2011年04月10日

皇子とレジスタンス 〜心の中身〜

 倒れたルルーシュを抱いたままスザクがアヴァロンの医務室へと歩いて行く…。
本来、この艦の指揮官であり、ルルーシュの異母兄であり、ブリタニア帝国の宰相であるシュナイゼルに挨拶に行く事が、身分を重んじるブリタニアの習わしではあるが…。
ただ、今のこの状態でその様な事を云っていられないし、スザクの中の優先順位はそんな慣例よりも倒れたルルーシュの方が上だという事だ。
「スザク君…」
目の前に現れたのはロイドだった…。
「あ、ロイドさん…医務室…準備出来ていますか?多分、シュナイゼル殿下が付けて下さったSPの方から連絡が…」
「ああ、大丈夫だよぉぉぉ〜〜〜。医務室じゃなくて、ルルーシュ殿下に提供されるお部屋に連れて行くから…ついて来てねぇ〜〜〜〜」
そう云ってロイドは踵を返し、歩いて行く。
口調そのものはいつものようになにを考えているかよく解らない、ふざけている様にも聞こえるけれど、その足取りに関して云えば、口調をそのまま受け取る方がどうかしている足取りだ。
恐らく、その部屋は準備万端、整えられているだろう。
「後…シュナイゼル殿下への挨拶は別にいいってさ…。後で、殿下ご自身がルルーシュ殿下のお見舞いに居らっしゃるそうだからぁ〜〜〜」
半分くらいそんな事は頭から吹っ飛んでいたスザクではあったけれど…。
確かに今回の責任者であるルルーシュが倒れてしまったのであれば、その騎士であるスザクが報告しに行かなくてはならない訳なのだが…。
「あ…」
「報告に関してもその時に聞くらしいから…。一応、あのルルーシュ殿下に付けられていたSPの人達が色々報告するって事になっているけど…。だから、ルルーシュ殿下からの報告はただの儀式だよ…」
形だけとはいえ、倒れている状態の中でルルーシュはそんな事までしなくてはならない…と云う事に心が痛む。
仕方ないとは解っている。
それが最高責任者と云う立場の人間の義務だ。
それにしたって、こんな子供が自分の心を削り、自分の信念に逆らい、大人以上の成果を出さなくてはならない現状に…憤りを覚えずにはいられない。
やがて、ロイドがある部屋の前で立ち止まり、入口のパネルにパスワードを打ち込む。
どうやら、ルルーシュがブリタニア皇帝から次期皇帝に…と云う話しになったことで、シュナイゼルの軍の中でも嫌な動きがあることが推察される。
ロイドが部屋の中に入り、スザクもルルーシュを抱いた状態で入って行き、ベッドが目に入ってきたからすぐにそこへと歩き出し、ルルーシュを横たわらせた。
それを見てロイドがスザクにルルーシュの着替えを渡す。
「とりあえず、その窮屈な服を脱がせて…。これに着替えさせてね?それと、ここのタオルで身体をお拭きして…。点滴やら心電図やら色々くっつける事になるから…」
「解りました…」
スザクがその着替えを受け取ってルルーシュの衣服を脱がせ始める。
そして、その細い、白い身体が表に出て来ると…。
特に…身体に傷がついている訳でもないのに…本当にぼろぼろだと…スザクは思った。

 全ての着替えを済ませると、すぐにルルーシュの胸に心電図の電極を付けられ、二の腕に血圧計が巻かれ、反対の腕には点滴が施される。
体温を測り、脈をとりながら、ロイドがスザクに声をかけ始めた。
「エリア11の部隊も来ているよ…。ルルーシュ殿下がある程度回復したらルルーシュ殿下はそちらの部隊の指揮官になる…」
「え?」
ロイドの言葉にスザクが驚いた声を出した。
「何を驚いているの…。当然でしょぉ?ルルーシュ殿下はラティス攻略の最高指揮官だ…。今回はシュナイゼル殿下の方がオブザーバーなんだから…」
頭ではそんな事は解っているのだけれど…。
スザクの頭の中では理解しなければならないという部分と、こんな状態で…と云う感情が渦巻いていた。
「それに…これが成功しなかった場合…ルルーシュ殿下の立場は地の底に堕ちる事になるよ…。いくらシュナイゼル殿下が庇いだてしたとしてもね…。そうなった場合、ルルーシュ殿下もナナリー皇女殿下も…この先、命を狙われるだけならいいけれど…政治の道具として使い倒される羽目にもなるんだ…。そうなった時…ルルーシュ殿下の配下としている僕達は…」
ロイドの言葉にスザクがぐっと唇を噛んだ。
結局…この目の前の人間も…そう云ったルルーシュの立場の身に固執していたのかと…怒りを覚える。
「ロイドさん…」
我慢できなくなったところで…スザクが低い声でその人物の名前を呼んだ。
ロイドは特に驚く様子もなくスザクを見た。
「何かな?スザク君…」
「俺は…ルルーシュ自身に仕えているのであって…否…仕えていると云うのも違う…。俺は…ルルーシュがどんな立場だろうと、どんな窮地に立たされていようと、ルルーシュを守る事をやめるつもりはない…」
低い声で…ゆっくりとその言葉を紡いだ。
これは…あの時、ルルーシュの騎士と正式に決まった時から決めた事だ…。
別にルルーシュが皇子でなくたって、ルルーシュと共にいれば、日本は決して悪い方向に進む事はないと…そう考える事が出来たからだ。
あの、まだ敵同士として対峙していたあの無人島でルルーシュと交わした会話…。
あの中で自分の中にあったルルーシュのイメージがすっかり変わってしまった。
その事に最初は驚愕した。
でも、ルルーシュの騎士として共にいるうちに…あの短い時間の内にルルーシュへのイメージが変わった自分にはちゃんと人に対しての観察眼があると自負できるようになった。
あの時、あんな短い時間でルルーシュに対してのイメージが変わった事…何も間違っている事でもなく、思い違いでもなかったのだと…。
そう確信できるからこその…言葉…。
そして、あの時、出会った時の立場がルルーシュはブリタニアの皇子であり、スザクはレジスタンスのリーダーだった…ただそれだけの事だった。
もし、利害が一致していれば…望むものが同じであれば…
―――俺は…きっとルルーシュを守る立場に立っていた…
そう思うからこそ…今のロイドの言葉に対して憤りを覚えるのだ。

 そんなスザクの言葉に…ロイドが安心したように笑った。
「良かったよ…君がそう云う覚悟を持っていてくれて…。今回、まだ終わっちゃいないけど、ラティス王をその場で取り逃がしてしまった事を責める人間が出てくるよ…。必ずね…」
ロイドの言葉にスザクははっとした。
確かに…あの時は驚いてしまったが、可能性を考えれば至極当然の事だ。
王と云う立場は…国が安定していればそれほどそんな事を心配する必要はないが、こうした戦争状態、国内の政争状態が不安定な場合、退路を作っておく必要がある。
その隠し通路さえも他の誰かに口外するようになったのでは、その国のその時にある王室は最早末期状態の更に最後の最後と云う事だ。
そんな隠し扉がある事くらい…計算の上で動かなければならなかった。
―――あの時…偃月の陣の形を取っていた時点で何かあると踏まなければならなかった…。
今更な事であるとは解っていても、こうした形で考えてしまう。
後の祭りだと解っているが…。
「確かに…。俺自身、もっと…」
「何を云っているの…。君もルルーシュ殿下も自分の歳を考えなよ…。大の大人だってそんな可能性を、その場で考えられる人はあんまりいない…。それに、まだ途中経過なんだから…ルルーシュ殿下がそう云った訴追を受けた時には君がルルーシュ殿下を守り、窘め周囲を黙らせる事が出来る力が必要だって云ってるの…」
「……」
ロイドは元々シュナイゼルの配下にいて…今はシュナイゼルの命で主君がシュナイゼルからルルーシュに変わっている。
と云うか、ルルーシュの命令が第一となっている。
だからこそ、この先、ルルーシュがどちらの転ぶかによって彼の運命も変わって来る。
ロイドだけではない。
特派の人間もライもジェレミア達も…。
「スザク君…別に僕達はルルーシュ殿下がどのようなお立場になろうと仕えて行く心はあるよ…。ただ、ルルーシュ殿下の立場が変わって僕達の状況が変わった時、一番気にするのは…誰なのか解っているんだろう?スザク君なら…」
ロイドが、一体何からルルーシュを守らなくてはいけないのか…示唆している事が…解る。
そして、ロイド自身がルルーシュから離れて行く事はないと…そんな風に思えた。
スザクはロイドがシュナイゼルから受けている命令を知らないからこそ…そんな風に思えるのだろうが…。
「解ります…。ルルーシュが守りたいのは…ナナリー殿下…。ナナリー殿下を守るためには…」
「うん…そうだね…。多分、ルルーシュ殿下もそれを解っている。だからこそ、こんな風に無理をなさられるんだ…。だから、君はルルーシュ殿下が要らぬところで力を削がれないようにしなければいけないよ?」
ある意味…巧みと云うべきか…。
普段、ロイドはこんな形で人と人について話す事はあまりない。
だからこそ、こうした時の言葉は絶大だとも云えるのかもしれない。
「解って…います…」
そう、言葉にしながら…ふっと、スザクは眠っているルルーシュを見た…。
確かにルルーシュには守りたいものがある。
だからこそ、自分の心を押し殺してまで戦ってきた事も知っている。
―――でも…これ以上は…

 そんな事を考えている時…部屋の扉が開いた。
「ルルーシュは…ルルーシュはどんな様子なんだい?」
そう云いながら入ってきたのは…ルルーシュがどんな立場に立とうと、ルルーシュを守ろうとする人間の中で最も力を持つ人物だった。
「シュナイゼル殿下…そんなに慌てて入って来なくても大丈夫です。ルルーシュ殿下の年齢も考えて差し上げて下さい…。本来なら熟練の将が出向いて交渉に当たらなければならないところです…」
そう、ロイドがシュナイゼルを窘めた。
静かに眠るルルーシュを見ながら、シュナイゼルも一度、大きく呼吸をして部屋の中に入ってきた。
「枢木君…報告はいいよ…。そんな儀式的な建前はいらない…。一通り聞いた…。確かに…君達の甘さだと云わざるを得ないね…」
シュナイゼルがスザクに対してある意味、責任を問うている様にも聞こえる様な言葉を投げかける。
しかし、そこで怯む訳にはいかない。
先ほどまでその事をロイドと話していたのだから…。
「今回の事…確かに甘さと云われればその通りでは御座居ますが…。しかし、あの時点で王を捕らえても恐らくは足りないピースがいくつか御座居ます。どの道、ラティス公国の武器を生産している工場を全て破壊する決断をしなければなりません…」
スザクは一応礼を払う形で頭を下げながらシュナイゼルに進言する。
そのスザクの言葉に…シュナイゼルは首をかしげる。
「シュナイゼル殿下は…ご存じだったかどうかは解りませんので、一応、御存じなかったという前提でお話しさせて頂きます…」
スザクが毅然とシュナイゼルに対してその見解を話し始めた。
「ラティス王はルルーシュ殿下の前でマリアンヌ皇妃暗殺に関して口に出しました。それがあの状況下の中で切羽詰まってのものであるという事は解りました。故に、そのラティス公国がマリアンヌ皇妃暗殺に関して関わりがあると、判断した場合…ラティス公国の武器生産は我がブリタニアにも大きな脅威です…」
スザク自身、こうした形での腹の探り合いの様な議論の中でシュナイゼルにこて先技が通用するとは思っていない。
だとすれば、単刀直入に…事実を踏まえた上での見解を話す方が得策に決まっている。
「マリアンヌ皇妃はルルーシュ殿下のお母君…。ルルーシュ殿下がこのように幼いながら戦場に立たなくてはならなくなったのはあの、マリアンヌ皇妃暗殺事件があったからだと…自分は浅慮致します…。それ故に…あの時のルルーシュ殿下の心中は普段の戦場に立たれている精神を保つ事は出来なかった…。それでも、シュナイゼル殿下のSPの方々が一人も命を落とす事がなかった事は…ルルーシュ殿下の英断があればこそです。確かに…あの時、自分以外の騎士…ライ准尉がいたならば…結果は違っていたかもしれませんが…。そんな過程の話しをしていても仕方ありません。今はまず、責任追及の前にこの先どうするかをどう判断するかが重要かと思われますが…。我々にとって、過程よりも結果がすべてなのですから…」

 スザクの言葉にシュナイゼルが不機嫌な顔を見せた。
確かに今は最終目的の為の過程に過ぎない…。
元々、ラティスとは一戦を交える気でいた訳だから…スザクの云っている事は尤もであると…納得するであろう…。
恐らく、シュナイゼルとルルーシュ以外には…
「しかし…」
シュナイゼルが口を開くとスザクも身構える。
ここでルルーシュの援護射撃なしに…なんとしてもルルーシュを守らなくてはならない。
「今回、王を捕らえていたのならその一戦を交える…と云う事を回避できたのではないかい?」
確かに…それは一理ある様には見えるが…
「あの状態の中、王の様子を見ている限り、あの王を連れ去ったところで意味を成さないでしょう。確かに王の名を持っているが…それはお飾りに過ぎない状態となった訳ですから…」
SPからシュナイゼルに報告された内容でも…シュナイゼルは今、スザクの云った言葉に同意できる部分を感じた。
―――ルルーシュの近くにいて…多少なりと観察眼と洞察力、考察力がついたのかな…
シュナイゼルは表情を変えずにその少年を見た。
心の中に…多少の悔しさと、嫉妬を抱きながら…。
「ふっ…。君は本当にルルーシュの近くにいるのだね…。こうした窮地に立った時…ルルーシュが云いそうな事を云って来る…」
「どう云う…意味でしょうか?」
シュナイゼルの言葉に怪訝な様子を見せてスザクが問う。
「否、なんでもないよ…。どの道戦闘は避けられない事は解っていたのだから…。さっさとルルーシュの回復を最優先に…。後、1時間くらいで中華連邦で合流したエリア11、中華連邦の連合軍が到着する…」
そう云いながらシュナイゼルは廊下に出て行った。
ロイドの顔を見ると『まぁまぁだったんじゃないの?』と、その目が訴えていた。
そのロイドの顔を見て、スザクの肩から力が抜けた…。
廊下に出たシュナイゼルが…目論見通りだと…ほくそ笑んでいる事を知らずに…。
ロイドだけは廊下に出たシュナイゼルがどんな事を考えていたのか…解っていた。
正直、色々と複雑な思いはあるのだが…。
―――スザク君…さっき、君が云っていた…ルルーシュ殿下を守る…と云うのが…どう云う事なのか…これから先…君はきっと思い知る…。君が守りたいのはルルーシュ殿下の御心も含めて…の事だからね…。それがどんなに困難な事なのか…君は…まだ解っていないよ…。
正直、ロイドにとってはルルーシュが皇帝に立つ方が色々とメリットがある。
ここまでスザクが単純に言葉を信じるところに不安を覚えたのは事実だが…。
それでも、この先、自分の立場云々は別にして…一人の大人として…この二人の行く末を見守りたいと思っている事も…事実であった。
ロイドはシュナイゼルの命を受けている。
そして、ルルーシュがどう思っていようと…ルルーシュを皇帝に…と云う方向で動いている。
今のところ、ルルーシュがナナリーを守りたいと思う限り…ルルーシュ自身は皇帝の座に就く以外方法はない…。
ただ一つ…方法があるとしたら…
―――ナナリー殿下が…どうお考えになって、どう動かれるか…にかかっているのかな…きっと…。

To Be Continued

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2011年02月26日

皇子とレジスタンス 〜The promise ahead〜

 ルルーシュが半ば混乱状態に陥ったラティス王からマリアンヌ暗殺の真実の一部を知った、その頃…。
アヴァロンの中ではシュナイゼルがラティスへと急がせていた。
シュナイゼルの付けたSPの一人が緊急信号を送ってきたからだ。
詳しい事は解らないが、恐らく、シュナイゼルとしてもかなり先行きを見越しての策ではあったのだが…。
戦争とは生き物だ。
武器を取って戦う事だけが戦争ではない。
その武器を取る前にも様々な形で変化していき…。
シュナイゼルとしても計算外の事が起きたと…その可能性を考えている。
「どうされました?殿下…」
「否、先ほどの緊急信号…タイミング的にはまだ、ルルーシュと会談をしている時間帯だと云うのに…」
そう、会談中に争いがある事を考えていなかった訳ではないが、あのルルーシュがそう、短絡的にそう云った状況に陥らせる事は考えにくい。
元々、自分の目で血を見る事を嫌うのを知っている。
だからこそ、相手に卑怯者呼ばわりされても血を流さない方法を模索し、力と力のぶつかり合いを避ける策を取る。
「確かに…ルルーシュ殿下は…母君の暗殺の影響で、人が血を流すところを見るのを極端に嫌いますね…。尋問をするにしても肉体的な苦痛を与えると云う事はまずされない…」
「まぁ、そう云った尋問をする者が少ない分、そう云った訓練を受けている者が少ないからね…。効果は絶大だ…。ルルーシュが何故その様な方法を取るかを知られた時には厄介なのだけれどね…」
「まさか…『ルイ家』からルルーシュ殿下のその特性を知らされているのでは?」
「『ルイ家』はルルーシュにその様な精神的後遺症がある事を知らない。私の軍の中でも知っているのは殆どいないだろう…。そもそも、ルルーシュがそんな自分の弱点になり得る事を自分から誰かに話すと云う事は考えにくいからね…」
会話の中で様々な可能性が浮かび上がってくる。
嫌な予感が過って行くものだから、普段なら決して慌てると云う心理にはならないシュナイゼルもやや、焦りを見せている。
それでも、上に立つ者としてはここで焦りを周囲に見せる事は命取りになる事をしているから極力それを隠している。
「後は…枢木卿が…どこまでルルーシュ殿下の盾になれるか…ですね…」
「彼が私の云った事をきちんと理解していれば…いいのだけれど…。本当に稀有な星の下に生まれたものだ…。余りに皮肉で笑ってしまうよ…」
「殿下…」
シュナイゼルが本当に皮肉そうに笑うのを見ながら、カノンは言葉を出せなくなった。
確かに…シュナイゼルが認める程の実力を持つルルーシュ…。
ただ、彼が望んでそんな能力を持ち合わせて生まれてきた訳ではない。
まして、彼の性格を考えた時…余りに戦いに赴くには優し過ぎるし、気持ちも幼すぎる。
それでも、大人達は彼の実力を知り、彼を利用している状態だ。
「それでも…ルルーシュが皇帝となれば、前線に立つ事もなくなる…。宰相では必要に応じて前線に赴かなくてはならないからね…。ルルーシュ自身、それに気付いているのかどうか…」
シュナイゼルはそう云って再度、ため息を吐いた。

 そんなシュナイゼルを見ていて、カノンも一度、小さくため息を吐いた。
「殿下は…ルルーシュ殿下をどうされたいのです?」
これは、カノン=マルディーニ個人としての正直な疑問だった。
シュナイゼルはこれまで、誰の目から見ても将来、立派な皇帝になると思われていた。
今も恐らくはそうだろう。
決して感情に押し流される事無く、その学んできた帝王学をしっかりと身に付けている。
しかし…。
側近であるからこそ、解る事なのかもしれないが…。
ルルーシュへのここまでの執着は…。
確かにルルーシュはシュナイゼルのお気に入りであると云う事は周知の事実であり、ルルーシュ自身、その肩書を利用していた部分も否めない。
ルルーシュ自身にその自覚があったかどうかは知らないが、ルルーシュと対峙する者にとって『神聖ブリタニア帝国宰相、シュナイゼル=エル=ブリタニアのお気に入り』と云うその肩書は脅威であったであろう。
「どうしたい…とは?」
シュナイゼルが惚けた様に訊き返して来た。
この訊き方は確実にカノンの主旨を解っての事だろう。
「解っていらっしゃるのに…云わせたいのですか?」
「ふっ…カノンには敵わないね…。何故あの子は…異母弟だったの…だろうね…。これが禁忌であると云う事は…解っているのだけれどね…。それが叶わぬと云うのなら…せめて…間近であの子の笑顔だけでも…と望んでしまうのは…確かに私の我儘だ…」
シュナイゼルのその言葉は…。
恐らくルルーシュを失った時にはシュナイゼル自身も崩壊してしまうと云っている様に聞こえる。
その理性の強さは…寧ろ痛々しくさえ見える。
それでも…その言葉は…シュナイゼルはきちんと感情を持った人間であると示している。
それは…ほっとするべきところなのかもしれない。
「そうでしたか…。不躾な事をお訊きして申し訳ありません…」
「否…。君が私を皇帝に…と思っていた事は知っていたからね…。こんな形で君を裏切る形となってしまった…。せめてもの…詫びだよ…カノン…」
シュナイゼルが小さく笑った。
こうして笑みを顔に張り付けていても、今のこの状況の中で…気が気ではない筈だ。
恐らく、シュナイゼルはスザクがシュナイゼルと同じ感情をルルーシュに対して抱いていると判断して…あの様な形でスザクに言葉を告げたのだろう。
スザクにその自覚があるにしろ、ないにしろ、スザクの中にそう云った感情があるのであれば、無意識にでもルルーシュを守ろうとする。
騎士としてではなく…自分の気持ちで…。
そう云った忠誠は、何よりも強い事を知っているから…。
自分もその気持ちを抱いていて、自覚もしているのに、今は、ルルーシュの傍らにいる事が出来ない事に歯噛みしてしまう。
先ほどの『何故あの子は…異母弟だったの…だろうね…』と云う言葉の中にはその事も含まれているのかもしれない。
―――今のところ、全面的に君に頼らなくてはならない事が歯がゆくて仕方ないけれどね…。もし、ルルーシュにかすり傷一つでも負わせたら私の全てをかけて君を潰そう…枢木スザク…。

 完全に包囲されている状況の中…。
スザクがルルーシュの望む『自らの手でラティス王を捕らえる』為の道を開く為の画策をする。
流石に王の周囲の警護が一番堅い。
シュナイゼルの付けたSP達も今のところ、自分に割り当てられた兵たちの相手に精一杯だ。
流石にシュナイゼルの選んだ精鋭だけあって、優秀だ。
王の周囲を警護する者達は選りすぐられた精鋭たちの筈だ。
それでも、その精鋭たちを複数相手にほぼ対等に戦っている。
こうした場面の場合、数の問題ではなく、質の問題だと良く解る。
ラティス王がルルーシュを前にして怯んだ顔を見せた時点でその場の者達には動揺が広がる。
トップの動揺はあらゆる場面において致命傷になり得る程の要因となる。
「王の周囲には5人…そして、あの中で冷静だったあの大臣がついている…。あの大臣も見た限りではそれなりの手錬れと見た…」
「解るのか?」
「一応、俺も武道を習ってたんでね…。まぁ、半分は勘だけどな…。それでも、自分にとって不利な勘の方が遥かに役にたつぞ…こう云う場面では…」
「その前にあの5人もの兵は?」
「とりあえず、中央突破だな…。恐らく中央にいる奴が一番強い…。形としては偃(えん)月(げつ)の陣の形だな…」
「と云うか…この場面で背水の陣か…。どう考えてもおかしいな…」
ルルーシュとスザクがその相手を観察しながら会話している。
どう考えてもルルーシュを守る塀の方が少ないのだから、こうした形となった時、相手の頭を潰すのが手っ取り早い…と云う事だ。
正直、ルルーシュにしてみれば血みどろの戦いにしたくはないと云う気持ちは強いのだが…それは平常心でいる時の話しだ…。
今は…マリアンヌ暗殺の事が頭を支配している状態…。
「スザク…まずはあの大臣を討て…。恐らくあの男が司令塔だ…」
「そんな事をしたら…」
「私は大丈夫だ。非力な者には非力な者なりの身の守り方はある…。偃(えん)月(げつ)の陣であると云う事は背後を取ればいいと云う事だ…」
「お前…一体何を考えている…」
「何も…」
聞いている限りかなりきわどい会話である事は解るが…。
ただ、その会話の中で、ルルーシュがこれまで、どんなふうに生きて来たのか…垣間見る事が出来る。
そして、それは…生きなければならないと云う思いの中…ずっと、そんな過酷な環境の中、ルルーシュを生かし続けてきたものであったのだろう。
「時間がない…。私が合図したら…スザクはあの大臣に向かって突っ込め…」
その会話は恐らく目の前のルルーシュのターゲットにも聞こえている。
こんな形で聞かれていると云うのに平然としているルルーシュを見て、逆に大人達は心理的に迷いが生じる。
スザクがルルーシュの騎士となって、飛躍的にその結果を残している事は彼らの耳にも多少なりと入っているだろう。
それ故に…迷いが生じる。
―――本当に…この言葉の通りに動くのか…。それとも何か裏があるのか…。
と…。
『黒の死神』と呼ばれる子供に対してそのくらいの警戒は必ず持つものだ。
それがルルーシュの狙いでもある。

