を踏み出す事に成功したのだ。
ここで、ルルーシュがスザクの強引さに負けずに『家にいる!』などと云い始めたら、作戦開始する前に終わってしまう。
まぁ、卿である必要があるかるかどうかという問題はさておき…。
「ルルーシュ…準備出来ただろ?早く行こう!」
「お前…このくそ暑い中、プールならともかく、なんで遊園地なんだ?」
ある意味、至極当然の質問だ。
いくら夏の催しとして水をばら撒く様なイベントがあったとしても、それは、あまり意味を成さない。
炎天下のアスファルトに水を捲いたところで、すぐに蒸発し、その蒸気で逆に暑くなりそうだと思えてくるのだけれど。
「遊園地だって、涼めるところはあるし…。それに、気候のいい時期と違って思っているほど混んでいないと思うぞ…」
スザクの言葉に、ルルーシュは『甘いな…』と思うけれど。
その辺りは敢えて何も云わない。
この炎天下の中、広い公園に子供を連れだして散歩している者だっているのだ。
ニュースの中継で人があふれている遊園地の様子を見たことだってある。
スザクの場合、そう云った情報を仕入れていないのではないかと思うのだけれど。
「……。とりあえず、スザク、帽子は?帽子を被っていないと、流石のお前でも日射病、熱射病、熱中症…それぞれにかかりそうな気がするが…」
「あ、帽子は母さんに持たされた。一応持って来たぞ…」
そう云って、お尻のポケットにねじ込んでしわになっている帽子をルルーシュに見せた。
ルルーシュは結構神経質なところがあるから、スザクのそう云った云わば男の子っぽいガサツさに少しだけ顔をゆがめる。
「普通に被っていればいいじゃないか…。すぐに出かけるつもりだったなら…。それに、僕の部屋に誘いに来るだけなら手で持っていればいいじゃないか…。手ぶらで来ているんだから…」
ルルーシュがそんな風に云うと…。
「だって、ルルーシュ…。俺が帽子を持っていると、外に連れ出されると云う事を確信するから、考える時間が増えるじゃないか…」
スザクのそのセリフにルルーシュが『?』な表情を見せた。
実際に何の事なのか解らないと云う感じだ。
そんなものを見せなくたってスザクがルルーシュを外に連れ出そうとするのはいつもの事だ。
今更帽子を見たところで何を思う訳でもない。
まぁ、そのこと自体に深い意味はないのだけれど。
「そうだ…おばさんが、遊園地の1日フリーパスチケットとこれ、おひるごはんとかに使いなさいって…」
「と云うか…なんで僕にいわないで、スザクに云うんだ?」
ルルーシュのこの上ない感想が出て来た。
確かにスザクに手渡されているのはルルーシュの母からのものだ。
母の仕事の取引先の人からもらったものだと云う事は…封筒を見れば解る。
「ルルーシュに云うと、絶対にどこかに雲隠れして家の中に閉じこもっているからだって。それに、今日はおばさんも仕事の関係で一日居ないって云ってたぞ…」
「だから…なんで僕に云わないでスザクに云うんだよ…母さんは…」

 色々と複雑な思いを抱きつつも…。
それでも、まぁ、スザクがこの調子だからルルーシュはスザクに付き合って出かける事になる。
「スザク…とりあえず、そのままチケットとか持っているのはまずいから…僕のバックに入れて行こう…。財布もあるし…」
「ああ、じゃあ、その荷物俺が持つよ…。ルルーシュの事だから、途中のコンビニで凍っているペットボトルを買っていくつもりだろ?」
スザク自身、ルルーシュの事をよく解っている。
だから、ルルーシュの行動パターンも理解している。
「ああ…。でも、スザク…」
「確かにペットボトルを入れれば重たくなるからな…。流石に体力のないルルーシュにそんなものを持たせられないからな…」
何かとカチンとくる云い方をする…。
そんな風に思うけれど、図星だからその辺りは何も云えない。
そして、とりあえず、母親に出かける旨を伝えて家を出た。
「しかし、このくそ暑い中、遊園地で何をするつもりなんだ?」
チケットを貰ったから…と云うだけの理由以外に何かがあると察知したルルーシュがスザクに尋ねる。
「お化け屋敷…」
スザクがただ、一言答える。
スザクのその言葉にルルーシュはピタリと止まる。
「はぁ?」
「だから…お化け屋敷…。そこなら涼しくなれるだろ?それに、肝試し大会の予行演習にもなるし…」
スザクの言葉にルルーシュは困惑しているようだ。
まぁ、確かに…。
お化け屋敷なら、恐らく、建物内はそれなりにエアコンも効いているだろうし、実際に、涼を得る為に作られたものでもあるのだけれど。
ただ…
「お前…あんな、バカップルの巣窟に行きたいのか?あんなもの…彼女もちの男どもが下心丸出しで、いざとなれば、抱きつかれればこれ幸い…などと考えているようなところだぞ?」
ルルーシュのこの言葉に…。
ぶっちゃけ、スザクの中にも僅かばかり(?)のそんな下心があった事もあり、少々背中に汗をかいてしまっている。
「あ、でも、今日は平日だし…」
「ああ云うところはそんな、平日に仕事をしている大人はあまり行かない。まぁ、中学生、高校生がたくさん来ているだろうな…」
やはり口ではルルーシュには叶わない…。
そんな事を思いながら、しょんぼりした犬みたいな顔をしていると…。
「それでも、スザクとだったら…楽しいかもな…」
ちょっと、顔をそむけて、多分、本人は絶対に認めないけれど、目の下のあたりをちょっと赤くしてルルーシュが云っている。
ルルーシュのその言葉に…スザクの顔にパァァァァっと明るい花が咲いた。
―――やった♪第一段階クリア…
スザクのそんな本音を知らないルルーシュはスザクに『仕方のない奴…』とふっと笑った。
そうして、コンビニに入って行く。
「おい!スザク…早く買い物をして、早く行こう!」
ルルーシュの言葉に、スザクははっと我に返ってコンビニへと駆けて行くのだった。
そして、第二段階の為に…。
心の中でスザクは祈っている。
―――ルルーシュが…お化けを怖がりますように…。
末恐ろしい(?)小学生とでも云うべきだろうか…。
ある意味命知らずかもしれないけれど…こうしてスザクの無邪気(?)な願望は前へと進んで行くのだった。

END

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2010年07月24日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 199

Moratorium



※それは…夏休み中の、ほんの一時の思い出…

 ここは…とある山の中の一軒の民宿…。
山の中と云うと、ペンションを思い浮かべる者もいるのだけれど。
ただ、作り的にはペンションと云うよりも民宿と云った方が作りがしっくりくる。
「シャーリー…ちょっと買い出しに行って来るから、電話の番…頼むわね…」
この民宿の女将である彼女の母親が夏休みに入っている娘にそう云って、彼女の返事を待たずに出て行った。
まぁ、彼女としても毎年、この時期になると何かと忙しくなるから…という事で、夏休みは基本的にあまり友達と出かける約束はしない。
これから、大学生などの旅行者とか、ライダー達がこの民宿に押し寄せてくるのだ。
大学生の貴重な自由時間を楽しむ者であったり、たまの休日を楽しみに来たり、中には普段の生活に草臥れて英気を養いに来たり…。
そんな、色々な人たちが集まって来る。
基本的にここに人が集まって来るのは、夏休みか、冬のスキーシーズン…。
昨今、スキー場は閑古鳥と云うところも多くて、ここ最近では夏休みが稼ぎ時だ。
だから、この時期は一年で一番気合の入る時期でもあるのだ。
仕方ないと解っていても…。
同級生達が遊びに行く計画を立てているのを知っているだけに、彼女も少しため息をついてしまっても、誰も文句は言えないだろう。
それでも、確かに遊びに行く計画を立てていたり、遊びに行く同級生は確かに羨ましいと思うけれど。
こうした商売の場合、楽しみな事もあるのだ。
シャーリーは人見知りする方ではない。
というか、相手がどんな性格であってもとりあえず、声をかけて見る…という事をする。
それで、迷惑がられていると解れば、それ以降は必要以上に声をかける事はしない。
でも、話しをしてくれた人には、その後もその客が帰るまで話しかける。
そして、その客が帰って行く時、ちょっと寂しい思いをするのだけれど…。
それでも、そんな寂しさに耽っている暇もなく、次の客が訪ねてくる。
来る客はそれぞれが、それぞれに何かを抱えている。
笑っていても、実は凄く悩んでいたり、何かから逃げていたり…。
本当に様々だ。
中には自殺でもしそうな顔で来る人もいるけれど。
それでも、ここに来て、ただ、ぼんやり過ごしたり、人とのふれあいを持つ事によって、少しだけ、来た時と違う表情で帰って行く。
そう思うと…何となく、こんな小さな民宿…。
何となく無駄なもののように思えてしまう事もあるけれど、そうやって見送る時にはやっていた良かったと思う事も多い。
人は機械じゃない。
時には心の栄養補給だって必要だ。
物理的な、身体的な栄養補給のほかに、そうやって心を癒してあげないと…その事に気づかないと…。
気付かない内に立てなくなってしまうことだってある。
そんな時、この民宿は役に立っているのだろうと…。
そんな風に思う。
そして…今日もまた、都会から二組のお客さんが来た…。

―――カラン、カラン…
 お客さん用の出入り口には電子音のするチャイムではなく、シャーリーが気付いた時には既にその場所にあった鐘が鳴り響く。
「いらっしゃいませ…」
シャーリーがその音を聞いて、条件反射的にお客さん用の出入り口にかけて行く。。
―――今日は…男の人、二人…だったよね…。
「あ、予約をしていた、枢木スザクと云いますが…」
入口のカウンターの中に立ちシャーリーは入って来た男を見た。
そして、予約者名簿を探し…
確かにその名前がある事を確認して、宿泊者の記名用の紙を差し出した。
「ここに、お名前と、御住所と、電話番号と、年齢の記載をお願いします…」
そう云って紙とペンを差し出すと…その男は大きな荷物を置いてその紙に必要事項を描いてシャーリーに渡した。
「有難う御座居ます…。では、お荷物をお持ちしますね…。お部屋にご案内します…」
そう云って、シャーリーがその人の荷物を持とうとした時、その男が驚いた顔をする。
「えっと…結構荷物が入っていて…重たいから…」
ここではお客だと云うのに、何故にこんな遠慮の仕方をするのだろうか…。
シャーリーはそんな事を思いながら、クスッと笑った。
「大丈夫ですよ…。私、こう見えても力あるんですから…」
そう云って、力瘤を作ってみせる。
そんなシャーリーを見てその男は笑った。
「有難う…。もし重たかったら云って?僕が自分で運ぶから…」
癒しを求めてここに来たのかな…と思えて来た。
と云うか、こんなところまで来て遠慮する事もないだろうに…と思ってしまう。
そして…実際に持って見ると…。
何が入っているのか解らないけれど…
―――うっ…結構重たい…
そんな風に思うのだけれど、こうなると妙な意地を張ってしまうのは何故だろうか?
ちょっと、ふらふらしながら、彼の宿泊する部屋は3階なのだけれど…。
そこまで運ぼうと、自分に気合を入れる。
「え…っと…3階のハクサンイチゲ…が、枢木さんの…お部屋になります…」
少々、その荷物の重さに、言葉が途切れてしまう。
そんなシャーリーを見て、スザクがクスッと笑って、シャーリーから荷物を取りあげた。
「3階のハクサンイチゲ…だね…。ありがとう。鍵だけ貸してくれるかな?僕が自分で行くから…。えっと、この近所の温泉巡りをしようと思っているんだ…。ガイドマップとかあれば、部屋に持ってきてくれる?」
「あ、ハイ…。解りました…」
スザクはそう云って、さっさと階段を上って行ってしまった。
シャーリーが持った時には相当重たいと感じたのだけれど…。
しかし、スザクはそれを軽々持って階段を上って行った。
カウンターに戻ってスザクが書いていたメモを見ると…
「え?私より10歳も年上なんだ…。そんな風に全然見えなかった…」
そんな風に独り言が漏れ出した。
高校生の恰好をさせたら、シャーリーと同じ歳だと云っても違和感がないとさえ思ってしまったくらい、童顔だった。
そう思いつつも、とりあえず、ファイルにそのメモを綴っていく。
そんな作業をしている時…
また、玄関の大きな鐘が鳴りだした。

―――カラン、カラン…
この音も、こう頻繁になる様になると、なんだか、夏だと思えてくる。
山の中にあるだけあって、避暑に訪れる人も少なくないのだ。
「いらっしゃいませ…」
そう云いながら顔をあげると…シャーリーの動きはつい、止まってしまった。
―――綺麗な人…
頭に浮かんだのはその一言…。
本当に男か、女かも解らない…。
そのくらい整った顔をしている。
ただ、予約名簿には…きちんと男であると書かれているので、男なのだろうと…そんな風に思った。
「予約していたルルーシュ=ランペルージです…」
綺麗な顔をしているけれど…。
なんだか本当に疲れた顔をしている…。
そんな風に思えて来た。
きっと、普段の生活の中で色々あって…。
そんなときにこの民宿を選んでくれたのかもしれない…。
そんな風に思うと少しだけ嬉しくなる。
「では、こちらにお名前と、御住所と、電話番号と、年齢を書いて下さい…」
手慣れた手つきで用紙とペンを差し出した。
すると、その相手は黙ってペンを受け取り、さらさらと書いた。
―――わぁ…顔だけじゃなくて、字も綺麗…
なんだか、全てが綺麗に見える様な気がした。
その仕草も、動き一つ一つが洗練されている様に見えた。
そして、ルルーシュが全てを書き終えて、その用紙をシャーリーに返した。
「有難う御座居ます。えっと、お荷物をお持ちしますね…。お部屋にご案内します…」
そう云って、彼の荷物を見ると…。
さっきのスザクの荷物と比べると小さい気がする。
そして、持って見ると…断然軽い…。
旅慣れしている人は結構荷物をコンパクトにまとめて来ると云うけれど…。
「ランペルージさんのお部屋は3階のウルップソウになります…」
「へぇ…高山植物の名前が部屋の名前になっているのか…。それに、ここに飾られている写真は全て高山植物だろう?これは誰が…?」
ルルーシュが興味深そうに廊下に飾られている額の写真を見ながら尋ねて来た。
「父です…。元々、山が好きで…。本当は東京の出身なんですが、高校の時に山岳部に入って、それから山が大好きになって、祖父母の反対を押し切ってこの民宿を開いたそうです…」
そんなシャーリーの言葉に、ルルーシュがなんだか、羨ましそうな笑みを浮かべた。
そんなルルーシュを見ていて、ルルーシュが恐らく、都会の生活に疲れ切っているのだと…そんな風に思った。
大体、コンクリートの中で生きて行く事に疲れた人は、同じような顔をするから…。
でも、その疲れが癒されて、英気を養えば、また、元の場所へと帰って行き、こちらの環境から元の場所に帰れなくなってしまった者の中にはここにい付いてしまう事もあるが…。
「へぇ…。俺もそんな風に出来ればいいが…そんな勇気もなくてな…。あ、これはハクサンコザクラ、これはタカネセンブリ…凄いな…」
本当に興味深そうに見ているし、高山植物にも詳しいらしい。
「ランペルージさんは高山植物にお詳しいんですね…」
「あ、俺自身は山登りはしないんだ…。本の知識だよ…」
そんな事を云いながら苦笑した。
そして、そんな会話をしている内に彼の部屋に到着した。
「では、ごゆっくりどうぞ…」

 下に戻り、今日来た二人の予約内容を見ると…。
二人とも同じ歳で、二人とも同じ期間の予約だった。
シャーリーの勘だったけれど…
―――多分、二人とも、何かに疲れて来たんだろうなぁ…。あのランペルージさんって人…ホントに疲れた顔をしていたし…。
あの二人のこの民宿の滞在期間は2泊3日…。
そう長い期間じゃない。
多分、彼らの都合がそれだけの時間しか確保できなかったのだろう。
と云うか、まだ、お盆前だから…恐らく、この宿泊機関が終われば、仕事の生活に戻るのだろう事くらいは簡単に予想がつく。
多分、お盆休みの前倒し…と云ったところだろう。
まぁ、昨今、そう云う事はあまり珍しくはない。
夏休みの時期は忙しくなる時期だけれど…。
でも、以前の様な一点集中ではなくなっている。
確かに…一点集中で集まられると、その一点集中が終わった後も暫くの間ぐったりしてしまう程だったのだけれど。
今は細く長く…と云った感じで絶えず、この民宿がそれなりに忙しい状態だ。
現在、インターネットや宿泊先のあっせんを行うインターネットサービスなどから予約を入れる人もいて…。
電話予約、旅行会社からの予約、インターネットでの直接予約、宿泊先あっせんのインターネットサービスからの予約…。
それぞれの予約の仕方でサービスも料金も違ってくる。
最近では予約者へのサービス対応も多様化していて…
―――結構めんどくさいのよね…。
そう思いながら、今回のお客の予約方法を見ると…。
二人とも宿泊先あっせんのインターネットサービスを使っての予約らしい。
多分、両親たちは彼らの対応の買い出しや準備の為に出かけて行ったのだろう。
インターネットからの予約を組み込んだ頃から客接待がかなり複雑化したような気がしたけれど。
それも、ここ数年でだいぶ慣れた。
それに、インターネット予約のお陰で空き部屋のある日、部屋が埋まる事も増えた。
宿泊施設にとって、電気のついていない部屋があると云うの見た目的の印象で入り難いと云う気持ちにもさせるから、当日予約が増える事はその日の売り上げもそうだけれど、空室が少ないと云うのはイメージの問題を考えても重要なのだ。
今はまだ、夏休みが始まったばかり…と云う事もあるけれど。
8月に入ってきたら、ほぼ満室の日もかなり出てくる。
―――ひょっとして…それを狙ったのかな…
夏休みが始まったばかりの時期…。
だから、観光地もそれほど混み合う事はない。
これが、あと1週間遅くなると、そうはいかない。
この辺りは、民宿内の廊下にたくさんの額が飾られている高山植物の群生地に写真を取りに行く目的の人、純粋に登山を楽しみに行く人、そんな山の上ではなく、この周辺の自然やひなびた雰囲気を楽しむ人…。
色々な楽しみ方が出来る…とシャーリーは思っている。
スザクが先ほど、ガイドマップを欲しいと云っていたけれど、温泉施設も数が多い。
外湯巡りをしようと考えているらしい。
実際、この地域の観光課では外湯巡りをしてスタンプを集めると、この地域の名産品をプレゼントすると云う企画もあるのだけれど。

 今日、既にチェックインした二人の男性が荷物の整理が終わったのか…。
降りて来た。
「あ、御免なさい…。温泉マップとスタンプカード…お持ちする筈だったのに…」
シャーリーが慌ててスザクの姿を見て謝る。
すると、スザクはにこりと笑った。
「ああ、別にいいよ…。と云うか、さっき、僕の荷物重たそうに持っていたから…。ごめんね…僕、旅慣れしていなくて…いろいろいらないものもたくさん持って来ちゃって…」
と、その童顔の顔が更に若く見える様に困った笑顔で謝ってきた。
すると、すぐ後ろを歩いていたルルーシュが、
「まったくだ…。あんなにたくさん、書籍類を持って来るのはどうかしている…。そう云うのは事前に調べておくべきだし、現地に来たらそんなものを見ている方が野暮だ…」
そんな風に呆れて云い放つ。
確かに先ほどの荷物を見ていても、結構旅慣れしている感じだった。
「あ、あれ…本が入っていたんですか…。と云うか、あんなに重たくなる程、何を持って来たんですか?」
シャーリーが興味を持ったようでスザクに尋ねると…。
また、年不相応な困った笑顔で返して来た。
「えっと…この辺りは自生している植物がいっぱいあるって聞いて、植物図鑑を持ってきたし、あと、野生の動物が出るとかで…この辺りに出てくる野生動物の資料とか、水辺の生き物の本とか…。あと、天文年鑑と天体図鑑…」
その答えに…シャーリーは頭がくらくらしてきた。
小学生の自由研究だってそんなにたくさんの図鑑やら資料は使わない。
しかも、バラエティに富んでいる。
「ホントに…何をしにきたんだ?そんなものを見るよりも現物を見た方がいいだろ?子この民宿…色々揃っているようだし、頼めば夜、天体望遠鏡でここのオーナーの生の解説が聞けるらしいぞ…」
「え?ホント?」
多分、彼らは今日初めて会った者同士…。
でも、こんな会話を聞いていると…以前から見知った相手ではないかと錯覚してしまう。
しかし、それも旅の醍醐味だ。
「虫よけはちゃんと用意して下さいね?もし御希望なら、父にそう伝えておきますけれど…」
シャーリーがそう云うと、スザクは嬉しそうな笑顔を作り、ルルーシュも少しだけ表情が変わった。
「あ、僕それ、お願いします!」
スザクは即答だった。
そして、ルルーシュは…
「客一人の為に…と云うのも申し訳ないから…俺も頼む…」
何となく素直じゃない感じだ。
シャーリーはそんな二人を見ながらクスッと笑ってしまう。
「承知致しました…。お夕飯は6時半からで、天体観測の方は晴れていれば、8時ごろからになります。先ほども云いましたが、虫よけは忘れずに…。あと、防寒対策はして来て下さい。山の夜は冷えますから…」
シャーリーがそう云った時、また、スザクが顔色を変える。
「え?僕そんなの持って来ていない…」
「山に来るときにジャケットの一枚も持って来るのは常識だ…。あんなにでかい荷物を持って来ていて…要らないものは入っていて、必要なものは入っていないんだな…」
ルルーシュが呆れた様に告げると…。
「大丈夫です。こちらにある物でよろしければお貸しいたしますので…」
「あ、ありがとう…。色々すみません…」
「あと、これが温泉マップとスタンプカードです…。お気を付けて行ってらっしゃいませ…」

シャーリーがそう云った時、二人がにこりと笑った。
「じゃあ、夕食までには戻ります。」
「僕も、夕飯までに戻りますので…」
そう云って二人は出かけて行った。
この二人がシャーリーが夏休み始まって初めてのお客さんで…。
そして、この二人が今年のシャーリーの夏休みの始まりを告げる存在となったのだった…。

END

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posted by 和泉綾 at 10:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年07月22日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 198

ダメ人間とダメ悪魔



※何をやってもうまく行かないスザクがある時、魂を売ってでも少しくらい報われる人生が欲しいと願い…。そして、ある時…スザクの前に…

 枢木スザク18歳…。
ここまで『運が悪い』と思った事はあっても『運が良い』と思った事はない。
まぁ、死神には嫌われているらしく、様々な死の危機を感じた事はあったものの、ことごとく助かっている。
結構明るくふるまっているスザクだけれど、ここまでの自分の人生の不運を考えた時、既に、自分の力だけではどうにもならない…という結論にいたり…。
普段はマンガ本を買う為にしか入らない書店でふと目に着いた『黒魔術』の本を手に取ってしまっていた。
「悪魔と契約すれば、少しくらい運が良くなるかなぁ…」
ただ、悪魔と契約するって事は、最後に魂を持って行かれると云う事だ。
それがどういう事なのか、無神論者でそう云ったカミサマとかアクマとか、これまで、自分の中で考えて来なかったスザクの中ではピンとこない。
とりあえず、その本を手にとってぱらぱらと読んでみる。
見て見ると…
「結構物騒な物を用意しないといけないんだなぁ…。というか僕って、ここまで切羽詰まっているかなぁ…」
確かに書かれているレシピは結構グロイ系のものが多い。
というか、ハイテク化が進んで、デジタル化が進んでいる昨今、こんな物騒な物を集めるのは相当困難だろう。
「まぁ、こんな作り話に頼る様じゃ…僕も本格的に重症かも…」
そんな事を呟きながらその本を元あった場所に戻す。
そして、そのまま、本屋を出て、家路を急ぐ。
そんな不思議なことが可能であるのなら…きっと、天国とか地獄とか、神様とか、信じていない人たちはそこに飛びつくだろう。
スザクみたいに
『ただ、お布施を要求するだけのカミサマより魂をあげればちゃんと約束守ってくれる悪魔の方が遥かに誠実じゃん…』
などと考えてしまっている人間ならなおさらだ。
確かに運が悪い人生が続いているとは思うけれど。
それでも、今手に取った本に書かれているような物を集めなければ償還できないと云うのでは、あまりにハードルが高過ぎる。
神様も要求が多過ぎてとてもじゃないけれど、全ての条件を飲むにはかなりハードルが高い。
「ま、仕方ないよね…。きっと、僕の幸運を持っている人が幸せになっているんだろうし…」
とまぁ、完全に諦めの境地だ。
実際に、くじ運にしても、なんにしても、これまで自分から見ても、周囲から見ても『すっごくラッキー』と思えた結果が出た事なんてないのだから。
とりあえず、今のところは自力で頑張るしかない。
敢えて言うなら、それこそ、病気一つした事のない健康な体で生まれて来られた事は幸運と云うべきだろうか…。
これまでの事を考えると、病弱だけれど、そのほかのものを全て与えられている人と、身体は丈夫だけれど、そのほかのものは何も持っていない人と…。
「どっちが幸せなのかなぁ…」
あまりに究極過ぎる選択で、返答に困る。
恐らく、病弱の人は身体が丈夫な方がいいと云うし、身体が丈夫だけれど何も持たない人であれば、努力の報われない人生は幸せかどうか尋ねられたら返答に困る。

 そんな事を考えつつも、家に帰ってみれば、相変わらず誰もいない。
両親は仕事が忙しくて基本的にはスザクをほったらかしだ。
それでも、それなりに愛情は注がれている自覚はあるのでそれでグレると云う様な事はない。
ただ、結構難しいお年頃のスザクをここまで信用して、いいのだろうか…と、時々思ってしまう。
まぁ、スザクにそんな悪さが出来る程の甲斐性はない。
とりあえず、時折、自分に降りかかる大きな不運を嘆いているだけだ。
例えば、友達が自分の好きな女の子を好きだとカミングアウトされて、一生懸命その友達の為に仲を取り持ち…二人がくっついてしまうまではいいけれど、後になって
『実は…私、本当は枢木君が好きだったの…。でも、枢木君、今の彼と私の仲を取り持ってくれていたから…私には興味がないのかなって思って諦めちゃった…』
などと云われてしまうと、本当に涙が出て来てしまう。
そんなことならいわれない方が嬉しかったよ…と、スザクは心の中で大泣きしたものである。
まぁ、そんな事が日常茶飯事なスザクだから…時々、『悪魔と契約したい』などと物騒な事を考えるのだけれど…。
そんな事を考えている内に…。
―――ピーンポーン…
家のチャイムが鳴った。
今はこの家にスザクしかいないからスザクが出て行くしかない。
鍵を閉めてあるのだから、居留守を使ってしまえばそれまでなのだけれど。
それも出来ず、スザクは玄関を開けると…。
そこには黒髪で、真っ白い肌の…スザクと同じくらいの年齢と思われる(多分)男が立っていた。
「あ…あの…どちらさま?」
スザクは思わず尋ねてしまう。
見覚えのない顔だから、それが普通だ。
しかし、スザクはそんな事を考えながらも、目の前の人物を凝視してしまう。
そして、その存在は偉そうに口を開いた。
「なるほど…お前か…。俺のエリアの中のふくびきで俺を当てたと云うのは…。まぁ、気の毒だったな…。お前、俺と契約する事になる…」
云っている事が解らない。
一体何を云っているのか…。
普通に頭がおかしいのではないかと思ってしまう。
「あ…あの…」
「ああ、俺はルルーシュだ。お前と契約する悪魔だ…。とりあえず、願いを云え…。それで、お前の願いを叶えたら、俺にその魂を寄こせ…」
流石にスザクは顔を引き攣らせる。
いきなり現れて、いきなり云うのが、このセリフか…と…。
「えっと…僕のうち、そう云うのは間に合っていますので…では…」
そう云って、スザクは玄関を閉めて、しっかりと鍵をかけた。
今時、珍しい宗教の勧誘だと思った。
―――神様が本当にいるなら僕、今頃もうちょっと報われる人生を送っているよね…
そんな事を考えながら自分の部屋に戻る。
すると…
「おい…いきなりドアを閉める事はないだろう…」
「!」
どこから入ったか知らないけれど…先ほど玄関に立っていた色白の黒髪の青年がスザクの勉強机の椅子に腰かけて、スザクを迎えてくれていた…。
「あ…れ…?あの…えっと…」
流石にスザクは困惑してしまうけれど…。
その青年は表情一つ変える事もなく、スザクの部屋を興味深そうに見回していた。

 突然の事で…一体何が起こったのか…。
というか、自分は何か、悪い夢でも見ているのだろうか…などと考えてしまう。
これまで、自分の不運を嘆きつつ、うっかり、『悪魔と契約したい』なんて考えていたから、自分を『悪魔』だと云っている変な奴が目の前に現れたのだろうか…。
―――だって…悪魔ってのはめんどくさい召喚方法があって、それを忠実に守って、失敗すると召喚しようとした人間が死んじゃうこともあって…それから、それから…
正直、普通ならここまで混乱する事はないのだけれど、ただ、誰もいない家で、スザクが学校から帰って来てどの部屋の窓も開けておらず、玄関はきちんと鍵を閉めて来た。
というか、スザクの方が先にここに向かった筈なのに、何故にこの目の前の存在がスザクの部屋でスザクを待っているのだろうか…。
それはごく自然な疑問だろう。
そう自分に言い聞かせているけれど…。
「ふむ…枢木スザク18歳か…。まだまだ赤ん坊だなぁ…。というか、ここまでの人生を見ていると、確かに、『神』に頼るよりも『悪魔』に頼った方が確実だな…。ま、死んだ後…って云うか、願い事を叶えたら魂を頂くがな…」
などと、何か、黒いメモ帳みたいなものを見ながらぶつぶつ言っている。
スザクは思い切り顔を引き攣らせる。
「あの…えっと…。君は…一体どうやって…僕より先に…僕の部屋に…?」
殆ど恐る恐ると云った感じにスザクが尋ねる。
しかし、やっぱり表情を変えず…というか、興味深げに今度はスザクをじろじろ見ている。
どうやら、驚いているスザクの顔が見ていて飽きないらしい。
「さっきも云っただろう?俺は悪魔だ。人間の常識など通用しない…。それに、俺はお前に『君』と呼ばれるほどガキじゃないぞ?ルルーシュでいいぞ…。とりあえず、願い事を云え…」
本当に…尊大…と云うよりも、ふてぶてしい…。
頼んでもいないのに、いきなり願い事を云えとか云って、そんでもって叶えたら魂を寄こせと云っている…。
最近流行りの詐欺犯罪の中でも使われていそうな手法だ。
「えっと…僕…別に…貴方に叶えて欲しい願いなんて…」
「何を云っている?このメモを見る限り、散々な人生じゃないか…。ここまで不運続きだと、悪魔の俺でさえ同情するぞ…。っと、そんな事を云っているから行けないんだな…」
最後の方は少し声が小さくなっていた。
どうやら、彼はこの『悪魔稼業』はあまり性にあっていないらしい。
「あの…悪魔が人間に同情するなんて…」
「そうなんだ!俺はどうしてもその相手の人間の人生のメモを見ると、うっかり同情してしまう癖があってな…。だから、こうして、強引に押し売り契約をしなければならなくてな…」
そのルルーシュという悪魔…こいつもどうやら苦労の多い人生(?)を辿っているらしい。
なんだか、彼の弾丸トークにうっかり聞きいってしまう。
「ルルーシュさんも…苦労を重ねていらっしゃるんですね…」
スザクがルルーシュの弾丸トークについぽろっとそんな事を云ってしまう。
というか、そこで、ルルーシュのプライドを大いに傷つけてしまったらしい。
突然、ルルーシュの表情が変わる。

 元々綺麗な顔をしているからどんな顔をしていても、見入ってしまうけれど。
―――怒っているのかな…。照れているのかなぁ…。どっちなのか迷う表情だなぁ…。
スザクがそんな事を思っていると…
「お前…俺に憐みをかけるつもりか!人間の癖に!俺はこれでも悪魔なんだぞ!皇子の癖に情に脆くて、相手が泣いているとうっかり魂を取り損ねて、巻き舌オヤジに『人間にぃ、情を移した揚句ぅ、願いだけ叶えてぇ、魂を取り損ねるとはぁ…何たる愚かしさぁ…』と怒鳴りつけられようとも…」
ルルーシュの言葉に…
―――ああ、語るに落ちるタイプなんだ…。おまけにその美形な顔に似合わないドジっ子要素…。秋葉につれて行けば凄い人気になりそうだよ…。普通に何もしなくても魂をくれる人がごろごろいそう…
などと考えてしまっていた。
おまけにルルーシュはそれを涙ぐんで顔を赤らめて云っているのだ。
これは確実にオタクの整地や夏と冬に行われるオタクの世界的イベントに引っ張って行けば、彼がいらないと云っても魂を差し出す連中が増殖するに違いない。
「えっと…云いたい事は解ったんだけど…。願い事って云ってもなぁ…。いきなり云われても…。というか、僕、悪魔召喚した覚えがないんだけど…」
スザクがそう云った時、ルルーシュが我に返り、コホンと咳払いした。
「昨今、魔界も不景気でな…。押し売りでも何でも強引に契約を結ばせて魂を頂いて来ないと、食いっぱぐれるんだ…」
ルルーシュの言葉に…。
なんだか、世俗的なものを感じてしまった。
「そうか…悪魔も大変なんだね…。って云うか、魂を奪って、どうするの?食べるの?」
スザクが素朴な疑問を投げかける。
「あ、えっと…そのまま食えない。昔はそのまま食っていたらしいけれど、最近では悪魔もグルメになってな…。色々調理して食っている。まぁ、高級食材だからな…。最近では優秀な悪魔しか食えない…」
なんだか…その話しを聞いていて…。
色々と大変そうな事だけは解る。
「じゃあ、ルルーシュさんは?何を食べて生きているの?」
「俺は別に…人間と同じものを食って生きている。かつて、人間と神の関係が切っても切れない頃だったらいざ知らず…。今では宗教だろうがなんだろうが、既に『神』の存在も人間の金儲けの道具になっているからな…。悪魔もそんな人間を見ていて…人間の方がうまそうなものを食っているし…。だから、最近では悪魔にとっての高級食材として魂を頂いて来ると云う事の方が多いな…」
そんな事をあっさり答えているルルーシュを見ていて…。
今日の学校の帰りに本屋でちょっと手にした悪魔に関する本には小難しい事を書いてあったけれど…。
実際にはそんなものなのか…と思ってしまった。
悪魔が営業して、それが出来ないとなると押し売りをする…。
悪魔も生きる為に大変らしい。
スザクはうっかりそんな風に思ってしまった。
「じゃあさ、ルルーシュ、僕と一緒にいてくれない?」

 スザクの口から出て来た…ルルーシュへの願い。
契約で…と云うのは気になるんだけれど…。
ルルーシュの話しを聞いている内になんだか…このまま放りだすのもいかがなものかと思えて来てしまったし…。
それに、今さっき出会ったばかりのルルーシュだったけれど…。
一緒にいたら、これまでの生活が色々変化するかもしれない…。
そんな風に思えて来たから。
「一緒にいるとは?人間には色々な付き合い方があると聞いたが…」
ルルーシュは真顔でスザクに尋ねた。
スザクもそれを尋ねられて、どう答えていいか、ちょっと困ってしまう。
兄弟は無理だし、友達と云うのも…何となく、勿体ない気がした。
何が?と尋ねられても良く解らないけれど。
「そうだなぁ…とりあえず、今は同級生の友達…かなぁ…。というか、そう云う事も可能?」
スザクが尋ねると…。
「そんなものは簡単だ。お前の記録はあるから、その中でお前に関わっている人間達に新たな記憶を植え付ける。そして、俺がお前の学校のお前と同じクラスの人間として潜り込めばいいのだろう?」
まぁ、形としてはそれでいいのだけれど…。
その言葉を聞いてスザクは少しだけ寂しくなった。
「まぁ、そう云う事なんだけれど…」
少し沈んだスザクの表情にルルーシュがその顔を覗き込んで来た。
「どうした?まだ何か足りないのか?」
「あ、否…そうじゃないんだけど…。そうじゃないんだけど…」
スザクはどう云っていいのか解らず…言葉が途切れてしまう。
ルルーシュは不思議そうにスザクを見ているだけだ。
「スザク…俺はお前の『友達』…なのだろう?俺はその『友達』と云う奴がよく解らないのだけれど…。ちゃんと、お前の『友達』という存在になれる様に努力する…。それでは…ダメか?」
ルルーシュが尋ねてきたそれは…。
人間にも云える事なのかもしれない…。
そんな風に思えた。
スザクはこれまでちゃんと、『友達』という存在に対して自分を見せて来なかったような気がした。
ただ、相手に気を使って、自分の好きな女の事の仲を取り持ってしまっていた。
そして、その事を不運だと嘆いていた。
もし、『友達』であったなら、多少、ぎこちない関係になるかもしれないけれど、『友達』であれば、修復する努力はお互いにできた筈…。
そんな風に思えて来た。
それは、ある意味、スザクの一方的な思い込みなのかもしれないけれど…。
それでも、それをそうであると信じたいと…。
そんな風に思えてきた。
「ううん…ありがとう…ルルーシュさん…。僕達…『友達』だね…」
「『友達』なら、ルルーシュでいいだろ?お前は友達に『さん』づけで呼ぶのか?」
そう云われて、スザクが『え?』と思った。
もう、ルルーシュの中で契約が始まっていたのだ。
―――ホント…押し売りの上に突然商品を押しつけて来るんだな…。
心の中で苦笑してしまう。
「そうじゃないけど…」
「なら、ルルーシュと呼べ…」
ルルーシュの言葉に…少しだけ戸惑ってしまうけれど…。
それでも…
「えっと…ルルーシュ…」
スザクがそう云った時、ルルーシュの顔が綺麗な笑顔になって、見惚れてしまう。
「よし!これから、宜しくな…スザク…」
そんな風に云われて、スザクの顔は真っ赤になっていた事をスザクは自覚できた。
でも、ルルーシュには…それがどういうものであるかは…伝わっていない様だったのだけれど…。

END

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posted by 和泉綾 at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年07月21日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 197

光と影



※ルルーシュはある、大きな地下組織の次期当主です。そんなルルーシュの隣に血き従っているのは、幼い頃、親に捨てられて、その後、ルルーシュの我儘によってルルーシュの傍にいる存在として連れて来られたのですが…

 二人の出会いは…。
9歳の時…。
生まれた時から大きな地下組織の当主となるべく育てられてきたルルーシュだったけれど。
ルルーシュの護衛としてつき従っている大人たちと一緒に歩いている時にその存在と出会った。
そこは…親を亡くした子供の為の施設の前で…。
その日は、何故、彼がそこを歩いていたのかなんて…。
そんな事は既に記憶の中にはない。
ただ、そこで、ルルーシュはスザクと出会った。
「お前…こんなところで何をしているんだ?」
お付きの者達の制止を無視して、ルルーシュはその存在に声をかけた。
見た目は…多分、ルルーシュと同じくらい。
でも、着ているものは天地ほどの差があった。
ルルーシュの着ているものは、その家のお陰もあり、普通の家庭では買えない様なブランド物だ。
恐らく、見る人が見れば、解る…上質な物…。
しかし、今、ルルーシュの目の前に立っているその存在の着ているものは…。
今は季節的に『暑い』と感じる季節だからいいけれど。
冬にもなれば、これでは小声死んでしまうと思われる様な、粗末なもの…。
汚れているし、ところどころ破れているし…。
そんな彼の姿は…。
確かに哀れさを感じるけれど。
しかし、ルルーシュはその少年の顔を見て思う。
目の前のその少年の瞳は…。
思わず、ルルーシュはその少年に声をかけた。
「あ、ぼく、おかあさんをまってるの…。おかあさんが、ここでまっていなさいって…」
色々な者を見て来たルルーシュは…その少年の言葉に…。
―――あからさまだな…。
そんな風に思った。
けれど、その少年はその『おかあさん』という存在の言葉を信じているらしい。
ルルーシュの中でその少年に、『そんなのはウソだ…』と、云ってやりたいと思う気持ちが生まれて来たけれど。
その少年の瞳があまりに真っ直ぐな目をしていたものだから…
「なら、おかあさんがくるまで、うちで待っていないか?この建物の人に俺が頼んで来る。お前のおかあさんが迎えに来たら、うちに連絡してくれるように…」
「え?でも…」
ルルーシュの言葉にその少年が躊躇している。
と云うのも、ルルーシュの周囲に立っている大人達がいい顔をしていないし、困っている様子が窺えたからだろう。
「別にいいだろう?『こいつのおかあさんがここにこいつを迎えに来るまで』だ…。それに、うちには部屋がたくさんあるだろ?」
流石に生まれた時からその組織の当主になるべく育てられただけあって、子供とは云っても侮れない。
仕方なく、その中の責任者と思われる男が携帯電話で何かを話し始めた。
数分後、どうやら家の方の結論が出たらしく、ルルーシュの前まで歩いてきた。
「旦那さまが『その子の母親が迎えに来るまでならいい』とのお返事を下さいました。なので、この施設のスタッフにでも託て置きましょう…」
一応、そんなやり取りをしているけれど、ルルーシュの中では『無駄なことだろう…』という結論が出ていた。
どう見たって、目の前の少年は親に捨てられた子供だ。
「お前…名前は?」
「えっと…枢木スザク…」
「そうか…俺はルルーシュ≂ランペルージだ…。お前のおかあさんがここにお前を迎えに来たらすぐに連絡が入るようにしてやるから…。だから、お前のおかあさんがお前を迎えに来るまで、うちのいればいい…」
それが…二人の出会いだった…

 結局それから8年の月日が流れているが…。
流石にスザクもそんな、女の云う事を未だに信用しているわけもなく…。
この家から学校にも通っていた。
生活もルルーシュと共にしている。
ただ、12歳の時、流石に居候の立場でいるのが居心地悪くなって…。
護身術をルルーシュと一緒に習っていたのだけれど、ルルーシュよりはるかに筋が良く、自分の身だけではなく、ルルーシュの護衛役として使えるほどになっていたので…。
ルルーシュの護衛役を買って出たのだ。
ルルーシュはその事に驚いて、絶対ダメだと反対していたけれど。
ただ、当主がその事を承諾した。
この場合、最高決定権はその当主にあり、その当主の決定にルルーシュは異を唱える事が許されない。
だから、それから、ルルーシュの護衛役はスザクとなった。
一応、次期当主として育てられてはいるものの、地下の組織だからと云って、地価の事だけを知って入れいい訳ではないのだ。
だから、ルルーシュは学校は普通の子供が通う学校に通っていた。
ルルーシュの家ほど大きな家の場合、そこらのチンピラやくざとは訳が違う。
大物政治家や経済界の大物との繋がりもある。
表ではできない汚れ役をルルーシュの家の組織は担っていると云う事なのだ。
当然、光当たる部分があれば、影となる部分もあるのだ。
ルルーシュの家はその影の部分を担っている。
持ちつ持たれつの関係だし、邪魔となれば排除する…そう云った関係なので、当然、次期当主となるルルーシュは命を狙われるターゲットとなる。
その為に出来ることなら常にボディガードを付けておくべきだけれど。
学校でその様な仰々しい事は出来ない為、スザクの申し出は家の者としては願ったりかなったりという事だった。
ルルーシュは自分の立場をよく知っている。
だから、スザクにその様な立場に置きたくなかった。
まぁ、ルルーシュの家に厄介になると云う時点で、普通の少年として見て貰える事はなくなるのだけれど。
「大丈夫…僕、ちゃんとルルーシュを守る…。ルルーシュを悲しませる様な事はしない…」
スザクの言葉に、ルルーシュは苦笑してしまったけれど。
ただ、その言葉は嬉しかった。
それは本当だった。
「俺を悲しませる様な事はしない?既に俺はスザクがそんな立場になった事が気に入らないけれどな…。まぁ、父さんがあの調子じゃ、俺が何を云っても聞きはしないな…。なら…最初に俺がお前に命じる…」
ルルーシュがその立場を理解している時の顔となった。
スザクに対して、その表情を見せたのは…多分、初めてだった。
これまでは対等だった。
でもこれからは違う…そう云った空気を醸し出している。
「絶対に…俺を一人にするな…。何があっても…お前は…俺の許からいなくなる事を…許さない…」
ルルーシュがスザクの主となって、初めてスザクに命じた命令…だった…。
その命令に…スザクは跪いた。
恐らく、二人きりのときには最初で最後…
「承知致しました…。我が君…」