 衛兵と大臣に囲まれている王が…本当に小さく見える。
スザクの中でそんな事を思う。
戦いたくない癖に、ここまでの軍略、戦略の才能を持って生まれてきたルルーシュ…。
その才能ゆえに傷つき続けてきた事が…ここにいるたった数時間で多少なりとも解った気がした。
ただ…守るために…己の心を削り続けてきた事だけは確かだと…そう思った。
「お前たち!さっさとあの皇子と騎士を捕らえろ!それで全ては終わる!」
恐怖に耐えきれなくなったのか、ラティス王が叫んだ。
これが…器の差…と云うのかもしれないと思った一言だった。
ラティス王がどう云う形でマリアンヌ皇妃暗殺に関わっていたかは解らないが…。
いずれにしても、この状況の中ではいくら王を守る衛兵がいたとしても士気が落ちて行く一方だ。
こうした命のやり取りをする場合、確かに数も大切だが、なにより、一人一人の心持ちで結果が180°変わって来る。
その一言で更にこの場の空気が変わって行く。
「スザク…行くぞ…」
ルルーシュが低い声でスザクに命じた。
ルルーシュの目を見てスザクがこくりと頷く…。
そして、スザクはルルーシュの言葉通り、大臣に向かって走り込んだ。
ルルーシュがエリア11の総督に就任する前…どれだけブリタニア軍に追い詰められてもその身体能力でその命を守り続けてきたスザクの動きに…。
王を守る衛兵たちも刹那の時間、動きが遅れた。
こうした戦いの時…その刹那の時間が勝敗の分かれ目を作ることもしばしばだ。
そう思った時、ルルーシュがふっと笑った。
ルルーシュの傍らからスザクが離れた事で、王を守る大臣以外の衛兵たちが指示を待つ。
そう、兵たちは指揮官がいなければ動けない。
軍人は上からの命令がなければ動けないようになっている。
それに気づいた時には衛兵たちの指揮を執る筈の大臣はスザクと剣を交えていた。
そして、ルルーシュがゆっくりと王の許まで歩いて行く。
キングが動けなくなり、自身で動けないボーンなど、恐れる必要はない。
ルルーシュ自身、周囲をしっかり観察していた。
そう、ルルーシュ達を取り囲んでいたラティスの衛兵たちが…シュナイゼルの付けたSPによって8割程が倒れている。
シュナイゼルの付けたSPの数は10人…。
とすると、ルルーシュが彼らに『一人3人』と命じた中で、8割が倒れているとなれば、残っているのは6人だ…。
既に、ルルーシュの周囲を取り囲んでいた者達との勝負はついている。
SP達も疲労しているが、それでも、ルルーシュの援護射撃や前に出て行く事くらいは出来る。
SPの中でリタイヤした者は一人もいない。
そう云った状況を作り上げ…ルルーシュは王に近付いて行く。
ゆっくりと…
ルルーシュのその表情に…王を守る衛兵たちも顔を引き攣らせている。
しかし、王への忠誠もあり…その場を動く事も出来ず…。
ひたすらにその、『黒の死神』と呼ばれるルルーシュの放つそのオーラに耐えている。
その気迫は…本当に年端もいかない子供と思えない程の…。
否、純粋に怒りを感じる子供だからこそ、発する事が出来るのだろうか…。

 ルルーシュの口にした『非力な者』と云う言葉…。
確かに腕力はないかもしれないが…こうした形で内なる力を見せつけられるような状況の中で、敵であれば思うだろう…。
『どこが非力だ!まるで、何か魔の力を得たWitchだ…』
と…。
そして、あと、5歩で彼らの懐に入る距離まで来た時に…耐えきれなくなった衛兵たちがその場を逃げ出した。
しかし、その逃げ出した者達も既に戦いを終えていたSPたちの手によって捕らえられていく。
そして、ルルーシュと王が1対1で対峙する。
「王よ…私と一緒にブリタニアに来て頂こうか…。出来る事なら、私としてはこのラティスを再び火の海にはしたくない…」
ルルーシュが静かにそう、伝える。
しかし、一国の王が、こんな取り乱した状態でブリタニアに連行されると云うのは国の破滅を招く。
最後まで何とか、冷静さを保ち続けたスザクと戦っているラティスの大臣が力いっぱいスザクの剣を振り払い、王の前に立ちはだかった。
「そうはさせん!」
その目は…全く死んでいない。
ルルーシュが冷静に判断する。
「では…貴国は我が国と戦争でもなさるおつもりか?私の母、マリアンヌは出自がどうあれ、殺された当時、皇帝の后であり、皇族です。その皇族の暗殺事件に関わっていたとなれば、我が国としてはそれを放置しておく事は出来ませんが…」
「その様な事…証拠もないのに何を云う!そちらの方が我が国に対する侮辱だ!」
「王がその様に私に教えて下さったのですが?」
「あれは王が取り乱した時の言葉…。正式な言葉として受け止める貴殿の器量を疑うが…」
苦しい云い訳にしか聞こえない大臣の言葉…。
そこにスザクが大臣に向かって剣を振り上げるが…。
大臣が渾身の力を込めてその剣を振り払い、スザクの手から剣が放れる。
それを見て、大臣が一瞬の隙を見つけたのか…王を庇いながら、隠し通路の扉を開いて…中に入って行く。
その扉はすぐに閉まり、その後、開かなくなる。
流石に王宮内でこんな乱闘騒ぎがあっては簡単には捕まえる事が出来ないのは当然だろう…。
「くそっ!」
スザクがその隠し扉の場所を拳で力いっぱい叩くが…びくともしない。
そんなスザクの背後で…
「殿下!」
シュナイゼルのSP達がルルーシュの方へと駆けよって行くのが解り、振り返ると…
「ルルーシュ!」
その場に倒れた…。
スザクが青ざめながらルルーシュの許へ駆け寄って行くと…とりあえず、怪我をしていない事は解る。
余程の緊張状態だったのだろう。
そして、あれほどのショックを受けては確かに…仕方ないのかもしれない。
王宮内が騒がしくなっている。
やがて…王宮の広い庭から…大きな戦艦の音が聞こえてきた。
そして、その音に反応した一人が庭を見てすぐに戻ってきた。
「枢木卿…アヴァロンが到着した模様です…。あれは、シュナイゼル殿下の…」
「そうですか…。まずはアヴァロンの医務室へ殿下を運びます。誘導をお願いします。王宮内は混乱状態ですので…」
スザクが彼らに命じて、ルルーシュの身体を抱き上げる。
「お前…いい加減、一人で無理するのを…やめろよ…」
気を失っているルルーシュの顔を見つめながら…そんな事を呟いた。

To Be Continued

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2011年02月20日

皇子とレジスタンス 〜暴かれる真実〜

 目の前の王を見据えている…。
正直、ルルーシュ本人もかなりの緊張状態だ。
それを表に出さない訓練は…自然にしてきた。
こうした緊張状態の中で自分の抱いている恐怖を悟られる事は命取りになると解っているからだ。
と云うか、そう云った事を思い知らされてきた。
ブリタニアの王宮の中でも、シュナイゼルの軍の中でも自分の能力だけでなんとかなる世界ではなかった。
常に周囲を観察し、冷静さを保ち、表向きには見方である存在であろうと決して心を許してはならず、気を張り続ける…。
そんな事を続けて来ていた。
それ故に自分自身の自覚なく、そんな術が身に付いてしまっていた。
これが好運であるのかそうでないのかは…その時々によって違う。
目の前に立つスザクの緊張が…ルルーシュにも伝わる。
確かに…スザク自身はレジスタンスとして活動していた頃には、多数のブリタニア軍を相手に戦った事もあるだろうが…。
しかし、その時には自分自身の身を守る事が目的であって、自分以外の存在を守ると云う目的ではなかった。
スザク自身が背負うそのルルーシュと云う存在の重さは…。
もし、ここでルルーシュの身に何かあった時にはルルーシュの妹姫にもその影響が及ぶし、何より、ルルーシュを誰よりも愛しているシュナイゼルが決して許さないだろう。
下手すれば、あのエリア11さえも全て滅ぼしてしまいかねない程の怒りを買う事になる。
ルルーシュがそれを自覚しているかどうかは解らないが…。
スザクの緊張はそう云ったものの重さからも来ている。
そして、スザク自身の…ルルーシュへの想い…。
スザクがどれほど自覚出来ているかは解らないが…。
それでも、そう云った自分でも自覚を持たないその感情がスザクに対して更なる緊張を与えている事は確かだ。
『ルルーシュ…』
スザクがルルーシュに声をかける。
『黒の死神』の仮面を被った状態のルルーシュをこんな間近で見るのは初めてだった。
そのルルーシュの顔を見た時…スザクはゾクリとした。
横から垣間見ている状態で…これほどの威圧を感じると云う事は、真正面から見据えられているラティス王は一体…どれほどの恐怖と闘っているのか…と思ってしまう程に…。
名前を呼んだだけで…それ以上声をかける事が出来ない。
そして、そんなルルーシュの視線を真正面から受けているラティス王がこんな形でルルーシュとスザクに銃口を向けてしまう理由が…何となく解った気がした。
恐怖からその行動に出ている。
ルルーシュの目はそれこそ、『撃ちたければ撃て…』と云っている。
そこにウソを感じられない程そのオーラは完璧だった。
しかし、ルルーシュを撃った後…このラティス王は決してその恐怖から逃れる事が出来ないだろう。
目の前でルルーシュが銃弾に倒れたとしても…。
「国王…貴国の方針をお伝え願えないだろうか?この先、ブリタニアとして貴国とどう向き合っていくべきか…貴方の返答にかかっている事は…解っているであろう?出来る事なら、我が国が日本に行った様な宣戦布告もしないまま開戦…と云う事はしたくはない…」

 ルルーシュが静かに言葉を並べる。
宣戦布告をしないままの開戦とは…解り易く云えばその国に対しての侵略であり無差別殺人と云う事なのだが…。
敢えて、ルルーシュはそう云った言葉を使う。
遠回しの言葉の方が恐怖心をあおる事になる。
正直、ルルーシュとしても戦争を始めずに済めば…と云う思いはある。
だからこそ、威圧的な態度をとり、国力をちらつかせながら相手から譲歩を引き出す…と云う事をしている訳だが…。
しかし、かつて、停戦する前にはブリタニア軍とギリギリまで戦っていた相手だ。
そう云った意味では日本よりも遥かに国土の狭い国ではあるが、日本とは違った形でブリタニアと戦い、ブリタニア側を驚かせていたという経緯がある。
日本の対応は先を見据えた英断…と評されるべきなのかもしれないが…。
戦いの際に、強力な武器を持つ相手よりも、その精神力によって決して引こうとしない気概を持つ戦士の方が戦い難い。
戦意を喪失させるためには相手に力の差を見せつける事…。
それでも相手の目から力がなくならない相手は…心理戦で戦うルルーシュとしては非常にやり難い。
そして、その気持ちの持ち方によってはこちらがどれだけ撃っても立ち向かって来る姿勢を生みだし、その内に撃たれている方よりも撃っている方が恐怖が大きくなって行くのだ。
こうした命をかけた戦いであれば最終的に気持ちで負けてしまった時にはどんな武器も役には立たなくなるのだ。
だからこそ…ルルーシュはルルーシュ側は決して引かないと云う姿勢を見せつつも、確実にルルーシュ側に分があると云う姿勢を崩さない。
実際にこの場ではルルーシュを守るのはスザクだけだが…もし、この場でルルーシュを撃ってしまった時…その後の自分達に降りかかるあらゆるものを想定させる。
それがハッタリであろうと、なんであろうと構わないのだ。
相手の戦意を削ぐ事が目的なのだから、あからさまに相手にウソと解る様なウソはただの愚策としか云えないが、明らかに真実であると錯覚させるか、本当かウソか…どちらとも判断がつかず相手の判断を狂わせるか…。
ルルーシュはこれまでの自分の置かれた立場の中でそう云った事を見に着けていた。
勿論、普通、ルルーシュの年齢でそんな事が出来ると云う事はそうそうない話しだ。
そのルルーシュの年齢も合わせて…こうした形での威圧は効力を発揮する。
そして、その噂が広がって行けば、ルルーシュを要注意人物として世界は評価する。
迂闊な事は出来ないと…。
そして、今はブリタニアの第一位皇位継承者であると云う事を納得させるだけのものを持ち合わせていると云う評価を得る事になる。
ルルーシュには皇帝の座に着くと云う意思はないが、今はそれを利用している状態だ。
「そ…そんな脅しを…」
国王が奥歯を強く噛み締めながらルルーシュを睨みつける。
しかし、その目は…確実にルルーシュのそれに負けている事は一目瞭然だ。
この場にいるラティスの衛兵たちも国王のその戸惑いや恐怖する姿に不安が広がって行く。
その空気が…手に取る様に解る…。

 今、見た目には確実にルルーシュとスザクが不利に見えるが、実質的に戦意が喪失し始めているラティス側に不利だ。
ルルーシュとしては再びこの地を戦火に晒したくはないと云う気持ちはあるのだろう。
元々、ルルーシュが『黒の死神』と呼ばれるきっかけとなったのが先のラティスとの戦いの場であったのだから…。
あの時は一部隊長として前線に立ち、血みどろの戦場を見ていた。
だからこそ、この場で…戦争と云う悲劇を終わらせる事が出来ればそれに越した事はないと云うのが…ルルーシュの思いだが…。
しかし、現実はそれほど甘いものではなく…。
「脅しと…貴方は判断なさるのか?」
ルルーシュは更に詰め寄る…。
この時、ルルーシュが状況判断を僅かに誤ったのか、それとも、ラティス王がこうした場でのやり取りに対して、思った以上に思慮が足りなかったのか…。
ひょっとしたらどちらとも云えるかもしれない。
窮鼠猫を噛む…。
ひょっとしたらそんな言葉で表現される様な状況なのかもしれない。
「脅しであれ、なんであれ…ラティスがそなたを亡き者にしようとした事は周知の事実…。そして、国同士の交渉の中でニセの姫を送りこんだ事も周知の事実…。ならば…その画策を正当化する為にはそなたを本当に亡き者にし、勝者として我が国が正義となればいいだけの事!」
半ば…自棄になっているとも判断され兼ねない様な言葉…。
ここでルルーシュを殺してしまったら本当にブリタニアとラティスは全面戦争となる。
その事を解って云っているのか、錯乱状態になっているのか…。
ラティス王の斜め後ろに控えていた大臣が顔色を変えている。
「陛下!」
焦りを見せているのはラティス王の側近だ…。
恐らく、この状況を王よりも冷静に見つめて、把握していた大臣にしてみれば最悪の方向に行ってしまっていると云う事が解ったのだろう。
「うるさい!どの道、このままではラティスが危ない…。再びブリタニアと戦えばラティスは滅びる…。『ルイ家』のこれまでの事…シュナイゼルに全て露呈したのだ…。しかも、マリアンヌ皇妃暗殺の証拠まで握られたのだぞ!」
「陛下!」
この場で…ルルーシュの表情が一変する…。
これまで、目の前の事に精一杯の力を注ぎこんで、その事を忘れていた訳ではないが、目を向ける事の出来なかった…悲劇の真実…。
ルルーシュの目が驚愕で見開いている。
ずっと…真実を突き止める事が出来なかった。
犯人の疑いのある皇族、貴族が多過ぎて絞り切る事も出来なかったその事実…。
このタイミングでこんな唐突に知る事になるとは…。
「母上の…暗殺…?」
ルルーシュの声が震えているのが解る。
ルルーシュがこのような形で戦場に立たなければならなくなった原因…。
それは…彼の母親の突然の死だったのは…誰もが知っている事実だ。
その異変にスザクが気がつくと、このままではまずいと思う。
その変化にスザクはルルーシュの立てたプランを変更せざるを得ない。
スザクは自分のポケットに入っている発信機ボタンを押し、この部屋の外に待機しているシュナイゼルの付けたSPたちを呼びだした。

 その合図と共にシュナイゼルのSPたちが続々と入ってきた。
数は少ないものの、シュナイゼルから任命された者たちだ。
その優秀さはその動きで解る。
「枢木卿…一体何が…」
「ラティス王が乱心したのかどうかは解らないのですが…。その…マリアンヌ皇妃の暗殺事件に…『ルイ家』が関わり、そして、そう云った一連の話しを王が知っていた…と云う事です。このままで殿下が普段の判断を下せるとは思いません。どうやら、王に対してブリタニアからの連絡が入った様ですので…間もなく…」
スザクは敢えて全てを云わない。
ただ、もう少し持ちこたえればエリア11の軍とシュナイゼルの軍が到着する…と云う事だけは解る。
時間が確定している訳ではないが…。
スザクの言葉にSP達も表情を変えた。
そして、その言葉をいち早く判断し、ルルーシュとスザクを守る様に周囲を固める。
「う…撃て!ここにいるブリタニア人一人も生きて帰す事は許さん!」
「陛下!御乱心召されたか!ここで彼らを撃ったとなれば…」
「もうここまで来れば同じ事…。ならば、ここで彼らを討ち、ルルーシュ皇子を亡き者にして皇帝の座を得ようと云うブリタニア皇族にその亡骸を渡せばまだ…」
王の言葉に大臣が軽く目を瞑った…。
事がここに至り、シュナイゼルに全てが露呈したとなれば…ルルーシュを殺したともなれば…。
ルルーシュの亡骸をその皇族に差し出す前にこのラティスが火の海になるだろう。
まして、ここにいるのはルルーシュの騎士とシュナイゼルが選んだ精鋭たち…。
元々全ての準備を整えて彼らは来ているのだ。
ギリギリの時間であろうが、確実にルルーシュをブリタニアに連れて帰るだけの策を練って来ていると判断するのが妥当だ。
「スザク…」
目を虚ろにさせながらルルーシュがスザクの名前を呼ぶ…。
「なんだ…」
ルルーシュの様子に驚きながらもスザクがなんとか平常心を保とうとして返事する。
周囲からは完全に銃口を向けられている状態…。
確かにシュナイゼルの付けたSPたちは確かに優秀ではあるが、ここは敵の中枢…。
危険である事は変わりはない…。
ルルーシュがこの様な状態の中で…ルルーシュが陣頭指揮を執れる状態ではない中で…。
―――最後まで凌げるのか…
そんな不安が生まれて来る。
それでも…そんな不安で迷っている時間はない。
「王を…捕らえてくれ…。恐らく…『ルイ家』の者達は…異母兄上の手の内に捕らえられているだろう…。関わった貴族の末端まで全て…。確実に捕らえてくれ…。私を…ナナリーを…このような状況に陥れた者達を…確実に裁くために…」
力のない声ではあったが…しっかりとした言葉…。
あの事件の後遺症で…あれほどアリエス宮の庭で、ユーフェミアと走り回っていたナナリーの足と目の自由を失ったのだ。
ナナリーとユーフェミアがルルーシュを構っては大きな声で笑いながら、ルルーシュを困らせて、駆け回って…。
そんな光景を母であるマリアンヌが目を細めて見ていた…。
あの幸せをぶち壊したのは…あの事件だった…。

 目の光を失っていたルルーシュだったが…スザクにそう言葉をかけた時には先ほどの冷たい目とはちょっと違う瞳をしていた。
冷たい瞳の中に…悲しい光を見た。
そこに…ルルーシュのここまで力を発揮せねばならなかった要因となった事件がルルーシュに残した傷の深さを知る。
「お前たちは周囲にいるラティスの護衛達の始末を頼む…。人数から見て一人3人だ…。誰一人死ぬ事も撃ち損じる事も許さん!死ぬ事も撃ち損じる事も大罪と思え!」
ルルーシュが入ってきたSPたちに命じた。
「スザク…お前は道を開け…。私が王の懐まで行き、私自ら王を捕らえる…」
「!」
ルルーシュの言葉にスザクは驚きを隠さない。
これまでそう云った実動隊としての仕事など、ルルーシュはした事がない。
確かに前線に立つが、その場ではルルーシュは指揮官であり、自ら戦いに身を投じると云う事はしてこなかった。
それはルルーシュが自分の役目を知っていたからだ。
そして、自分自身がやるべき事を理解して、自分自身の使命を自覚していたからだ。
常に冷静さを保ち、自分を律していたルルーシュが…こんな形で自らを縛りつけているものを断ち切っている。
否、断ち切らされたと云うべきか…。
「お前…そんな事…」
「母上の仇…そして、ナナリーの視力と足を奪った者達を…僕は決して許さない!」
完全にルルーシュの感情だと解る。
これまで大抵の事ではルルーシュは自分を『僕』と呼ぶ事がなかった。
それが…完全に理性が吹っ飛んでいると云える様な…そんな状態となっている。
しかし、ルルーシュがこんな状態でそんな風に王の前に突っ込ませてしまっては…ルルーシュは撃たれる事は…火を見るより明らかだ。
元々、そう云った実戦を得意としないルルーシュだ。
王のすぐ傍に立つ大臣の真正面に突っ込むともなれば確実に的になる。
大臣もこの状況を見れば王を守るために玉砕覚悟で向かって来る。
「ルルーシュ…道は開いてやる。でも、俺もルルーシュと一緒に行く…。全ての準備をして、お前の望み通り…お前の手で王を捕らえさせてやるさ…」
「スザク…」
スザクの言葉にルルーシュが多少なりと冷静さを取り戻したのか…少しだけ声が冷静さを取り戻した事を教えている。
「お前は…沢崎を捕らえてくれた。父さんの仇を…ちゃんと裁いてくれた…。だから、これはお前の騎士としてではなく、枢木スザク個人として…ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア個人に協力するんだ…。あの時の借りを返す為に…」
ルルーシュがシュナイゼルの軍に入った段階で…こんな形でルルーシュを『個』として扱われた事もルルーシュ自身が誰かを『個』として扱った事もない。
それ故に…驚きを隠せないが…。
そして、今はその事を自覚する事も出来ないが…。
後に、スザクのその言葉が…ルルーシュに対して大きな変化を齎す事となる。
「解った…。スザク…私はお前のその気持ちを借りよう…。ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア個人として…」
ルルーシュがそう云うと…
「ああ、解った…」
スザクは騎士としての言葉を返すのではなく、一人の『人』として言葉を返したのだった…

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 05:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2011年02月13日

皇子とレジスタンス 〜兄を想う〜

 カノンが政庁の総督執務室へと歩いて行く。
流石にこの政庁の中心部に近付けば近付く程、ブリタニアの国是を叩き込まれたエリートたちが増えて来るから、先ほどのシンジュクゲットーのテロリストたちの様な態度をとる者はいない。
このエリアのナンバーズ達はルルーシュが総督となって、甘やかし続けてきたからブリタニア人とイレヴンが対等だと思っているようだが…。
現在のこのエリア11ではブリタニア人は支配者であり、イレヴンは被支配者である。
差別だの人権侵害だの、そんな状況の中で問える様な状況ではない。
ブリタニアに支配されるまでの日本は国民主権の民主主義国家であったのだ。
ルルーシュはその事を充分に理解し、利用してこのエリアを治めてきた訳だが…。
それがある意味、裏目に出ている部分がある。
それが、先ほどの扇の態度だろう。
―――これでは…枢木スザクの評価を下げてしまいかねないけれど…彼の年齢を考えれば仕方ないかしら…。ルルーシュ殿下と同じ事を…彼に出来るとは思う事が間違っているものね…。
自分の中でシュナイゼルやルルーシュを基準に物を見ている事に苦笑してしまった。
彼らはブリタニア皇族の中でもかなりの実力者だ。
シュナイゼルもルルーシュも環境は違えど、幼い頃からの自分を取り巻く環境の中でこうした形で実力を発揮する事となってしまった。
ルルーシュがあんな形で皇位継承者として指名されなければシュナイゼルが皇帝に…ルルーシュがその宰相に…と云う事になっていた筈だ。
カノンとしても、あの発表をされた時点ではシュナイゼルを皇帝の座に着かせるべく、ルルーシュの排除を行っていたかもしれない。
ただ、カノンにとってシュナイゼルの意思が最優先だ。
シュナイゼルがそんな身分や地位に興味がない事は解っていた。
ただ、その実力ゆえに彼の役割を果たしていた…と云う事も解っていた。
それでもカノンは望んでいた…。
シュナイゼルが皇帝の座に着き、その隣にルルーシュが宰相として立つその姿を…。
しかし、今、シュナイゼルが望んでいるのはその逆だ。
と云うのも、シュナイゼルが皇帝の座に着こうと思うとまずはルルーシュを排除しなければならない状態に陥ってしまったからだ。
現皇帝がルルーシュを自分の後継者に…と発表した時点でルルーシュがどのような立場であれ、どのような実力であれ、どのような出自であれ…。
ルルーシュが生きている限り、ルルーシュが現在の神聖ブリタニア帝国第一位皇位継承者だ。
ブリタニアは皇帝の言葉は絶対…。
ルルーシュが指名された時点でルルーシュ自身が死なない限り…その言葉が取り消される事はない。
皇帝自ら示される次期皇帝となる人物とは非常に危険な立場となる。
皇帝自身が『ヴィ家』に生まれた二人の皇子、皇女に対して特別な感情を抱いている事は…カノンもうすうす気づいていた。
元々母親が庶民の出であると云う時点でそこに政略的なものが含まれていると考える事が不自然だ。
となると…マリアンヌ皇妃が皇帝の寵愛を受けていたと云うのは…皇帝のその気持ちが彼女に向けられての事だと解る…。
―――確かに…他の皇妃としては気が気じゃないわね…

 そんな事を考えている内にその、皇帝が寵愛した皇妃が生んだ皇女のいる総督執務室の前まで来た。
―――コンコン…
ノックするとすぐに返事が来た。
『どなたですか?』
恐らく、あのニュースから警戒しているのだろう。
中からルルーシュが二人の皇女の守り手としてこのエリアに残して行ったライが答えてきた。
「カノン=マルディーニです。シュナイゼル宰相閣下からのお話しをお伝えに参りました…」
カノンがそう云うと、暫くして扉が開き、ライがカノンを出迎えた。
これは…現在のユーフェミアとナナリーが非常に危険な立場にいると云う事を示しているし、ライもその事をきちんと弁えている証拠だ。
本来であれば、帝国の宰相の使いに対して扉の前で待たせると云う行為は何の地位も持たない皇女に許される行為ではない。
現在のカノンは神聖ブリタニア帝国宰相、シュナイゼル=エル=ブリタニアの代理で来ている使者だ。
「お待たせしました。どうぞ…」
ライがカノンに頭を下げて執務室の中へと促す。
この雰囲気を見ると…あの発表以来、彼女達も危険な目に遭っていると云う事が解った。
「お久しぶりね…ライ准尉…」
「はい…。あの…」
立ち話しの状態でライがカノンに対して何かを訊ねようとしている。
何を訊ねようとしているかは…解る。
本来なら許されない事ではあるけれど、気持ちは解らなくもない。
「貴方が訊きたい事は解るわ…。私もその事を皇女殿下方にお話しする為に来たの…。貴方も…あの発表以来、よくナナリー皇女殿下とユーフェミア皇女殿下を守って下さったわ…」
カノンが笑みを見せながらライにそう語る。
そして、その後、執務室の机で執務をこなしている二人の皇女の前に跪いた。
「ナナリー皇女殿下、ユーフェミア皇女殿下…。此度の御役目、立派に果たされ、安堵致しました。ブリタニア本国にいるシュナイゼル宰相閣下からの御言葉をお知らせしたく、御前に参りました…」
その言葉に…二人の皇女がいち早く反応する。
否、ここまでカノンが来たと云う事を知って、そしらぬ振りをしていた事は解る。
カノンの言葉でやっと、そう云った反応を見せた事も…。
「あ…あの…。お兄様が…」
ナナリーが口を開いた。
その声にも顔にも色々と複雑な感情が入り込んでいる事が良く解る。
これまでナナリー自身、考えた事もない事が現実となっているのだろう。
ナナリー自身、自分の立場を解っていた。
ルルーシュがエリア11に赴任し、『リ家』にその身を預けられた時に…。
確かにユーフェミアもコーネリアもナナリーを大切に、大切にしてくれた。
しかし、周囲は…。
マリアンヌの遺児…皇帝の血が流れているとはいえ半分は庶民の血の流れるナナリーに対して…。
一応、皇族と云う事で表向きには恭しい態度を見せてはいたが…。
目の見えないナナリーは人の感情に敏感だ。
それ故に…自分達の立場を思い知らされ、それまでルルーシュがどれほど頑張ってナナリーを守っていたかを思い知ったのだった…。