 その主従の制約の後、ルルーシュはスザクがルルーシュを主としての態度を撮る事を許さなかった。
と云うのも、ルルーシュの中でそんなつもりでスザクをここに連れて来たのではないと云う思いがあったからだ。
そんな思いはあっても…。
現実にはそんな事も云っていられなくて…。
だから、形だけ、スザクはルルーシュの護衛役という形をとった。
正直、スザクに他の大人達の様な態度を取られるのはルルーシュにとって酷く苦痛なものだから。
だから、普段の生活の中では、二人は対等だった。
最初の内はいい顔をしなかった者達も多かったけれど、ルルーシュがこの部分に置いては絶対にひかなかったのだ。
ルルーシュの中で…恐らく、自分の意識の中には実感がないかもしれないけれど。
ルルーシュの中での初めてできた『友達』というカテゴリーだった。
特別な存在は作らない…。
それは、ずっとルルーシュの中で決めて来た事だったけれど。
初めてスザクを見た時の…スザクの瞳が印象的だったから。
確かに、着ているものはボロボロだったけれど…。
でも、その瞳はルルーシュがあの時着ていた服なんかよりもずっと、高価な価値のある者に見えたから…。
純粋に…母親の言葉を信じて、待っている姿は…ルルーシュにはないもので…。
そして、そんな姿に惹かれたと云うのが正直なところだろう。
「ルルーシュ…そろそろ学校に行かないと遅刻するよ?」
流石にあの時の様な母親のウソを信じている程、子供ではなくなったけれど。
ルルーシュの目にはスザクのその瞳は凄く輝いて見えた。
「ああ…。もう準備は出来た…。行こうか…」
そう云って、スザクと部屋を出て行くと、ルルーシュの世話役であるジェレミアが立っていた。
「若…徒歩での通学は…」
常にルルーシュの身の安全を心配して、こんな事を云って来る。
しかし…ルルーシュとしては、登下校の時くらい、普通の高校生でいたいと云う気持ちはあった。
いずれ、この家に縛り付けられる事になるのだから…。
「スザクがいるから大丈夫だ…」
その一言を云って後は取り合わない。
スザクとしても最近、妙な気配がルルーシュとスザクの事を見ている事に気づいているから、少し困った顔をするのだけれど。
「ジェレミアさん、僕が命に代えても守りますから…」
スザクがそこまで云って、何とか、その場が治まる。
それ以上、何か云うと、ルルーシュの機嫌がすこぶる悪くなるからだ。
本当は、スザクとしても、最近、ルルーシュの周辺に妙な気配を感じていて、車で登下校した方がいいと云う事は…感じているけれど。
―――出来るだけ、ルルーシュが望むとおりにしたい…
そんな思いがあるのも事実だ。
あの時、スザクを連れて帰ってくれて、そして、ルルーシュと変わらない扱いでここまで物に不自由するでもなく、学校にも通わせて貰えているのはルルーシュのお陰だから。
スザクの中でルルーシュは恩人だ。
だからこそ、ルルーシュの望む事は…出来る限り叶えてやりたいと思う。
それに…。
他の感情も…あるから…。

 ジェレミアを言いくるめて、二人が学校への道を歩き始める。
少々学校から離れていて、歩いて30分ほどかかる。
公共の交通機関…と云うのは、危険が多いので、流石にそこまでルルーシュは無理を云わない。
人混みに紛れて…とか、逆に誰もいないところで…と云った場合、危険性が高まる。
この30分の時間…。
流石に何の緊張も感じないと云う訳にはいかないけれど。
ただ、そう云った登校は…ただの高校生でいられる気がするから…。
「いつも、済まないな…」
「もう慣れたよ…。ジェレミアさんが心配するのは…ちょっと解るし…」
ルルーシュは謝るけれど、それでも、スザクへの信頼なのか…この状態をやめるつもりはないらしい。
というか、最近、そう云った意味での抗争がそれほど活発化していないから…という部分で、緩みがあると云う事でもあるのかもしれない。
相変わらず、あらゆる光の部分の反対側に出来る陰の役目を担っている組織だから…。
そんな気の緩みは許されないのだけれど。
一応、この日本の中で最大の組織であり、彼らの影響力は相当なものだ。
時に、海外の組織から手を組むと云う話しが来る事もあるし、逆に、潰そうとする動きもある。
だから、ルルーシュがそんな風に緊張感の欠けた状態でいていい筈はないのだ。
これは…スザクを信用している故なのか…
そんな状態の時に…やはり、そう云った静かに近付いて来る刃があるのだ。
背後のその存在に…先に気づいたのは…スザクで…
「ルルーシュ!」
庇おうとした時、ルルーシュが逆にスザクを守ろうとしていた。
そして…ルルーシュはスザクの腕の中で…崩れ落ちた…。
「ルルーシュ!ルルーシュ!」
スザクが必死にルルーシュの名前を呼んでいる。
ルルーシュは少し、苦しそうにしているが…ぐっと瞑っていた目をゆるりと開く。
「だ…いじょ…ぶだ…。急所は…外している…」
これまでにもこうした形で襲われる事がかなりの回数あったわけで…。
ある程度は自分の身を守れる。
そして、ルルーシュを刺した男は…。
どの道二人きりで登校…という事を許しているわけもなく、ルルーシュの家の者達が取り押さえていた。
「なんで…ルルーシュが刺される前に…」
スザクがその男を捕らえている者たちに怒鳴りつける。
普段ならこんな態度を撮る事のないスザクだったけれど…。
ただ、その瞳に涙を湛えて、怒鳴りつけているのだ。
「ルルーシュ様の…御意志だ…」
そう云って出て来たのは…
「ジェレミアさん…」
「ルルーシュ様は、お前がルルーシュ様の護衛役となって、ずっと心を痛めておられた。お前が自立できる年齢となった暁には、お前を、普通の市民として生きられるように…と…」
「な…にを…」
「来年には…高校を卒業だろう?就職ならちゃんと我が組織の中で一般人が働いている部門に入れるようにできるし、大学に進学と云う場合でも、学費は出して、あの家から離すつもりだったとの事だ…」
ジェレミアの言葉に…スザクはただ…ルルーシュをその腕に抱きながら…震える事しか出来ない。
―――僕は…ルルーシュと離れるつもりなんてないのに…。僕は…

 ルルーシュはすぐに病院に運ばれた。
急所は外したと云うものの、思っていたよりも傷は深く…。
目を醒ましたのは1日経った後だった。
「…ん…」
ルルーシュの声が聞こえて…スザクが漸く、強張った顔に少しだけ安堵の色を見せる。
「ルルーシュ…」
「スザク…か…。俺とした事が…みっともないな…」
痛みを堪えてルルーシュが話しているのが解る。
確かに、昔から狙われる事も多かったのだから、こう云う事もルルーシュの中ではある事として据えていたのだろうけれど。
「何を云っているのさ…。主が護衛役を庇って怪我をするなんて…バカじゃないの?」
スザクがそう云った時…ルルーシュがふっと笑った。
「なら…ジェレミアから…くび宣告を…」
「ううん…こんな無茶する若君を…お前が守れってさ…。こんな無茶をする様な若君では手が余るって…」
少し、涙ぐんでルルーシュに告げる。
ルルーシュは元々、ルルーシュの護衛役という肩書をスザクから外す為にそう、仕組んだのだ。
スザクにもジェレミアにもあっさりばれていたらしい。
「な…何を…」
「僕も…ここまでルルーシュの護衛役をやってきたのに…。自分でやるって決めた事なのに、ルルーシュの勝手な思い込みで…バカな事を勝手に決めないでよ…」
「お前…うちの事を…解っているんだろう?」
「うん…。解ってる…。でも、ルルーシュの事…放っておけないもの…。だから…僕はルルーシュの傍を…離れない…」
スザクが泣き笑いでそんな事を云う。
相変わらず、素直に感情を表に出す事の出来るスザクに…少しだけ羨ましさを感じるルルーシュだったけれど…。
「お前は…本当は…こんな影の部分にいては…」
「僕は結構楽しんでいるけれどね…。それに、ルルーシュと一緒なら影とか光とか、関係ないし…」
「本当に…バカな奴だ…」
「頭は悪いけど、ルルーシュみたいにバカじゃないよ…。ホント、今回だって、思ったより重傷だったんだから…。ちゃんと、あのナイフをよけられないなら、バカな事をしないの!」
スザクの説教にルルーシュが苦笑した。
流石にスザクに説教されるとなると、複雑な気持ちになるようだけれど。
「ルルーシュ…僕にも約束してよ…」
スザクがルルーシュに改まって言葉にする。
ルルーシュは不思議そうな顔をする。
「ルルーシュは…僕の主として…ずっと僕の傍にいて…。僕の傍から離れないで…。ルルーシュが死ぬ時は…僕も死ぬから…」
ここで、なんと云う殺し文句だろうか…。
そんな風に思ったけれど…。
「本当にバカだ…お前…」
「ルルーシュ…返事は?」
ルルーシュが茶化そうとすると、スザクが真面目な顔をしてルルーシュに訊ねる。
「ああ…解った…。スザク…お前は…俺の傍にいろ…。生きる時も…死ぬ時も…」
「承知致しました…。我が君…」
スザクは、あの誓いを立てた時以来、初めてルルーシュに前に跪いたのだった…。

END

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2010年07月16日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 196

呪いの言葉から…愛の言葉へ…



※スザルル両方にょたとなっているお話しです。
平気な方のみ、先に進んで下さい。

 なんだか、憂鬱な日が続いている。
何が理由で…などと云う、明確な理由は特には見つからない。
ただ、憂鬱なのだ。
正直、ルルーシュにこの世を支配できるだけの権力、財力を持っていたら、全てを破壊しつくしてやる…そんな思いさえもあるけれど。
実際に物理的に可能であれば、本当にやるに違いない。
それこそ、今の鬱憤をすべてぶちまけるように、ねちねちと全世界に超陰湿な方法でこの意味不明な憂鬱の八つ当たり的な報復をするに違いない。
特に、今120%の笑顔を振りまいている者や、本当は幸せの状態にいるくせに何か適当な理由を作って悲劇の主人公を演じている奴には特にねちねちと嫌がらせしてやりたい…。
とまぁ、結構物騒な事を考えているけれど。
考えているだけならタダだし、所詮、女子高生の戯言である。
「まず手始めに…東京にある目立つビルに対しては一応、不確定な予告をして片っ端から時間差で爆破するとか…。あと、全ての個人情報を手に入れて、今、幸せに浸っている奴とか、つまらないことで悲劇の主人公を演じている連中に本当の不幸と云うものを教えてやるのもいいな…」
自分でも気付かない内にそれは声に出してしまっていたらしい。
ここが、人通りが少なく、聞いている人が殆どいなかった事がある意味幸いだ。
「顔は綺麗なのに…随分物騒な事を考えているんだね…。しかも、口に出したりして…」
背後からそんな言葉をかけられる。
「ほわぁぁぁぁ…」
流石に驚いてズザザザザ…と後ずさりながら、妙な声を出してしまう。
正直、こう云うのは心臓に悪い。
「い…いきなり…なんだ!というか、お前誰だ!」
その、突然声をかけて来た人物を見ると…。
ルルーシュと同じ学校の制服を着ている。
髪の毛は茶髪の癖毛で、多分、伸ばすと面倒な事になりそうな感じだ。
運動部に所属しているのか…女子の割に結構筋肉が付いている。
でも…胸の部分を見ると…
―――デ…デカイ…
うっかり平べったい自分の胸を見てしまう。
恐らく、下を向くと自分の胸と一緒に地面が見えるタイプだろう。
ルルーシュは心の中で思う。
―――ヤルなら、確実にこいつに一番の不幸を味わわせてやる…
さっきまでの妄想がこんなリアルの世界にまで飛んで来ているらしい。
本当に心が病んでしまっていて、解説している方は見ていて痛々しいと思ってしまうわけなのだが…。
しかし、これもまた、青春…と云う事でスルーしておく。
「特待生クラスのルルーシュ≂ランペルージさんだよね?ぼく、枢木スザク…。普通科クラスのD組なんだ。宜しくね…」
この笑顔いっぱいで握手を求めて来る辺りが更に憎たらしい…。
というか、何故に彼女がルルーシュに取っ付いて来ていて、妄想中の独り言まで聞いているのか…。
そんな事を頭の中で巡らせてしまうのだけれど。
ただ、何故なのか…こいつの笑顔を見ていると…なんだか…
―――まるで…犬だな…
そんな風に思えて毒気を抜かれてしまっていた。
「というか、なんで私の名前を知っているんだ?」
これはルルーシュの無自覚にして素朴な疑問だった。

 ルルーシュの言葉に、スザクは苦笑した。
学年一の秀才で、美人だから男子も騒いでいる。
確か、入学式のときも主席入学で新入生代表の挨拶をしていたのだ。
それで、ルルーシュの名前を知らないともなれば、かなりのモグリか、事情があって、入学式から一度も登校していない生徒であるとしか云えない。
それなのに、ルルーシュの口から出てくるセリフに脱力してしまう。
「あ…あのね?多分、今学園一の有名人だよ?」
「何か、私、犯罪でも犯したか?私は自分が二重人格である認識はないんだけれど…」
段々、頭がいいのか、悪いのか、解らなくなってきた。
確かに、テストの点数は抜群にいいから暗記力はあると思う。
そして、強引に入らされたらしい生徒会ではその有能ぶりを発揮している。
だから、確実にその部分に置いては非常に優秀なのだと思う。
それは確かだろう。
しかし、これほど彼女の身に危険を感じてしまう程の鈍感と云うか、天然だったとは…。
いつも、クールなイメージで歩いているから正直、驚きは測り知れないのだけれど。
「あ、別に、犯罪者だけが有名人になる訳じゃないんだけど…。それに、ルルーシュ、入学式のとき、入学生代表挨拶しているでしょ?ルルーシュって美人だから、あっという間に有名人になるよ。その後、定期テストでも、校外模試でもトップをキープしているんだから、有名にならない方が不思議だって…」
スザクがやれやれと云った表情でルルーシュに云うのだけれど。
ルルーシュはスザクの言葉に不思議そうな表情を見せている。
「そんなものか?私はあまり他人に興味がないからな…」
そんな事をルルーシュが云っているけれど…。
―――さっき云っていたのって、不特定多数に対して…なのか…。というか、ルルーシュって人間嫌いなのかな…
そんな事を思ってしまう。
スザクはいつも周囲に誰かがいないと寂しくなるし、誰かがいると安心できるタイプなので、ルルーシュの先ほどの独り言はかなり衝撃的だった。
「そうなの?ぼくなんかは、一人だと寂しくなっちゃうけどなぁ…。今日はみんな、彼氏とデートとか云ってぼく一人になっちゃったから…。で、寂しいと思っていたところにルルーシュを見つけてラッキーって感じ…」
これはスザクにとっての本当だ。
スザクは基本的に自由奔放と云う奴だ。
これだけ明るくて、快活だから交際を申し込まれることだってない訳じゃない。
これはルルーシュも同じだと思われるけれど。
それでも、スザクの場合、他の友達と一緒にいられる時間までその相手に拘束されるから断るし。
ルルーシュはぶっちゃけ、惚れたはれたの話しはめんどくさいと思っているから断る。
正直、二人の場合、全然知らない相手から告白される事も多いので、知らない相手と恋人として付き合えと言われても困ると云うのも事実である。
「私は…別に、一人でも平気…というか、一人の方が楽だな…。あんまり人との付き合い方はうまくないし、言葉遣いも悪いからな…。相手に嫌な思いをさせて、後で自分も嫌な思いをするくらいなら、近寄らせない方がいい…」

 ルルーシュのその一言に…。
スザクは少し感心した表情を見せて、口を開いた。
「へぇ…ルルーシュって優しいんだね…。それに、自分の事をちゃんと分析していて…。凄いなぁ…。ぼくなんて、そう云う事考えなくって、自分が楽しければそれでいいって云う感じなのにさ…」
「それで、枢木さんの場合はちゃんと周囲も楽しんでいるからいいじゃないか…」
スザクの言葉にルルーシュがそう返すと…。
スザクは少し驚いて、少し複雑な笑みを見せた。
「『枢木』って云い難いでしょ?ぼく、勝手にルルーシュって呼んじゃっているし、ルルーシュもスザクって呼んでよ…」
今の複雑な笑みはちょっと寂しかったらしい。
まぁ、スザクの性格なら何となく解る気がしたのだけれど。
「じゃあ…そうさせて貰う…。その…スザクの場合は、見ている限り、いつもすごく楽しそうだし、周囲の人間も笑っているじゃないか…。私にはそんな真似は出来ないからな…」
「ま、ルルーシュの場合、『高嶺の花』って感じだもんね…。でも、こうして話してみると普通の女の子だよね…。ね?好きな芸能人とかっていないの?」
休み時間…ルルーシュの周囲から聞こえてくる女子生徒達の会話を…。
今、ルルーシュはスザクとしようとしている…。
そんな風に思えた。
「えっと…」
ルルーシュが困った様に…口を開く。
スザクはそのルルーシュの答えをワクワクしていると云う感じで待っている。
ただ、ルルーシュとしてはどうやら何となく云い難いと云う感じらしく…。
中々出て来ない。
「ひょっとして、ぼくの知らない人かなぁ…。というか、ルルーシュとこうして話すのって初めてだもんね。ぼくが誰を知っているかなんて解らないよね…」
と、ルルーシュに云ってみる。
スザクは本当に好奇心でルルーシュを構っている感じだ。
「私のことより、その…お前は?」
ルルーシュが強引にスザクに話しを振る。
どうにもこうした形での会話の中で自分の事を話すのは苦手らしい。
だから、ルルーシュはいつも黙っているし、表情を変えることも少ないわけで。
それ故に、『高嶺の花』になり過ぎてしまって近寄りがたい雰囲気を作ってしまっているのかもしれない。
「そうだなぁ…僕は、JINOが好きだよ…。背が高いし、金髪で、軽い感じのキャラを作っているけれど…なんだか育ちがよさそうだしさ…」
スザクの口から出てくる…昨今、中高生からその中高生の母親世代にまで人気の高い若手俳優の名前が出て来た。
それを聞いて、ルルーシュは更に落ち込んだ。
「ぼくは云ったよ?ルルーシュは?」
スザクの問いにルルーシュが『うっ』と云う感じに止まってしまう。
今のルルーシュを見ていると、普段、学校で見ているルルーシュと雰囲気が違っていて…。
凄く新鮮さを感じてしまう…」
「…ロ…」
ルルーシュが本当に聞き取れないほど小さな声で答えたのだ。
本当に…しぶしぶと云う感じに…
「え?もう一度言ってくれる?ごめん、聞こえなかった…」
スザクがそう訊き直すと…
「ゼロ…。『コードギアス』って云うアニメに出て来ている…仮面の主人公…」

 ルルーシュの答えに…。
スザクは一瞬止まる。
そして、ルルーシュを見て見ると、顔を真っ赤にしている。
流石に…こんな答えは予想外で…。
スザクもポカンとしてしまう。
「だ…だから…答えたくなかったんだ!きっと、バカにしているんだろ?解っているよ!アニメで悪かったな!アニメとドラマの違いなんて、2次元のキャラに偶像崇拝しているか、3次元のキャラに偶像崇拝しているか…それだけの違いだろ!わ…私は…3次元の中で自分の胸に来るキャラがいないから…だから…」
半ば怒鳴りつけている様なルルーシュに…。
スザクは耐えきれなくて、声を出して笑い始めてしまった。
「あはははは…ルルーシュ最高!ホント、ルルーシュって可愛いんだね…。あ、これはバカにしているわけじゃなくて…ルルーシュがあんまり可愛いから…」
お腹を抱えて笑っているスザクに対して、流石にルルーシュの怒りを感じる。
確かに、アニメキャラに懸想しているなんて、そんな事を云ったら『高校生にもなって…』とか、『アニメおたく?ひょっとしてBLとかやおいとかって好きな人?』とか、訊かれるに違いない。
ただ、その作品を見もせず、魅力も知らずにバカにされるのは腹が立つ。
「別にいいよ…。そのくらいの反応は…何となく予想していたからな…。言いふらしたければ言いふらせばいいさ…。定期試験学年トップのルルーシュ≂ランペルージはアニメおたくで、危ない奴だとでも…」
そんな事を吐き捨ててルルーシュはすたすたと歩き始めた。
そんなルルーシュに気が付いたスザクが慌ててルルーシュを追いかける。
「ごめん…そんなつもりで笑っていたんじゃないよ…。ホントにルルーシュが可愛くて…。だから…。それに、ルルーシュの云う通りだと思うし…。2次元キャラを好きになるか、3次元キャラを好きになるか…それだけの違いだもんね…。アイドルって『偶像』って意味なんでしょ?」
ルルーシュを追いかけながらスザクがそう云って来た。
流石に笑い過ぎたのかと反省しているようだ。
「別に…いつもの事だし…。だから…クラスの女子と話せないんだ…。どうせ、バカにされるだけだしな…」
ルルーシュがぼそりと云うと、スザクは少し、お姉さんになった様な気持ちで微笑んだ。
「そんな事無いって…。ま、確かに以前はそう云う風に据えられちゃっていた事もあるみたいだけど…。でもさ、ぼくもその作品、知ってるよ…。従妹が嵌っていてさ…。ぼくんちに来るといつも『ゼロさまぁ〜〜〜』ってテレビ見ながら騒いでる…。だから、知っているんだけど、ぼくはシュナイゼルの方が好みだけどなぁ…。滅多に出て来ないけど…」
スザクがそこまで云った時…。
ルルーシュの目の色が変わった。
「あんな性格悪い奴がいいのか?何を考えているか解らなくて、絶対に自分の恋人さえも自分の目的の為なら迷わず捨てるぞ…。あのキャラは…。そして、ああ云う肩書がなければ確実に女のひもをやっていそうなキャラだぞ?」
ルルーシュの勢いに…スザクはうっかり飲み込まれてしまった。