 そんなナナリーを見て、ユーフェミアがナナリーを窘める。
彼女自身、ずっと姉姫に守られていたが…こうした形で執務を経験することで色々学習しているようだ。
「ナナリー…シュナイゼル異母兄さまからの御言葉があるのよ?まずは手を休めて、あちらできちんとお話しを聞きましょう…。ライ、お茶の用意を咲世子さんにお願いして下さい…」
あれから、アッシュフォード家も色々ナナリーの周囲の異変を予知したのか…イレヴンではあるが有能なメイドをナナリーの傍に置いているらしい。
「イエス、ユア・ハイネス…」
そう云ってライは室内のインターフォンを手に取った。
一時たりともこの二人から離れる事は危険であると…彼自身、自覚があるらしい。
それに、メイドは他にもいるが、状況がこのような状況なのでユーフェミアがアッシュフォード家から派遣されている篠崎咲世子を指名したところを見ると、どうやら、二人に与えられている居住区でも安心は出来ない様である。
「中々…大変な事になっているようですね…」
カノンがナナリーとユーフェミアが応接テーブルに着いたのを確認してから一礼してそのソファに腰掛けた。
「ええ…お姉さまも心配されて、お姉さまも戦場で大変なのに…グラストン・ナイツを送って下さいました…。詳しい事を…お話し頂けますか?カノン=マルディーニ伯爵…」
ユーフェミアが隣で腰かけているナナリーを横目で気遣いながらカノンにそう、告げる。
ルルーシュがナナリーの年齢の頃には前線に立っていたが…ナナリーにルルーシュと同じ強さを求める事は間違っている。
その恐怖を必死に押し隠そうとしているのが良く解る。
尤も、彼女がここでルルーシュの様に毅然とされてもカノンとしては複雑になるが…。
「まずは…結論からお話ししましょう…。今回のラティス公国との交渉…確実に決裂することが前提でのお話しです。それは…皇女殿下方も御承知でしょう?」
ルルーシュの花嫁候補として送られてきた姫がニセモノであり、そのニセモノの姫がルルーシュを殺そうとしたのだ。
そんな国相手にまともな交渉など出来る筈もなく、また、ブリタニア側もラティス側も互いに相手に妥協するつもりなど毛頭ないと云う事だ。
「解ります…。でも…そんな国にお兄様が…」
「これは…ある意味仕方のない事です。ラティス公国との戦いで結局今回の原因を残してしまったと云う事ですし…。確かに『ルイ家』の縁者となる国ですから…あの時点で完全に我が国のエリアにすると云うのは不可能な状態ではありましたし…」
状況説明されなくても…あの時点ではラティスを完全無力化する事は不可能だった。
それを解っていてラティスもブリタニアとの戦いを決めたのだろう。
「それに…お兄様が…その…」
ナナリーが云い難そうに…と云うよりも本当はその先を知るのが怖いと云った感じに言葉を紡いだ。
「ええ…私もその席に同席して居ました…。シュナイゼル宰相閣下と共に…。現在の神聖ブリタニア帝国第一位皇位継承者は…ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下ですよ…。ナナリー皇女殿下…」

 カノンの言葉に…ナナリーが複雑そうは顔をするし、ユーフェミアも心配そうな顔をする。
マリアンヌが暗殺された経緯は…何となく知っているから…。
未だに犯人が誰かも解らないが…それでも、本来、庶民に頭を下げるなど…あり得ないブリタニア王宮の中でそれを不服に思っていた者達が多くいた。
皇族、貴族を問わず…。
マリアンヌは元々軍に所属し、自らの力で騎士侯にまで上り詰めた。
騎士侯とは貴族ではあるが、本人一代限りのものであり、貴族と呼ばれる存在の中では一番身分の低い存在であり、貴族の中では蔑まれる存在でもあった。
それでも、軍の中ではもっと厳しい戒律、身分や地位による差別区別があったのだから、マリアンヌ本人はそんな家の力のみので現在の身分と地位を守っている者達に対しては関心も持たなかったのだろう。
そんなマリアンヌの態度が他の皇族や貴族達の気に障った部分もあるし、コーネリアやジェレミアなどには非常に魅力を感じる存在となった理由ともなった。
しかし、コーネリアやジェレミアの様な存在は王宮内では稀有な存在で…策略、謀略駆け巡るこのブリタニア王宮の中ではそれだけでは自身を守る事が出来なかった。
そして…暗殺と云う卑劣な手段でその存在を消された。
「あの…マルディーニ伯爵…」
ナナリーがカノンの言葉の後…どれほど時間を置いてからなのか…カノンに声をかけた。
「なんでしょうか?ナナリー皇女殿下…」
「私も…お兄様も…自分達の出自の事は…良く理解しております…。だから…お兄様だってユフィ異母姉様よりも早く生まれた皇子なのに…ユフィ異母姉様よりも皇位継承順位の低い皇子でした…。だから…私達は…そんな事を考えた事もなくて…」
まさか…ナナリーからその様な言葉をかけられるとは思っていなかった。
だから今度はカノンの方が驚いてしまう。
それでもふっと笑みを漏らして応えた。
「確かに…ルルーシュ殿下も驚いておいででした…。皆の前で逆らう事は許されないと皇帝陛下の口からそう云われてしまっては…驚くのも無理ありません。恐らく、あの驚きの空気の中で一番驚いていたのはルルーシュ殿下だったと思います…。そして、一番冷静だったのはシュナイゼル殿下でした…」
カノンの言葉…。
不思議だと思った。
それは、ナナリーもユーフェミアも共通していた。
と云うのも、シュナイゼルは自らブリタニア皇帝となり、ルルーシュを宰相に…と思っていると…彼女達は思っていたからだ…。
「まぁ、驚かれるのは無理もないでしょう…。でも、シュナイゼル殿下は今、ルルーシュ殿下に皇帝の地位に着いて頂きたいと…お考えなのですよ…」
カノンの言葉…二人の皇女の頭に入ってきても…理解出来ない…と云った感じであるが…。
それはある意味仕方のない事なのかもしれない…。
これだけの急展開に着いて行けるのであれば、シュナイゼル並みに状況判断が早くそして、その先を見据える能力を持っていると云う事なのだから…

 二人の皇女がカノンの話しに驚いている間にも…。
ラティス公国の王宮では話しがどんどん進んでいる。
ラティス王のその表情の変化に…ルルーシュもスザクも…心の中では完全に臨戦態勢として身構えている状態だった。
これはシュナイゼルの云っていた『ルイ家』が今回の件に関わっていたと云う事が明白となり、そして、パラックスの身柄が捕獲された…と云う事だ。
となれば、現在、ブリタニアの皇位継承権第一位のルルーシュが手の内にあるラティスがどう動くか…。
パラックスがシュナイゼルに捕らえられたとなれば『ルイ家』の再興はまず、ないだろう。
パラックスが皇位継承する可能性は、ほぼ『0』に等しい…。
だから、ラティスとしてはブリタニアと交渉する上で最適な方法は…。
ルルーシュに対して媚を売る事はもう出来ない。
既に殺人未遂までしているのだから…。
しかし、ここでルルーシュを葬ってその亡骸をルルーシュを亡き者にして自らが皇帝に…と考える皇族に差し出せば、その先、ブリタニアとの太く強いパイプを作る事が出来る。
『スザク…』
ルルーシュが小声でスザクに声をかけた。
ラティス王の様子の変化に周囲がざわつき始めている。
恐らく、このような状況に陥ってルルーシュを葬る事は考えていなかったと思われる。
『ルイ家』はルルーシュの母であるマリアンヌの事を酷く妬み、恨んでいた。
それ故に…その経緯があった事はラティス王も知っていた。
ルルーシュは自分の母を殺した存在が今どこにいるのかも知らないが…。
そして、その皇子であるルルーシュの見事な働きに対して快く思っていなかった。
物理的理由、感情的理由が揃えば…彼らがルルーシュの命を狙うのは至極当然だろう。
ラティス王が怒りに打ち震えながら…右手を上げる…。
すると…それが合図だったのか…周囲にいた衛兵たちがルルーシュとスザクを取り囲む。
スザクはさっと、ルルーシュを守る様にルルーシュの前に立った。
これはルルーシュの中で見越していた事なのか…表情を変える事もない。
「ラティス王…貴方は国賓に対し、この様な振る舞いをされるとは…どう云ったご了見か?」
子供とは思えない程…酷く冷静で、そして、冷たい目でルルーシュがラティス王を見た。
その…『黒の死神』と呼ばれるようになった所以のその瞳…。
酷く冷たく…見据えられているだけで身体が凍りつくような錯覚を覚え、年端もいかない少年に対してラティス王が一歩、後ずさってしまう。
その冷たい瞳に加え…先ほどまでとは別人の様な…低い声に…周囲を取り囲んでいる兵たちも怯んでしまっている。
「これは…私が神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアと御承知の上での振る舞いであろう…?ならば…宣戦布告ととって問題はないと云う事かな?」
子供が話しているとは思えないその言葉と声に…周囲の空気が凍りついている。
しかし、ルルーシュとスザクが不利であると云う事は変わらない状況下の中…冷たく沈黙した空気の中…時間が流れて行くのだった…。

To Be Continued

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2011年01月29日

皇子とレジスタンス 〜渦巻く思惑〜

 突然現れたカノンに対して、それぞれが個性的な表情で出迎えている。
カノンがシンジュクゲットーのレジスタンス達と顔を合わせるのは初めてであるから、無理ない事だ。
「おんやぁ…。マルディーニ伯爵…もうこのエリアに来たって事は…」
「ええ、もう、見つけたわ…。それに、先方も随分焦っているみたいで…ルルーシュ殿下から送られて来る資料もたくさんあったもの…。これで、後は仕上げだけよ…」
この中でこの話の細部を解るのはロイドとカノンだけだ。
ただ、この場に居合わせている元日本軍の士官であった藤堂はその話しの内容から大体の予想を付けている。
恐らく、その予想そのものはほぼ、外していない状態で…。
「貴方か…。常に神聖ブリタニア帝国宰相である、シュナイゼル=エル=ブリタニアの傍らにいると云う、カノン=マルディーニ…と云うのは…」
そこにとりあえず、状況の把握を図るべく藤堂が口を挟んだ。
カノンの言葉を聞いている限り、自分達の準備もさっさと済ませてしまわなければならない…と云う事だ…。
「あら…。私の事も御存じだなんて光栄ね…。私はカノン=マルディーニ…。シュナイゼル殿下の補佐役をしている…と云うのは御存じよね…。今日は、シュナイゼル殿下の使いで貴方方にも色々お願いと説明をさせて頂こうと思って…」
あくまで、カノンは彼らに対して、『支配者側の人間』として接している。
これは今の状況であるのなら、彼の態度は正しい。
ただ、藤堂の背後でその態度に腹を立てているのが良く解る…と云うか、隠そうとしていない連中はこの状況の中でははっきり云って邪魔な存在であった。
「扇…お前たちはこの出陣に際し、一兵士としての志願はしていないのだろう?ならば、さっさとアジトへ帰れ…。前線に立たない者が聞くべき話しではない…」
藤堂もまた、至極当然の態度で彼らに接している。
今のあのグループのトップは藤堂だ。
彼らは藤堂の言葉に従わなくてはならない。
だが…
「ちょっと待てよ…。藤堂中佐やカレンが前線に立つつもりでいるんだろう?それに、ラクシャータやディートハルトも…」
「黙れ!戦争の話しは前線に立つ気のない人間が聞くべき話しではない。こうした戦いの中で一番恐れるべきは情報漏れだ。それを防ぐために、まず、前線に立つ気のない人間に話しを聞かせない事が重要だ…」
状況の把握が全くできていない扇たちに対して一喝する。
その言葉を理解出来ているのか、いないのか…。
これ以上不満の声を出す事はなかったが、納得など全く出来ていないという表情を隠そうとしていなかった。
そんな彼らを見て、カノンは考えていた。
―――とりあえず…ここまで解り易いと…助かるんだけど…。
既にシュナイゼルはルルーシュを皇帝の座に着けるべく、着々と準備を始めていて…後は仕上げ…と云うところまで来ている。
残った問題は…。
ルルーシュが、周囲の目から見たら甘やかしすぎたこのエリア11のシンジュクゲットーでスザクと共にレジスタンス活動をしていた連中だった。

 カノンの中でこのメンバーの中で排除すべき存在と別に取り立てるつもりはないが、排除しなくてもいい存在を選別しているのだ。
それも…シュナイゼルが望む未来の為であるし、たとえ、ルルーシュが皇帝にならずともこうした存在は危険でしかない。
決して有能ではないのに、そう云う自覚がなく、感情だけで動く存在は組織にとって危険でしかない。
流石に藤堂や四聖剣は元々軍人だったという事もあり、その辺りを弁えている。
そして、ロイドが恐らく、ルルーシュが皇帝になった暁にはスザクがルルーシュのナイトオブワンになる…と云う説明も施されている事も解る。
カレンがこうした形で素直に受け入れているのはそう云った事からだろう。
「確かに…そうですね…。前線に立つおつもりのない方々は退室を願った方がよろしいわ…。前線に立たない者がこれからの戦場での話しを聞いた時には確実に命を狙われる事にもなるわ…」
カノンが静かに目の前で色々と自覚の足りない連中にそう説明する。
こんな連中を率いていた事を考えると、あれで、スザクも中々のリーダーシップであると思ってしまった。
否、自分の率いている者たちの自覚不足と云うのは、普通にリーダーに問題があるという事でもあるのだから…。
これで、スザクへの評価を上げる事は出来ないと思い直した。
カノンのその言葉に…扇たちはビクリと身体を震わせた事が解った。
ブリタニアの支配下になる前には一般人であったのだろう…。
確かに、軍人の様な『戦争とは何か』とか、『信念を貫く事』など…。
前線に立つ者の心得の様なものは一切なかったと思われる。
それでも、彼らは反ブリタニア勢力として、相手は軍人であったとはいえ、ルルーシュがこのエリア11の総督となる前にはブリタニア兵の命を奪っていたのだ。
これで、ルルーシュが皇帝となり、このエリア11が安定した時に…。
彼らはきちんとその時の事を思い出し…様々な思いに苛まれる事になるだろう。
元々、人を殺す事など一切考える事もなかった人間たちだ。
そして、自分の信念を貫く為に人殺しをすると云う事がどういう事であるのかなど、考えてもいないのだろう。
そんな罪悪感さえ生じなければ人間としてどこか欠落していると云える。
ブリタニアにしても他の国にしても自国の軍隊に入った者達にはそう云った事まで教育され、叩きこまれる。
それでも、戦後、力が抜けた時には自分のしてきた事への罪悪感や加害者意識に苛まれ、生涯消えない心の傷で人生が狂ってしまう者もいる…。
軍人でさえ、そう云った事が起きるのに…。
ここで、見当違いな感情を抱いている目の前の存在達は普通に誰かの一臣下としてここにいたとしても不愉快であるし、危険な存在であるということでは意見が一致するに違いなかった。
カノンのその言葉に、不満を示していたが、あまりに理不尽なことであればリーダーである藤堂が口を挟むけれど…。
そう云った事もなく、ただ、ここに自分達の居場所はなく、居心地が悪いというそんな理由から不満そうな顔をしてその部屋から出て行ったのだった。
そんな彼らを見て、カノンはただ…『やれやれ』と心の中でため息を吐いていた。

 その頃…ルルーシュは…。
周囲には今のところ自分の目で確認できないが…確実に自分の命を狙う重工に取り囲まれているという自覚を持ちながら、ラティス国王の前に座っていた。
ここで、怯えている表情を一切見せない。
そこで怯んだら確実にそこを付け込まれる。
それに、ここで、ルルーシュが殺されてしまったとなれば、逆にブリタニアの大義名分が立つ。
今のところは暗殺と云う形だし、全てのアサシンをルルーシュ自身が片っ端から捕らえてしまっている。
流石に中々情報を得る事は出来なかったが、ここで、シュナイゼル配下の者達がいてくれた事に感謝した。
こうしたアサシンやスパイから情報を引き出すには技術が必要だ。
そう云った心得はルルーシュ自身にはない。
これまでそう云った事はジェレミア達に任せていたからだ。
しかし、流石にシュナイゼルの配下ともなると、そう云った事がルルーシュと比べ物にならない程経験している。
シュナイゼルの様に、有望視されていて、力のある人間の場合、媚びる存在もいるが、逆にその力を恐れて闇に葬ろうとする者もいると云う事だ。
ルルーシュの場合、王宮内のマリアンヌに対して複雑な感情を持った后妃たちの逆恨みを買っている事もあれば、ルルーシュの力を恐れた者が色々謀略を施して来る事もある。
ブリタニアの王宮は常にこうした策略と謀略の中で生き残れるだけの力を持つ事が最低条件だ。
それは自分の後見をしてくれる者を集めるか、自分自身で自分の身を守るか…。
ルルーシュの場合、後者しか選択肢がなかったから…こうした四方八方から命を狙われているという空気には慣れていた。
―――あまり、慣れたくはないものだが…
いつも、こうした空気に包まれている時にはそう思うのだが…。
今の状況ではそんな事を考えていても仕方がないという状況だ。
ルルーシュの護衛に回っているスザクは気が気ではない様子だけれど…。
ただ、スザクも自分の父親は元々、一国のトップであり、あの不安定な情勢の中、常に暗殺をはじめとした謀略に対して目を光らせていた。
結局、自分の政権の中で働いていた者の謀略によって…殺された訳だが…。
そう云った経験もあるから、スザク自身、緊張を崩す事が出来ない。
今、彼らの目に見えている範囲でルルーシュの護衛となるのはスザクのみ…。
他の者達はこの部屋の外に控えているが…。
もし、国王が合図した時には…間に合わない…と云う事になる。
ルルーシュとスザクの距離は約2メートル…。
これだけ、ラティスの人間(大臣やら召使やら)が取り囲んでいる状態でこの2メートルが…。
今のスザクには広く感じてしまう距離だ。
会談は…まだ続いている…。
あれだけのデータをシュナイゼルに送っている…。
なのに…ここまでシュナイゼルからの連絡は何もない…。
確かに、こちらからのデータ送信だって専用チャンネルを使っているのだ。
向こうからデータを受け取ると云うのは…かなり難しい状況だ。
スザクの中で…焦りの気持ちが大きくなって行くが…ルルーシュの方は相変わらず眉一つ動かさない。

 かなりきわどい話しが続いて…どれほど経っただろうか…。
突然、この会談の為の部屋に一人のこの王宮の衛兵が入ってきた。
「し…失礼します…」
ブリタニアの皇子が列席している中、このような形で無関係の人間が入って来ると云うのは、相当重要な事でもない限り、重罪に処せられる事になる。
ここは、国際的な会談の場だ。
ルルーシュはブリタニアからの使者としてここにいるのだ。
その、違和感のある光景をずっと眺めている。
そして、その入ってきた人物が『御無礼をお許し下さい』とだけ云って、国王に何か耳打ちしている。
そして、その話しの内容は聞こえて来ないが、国王の表情がみるみる変わって行く事が解る。
その表情の変化に…ルルーシュがピンと来た。
―――準備が…整った…と云う事か…。
冷静に分析する。
確かに、そのくらい重要な事でなければこんな形で会談を中断させるなど、あり得ない話しだ。
そこで、この状況に驚いているスザクに目配せした。
それは、恐らく、ルルーシュの騎士だから…解る様になったという…。
そんな合図だ。
今は動く必要はない。
ただ、国王の出方を見なければならない。
ここまで、この王宮にいたが、国王以外の人間が何か国を動かす為にその権限を使っているところを見た事がない。
常に、国王が決めて発表は国王の宰相が行っているという感じだ。
尤も、ブリタニアのそれともちょっと違う様な気もするが…。
―――確かに…国力の差を考えた時には…ブリタニアと同じである筈もないか…。
ルルーシュは静かにこの状況を観察する。
事と次第によってはルルーシュを含め、この王宮にいるブリタニア人が全員死ぬ思いをしなければならないかもしれないのだ。
この様子は恐らく、ブリタニアの『ルイ家』から来ているものだろう。
それとも、シュナイゼルが情報を流したか…。
どちらにせよ、ブリタニア王宮の中の準備は整ったというサインである事は間違いない。
こちらとしても、会談が終わったら、ルルーシュに付いて来た者達にその準備を指示しなければならない。
ここまで、ルルーシュの心の中で秘めてきた事だ。
しかし、彼らはいつ、どんな命令を受けてもそれをこなす様に訓練され、命令されている。
この重大な場面で何も出来ない者であったなら、シュナイゼルも今回のキーポイントになる様なルルーシュのラティス訪問について行かせる事はなかっただろう。
ただ、シュナイゼルに長年仕えている者たちであったなら、シュナイゼルの作戦の為の唐突なその動きに関してはある程度把握出来ているとは思われるが…。
どの道、近いうちにここは…。
―――戦場となる…。あの時と同じように…。
ルルーシュは心の中に何か引っかかっている者がある事に気がつくが…。
すぐにそれは気のせいであると…。
そう思いこませるのだった。

 そして、エリア11では…。
「……と云う事になるんだけど…」
カノンが今回の戦いの策と彼らの役割を説明した。
それは…藤堂たちにとってその様な戦い方をした事がないと思うが…。
しかし、これがシュナイゼルがあの若さでブリタニアの宰相の地位にいる理由が解った様な気がした。
「で、我々はどの艦に配置されるのだ?そして、そこで我々が働く事が出来ないという事はないのだな?」
藤堂が日本人とブリタニア人の確執を気にしての言葉…。
いくら有力な兵士がいたとしても、きちんと働けなければ意味がない。
「それは大丈夫…。今回はジェレミア卿がある艦の責任者と云う事でそこに貴方達は配属されるわ…。そして、基本的にはルルーシュ殿下と枢木卿をその艦に収容した後、ルルーシュ殿下の指示に従って頂く事になっているわ…」
カノンの言葉に納得の色が見えてきた。
また…ルルーシュの指揮のもとで働くと云う事だ…。
ひょっとしたら、これが最後となるかもしれない…。
シンジュクゲットーでの『リフレイン』の事件の時も中華連邦との戦いの時にも、本当に子供とは思えない程の采配を振るっていた。
それこそ、この子供を向こうに回してレジスタンス活動をしていたら…と思うと、恐ろしくなる。
彼らの中で勝てる要素が見つからなかったからだ。
そして、それほどの戦略を練る事が出来ながら、常に、誰よりも傷ついていた。
その采配の見事さもさることながら、ルルーシュのその姿勢に心を打たれたというのは、確実にある。
「じゃあ、彼を救い出すまでは?」
「ジェレミア卿の指示に従って頂くわ…。少なくとも、ルルーシュ殿下と枢木卿の身柄に関しては貴方達の肩にかかっているのよ…?」
これが本当に自分達がきちんと働ける為のものであるのか…。
カレンは未だに不安をぬぐい切れないでいるが…。
ただ、こんな形でウソを吐いたり、彼らを殺したりしても何の得にもならない。
損になる事も余り考えられないが…。
「ねぇ…さっきの話しは…」
やはり、一抹の不安が消えないのか…。
カレンがおずおずとカノンに訊ねた。
カノンの方は穏やかな表情を崩さずに答える。
「本当よ…。と云うか、そんな事をウソ云ったって意味はないわ…。枢木卿がナイトオブワンになると云うのも可能性の話しだけれど…。でも、順当に行けば彼がそうなるのは死ごく自然に出て来る予想でしょう?」
確かに…不確かな事はあるし、ルルーシュが救えなかったらこの話しもなくなるのだ。
せっかく…そこまで考える事が出来ているというのに…。
「じゃあ、私、ちょっとナナリー殿下とユーフェミア殿下に用があるの…。貴方達は出陣の支度をして頂戴…。あと、ないとは思うけれど、貴方達は志願兵よ?もし、命を落とす様な事があってもブリタニアは関与できないわ…。解っているのでしょうね?」
この辺りははっきりさせておきたいという事だ。
後々、もめ事にならぬようにする為の布石の一つだ。
「解っているわ…。これは戦争よ…。綺麗事は忘れたくないけれど、通用しないってことくらいは肝に銘じるわ…」
「その言葉…忘れないで頂戴ね…。ルルーシュ殿下に何かあった時には…シュナイゼル殿下はこんなエリア…向こう10年、草一本はえない様な状態にしてしまうかもしれないから…」
これは…本当ではないかもしれないがウソでもない。
そんな言葉を残しつつ…カノンは総督代理となっているナナリーの許へと足を進めて行くのだった。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2011年01月22日