 ルルーシュはスザクの両肩をひっつかんでいる事に気が付き…はっと我に返った。
「あ、御免…つい…」
普段、決して見る事の出来ないルルーシュの表情を見ることができて…スザクはほんわかと幸せを感じてしまう。
「なんで謝るの?ルルーシュもそんな風に夢中になっている物があるんだね…。ちょっとその事を知って得した気分だよ…」
スザクの言葉に、ルルーシュはまたも驚いた表情を見せる。
そんなルルーシュにちょっと苦笑してしまうスザクだけど…。
「って云うか、私、スザクの事は今日初めて知ったし、スザクだってここにいたのは偶然だろ?」
ルルーシュの言葉は…ちょっとだけ痛いと感じてしまう。
だって、スザクの中では偶然ではなかったから…
「偶然…か…。それならそれで…運命っぽく見えるんだけど…。でも、ちょっと違うんだよね…」
スザクがちょっとだけ云い難そうにルルーシュに云った。
そして、ルルーシュは今日、スザクと話し始めて何度目になるのか解らない驚いた表情を見せる。
これほど驚いた表情を見せると云うのは恐らく、ルルーシュの私生活をよく知る者でも珍しいと云うに違いない。
「えっと…ね…。ぼく…その…ずっとね、ルルーシュを見ていたんだ…。ぼくもルルーシュも女の子なのに…おかしいと思うけど…。でも、ずっとね、ぼく、ルルーシュの事が気になって仕方なくって…それで…」
ルルーシュは不思議そうな顔をする。
確かに中学卒業の時にも後輩の女の子から制服のネクタイが欲しいだの、一緒に写真を撮って欲しいだのいわれたけれど…。
その時の女の子達の雰囲気ともちょっと違う気がした。
「ぼくね…実は、入学式の前から…ルルーシュ、知っていたんだ…。合格発表の日に…ぼく、ルルーシュの前で思いっきりこけたんだけど…覚えているかなぁ…」
ルルーシュは自分の記憶のハードディスクの中からそのデータを探す。
そして…
「あ、ああ…あの時の…」
「ぼく、ホント、中学の進路指導の先生にも『ギリギリだから一つランクを落とした方がいい…』って云われていて…。でも、合格発表の時、ぼくの受験番号があって…凄く嬉しくって、凄く浮かれていて…で、思いっきりこけて、マンガみたいな転び方してパンツ丸見えになっちゃって…」
スザクの身体を見ていると、運動は得意そうに見える。
確かに、ルルーシュの記憶の中に、合格発表の日に自分の目の前で思いっきり派手に転んだ女子がいた事を思い出した。
「あの時、ぼく、凄く恥ずかしくって、立ち上がれなくなっちゃったときに…」
ルルーシュは何事もなかったようにスザクに手を差し伸べて、助けた…。
と云うか、ルルーシュも女の子だから…そう云った時、正直云ってその場から消え去りたくなる気持ちになるのだ。
だから、
『御免…私の足に引っ掛けちゃったんだな…』
そう云って助け起こしたのだ。
人ごみの中では人の足に引っかかって転ぶことは珍しくない。
だから、ルルーシュの足に引っかかって転んだ事にしておけば、スザクへの嘲笑のみで終わる事はなくなり、原因はルルーシュにあったと云う事に出来る。

 ルルーシュはその時、何を思っていたのかは正直、覚えちゃいないのだけれど。
確かに、そう云った事をしたのは事実で…。
「ぼく、その時にルルーシュに一目ぼれ…しちゃったんだぁ…。だから、ずっと、ルルーシュのこと見ていたんだぁ…。何とか、お友達になりたくって、ルルーシュの特別な存在になりたいって思って…」
スザクが本当に恋する乙女の様な…。
そんな雰囲気を醸し出している。
さっき、スザクはルルーシュを可愛いと云って笑っていたけれど…。
―――確実にこっちは本当に可愛い…
ルルーシュはそう思ってしまう。
「スザクって…なんで、スザクの周囲に人がいるのか…解る気がして来たよ…」
ルルーシュがぼそりと呟いた。
スザクは本当に、傍にいると、なんだか安心感が生まれてくる。
だから、周囲にいる人たちは和やかな気分になれるのだろうと思う。
ルルーシュもさっきまで相当物騒な事を考えていたけれど。
スザクがこうして現れて、そんな気持ちが、なくなっている事に気が付いた。
「ぼく、別にそれほど友達が多い訳じゃないんだけどな…。確かに周囲に人がいっぱいいるけれど、その中でぼくの事をちゃんと知っている人はいないしさ…。だから、ぼくもルルーシュと一緒だよ?周囲に人がいるか、いないかの違いだけで…」
良く解らない様な気がしたけれど、解るその言葉…。
「そうか…。まぁ、スザクと一緒にいると退屈はしなそうだけどな…」
「そう?なら、ルルーシュ…ぼくの彼女になって?」
「ああ…いいよ…って…。え?」
何となく流れの中でそんな風に返事してしまったけれど…。
よくよく意味を考えてみると、凄い事を相手は云っているし、自分は凄い返事をしている。
「やったぁ…。今日からルルーシュ、ぼくの彼女ね…」
そんな風に笑顔を作るスザクを見ていると…。
これでも別にいいかと思えて来るから不思議なものだ。
ちゃんと話しをしたのは今日が初めてだ…。
でも…
―――まぁ…いいか…。
そんな風に思えてくるから不思議なものだ。
ルルーシュの答えに、スザクはルルーシュの右手を握って歩き始めた。
「さ、一緒に帰ろ?」
そう云われて、手を引っ張られて、ルルーシュはふっと笑った。
「ああ、帰ろう…」

END

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posted by 和泉綾 at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 196

呪いの言葉から…愛の言葉へ…



※スザルル両方にょたとなっているお話しです。
平気な方のみ、先に進んで下さい。

 なんだか、憂鬱な日が続いている。
何が理由で…などと云う、明確な理由は特には見つからない。
ただ、憂鬱なのだ。
正直、ルルーシュにこの世を支配できるだけの権力、財力を持っていたら、全てを破壊しつくしてやる…そんな思いさえもあるけれど。
実際に物理的に可能であれば、本当にやるに違いない。
それこそ、今の鬱憤をすべてぶちまけるように、ねちねちと全世界に超陰湿な方法でこの意味不明な憂鬱の八つ当たり的な報復をするに違いない。
特に、今120%の笑顔を振りまいている者や、本当は幸せの状態にいるくせに何か適当な理由を作って悲劇の主人公を演じている奴には特にねちねちと嫌がらせしてやりたい…。
とまぁ、結構物騒な事を考えているけれど。
考えているだけならタダだし、所詮、女子高生の戯言である。
「まず手始めに…東京にある目立つビルに対しては一応、不確定な予告をして片っ端から時間差で爆破するとか…。あと、全ての個人情報を手に入れて、今、幸せに浸っている奴とか、つまらないことで悲劇の主人公を演じている連中に本当の不幸と云うものを教えてやるのもいいな…」
自分でも気付かない内にそれは声に出してしまっていたらしい。
ここが、人通りが少なく、聞いている人が殆どいなかった事がある意味幸いだ。
「顔は綺麗なのに…随分物騒な事を考えているんだね…。しかも、口に出したりして…」
背後からそんな言葉をかけられる。
「ほわぁぁぁぁ…」
流石に驚いてズザザザザ…と後ずさりながら、妙な声を出してしまう。
正直、こう云うのは心臓に悪い。
「い…いきなり…なんだ!というか、お前誰だ!」
その、突然声をかけて来た人物を見ると…。
ルルーシュと同じ学校の制服を着ている。
髪の毛は茶髪の癖毛で、多分、伸ばすと面倒な事になりそうな感じだ。
運動部に所属しているのか…女子の割に結構筋肉が付いている。
でも…胸の部分を見ると…
―――デ…デカイ…
うっかり平べったい自分の胸を見てしまう。
恐らく、下を向くと自分の胸と一緒に地面が見えるタイプだろう。
ルルーシュは心の中で思う。
―――ヤルなら、確実にこいつに一番の不幸を味わわせてやる…
さっきまでの妄想がこんなリアルの世界にまで飛んで来ているらしい。
本当に心が病んでしまっていて、解説している方は見ていて痛々しいと思ってしまうわけなのだが…。
しかし、これもまた、青春…と云う事でスルーしておく。
「特待生クラスのルルーシュ≂ランペルージさんだよね?ぼく、枢木スザク…。普通科クラスのD組なんだ。宜しくね…」
この笑顔いっぱいで握手を求めて来る辺りが更に憎たらしい…。
というか、何故に彼女がルルーシュに取っ付いて来ていて、妄想中の独り言まで聞いているのか…。
そんな事を頭の中で巡らせてしまうのだけれど。
ただ、何故なのか…こいつの笑顔を見ていると…なんだか…
―――まるで…犬だな…
そんな風に思えて毒気を抜かれてしまっていた。
「というか、なんで私の名前を知っているんだ?」
これはルルーシュの無自覚にして素朴な疑問だった。

 ルルーシュの言葉に、スザクは苦笑した。
学年一の秀才で、美人だから男子も騒いでいる。
確か、入学式のときも主席入学で新入生代表の挨拶をしていたのだ。
それで、ルルーシュの名前を知らないともなれば、かなりのモグリか、事情があって、入学式から一度も登校していない生徒であるとしか云えない。
それなのに、ルルーシュの口から出てくるセリフに脱力してしまう。
「あ…あのね?多分、今学園一の有名人だよ?」
「何か、私、犯罪でも犯したか?私は自分が二重人格である認識はないんだけれど…」
段々、頭がいいのか、悪いのか、解らなくなってきた。
確かに、テストの点数は抜群にいいから暗記力はあると思う。
そして、強引に入らされたらしい生徒会ではその有能ぶりを発揮している。
だから、確実にその部分に置いては非常に優秀なのだと思う。
それは確かだろう。
しかし、これほど彼女の身に危険を感じてしまう程の鈍感と云うか、天然だったとは…。
いつも、クールなイメージで歩いているから正直、驚きは測り知れないのだけれど。
「あ、別に、犯罪者だけが有名人になる訳じゃないんだけど…。それに、ルルーシュ、入学式のとき、入学生代表挨拶しているでしょ?ルルーシュって美人だから、あっという間に有名人になるよ。その後、定期テストでも、校外模試でもトップをキープしているんだから、有名にならない方が不思議だって…」
スザクがやれやれと云った表情でルルーシュに云うのだけれど。
ルルーシュはスザクの言葉に不思議そうな表情を見せている。
「そんなものか?私はあまり他人に興味がないからな…」
そんな事をルルーシュが云っているけれど…。
―――さっき云っていたのって、不特定多数に対して…なのか…。というか、ルルーシュって人間嫌いなのかな…
そんな事を思ってしまう。
スザクはいつも周囲に誰かがいないと寂しくなるし、誰かがいると安心できるタイプなので、ルルーシュの先ほどの独り言はかなり衝撃的だった。
「そうなの?ぼくなんかは、一人だと寂しくなっちゃうけどなぁ…。今日はみんな、彼氏とデートとか云ってぼく一人になっちゃったから…。で、寂しいと思っていたところにルルーシュを見つけてラッキーって感じ…」
これはスザクにとっての本当だ。
スザクは基本的に自由奔放と云う奴だ。
これだけ明るくて、快活だから交際を申し込まれることだってない訳じゃない。
これはルルーシュも同じだと思われるけれど。
それでも、スザクの場合、他の友達と一緒にいられる時間までその相手に拘束されるから断るし。
ルルーシュはぶっちゃけ、惚れたはれたの話しはめんどくさいと思っているから断る。
正直、二人の場合、全然知らない相手から告白される事も多いので、知らない相手と恋人として付き合えと言われても困ると云うのも事実である。
「私は…別に、一人でも平気…というか、一人の方が楽だな…。あんまり人との付き合い方はうまくないし、言葉遣いも悪いからな…。相手に嫌な思いをさせて、後で自分も嫌な思いをするくらいなら、近寄らせない方がいい…」

 ルルーシュのその一言に…。
スザクは少し感心した表情を見せて、口を開いた。
「へぇ…ルルーシュって優しいんだね…。それに、自分の事をちゃんと分析していて…。凄いなぁ…。ぼくなんて、そう云う事考えなくって、自分が楽しければそれでいいって云う感じなのにさ…」
「それで、枢木さんの場合はちゃんと周囲も楽しんでいるからいいじゃないか…」
スザクの言葉にルルーシュがそう返すと…。
スザクは少し驚いて、少し複雑な笑みを見せた。
「『枢木』って云い難いでしょ?ぼく、勝手にルルーシュって呼んじゃっているし、ルルーシュもスザクって呼んでよ…」
今の複雑な笑みはちょっと寂しかったらしい。
まぁ、スザクの性格なら何となく解る気がしたのだけれど。
「じゃあ…そうさせて貰う…。その…スザクの場合は、見ている限り、いつもすごく楽しそうだし、周囲の人間も笑っているじゃないか…。私にはそんな真似は出来ないからな…」
「ま、ルルーシュの場合、『高嶺の花』って感じだもんね…。でも、こうして話してみると普通の女の子だよね…。ね?好きな芸能人とかっていないの?」
休み時間…ルルーシュの周囲から聞こえてくる女子生徒達の会話を…。
今、ルルーシュはスザクとしようとしている…。
そんな風に思えた。
「えっと…」
ルルーシュが困った様に…口を開く。
スザクはそのルルーシュの答えをワクワクしていると云う感じで待っている。
ただ、ルルーシュとしてはどうやら何となく云い難いと云う感じらしく…。
中々出て来ない。
「ひょっとして、ぼくの知らない人かなぁ…。というか、ルルーシュとこうして話すのって初めてだもんね。ぼくが誰を知っているかなんて解らないよね…」
と、ルルーシュに云ってみる。
スザクは本当に好奇心でルルーシュを構っている感じだ。
「私のことより、その…お前は?」
ルルーシュが強引にスザクに話しを振る。
どうにもこうした形での会話の中で自分の事を話すのは苦手らしい。
だから、ルルーシュはいつも黙っているし、表情を変えることも少ないわけで。
それ故に、『高嶺の花』になり過ぎてしまって近寄りがたい雰囲気を作ってしまっているのかもしれない。
「そうだなぁ…僕は、JINOが好きだよ…。背が高いし、金髪で、軽い感じのキャラを作っているけれど…なんだか育ちがよさそうだしさ…」
スザクの口から出てくる…昨今、中高生からその中高生の母親世代にまで人気の高い若手俳優の名前が出て来た。
それを聞いて、ルルーシュは更に落ち込んだ。
「ぼくは云ったよ?ルルーシュは?」
スザクの問いにルルーシュが『うっ』と云う感じに止まってしまう。
今のルルーシュを見ていると、普段、学校で見ているルルーシュと雰囲気が違っていて…。
凄く新鮮さを感じてしまう…」
「…ロ…」
ルルーシュが本当に聞き取れないほど小さな声で答えたのだ。
本当に…しぶしぶと云う感じに…
「え?もう一度言ってくれる?ごめん、聞こえなかった…」
スザクがそう訊き直すと…
「ゼロ…。『コードギアス』って云うアニメに出て来ている…仮面の主人公…」

 ルルーシュの答えに…。
スザクは一瞬止まる。
そして、ルルーシュを見て見ると、顔を真っ赤にしている。
流石に…こんな答えは予想外で…。
スザクもポカンとしてしまう。
「だ…だから…答えたくなかったんだ!きっと、バカにしているんだろ?解っているよ!アニメで悪かったな!アニメとドラマの違いなんて、2次元のキャラに偶像崇拝しているか、3次元のキャラに偶像崇拝しているか…それだけの違いだろ!わ…私は…3次元の中で自分の胸に来るキャラがいないから…だから…」
半ば怒鳴りつけている様なルルーシュに…。
スザクは耐えきれなくて、声を出して笑い始めてしまった。
「あはははは…ルルーシュ最高!ホント、ルルーシュって可愛いんだね…。あ、これはバカにしているわけじゃなくて…ルルーシュがあんまり可愛いから…」
お腹を抱えて笑っているスザクに対して、流石にルルーシュの怒りを感じる。
確かに、アニメキャラに懸想しているなんて、そんな事を云ったら『高校生にもなって…』とか、『アニメおたく?ひょっとしてBLとかやおいとかって好きな人?』とか、訊かれるに違いない。
ただ、その作品を見もせず、魅力も知らずにバカにされるのは腹が立つ。
「別にいいよ…。そのくらいの反応は…何となく予想していたからな…。言いふらしたければ言いふらせばいいさ…。定期試験学年トップのルルーシュ≂ランペルージはアニメおたくで、危ない奴だとでも…」
そんな事を吐き捨ててルルーシュはすたすたと歩き始めた。
そんなルルーシュに気が付いたスザクが慌ててルルーシュを追いかける。
「ごめん…そんなつもりで笑っていたんじゃないよ…。ホントにルルーシュが可愛くて…。だから…。それに、ルルーシュの云う通りだと思うし…。2次元キャラを好きになるか、3次元キャラを好きになるか…それだけの違いだもんね…。アイドルって『偶像』って意味なんでしょ?」
ルルーシュを追いかけながらスザクがそう云って来た。
流石に笑い過ぎたのかと反省しているようだ。
「別に…いつもの事だし…。だから…クラスの女子と話せないんだ…。どうせ、バカにされるだけだしな…」
ルルーシュがぼそりと云うと、スザクは少し、お姉さんになった様な気持ちで微笑んだ。
「そんな事無いって…。ま、確かに以前はそう云う風に据えられちゃっていた事もあるみたいだけど…。でもさ、ぼくもその作品、知ってるよ…。従妹が嵌っていてさ…。ぼくんちに来るといつも『ゼロさまぁ〜〜〜』ってテレビ見ながら騒いでる…。だから、知っているんだけど、ぼくはシュナイゼルの方が好みだけどなぁ…。滅多に出て来ないけど…」
スザクがそこまで云った時…。
ルルーシュの目の色が変わった。
「あんな性格悪い奴がいいのか?何を考えているか解らなくて、絶対に自分の恋人さえも自分の目的の為なら迷わず捨てるぞ…。あのキャラは…。そして、ああ云う肩書がなければ確実に女のひもをやっていそうなキャラだぞ?」
ルルーシュの勢いに…スザクはうっかり飲み込まれてしまった。

 ルルーシュはスザクの両肩をひっつかんでいる事に気が付き…はっと我に返った。
「あ、御免…つい…」
普段、決して見る事の出来ないルルーシュの表情を見ることができて…スザクはほんわかと幸せを感じてしまう。
「なんで謝るの?ルルーシュもそんな風に夢中になっている物があるんだね…。ちょっとその事を知って得した気分だよ…」
スザクの言葉に、ルルーシュはまたも驚いた表情を見せる。
そんなルルーシュにちょっと苦笑してしまうスザクだけど…。
「って云うか、私、スザクの事は今日初めて知ったし、スザクだってここにいたのは偶然だろ?」
ルルーシュの言葉は…ちょっとだけ痛いと感じてしまう。
だって、スザクの中では偶然ではなかったから…
「偶然…か…。それならそれで…運命っぽく見えるんだけど…。でも、ちょっと違うんだよね…」
スザクがちょっとだけ云い難そうにルルーシュに云った。
そして、ルルーシュは今日、スザクと話し始めて何度目になるのか解らない驚いた表情を見せる。
これほど驚いた表情を見せると云うのは恐らく、ルルーシュの私生活をよく知る者でも珍しいと云うに違いない。
「えっと…ね…。ぼく…その…ずっとね、ルルーシュを見ていたんだ…。ぼくもルルーシュも女の子なのに…おかしいと思うけど…。でも、ずっとね、ぼく、ルルーシュの事が気になって仕方なくって…それで…」
ルルーシュは不思議そうな顔をする。
確かに中学卒業の時にも後輩の女の子から制服のネクタイが欲しいだの、一緒に写真を撮って欲しいだのいわれたけれど…。
その時の女の子達の雰囲気ともちょっと違う気がした。
「ぼくね…実は、入学式の前から…ルルーシュ、知っていたんだ…。合格発表の日に…ぼく、ルルーシュの前で思いっきりこけたんだけど…覚えているかなぁ…」
ルルーシュは自分の記憶のハードディスクの中からそのデータを探す。
そして…
「あ、ああ…あの時の…」
「ぼく、ホント、中学の進路指導の先生にも『ギリギリだから一つランクを落とした方がいい…』って云われていて…。でも、合格発表の時、ぼくの受験番号があって…凄く嬉しくって、凄く浮かれていて…で、思いっきりこけて、マンガみたいな転び方してパンツ丸見えになっちゃって…」
スザクの身体を見ていると、運動は得意そうに見える。
確かに、ルルーシュの記憶の中に、合格発表の日に自分の目の前で思いっきり派手に転んだ女子がいた事を思い出した。
「あの時、ぼく、凄く恥ずかしくって、立ち上がれなくなっちゃったときに…」
ルルーシュは何事もなかったようにスザクに手を差し伸べて、助けた…。
と云うか、ルルーシュも女の子だから…そう云った時、正直云ってその場から消え去りたくなる気持ちになるのだ。
だから、
『御免…私の足に引っ掛けちゃったんだな…』
そう云って助け起こしたのだ。
人ごみの中では人の足に引っかかって転ぶことは珍しくない。
だから、ルルーシュの足に引っかかって転んだ事にしておけば、スザクへの嘲笑のみで終わる事はなくなり、原因はルルーシュにあったと云う事に出来る。