皇子とレジスタンス 〜見え始めた未来〜

 シュナイゼルが動き出した事は…瞬く間にブリタニア王宮に知れ渡った。
そして、『ルイ家』にシュナイゼル自らが赴く事となった…。
「やぁ、パラックス…。久しぶりだね…」
いつもの穏やかなシュナイゼルの顔…。
でも、そのシュナイゼルから醸し出されているのは、隠しても隠しきれない…怒り…だ。
「あ…異母兄上…」
流石に事態を把握している異母弟は焦りと畏怖を隠しきれずにいる。
そんな怯えている異母弟に対してもシュナイゼルは容赦はない。
ルルーシュがシュナイゼルの一番のお気に入りだという事は、ブリタニアで知らない者などいない程既に有名な話しだ。
それこそ、一般市民に至るまでその事は知れ渡っているし、国際的にもかなり有名な話しだ。
それ故に、ルルーシュは外交面にしても侮られる事が多いが…。
ルルーシュに能力がなければシュナイゼルがこれほどまで目をかける事はなかっただろう。
元々、弱肉強食が国是のブリタニアだ。
シュナイゼルがどれほど実権を握ったところで何の力も持たない異母弟を守り切る事は出来ないのだ。
ルルーシュ自身にもシュナイゼルの寵愛の他にあるシュナイゼルとほぼ同等の実力があるからこそ、そして、対外的に示して来たからこそ、安易に暗殺…という手段に出られなかった…と云うよりも成功しなかったのはそう云った部分もある。
ルルーシュの母、マリアンヌは暗殺によってその生涯を閉じている。
それ故にルルーシュ自身、暗殺に対しての警戒は自分は勿論、ナナリーに対しても怠る事はなかった。
ルルーシュの場合、シュナイゼル一派の中でも暗殺対象だった時期もあるのだ。
今では流石にその様な事はなくなっているが…。
ルルーシュがシュナイゼルの軍に入った頃には、ルルーシュの実力を恐れた者達が暗殺者を送る事が多々あった。
その度に、ジェレミア達がルルーシュを守ってきた訳だが…。
「パラックス…私がここに来た理由は…解っているね?」
最初の内は決してその事実を認める事はないだろう。
『ルイ家』としても自分達が生き残るために必死だ。
こうした形での権力争いで負けた時の行く末は惨めなものである事は長い歴史の中でも証明されているし、この王宮内でもそう云った争いに負けた者達のその先は…。
それまでこの王宮の中で見てきたが…それは惨めなものだ。
「な…何の事…」
パラックスのその焦っている様子を見ると、最後の無駄な足掻き…と云う感じだろうか…。
シュナイゼルは表情を変えずに続けた。
「今更、知らないとは云わせないよ?君の母君がやった事であるとは承知しているが、それは『ルイ家』のトップである君が責任を負う事くらいは解っているね?それに、こうした形で権力争いに負けたのは…解っていない訳ではないだろう?」
誰でも我が身かわいさにこうした時には似たような反応を見せる。
そして、『ルイ家』は母が王族の姫と云う事で、彼自身は大きな力によって守られているだけの皇子だ。
そして、有力な後見を持つ皇子であれば…と云う思いもあったのかもしれない。

 確かに、シュナイゼル以外の有力皇族であったならそう云った考えも通用したかもしれないが…。
シュナイゼルはあくまで実力主義…。
シュナイゼルの周囲を固めている皇子、皇女はルルーシュ以外は確かにそれなりに強力な後見のある家ではあったが…。
しかし、シュナイゼルの下でその実力を発揮している者達だけだ。
そして、ルルーシュは後見が乏しい分、その実力を他の皇子や皇女よりもその実力を見せる必要があった。
ルルーシュにはその能力があった。
それ故にシュナイゼルの右腕とまで呼ばれるようになった。
それこそ、シュナイゼルがそこまでの実力を悲しんでしまう程…。
ルルーシュにそこまでの実力がなければ…シュナイゼルがルルーシュの身を真綿でくるむように守る事も出来たかもしれない…と思う程に…。
ただ、ルルーシュにそれだけの実力、気持ちがなかったなら、シュナイゼルはルルーシュに興味を持たなかっただろうという、皮肉さも見え隠れしているが…。
「パラックス…そろそろ君の母君も私の配下の者がその身を確保している筈…。そして、現在君の母君の御実家であるラティス公国から使者が訪れているのは…何も『ルイ家』へのご機嫌伺いではない事くらい…解っているのだろう?」
シュナイゼルは表情を変える事無く、淡々とそう云った言葉を並べて行く。
普段の優しげな笑みを湛えているというのに…。
背筋が寒いと感じる事が気の所為で会って欲しいと願っている自分がいる事に…パラックスは気がつく。
「異母兄上…それは…」
「君は…皇位が欲しかったのかな?それともユフィの関心を引きたかったのかな?まぁ、どうあれ、君がルルーシュに対して云い感情を抱いていなかった事は知っているし、私としてもいつか、私のルルーシュに対して何かいらぬ事をするのではないかと懸念はしていたんだよ…。ユフィはルルーシュの事が大好きだからね…」
本当に…世間話をしている様な口調で、表情もそんな感じだ。
しかし、その言葉が重なって行くにつれて、恐ろしい何かが自分を追いつめていると感じている。
そして、シュナイゼル自身もそう云ったプレッシャーをかけている自覚はある。
と云うか、そう云った形でのプレッシャーをかけているのだが…。
「…んで…。なんでみんな、ルルーシュばかりなんです!あんな、下賤な女の子供が!」
まるで何かブチ切れたかのようにパラックスがシュナイゼルに怒鳴りつけた。
それは、シュナイゼルがルルーシュに目をかけているという時点で多くの者が考えている事であろう。
特にこの魑魅魍魎の住まう王宮の中では…。
「私だって…チャンスさえ貰えれば…あんな奴なんかよりずっと功績を上げることだってできます!異母兄上に御満足頂けるだけの…」
―――パシン…
パラックスがそこまで云った時、シュナイゼルがその瞳の色が濃く、暗くなった状態でパラックスの頬を平手で打った。
手袋を外す事もなかったから…さして痛くはなかっただろうが…。
しかし、シュナイゼルに頬を撃たれたというその事実に驚愕を隠せない。

 驚いた顔をしてシュナイゼルを見ているパラックスの顔を見て、シュナイゼルは今度こそ、その瞳で体中が凍ってしまうのではないかと思えるほど冷たい瞳になっていた。
「ルルーシュを悪く云えるほど…君は偉いのかな?君ではルルーシュの足元にも及ばない。何故、皇帝陛下が御自身の後をルルーシュに継がせると決め、皆にそう告げたのか解らないのかい?」
呆然とシュナイゼルを見ているパラックスに向かって言葉を告げている。
ルルーシュの名前が出た途端にシュナイゼルの表情が変わった。
確かにシュナイゼルはルルーシュを溺愛しているという話しを聞いた事はあったし、実際にルルーシュがエリア11に赴任するまで、シュナイゼルは常にルルーシュを自分の傍らで働かせていたのだ。
「既に全ての証拠は出ている…。君達の身柄を確保だけして後は私もラティスに向かう事になっている。その後の事は…まぁ、決める権限を持つのは多分…」
シュナイゼルがそこまで云った時、パラックスががくがくと震え始めた。
これまで『ルイ家』に限らず、ルルーシュと懇意にしている皇子、皇女、貴族以外は基本的に『ヴィ家』に対していい感情を抱いてはいない。
ただ、ブリタニア皇帝のあの発言によってそれぞれがそれぞれの都合で様々な態度を示して来ている。
これまでに『ヴィ家』に対して云い感情を抱いていなかった家ばかりだから話しも面倒だ。
コーネリア、ユーフェミアの『リ家』も、クロヴィスの『ラ家』も当人たち以外は決して『ヴィ家』に対していい感情を抱いてはいなかったが…。
それでも今になって、その家の皇子、皇女がルルーシュやナナリーと懇意にしていた事を感謝している様だったが…。
それでも、彼らの母であるマリアンヌが元々庶民の出であるというこだわりがなかった訳ではなく…。
これで、ルルーシュが何かの失態を犯して、今回の皇帝の言葉がなかった事になれば今度はその家の皇子、皇女がルルーシュやナナリーに関わる事を拒絶するに違いない。
シュナイゼルの場合、既に『エル家』の中でシュナイゼルに意見できる者などいないが…。
「まさか…ルルーシュが…」
「ふっ…今に彼は君がそんな風に気易く呼べるような相手ではなくなるよ?それに、この事が露呈すれば君はユフィとも会う事が困難になる…。知っているのかな?権力争いの敗北とは…こう云う事なのだよ?」
それまで冷たい瞳でパラックスを見ていたシュナイゼルがにこりと笑ってそう説明した。
今回の事…シュナイゼルの中では本当にここまで我慢してきたらしい。
それが一気に噴出した…とでも云うかの様な…シュナイゼルの感情がそのシュナイゼルを取り巻いている空気から良く解る。
「異母兄上…何故そこまでルルーシュを…!貴方は…本当は皇帝に…」
「皇帝になる…と云うのは私がルルーシュを私の傍に置くという手段の一つにすぎない…。ルルーシュが皇帝であろうと私が皇帝であろうと、私の傍にルルーシュがいれば私はそれでいいのだよ…パラックス…」

 シュナイゼルがここまで執着を見せたのは…少なくともパラックスがそんなシュナイゼルを見たのは初めてだった。
これまで皇帝の座に一番近い皇子とされてきたというのに…。
そんなものはどうでもいい…そんな風に聞こえる。
実際にシュナイゼルはそのつもりで云っているのだろう。
「る…ルルーシュに皇帝など…」
「あのエリア11でルルーシュはあの『イレヴン』達を掌握した手腕の持ち主だ。私などよりも人心掌握は上手だと思うよ?少なくとも、この王宮の中でぬくぬくと他人の手柄によって自分の立場を維持してきた君よりは…ね…」
そこまで云った時シュナイゼルが軽く右手を上げると…。
シュナイゼルについて来たシュナイゼルの配下達がパラックスを取り囲んだ。
「なっ!」
「パラックスを用意した屋敷へ…。勿論、彼の母君とは会わせない様にね…」
「「「「「イエス、ユア・ハイネス!」」」」」
シュナイゼルのその言葉に衛兵たちがそう答えて、パラックスを捕らえた。
流石に皇族と云う事で縛り上げるような真似はしないが…。
パラックスもここで抵抗しても意味がないと察知したのか、その衛兵らに素直に連れられて行く。
どこへ連れて行かれるのか…。
不安の色が見えている。
これまでこの豪華な離宮の中で、贅沢三昧に暮らして来た皇子だ。
一応皇族と云う事で、まだ罪状が確定していないという事でそれ相応に礼を払った形での身柄確保である。
ただし、この後、罪を問われた時の判断は…。
きっと彼らが一番望まない相手から判断が下されるだろう。
家が執り潰しになっても、その命を助けられても…。
彼らにとっては屈辱でしかない結果になるだろう。
尤も、ルルーシュに手を出した時点で、シュナイゼルは時が来れば潰すつもりでいた訳なのだが…。
もし、あの時、ルルーシュが五体満足で復帰できなかった時…もしくはその命を落とした時には…。
彼らは恐らく死ぬよりも辛い状況に陥っていただろう。
シュナイゼルの手によって…。
一人きりになったこの、離宮の部屋の中でシュナイゼルが小さく呟いた。
「あの時…ルルーシュが死なずに済んだ事を天に感謝する事だね…。あの子は優しいから…決して君たちに対して冷酷な事は出来ないだろう…。ただ…あの子の母親の死に君達が関わっていた…と云う事になれば…また違うのかな…」
そう云い捨てて、部屋を出て行く。
この先、この離宮は調査の為にシュナイゼルの手の者達が入って来る。
様々な真実がこの離宮から発見される事だろう。
『ルイ家』に関わっている貴族達も芋蔓式捕らえられていく事になる。
これが…ブリタニアの国是…。
力なき者は力ある者に服従するか、排除されるか…。
ルルーシュは確かに後見と云う意味ではこの王宮で力を持つ事は出来なかったが…。
その分、それを凌駕するほどの己が能力を発揮し続けた。
ただ、ルルーシュが求めたものは…権力でもなく、まして皇位でもない…。
ただ、愛する妹姫を守るだけの力が欲しかっただけなのだが…。
それを手に入れる為にここまで大きくならなければならなかった事には…シュナイゼルとしても心を痛め、そして、そんなルルーシュだからこそ…愛した…。

 ちょうどその頃…エリア11では…。
「そろそろシュナイゼル殿下がブリタニアから艦隊を率いて行くそうだよぉ?」
そうロイドがシンジュクゲットーからの志願兵たちに説明した。
数は決して多くはない。
それでも、ルルーシュに対して、スザクに対して思いの深い者達が集まっている。
「本当に…戦争に…?」
そう訊ねたのは藤堂だった。
何度もシンジュクゲットーでの騒ぎをルルーシュがその力で収めている事を知っていたし、スザクがひょっとしたら間接的にこの日本を治める事が出来るかもしれないという期待を込めて彼は志願したのだが…。
「まぁ、仕方ないだろうねぇ…。ラティス公国から送られてきたルルーシュ殿下の花嫁候補がアサシンだったって事で…。普通、国際的にあり得ない非常識だしぃ…。そんな事くらいは解るでしょぉ?」
確かに…国際ルールを完全無視していたのはラティス側の方だ。
戦争をしたい訳ではないが、放っておく訳にもいかない。
確かにブリタニア国内の問題も絡んでいる事は確かだが…。
「でもさぁ…本当にあの皇子様が皇帝になるの?」
そう訊ねて来たのは朝比奈だ。
確かにそれまで皇位継承順位的に見ても決して目立たない皇子だった。
皇位継承順位とは一体どうやって決めているのか、訊ねたくなるような今回の決定だ。
「まぁ、ブリタニアでは皇帝が黒と云えば黒だし、白といれば白…。こう云った形で皇位継承者が変わっちゃう事もあるんだよ…。ただ、ルルーシュ殿下見たいにそれ相応に実力があればいいけど、そうじゃない場合は普通に国内で内乱がおきるけどねぇ…」
ルルーシュに実力があったとしてもタダでは済まない気がする。
実際にこのエリア11と呼ばれている地域でもブリタニア人達が浮足立っている事が解る。
「ただ…私はルルーシュが皇帝になって、スザクがこの日本を間接統治とは云え、スザクが統治してくれるなら…って思っちゃうから…。だから、私…」
カレンがそう、言葉にする。
ただ、ここに扇たちの姿はない。
ルルーシュが皇帝になり、スザクが間接統治するという形が気に入らないらしい。
と云うのも、スザクが間接統治をしたところでブリタニアからの独立ではない…と云う事だからだそうだ。
確かに、彼らの言い分にも理解は出来るが…。
ただ、現在のところ、ブリタニアと睨み合っていた『日本』だった頃よりも現在のルルーシュが総督となっている『エリア11』の方が遥かに暮らし易くなっている事もある意味認めたくはない事実だ。
そこで、意見が分かれているのは確かだ。
「その辺りの事は…この戦いに勝ってからの議論にして頂きましょうか…。少なくとも、ルルーシュ殿下が皇帝となられた場合には、確実にブリタニアの国是は変わって行くでしょうから…」
そこに現れたのは…。
シュナイゼルの使いとしてエリア11に赴いた、カノンであった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2011年01月15日

皇子とレジスタンス 〜野望と希望〜

 今、ルルーシュはラティスの国王と会談している。
本来なら、相手は国王で、ルルーシュは大帝国の皇子とはいえ、第11皇子…。
その格の違いはある筈なのだが…。
しかし、現ブリタニア皇帝が次期皇帝に指名したのがルルーシュであると云う事で、以前、戦後の交渉の際の会談の時とは随分扱いが違うと思った。
―――まぁ…仕方ないな…。とは云うものの…半ば戦争状態の中…何を考えているのやら…。
そんな事を考えていても解らないものは解らないし、ラティスの場合、単純に関係の冷え切った間柄となった国として見るのは危険だ。
と云うのも、ブリタニアの皇族の中にラティスと関わりの深い存在がいて、実際に、その皇族の手によって動かされていることが明らかだったからだ。
あからさまにエリアの総督の任に就いている皇子に対して、あんなに堂々と暗殺をしかけて来るわ、国賓である筈のルルーシュに対して、王宮内でルルーシュの命を狙おうとするわ…。
そんなもの、露呈した時にはラティスの立場が悪く云われても文句は云えない。
確かに、いつ戦争が始まってもおかしくはないと云う事にはなっているものの、首脳会談をしての話しではないし、実際に互いに戦闘準備はしているが、その戦禍を開く為にはどちらの国もトップが『Go』サインを出さなければ互いにそのミサイルのスイッチを押す事は出来ないのだ。
だからこそ、末端の争いや領海侵犯をして侵犯した側の船を撃沈したとしても、それだけで戦争になる訳ではない。
戦争と云うのは国同士の外交がもつれた時に起きて、そして、それぞれの国がその国との外交関係の中でどうにもならなくなった時に取る、最終手段だ。
だから、ブリタニアと日本の時も、日本側がのらりくらりとブリタニアとの戦争を避けて外交努力をしていたが…。
しかし、それに業を煮やしてブリタニアが一方的に宣戦布告して、そして、日本側も何れそう云った事態に陥るという予想をしていた上で、強かに準備を行ってきていたのだ。
宣戦布告もしないで武力行使をした場合、それは侵略であり、戦争ではない。
あくまで、戦争とは外交手段であり、自国に有利に持っていく為に武力を使うと云う事だ。
ただ、そう云った武力を使った場合、自国であっても、相手であっても、あらゆる面での国力の消耗が激しい。
その国運をかけて国をあげて国同士で自己主張をし合うのだから…。
だからこそ、宣戦布告をすると決めるうえでも、宣戦布告をする上でも冷静さが要求される。
尤も、そんな状態になった時には頭に血が上ってしまっている状態だから、後になって何故こんな事になったのか…と云う事も多々ある。
今のところ、特使として送られているルルーシュ自身は冷静に事を見守っているが、ルルーシュのバックではシュナイゼルが確実に、いつその時が来てもいいようにと準備を整えている真っ最中である。
それに、ラティス側も、ブリタニアの内部からの情報でルルーシュに対しての暗殺者へのチェックが甘い状態なのだからラティスもきっかけを待っている状態だと云ってもいいだろう。
ルルーシュと入れ替わりでシュナイゼルに遣わされているラティスの特使はルルーシュの様にあからさまに命を狙われていなくとも、シュナイゼルの睨みの中で生きた心地のしない日々を送っているに違いない…。

 目の前にいる国王は…ルルーシュを見ながら過去の記憶を辿っていると云う感じだ。
かつて、ルルーシュはラティス侵攻に際し、指揮官であった事を国王だって知っているし、その時にラティスとの条約提携などはすべてルルーシュが指揮を執ってやっていたのだ。
「ルルーシュ殿下…あの頃も年相応に見えぬ子供だと思っていたが…。あれから…何年経ったかな…」
「恐らく…3年ほどでしょうか…。お久しゅうございます…国王陛下…」
周囲から見て言葉だけ判断するなら単純に挨拶を交わしている感じなのだが…。
その彼らを取り巻いている空気は相当物騒なものを感じている者も少なくはない。
ルルーシュの後ろに控えているスザクも正直気が気ではない。
ここにいるラティスの兵士達も国王の合図があれば確実にルルーシュを殺す為に襲いかかって来る事を容易に予想させる様な空気を醸し出している状態だ。
―――こんな、国王の前で流血沙汰も致し方なし…と云う事なのか…。まったく…ラティスとは確かに敵対しているのは知っていたけれど…ここまであからさまなのってありかよ…
それはスザクの素直な感想だ。
尤も、ラティスの場合、反シュナイゼル派の皇族からある事無い事情報を送られてきているからこんな緊張状態の中にいるのだろうが…。
元々、ラティスに関してはその武器製造技術に関してはブリタニアとしても一目置いていたし、脅威も抱いていた。
ただ、ラティスの作る武器と云うのはどちらかと云うとスパイやアサシンが使う様な見た目に解り難い武器が多い。
だからこそ、ラティスに対して警戒している国はブリタニアだけではないのだ。
実際に、ラティスの作った武器で国の要職に就いている人間が暗殺された事例もいくつか上がっているのだから…。
ここまで、ラティスの王宮の中でそう云った武器を使ったアサシンがいなかった訳ではないが、ブリタニアとしても解っていてそう云った武器に対しての対処を研究していなかった訳ではない…。
そして、ここにいるルルーシュも、ルルーシュのバックにいるシュナイゼルもそう云った暗殺と云う見えない脅威に関しては常に注意を払わなければならない状況下に身を置いていたから一々気にしていたらキリがないと云うのも事実であった事は確かだ。
「さて、国王陛下、本題へと入りたいと思うのですが…」
「ほう?本題とは…?」
非常に解り易い白々しいやり取りだ。
それでもこうした時にはこう云った、見ていてあまり愉快だと思えない会話は確実について回るものである。
「先日…エリア11にラティスより送られてきた私の花嫁候補の中に…帰国の姫を騙る女がおりました事…国王陛下は御存じであったのでしょうか?」
これは、既に水面下で双方の外交官や事務官レベルである程度情報のやり取りは交わされているが…。
ただ、ラティス側は正式なルルーシュの花嫁候補として送りこんで来ているのだから、こうした形で話しに蹴りを付けなければならない。
殆ど儀式みたいなものである事は確かなのだが…。

 ルルーシュのその言葉にラティス国王もふっと笑って答えた。
「既に調べは付いておられるのだろう?今更私に訊く事なのかな…?」
国の代表がこのような返答をすると云うのは…。
裏に何かあるのか、本当のバカなのか…。
ともあれ、これはラティス国王の正式な言葉であり、国際的には正式回答と云う位置づけになる。
「その答えの意味が…きちんとお解りの上で答えられておられるのか?」
「勿論…。元々貴殿もそのつもりで訊ねて来たのであろう?」
どうやら、国王としてはきちんと自覚はあるらしい。
だから、あの時、確実にルルーシュを殺す為に偽物の姫を送りこんで来たという事だ。
関係がぎくしゃくしている相手であろうとも、国際的には相当信用を失う行為である事は確かだが…。
ただ、ブリタニアの王宮の住人の一人がラティス皇族の親戚筋にあたり、そして、その家の数ある後見者の一人となっている状態だ。
それ故にラティス側もそう簡単にブリタニアはラティスに戦いを仕掛けては来ないと思ったのだろう。
数年前、ブリタニアがラティスと戦争した事を忘れている訳ではないだろうが、ここまでじっと、静かに息をひそめて来て…要らぬ情報を耳にして…。
ラティスは小国だ。
国土としてはブリタニアとは比べ物にならないほど狭いし、武器産業を主な産業として、全世界に影響を及ぼしている国であるからこそ、ブリタニアも攻め切れずにいた訳だ。
しかし、事がここに至ってしまっては、ブリタニアとしても決着をつけざるを得ない。
ルルーシュは確かに皇位継承権としては低い位置にいる皇子であったが…。
最近、皇帝の発言で立場が変わってしまい、今では彼に媚びようとする者、彼を殺そうとする者が入れ替わり立ち替わり現れる状態となってしまった。
そして、ラティスとしては王族の嫁ぎ先の皇子がルルーシュから遠い立場をとっているとなれば、心中穏やかではいられない。
ラティスとしてもその姫の皇子が有力な皇子として立ってくれなければ自国の安寧を保証される事がないのだ。
ルルーシュ自身も皇帝の言葉がなくとも…幼いながら、シュナイゼルの下でその力を発揮して、現在の地位を築いてきた。
庶民の出の母を持ち、その母もその実力で騎士侯に上りつめ、皇帝の寵愛を受けるまでになったのだ。
そんな母を持つルルーシュが皇帝に次期皇帝と指名されてしまった時…ただ、身分しかとりえのない姫の甘やかされた皇子では太刀打ちできるとも思えないのもまた事実…。
だからこそ、危機感を抱く存在が増えてルルーシュに近付いて来る人間が二つに分かれた訳だ。
今から媚を売ろうとする者と…その命を奪い存在そのものを消そうとする者と…。
ラティスとしてはその後者を選んだ訳だ。
今からどう頑張ったところで、『ルイ家』単独でラティスの未来を預けられるだけの力はないのだ。
どんな形であれ、力を必要とするのがブリタニア…。
それを知るからこそ…国王もこんな形でルルーシュと対峙している訳なのだが…。

 その頃、ブリタニアでは…。
「シュナイゼル殿下…この資料を…」
カノンがシュナイゼルにプリントアウトされた資料の束を渡した。
その中には様々な画像があったり、物的証拠の資料が掲載されていたりしている。
「意外と時間がかかってしまったね…。ただ、これだけの資料があれば、普通に宣戦布告も行えるだろうが…」
「ルルーシュ殿下はきっと嫌がると思いますが…」
「どの道、ラティスとの戦いは避けられないよ…。『ルイ家』が関わっている事もこの資料がしっかり証明しているし、画像だけでなく現物もカノンは手に入れているのだろう?」
シュナイゼルの言葉に、カノンが黙って頭を下げた。
それを見てシュナイゼルは資料から目を離し、窓の方に目を向けた。
「それに…私が皇帝になるにしろ、ルルーシュが皇帝になるにしろ、『ルイ家』はいずれ、我々の支障になる事は確かだ…。今、『ルイ家』まで叩く事は出来ないが…。それでもバックボーンは消しておくに限るよ…」
シュナイゼルの言葉に…カノンが苦笑しながら考えてしまう。
―――本当に…シュナイゼル殿下はこうした陰に徹するのがいいのかしら…。ルルーシュ殿下も同じ事が云えるけれど…。どちらも恐るべきカリスマがありながら…こうした、陰の部分まで担えるなんて…。そんな贅沢な悩みでありながら…同じ時代に生まれてきたこのお二人は…
この国で皇帝になれるのはたった一人だ。
シュナイゼルはその自覚を常に持ちながらここまで来た。
本当に皇帝の座につける、つけないはあるかもしれないが…。
それでも、その自覚がある人間が一人でもいないと国のトップが突然倒れた時には国をまとめられる存在がいなくなる。
トップ不在の国ほど他国に狙われ易い事はない。
トップがいないというのは船頭のいない船なのだから…。
そこに他の船の人間が入り込んで、多少の抵抗はあったとしても、トップが不在となれば簡単に制圧されてしまうのだ。
国のトップに立つ為に育てられて来た者であればそう云った事についても学ぶ。
シュナイゼルはそう云った事もしっかり学んで来て、実力を発揮している。
ルルーシュはそんな事を考える事さえなかった。
あくまで、自分の守りたいものの為に力をふるっていただけだ。
でも、皇帝の座につく事が自分の大切なものを守ると云う事になれば、それこそ、大切なものを守る為に完璧な皇帝を演じるだろう。
悲しいと思えるほどにルルーシュはそれだけの能力がある。
それは、シュナイゼルの目から見てもカノンの目から見ても良く解る。
「カノン…」
「なんでしょうか?」
シュナイゼルが少し、何か思うところがある…と云う感じにカノンの名前を呼んだ。
それにカノンはすぐさま返事する。
「君は…ルルーシュが皇帝になる事は…反対かい?」
シュナイゼルの問い…。
それはカノン自身もかなり悩む種でもあった訳だが…。
カノンの中ではシュナイゼルが皇帝になることを前提にシュナイゼルに仕えて来ていた。
「私は…シュナイゼル殿下の御心に従うだけです…」