 ルルーシュはその時、何を思っていたのかは正直、覚えちゃいないのだけれど。
確かに、そう云った事をしたのは事実で…。
「ぼく、その時にルルーシュに一目ぼれ…しちゃったんだぁ…。だから、ずっと、ルルーシュのこと見ていたんだぁ…。何とか、お友達になりたくって、ルルーシュの特別な存在になりたいって思って…」
スザクが本当に恋する乙女の様な…。
そんな雰囲気を醸し出している。
さっき、スザクはルルーシュを可愛いと云って笑っていたけれど…。
―――確実にこっちは本当に可愛い…
ルルーシュはそう思ってしまう。
「スザクって…なんで、スザクの周囲に人がいるのか…解る気がして来たよ…」
ルルーシュがぼそりと呟いた。
スザクは本当に、傍にいると、なんだか安心感が生まれてくる。
だから、周囲にいる人たちは和やかな気分になれるのだろうと思う。
ルルーシュもさっきまで相当物騒な事を考えていたけれど。
スザクがこうして現れて、そんな気持ちが、なくなっている事に気が付いた。
「ぼく、別にそれほど友達が多い訳じゃないんだけどな…。確かに周囲に人がいっぱいいるけれど、その中でぼくの事をちゃんと知っている人はいないしさ…。だから、ぼくもルルーシュと一緒だよ?周囲に人がいるか、いないかの違いだけで…」
良く解らない様な気がしたけれど、解るその言葉…。
「そうか…。まぁ、スザクと一緒にいると退屈はしなそうだけどな…」
「そう?なら、ルルーシュ…ぼくの彼女になって?」
「ああ…いいよ…って…。え?」
何となく流れの中でそんな風に返事してしまったけれど…。
よくよく意味を考えてみると、凄い事を相手は云っているし、自分は凄い返事をしている。
「やったぁ…。今日からルルーシュ、ぼくの彼女ね…」
そんな風に笑顔を作るスザクを見ていると…。
これでも別にいいかと思えて来るから不思議なものだ。
ちゃんと話しをしたのは今日が初めてだ…。
でも…
―――まぁ…いいか…。
そんな風に思えてくるから不思議なものだ。
ルルーシュの答えに、スザクはルルーシュの右手を握って歩き始めた。
「さ、一緒に帰ろ?」
そう云われて、手を引っ張られて、ルルーシュはふっと笑った。
「ああ、帰ろう…」

END


あとがきに代えて



久しぶりに…と云うか、ここまでのあからさまなユリ話しは初めて書きましたね。
最初のルルーシュの妄想は和泉の中にもある気がします。
正直、それだけの力があればやりかねない精神状態なので…(苦笑)
ギャグで終わって良かった…。
あのままシリアスモードで行ったら大変な事になっていましたよ…(; ̄― ̄川 アセアセ)

えっと、『Novel Rebellion』での小説更新は本日が最後になります。
恐らく、20日に最後の御挨拶をさせて頂きます。
記事については多分、削除という形になると思いますが…。
うっかり有料会員申し込みしていて、契約の関係上、暫くこのアドレス自体は残ると思います。
因みに、外部のRSSを使っているシステムに関しては全て移行済みです。
ただ、このブログの記事作成、凄く使いやすい…というか、慣れの問題でやり易いので、ブログそのものは健在…みたいな感じになるかもしれません。
その辺りは未定ですが、20日以降のこちらへのコメント、トラックバックはすべて受付無効となります。
予めご了承ください。
また、この『Novel Rebellion』のリンクを張って下さっている皆様、どうか、リンクの削除をお願い致します。
『奥の手』をご存じの方は明日以降、そちらのページをご覧ください。


☆拍手のお返事


水流さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
そして、雨にかんして、ご心配有難う御座居ます。
まぁ、うちの辺りも警報が出っぱなしだったようですけれど、和泉のところは大丈夫です。

『Cheated thing』
これは…まぁ、和泉自身が壊れている時でないとかけないと思います。
正直、立ち直って、読み返したら正視に耐えない気がします。
たまにはこういう話もありって事で…。
和泉の場合、書いている数が多いので、たまに変わった作品を書かないと飽きられる可能性もあるんで…(苦笑)
基本的には、和泉はハッピーエンドを目指しています。
表向きにはハッピーエンドに見えなくても、笑っていなくても、その先に確実に救いがあるように…と思って書いております。

『残酷な美徳』
はい、水流さまの仰るとおりです。
それこそ、まんまです。
ルルーシュの言葉…ひょっとしたら和泉が誰かに云って欲しかったのかもしれません。

とりあえず、ぼちぼち頑張って行きます。
落ち込んでばかりもいられないので…

紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
お仕事お疲れ様です。
そんな忙しい中でも読んで頂いて有難う御座居ます。
夏バテは毎年の事なので…。
5月のうちにちゃんと体重を増やしておけなかった和泉の責任なので…何とか頑張ります。

『Ein Lügner』
最近、オリジナルのBL小説サイトを回りまくっている所為でしょうか…。
ハナからBL設定に違和感を覚えなくなってきている気がしています。
というか、女性が周囲でこの2ショットのおっかけしている女子社員だけですしね…(-_-;)
しかし、驚いて頂けて有難う御座居ます。
和泉も、書いている作品がなまじ多いだけに、たまに素っ頓狂な事をしないと飽きられるかと…(爆)

この作品はルルーシュの性格がよく表れている気がします。
書いている和泉が自分で自分が病んでいる事を再確認させて頂きました。

あと、『メタクサ』というのは、ブランデーの一種でアルコール度数は40度前後ある強い酒です。
空きっ腹に入れたら普通にぶっ倒れる代物です。
なので、グラス一杯飲まずに落ちても別にアルコールに弱いと云う訳ではないです。
まぁ、和泉の書くルルーシュは酒弱いのが基本ですけどね。
和泉も空きっ腹に『メタクサ』を飲むような真似はしないです…ハイ…
口当たりがいいので、飲む時には注意しましょう。

『Cheated thing』
これは、完全に和泉の気持ちが病んでいる状態で書いている感じですね。
ホントにスザルルをいじめ倒しています。
それでも、ちゃんと二人をくっつけているので…。
それに、ちょっとかわいそうな気もするんですが…。
ジノが結構いい味を出してくれたと思います。
スザクに騙されていた事を知ったルルーシュをそのままかっさらおうと云う…。
中々姑息にして、悪役っぽい感じで…(笑)

まぁ、これは失って初めて気がつくって云う感じが出せればなぁ…と…。
また、対象にしたのがルルーシュだったと云う時点でそもそもの間違いでしょうね。
確実に『ミイラ取りがミイラ』になりますよね…。
最終的には両想いになったのですが…。
スザクはこれから大変でしょうね…。

『残酷な美徳』
スザクって割と、周囲に人がいて…こんな事を悩むタイプには見えないんですけれど…(無印は)
それでも、やっぱり、表に見えている顔と、そうでない部分…。
理解してくれる人が必要だと思いまして…。
とりあえず、ルルーシュが居てくれてよかった…という感じに終わらせられればと思いまして…。

ルルーシュの場合、答えは云わないと思うんですよね。
答えは自分で出させる…。
でも、ヒントはちゃんと出す…見たいな…。
スザクがぐるぐる考えている状態なので、ルルーシュとしても本当は放っておくつもりだったのでしょうが…。
おせっかいをしてしまった…という感じですかね…。

『It's Destiny』
今回はちょっとこれからの騒動の予兆を醸し出すためのものでしたね。
ギネヴィアさんの避暑に関しては次回、ちゃんと明らかにするつもりです。
ただ、このお話し、すぐに予定変更になるので…断言できませんが…。

スザクに関してはとにかく大人になって貰わなくてはならない状態である事も確かです。
記憶を取り戻す前にこんな状態になっていたら…それはそれでchaosな状態になりそうですけれど…。
それでも、スザクの方は今度こそ、間違わないと思います。
前世では決定的な間違いに気付いた後、既にどうしようもなかった訳ですから…。

ルルーシュも…過去の過ちを繰り返さない…という感じに、自分の欲しいものを自覚し始めてくれました。
これから、又chaosな状態になって行き…きっと、書く和泉が泣く事になりそうですが…。
頑張ります…

『幼馴染シリーズ』
やっとスザク、ちゃんと男になってくれました。
長かったぁぁぁぁ…・
書いている方としては一安心ですよ…。
こちらの閉鎖前にうまくまとめられればと思ったのですが…。
どうしてもこの部分の話を入れたくて…。
まぁ、もうじき終わります。
その後の事は…
ここでは秘密です…♪

まぁ、これからいっぱい居る小姑相手にスザクの戦いが始まります。
それこそ、これまでの事を考えたとき、スザクは相当頑張らなくてはならないでしょう。
それでも、愛さえあれば…
妄想の中で暗いこの言葉が通用しますように…(苦笑)

『皇子とレジスタンス』
スザク…ホントにこの皇子様の扱いが上手になりましたね…。
そのうち、オレンジ君がルルーシュに泣かされた時にはスザクに頼ってくる日が来るかもしれません(笑)

今回、中華に乗り込むキャラを選ぶときに、ある程度冷静に考える若年者であって欲しかったのは事実です。
本編では朝比奈さん、感情に走っちゃっていましたけれど。
ただ、この話では少々キャラを変えさせて頂きました。
正直、あんなバカ設定な連中ばかりだと、使えないので…。
ただ、意外とかっこよくまとまってくれてよかったです。

『黒執事U』
あの時系列…知りたいです。
グレル…小生に極上の『萌え♪』を…(爆)

『ぬらりひょんの孫』
時間がないのでこれからCS放送を録画しつつ見る予定です。
見たいんですよ…。
キャラかっこいいし、声は福山さんだし…。
月曜日からなので…楽しみです♪

これまで色々励まして下さって有難う御座居ました。
『奥の手』の方でもまた、宜しくお願い致します。


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posted by 和泉綾 at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年07月15日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説195

Ein Lügner



※スザクが大きな失恋をして、幼馴染で親友のルルーシュと何となくはっきりしない関係が続いているのですが…

 今日も会社の屋上で、女性社員の人気を二分する男二人がランチタイムを過ごしている。
これは、この男二人の片割れである、枢木スザクが大失恋をした…と云う時点から始まっている。
そんな中で一時期、スザクのファンはルルーシュに対して、ルルーシュのファンはスザクに対して会社中が凄まじい嵐に見舞われたけれど。
最近では、一部の腐女子たちのお陰で、既にスザクのファンもルルーシュのファンも二人一緒にいるところを眺める追っかけとなった。
実際に、この二人が一緒にいるところは中々絵になり…。
最近ではオリジナルカテゴリーで同人誌即売会などでこの二人がネタになっている事もあるとか、ないとか…。
実際に、婦女子、貴腐人の好む展開のない様になっているらしいけれど。
ただ、この二人はそんな彼女達の抱いている夢の様な訳にはいっていない様である。
こう云ったネタがある場合、妄想を膨らませる方に人は熱中してしまい、真相の方は基本的にどうでもいい様である。
というか、自分の妄想ネタが潰される事の方が話しは重大であるかのようだ。
会社中にそんな噂が流れているのだから、当事者の彼らが知らない筈もないのだけれど。
その内に治まるだろうし、変に騒ぎ立てる方が逆に怪しまれる。
だから、二人ともいつもの様に仕事して、いつものように一緒に昼食を摂って、いつものように一緒に帰って行く…。
そんな事が続いている。
まぁ、二人とも仕事ができる社員なので、一緒に帰る…と云う事が叶わない事もあるけれど。
ただ、この二人がペアで仕事をすると効率がいいし、結果も予想以上の結果を出してくれるものだから、上司はこの二人を組ませることが多い。
そう云った事情から、女子社員達の妄想ネタはさらに膨らんで行く事になる。
この二人も、お互いの気持ちなんて解らないまま、こんな風に一緒にいるのだ。
二人が知るのは、自分の気持ちのみだ。
実は、失恋をしてショックでルルーシュに助けを求めたスザクだけれど…。
最近では、今のあやふやな…何となく惰性に続いているこの関係を何とか断ち切りたいと思うのだけれど。
でも、スザクの気持ちとしては、一人になるのも嫌なのだ。
周囲から見れば、スザクがルルーシュを利用している様にも見えるかもしれないし、単純にスザクが自分の寂しさを紛らわせるために、ルルーシュをスザクに縛り付けているような気持ちにもなる。
正直、こんな自分が嫌だったけれど。
―――今、一人になるのは嫌だ…。
そんな思いもあって、中々ルルーシュに申し訳ないと思いながらも、今のこの状態をずるずると続けているのだ。
ルルーシュは昔からスザクの気持ちに対して結構敏感で…。
恐らく、ルルーシュはスザクのそんな迷いにも気が付いている。
そんな事まで解るからこそ、スザクはしんどいと思う。
ルルーシュに特定の相手が出来て、スザクの事を放り出してくれればいいとさえ思うけれど。
それも、やっぱりルルーシュに甘えている事に他ならない。

 スザクが失恋したのは半年ほど前…。
スザクはずっと、大好きで堪らなかった相手と別れた。
それは…相手の仕事の都合にあった。
と云うのも、その相手は貿易会社の海外事業に携わる部署にいて…。
貿易会社で海外事業に携わっているともなれば、中々一緒にいられる時間がない…。
スザクとしてはいつも傍にいたかったけれど、中々一緒にいる事も出来なくて…。
会う度にセックス以外何をしているか尋ねられると、何も答えられないと云う状態に陥っていた。
話したい事がある。
一緒に行きたいところがある。
一緒にやりたい事がある。
そんな思いは、そんな相手と付き合っていては、望むべくもなかった。
おまけにその相手と云うのは中々優秀な社員をやっていたようで、日本に帰国しても中々時間が取れない状態だった。
やがて…。
スザクの方に我慢の限界が来て…。
そして、相手も久しぶりに会う度に、中々会えない事で喧嘩になり…。
そんな事が多分、1年くらい続いていた。
ある時、スザクがその事に耐えきれなくなって…。
大好きな相手だったけれど。
本当は別れたくなんてなかったけれど。
あんな風に会う度に大喧嘩して…というその状況に耐えきれなくなって、別れた。
それから半年…。
スザクはルルーシュと一緒にいる。
友達ではない。
恋人でもない。
でも、スザクの寂しさを紛らわせる為に、スザクはルルーシュに甘えていると自覚しながら、ルルーシュの身体を求め、そして、ルルーシュはそんなスザクの求めに応じていた。
ルルーシュの真意がどこにあるか解らない。
スザクの気持ちだって、きっと、まだ、あの時別れた相手にある…とスザクは思っている。
本当に好きだったから…。
本当は別れたくなかったから…。
そんな事を思いながら…ルルーシュとのあいまいな関係を半年も続けているのだ。
スザクのそんなあやふやな気持ちを恐らく気づいているルルーシュに少し、イライラしながらも、それでも、今のスザクは一人になる事が怖くて…。
だから、そんな風にルルーシュのやさしさに甘えてしまっている自分に一番イライラしている。
今日も、ルルーシュが昼食を作って来てくれた。
学生の頃から、本当に変わらない。
本当に口数は少ないし、喋り方は傲慢だし、可愛くないと思う事がたくさんあるけれど。
でも、こう云う時、ルルーシュの優しさを感じる。
本当は会社内の妙な噂だって知っている。
そう云った噂が立つ事は、誰でもそうだけれど、決して快く思わない。
ルルーシュは特にそう云った傾向が強いし、本人の外見や立ち居振る舞いを完全に理解せずに『目立たない生活』をモットーとしている。
それなのに、ルルーシュはスザクの傍にいてくれる。
そして、スザクはそれに甘えている。
―――ホント、ルルーシュってば…こんな僕をさっさと追っ払ってくれればいいのに…。ルルーシュが優しいのをいい事に、甘えている自分がいて…。こんなにムカついている…。
そんな事が最近、頭の中でぐるぐる回り続けている。
正直、こんな事、あと、1ヶ月も続いたら、普通に自己嫌悪の大きさに押しつぶされて死ねる気がする。
そのくらい、今のスザクの心は病んでいる。

 いつものように仕事が終わって、昨日までなら、ルルーシュと一緒に残業をしていた筈なのだけれど…。
今日は二人とも残業がない。
二人で組んで取り組んでいる仕事が多いから、どちらか片方だけが残業と云うのは基本的にあまりないのだ。
「スザク…今日はどうする?」
ルルーシュが帰り支度を終えてスザクに声をかけた。
「あ、えっと…特に予定は…」
「なら、夕食はうちに来るか?材料費はお前が出すなら作ってやる…」
「そう?じゃあ、今日はオムライスが食べたい…」
「買い物、荷物持ちもしろよ?」
女子社員達はこの二人の光景に周囲にはピンクの空気が流れていると…そこから妄想の世界へと暴走して行く。
そんな彼女達に気付いたスザクは少し困った様に笑ってため息を吐くし、ルルーシュは本気で機嫌が悪いため息を吐いた。
―――あの女どもが考える様な…そんな甘ったるい関係であるものか…
ルルーシュ自身、噂…と云うよりも彼女達の妄想を知っているから…。
そんな風に考えながら、頭の中で舌打ちする。
最近、スザクが色々悩んでいる事は解る。
正直、そんな姿を見ていて、ルルーシュにとって気持ちのいい状態であるとはとても言えない。
それでも…。
―――一人で居たくないのは…自分だけだなんて…思うなよ…。このバカ!
その事をきちんと言葉にできない自分がイラつくし、ムカつく。
いずれにしても、今のままなら確実に二人は別々の場所に立つ事になる。
そんな事を考えつつも、ルルーシュの中にあるのは…。
スザクの弱みに付け込んだまま…スザクを開放してやれない自分の心の狭さだ。
そんな時…。
身長が高くて、人の群れの中でもその身長の高さゆえに顔が見える男が、ルルーシュとスザクの方に歩いてきた。
最初にその人物に気が付いたのは…
スザクだった。
「え?ジノ…」
スザクがその名前を口に出した時、二人の目の前にその男が立ち止まった。
スザクがつき合っていた頃は、日本にいても中々時間が取れず、約束をしてもドタキャンも多かったと云うのに…。
「スザク…」
その相手がスザクの名前を声に出した時、スザクは踵を返して、走り出した。
「おい!スザク…」
その時のスザクには呼びとめようとするルルーシュの声も届いていなかった。
正直、この微妙なタイミングで…という思いはルルーシュの中にもあるのだけれど。
ただ…。
―――これで、スザクがやっと、心から笑えるようになるかもしれない…
そんな風にも思った。
そして、目の前にいるその存在にルルーシュは声をかけた。
「久しぶりだな…ジノ…。少し、時間をくれないか?」
ルルーシュのその言葉に…ジノは少し困った顔をしていたけれど。
でも、ジノとしてもあの別れ方は後味が悪いと云うか、何となく、ちゃんと自分の気持ちにけじめが付けられずにいた事は確かなようだった。
「解った…。ルルーシュ…。えっと…その時にはアイツのこと…教えて…くれるのか?」
ジノが少し、躊躇った様にルルーシュに尋ねる。
「ここまでの経緯を知らずにいたら、また、同じ事を繰り返すだろ?やり直したいんだろ?スザクと…」
ルルーシュの言葉に、ジノは苦笑した。

 ジノと話しをしたのは…恐らく30分くらいのこと…。
ルルーシュ自身、きちんと話せたし、それで、スザクがまた、以前の様に笑えるようになるなら…と、自分の中に思い込ませる。
正直、この時期にジノが現れると云うのは、卑怯だと思うし、こう云う時に自分の気持ちを無視して、ウソを吐ける自分がいることに感謝した。
その後に…少しだけため息もついてしまったけれど。
それでも…
―――あんなに苦しそうに、辛そうに俺を抱くよりは…マシだろう…
本来の姿に戻るだけなのだ。
以前の状態に戻るだけなのだ。
『仕事で会えないと云う事は仕方ない…。でも、今なら、別に直接会わなくても連絡を取る方法だってあるんだ。お前はあまりにほったらかし過ぎる。スザクは時差なんて気にしない…。だから、せめて1ヶ月に一度くらい、声を聞かせてやってくれ…』
この言葉がちゃんと云えただけで、多分、それでいいのだ。
そうすれば、辛そうに、寂しそうに、悲しそうにルルーシュを抱くスザクを見ずに済む。
そして、この訳の解らない関係も終わる。
きっと、ルルーシュとスザクの2ショットを見ながら妄想していた女子社員達は残念がるかもしれないけれど。
それでも、そんな事までルルーシュは責任を持ち切れない。
それに、元々、スザクのファンだった女子社員達は元の鞘に収まるだけだ。
―――そして…俺はまた…一人…か…。
別に、一人でいることは何も気にした事なんてなかった。
自分の生活リズムを崩される事の方が、正直、迷惑だったのだから。
そう考えながらも、ため息が出てくるのは何故だろうか…。
こんな自分が嫌だと思えてくる。
そして、ある事を思い立って…踵を返した。
ほどなくして…
ルルーシュの目的地に着いた。
「今晩は…」
そこは、ルルーシュの兄が経営しているバーだった。
普段ならあまり来る事はない。
と云うのも、正直、兄に対してはコンプレックスがあるし、この店だって暇つぶしの為にやっていて、本業は別にあると云う、中々ふざけた事をやっていると、ルルーシュの中で思っているのだけれど。
こう云う時にはある意味役に立つ。
兄が本業の片手間に、殆ど趣味のような感じで開いているバーだから、ルルーシュの都合に合わせて融通が利くのだ。
「おや?どうしたんだい?ルルーシュがここに来るなんて…珍しいね…」
「俺だって、サラリーマンやっているんです。ストレスがたまればアルコールが欲しくなることだってありますよ…」
そう云いながら、まだ、誰もいない店内の、いつもルルーシュの陣取っているカウンター席に腰かけた。
「メタクサ、ロックで…」
ルルーシュは腰かけるなり、マスターである兄にそう告げた。
そのルルーシュの様子に、小さくため息を吐いてルルーシュに云われた通り、メタクサを出してやる。
そして、入口にかけてある札を『Clause』にしてきた。
ブランデーをあまり好まないルルーシュがメタクサを頼む時は大抵、気持ちが荒れている時なのだから。
「明日は休みだし、必要なら泊まって行けばいい…」
「そうはいきませんよ…。兄さんと違って俺が仕事に合わせないといけないんですから…」
「そう云いながら、ここにきてメタクサを頼んでいるところを見ると、結構しんどいのかな?」
「別に…」

 自分の心の狭さに本当に嫌気がさしてくる。
これで、スザクは幸せになれるのに…。
それを喜んでやれない自分が許せなくて、こんな風に酒をあおって、兄に心配をかけているなんて…。
自分でも認めたくないけれど、つまらない道化を演じている気分だった。
「だから云ったんだよ…。ただ、寂しいだけの失恋した相手の面倒を見るなんてやめなさいと…」
「兄さんは、自分の好きな相手がそんな状態で、放っておけるんですか?」
「私は、そんな状態になった事がないから、解らないね…」
云いたい事を云ってくれる、このマスターは、ルルーシュのコンプレックスの象徴でもある。
何でも卆なくこなし、起業して現在ではお遊び半分のバーまで開いているのだから。
「君は、優秀なのに、何故、一サラリーマンに落ち着いているんだい?君がやろうと思うなら、私は協力を惜しまないし、今の君のその憂い、ふっ飛ばす程の環境を作る事も出来るだろうに…」
「俺は兄さんと違って、仕事が目的なんじゃないんで…。俺は、仕事ってのは自分が生きる糧を得るための手段にすぎませんから…」
「なら、今の会社を辞めて、うちに来るかい?君の能力であれば、私は大歓迎なのに…」
マスターがそう云った時…。
恐らく、ルルーシュが帰る時の為に鍵を開けっ放しにしていたし、ルルーシュがいるから札は『Clause』になっていても、電気がついているから中に誰かいることが解ったのだろう。
いきなり人が入ってきた。
「ルルーシュ!」
そこには…息を切らせているスザクが立っていた。
少し、酔いが回っていたルルーシュもその酔いが吹き飛ぶかと思うくらい、驚いている。
あのまま、ジノと一緒に…と思っていたから…。
「スザク…」
ルルーシュがその相手の名前を呼んだ声色で…マスターが『やれやれ』と云った感じに息を吐いた。
「じゃあ、私は暫く奥にいるから…変える時は呼んでおくれ…」
そのセリフを残して、マスターが奥へと入って行った。
マスターが仲に入って行くと、スザクはルルーシュの隣に腰かけた。
「ねぇ、ルルーシュ…さっき、ジノに何を話したの?で、なんで、こんなところで一人で自棄酒なんてしているの?」
スザクのストレートな質問に…。
「お前に…関係ないだろ?というか、ジノを放り出して…何をやっているんだ…お前…」
少し、酔いが回っている声…。
確かに、空きっ腹にメタクサなんて入れれば、酔いも回って来ると云うものだ。
「ルルーシュ…こんな風に、ルルーシュを悩ませたのは…僕の所為…なんだよね…」
スザクがそう云いながら、ルルーシュが手にしているグラスを取り上げた。
スザクのその行為にルルーシュは恨めしそうに見ているけれど。
それでも、それを睨むだけで何もしない。
そして、そんなルルーシュを見て、スザクは自分の方にルルーシュの頭を乗せるように抱きよせた。
「ごめんね…ルルーシュ…。ルルーシュ自身にウソを吐かせて…ごめん…」

 スザクの言葉に、ルルーシュは目を丸くするけれど…。
ここまでにかなり酔いが回って来ているらしくて…。
「僕、さっき、ちゃんとジノと別れて来た…。ジノと話しをして、ルルーシュがジノに僕の事、話してくれたって云うのを知って…。やっと、気付けたんだ…。だから、ルルーシュ、今までごめんね…。僕、ルルーシュがいい…。ジノと冷静に話していて…最期の方はもう、僕自身、ジノへの気持ち、壊れていたんだ…」
ルルーシュは必死に頭の中を整理する。
スザクの言葉を整理する。
―――スザクは…一体何を…云っている…?
「確かに最初の頃は、ルルーシュのやさしさに甘えていた。でも、今は違う…。ルルーシュのやさしさに惹かれて…そして、その優しいルルーシュと一緒にいて、守りたいって…そんな風に…」
「バカか…お前…。守るって云うのは…自分よりも弱いものに対して…」
「そう…だよ…。今のルルーシュ…凄く弱っている…。だから…僕…」
「俺は…弱く…なんて…」
そこまで云ってルルーシュの言葉が出て来なくなった。
代わりに、ルルーシュの寝息が聞こえて来た。
そんなルルーシュの身体を抱きあげる。
そして、奥に引っ込んだマスターに声をかけた。
「マスター…僕、ルルーシュを連れて帰ります。えっと…おいくらですか…?」
スザクが尋ねると、奥から聞こえて来たのは…
「別に、まだ、1杯目だ…。今日のところは私がルルーシュに私の会社に来てくれるように勧誘のための経費として落としてあげるよ…」
マスターの言葉に、スザクは苦笑した。
何とも不器用な兄弟だ…なんて思ってしまう。
「解りました…。じゃあ、お休みなさい…」
そう云ってスザクがルルーシュをおぶって店を出ようとすると…
「二度と、ルルーシュをこんな風に悲しませたら…今度は容赦しないからね…」
マスターが出て来てスザクにそう告げた。
スザクの方は、申し訳ないと云う気持ちの現れた笑みを見せた。
「はい…。二度と…こんな事には…なりませんから…」
そう云って、スザクは夜の街へ、ルルーシュをおぶって出て行ったのであった…

END

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posted by 和泉綾 at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 195

Ein Lügner



※スザクが大きな失恋をして、幼馴染で親友のルルーシュと何となくはっきりしない関係が続いているのですが…

 今日も会社の屋上で、女性社員の人気を二分する男二人がランチタイムを過ごしている。
これは、この男二人の片割れである、枢木スザクが大失恋をした…と云う時点から始まっている。
そんな中で一時期、スザクのファンはルルーシュに対して、ルルーシュのファンはスザクに対して会社中が凄まじい嵐に見舞われたけれど。
最近では、一部の腐女子たちのお陰で、既にスザクのファンもルルーシュのファンも二人一緒にいるところを眺める追っかけとなった。
実際に、この二人が一緒にいるところは中々絵になり…。
最近ではオリジナルカテゴリーで同人誌即売会などでこの二人がネタになっている事もあるとか、ないとか…。
実際に、婦女子、貴腐人の好む展開のない様になっているらしいけれど。
ただ、この二人はそんな彼女達の抱いている夢の様な訳にはいっていない様である。
こう云ったネタがある場合、妄想を膨らませる方に人は熱中してしまい、真相の方は基本的にどうでもいい様である。
というか、自分の妄想ネタが潰される事の方が話しは重大であるかのようだ。
会社中にそんな噂が流れているのだから、当事者の彼らが知らない筈もないのだけれど。
その内に治まるだろうし、変に騒ぎ立てる方が逆に怪しまれる。
だから、二人ともいつもの様に仕事して、いつものように一緒に昼食を摂って、いつものように一緒に帰って行く…。
そんな事が続いている。
まぁ、二人とも仕事ができる社員なので、一緒に帰る…と云う事が叶わない事もあるけれど。
ただ、この二人がペアで仕事をすると効率がいいし、結果も予想以上の結果を出してくれるものだから、上司はこの二人を組ませることが多い。
そう云った事情から、女子社員達の妄想ネタはさらに膨らんで行く事になる。
この二人も、お互いの気持ちなんて解らないまま、こんな風に一緒にいるのだ。
二人が知るのは、自分の気持ちのみだ。
実は、失恋をしてショックでルルーシュに助けを求めたスザクだけれど…。
最近では、今のあやふやな…何となく惰性に続いているこの関係を何とか断ち切りたいと思うのだけれど。
でも、スザクの気持ちとしては、一人になるのも嫌なのだ。
周囲から見れば、スザクがルルーシュを利用している様にも見えるかもしれないし、単純にスザクが自分の寂しさを紛らわせるために、ルルーシュをスザクに縛り付けているような気持ちにもなる。
正直、こんな自分が嫌だったけれど。
―――今、一人になるのは嫌だ…。
そんな思いもあって、中々ルルーシュに申し訳ないと思いながらも、今のこの状態をずるずると続けているのだ。
ルルーシュは昔からスザクの気持ちに対して結構敏感で…。
恐らく、ルルーシュはスザクのそんな迷いにも気が付いている。
そんな事まで解るからこそ、スザクはしんどいと思う。
ルルーシュに特定の相手が出来て、スザクの事を放り出してくれればいいとさえ思うけれど。
それも、やっぱりルルーシュに甘えている事に他ならない。

 スザクが失恋したのは半年ほど前…。
スザクはずっと、大好きで堪らなかった相手と別れた。
それは…相手の仕事の都合にあった。
と云うのも、その相手は貿易会社の海外事業に携わる部署にいて…。
貿易会社で海外事業に携わっているともなれば、中々一緒にいられる時間がない…。
スザクとしてはいつも傍にいたかったけれど、中々一緒にいる事も出来なくて…。
会う度にセックス以外何をしているか尋ねられると、何も答えられないと云う状態に陥っていた。
話したい事がある。
一緒に行きたいところがある。
一緒にやりたい事がある。
そんな思いは、そんな相手と付き合っていては、望むべくもなかった。
おまけにその相手と云うのは中々優秀な社員をやっていたようで、日本に帰国しても中々時間が取れない状態だった。
やがて…。
スザクの方に我慢の限界が来て…。
そして、相手も久しぶりに会う度に、中々会えない事で喧嘩になり…。
そんな事が多分、1年くらい続いていた。
ある時、スザクがその事に耐えきれなくなって…。
大好きな相手だったけれど。
本当は別れたくなんてなかったけれど。
あんな風に会う度に大喧嘩して…というその状況に耐えきれなくなって、別れた。
それから半年…。
スザクはルルーシュと一緒にいる。
友達ではない。
恋人でもない。
でも、スザクの寂しさを紛らわせる為に、スザクはルルーシュに甘えていると自覚しながら、ルルーシュの身体を求め、そして、ルルーシュはそんなスザクの求めに応じていた。
ルルーシュの真意がどこにあるか解らない。
スザクの気持ちだって、きっと、まだ、あの時別れた相手にある…とスザクは思っている。
本当に好きだったから…。
本当は別れたくなかったから…。
そんな事を思いながら…ルルーシュとのあいまいな関係を半年も続けているのだ。
スザクのそんなあやふやな気持ちを恐らく気づいているルルーシュに少し、イライラしながらも、それでも、今のスザクは一人になる事が怖くて…。
だから、そんな風にルルーシュのやさしさに甘えてしまっている自分に一番イライラしている。
今日も、ルルーシュが昼食を作って来てくれた。
学生の頃から、本当に変わらない。
本当に口数は少ないし、喋り方は傲慢だし、可愛くないと思う事がたくさんあるけれど。
でも、こう云う時、ルルーシュの優しさを感じる。
本当は会社内の妙な噂だって知っている。
そう云った噂が立つ事は、誰でもそうだけれど、決して快く思わない。
ルルーシュは特にそう云った傾向が強いし、本人の外見や立ち居振る舞いを完全に理解せずに『目立たない生活』をモットーとしている。
それなのに、ルルーシュはスザクの傍にいてくれる。
そして、スザクはそれに甘えている。
―――ホント、ルルーシュってば…こんな僕をさっさと追っ払ってくれればいいのに…。ルルーシュが優しいのをいい事に、甘えている自分がいて…。こんなにムカついている…。
そんな事が最近、頭の中でぐるぐる回り続けている。
正直、こんな事、あと、1ヶ月も続いたら、普通に自己嫌悪の大きさに押しつぶされて死ねる気がする。
そのくらい、今のスザクの心は病んでいる。

 いつものように仕事が終わって、昨日までなら、ルルーシュと一緒に残業をしていた筈なのだけれど…。
今日は二人とも残業がない。
二人で組んで取り組んでいる仕事が多いから、どちらか片方だけが残業と云うのは基本的にあまりないのだ。
「スザク…今日はどうする?」
ルルーシュが帰り支度を終えてスザクに声をかけた。
「あ、えっと…特に予定は…」
「なら、夕食はうちに来るか?材料費はお前が出すなら作ってやる…」
「そう?じゃあ、今日はオムライスが食べたい…」
「買い物、荷物持ちもしろよ?」
女子社員達はこの二人の光景に周囲にはピンクの空気が流れていると…そこから妄想の世界へと暴走して行く。
そんな彼女達に気付いたスザクは少し困った様に笑ってため息を吐くし、ルルーシュは本気で機嫌が悪いため息を吐いた。
―――あの女どもが考える様な…そんな甘ったるい関係であるものか…
ルルーシュ自身、噂…と云うよりも彼女達の妄想を知っているから…。
そんな風に考えながら、頭の中で舌打ちする。
最近、スザクが色々悩んでいる事は解る。
正直、そんな姿を見ていて、ルルーシュにとって気持ちのいい状態であるとはとても言えない。
それでも…。
―――一人で居たくないのは…自分だけだなんて…思うなよ…。このバカ!
その事をきちんと言葉にできない自分がイラつくし、ムカつく。
いずれにしても、今のままなら確実に二人は別々の場所に立つ事になる。
そんな事を考えつつも、ルルーシュの中にあるのは…。
スザクの弱みに付け込んだまま…スザクを開放してやれない自分の心の狭さだ。
そんな時…。
身長が高くて、人の群れの中でもその身長の高さゆえに顔が見える男が、ルルーシュとスザクの方に歩いてきた。
最初にその人物に気が付いたのは…
スザクだった。
「え?ジノ…」
スザクがその名前を口に出した時、二人の目の前にその男が立ち止まった。
スザクがつき合っていた頃は、日本にいても中々時間が取れず、約束をしてもドタキャンも多かったと云うのに…。
「スザク…」
その相手がスザクの名前を声に出した時、スザクは踵を返して、走り出した。
「おい!スザク…」
その時のスザクには呼びとめようとするルルーシュの声も届いていなかった。
正直、この微妙なタイミングで…という思いはルルーシュの中にもあるのだけれど。
ただ…。
―――これで、スザクがやっと、心から笑えるようになるかもしれない…
そんな風にも思った。
そして、目の前にいるその存在にルルーシュは声をかけた。
「久しぶりだな…ジノ…。少し、時間をくれないか?」
ルルーシュのその言葉に…ジノは少し困った顔をしていたけれど。
でも、ジノとしてもあの別れ方は後味が悪いと云うか、何となく、ちゃんと自分の気持ちにけじめが付けられずにいた事は確かなようだった。
「解った…。ルルーシュ…。えっと…その時にはアイツのこと…教えて…くれるのか?」
ジノが少し、躊躇った様にルルーシュに尋ねる。
「ここまでの経緯を知らずにいたら、また、同じ事を繰り返すだろ?やり直したいんだろ?スザクと…」
ルルーシュの言葉に、ジノは苦笑した。

 ジノと話しをしたのは…恐らく30分くらいのこと…。
ルルーシュ自身、きちんと話せたし、それで、スザクがまた、以前の様に笑えるようになるなら…と、自分の中に思い込ませる。
正直、この時期にジノが現れると云うのは、卑怯だと思うし、こう云う時に自分の気持ちを無視して、ウソを吐ける自分がいることに感謝した。
その後に…少しだけため息もついてしまったけれど。
それでも…
―――あんなに苦しそうに、辛そうに俺を抱くよりは…マシだろう…
本来の姿に戻るだけなのだ。
以前の状態に戻るだけなのだ。
『仕事で会えないと云う事は仕方ない…。でも、今なら、別に直接会わなくても連絡を取る方法だってあるんだ。お前はあまりにほったらかし過ぎる。スザクは時差なんて気にしない…。だから、せめて1ヶ月に一度くらい、声を聞かせてやってくれ…』
この言葉がちゃんと云えただけで、多分、それでいいのだ。
そうすれば、辛そうに、寂しそうに、悲しそうにルルーシュを抱くスザクを見ずに済む。
そして、この訳の解らない関係も終わる。
きっと、ルルーシュとスザクの2ショットを見ながら妄想していた女子社員達は残念がるかもしれないけれど。
それでも、そんな事までルルーシュは責任を持ち切れない。
それに、元々、スザクのファンだった女子社員達は元の鞘に収まるだけだ。
―――そして…俺はまた…一人…か…。
別に、一人でいることは何も気にした事なんてなかった。
自分の生活リズムを崩される事の方が、正直、迷惑だったのだから。
そう考えながらも、ため息が出てくるのは何故だろうか…。
こんな自分が嫌だと思えてくる。
そして、ある事を思い立って…踵を返した。
ほどなくして…
ルルーシュの目的地に着いた。
「今晩は…」
そこは、ルルーシュの兄が経営しているバーだった。
普段ならあまり来る事はない。
と云うのも、正直、兄に対してはコンプレックスがあるし、この店だって暇つぶしの為にやっていて、本業は別にあると云う、中々ふざけた事をやっていると、ルルーシュの中で思っているのだけれど。
こう云う時にはある意味役に立つ。
兄が本業の片手間に、殆ど趣味のような感じで開いているバーだから、ルルーシュの都合に合わせて融通が利くのだ。
「おや?どうしたんだい?ルルーシュがここに来るなんて…珍しいね…」
「俺だって、サラリーマンやっているんです。ストレスがたまればアルコールが欲しくなることだってありますよ…」
そう云いながら、まだ、誰もいない店内の、いつもルルーシュの陣取っているカウンター席に腰かけた。
「メタクサ、ロックで…」
ルルーシュは腰かけるなり、マスターである兄にそう告げた。
そのルルーシュの様子に、小さくため息を吐いてルルーシュに云われた通り、メタクサを出してやる。
そして、入口にかけてある札を『Clause』にしてきた。
ブランデーをあまり好まないルルーシュがメタクサを頼む時は大抵、気持ちが荒れている時なのだから。
「明日は休みだし、必要なら泊まって行けばいい…」
「そうはいきませんよ…。兄さんと違って俺が仕事に合わせないといけないんですから…」
「そう云いながら、ここにきてメタクサを頼んでいるところを見ると、結構しんどいのかな?」
「別に…」

 自分の心の狭さに本当に嫌気がさしてくる。
これで、スザクは幸せになれるのに…。
それを喜んでやれない自分が許せなくて、こんな風に酒をあおって、兄に心配をかけているなんて…。
自分でも認めたくないけれど、つまらない道化を演じている気分だった。
「だから云ったんだよ…。ただ、寂しいだけの失恋した相手の面倒を見るなんてやめなさいと…」
「兄さんは、自分の好きな相手がそんな状態で、放っておけるんですか?」
「私は、そんな状態になった事がないから、解らないね…」
云いたい事を云ってくれる、このマスターは、ルルーシュのコンプレックスの象徴でもある。
何でも卆なくこなし、起業して現在ではお遊び半分のバーまで開いているのだから。
「君は、優秀なのに、何故、一サラリーマンに落ち着いているんだい?君がやろうと思うなら、私は協力を惜しまないし、今の君のその憂い、ふっ飛ばす程の環境を作る事も出来るだろうに…」
「俺は兄さんと違って、仕事が目的なんじゃないんで…。俺は、仕事ってのは自分が生きる糧を得るための手段にすぎませんから…」
「なら、今の会社を辞めて、うちに来るかい?君の能力であれば、私は大歓迎なのに…」
マスターがそう云った時…。
恐らく、ルルーシュが帰る時の為に鍵を開けっ放しにしていたし、ルルーシュがいるから札は『Clause』になっていても、電気がついているから中に誰かいることが解ったのだろう。
いきなり人が入ってきた。
「ルルーシュ!」
そこには…息を切らせているスザクが立っていた。
少し、酔いが回っていたルルーシュもその酔いが吹き飛ぶかと思うくらい、驚いている。
あのまま、ジノと一緒に…と思っていたから…。
「スザク…」
ルルーシュがその相手の名前を呼んだ声色で…マスターが『やれやれ』と云った感じに息を吐いた。
「じゃあ、私は暫く奥にいるから…変える時は呼んでおくれ…」
そのセリフを残して、マスターが奥へと入って行った。
マスターが仲に入って行くと、スザクはルルーシュの隣に腰かけた。
「ねぇ、ルルーシュ…さっき、ジノに何を話したの?で、なんで、こんなところで一人で自棄酒なんてしているの?」
スザクのストレートな質問に…。
「お前に…関係ないだろ?というか、ジノを放り出して…何をやっているんだ…お前…」
少し、酔いが回っている声…。
確かに、空きっ腹にメタクサなんて入れれば、酔いも回って来ると云うものだ。
「ルルーシュ…こんな風に、ルルーシュを悩ませたのは…僕の所為…なんだよね…」
スザクがそう云いながら、ルルーシュが手にしているグラスを取り上げた。
スザクのその行為にルルーシュは恨めしそうに見ているけれど。
それでも、それを睨むだけで何もしない。
そして、そんなルルーシュを見て、スザクは自分の方にルルーシュの頭を乗せるように抱きよせた。
「ごめんね…ルルーシュ…。ルルーシュ自身にウソを吐かせて…ごめん…」

 スザクの言葉に、ルルーシュは目を丸くするけれど…。
ここまでにかなり酔いが回って来ているらしくて…。
「僕、さっき、ちゃんとジノと別れて来た…。ジノと話しをして、ルルーシュがジノに僕の事、話してくれたって云うのを知って…。やっと、気付けたんだ…。だから、ルルーシュ、今までごめんね…。僕、ルルーシュがいい…。ジノと冷静に話していて…最期の方はもう、僕自身、ジノへの気持ち、壊れていたんだ…」
ルルーシュは必死に頭の中を整理する。
スザクの言葉を整理する。
―――スザクは…一体何を…云っている…?
「確かに最初の頃は、ルルーシュのやさしさに甘えていた。でも、今は違う…。ルルーシュのやさしさに惹かれて…そして、その優しいルルーシュと一緒にいて、守りたいって…そんな風に…」
「バカか…お前…。守るって云うのは…自分よりも弱いものに対して…」
「そう…だよ…。今のルルーシュ…凄く弱っている…。だから…僕…」
「俺は…弱く…なんて…」
そこまで云ってルルーシュの言葉が出て来なくなった。
代わりに、ルルーシュの寝息が聞こえて来た。
そんなルルーシュの身体を抱きあげる。
そして、奥に引っ込んだマスターに声をかけた。
「マスター…僕、ルルーシュを連れて帰ります。えっと…おいくらですか…?」
スザクが尋ねると、奥から聞こえて来たのは…
「別に、まだ、1杯目だ…。今日のところは私がルルーシュに私の会社に来てくれるように勧誘のための経費として落としてあげるよ…」
マスターの言葉に、スザクは苦笑した。
何とも不器用な兄弟だ…なんて思ってしまう。
「解りました…。じゃあ、お休みなさい…」
そう云ってスザクがルルーシュをおぶって店を出ようとすると…
「二度と、ルルーシュをこんな風に悲しませたら…今度は容赦しないからね…」
マスターが出て来てスザクにそう告げた。
スザクの方は、申し訳ないと云う気持ちの現れた笑みを見せた。
「はい…。二度と…こんな事には…なりませんから…」
そう云って、スザクは夜の街へ、ルルーシュをおぶって出て行ったのであった…

END


あとがきに代えて



なぁんとなく、時代遅れの昼メロみたいになっちゃいました。
いかに和泉の心が荒んでいるかってことなんですけれど…。
最近、ブランデー飲んでいないなぁ…。
またおいしい洋酒を飲みたいです。
しかし、この話しのスザク…なんか、同情を引きそうな設定の割に最低男だ…。
ルルーシュ…何故にこんな奴に優しくしているんだ…と云いたくなりました(笑)

『黒執事U』
第二話見ました!
ってか、何?あの幸せオーラ全開のお話しは…
死んだはずの方々がたくさん出て来ていて…。
それに、主役主従が出て来なかったけど…。
シエル…ちゃんと喋ってる…。
今度こそリジーを幸せにしてあげてね!
セバ!これは一体どういう事なのか説明を!
次回は…愛しのグレルが…グレルが…
わぁぁん…楽しみです!