 カノンらしい返事だとシュナイゼルがふっと笑った。
「そうか…。私はやはり、ルルーシュを手放さない為に…ルルーシュを皇帝にしたいと考えているんだ…」
シュナイゼルのこの言葉…。
カノンも何となく解っていた。
だから、先ほどのシュナイゼルの返事にはウソが少し入っている事に対しての自覚はある。
「殿下がそうお考えでしたら…私は殿下のお言葉に従います…」
「有難う…。なら、相談に乗ってくれないかな…」
シュナイゼルは窓の方から目を離さずカノンに語りかけている。
カノンの心の中で様々な自分の中の未来図を変更しなければならないという思いが過って行く。
「なんなりと…」
「ルルーシュはきっと、皇帝になどなりたくないと思っているだろう。元々、そう云った野心を一切持ち合わせていないからね…」
「確かに…」
「だからね…ルルーシュを皇帝即位から逃げられない策を…施したいと思うんだ…」
シュナイゼルの言葉に、カノンが少し、驚いた表情を見せた。
ただ、シュナイゼルがそのカノンの表情の変化に気付いていたかどうかは解らないが…。
「既に…エリア11のロイドには連絡を入れてある。ロイドは既に動いているんだ…」
そう云った話を一番にして貰えなかった事に悔しさを覚えるカノンだったが…。
今はそんな事を考えている時ではない。
これは…シュナイゼルの望む未来を作れるかどうかの瀬戸際なのかもしれない…。
「ロイドが?」
「ああ、エリア11出のルルーシュの支持率はかなり高いからね…。総督交代となれば色々面倒な事にもなるし…。だから、ちょっとルルーシュの協力者であるイレヴン達を動かして貰おうと思ってね…」
その言葉に…なるほどと思った。
そして、カノンの役割は…
「私は…ナナリー殿下の確保…ですね…」
「察しがいいね…。ナナリーはルルーシュにとってのアキレス腱だ。ただ、手荒な事をする必要はないよ…。ナナリーを説得して欲しいんだ…。ルルーシュに皇帝になって貰えるように…彼女自身がルルーシュに皇帝になって欲しいと思って貰えるように…」
なるほどと思いながら、本当にルルーシュには甘いと思ってしまったカノンだ。
自身の気持ちも切ないが、なんだか、シュナイゼルのそんなルルーシュへの気持ちもなんだか切なく見える。
―――本当に…あの異母弟気味を愛していらっしゃるのですね…。
カノン自身、シュナイゼルに対してきっと、永遠に届かない思いがあるから、シュナイゼルのその思いも何となく理解出来てしまった。
ルルーシュ自身、シュナイゼルを慕っているし、大切に思っている事は事実だが…。
シュナイゼルがルルーシュへ馳せるその思いとは種類が違っている…。
そんなシュナイゼルを見ていて…カノンは否とは云えない…。
「イエス、ユア・ハイネス…。その御命令、承りました…」
「では、私これでラティスに向かう…。私達がブリタニアに帰って来るまでに…頼むよ?」
「では、私はエリア11へ向かいます…。どうぞ…御武運を…」
そう云ってカノンは部屋から出て行った。
そうして、シュナイゼルからの命令を果たすべく…頭をフル回転させるのであった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年11月14日

皇子とレジスタンス 〜準備〜

 その後、ルルーシュが襲われる事はなくなったが…。
ただ、非常に居心地の悪い視線を感じる。
完全に見張られている状態だ。
いかにして、ルルーシュの隙を探しだすか…と云う感じである。
正直、うんざりもするが、これを命じられて頑張っている者達に対してある意味、敬意の様なものさえ抱いてしまう。
それだけ、ルルーシュに監視の目が張り付いているのだ。
カメラなどではなく…実際の人間が…。
恐らく命令は…
『隙を見つけたらすぐに殺せ…』
と云う事なのだろう。
この離宮には行ったばかりの段階で早速あてがわれてきたアサシンをさらりと捕らえてしまい…。
可能性としては、ブリタニア側の使いである事が解ったものだから、とりあえず、シュナイゼルが付けてくれたSPの一人に監視させている。
そして、ルルーシュからは秘密裏にシュナイゼルに報告しているが…。
その報告の度にシュナイゼルが失笑している事が良く解る。
シュナイゼルもルルーシュを守る為のSPはそれ相応の腕の者を付けている。
少数精鋭ではあったが、シュナイゼルが外交の際について行った経験のあるSPも数名つけられていた。
「ブリタニアと云うのは…本当に仕事がないのか?」
ルルーシュがポロリと零した一言…。
目の前にはスザクにねじ伏せられている、どう見てもラティスの人間ではないアサシンがいた。
ルルーシュ自身、様々な戦場や紛争の起きている地域の前線に立っている。
王宮に籠って、権力争いをしている皇族とは訳が違うのだ。
こうした実戦の場は嫌と云うほど経験しているのだ。
「そんな事を云っている場合か!ラティスに来て4日目…あと3日もあるんだぞ!」
「そうだな…。そろそろ、捕まえた連中の生活環境も相当しんどい状態になっているだろうな…」
あっけらかんとスザクの言葉にルルーシュが答える。
正直、あたふたしたところでどうにもならない事だし、ルルーシュも腕に自信はなくともこう云った危険をある程度避ける事の出来るだけのものはそれなりに身につけている。
「ルルーシュが殺すなって命じているからだろうが!」
「とりあえず、生きていればいいぞ?帰れば恐らく、徹底的に尋問は出来るだろうし…」
「お前な…。その所為でシュナイゼル殿下のSPの皆さんの生活環境まで侵されているんだぞ?」
「それは申し訳ないな…。大丈夫だ…シュナイゼル異母兄上にきちんとその分の手当てを付けて貰おう…」
「そう云う問題じゃないだろうが!」
この二人のやり取りを見て…まだ意識のあるアサシンが驚いた顔をしている。
目の前にいるのは…自分の半分程の…否、自分の半分も生きていないかもしれない少年がこれほどあっけらかんと自分を狙ったアサシンの前でこんな会話をしているのだ。
「お前…本当に…ブリタニアの皇子なのか…?」
アサシンが思わずそう、口に出した。
信じられなかったのだろう…。
シュナイゼルを狙うのはいつも必ず誰かがいるし、彼自身も狙われている自覚があり、周囲の者達もその意識を持って彼の傍にいる。
目の前の皇子は…シュナイゼル程の後見もなければ、護衛もいない…。
それなのに…

 そんなアサシンの言葉にルルーシュは苦笑して彼を見た。
「残念ながら…私は神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア…だ…。ただ、私の母上の事は知っているか?元々、庶民の出で他の皇妃たちの家柄と比べると、どうしても劣ってしまうのだが…。その所為で影武者を置く事も出来なくてね…。そのお陰で、自分で護身術を覚えたんだ…。プロのお前でも仕留められなかったところを見ると…私も中々の者ではないか…。なぁ?スザク…」
あっけらかんと話している目の前の皇子に…。
専任騎士であるナンバーズが大きなため息を吐いている。
そのため息から、彼の苦労の多さが窺えるが…。
問題はそこではない。
―――仕留められなかった…。
それは彼にとって命取りであり、捕まった時にその場で自決するのがアサシンとしては通例なのだが…。
ただ、この二人のやり取りが目に入って来てしまい…。
今のこの時点では口の中に毒薬を放り込んで…と云う訳にもいかなくなってしまった。
アサシンは人を殺す訓練も受けるが…。
もし捕まった時、その場で死ぬと云う心構えやら、もし、その場で死ぬ事が出来なかった場合、情報が漏れる事を防ぐために拷問に耐える訓練も受けているし、様々な形で身体を改造してあらゆる苦痛に普通の人間よりは絶える事が出来る様に訓練されている。
それでも、並みの人間よりも我慢できる…と云うものであり、痛みや苦痛を感じるのだから、彼にとって望ましい事ではない。
それを思い、眉をひそめている。
既にスザクが男に猿轡をして、その身につけているもの…それこそ、上着などを全てはぎ取っている。
そして、ルルーシュがクローゼットの中にあった、ガウンを出してやった。
「スザク…これをかけて連れて行け…。流石にその恰好では気の毒だ…」
「ああ…正直、見たくもないからな…」
スザクはルルーシュからガウンを受け取り、その男の腕を拘束したままガウンをひっかけた。
そして、到着したシュナイゼルの付けてくれたSPに引き渡す。
「申し訳ありません…。これほどまでに不埒者が多いとは…」
「大丈夫だ…私達もかなり予想外だったからな…。シュナイゼル異母兄上もこれだけの数のアサシンを見たらお前達を責めるような真似はしないだろう?」
その男を引きとりに来たSPが頭を下げると、ルルーシュは苦笑して返した。
正直、王宮にいた時にだってこうした事に神経を使っていたけれど…。
いくら戦争状態に陥っている国に来ているとはいえ、ここまで酷いとは思わなかった。
おまけに殆どが、ラティスの人間ではなく、どう考えてもブリタニアの関係者としか思えない輩ばかりだったからだ。
「とりあえず、これがこの男の所持品です。それぞれ、調べてみて下さい…」
「イエス、マイ・ロード…」
スザクがその男の所持品をSPに引き渡した。
そして、男はSP達に連行されて行った…。
扉が閉まるのを確認して、ルルーシュもスザクも…
そこにあったソファにドカリと腰を落とした。
まだ4日目…
最終日まで生き残れていたら、最終日は一体どうなるのだろうか…などと考えてしまっている。

 その頃…様々な報告を受けていたシュナイゼルだったが…。
「これはまた…凄いね…」
その報告データを見ながらシュナイゼルが苦笑しながら零した。
「ルルーシュ殿下は…?」
「なんとか持ち堪えているようだ…。あのイレヴンの少年…有言実行…しているようだね…」
「しかし…この数は尋常ではありませんよ?」
「そうだね…。かと言って、こちらの予定を変える訳にはいかないからね…。ルルーシュ自身、それをよく解っているから、今、この状態を逐一報告して来ているだけなのだろうからね…」
シュナイゼルはどこまでも優秀さを見せつけているルルーシュと、シュナイゼルに放った『宣戦布告』の様な言葉を使ったスザクを考えると…
「私もうかうかしていられないね…」
「殿下?」
「このままでは、あのルルーシュの騎士に私のルルーシュを持って行かれてしまいそうだからね…」
シュナイゼルの言葉にカノンが苦笑を零さざるを得ない。
「殿下は…何故そこまでルルーシュ殿下を…?」
「手放したくないから…だよ…。マリアンヌ皇妃があのような死に方をした時点で、あの兄妹の運命の選択を迫られてしまったのは…カノンも知っているだろう?」
「はい…。マリアンヌ様は色々な意味で複雑なお立場でしたし…彼女がいなくなった時、ルルーシュ殿下もナナリー皇女殿下も…選べる運命は限られていましたから…」
あれから既に…6年が経つ…。
あの時のルルーシュは…まだ…10歳にも満たない子供で…ナナリーは更に幼い子供だった。
ルルーシュは自分の立場をよく理解していた…。
否、せざるを得なかった。
シュナイゼルが目にかけていたおかげでシュナイゼルの離宮に訪れる事もあったし、シュナイゼルがアリエス宮に訪れる事もあった。
その中で…ルルーシュは幼いながら学習し続けた。
ルルーシュは特に意識をしていたとは思わないけれど…。
ただ、ルルーシュはそんな無意識の中で様々な物を吸収していき…そして、自分なりに咀嚼して自分のものにして行った…。
「あの子がもし…あそこまで優秀な子供でなかったら…素直に私の庇護の腕の中には行ってくれたのかな?」
シュナイゼルがそんな事をぼそりと云うと…カノンが小さく笑った。
「何を仰っているのです?ルルーシュ殿下があのような方であったから、シュナイゼル殿下は手放したくないと思われているのでしょう?自分と対等の立場の人間として…」
カノンの尤もな言葉にシュナイゼルはふっと笑った。
「確かにね…。世の中…ままならないものだね…」
「で、これだけの報告書…どうされるのです?この写真を見て…結構見覚えのある顔もあるのですが…」
カノンが書類を手にシュナイゼルにそう、話しかける。
「そうだねぇ…。しかもルルーシュは律義に全員、生かしたまま捕らえているのだろう?ラティスの離宮は、このブリタニア王宮の中にある離宮の中でも広くはないアリエス宮より手狭だと聞くが…」
「ルルーシュ殿下も心配されていましたね…。殿下が御付になったSPの生活空間が狭まって行く事を…」
「優しい子だね…相変わらず…」

 そんな会話の中…
―――♪♪♪♪♪…
シュナイゼルのパソコンの専用通信の呼び出し音が響いた。
「これは…」
「エリア11のロイドからだね…。どうしたのかな…」
そう一言零してから通信を繋いだ。
「どうしたんだい?ロイド…」
『どうもぉ〜〜〜。なぁんか、ラティスでは色々大変な事になっているようですねぇ〜〜〜』
この男の情報網は把握出来ていない。
しようとも思わない。
恐らくいくら潰しても新たに情報網を作るだけで、更にややこしい事になるだけだからだ。
もし、その情報で彼が要らぬ事をした時には情報網を潰す前に彼を潰せばいいと考えているのだから、今のところ、彼の情報網を潰す気はない。
そして、彼の情報網は今のところ、シュナイゼルの役に立つ方向で働いているのだから一々問題視もしていない。
「相変わらず、情報が早いね…」
『今回は僕のオリジナル情報網じゃなくて…殿下のナイト君からの情報なんですけどねぇ…。流石に数が多くて大変みたいですよぉ〜〜〜』
「まぁ、確かにね…。ルルーシュが私の付けたSPの生活空間が狭まっている事を心配しているくらいだから…相当な物だね…」
『で、僕の情報提供者からの伝言です…。『現在4日目ですが…これだけの数が失敗しているとなると…最終日には空港へは簡単に行けません。恐らく、5日目の夜から6日目の朝にかけてが山です…』とのことですが…』
ロイドの言葉に、その場にいた二人が表情を険しくした。
思ったよりも早かった…と云う事だ…。
「解った…。まぁ、こちらの準備は整っているからね…。君はどうする?」
『『ランスロット』なしで役に立ちますか?こちらには、志願兵まで居ますけどぉ〜〜〜』
「志願兵?」
『はい…ルルーシュ殿下が色々と目にかけていたゲットーの…元々スザク君と一緒にレジスタンスをやっていた女の子なんですけどねぇ〜〜〜』
「ああ…一度、ルルーシュ殿下が捕らえた事があった…あの、ブリタニアとイレヴンのハーフの…」
『そうそう…。どうしますぅ?』
「その彼女がルルーシュにとって敵であるのか、味方であるのか、私には判断しかねるが…」
『それは大丈夫ですよぉ〜〜〜。彼女、ルルーシュ殿下には借りがありますしねぇ…。もし、そんな事をしたら今のエリア11がどうなるか、良く理解していますよぉ?』
ロイドの言葉にウソはないと…そうは思うが…。
ただ、一度はルルーシュを襲っているレジスタンスだ…。
「しかし…ロイド…。そのレジスタンスが殿下に対して…」
『大丈夫ですよ…。スザク君がいるなら絶対にそれはさせませんよ…。今のところ、ナイトメアでの戦闘は五分ですが…肉弾戦になればスザク君の方がダントツですよぉ〜〜〜』
ロイドの言葉にシュナイゼルが小さく息を吐いた。
「解った…。エリア11からの合流軍は明日、カリフォルニア時間の正午に中華連邦駐屯基地に来るように…。遅刻は許さないよ…」
そう云って、シュナイゼルは通信を切った。

 通信を切られて…
「良かったねぇ…。君の申し出…通ったみたいだよぉ?」
「すみません…。無理を云いまして…。ただ、色々なニュースを聞いているだけでも…かなり大変な状況にあるみたいだし…。出来ることなら私…アイツに総督でいて欲しいと…そう思っているんです…」
ロイドがカレンにそう告げて、カレンがロイドに返した。
現在、ゲットー内の治安維持の為にシンジュクゲットーにいる現在藤堂がリーダーとなっているグループのメンバーは軍施設のある程度の部分には自由出入りを許されている状態だが…。
ここまで入り込むのはそれ相応の許可が必要だった。
その時、報告を受けていたロイドが彼女の申し出を受けてここに連れてきた訳だが…。
「でもさぁ…今じゃ、ルルーシュ殿下は現皇帝陛下が指名された次期皇帝陛下だよ?まぁ、この騒ぎのどさくさでどうなるかは解らないけどねぇ…」
「だから…行くんです…。日本の為とか…そんな大層な事を云うつもりはないんです。ただ…私はアイツに総督でいて貰いたい…それだけなんです…」
「そっかぁ…個人の事情が動機ともなるとなぁ…僕としてもどう判断していいか解らないけれど…。良かったねぇ…シュナイゼル殿下にその辺りの追及を受けなくって…」
「そうなった時には私、適当に理由でも何でも付けてごり押しするつもりでした…。大丈夫です…。貴女に迷惑をかけるような真似はしないと思いますから…」
カレンのその言葉に…ロイドはクスッと笑った。
本当に…頭のいい少女だと思ったからだ。
「言葉は使い方次第だねぇ…。ま、いいけど…。『ランスロット』も持って行く事になっているから…多分、君と一緒にラクシャータもついて来るんだろう?」
「まぁ、そうでしょうね…。貴方が『ランスロット』を他の人に障らせたくない様に…ラクシャータさんも『紅蓮』を他の人に障られたくないと思っているでしょうから…」
「とりあえず、この用紙を持って帰って必要事項を書いて来てね?君の義理の兄君も今、中華連邦で頑張っているし…。君自身がどうしたいのか…そろそろ立場をはっきりした方がいいと思ってはいるんだけど…。この機会にちゃんと…決めなよね…。殿下もこの後どうなるか解らないけれど…君達のグループの立場や地位、身分の保障に関してはきちんと考えているみたいだからさ…」
「え?」
「今更何を驚いているの…。君達にシンジュクゲットーの治安を任せて、なおかつスザク君をご自身の騎士にしている時点でその事を切り離して考えている訳がないでしょぉ?だから、君も…色々ある立場だけど…今度こそ、ちゃんと立場を考えてね?でないと、これまでルルーシュ殿下がなさって来た事はすべて…無駄になる事になるから…」
ロイドが色々話している事の中には…カレンが聞いても大丈夫なのか…と思ってしまう事も含まれていて驚きを隠せない。
「もう一つ教えてあげるとね…ルルーシュ殿下が皇帝になった時にはスザク君がナイトオブワンになるんだよねぇ…。ナイトオブワンの特権って知っているかい?」
ロイドの言葉に…カレンがごくりと唾を飲み込んだ。
―――ナイトオブワン…ナイトオブラウンズの中の最高の地位…。そして、その存在には…望んだ地を自分の支配に置ける…自分で統治できる権限を持つ…

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年11月06日

皇子とレジスタンス 〜数多の暗殺者〜

 十数時間のフライトの後…。
ルルーシュを乗せた飛行機はラティス最大の国際空港へと到着した。
エリア11に入る時同様、緊張してしまう状態であるが…。
あの時とはまた違う種類の緊張感だ。
恐らく、あの、ルルーシュ殺害未遂の当事者であるだけでも充分に厄介なことであるのに…。
現在は皇帝の戯れで『次期皇帝候補』だ。
相手としても厄介な相手が来る事になったと思っているに違いない。
飛行機の窓から見える空港の様子は…。
「まるで…超VIPの国賓待遇だな…」
ルルーシュが零した一言がそれであった。
確かに…仰々しい出迎えだ。
ラティスの王が空港でホワイトタイで出迎えるなど…本来、ブリタニアからの来賓であっても宰相であるシュナイゼルか皇帝くらいだ。
他の国に対しては国賓であったとしても、このようなVIP待遇はあり得ない。
「なぁ…俺…普通の騎士服でいいのか?」
「構わないだろ…。そもそも、私達がここまでのVIP待遇って云うのは何か裏がありそうだし…。それに、『ルイ家』が絡んでいる以上、彼らの思惑もあるんだ…。私は私の役目を、お前はお前の役目を果たせばいい…」
ルルーシュがさらりと返した。
元々、相手が勝手にやった事だし、こちらがそこまで相手のやる事にビビっていたらこの先、それが後を引く事になる。
「スザク…これは外交だ…。相手に付け込まれたら後々それがずっと尾を引く事になる…」
ルルーシュが着陸寸前の飛行機の中でスザクに告げる。
それは…スザク自身も解っていた事だが…。
日本も…自分の父親も結局、国力の違いと云う弱みを見せてしまったから付け込まれた。
そして、その時に、他の国に対しても助けを求める事が出来なかった。
その結果、日本は、『エリア11』となった。
「そうだな…」
「相手が最敬礼しているからと云って、相手がそれを必要だと判断しただけだ。私達はこれでいいと云う判断でここに来ている。だから、そう気にする事はない…」
ルルーシュの様子は落ち着き払っているが…。
ただ、周囲の建物の配置や停車している車などのチェックを入念にしている。
―――そうか…暗殺の恐れか…
流石にこんな世界中のカメラが来ている中で堂々と暗殺するような真似はしないだろうが…。
尤も、今、この状態でルルーシュを暗殺する様な事があれば、ラティスの方がブリタニアに付け込まれるのだが…。な
ルルーシュが恐れているのは…。
ルルーシュが消える事で、ラティスとブリタニアに決定な的な亀裂が入る事を望んでいる反シュナイゼルの勢力もあるし、『ルイ家』もラティスと深い関わりがある分、どんなアクションを起こしてくるか解らない。
ラティスが国の方針でルルーシュを暗殺する事は考えにくい。
まして、こんな空港では…。
ただ…現在のブリタニアの状況を考えると、敵はラティスじゃなくて、自国の他の勢力である…と云う事は事実で…。
正直…こう云った場面ではかなり厄介な相手であると…ルルーシュは思っている。

 タラップを降りて行く…。
エリア11に…日本に降り立った時とは大違いだ。
「ようこそ、ラティス公国へ…。私が国王のガイウス=アウル=ラティスです…」
「この度はこのようなお出迎え…恐縮で御座居ます。神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアで御座居ます…。後ろにいるのが、我が騎士、枢木スザクで御座居ます。以後、色々とお世話になるかと思いますゆえ…どうぞ、頭の片隅に置いてやって下さい…」
ルルーシュがそう、自己紹介とスザクの紹介をした。
互いに丁寧な言葉を使い、傍目には和やかな雰囲気を作り出しているように見えるが…。
しかし、周囲も当事者たちもかなりの緊張状態である。
マスコミ関係者達はそんな緊張感を世界に発信する訳にもいかず、どのアナウンサー達も『和やかな対面…』との報道をしているし、新聞記者達もそう伝える記事二すべくメモを取る。
ただ、この場にいる者達には確実に解る緊張感…。
実は、いつ戦争が起きてもおかしくない状態にいる中…。
神聖ブリタニア帝国が堂々と…しかもつい最近、皇帝が条件付きであるし、単なる戯言と云う噂まで流れているが、自らの後継者と指名した皇子を送りこんで来ているのだ。
しかも、僅かな護衛だけを連れて…。
この皇子の実力は何かの形で耳に入ってきている。
それが、デフォルメされたものであれ、真実であれ、何かあった時には確実に外交問題に発展する。
一部の噂ではルルーシュに何かあった時の為に既に、神聖ブリタニア帝国の宰相であるシュナイゼルが軍備を整えて待機していると云う話しまである。
それが真実である事はここでは、ルルーシュと、ルルーシュと共に飛行機に乗ってきた者達しか知らない事…。
流石にラティス公国と縁のある『ルイ家』も伝えたところで、シュナイゼルが本気で歓待を率いてラティスに乗り込んでしまったらどうにもならないし、ラティスが敗れた時にはルルーシュの殺害未遂から全ての罪を問われる事になる。
それに、ルルーシュもこのラティスはかつて、戦場に立つ立場として降りている事は、周知の事実だ。
「では、これより王宮へと御案内致します。殿下方には離宮の一つをご用意させて頂いております…」
「お心遣い…感謝致します…」
二人の会話を…黙って聞いているだけだが…。
これほど心臓に悪い会話もない物だと思った。
そして、レジスタンスのリーダーがこんな場に居合わせていると云う事に…なんだか不思議な感じがする。
―――こんな事で…俺はルルーシュの為に何か働けるのか…?しっかりしろ!
二人の間に様々な思惑と謀略、策力が見え隠れする様な会話の中…。
スザクはこの慣れない空気に戸惑っていた。
しかし、それを表に出す訳にもいかない事は解っていて…。
なんとか表面上取り繕いながらも絶対にこちらに話しが振られない事をただ祈っていた。
これが、国のリーダーの息子だと云うのなら…。
もし、あのままスザクの父が生きていたら…自分もこんなギスギスとした空気の中に和やかな空気を装いつつ、こんな会話を繰り広げていたのだろうかと考えてしまうが…。
―――俺には絶対に真似出来ないな…。
素直にそう思ったのだった。

 とりあえず、晩餐会まで時間があると云う事で、案内された離宮に入った。
正直、こうした席はルルーシュ自身も得意な方ではないし、常に、陰の働きに徹していた為に、こうした表向きの舞台と云うのは、皇族だから知っていると云う程度で決して慣れている訳ではなかった。
「はぁ…やれやれ…。皇帝陛下の戯言に付き合わされる方は大変だ…」
やっと、スザクと二人になって少し、安心したのかそんな事を零した。
どこで誰が聞いているか解らない…と云う事はあったが…。
しかし、ルルーシュだってあのような戯言を云われた後、公式にルルーシュの意思については発表されていない。
だからこそ、様々な思惑が絡み合っているこの場所でなら好きな事を云って、逆にルルーシュを狙う者達を混乱させてしまった方が色んな意味で楽かもしれないとは思った。
正直、ルルーシュが皇帝になどなるつもりはないのは事実だし、周囲が慌しくなってきていて、しかも、皇帝の言葉であったのだが、その皇帝からもその後、公式な発表をされていないものだから、周囲としては混乱状態に陥っているわけだ。
だとするなら、真偽のほどがはっきりしないと云う事なので、その状況を利用して周囲の注意を皇帝が云ったらしい、次期皇帝候補についての話しに周囲が色々想像してくれていればいいとは思っている。
ルルーシュ自身、あの場でその様な事を云った父に対して、あの言葉など真実味の…現実味のない話しに聞こえていたのだから…。
「ルルーシュ…滞在期間は1週間…。毎晩のように晩餐会があって、昼間は公式訪問の数々…。凄いスケジュールだな…」
「まぁ、仕方ないだろ…。観光に来ている訳じゃないんだ…。と云うか、私は観光旅行と云うものをした事がないからな…」
ルルーシュの言葉に…スザクはまた、何かを思ったらしい。
いつも顔に出る。
「お前はあるのか?観光旅行とか…遊ぶ為に出かけた事は…」
「そりゃ…あるさ…。まぁ、こんな大規模なものじゃないし、近所を飛び回っている延長戦だったけれどな…」
「私の場合は…お前みたいに友達と呼べる存在は…いなかったからな…。今は…もし、友達と云うカテゴリーに当てはまるとしたら…お前やライ…だな…。紅月カレンも一緒にいると中々面白い…。お前たちは私に対して遠慮なく好きな事を云ってくれるからな…」
「俺はお前を主だなんて思って守った事なんてないぞ?確かに表向きの立場はあるけれどな…。ただ、俺自身の気持ちで云えば、守りたいから守る…。一緒にいたいから一緒にいる…って感じだしな…」
スザクの言葉にルルーシュがふっと笑った。
「そう思ってくれる存在がいると云うのは…これほど嬉しい物だと教えてくれたのは確かに…お前たちだ…」
相当緊張していたのか…。
普段なら絶対に聞く事が出来ない様なルルーシュの言葉だ。
―――そうか…ルルーシュも緊張していたんだな…。まぁ、当たり前だよな…。ずっと…陰の存在で功績を上げていて…表舞台に上がらないのに名前が有名になったんだからな…。こう云った場面ってのは経験…少ないよな…。

 とりあえず、離宮内を一回りしたが…。
ブリタニアの王宮の、『ヴィ家』に与えられているアリエス宮よりもやや狭い…。
元々国土が広い国ではない。
都市国家より少し広い程度の国だ。
人口比を考えた時に、王宮にだってそれほど広い土地を割く事が出来ないと云うのは何となく解る。
日本も、ブリタニアの王宮の様に全ての敷地を回る為に車が必要な広さを一個人の為に提供されたらそれこそ、迷惑な話になってしまう。
「ルルーシュ…シュナイゼル殿下が付けて下さったSP達の部屋をそれぞれ確保されているし、俺もお前の隣の部屋が用意されている。アリエス宮ほど広くはないが、大罪には困らない様だ…」
「ブリタニアの王宮が広すぎるんだ…。このくらいの方が落ち着く…。それに、このくらい狭い方が、異質な気配には気付き易くなるからな…」
ルルーシュがそう云いながら、窓の方を見た。
ルルーシュは武道をやっている訳ではないし、肉弾戦をやらせたら軍人相手では到底敵わない。
しかし、こうした気配には敏感だった…。
それは、自身に自信を守りきれるだけの力がないからと云う事…。
スザクが現れるまで四六時中共にいられる騎士がいなかったと云う事…。
それらが重なってこうした気配には敏感に反応できるようになっていた。
「到着早々…いきなりか…」
「殺すな…。どうせ口は割らないだろうが、喋り方などでかなりの情報が得られるからな…」
ルルーシュとスザクの小声でのやり取り…。
「イエス、ユア・ハイネス…」
スザクがそう云って部屋を出て気配を殺した。
そして、ルルーシュの方は知らん顔をして部屋の中の物色をし始める。
すると…その部屋の窓の外の気配が動いた。
ルルーシュはその事は完全に無視して、その部屋に置かれている書籍を一つ一つ眺めてその中の熱めのハードカバーの本に手をかけた。
その時…。
―――ガッシャァァン…
窓が壊される音…。
空港での警戒体制から、王宮内で遠くから狙い撃ち出来るほど、警備は甘くはない。
それに、そんな甘い警備であったと云う事になれば、ラティスはブリタニアだけでなく、世界からの信用を失う事になる。
それゆえの…直接攻撃…。
そして、ここに入り込める人間は限られているが、ルルーシュにとって、この国にいる限り、命の安全が保証される場所などありはしないのだ。
「スザク!」
―――バン!
扉をぶち壊さんばかりの勢いでスザクが入ってきて…。
その後ろには…。
ルルーシュとの距離が短いのは…賊の方で…。
それでもルルーシュは顔色一つ変えない。
スザク達がじりじりと囲む中…その賊がルルーシュの手首を掴んだ。
その時点でルルーシュがにやりと笑い、その賊と向き合った時に指輪に仕込まれていた針をその賊に突き刺すと…。
その賊は目を見開いて…その場に崩れ落ちた…。

 ルルーシュがその賊から離れて、目配せして、自分の護衛について来たシュナイゼルの部下達にこの属を拘束する事を命じた。
「初日からか…。まったく…」
「ルルーシュ…あの賊…」
「ああ…どう見てもラティス人には見えないな…。まぁ、何も情報がない時に想像だけで色々決めつけるのは危険だ…」
ルルーシュはその指輪の飾りを元に戻して、スザクに云った。
「お前…普段からそんな物騒な物を?」
「敵地に入る時にはな…。少なくとも、政庁や屋敷では指輪などしていないだろう?」
「まぁ…確かに…」
本当に、ルルーシュの生きて来た場所が…どんな場所であるのかが良く解る発言だ…。
「今回も…ライやジェレミアが来ていればそんなものを身につけるつもりはなかったがな…。シュナイゼル異母兄上の付けて下さった者達を信じていない訳じゃないが…それでも、気心を知れている者とそうでない者では…どうしても普段とは違ってくるだろう?」
云っている事は解る…。
確かにその通りだ。
彼らはシュナイゼルの部下であって、ルルーシュの部下ではないのだ。
シュナイゼルがどのような命令を彼らに下しているかは想像がつくけれど…。
それでも、ああ云った時に何も云われずに動けるのは…。
「ルルーシュ…さっきの奴…」
「ああ、可能性としては、『ルイ家』を疑うのが妥当だな…。ラティスの王宮のこんなに奥深くに忍び込めるなど…。内部協力者がいなければ出来ない事だ…」
「じゃあ…国王も?」
「可能性としては考えていた方がいいとは思うが、まだ、断定的に決まった訳じゃない。シュナイゼル異母兄上の部下達は有能だ…。あの賊がどこから来たかくらいはちゃんと把握して私のところまで報告に来るだろう…」
ルルーシュの頭の中では…。
様々な可能性が羅列されているに違いない。
ただ、これまでのルルーシュの立場であれば、そう心配する事もなかった相手が敵となっている可能性もある。
ブリタニア皇帝のあの発言によって、ルルーシュの周囲が大きく変化している…。
だからこそ、ルルーシュもどう判断を付けていいのか迷うところなのだろう。
決めつける事は出来ない。
かと言って、疑い始めるときりがない…。
「スザク…」
ルルーシュがスザクの名前を呼んだ。
「なんだ?」
スザクは普段と変わらない様子で返す。
そんなスザクに対してルルーシュが言葉を続けた。
「この先…ラティスでは確実に私は常にアサシンのターゲットだ。これを皮切りにどこにいても命を狙われるだろう…」
ルルーシュの言葉…。
もの凄く重みを感じる。
自分でその事を自覚しているのに、ここまで冷静に話しが出来るものなのか…と思えてくるが…。
「スザク…お前がブリタニアを出発する前に…お前がシュナイゼル異母兄上と話していた事を覚えているか?」
ルルーシュが云っているのは…
『もう、自分は殿下に対して…かすり傷一つ、負わせるつもりはありません。自分は、殿下の盾になるべく…きっと、倒れはしません…。殿下の為に…』
の事だろう。
「ああ…」
「ならば…改めて命じる…。お前は決して倒れず…私を守れ…。私がここで死んだ後…ナナリーの問題だけではなくなってしまった…。だから…お前は私を守りつつ…お前も死んではならない…。いいな?」
スザクはこの時、ルルーシュに笑いかけてこう答えた。
「解った…。お前がそう望むなら…俺は絶対に死んだりしない。きちんと役に立つ盾として…お前の傍にいる…」

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年10月30日

皇子とレジスタンス 〜思い知る立場〜

 皇帝の突然の発言により、ルルーシュの周囲が一変した。
皇帝のその突然の発言直後からルルーシュの周囲に人が多く集まりだしていた。
ルルーシュに媚びる者、ルルーシュの命を狙おうとする者…。
予想はしていたものの…実際にここまで過酷なものである事を知ったのはこの時だ。
確かに、マリアンヌの遺児であり、現在ではシュナイゼルのお気に入りの異母弟で片腕としての功績も有名で…。
しかも、ブリタニアの植民エリアの中で最もテロ活動が盛んなエリア11をまとめ上げて、現在では自分の実の妹姫、そして、異母妹姫に総督代行を任せていられるというほどまでの安定を作り上げた。
その実力やシュナイゼルの(ルルーシュにその自覚があるかどうかはともかく)後ろ盾により、ルルーシュの名前は色んな意味で知れ渡っている。
エリア11に入ってからのルルーシュの働きは目覚ましかった。
だから、その功績を知ったブリタニア国内の貴族はもとより、これまで皇位継承権の低い皇子として見向きもしていなかった国外の国家元首や大企業のトップたちがこぞってルルーシュの花嫁候補を送りこんで来た。
当然、そのルルーシュに脅威を感じている者達も数多くいたから、ジェレミアやヴィレッタ、キューエルの陰の働きは相当なものだった。
それでも…ルルーシュはパーティの席で刺されたのだ…。
あの時でさえ、そんな状態だったのだから、皇帝の気まぐれ発言とは云え、世界を揺るがす様なあの発言によって、ルルーシュの周囲には本当に、様々な人間が寄ってきていた。
それこそ、媚を売る者、あからさまな殺し屋を送って来る者、そして、最も厄介などこにいても襲ってくる暗殺者…。
―――ドサッ!
一人の男がルルーシュの目の前に倒れた。
「大丈夫か?」
「ああ…スザクこそ…済まない…。私が…」
「今そんな事を云っていてどうする!ったく…本当に解り易いな…」
「私がシュナイゼル異母兄上の下に就こうと思った理由が解るだろう?」
目の前でスザクの全力の蹴りを腹に受けて気絶している男を見降ろしながら二人が会話を交わしている。
「とりあえず、さっさとアリエス宮に戻ろう…。もう、出発までアリエス宮からでない方がいい…」
スザクがかすり傷負う事無くルルーシュに進言する。
恐らく…シュナイゼルとのやり取りでシュナイゼルに云いきったあの言葉を忠実に守っているのだろう。
確かに…命懸けで守ると云うのは簡単だが…。
ただ、その後、ルルーシュの守りがいなくなれば、守った事にならない。
スザクはどこまでも強くあらねばならないし、これでラティスに赴いたら複雑な状況の中、ルルーシュの命を守りながら、ルルーシュの補佐をしなければならない。
シュナイゼルが後から自分の軍を率いてやって来ると云っていたからには、恐らく、既にラティスとは戦争状態にある。
その中での交渉だ。
一つ間違えれば、そこから戦闘が始まるという事にもなりかねない。
ただ、ラティスもそこまで考えなしに動いてルルーシュを殺すという事は考えにくいが、そこにブリタニアの皇族が絡んでいるとなれば、恐らく、ルルーシュの命を狙われると云う事も考えた方がいいだろう。

 やがて、ラティスへの移動となるのだけれど…。
見送りの際にシュナイゼルからはシュナイゼルの護衛役を数人、付けられた。
確かにそのくらい厄介な状況下にあるという事なのだけれど。
その事にスザクは少々ムッとしていた。
ルルーシュはそれに気づいていなかったようだけれど、シュナイゼルがそんなスザクにふっと笑った事には気付いた。
二人の中でのどんな思惑が渦巻いているのか、ルルーシュには解らないのだけれど、当人達は承知している。
飛行機の中で…
「私がシュナイゼル異母兄上の軍に入ったばかりの頃も…色々うるさ方が出てきたが…。今回は私に関わろうとする者たち全員が必死だな…」
「お前がシュナイゼル殿下の下で働くようになったのって…」
「9歳の時だ…。母上が殺されて…その時に私がお願いしたんだ…」
その話しは…ルルーシュはあまりしたがらない。
ルルーシュ本人が母の亡骸を見つけたという…。
今も、使っている言葉だけなら確かにそれほど気にしている様には見えないけれど…。
口調は表情は…ルルーシュの内心を物語っている。
それでも、ここでルルーシュに対しての同情の言葉は…ルルーシュは望まない。
「そうか…」
だから、スザクはその一言だけを返しただけだった。
正直、何を云えばいいのか解らないというのもある。
ただ、スザクに対してこうした形でこの話題で言葉を返すのは、スザクも自分の肉親を暗殺と云う形で亡くしているからだろう。
ルルーシュはその事について、決してスザクに追求をして来ない。
自分自身が、その痛みや傷を知るからだろうか?
ただ、現在、ルルーシュがその暗殺される為のターゲットになってしまっている。
「母上も…自分の立場をよくご存じだっただろうから…。常にこうした形で暗殺を懸念していたのだろうか…」
ルルーシュがぼそりとそんな事を呟いた。
スザクはそんなルルーシュを見ていて…『何を今更…』と思ってしまうが…。
こう云う場合の暗殺とは、その人物の人柄とか、人望とかは関係ないのだ。
それは…スザクが自分の父親を当時の日本政府の人間に暗殺された事からも…そして、スザクの父親自身が、常にその暗殺と云う闇を意識していた事も知っていたから…そう思うのだろう。
だからこそ、スザクの父親はスザクを厳しく育てたのかもしれない。
武道の心得や周囲を見る視野の広さなどは、そうやって培われてきた事は、今更確認しなくても解っている。
「ルルーシュ…こうした政治の上に権力と云う魔物が存在している場合は当然の事だろう?お前の母親は庶民の出でありながら皇帝の血を引く子供を二人も生んでいるんだ。その事実だけで暗殺の理由は充分だろ?」
あの王宮が魑魅魍魎の住まう場所だと評したのはルルーシュだ。
ルルーシュもスザクに指摘されて苦笑してしまう。
「確かに…。だとすると、お前は相当な貧乏くじを引いたな…。守るべき後見が少ない私の専任騎士になど…」
「お前な…いい加減その思考をやめろ…。俺は殺されやしないから…。って云うか、あの程度のアサシンで俺を押しのけてルルーシュを暗殺出来るとでも思っていること自体俺としては心外だ…」

 スザクのその言葉には本当に説得力がある。
ルルーシュは当然の事…スザク自身もかすり傷一つ負っていない。
「有難う…スザク…。あんな形でお前を私の騎士にしてしまったというのに…。でも、約束する…。必ずお前に日本を返す…。勿論、皇帝になどなるつもりはない…。でも…」
「おいおい…俺にお前以上の執政をやれとでも?確かにブリタニアからの独立をしない事には確かに話しが始まらない事は確かだけれど…それは、日本人たちが自分達の意思で立ち上がり、自分達の力で成し遂げるべきだ…。ブリタニアの皇子であり、ここまで日本を導いてしまったお前がお膳立てする事じゃない…」
「本当に…それでいいのか?私があのエリアの総督をしている限り、日本は…」
「それはそれで仕方ない事だ…。俺もレジスタンスをやっていたから解るけれど…結局、国の独立ってのはその国に元々住んでいた人間が立ち上がらなければ何の力にもならないし、もし、お前がお膳立てしたという事になれば、恐らく、ブリタニア自体が混乱状態になる。そうなったら、世界最大の力を持つブリタニアが揺らげば世界に広がるだろ?」
スザクが淡々と話している。
ルルーシュにはそのスザクの意図がイマイチよく見えていない。
「今の世界はいいにつけ、悪いにつけ、ブリタニアのその強大な力によって成り立っている事も事実だ。そして、独立ってのは本当に必要となり、ブリタニアの力が及ばなくなった時にちゃんと成し遂げられるものだ。逆に、今、ルルーシュがその権限を使って強引に日本を独立させたりしたら、今度は日本の経済も政治も治安も立ちゆかなくなるぞ?」
政治家の息子だったと証明する様なスザクの言葉に…。
ルルーシュは少し目を丸くした。
そこまで考えてレジスタンスをやっていたのかと…。
これまで、様々なエリアで反体制勢力を鎮圧してきたけれど…こんな形で将来を見据えている者とは出会った事がなかった。
それ故に驚きも大きいと云えるだろう。
「スザク…お前は…私の騎士となっている。その本意はどこにあるか…教えて貰えないか?」
「???どう云う意味だ?」
「今、お前は私と対等に話す立場にいる。恐らく、スザクの様なポジションの人間は私の中でも初めてなのだが…。もし、私の望んでいるそのポジションであると、スザクが思っていてくれているのであれば…私は…お前に対して無二の騎士として、命じたい事がある。その命令に関してはお前には拒否する事も認めよう。拒否したからとてお前に対して罪を問う事はない。だから、私は騎士に対して命ずるが、お前は私と同じ立場として、対等の立場として私の言葉を聞いて欲しい…」
「お前…一体何を考えている?」
「私が質問してる…。それにお前が答えてから私もその質問に答えるかどうかを決めよう…」
ルルーシュのその言葉と、その目に…スザクはため息を一度吐いた。
「解ったよ…。とりあえず、お前の質問とやらを聞くよ…」
スザクのその言葉にルルーシュはこれまでに見た事がない笑みをスザクに向けた。

 ルルーシュの乗った飛行機が飛び立ったのを見送り…シュナイゼルがカノンに視線を送る。
「よろしいので?」
「ルルーシュの考えそうな事は解るからね…。まったく…皇帝陛下も私に喧嘩を売る様な事ばかりなさる…」
シュナイゼルがふっと笑いながらそんな事を零した。
「殿下…まさか本当にルルーシュ殿下に…」
「あの子は望んでいない事だとは解っているけれどね…。ただ、私はやはりあの子を愛しているのだよ…。昔から…あの子だけは、何の邪心も野心もなく慕ってくれていた…。だから…私はあの子を手放せない…。こんな人間が皇帝など…笑ってしまうだろう?」
シュナイゼルの…これまで聞いた事のない様な本音に…カノンも少し驚いたようだけれど…。
それでも、そのシュナイゼルの心は傍にいてよく解る。
いくら、有能な皇子として存在していても、その能力が世界中に知らしめらているとしても、シュナイゼルとて人の子…と云う事だった…。
カノンの中では少々複雑な気持ちになってしまう。
「カノン…君は私を皇帝の座に着けようと頑張ってくれていた事は知っている…。だから、この先は君の好きなようにすればいい…。君が私の敵に回ると云うのであればそれも仕方ない…。が、それでも私はルルーシュを全力で守る立場に立とう…」
シュナイゼルの本心を…長年仕えて来て初めて聞いた様な気がした。
カノンはくすりと笑って答えた。
「シュナイゼル殿下…私は貴方に皇帝の座を…と望んで来た事は事実ですが…。私は貴方の身分や地位に忠誠を誓った覚えは御座居ませんよ?」
カノンの言葉にシュナイゼルが少しだけ驚いた顔を見せるが、またふっと笑った。
「君はもっと頭のいい人物だと思っていたが…」
「私は決して頭の悪い人間では御座居ませんわ…。だからこそ、貴方様にお仕えすると決めたのですから…。しかし…骨の折れる仕事になりそうですわ…」
「済まないね…」
「心にもない謝罪でしたら、ご遠慮申し上げますわ…。それに、ご自身の決めた道の為の命令に謝罪をして欲しくはありませんもの…。それに、こんなにやりがいのあるお仕事…他の人間に盗られてしまうのは勿体ないですわ…」
そう云って、カノンはシュナイゼルの命令を遂行すべく踵を返した。
その後ろ姿にシュナイゼルはもう一度声をかけた。
「頼んだよ?カノン…」
カノンは一度振り返り、答えた。
「イエス、ユア・ハイネス…」
カノンの姿が見えなくなると…シュナイゼルは自分専用の回線の通信機を出した。
そして…
「私だ…。ロイド=アスプルンドを出してくれ…」
シュナイゼルは自分の中に決めた策を施す為に…エリア11のもう一人のルルーシュに預けた腹心に連絡を入れる。
『お久しぶりですねぇ〜〜〜シュナイゼル殿下…。一体どうされたんですかぁ…?』
相変わらずの腹心にシュナイゼルがふっと笑った。
「ロイド…頼みたい事があってね…」
『ルルーシュ殿下の事ですかぁ?こっちでも大騒ぎですけどぉ〜〜〜』
「だから…君に頼みたい事があるんだ…聞いてくれるかい?」

 シュナイゼルが淡々と通信機の向こうの相手と話しをしている。
『どうせ、ろくでもない事をお考えなんでしょうぉ?僕の大事なデヴァイサーを捕ったりしないで下さいねぇ???』
どうやら、相手も一筋縄ではいかない相手だとシュナイゼルも不敵に笑った。
しかし、シュナイゼル自身、引くつもりは全くない。
「ライがいるだろう?それに、ルルーシュが皇帝となったら彼はナイトオブワンだ…。どの道…」
『殿下?やっぱり悪い事を考えていますねぇ?まぁ、話しだけはお聞き致しましょ…。返事はそれからでもよろしいですかぁ?この回線でつないで来たって事は、絶対に誰にも知られちゃいけない事を考えているんでしょう〜〜〜?』
流石に長年シュナイゼルに仕えているだけの事はある。
察しがいい。
「周囲に人は?」
『この回線につないできといてその質問はあり得ないでしょう?さっき出た通信士もここには居ませんし、ここは監視カメラも盗聴器もない部屋ですよ…』
「なら良かった…。まぁ、暫くルルーシュはそちらには帰れないからね…。否、二度とルルーシュが『総督』としてエリア11に戻る事はないかもしれないけれど…」
『まぁ、あの騒ぎが本当なら殿下がこのエリアに来られるのは皇帝としてしかありえませんからねぇ…。失敗してしまえば基本的にこの世からも…』
ロイドがそこまで云った時、シュナイゼルが眉をしかめる。
シュナイゼルにとって一番なってはならない事態を口にしようとしたからだ…。
「ロイド…冗談でも、仮の話しであってもその先を口にしたらたとえ君でもタダでは済まないよ?」
いつもの温和なシュナイゼルの口調とは全く違うその口調に…耳にあてたスピーカーからあからさまなため息が聞こえてきた。
相手の方もまるでシュナイゼルを試して居ました…と云わんばかりである。
『そんな事をしたら…一番辛い思いをするのはルルーシュ殿下ですよぉ?よろしいんですかぁ?』
「ルルーシュの意思よりも、私の気持ちが最優先だ…。正直、自分がこんな風に考えるなんて、信じられないくらいだよ…」
もう一度、ロイドのため息が聞こえてきた。
『なら、なんでエリア11にルルーシュ殿下を送ったのです?枢木スザクの存在は解っていた筈でしょう?』
「そうだね…私とした事が迂闊だった…。でも、これ以上、ルルーシュがあのイレヴンに対して心を傾ける事は…」
『そんな事を云ってぇ…。そんな事をしていたら本当に嫌われちゃいますよぉ?』
「私の目の届かないところに行くよりもましだろう?皇帝の椅子でさえ私はあの子にだったら譲ってもいいと思っているのだよ?」
『だったら、シュナイゼル殿下が皇帝の座に着いてルルーシュ殿下を最小にすればいいだけの話し…』
「それがうまく行くと思うかい?事がここに至ってしまって…だとしたら、私はルルーシュに憎まれようと…私の目の届くところに置いて守らなくてはならないのだよ…」
更にスピーカーからため息が聞こえてくる。
しかし、シュナイゼルにとってそんな事はどうでもいい事だった。
『仕方ありませんね…どうしたらいいんですかぁ?』
「これは内密の話しだ…。君一人に遂行して欲しいのだが…」
『まぁ、見当はついていますけれどねぇ…。とりあえず、詳細をお話し下さい…』
ロイドのその言葉に…
シュナイゼルが現在のシュナイゼルの中にある策を話した。
大体、時間にして5分程だっただろうか…。
『本気なんですかぁ?それ…』
「くどいね…ロイドも…。頼めるかな?」
『逆らう余地なんてないくせに…。解りましたよ…何とかしましょう…』
その返事にシュナイゼルは一言礼を告げて、通信機を切った。
そして…ルルーシュ達の乗った飛行機の向かった方の空をじっと見つめていたのだった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年10月24日