ここんとこ、個人的に頂くメール、人の傷に塩を塗る様なメールしか来ないんで…。
というか、そこまで和泉が嫌いなら何故にメール送って来るんだ?
とにかく、今は7月から始まっているアニメだけが支えになりつつあるのですけれど…。
まぁ、実力がある人は約束を反故にしようと何をしようと、許されるから…いいかもしれないけど…。
でも、何もかも持っている人は何も持っていない人の気持ちは解らない…


☆拍手のお返事


Rinkaさま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
うちのご近所…雨の為に土砂崩れが起きております…。
今も凄い勢いで雨が降っているので、このあたりも避難指示とか出るのかなぁ…。
今のところ、自宅でパソコンやって居られますけれど…。

『Cheated thing』
ホントにお約束テンコ盛りですね…。
というか、もう少し、尺があればもっとごちゃごちゃさせたかったんですが…。
とにかく、作品に和泉のすさんだ心が表されていますね…ヾ(▽^;)ゞうへへ
それでも、作家さんって気持ちに切羽詰まった時にいい作品が書けるとも言いますし…。
和泉はそこまで凄い作家ではないし、ヘタレもいいところなんですが…。
それでも、こういうときの気持ちって、確かに、心理描写にはとても役に立つなぁ…などと考えて、少し、前向きに考えることにしております。
ジノは…まぁ、今回もですけれど、こうした形で役に立ってくれる事が多くて…。
一応、書き終わってからはねぎらいの言葉を書けるようにしております。

あと、和泉の精神状態についてですけれど…。
まぁ、実力不足ってのはどうしても形に現れてしまうので仕方ありませんね。
実際に、和泉の場合、読み手様で評価して下さる方も『特別天然記念物』に指定して欲しいと思うほど少ないですし、書き手様になると皆無ですし…。
だから、Rinkaさまのように率直なご意見、ご感想を頂けるのは本当に有難い事なんです。
いい評価も悪い評価も、真摯に受け止められますしね。
褒め言葉だけの方の言葉はやっぱり、少し疑ってかかってしまいます。
和泉が読んで、反省点を見つけたり、ぐさりと来るような感想を頂ける事が、自分の為にもなりますし…。
そして、それが糧となって行くわけなので…。
このブログを開いて、何人もの方々に感想を頂いて、そのたびに色々和泉も感じて、その中から糧にしているものもたくさんあるので…。
和泉は己を知っているから努力もできるし、自分自身を冷静に見る事が出来ると思います。
そして、読んで下さった方から頂くご感想やご意見を真摯に考える事も出来るのだと思います。
ネチケットを守らない方の書き込みは完全無視させて頂いていますけれどね。
これからも、Rinkaさまからのご感想やご意見は賜りたいと思っております。
これからも色々和泉にご意見を下さい。


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posted by 和泉綾 at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

2010年07月14日

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 194

Cheated thing



※バラレル設定です。
隣のクラスの学園一の秀才で生徒会副会長のルルーシュを、女ったらしのスザクは一体何日で落とせるか…という、賭けをスザクの仲間達が企てるのですが…

 放課後…。
この2週間ほど…毎日、同じ頃合いに奴は現れる。
「あ、ルルーシュ!何一人で帰ろうとしちゃってるの?僕、一緒に帰るって云ったじゃない…」
きっと、こいつの笑顔を10人に見せたら10人が同じようにこの笑顔に惚れこむであろうと思われる、人懐っこい笑顔。
対して、ルルーシュはと云えば、思い切り嫌そうな顔をしている。
この人懐っこいわんこ属性ならルルーシュでなくても、その笑顔を向ければ確実になびいて来るだろうに…と思うのだけれど。
ただ、最近では最初の頃ほど嫌悪は感じない。
なんだか不思議だ。
―――慣れただけなのか?
そんな風に思ってみるけれど、ルルーシュと違ってストレートに感情を向けてくるこの生き物に対して好意を抱く者は多い筈だ。
ルルーシュの方は…。
客観的に見て、それなりに人から好かれる外見をしているらしい事は解っているけれど。
ただ、自分でも解っているけれど、非常に話しかけにくい相手ではあると思う。
時々、必要最低限の会話を交わしても男子でも女子でも顔を赤らめて去っていく。
そして、女子の場合は少し離れたところでなにやらキャーキャー言っているのが何度となく聞いているけれど。
特に仲のいい友達と呼べる存在もいなかった。
ただ、必要な時には、同じ生徒会で同じクラスのリヴァルに声をかけたりかけられたり…という事はあるけれど。
それでも、基本的に互いを鑑賞する事もなければ、一緒に遊びに行くなどと云った事もない。
だから、こうして、毎日声をかけて来る枢木スザクと云う存在は…ルルーシュにとって、初めて見る種類の生き物だったし、珍しい存在でもあった。
「なんでお前は、俺の周りをうろちょろしているんだ…?お前、確か、ジノ=ヴァインベルグといつも一緒に帰っていたじゃないか…」
そんな風に云った時…。
スザクはぱぁぁぁっと顔がほころんだのだ。
どうやら、ルルーシュの今の言葉に何か、喜びを感じたらしい。
―――俺は何か…変なことでも云ったのか?
ルルーシュの中で少々困惑が生じて来た。
ここ最近の放課後は…そして、休み時間は…こんな感じだった。
で、ルルーシュが邪険にしてやると、スザクはいきなり…
『僕…ルルーシュの事…好きになっちゃったんだ…』
などと云い始め、その後は、会う度に一度は『好きだ』と云われるようになっていた。
正直、スザクの女関係は詳しい訳ではなかったけれど、それでも、学園内では結構有名だった。
スザクに云い寄られて落ちなかった女はいない…という噂は聞いていた。
ただ、そんな枢木スザクが何故、ルルーシュにこれほどまとわりつくのか…
正直、ルルーシュの中では大きな疑問だ。
スザクと仲のいいジノ=ヴァインベルグも相当、女にもてる男で、女に苦労した事がないという。
―――そんな女好きが俺なんかに構う理由が解らん…。俺にかまっている暇があるなら、女を引っ掛けに行けばいい…
そんな事を考えながらも、纏わりついて来るスザクを追っ払う事もせず、だからと云って、構う訳でもない日々が続いていた。

 スザクが纏わりついて来て、スザクを狙っていた女子たちに睨まれる日々が続いて…。
その環境にも慣れて来ていたある日のことだった…。
ルルーシュは知ることとなる。
突然、スザクがルルーシュに纏わりつき始めた訳を…。
ルルーシュ自身もそれなりのもてる方だったけれど、それでも、ルルーシュの方はそう云った事に全くと云っていいほど興味を示さなかった。
というか、他人との付き合いが非常に苦手で、『付き合って下さい!』などと云われても、どうしたらいいか解らない。
ここ2、3日くらい前からスザクまで、ルルーシュにそんな様な事を云い始めている。
正直、ルルーシュはそんな事を云われても困る。
いつもと違うのは…。
その後も、スザクはルルーシュに捨てられた子犬が構ってくれた人間に甘えるようにルルーシュについて来ていたものだから…。
ルルーシュの中で色々と困惑してしまっているのだ。
スザクがルルーシュにつき纏い始めて…そろそろ4週間くらいになる。
ちょうど、スザクが移動教室でルルーシュのところに来られなかった休み時間…。
本当に偶然聞いてしまったのだ…。
スザクとジノが話しをしている会話を…。
ルルーシュがトイレから出て来て、その前にはスザクとジノが並んで話していたのだ。
「スザクゥ〜あと、1日だぞ?これで5000円は俺のもんだな…」
「まだ、1日あるよ…。ルルーシュだって最初の頃みたいに、僕を追っ払うことしなくなったし、あとちょっとだよ…。今日中に落として見せるからさ…」
「今回は難攻不落っぽかったからなぁ…。というか、スザクでダメなら俺が泣いているルルーシュ慰めて頂いちゃおうと思っていたのに…」
「え?ジノって、ルルーシュ狙いだったの?」
「結構好みなんだよなぁ…。なんで男なんだろ…」
「僕、いくら相手がルルーシュだからってホモの友達はいらないよ?」
そんな会話が聞こえて来た。
ルルーシュの中では冷静に見ている部分があって…。
―――ああ、やっぱりそう云う事か…。
そう思った後に…心の中でため息を吐いていた。
放っておけばいいと思いながら、少し歩を進める。
そして…
「安心しろ…。俺も男に興味はないからな…」
二人の背後から声をかけた。
その声は…恐らく、ここまでルルーシュの感情が入っている声を聞いたことがない人物としては驚くほど…。
低く、冷たい声だった。
「どうせ賭けをするなら、結果が出てからそんな会話をする事だな…。特に…俺みたいな『人間』を賭けの対象にする場合には…な…」
ルルーシュがそう、二人に云い放つと、さっさと自分の教室へと入って行った。
その背中は…。
恐らく、誰も近寄れないオーラが出ていたに違いないと…。
どこまでも第三者的に自分を見つけている自分が思った。
実際に、ルルーシュのその姿は…とても近寄れるような気配ではなくて…。
ルルーシュの中にどんな感情があるのだろうか…。
そんな風に思えるほどの冷たい、そんな空気を纏っていた。
ただ…。
スザクの目には…。
それとは違うものが混じっていると…そんな風に思っている自分がいた。
―――ルルーシュ…
その心の中には、賭けの対象にされていた存在に対しての嘲りや賭け金を回収出来なかったことへの逆恨みではなく…。
何か、自分の胸に突き刺さるものが…あったのを…あえて、気付かぬ振りをした。

 あの後、ルルーシュの姿を見ても…声をかけることが出来なかった。
賭けと称して、ルルーシュの周囲を纏わりついている内に…。
―――ミイラ取りが…ミイラになった…ってことなのかな…。ジノが、あんな事云った時…本気でぶっ飛ばそうと思った…
そんな事を考えていた。
何か、口実が欲しい…。
ルルーシュに話しかける口実が…。
これまでだってたくさんの女子と付き合って来て、振る事もあれば、振られる事もあった。
でも、こんな気持ちになった事はなかった。
相手の女子に対して、それほど執着した事がないし、別れてもすぐに相手が出来たから、何とも思わなかった。
時々、別れた後に未練を残した女子がスザクに話しかけて来る事があって、それを鬱陶しいと思った事はあっても、もう一度付き合おうとか、ちゃんと話しをしようなんて考えた事なんてなかった。
でも、今回は相手を振った訳でも、相手に振られた訳でもない。
まして、相手は男だ。
これまでの女子とは全く違う感覚だったし、スザクとしても自分の恋愛テクを発揮していたけれど…。
でも、落ちなかった事に、賭けとかそんな事は関係なく…なんとしても落そうと思った。
賭けの為でもないとすると…。
ジノに負けたくないと云う気持ちなのか、それとも、これまでスザクが云い寄って落ちなかった相手がいないと云う意地なのか…
それとも…
―――僕が…ルルーシュを好きになっちゃったの…かな…
先ほどいわれたセリフ、その時のルルーシュの表情が頭にこびりついて離れない。
忘れたいと思っているのに…。
でも、忘れられない。
そして、スザクがルルーシュに付き纏っていた頃の、楽しかった時と比べてしまっている自分がいる。
今まで、酷い振り方も振られ方もした事がある。
今回は振った訳でも、振られた訳でもない。
単純に『賭け』の対象として付き纏っていたのだから…。
でも、ルルーシュが少しずつ、スザクへの態度を軟化させた事に確かに喜びを感じていたのだ。
その時には敢えて、無視していたけれど。
気付かないふりをしていたけれど。
でも、こんな形で終わってしまうと…。
―――自業自得なのに…。バカだな…僕…。
そんな事を考えている自分がいる。
ルルーシュがちょっと表情を変えるだけで、楽しかった。
ちょっと、笑ってくれたことが嬉しかった。
確かに邪険に扱っていたように見えるけれど…。
でも、そんなルルーシュを見ていて、これまでに気付かなかった優しさとか、素直に気持ちを表せない不器用さとか見て来て…。
スザクの中で、気持ちが変化して行った…。
それこそ、ジノと賭けをしている事も…頭の中から抜けてしまっていた。
もう、二度と…ルルーシュに、話しかける事も出来ないのかもしれないと思った時…。
否、まともに目を合わせる事さえもできないのかもしれないと思った時…。
「僕は…大バカ者だ…」
そう、言葉を口に出していた。
これまで付き合ってきた女子と別れても、これほど、悲しいと思った事がない。
ルルーシュと一緒にいて、ルルーシュに付き纏っていて、本当に…本当に…
―――好きに…なっちゃっていたんだな…僕…。これまで、ロクな女の子との付き合いをしてこなかった…罰なのかな…

 先ほどのスザクとジノの話しを聞いてしまってから…。
ルルーシュの中で何か、不可解な気持ちが居座っている。
「これで、あのうるさい犬が付き纏わなくなって…清々するじゃないか…」
そう口に出してから…『はぁ』と大きなため息が出て来た。
「あらぁ…ルルちゃん…そんな風に憂いに満ちた顔をしていたら、あの、スザクが心配して飛んできちゃうわよ?」
ここが生徒会室であることをすっかり忘れていた。
スザクは生徒会メンバーでもないのに、生徒会室にまで押しかけて来る事があったのだ。
流石に関係者じゃないから、さっさと追い出してはいたけれど。
「もうあいつは来ませんよ…。会長…もしかして彼を生徒会メンバーにする気だったんじゃ…」
嫌な予感が過って、彼女が云う前に云ってみた。
すると…
「そうなのよねぇ…。だって、うちの生徒会って、男子が少ないうえに、その男子が貧弱でしょ?力仕事の時困っちゃうじゃない…」
酷い云われようだ。
つまり、スザクを生徒会メンバーにして、彼女の思いつきだけで開催されるイベントの際の肉体労働がかりにしようと云う魂胆だったようだ。
「まぁ、諦めて下さい…。枢木はもう来ませんから…」
頗る機嫌が悪くなる。
それを見て、ミレイが『ははぁ〜ん』と云った表情をするけれど、ルルーシュはパソコン画面に夢中になっていてその事に気づいていない。
「とりあえず、枢木がいなくなって仕事がはかどる様になったんです。会長が邪魔しないで下さい…」
スザクがいなくなってもミレイに纏わりつかれたのでは堪らない…と云う口調でルルーシュが云うけれど。
「ねぇ、ルルーシュ…。ホントは、寂しいんじゃないの?」
ミレイのその問いをあえて無視する。
正直、思い出したくない程、ムカついているのだから。
少しでも、スザクが寄って来るのに慣れて、黙っていた自分にものすごく腹が立つ。
「何を云っているんですか…。清々しているんですから…仕事の邪魔しないで下さいよ…」
ルルーシュがそう一言云うと、ミレイもルルーシュ本人が気づいていない程、結構重症である事に気づいて、ミレイはその場から離れた。
そして、他のメンバー達はルルーシュのそんなオーラに恐れを抱いて、近付く事無く、ルルーシュの周囲には見事に広い空間が出来ていた。
「そこの隅っこで固まっている全員!さっさと書類を出してくれないと、こっちの仕事が出来ないんだ!チンタラやっていないでさっさと出せ!」
ルルーシュがやや声を荒げて隅っこで固まりながら仕事をしているメンバー達に云い放つ。
こう云う時のルルーシュのオーラを『氷の女王様オーラ』と呼ぶべきか、『冷酷魔王オーラ』と呼ぶべきか…。
一応、生徒会内での議論の的となっている。
勿論、ルルーシュは抜きで。
そんな時…
―――コンコン…
生徒会室のドアがノックされた。
「あら…珍しいわね…」
そう云いながらミレイがドアを開くと…少しだけ驚いた表情を見せて、隅っこに固まっていたメンバー達に声をかけた。
「ねぇ、私達はちょっと買い出しに行って来るからさぁ…ルルーシュは今ある書類だけまとめておいてくれる?終わったら帰っていいから…」
ミレイの言葉の意味が解ったメンバー達はさっさとミレイについて行った。
それに気づいたルルーシュが周囲を見回した時…
「枢木…」
現在のルルーシュの不機嫌の現況が…生徒会室のドアのところに立っていた。

 ルルーシュはその姿に、一瞬驚いた表情を見せるけれど。
でもすぐにそこから目を離し、パソコン画面に目を向けて、手を動かす。
しかし、気になるのか…。
普段はしないタイプミスが増えている。
その事さえもイライラしてくるのだけれど。
「あ…あの…ルルーシュ…。その…えっと…」
そんなルルーシュを見ていて口を開いたのは、スザクだった。
その声にもルルーシュは目を向けない。
と云うよりも、さっさとどこかへ行けと云うオーラを全開にしている事が解る。
さっきから、おどおどしていてスザクは何もちゃんとした言葉を口に出す事が出来ずにいるのだ。
そんな事が5分ほど続いて…いい加減ルルーシュとしても集中できなくて…。
席を立ちあがる。
「とりあえず、そこに突っ立っていないで…中に入ってこい…。そんな風にドアを開けっ放しにされていても困る…」
そう云って、ルルーシュは生徒会室のミニキッチンへと足を向ける。
「ちょうど、休憩しようと思っていたんだ。紅茶でも飲むか?」
「あ…えっと…」
「いらないなら俺の分だけしか淹れないから安心しろ…」
「あ、要ります!飲みます!」
そう云いながらスザクはルルーシュに付き纏っている時に陣取っていた席に腰かけた。
5分もしない内にルルーシュは戻って来てスザクの前にティーカップを置いて、自分も間に一つ席を空けて腰かけた。
―――これが…今のルルーシュと僕の距離…なのかな…
隣に腰掛けてくれない事に…少しずきりと痛みを感じる。
「で、なんだ?生徒会メンバーでもないのに…わざわざここに来た用件は?」
ルルーシュが紅茶を飲みながら、至極冷静な口調で尋ねた。
そんなルルーシュの言葉に、それこそ、捨てられた子犬のオーラよりも更にみすぼらしいオーラがスザクを取り捲いた。
スザクが何故、そんなに落ち込むのか解らない。
元々『賭け』をしていたのはスザクの方なのだから…。
「えっと…ルルーシュに謝りたくて…。本当に…御免…。自分でもホント、無神経な事を慕って思ってるんだ…。えっと…だから…その…本当に御免!」
そう云ってスザクは立ち上がってルルーシュに頭を下げた。
ルルーシュはそんなスザクを見て、冷たく言い放った。
「そのことなら気にしていない。それに実害はなかったしな。それだけなら、その紅茶を飲んで帰れ…」
そう云って、ルルーシュ立ち上がって先ほどまで作業をしていたパソコンの方へと歩いて行こうとした時…手首を掴まれた。
「っと…それから…。その…ルルーシュ…。僕、ルルーシュが好きになっちゃったみたいで…。それで、ずっと、ルルーシュのさっきの怒った様な、それで、何か寂しそうな雰囲気と、僕がルルーシュに付き纏っていて、時々優しくしてくれたことが忘れられなくって…。えっと…だから…その…僕と付き合って下さい!」
怒っていた筈のルルーシュではあったけれど…。
あまりに唐突で、目が点になる。
確かに
―――テンポの速い奴だとは思っていたけれど…。順番…すっ飛ばすのが得意な奴だったな…そう云えば…。
本当に毒気を抜かれてしまった様な気がした。

 ルルーシュは一回大きく呼吸をして答えた。
「さっきも云ったが、俺は男に興味はない…」
「でも、女にも興味ないでしょ?」
何か間違っているような気がするけれど。
しかし、今のところ特定の女に興味がないのは確かだ。
「お前みたいに女にもてる奴が俺に付き纏っていると色んな視線が痛いんだよ…。何れ俺、背中から刺される危険性があるんだが?」
「大丈夫!その時は僕が刺されるから!」
云っている意味を解っているのだろうか?
本当に心配になって来る。
「お前にとって俺は『賭け』の為に落とす努力をしていたんだろう?」
「それもやめた。さっき僕が、ジノを一発ぶん殴って、ルルーシュは僕を一発ぶん殴って!」
云っている事がめちゃくちゃだと思う。
体育会系と云うのは一発ぶん殴れば終わりに出来るらしい。
と云うか、ジノは意味が解らなかっただろう…。
「俺はお前に対して信用できない要素がたくさんある!」
「なら、これから挽回するから!もう、二度とルルーシュをそんな風に傷付けたりしない…」
そして、スザクは何を思ったのか、ルルーシュの掴んでいる手首を自分の方に引っ張り込み、そして、ぎゅっと抱き締めた。
「お…おい!」
ルルーシュがスザクのその行動に…驚きを隠せない。
それでもスザクはおかまいなしだ。
そして、ルルーシュの耳元で小さく囁いた。
「ルルーシュ…好き…。だから、僕と付き合って下さい…」
その声は、言葉は凄く真剣で…。
ルルーシュはさっきまでの自分のイライラがなんであったのか…漸く解った気がした。
「俺が飽きるまで…離れることを許さない…。それを守れるなら…付き合ってやる…」
ルルーシュが一言、そう云うと…スザクの腕に込められていた力が更に強まった。
「有難う…ルルーシュ…有難う…」
そう云いながら、スザクはルルーシュを抱きしめながら泣いていたのだった。
そんなスザクを見ていて…ルルーシュは腕をスザクの背中にまわして、ポンポンと叩いてやるのだった…。