皇子とレジスタンス 〜戸惑う現実〜

 まるで、権力者の気まぐれの様な発言により、ルルーシュの周囲は急変する。
慌しく、めまぐるしく、ルルーシュへの面会を求める者達がアリエスの離宮を後を絶たない。
ルルーシュとしてはこれからラティスに向かう為だけにわざわざ本国に立ちよっているわけで…。
数日間の滞在の筈なのに、随分長い事、このブリタニアの王宮にいるような気がしていた。
「大丈夫か?ルルーシュ…」
正直、うんざりした表情を隠す事の出来ないルルーシュに対して、これまた、あの皇帝の発言以来、色々な意味で、周囲の見る目の変わってしまった騎士であるスザクが訊ねてきた。
「大丈夫だが…権力者の気まぐれと云うのも迷惑この上ない…。と云うか、これで、あの発言が撤回されない限り、私はラティスでの交渉を失敗できない…。しかし、成功したとしても…」
少々疲れた表情を見せるルルーシュの事が気になる。
普段は、決して自分の内面を見せる事のないルルーシュだが…。
現在、シュナイゼルが配置してくれた警備兵がいるが…。
それでも、ルルーシュの場合、自分自身の家臣と云う存在が非常に少ない。
現在、『ヴィ家』に従っている者たちも基本的にはルルーシュの母であるマリアンヌに仕えていた者たちであり、ルルーシュ個人が選んだ家臣ではない。
ルルーシュが自分で決めて、傍に置いているのは、敢えて云うのであれば、スザクとライだけだ。
彼らはルルーシュの立場を知り、そして、ルルーシュ個人に対して従っている。
スザクに至っては、完全にルルーシュと対等の立場としての存在であり、ルルーシュが心を最も心を許している存在である事は確かなのだけれど…。
ただ、ルルーシュには有力な後見がないのだ。
アッシュフォード家もエリア11などと云う本国の人間から見たら僻地である植民エリアでその存在感を示している様な貴族だし、ジノのヴァインベルグ家にしても、ジノがラウンズであるからなんとかその地位を維持しているという部分は否めない。
ルルーシュが本国に帰ってきても、挨拶にさえ来る事が出来ずにいるような状態だ。
力のない者たちの扱いは、ブリタニアではそう云う事になる。
と云うか、どこの世界であれ、力のない者たちは力の強い者に逆らう事が出来ずにいるのはごくごく当たり前にある。
ただ、ブリタニアの場合、それが極端であるという事は否定できないが…。
もし、力があれば…。
ルルーシュだってあの場で、皇帝のあの言葉を拒否する事も出来たのだ。
しかし、今のルルーシュに皇帝に逆らい、そして、現在、エリア11の総督代理としての任に就いているナナリーを守る事は到底できない。
失敗すれば、それはルルーシュはその先、ブリタニアの皇族として今よりも力を持たない存在となる。
ここまで、幼い頃からシュナイゼルの下で働いてきた功績が無になると云う事だ。
逆に成功すれば、望まぬ皇帝の座に着く事になる…。
―――どちらにせよ、成功しても失敗しても…私にとってはロクな事にならない…
ルルーシュの中の思いはそんなところだ。
それに、今の段階では確実にルルーシュの命を狙う者、ナナリーの命を狙う者がはいて捨てるほど出てくると云う事になると云う事だ…。

 その事をすぐに気付いたルルーシュがアリエスの離宮に着いてから先ずした事は、エリア11の政庁にいるジェレミアへの連絡だった。
その情報はあっという間に広まったらしく、エリア11の政庁でも相当な騒ぎとなっていたようだ。
そして、ジェレミアに命じ、アッシュフォード家からも護衛を集めるように指示し、そして、その次にコーネリアの任地に連絡を入れ、ユーフェミアの護衛を強化するように願い出た。
コーネリアの方も情報が届いたばかりの様だったが、その状況が一体何を意味しているのかよく解ったらしく、判断も早かった。
自分がこれまで共に戦って来た者たちが有能であった事にこれほど感謝した事はない。
そして…
―――コンコン…
「どうぞ…」
ルルーシュの方も呆けてばかりもおられず、次から次へとやって来る招いた覚えのない客をあしらう事に現在は相当疲れも出て来ていた。
「ルルーシュ…大丈夫かい?」
入ってきたのがシュナイゼルの姿と解るとほっとして自分のすぐそばにある椅子に力が抜けたように座り込んだ。
「お…お騒がせして…申し訳ありません…。いえ、それよりも…」
「ルルーシュ…君が云いたい事は解るが…それは君が気にする事ではないよ…。ただ、大変な事になっているし、先ほど、私のところに『ルイ家』から使いが来た…」
ラティスと深いかかわりがあるであろう…皇族…。
「あの…パラックスは…?」
「大変な事になってしまったからね…。今は合う事は叶わないよ…。それに、君は今、迂闊に出歩く事は出来ない。2日後のラティスへの出立までここは落ち着かないし、ラティスに行ったところで落ち着かないと思うけれどね…」
「あの…異母兄上…異母兄上は…」
ルルーシュが気になっている事をシュナイゼルに訊ねようとするが…。
しかし、うまく言葉が出て来ない。
これまで、ずっと、国内外問わず、ブリタニアの次期皇帝の椅子に一番近い皇子と呼ばれていたのはシュナイゼルだ。
ルルーシュは第17位皇位継承者であり、簡単に云うと、皇位に関して云えば、誰の眼中にもなかった皇子と云える。
「ルルーシュ…別にそれは周囲が勝手に云っていた事だ…。別に皇帝陛下からそんな言葉を賜った事はない…。その事をルルーシュが心配する必要などどこにもないのだよ?」
「しかし…」
ルルーシュはこれまでシュナイゼルの庇護の下、その力を発揮している。
そして、シュナイゼルがいたからこそ、ナナリーを守る事が出来る立場として居られたのだ。
「ルルーシュ…今回の事…皇帝陛下の戯れだと思うかい?それとも、ルルーシュを試していると思うかい?その違いによって君のこれからの働き方は変わって来ると思うのだけれどね…」
相変わらずの異母兄の態度に…ルルーシュは少しだけ戸惑った。
ルルーシュの中では将来、シュナイゼルが皇帝となり、そして、ルルーシュはその宰相となるべく努力を続けてきたのだから…。
「私は…皇位など望んだ事がないので…正直、今の状況を把握する事さえ…出来ていない気がします…」
ルルーシュが力なく、シュナイゼルにそう訴えた。

 ルルーシュのその言葉に…。
シュナイゼルも確かにそうであろうと…そう思っているらしく、小さく息を吐いた。
「ルルーシュ…それでも、今はそれが君の現実だ…。自分の意思はともかく、自覚しなければ、守りたいものを守る事もままならないよ?君にとっては酷な話かもしれないけれどね…」
シュナイゼルが冷静にそう云っている。
いつもと変わらず、そして、何を考えているのか全く解らないという事までいつも通りだ…。
「異母兄上は…私が皇帝になってもその心中はなんとも思わないと?貴方は私などに頭を下げるなど出来る筈が…」
ルルーシュが半ば激昂してシュナイゼルに訴える。
シュナイゼルの何を考えているか解らない状態が怖いと云っている様な…。
これまで、ルルーシュは決してシュナイゼルを裏切った事などなかったのに、これで裏切り者として見られてしまう事を恐れているかのように…。
「ルルーシュ…落ち着きなさい…。私はもし、君が皇帝となるなら君の宰相となろう…。君が思い描いていた逆の立場でも私は構わないよ?私は別に権力を手にしたい訳ではないのだからね…」
シュナイゼルの言葉は…淡々としている。
そして、その言葉は、ルルーシュを諭している様にも聞こえる。
「ルルーシュ…。権力と云うのはね…あくまで欲しい物を手に入れる為の道具でしかない。君だって力が欲しいと思ったのは、自分の中に守りたいものがあり、それを守る為の力が欲しかった…と云う事だろう?力そのものではなく、その力を使って他の事をしたかったというのが、君の思いだったのではないのかい?」
それまで、座り込んでいたルルーシュがふっと頭を上げて、シュナイゼルの方を見て、そして、傍に控えていたスザクの手を…意識していたのかどうかは解らないが、ぎゅっと握った。
スザクは一瞬驚いた顔を見せるが…。
それでも、すぐにその驚いた表情を引っ込める。
そして、シュナイゼルの方を見た。
「異母兄上…私は皇位を望んでなどいません…。母上の死について知りたいと思った事もありますが…それを知ったところで、母上は戻っては来ない…。だから、私は自分の近くにいる、自分の目に映る者たちと共にいられる時間と場所を守りたいだけです。だからこそ、異母兄上の下で働いて来ました…」
「それは…良く解っているよ…。私としては、ルルーシュにはもっと私を頼って欲しいと思うくらい、君は良く働いてくれているよ…」
シュナイゼルは、その現実が少し切ないという思いをほんの少しだけ表に出した。
ルルーシュがそれに気づいたかどうかは解らないが、スザクはそれに気がついた。
恐らく、今、ルルーシュが手を握っている相手がスザクであるという事が…。
シュナイゼルにとって少しだけ、切ないと思っているのだろうと思う。
「私は、皇帝になりたい訳じゃない…。ただ、大切な者たちと共にいたいだけです。今の自分の立場を自覚はしますが…それでも、その先、皇帝陛下の仰った未来に進むかどうかは…解りません…」
ルルーシュが何かを決したように云い始めた。
まだ、不安がたくさんあると云ったそんな…風に聞こえる。

 そんなルルーシュの声はほんの少し、いつもより力長い様にも聞こえているけれど…。
本当に気丈だし、聡明な子供に見える。
これまで、皇位継承など意識した事がない皇子とはとても思えない。
「未来の事は、誰にも解らない事だね…。確かに…」
シュナイゼルが少し意味深な笑みを見せながら返した。
ルルーシュはその笑みを見て、一回、大きく呼吸をした。
そして、無意識に握っているであろうスザクの手…。
その握っている手に力が入った。
「ですから、2日後に出立するまでには、現皇帝陛下から次期皇帝の座を譲り渡されると云う示唆をされた皇子としてラティスに参ります。その時、シュナイゼル異母兄上には…全面的な協力を…お願いしたいと思います…。私が望む…大切な物たちと共にいる為に…」
いくら有能とは云え、ルルーシュは未熟な子供だ。
強引に大人の世界に放り込まれてしまい、足りないものがたくさん持ち合わせたアンバランスな子供…。
シュナイゼルとしては、誰よりも慈しんでいるその異母弟の姿を見ていて…時々辛くなる。
これまで、次期皇帝となる自覚も持っていた。
それまでの争いの中心人物になるその自覚もあった。
覚悟もあった。
しかし、ルルーシュにはそれがない。
だからこそ、気丈なルルーシュがここまでの言葉を口に出しているのだろう。
「ルルーシュ、私は君を本当に大切な異母弟だと思っているし、きっと、たくさんの異母兄姉弟妹の中で君の事を一番愛している。異母兄として…。それでも、こんな家に生まれてしまったからには…その感情だけで動く訳にはいかない事もある…」
シュナイゼルの言葉は…。
それは、彼らを取り巻く現実だ。
皇族と云う普通では考えられない環境の中では、感情だけで動けない事が多々ある。
ルルーシュの場合、立場上、それでも自分の意思で動き易い立場であった事は確かだ。
このブリタニアの王宮の中では確かに居心地のいい立場にいた訳ではないし、歯を食いしばりながらその状況に耐えなければなない事もたくさんあった。
シュナイゼルとて、ルルーシュとは立場は違うし、環境は違うが、この複雑な皇族と云う枠組みの中に組み込まれた皇子の一人で、そして、自分の本当に大切な異母弟に『愛している』と云ってもどこまで信じて貰えているのかさえ解らない立場にいるのだ。
「解って…います…。これまで、私は随分自由に動いてまいりましたし…自覚が…足りなかった事は否めません…。御心配をおかけして申し訳ありませんでした…」
ルルーシュが力なく、そう告げる。
確かに、これまでこの世界に対しても強い影響力を持つ大国の皇帝から、戯れであったとしても条件付きではあるものの、後継者として指名されたのだ。
その条件を全うできなければ…ルルーシュは自分がこれまで培ってきたものが全て崩壊する事になり、そして、守りたいものを守る事が出来なくなるという…。
どちらにしてもルルーシュとしては有難くない状態となった訳であるが…。
「それでもね…ルルーシュ…。私は自分で出来る限り、君を最優先したいと思う…。本当は、何かも捨てる事が出来れば…良いのだけれどね…」

 そんな風に云いながらルルーシュの頬に優しく手を触れる異母兄に…。
申し訳ないという思いと、『流石に人の心を惑わすのが上手な方だ…』と云う思いが交錯する。
「異母兄上…今はまず、自分の目の前にある任を果たします。皇帝陛下の戯れに関してはその後、ゆっくり考えます…。それまで、私の騎士には、苦労をかける事になるとは思いますが…」
漸く、少しだけルルーシュの気持ちが落ち着いたようで…。
少しだけ、前を向いているという言葉に聞こえてきた。
「そうだね…。そんな風にゆっくり考えている暇はないね…。では、ルルーシュ…まず先にラティスに行ってくれ…。私は全ての準備を整えたら、私の軍を率いて行こう…。どの道、ラティスはこのままで済むとは思っていないだろうからね…」
「確かに…私が生き延びてしまった事で予定が狂っているでしょうから…。今度は厄介な肩書つきで赴く訳ですから…相手としてはさっさと消えて欲しいでしょうね…。私を消そうとしている…異母兄上の対立勢力と共に…」
そのセリフを云っている内に…ルルーシュは、神聖ブリタニア帝国宰相の右腕の顔となっていた。
「まぁ、そちらの方も放っておく訳にはいかないね…。恐らく、そちらの尻尾を掴んでから、私はラティスに向かう事になると思うけれどね…」
「そうでないと私がラティスに行く意味がないでしょう?」
「確かにね…」
今の会話は…先ほどまでの異母兄弟の会話ではなく…。
宰相とその部下の会話となっている。
その切り替えの速さにスザクは感心しつつも、スザクの手を握るその細い指の力が抜けていない事に気づいていない訳ではない。
「枢木君…今後、ルルーシュはあまたの暗殺者に狙われる事になる…。おまけにルルーシュは自分の護衛の半分をエリア11のナナリーの下に置いて来ているという、ブリタニアに戻って来るに当たって、少々自覚の足りない状態なのだけれど…」
シュナイゼルが少し困った顔でスザクに云っているけれど…。
その内容はスザクに対して今度こそ、ルルーシュに傷一つ付ける事は許さないと云っているように聞こえる。
「解っています…。もう、自分は殿下に対して…かすり傷一つ、負わせるつもりはありません。自分は、殿下の盾になるべく…きっと、倒れはしません…。殿下の為に…」
その返事に、シュナイゼルはにこりと笑った。
その中には、美卿にスザクに対しては『負』のオーラが混じっている様にも見えたけれど…。
「解っているようで助かるよ…。ここで、命を賭して…などと云い放ったらどうしようかと思ったけれどね…。人の命は誰にも一つしかない…。ルルーシュを狙う輩は数多いる。だから、君は決して死んではならない、倒れてもいけない…。意外と心構えができていて、私としては少々面白くないのだけれどね…」
そう云いながらも、ルルーシュを託すに足る人物であると認めているようだ。
「及第点を…頂けたのでしょうか?」
「私としては面白くないけれどね…」
スザクの言葉に対して、シュナイゼルが幾分かの本音の混じった短い言葉で帰した。
ルルーシュには、その二人の間を飛び交って居る火花は見えていないようだけれど…。
だから…
「異母兄上…スザクは私が選んだ私の騎士です…。異母兄上…どんな立場であれ、私は私の為に…異母兄上の役に立つよう努力致します…。必ず…」
「そんな風に君に云われてしまうのは、少し寂しいけれどね…。それでも…私の役に立ちたいと云うのなら、必ず、成功させて、生きて戻っておいで?必ず…」
シュナイゼルがそう云うと…ルルーシュは椅子から立ち上がり、シュナイゼルの前に跪いた。
「承知致しました…宰相閣下…」
そして、ルルーシュに従って、スザクも跪いたのだった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 02:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年10月17日

皇子とレジスタンス 〜緊張と驚愕〜

 結局その後…。
スザク自身、いつ、きちんと眠りに着いたのかよく解らない。
ただ、ルルーシュが横になっていたスザクに突っ伏して眠っていたから、ルルーシュを自分が横になっていたベッドに寝かせた。
そのあと、暫くはルルーシュが腰かけていた椅子に腰かけながらルルーシュの様子を見ていたけれど…
嫌な夢でも見ているような…。
そんな表情に変わっていた。
特に、声を出す訳でもないけれど…。
ただ、時々、『母上…』と云う単語が聞こえてきた。
ルルーシュにとって、ここは故郷と云っても、スザクが日本に対して思う様な感情は持ち合わせている様には見えない。
ただ…そこが自分の生まれた国だった…。
そんな感じだ。
スザクは流石に政治家の…日本国首相の息子と云う事もあり…。
国家と云うものとか、国を守るとか…。
色々、教えられなくても、それに触れてきた。
だから、スザクは日本に対して自分の愛すべき故郷であるという意識はあるし、何かがあれば守ろうと思う。
侵略と云う形でのブリタニアの侵入に怒りを感じ、レジスタンスグループのリーダーとなった。
それは…自分の祖国を守りたい…取り戻したいという…。
そんな思いからスザクがそうしたわけなのだけれど…。
ルルーシュの場合、多分、ブリタニアに対しての思いは、スザクの日本に対するそれとは違うと思う。
今のルルーシュの寝顔を見て、そんな風に思った。
―――こいつ…本当は、皇族でなんていたくないんだろうな…。
そんな風に思えてきた。
しかし、生まれた家に関しては子供にはどうしようもない事だ。
ルルーシュ自身、それを見ていて痛々しい程、理解していて…おまけに、自分でそれを背負うだけの才能を持ってしまっていたことがそもそもの悲劇だったのかもしれないと思った。
ただ、それがなければ、こうした形でルルーシュと出会う事も、近くにいる事も…叶わなかったわけなのだけれど。
時々、ルルーシュの口から発せられる…『母上…』と云う言葉…。
トラウマだと…解る…。
「少しはさぁ…弱みを見せろよ…皇子様…」
スザクがそんな事を呟きながらルルーシュの前髪にそっと触れた。
安心しているのか…目を醒ます気配はない…。
とりあえず、スザクも限界までは見守って居ようと思っている内に…。
時間がどれほど経ったのか解らないまま、先ほどのポジションとは正反対の状態でスザクは寝ているルルーシュと布団の上に突っ伏して眠ってしまっていた。
その後、ルルーシュに身体を揺さぶられて起こされるまで…。
なん時間であったのかは解らなかったけれど…。
それでも、その時間までは全く記憶のない状態で眠る事が出来ていた。
正直、緊張状態である事は事実だったのだけれど…。
ルルーシュの傍にいて…このブリタニアの王宮の中で安心しているのはスザクの方であったと…絶対に口にはしないけれど、頭の中ではしっかりと認識していた。
目覚めた時のルルーシュの驚いた顔と、呆れた顔は…。
少しだけ苦笑してしまったけれど…。
それでも、どんな状態であれ、複雑な気持ちを抱いている人物に今日…スザクは合わなくてはならないという事実だけは変わらないのだけれど…。

 今回は、ルルーシュの側からの申し出と云う事になっている。
本来、位置植民エリアの総督が任地の報告にわざわざ謁見を求める様な事はしない。
ただ、今回はルルーシュであり、その騎士がナンバーズ…しかも、その植民エリアがブリタニアに侵略される前の国のトップの息子と云う事で、魑魅魍魎達が色々と画策したようである。
「まぁ、御苦労な事だな…。スザクは別に、普段通りでいい…。解る事は自分の言葉で答えればいいし、解らなければ正直に解らないと云えばいい…。下手なウソを吐かない方が色々面倒な事に巻き込まれなくて済む…」
「ルルーシュがそう云うなら、そうする…。ただ、俺なんかに話しが振られるのか?」
「一応、私から謁見を希望した事になっているが…。事実上吊るし上げだからな…。まぁ、吊るし上げと解っているんだ…。となれば、変に画策する事もない…。何かある時にはきちんと私がフォローするし、お前はあの場に飲み込まれない様にだけしろ…」
ルルーシュもさらりと難しい事を云ってくれるが…。
ただ、既に着替えが済んでおり、迎えの者がここに来るのを待っている状態だ。
今更取ってつけた様な策を施したところで何にもならない。
「お前は…慣れているからいいさ…」
ぼそりとスザクがそんな事を呟いてしまう。
「慣れている?そんな訳がないだろう…。それに、世界で一番嫌いな男に頭を下げるんだぞ?慣れたくなんてない…」
ルルーシュがやや声を震わせて云っている。
その顔は…明らかに怒りを帯びている。
それは…父に対してのものであり、それ以上に、力を持たない自分自身のものである事は…何となく解る。
「ごめん…無神経だった…」
スザクが素直に謝った。
ルルーシュにとってブリタニアに対しての感情は…中々複雑なものであるらしい。
恐らく、ナナリーがいなければ…恐らく、どんな手を使ってでもこの王宮から飛び出していただろう。
「あ、否、私の方こそ…済まない…。スザクの方が…遥かに不安なのに…」
ルルーシュがスザクに謝るものだから…。
スザクとしても、少し、複雑に思えて来てしまうのだけれど…。
それでも、だからこそ、ルルーシュは、日本人の気持ちを掴んだのかもしれない。
それが、意図的なものであるのかどうかは…別にして…。
それでも、それを指摘したら、ルルーシュは確実に、
『そんなもの、計算づくに決まっている…』
などと云ってそっぽ向くに違いない。
それでも、それが計算の上での事であれ、なんであれ、まずは物理的に今は『エリア11』となってしまった、あの地に暮らす人々の気持ちが…。
穏やかになった事は確かだ。
日本が戦争に負けて、ルルーシュが総督として訪れるまでの時間は…。
本当に短い時間だったけれど、日本人の心にブリタニア人に対して負の感情を抱くには充分な時間となった。
その後…。
荒れ放題のあの地に…ルルーシュが訪れたのだ。
スザクと同じ歳の…複雑な境遇を持つ、ブリタニアの皇子…。
今の表情を見ていると…何となく、あの時の荒れたゲットーの中で一人、ルルーシュが呟いた一言の意味が…。
解る様な気がした…。

 そして、迎えが来て…謁見の間の入り口で、ルルーシュの半歩後ろにスザクが立っていた。
「緊張するなとは言わないが…。気負うな…。飲まれたら…付け込まれる事になる。スザクには…守るべきもの、そして、帰るべき場所がある事を忘れるな…。ここでは、弱みを握られた段階で、命取りになる…。難しい事は考えるな…。ただ、胸を張っていればいい…。神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアの騎士として…」
スザクの緊張が伝わったのか、ルルーシュが小声でそう云って来た。
そして、それを聞き終えた時に…扉が開かれた…。
その扉の向こう側は…明らかにこちら側とは違う空気である事が…良く解る。
ルルーシュが真っ直ぐ前を向いて、中へと歩いて行く。
それは、それまでスザクが見た事のない…ブリタニアの皇子としての…ルルーシュの顔になっている。
自分の父親と会う…。
確かにその通りなのだけれど、ルルーシュの場合、相手は皇帝だ。
スザクも、こうした家に生まれた場合、自分の親との関係が普通の親子関係ではない事くらいは解るが…。
それでも、こうして目の当たりにすると、少しだけ、複雑な気持ちになるが…。
しかし、現在の状態はそんな事を考えていられる余裕はない事を自覚すると、スザクも表情をきゅっと引き締めた。
ルルーシュが皇帝の玉座に上る階段から3メートル程離れたところに跪いた。
そして、スザクもそれに倣って、ルルーシュから1メートル後方で跪いた。
本来、皇族の騎士がこんな場所に来る…と云うこと自体非常に珍しい事だ。
皇族に名を連ねている者たちは、シュナイゼルを含めて最前列に並んでいる。
「皇帝陛下、此度は私の謁見の申し出をお受け頂きまして…」
ルルーシュがそこまで云った時、皇帝がルルーシュのその言葉を遮った。
「余計な挨拶はいらぬ…。まずは、お前がそのナンバーズをお前の騎士とした事の理由を聞こう…。儂を含め、推薦状を随分送ったにもかかわらず、長い事返事もよこさなかった貴様が…」
皇帝がルルーシュに対してそんな事を問いかけている。
表向きの皇位継承順位を考えた時…ルルーシュに対してのこの質問は周囲達も驚きを隠さないし、スザク自身、自分が仕えている皇子は一体どんな皇子なのかと困惑してしまう。
「確かに…有難いお申し出を戴いたにもかかわらず、私の至らなさも手伝い、せっかくの御推薦上では御座居ましたが…目を通すだけの時間が御座いませんでした…。申し訳御座居ません…」
キツネとタヌキのばかし合い…と云う俗なレベルではない。
皇帝に対してここまで云い返せるルルーシュとは…。
―――確かのこれじゃあ、魑魅魍魎に狙われても仕方ないな…。問いか、この皇帝と云う人物はルルーシュを一体どう思っているんだ?数多い子供の一人でしかない筈なのに…。
緊張状態でありながらも、状況の把握に余念はない。
正直、把握すればするほど、恐ろしげな世界である事は解るし、ルルーシュがここに来るのを渋っていた理由が良く解る。
シュナイゼルの方をちらりと見ると…いつもの事なのだろうか、『やれやれ』と云った表情を見せているだけだ。