END

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posted by 和泉綾 at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 二次創作(単発もの)

ふと思いついて書いた1時間仕上げ小説 194

Cheated thing



※バラレル設定です。
隣のクラスの学園一の秀才で生徒会副会長のルルーシュを、女ったらしのスザクは一体何日で落とせるか…という、賭けをスザクの仲間達が企てるのですが…

 放課後…。
この2週間ほど…毎日、同じ頃合いに奴は現れる。
「あ、ルルーシュ!何一人で帰ろうとしちゃってるの?僕、一緒に帰るって云ったじゃない…」
きっと、こいつの笑顔を10人に見せたら10人が同じようにこの笑顔に惚れこむであろうと思われる、人懐っこい笑顔。
対して、ルルーシュはと云えば、思い切り嫌そうな顔をしている。
この人懐っこいわんこ属性ならルルーシュでなくても、その笑顔を向ければ確実になびいて来るだろうに…と思うのだけれど。
ただ、最近では最初の頃ほど嫌悪は感じない。
なんだか不思議だ。
―――慣れただけなのか?
そんな風に思ってみるけれど、ルルーシュと違ってストレートに感情を向けてくるこの生き物に対して好意を抱く者は多い筈だ。
ルルーシュの方は…。
客観的に見て、それなりに人から好かれる外見をしているらしい事は解っているけれど。
ただ、自分でも解っているけれど、非常に話しかけにくい相手ではあると思う。
時々、必要最低限の会話を交わしても男子でも女子でも顔を赤らめて去っていく。
そして、女子の場合は少し離れたところでなにやらキャーキャー言っているのが何度となく聞いているけれど。
特に仲のいい友達と呼べる存在もいなかった。
ただ、必要な時には、同じ生徒会で同じクラスのリヴァルに声をかけたりかけられたり…という事はあるけれど。
それでも、基本的に互いを鑑賞する事もなければ、一緒に遊びに行くなどと云った事もない。
だから、こうして、毎日声をかけて来る枢木スザクと云う存在は…ルルーシュにとって、初めて見る種類の生き物だったし、珍しい存在でもあった。
「なんでお前は、俺の周りをうろちょろしているんだ…?お前、確か、ジノ=ヴァインベルグといつも一緒に帰っていたじゃないか…」
そんな風に云った時…。
スザクはぱぁぁぁっと顔がほころんだのだ。
どうやら、ルルーシュの今の言葉に何か、喜びを感じたらしい。
―――俺は何か…変なことでも云ったのか?
ルルーシュの中で少々困惑が生じて来た。
ここ最近の放課後は…そして、休み時間は…こんな感じだった。
で、ルルーシュが邪険にしてやると、スザクはいきなり…
『僕…ルルーシュの事…好きになっちゃったんだ…』
などと云い始め、その後は、会う度に一度は『好きだ』と云われるようになっていた。
正直、スザクの女関係は詳しい訳ではなかったけれど、それでも、学園内では結構有名だった。
スザクに云い寄られて落ちなかった女はいない…という噂は聞いていた。
ただ、そんな枢木スザクが何故、ルルーシュにこれほどまとわりつくのか…
正直、ルルーシュの中では大きな疑問だ。
スザクと仲のいいジノ=ヴァインベルグも相当、女にもてる男で、女に苦労した事がないという。
―――そんな女好きが俺なんかに構う理由が解らん…。俺にかまっている暇があるなら、女を引っ掛けに行けばいい…
そんな事を考えながらも、纏わりついて来るスザクを追っ払う事もせず、だからと云って、構う訳でもない日々が続いていた。

 スザクが纏わりついて来て、スザクを狙っていた女子たちに睨まれる日々が続いて…。
その環境にも慣れて来ていたある日のことだった…。
ルルーシュは知ることとなる。
突然、スザクがルルーシュに纏わりつき始めた訳を…。
ルルーシュ自身もそれなりのもてる方だったけれど、それでも、ルルーシュの方はそう云った事に全くと云っていいほど興味を示さなかった。
というか、他人との付き合いが非常に苦手で、『付き合って下さい!』などと云われても、どうしたらいいか解らない。
ここ2、3日くらい前からスザクまで、ルルーシュにそんな様な事を云い始めている。
正直、ルルーシュはそんな事を云われても困る。
いつもと違うのは…。
その後も、スザクはルルーシュに捨てられた子犬が構ってくれた人間に甘えるようにルルーシュについて来ていたものだから…。
ルルーシュの中で色々と困惑してしまっているのだ。
スザクがルルーシュにつき纏い始めて…そろそろ4週間くらいになる。
ちょうど、スザクが移動教室でルルーシュのところに来られなかった休み時間…。
本当に偶然聞いてしまったのだ…。
スザクとジノが話しをしている会話を…。
ルルーシュがトイレから出て来て、その前にはスザクとジノが並んで話していたのだ。
「スザクゥ〜あと、1日だぞ?これで5000円は俺のもんだな…」
「まだ、1日あるよ…。ルルーシュだって最初の頃みたいに、僕を追っ払うことしなくなったし、あとちょっとだよ…。今日中に落として見せるからさ…」
「今回は難攻不落っぽかったからなぁ…。というか、スザクでダメなら俺が泣いているルルーシュ慰めて頂いちゃおうと思っていたのに…」
「え?ジノって、ルルーシュ狙いだったの?」
「結構好みなんだよなぁ…。なんで男なんだろ…」
「僕、いくら相手がルルーシュだからってホモの友達はいらないよ?」
そんな会話が聞こえて来た。
ルルーシュの中では冷静に見ている部分があって…。
―――ああ、やっぱりそう云う事か…。
そう思った後に…心の中でため息を吐いていた。
放っておけばいいと思いながら、少し歩を進める。
そして…
「安心しろ…。俺も男に興味はないからな…」
二人の背後から声をかけた。
その声は…恐らく、ここまでルルーシュの感情が入っている声を聞いたことがない人物としては驚くほど…。
低く、冷たい声だった。
「どうせ賭けをするなら、結果が出てからそんな会話をする事だな…。特に…俺みたいな『人間』を賭けの対象にする場合には…な…」
ルルーシュがそう、二人に云い放つと、さっさと自分の教室へと入って行った。
その背中は…。
恐らく、誰も近寄れないオーラが出ていたに違いないと…。
どこまでも第三者的に自分を見つけている自分が思った。
実際に、ルルーシュのその姿は…とても近寄れるような気配ではなくて…。
ルルーシュの中にどんな感情があるのだろうか…。
そんな風に思えるほどの冷たい、そんな空気を纏っていた。
ただ…。
スザクの目には…。
それとは違うものが混じっていると…そんな風に思っている自分がいた。
―――ルルーシュ…
その心の中には、賭けの対象にされていた存在に対しての嘲りや賭け金を回収出来なかったことへの逆恨みではなく…。
何か、自分の胸に突き刺さるものが…あったのを…あえて、気付かぬ振りをした。

 あの後、ルルーシュの姿を見ても…声をかけることが出来なかった。
賭けと称して、ルルーシュの周囲を纏わりついている内に…。
―――ミイラ取りが…ミイラになった…ってことなのかな…。ジノが、あんな事云った時…本気でぶっ飛ばそうと思った…
そんな事を考えていた。
何か、口実が欲しい…。
ルルーシュに話しかける口実が…。
これまでだってたくさんの女子と付き合って来て、振る事もあれば、振られる事もあった。
でも、こんな気持ちになった事はなかった。
相手の女子に対して、それほど執着した事がないし、別れてもすぐに相手が出来たから、何とも思わなかった。
時々、別れた後に未練を残した女子がスザクに話しかけて来る事があって、それを鬱陶しいと思った事はあっても、もう一度付き合おうとか、ちゃんと話しをしようなんて考えた事なんてなかった。
でも、今回は相手を振った訳でも、相手に振られた訳でもない。
まして、相手は男だ。
これまでの女子とは全く違う感覚だったし、スザクとしても自分の恋愛テクを発揮していたけれど…。
でも、落ちなかった事に、賭けとかそんな事は関係なく…なんとしても落そうと思った。
賭けの為でもないとすると…。
ジノに負けたくないと云う気持ちなのか、それとも、これまでスザクが云い寄って落ちなかった相手がいないと云う意地なのか…
それとも…
―――僕が…ルルーシュを好きになっちゃったの…かな…
先ほどいわれたセリフ、その時のルルーシュの表情が頭にこびりついて離れない。
忘れたいと思っているのに…。
でも、忘れられない。
そして、スザクがルルーシュに付き纏っていた頃の、楽しかった時と比べてしまっている自分がいる。
今まで、酷い振り方も振られ方もした事がある。
今回は振った訳でも、振られた訳でもない。
単純に『賭け』の対象として付き纏っていたのだから…。
でも、ルルーシュが少しずつ、スザクへの態度を軟化させた事に確かに喜びを感じていたのだ。
その時には敢えて、無視していたけれど。
気付かないふりをしていたけれど。
でも、こんな形で終わってしまうと…。
―――自業自得なのに…。バカだな…僕…。
そんな事を考えている自分がいる。
ルルーシュがちょっと表情を変えるだけで、楽しかった。
ちょっと、笑ってくれたことが嬉しかった。
確かに邪険に扱っていたように見えるけれど…。
でも、そんなルルーシュを見ていて、これまでに気付かなかった優しさとか、素直に気持ちを表せない不器用さとか見て来て…。
スザクの中で、気持ちが変化して行った…。
それこそ、ジノと賭けをしている事も…頭の中から抜けてしまっていた。
もう、二度と…ルルーシュに、話しかける事も出来ないのかもしれないと思った時…。
否、まともに目を合わせる事さえもできないのかもしれないと思った時…。
「僕は…大バカ者だ…」
そう、言葉を口に出していた。
これまで付き合ってきた女子と別れても、これほど、悲しいと思った事がない。
ルルーシュと一緒にいて、ルルーシュに付き纏っていて、本当に…本当に…
―――好きに…なっちゃっていたんだな…僕…。これまで、ロクな女の子との付き合いをしてこなかった…罰なのかな…

 先ほどのスザクとジノの話しを聞いてしまってから…。
ルルーシュの中で何か、不可解な気持ちが居座っている。
「これで、あのうるさい犬が付き纏わなくなって…清々するじゃないか…」
そう口に出してから…『はぁ』と大きなため息が出て来た。
「あらぁ…ルルちゃん…そんな風に憂いに満ちた顔をしていたら、あの、スザクが心配して飛んできちゃうわよ?」
ここが生徒会室であることをすっかり忘れていた。
スザクは生徒会メンバーでもないのに、生徒会室にまで押しかけて来る事があったのだ。
流石に関係者じゃないから、さっさと追い出してはいたけれど。
「もうあいつは来ませんよ…。会長…もしかして彼を生徒会メンバーにする気だったんじゃ…」
嫌な予感が過って、彼女が云う前に云ってみた。
すると…
「そうなのよねぇ…。だって、うちの生徒会って、男子が少ないうえに、その男子が貧弱でしょ?力仕事の時困っちゃうじゃない…」
酷い云われようだ。
つまり、スザクを生徒会メンバーにして、彼女の思いつきだけで開催されるイベントの際の肉体労働がかりにしようと云う魂胆だったようだ。
「まぁ、諦めて下さい…。枢木はもう来ませんから…」
頗る機嫌が悪くなる。
それを見て、ミレイが『ははぁ〜ん』と云った表情をするけれど、ルルーシュはパソコン画面に夢中になっていてその事に気づいていない。
「とりあえず、枢木がいなくなって仕事がはかどる様になったんです。会長が邪魔しないで下さい…」
スザクがいなくなってもミレイに纏わりつかれたのでは堪らない…と云う口調でルルーシュが云うけれど。
「ねぇ、ルルーシュ…。ホントは、寂しいんじゃないの?」
ミレイのその問いをあえて無視する。
正直、思い出したくない程、ムカついているのだから。
少しでも、スザクが寄って来るのに慣れて、黙っていた自分にものすごく腹が立つ。
「何を云っているんですか…。清々しているんですから…仕事の邪魔しないで下さいよ…」
ルルーシュがそう一言云うと、ミレイもルルーシュ本人が気づいていない程、結構重症である事に気づいて、ミレイはその場から離れた。
そして、他のメンバー達はルルーシュのそんなオーラに恐れを抱いて、近付く事無く、ルルーシュの周囲には見事に広い空間が出来ていた。
「そこの隅っこで固まっている全員!さっさと書類を出してくれないと、こっちの仕事が出来ないんだ!チンタラやっていないでさっさと出せ!」
ルルーシュがやや声を荒げて隅っこで固まりながら仕事をしているメンバー達に云い放つ。
こう云う時のルルーシュのオーラを『氷の女王様オーラ』と呼ぶべきか、『冷酷魔王オーラ』と呼ぶべきか…。
一応、生徒会内での議論の的となっている。
勿論、ルルーシュは抜きで。
そんな時…
―――コンコン…
生徒会室のドアがノックされた。
「あら…珍しいわね…」
そう云いながらミレイがドアを開くと…少しだけ驚いた表情を見せて、隅っこに固まっていたメンバー達に声をかけた。
「ねぇ、私達はちょっと買い出しに行って来るからさぁ…ルルーシュは今ある書類だけまとめておいてくれる?終わったら帰っていいから…」
ミレイの言葉の意味が解ったメンバー達はさっさとミレイについて行った。
それに気づいたルルーシュが周囲を見回した時…
「枢木…」
現在のルルーシュの不機嫌の現況が…生徒会室のドアのところに立っていた。

 ルルーシュはその姿に、一瞬驚いた表情を見せるけれど。
でもすぐにそこから目を離し、パソコン画面に目を向けて、手を動かす。
しかし、気になるのか…。
普段はしないタイプミスが増えている。
その事さえもイライラしてくるのだけれど。
「あ…あの…ルルーシュ…。その…えっと…」
そんなルルーシュを見ていて口を開いたのは、スザクだった。
その声にもルルーシュは目を向けない。
と云うよりも、さっさとどこかへ行けと云うオーラを全開にしている事が解る。
さっきから、おどおどしていてスザクは何もちゃんとした言葉を口に出す事が出来ずにいるのだ。
そんな事が5分ほど続いて…いい加減ルルーシュとしても集中できなくて…。
席を立ちあがる。
「とりあえず、そこに突っ立っていないで…中に入ってこい…。そんな風にドアを開けっ放しにされていても困る…」
そう云って、ルルーシュは生徒会室のミニキッチンへと足を向ける。
「ちょうど、休憩しようと思っていたんだ。紅茶でも飲むか?」
「あ…えっと…」
「いらないなら俺の分だけしか淹れないから安心しろ…」
「あ、要ります!飲みます!」
そう云いながらスザクはルルーシュに付き纏っている時に陣取っていた席に腰かけた。
5分もしない内にルルーシュは戻って来てスザクの前にティーカップを置いて、自分も間に一つ席を空けて腰かけた。
―――これが…今のルルーシュと僕の距離…なのかな…
隣に腰掛けてくれない事に…少しずきりと痛みを感じる。
「で、なんだ?生徒会メンバーでもないのに…わざわざここに来た用件は?」
ルルーシュが紅茶を飲みながら、至極冷静な口調で尋ねた。
そんなルルーシュの言葉に、それこそ、捨てられた子犬のオーラよりも更にみすぼらしいオーラがスザクを取り捲いた。
スザクが何故、そんなに落ち込むのか解らない。
元々『賭け』をしていたのはスザクの方なのだから…。
「えっと…ルルーシュに謝りたくて…。本当に…御免…。自分でもホント、無神経な事を慕って思ってるんだ…。えっと…だから…その…本当に御免!」
そう云ってスザクは立ち上がってルルーシュに頭を下げた。
ルルーシュはそんなスザクを見て、冷たく言い放った。
「そのことなら気にしていない。それに実害はなかったしな。それだけなら、その紅茶を飲んで帰れ…」
そう云って、ルルーシュ立ち上がって先ほどまで作業をしていたパソコンの方へと歩いて行こうとした時…手首を掴まれた。
「っと…それから…。その…ルルーシュ…。僕、ルルーシュが好きになっちゃったみたいで…。それで、ずっと、ルルーシュのさっきの怒った様な、それで、何か寂しそうな雰囲気と、僕がルルーシュに付き纏っていて、時々優しくしてくれたことが忘れられなくって…。えっと…だから…その…僕と付き合って下さい!」
怒っていた筈のルルーシュではあったけれど…。
あまりに唐突で、目が点になる。
確かに
―――テンポの速い奴だとは思っていたけれど…。順番…すっ飛ばすのが得意な奴だったな…そう云えば…。
本当に毒気を抜かれてしまった様な気がした。

 ルルーシュは一回大きく呼吸をして答えた。
「さっきも云ったが、俺は男に興味はない…」
「でも、女にも興味ないでしょ?」
何か間違っているような気がするけれど。
しかし、今のところ特定の女に興味がないのは確かだ。
「お前みたいに女にもてる奴が俺に付き纏っていると色んな視線が痛いんだよ…。何れ俺、背中から刺される危険性があるんだが?」
「大丈夫!その時は僕が刺されるから!」
云っている意味を解っているのだろうか?
本当に心配になって来る。
「お前にとって俺は『賭け』の為に落とす努力をしていたんだろう?」
「それもやめた。さっき僕が、ジノを一発ぶん殴って、ルルーシュは僕を一発ぶん殴って!」
云っている事がめちゃくちゃだと思う。
体育会系と云うのは一発ぶん殴れば終わりに出来るらしい。
と云うか、ジノは意味が解らなかっただろう…。
「俺はお前に対して信用できない要素がたくさんある!」
「なら、これから挽回するから!もう、二度とルルーシュをそんな風に傷付けたりしない…」
そして、スザクは何を思ったのか、ルルーシュの掴んでいる手首を自分の方に引っ張り込み、そして、ぎゅっと抱き締めた。
「お…おい!」
ルルーシュがスザクのその行動に…驚きを隠せない。
それでもスザクはおかまいなしだ。
そして、ルルーシュの耳元で小さく囁いた。
「ルルーシュ…好き…。だから、僕と付き合って下さい…」
その声は、言葉は凄く真剣で…。
ルルーシュはさっきまでの自分のイライラがなんであったのか…漸く解った気がした。
「俺が飽きるまで…離れることを許さない…。それを守れるなら…付き合ってやる…」
ルルーシュが一言、そう云うと…スザクの腕に込められていた力が更に強まった。
「有難う…ルルーシュ…有難う…」
そう云いながら、スザクはルルーシュを抱きしめながら泣いていたのだった。
そんなスザクを見ていて…ルルーシュは腕をスザクの背中にまわして、ポンポンと叩いてやるのだった…。

END


あとがきに代えて



3日連続警報出ています。
外に出られないです…(; ̄― ̄川 アセアセ)
義務教育は生徒達はお休みになっています。
出席日数が足りないとされてしまった場合、冬休みとか、春休みが短くなるんだそうです。
学校の先生達はお仕事だから警報が出ていても出勤してお仕事している様ですが…。
明日も結構な雨が降るらしくて、また警報が出るのかな…。
と云うか、山手に住んでいるので、土砂崩れとかが少々心配です。
ダムも放水のサイレン、しょっちゅう鳴らしています。
下流の方では相当な増水で大変なのでは?
うちは木曽川水系なので…名古屋の辺りで結構凄い事になっていないといいのですが…。
皆さん、この大雨、お気を付け下さい。

で、久しぶりに『Amethyst Eyes』の更新を致しました。
ホント、放置時間が長くて…。
そのくらい時間も体力もなかったんですよね…(; ̄― ̄川 アセアセ)
切羽詰まっていて、今もやること山積みなんですが…。
流石にサイトの方まで腐らせる訳に行かないと思いまして…。
と云うか、さっさと振り込み行きたいのに…中々外に出られなくて…(;-_-) =3 フゥ
まぁ、週末には梅雨明けらしいので、締め切りには間に合うけど。

さて、作品に関してですが…
一風変わった作品を書いてみました。
これはちょっと感想を頂いてみたいです。
もし、書いてやるぞ…と云う心優しい方がいらっしゃいましたら、是非とも、感想を拍手に送って下さい。


☆拍手のお返事


Rinkaさま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
ご無沙汰致しております。
ここのところの気候で体調を崩してなどおりませんか?

あと、『閉鎖宣言』を読まれて、ご心配下さり、有難う御座居ます。
まぁ、一応、準備そのものは出来ておりますので、見つけて下さっていれば、この先も見てやって下さい。

今回の事は、本当に和泉の実力不足と弱さが招いている事です。
ご心配下さった皆様には感謝すると同時に、申し訳ないと云う思いもあります。
ここ最近の単発の二次創作には和泉のその辺りの気持ちが凄くよく出ていると思います。
実際に、そんな感じなので…。
また、拍手の中身はそれこそ、その直後というか、数発くらった後に書いているので…中々シュールな内容がおおかったかもしれません。
昨日アップした『残酷な美徳』の中のスザクのセリフの中には和泉の思いが結構入っています。
自分はここまで弱いのかと…少々しんどい気持ちなのですけれど。

でも、『コードギアス』も『ルルーシュ』も『スザク』も大好きだし、書く事も大好きなので…。
ただ、和泉が神認定しているその方には今は自分の作品を見せられないな…と思いまして…。
もう少し、恥ずかしくない作品になってから…胸を張って見て頂けるようにしたいと思いまして…。
こうして、和泉の作品を好きだと仰って下さり、あの見つけにくいリンクを探し出して下さる方なら、表向きには褒めているけれど、陰では嘲笑っていると云う事はないと思いまして…。
和泉自身、オンライン上では結構好き勝手書いているのですが、こういうところで打たれ弱いので…。
でも、Rinkaさまのお言葉に励まされております。

あと、Rinkaさまから頂くコメント、いつも楽しみにしているんです。
凄く考え方がしっかりしていて、読んでいて新たに気付く事も沢山あって…。
和泉がこの先、少しでも成長していくうえでRinkaさまのお言葉、とても有難いと思っております。
思った事をぜひ書いて送ってやって下さい。
自分と違う意見の持ち主の方のお言葉を頂くのはこうした活動をしていくうえでとても大切なことだと和泉は思っております。


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