 そして、その周囲を取り巻いている貴族達は…。
あまり居心地がいいとは言えないざわめきが生まれている。
正直、ここで、逃げ出さない自分も大したものだと思えてくるけれど…。
「まぁ、良い…。その後ろにいるのが…貴様が決めたという…」
「はっ…ご紹介が遅れ、申し訳御座居ません…。私の後ろに控えておりますのが、我が騎士として任命しました、枢木スザクで御座居ます…」
ルルーシュが厳かにスザクを紹介した。
そして、スザクもルルーシュに続いた。
「この度、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下の騎士の任を拝命致しました、枢木スザクに御座居ます。どうぞ、よしなに…」
「イレヴンの騎士と…な…。流石はマリアンヌの息子よのぅ…。面白い事をしよる…」
意図の読めない言葉であるが…。
周囲を取り囲んでいる貴族たちからは失笑の声が聞こえてきた。
そして、ルルーシュはと云えば、後ろからでも解る…。
完全に仮面を被った状態でこの場に跪いている。
自分達を取り囲んでいるバカどもの相手などしていられるか…と云う思いくらいはあるとは思われるが…。
「お言葉では御座居ますが…皇族の騎士は相手が誰であろうと…それが、たとえナンバーズであったとしても本人が決める事の出来る我々皇族に与えられた権利の筈…。それに、皇帝陛下以下、皆々様のご推薦下さった方々は、私めにはあまりにもったいない人材ばかりで…。逆に、任命された者が気の毒でしたので…」
かなり、悪質な皮肉交じりの言葉だ。
しかし、実際にこのくらいの事を云えなければやっていけないのだろう。
そして、ここまでできるからこそ、ルルーシュは自分の力を一番の後ろ盾に今のポジションにいるのだろう。
「流石…マリアンヌの息子よ…。面白い事を云う…。それでも、ルルーシュの騎士とやら…一通り報告は受けておる…。確かに面白い人間である事は認めよう…」
面白そうに…本当に面白そうに皇帝が云っている。
正直、この姿はテレビでしか見た事のないスザクにとっては…。
これから彼が何を云おうとしているのかが解らない。
解らないという事がこれほど不安に感じるのは…正直、嫌な物だと思う。
尤も、不安を感じること自体、あまり心地のいい事だとは云えないけれど…。
ただ、今のこの感じは…。
多分、それだけじゃない、嫌な感じがする。
―――ルルーシュは…こんな世界の住人…なのか…。
そんな事を考えている間にも…。
この、違和感だらけの親子の会話…。
それを、まるで、何かの見世物の様に見ている貴族達…。
ルルーシュが心を閉ざしてしまう気持ちが…解らなくもなかった。
ルルーシュは…子供として居られなかったのが…。
良く解る。
恐らく、よほど強力な後見があり、一生守って貰える皇族でなければ…。
子供としていられる事など…なかっただろう。
この場にいて…どんどん辛くなって行く事が、スザクには良く解った…。

 しかし、スザクがどれほど辛いと考えていても、まだ、そこは皇帝の前だ…。
ここで、スザクが無様な姿を見せれば、ルルーシュの弱みとして取られてしまう。
「では、御挨拶も終えましたので…私は…」
ルルーシュがそう云った時、また、皇帝がルルーシュを制止した。
スザクが色々考えこんでいる間に、ルルーシュは『エリア11』についての報告をしていたようで…先ほどまであまりにバカ丸出しとも云える貴族達の笑いは消えていた。
ルルーシュはありのままだけを話したに違いないのだけれど…。
それでも、ルルーシュがあのエリアに着任する前の状態を話しだけとはいえ、知っていたのだから…。
「待て…。貴様の話しは終わった様であるが…儂の話しが済んでおらん…。貴様の話しを聞いて、儂も決めた…」
皇帝のその言葉に、スザクは勿論、ルルーシュも一体何の話なのか解らないという表情をしている。
勿論、他の者たちも様々な思いの中、恐らく、この皇帝の言葉に対して『驚いている』と云う一言にまとめられるだろう。
「何を…でしょうか?」
ルルーシュが立ち上がりかけた状態で訊ねた。
そのルルーシュに対して、何となく、恐らくは『君の悪い』と云う表現がピタリとくるような笑みを皇帝が浮かべた。
「ラティスの任、無事全う出来た暁には…この玉座を貴様にくれてやろう…」
皇帝のその一言に…。
その謁見の間全体がしんと静まり返る。
恐らく、ここで平然としていたのは…皇帝意外にはたった一人だ…。
「な…何を…」
ルルーシュが驚愕を隠しきれずに、訊ね返す。
そんなもの、望んだ事などない。
そもそも、ルルーシュはそんな事を考えた事もなかった。
「そうなれば…貴様の騎士はナイトオブワン…。その者に、何の問題もなく、『エリア11』をくれてやる事も出来よう…」
驚きを隠せずにいるルルーシュの顔を楽しんでいる様にも見えるが…。
「こ…皇帝陛下!何故…その様な事を…?陛下がその座を次代にお譲りになるにしても…第一位皇位継承者は、第一皇子殿下、オデュッセウス殿下では…」
一人の貴族が耐えきれなくなったかのようにそう、訴えてきた。
そのものの云っている事はルルーシュも賛同していた。
そもそも、ルルーシュにそれを背負えるだけのバックアップも、バックボーンもない。
それに、ルルーシュ自身、シュナイゼルの下について、その地位を確立してきたのだ。
「質問はいらぬ…。儂が決定した事…。ルルーシュよ…逃げる事は許さん…」
そう云って、皇帝は座を立ち上がり、そこ謁見の間から姿を消した。
そして、貴族達の中にもだんだん騒ぎが大きくなり始めていて…。
この中で唯一、冷静に話しを聞いていたその存在が…スザクに声をかけてきた。
「速くルルーシュをこの場から…」
今のところ、その存在はルルーシュの身を案じている様に見えたし、それが彼の本心であるかどうかなど今は考えていられるだけの余裕はない。
「解りました…。後ほど…」
「否、私がアリエス宮へ行こう…。カノンに命じて、警護を増やした…。ルルーシュを頼むよ…?」
「イエス、ユア・ハイネス…」
そう答えて、スザクは呆然としているルルーシュをその場から連れ出したのだった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 11:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年09月18日

皇子とレジスタンス 〜皇子の心の傷〜

 ルルーシュからその事実を告げられた夜は…
スザクも一応腹を決めて来たつもりだったけれど…眠れずにいた。
ブリタニア皇帝…。
スザクにとっては…日本を侵略した帝国の皇帝であり…。
現在仕えているルルーシュの父親でもある。
ルルーシュの口ぶりから云って、ルルーシュ自身は、その父に当たる皇帝に対してあまりいい印象を抱いていない感じがする。
確かに…まだ子供と云える様な年齢の子供を最前線に送るだとか、テロが頻発する危険極まりない植民エリアの総督とするだとか…。
と云うか、スザクの中で考える皇子とか、皇女とか云うのは、基本的には外交の顔になったり、戦場で戦う兵士達の慰問に訪れるものだとばかり思っていたのだから、驚いたと云う事もあるが…。
ただ、ルルーシュやシュナイゼル、コーネリアを見ていると…。
確かに、実力主義で力のない者達は、次々に淘汰されていく。
それは、皇族だけでなく、その皇族の中で自分達にとって最も得となる皇子あるいは皇女であるかを考え、付き従う貴族や大企業たちにとっても言えることだ。
人選を誤れば自分達の一族、企業は壊滅的打撃を受ける。
ルルーシュやクロヴィスの様に、最初から皇帝の椅子に着く事を考えていない皇族の場合、彼らの母親の一族がバックアップに付く事になるが、色々な意味で身の振り方を考える様にもなる。
後見貴族にとって、どの分野に長けている皇子あるいは皇女であるかを考え、従う相手を考えるが、やはり、その母の実家は大きな要素となる。
力が小さければ、陥れられる、格好の標的となってしまうからだ。
ルルーシュの場合…母の実家が庶民と云う事もあり、後見貴族は少ない。
もっと云えば、物好きだと評されるほどの判断だと評価される。
しかし、それはルルーシュがシュナイゼルの配下となり、その功績を上げる前の話しで…。
ルルーシュがエリア11でさえも華々しい成果を上げた事によって、色んな意味でルルーシュに対してコンタクトを取ろうとする貴族が増えた…とルルーシュは苦笑していたが…。
確かに、居心地のいい場所ではないと思う。
スザクの場合、『キョウト六家』に置いて、それぞれの家の役割が決まっていたし、かつては、様々な形でその地位についての争いはあったらしいが…。
こんな形で、皇帝自ら皇子や皇女を競わせて…と云う決め方はなかった。
確かに、実力でその地位を簒奪したと云う例はあるらしいが…。
ただ、こうした形で血を分けた兄弟たちと敵対しなければならないと云うそんな状況ではなかった。
ただ、勝手に敵味方に分かれていたと云う事はあった事は否定できないが…。
「確かに…居心地がいいとは…お世辞にも云えないな…」
そう云って、廊下の窓辺に立ち、エリア11の自分に与えられた宿舎から見る、ブリタニアに支配されているとはいえ、日本に立っていると云う感覚がきちんと残るその光景とは違う、本当に、ここは日本ではないと感じさせる窓の外を眺めていた。
綺麗に整えられた…ブリタニア王宮の中にある、離宮の庭…。
本当に別世界だ…。

 ただ、眠れずにぼんやりと立っていると…。
「眠れないのか?」
後ろから声をかけられた。
現在、まだジェレミアも到着していない中で、この離宮の中でスザクに声をかけて来るのはたった一人だ。
「ルルーシュか…。まぁ、ちょっと慣れない場所だから…な…」
緊張して眠れないなんて…何となく恥ずかしい気がして、そんな風に云って見せるが…。
ただ、ルルーシュの方は、黙ってスザクの隣に立った。
「この庭…あの頃のままだ…。綺麗だろう?」
スザクのその様子に関しては一切触れないように、ルルーシュが声をかけてきた。
確かに…この庭は…なんだか落ち着く…。
日本では見た事もない木や植物が植えられていると云うのに…。
「そうだな…。なんだか…ほっとする感じだ…。王宮の門からこのアリエスの離宮にくるまでの圧倒される様な…あんな場所と比べると…ずっと落ち着く…」
そこは、素直にスザクは感想を述べた。
「まぁ…母がいわゆる皇族とか、貴族とか、高貴な血の家の者ではないと云う事もあったからな…。地味にまとめていた…というよりも、他の離宮程、派手にすると落ち着かないんだと云っていた…」
ルルーシュの言葉に…確かに、王宮の必要以上に華美な雰囲気に慣れていない人間にとっては、こうした感じの方が落ち着くだろうと思う。
「僕も…この庭が好きだし、馴染んでいたから…。他の離宮へ行くと…少し緊張してしまっていた…。勿論、他の離宮の異母兄上や異母姉上の家の者達が色々僕を可愛がる異母兄上や異母姉上たちを心配して…の事もあったんだろうけれど…。他の離宮のきらびやかな雰囲気は…どうも、落ち着かなくて…」
流石に自分の住み慣れた離宮に帰って来たからなのか…。
普段の総督としての口調ではなくなっている。
やはり…常に緊張状態でいるのだろうと…スザクは思う。
この離宮だって、気を付けなければ何があるか解ったものではない。
と云うのも、今回、ルルーシュを出迎えたのは…。
『ルイ家』
トウキョウでの宴の席で、ルルーシュは『ルイ家』と裏で繋がっているラティスの少女に刺されているのだ。
そして、今、ルルーシュを守るのは…守れるのは…。
スザクしかいない状態だ。
尤も、あんな事があった後だけに…『ルイ家』も迂闊な事は出来ないとは思うが…。
ここまで目立つ働きをしているルルーシュに王宮内で下手な手出しをした場合…。
恐らく黙っていられない皇族や貴族はかなりの数がいる。
と云うのも、ルルーシュが何故、シュナイゼルのお気に入りとして、そして、片腕としてシュナイゼルに徴用されているのか…。
ルルーシュがエリア11に赴任してからの実績、そして、中華連邦との戦闘に置いての実績を考えた場合…。
シュナイゼル派の皇族、貴族は下手にルルーシュを見殺しにしてしまった場合、自分の意思はどうあれ、自分の身も危うくなると云う事になるのだ。
「俺も…こう云う庭…好きだよ…。日本にはないけれど…」
「お前…日本中枢に立つ『キョウト六家』の一つの家である枢木家の嫡子だろ?こんな、華やかさのない庭…」

 ルルーシュのその言葉に…ちょっと苦笑してしまう。
と云うのも、スザク自身、確かに首相の息子だったし、家そのものは金持だった。
しつけやしきたりに関しては厳しく叩きこまれてはいた者の…。
ルルーシュの様に皇子様として育てられた訳ではない。
学校は普通の学校に通っていたし、一緒に遊んでいた男の子達も家柄とか、特に関係ない家の子供たちだった。
確かに云えは大きかったけれど…。
スザクは武道を学ぶ為に藤堂の道場に通い、空いた時間には友達と一緒に自然に恵まれた枢木神社の周囲の野山を駆け回っていたのだ。
「俺さ…ルルーシュみたいに、皇子様として育てられた訳じゃない…。友達も普通の家の子供たちだったし…。確かに枢木家の名前は大きかったけれど…。でも、ヴァインベルグ卿がルルーシュに接するみたいな人間は一人もいなかったしな…。確かに、躾けとか、しきたりとか…うるさかったけれどな…」
スザクのその言葉に…ルルーシュの瞳に少しだけ羨望の色を見た気がした。
確かに…ちょっと見ただけでも…それが解る気がした。
「そうか…。ブリタニアは…そんなスザクの…」
「待てって…。それ以上云うなって…。確かに…あの戦争に関しては…色々思うところもあるだろうけれどな…。ただ、俺は…お前個人に対して、勘違い名恨みなんか持っていないし…。寧ろ、日本の為に…尽力してくれて…感謝している…」
スザクがルルーシュの言葉を慌てて遮った。
ルルーシュが日本侵略を決定した訳じゃないし、ルルーシュが日本を攻撃した訳でもない。
この王宮に来てみて…。
今のルルーシュの複雑な立場が…本当によく解る。
そんな中で、決して失敗が許されないと云う…そんなプレッシャーを常に抱えていた。
ルルーシュのその肩には…。
まずは…ナナリーの事…。
そして、ルルーシュの母親の後見を望めない状態の中…。
誠心誠意、仕えているジェレミア達の事…。
そして、ルルーシュとナナリーのその、現在の立場を解っていて、後見をしている、アッシュフォード家とヴァインベルグ家…。
ルルーシュが倒れた場合、彼らも道連れになると云う…。
ルルーシュは…必要以上なのではないかと思う程…。
その自覚をしていた。
「それは…別に…」
ルルーシュが…またも、『買い被るな…』と云う表情でスザクに返す。
ルルーシュ自身、自分自身を凄く戒めている。
それは…恐らく、一度でも失敗したら…。
その、ルルーシュが抱える不安だ。
確かに、年齢を考えた時、ルルーシュは非常に優秀だけれど…。
若い分、否、幼い分、経験が足りない。
経験が足りないと云う事は…あらゆることに対してのさじ加減を知らないと云う事だ。
確かに上に立つ者は自分自身を戒め、自分に対して厳しくなければならない。
そうでなければ、自分に付いて来る者達に対して厳しく接する事は出来ないからだ。
ただ、ルルーシュの場合、その自覚がある事については問題ないのだけれど…。
何に対しても言える事だが…。
行きすぎると…いい事はない。
そして、今のルルーシュは…まさに行き過ぎだ…。

 そんなルルーシュに…どうしてもため息を吐いてしまうのは…。
スザク自身、この危なっかしい自分の守るべき皇子殿下に対して…。
色々な気持ちを抱え始めているからなのだろう…。
騎士として、友人として、常に一番傍にいる者として…。
「ルルーシュ…。お前って、ホント、他人の事は良く見ているし、きちんと分析していると思うけど…。でも、もっと、自分の事を、知ってやらないと…今に致命的な失敗を犯すぞ…」
スザクが思わず云ってしまった。
本当は…口で云って解る事ではない。
自分が、その場に立ち、そして、自分が実感しなければ…。
それでも、あまりにルルーシュは自分に対して無頓着すぎる。
ルルーシュの中で『自分の為』と云う言葉がないかのようだ。
元々、こんな過酷な運命を選んでいるのも、妹姫であるナナリーの為…。
そして、全てのルルーシュの目的を線でつないでいくと…そのまま『ナナリーの為』に辿り着いているのだ。
となると…。
この先…。
特に現在、ナナリーはユーフェミアと共に、あのエリア11の総督代理として、表舞台に立っている立場だ。
表舞台に立っていると云う事は…。
色々な意味で的になり易いと云う事でもある。
ライが守っているとは云っても…。
この王宮ほどではなくとも、あの政庁の中も魑魅魍魎の住まう場所だ…。
これまで、ルルーシュがいたから何とか、秩序を保っていたのだ。
そこに辿り着くまで、ルルーシュ自身、相当な苦労を重ねていた。
ルルーシュ自身が、あの政庁内の改革をかなり強引に推し進めていた事もある。
ある意味、相当危ういバランスで保たれていたのだ。
確かに…。
ユーフェミアと一緒という事は、『リ家』の家の者達も一緒に入ってきている。
ある程度は、ユーフェミアの命令の下、ナナリーも守ってくれるだろうけれど…。
実際にはナナリーを守れるのは、ライであり、そして、アッシュフォード家から派遣されている者たちだ。
だとすると…ルルーシュ自身、自分のその能力と実績を誇示して、その威厳を周囲に知らしめなければならないのだ。
そうする事によって、ナナリーに及ぶ危険も少なくなると云うものだ。
元々、どんな形であれ、力を持つ者がのし上がって行くと云うのであれば…。
「僕は…僕の事を知らない訳じゃない…。否、これまで知っているからこそ…自己主張したら…それが怖かった…。日本の言葉にあったな…。『出る杭は打たれる』と…。僕自身、打たれて耐えられる程の力を…まだ持っていない…」
ルルーシュのその心配は良く解る様な気がした…。
ここの空気はトウキョウ租界の政庁のギスギスした部分をさらに濃縮した感じだ。
スザクと同じように…ルルーシュも…眠れずにいたのかもしれない…。
トウキョウ租界でのあの緊張感とはまた…別の…と云うか、普通の感覚で考えると非常に異質なこの空気の中…。
気が重かったのかもしれない。
何となく…そんな気がした。
それは…スザクも同じだったけれど…。
「ルルーシュ…とりあえず、休もうか…。俺が寝るまで…傍にいてくれないか?」

 スザクの言葉に…ルルーシュが目を丸くする。
「お前…一体何を云って…」
「何となくさ…緊張しているし…。それに、ここみたいに凄い部屋で眠った事なんてないしな…。ってか、部屋…広過ぎて落ち着かない…。俺が寝たら…自分の部屋に戻っていいからさ…」
いきなり…何を云い出すのか…と云う、ルルーシュの表情だけれど…。
すぐに…少しだけほっとした顔を一瞬だけ見せて、『やれやれ』と云う表情を見せた。
「仕方ないな…。とりあえず、部屋に戻っていろ…。ホットミルクでも持って行ってやる…」
そんなルルーシュを見て、クスッと笑ってしまいそうになるが…。
それでも、それを表に出さないようにする。
ルルーシュがこんな口調になっているのは…。
恐らく、相当しんどい状態なのだろうと云う事は解る。
確かに、皇帝に謁見すると云う事は…。
このアリエスの離宮にくるまでの間に見て来た魑魅魍魎達が一堂に会する事でもある。
今回はルルーシュのエリア11に関する報告と騎士となったスザクのお披露目…と云う事だ。
これまでに前例のない、『ナンバーズ』の騎士叙任…。
相当、殺伐とした…と云うか、言葉で表現するのも難しい空気の中に放り込まれる事になりそうだ。
「別にいらないよ…ホットミルクなんて…」
「眠れないんだろ?そう云う時は身体を温めるのが一番だ…」
そんな事を云って、スザクをその場に置いて歩きだして行った。
護衛が少ないし、『ヴィ家』の場合、早々、護衛兵も信用出来る訳ではない。
だから、廊下には常に煌々と灯りが点けられているし、様々な形で他の離宮にはないセキュリティシステムを備えている。
スザクはそんな事情を知っていたから…こっそりと、ルルーシュの後に付いて行く。
本当に、厨房に入って行き、手際良く、二つの大きめのマグカップに温めたミルクを注いでいた。
―――ホント…無防備だよな…この皇子様は…
流石に…この王宮に戻ってきたばかりの皇子を…どう考えても目立つし、容疑者を特定し易い時に、暗殺など考えない様だ…。
確かに…邪魔な相手を消すこと自体はさしたる苦ではないだろうが…。
それでも、現在、シュナイゼルが皇位継承権争いの中でトップにいるのだ。
そのシュナイゼルのお気に入りを暗殺して…そして、その容疑者にされただけでも、相当なダメージになる事は誰もが解っている事だ。
やるとしたら…死んでもおかしくない状態になってから…だろう。
そして、その容疑者となり得る可能性が高い時でなければならない。
否、逆に他の容疑者をし立て易い時であれば、その、容疑者に一点集中してくれる時であれば、安全である。
それは…ルルーシュも解っているのだろうか…。
スザクしかいないとは云え…あんな風に…話すなど…。
―――本当に…明日は、俺も…気を引き締めて行かないとな…。
そんな事を考えながら…。
ルルーシュが厨房から出て来る気配がしたので…急いで、自分に与えられた部屋に戻るのだった…。
ルルーシュがスザクの部屋に入った時…何か怪訝そうな表情をしていたのだけれど…。
ルルーシュ自身、それは敢えてスルーしたのだった…

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年09月04日

皇子とレジスタンス 〜魑魅魍魎の住まう場所〜

 間もなく…ブリタニア、帝都ペンドラゴン上空に差し掛かる…。
ルルーシュにとっては久しぶりの、スザクにとっては初めてのブリタニア本国…。
ここまでのルルーシュの功績によって、エリア11のナンバーズへの風当たりはかなり小さくなったものの、ブリタニア本国ではそうはいかない。
ブリタニアは…全ての力に置いて、強い者の主張が優先される。
それ故に、立つ場所によってはルルーシュは皇族であると云う肩書以外の力を何も持たない存在となる。
特に…ブリタニアの王宮では…。
そう云う意味では身分、地位共にバランスが尤も取れているのがシュナイゼルだ。
ルルーシュの場合、その身分が足りない。
それは、母が平民出身であると云う事…。
王宮内でテロと称して暗殺されると云う事態に陥ってしまう程…その身分は不安定であり、王宮では地位は何の役にも立たなかったともいえる。
ルルーシュとナナリーは、王宮内で『皇帝の血を引く皇子と皇女』と云う肩書だけで、身分そのものは貴族にもないがしろにされるほど、役に立たない代物であった。
「スザク…この先、お前にはきっと、嫌な思いをさせる事になる…。それこそ、エリア11の政庁内での風当たりよりも更に強い風当たりがある…」
ルルーシュがあと30分ほどで着陸という地点でスザクにそう、告げる。
スザク自身、確かに自分がブリタニア人にとっては『ナンバーズ』と云う、差別の対象である事は重々承知していた。
それでも、エリア11では、皇族、貴族の身分に頼ってなどいたら、命がいくつあっても足りない世界だった。
そして、その功績が最も重要視される場所でもあった。
ルルーシュの政策方針のお陰でトウキョウ租界の政庁だけでなく、各地の軍駐屯地であったり、行政府であったり、各所に『イレヴン』と呼ばれる人間達が入り、そして、その治安維持や行政執行に対して尽力していた。
それだけの基盤をルルーシュが作り上げていた。
だからこそ、賛成したとは云えずとも、コーネリアがユーフェミアとナナリーのエリア11の総督代理を承諾したのだろう。
他の…ブリタニア人のみで治安維持、行政執行を成されている植民エリアではあまりに危険過ぎてとてもじゃないけれど、これまで皇族の姫として守られていたものが総督代理としてはいるなど…出来る筈もなかった。
そして、今、ルルーシュとスザクが向かっているのは…。
そんな、差別意識の最も強いその場所へと向かっているのだ。
ブリタニア人でさえも、身分によって差別する…。
否、皇帝の血を引く皇子でさえ、母親の身分が低いからと差別対象であり、ここまでのルルーシュの功績を考えた場合、トウキョウの政庁よりも遥かに命の危険がある様な…。
そんな場所に、彼らは足を踏み込ませる事になる。
「俺の事は心配するな…。一応、これでも『キョウト六家』のメンバーの家の嫡子だ…。そう云った場所の空気は…お前ほどじゃなくても…解っているつもりだ…」
ルルーシュの言葉に、スザクはそう返す。
確かに、ラティスに渡る前に立ち寄るだけなのだけれど…。
その数日間は、本当に長く感じそうだと…ルルーシュ自身、うんざりしているのだけれど。
正直、前線に立つよりも、ああ云った腹の探り合い、相手の弱みを見つける為に躍起になっている空間に入り込んで行くのは、正直、気が滅入る。

 そんな彼らの気持ちはよそに…ペンドラゴンの空港には仰々しい出迎えが待っていた。
正直、こんなで迎えなど必要ないと、心の底から叫びたいのだけれど…。
久しぶりに父である皇帝に謁見し、エリア11の現状を報告しなければならない。
その後、シュナイゼルと合流して、ラティスへ向かう。
それに、ルルーシュはまだ、エリア11では正式に自分の騎士が決まった事を発表しているが、本国への報告は文書で簡単に済ませているだけだった。
それ故に、更に気が滅入っていると云うのは否定できない。
「おかえりなさいませ…ルルーシュ殿下…」
深々と頭を下げている…正直、顔も覚えていない貴族…。
その貴族も恐らく、ルルーシュに対しても、ルルーシュの連れているナンバーズに対しても頭など下げたくはないだろうに…と思っているが…。
だから、そのいやいややっていると云うオーラを隠しきれていない彼を見て、ルルーシュは思う。
―――ここで、私が驚く態度を見せられない様では、出世はできんな…。少なくとも、実力では…
と…。
皇族であれ、貴族であれ、有能な人間は仮面を被る事が出来るか、仮面を被る必要がない程の実力を持っているかのどちらかだ。
特に、ルルーシュが得意とする交渉や謀略などは演技力がものを云うものだ。
仮面を被る必要がない程の実力の持ち主は、その存在を見れば解る。
何がどうという説明はできないが…。
様々な人間を見続けて来ている内に、そう云った内に秘めている力を見極める事が出来るようになった。
「出迎え、御苦労であった…。このまま、アリエスの離宮へ向かう…」
「イエス、ユア・ハイネス…」
それは、スザクがこれまで見た事のない…ルルーシュの顔だった。
魑魅魍魎の住まう王宮で…その鎧を身に着けなければならなかったのだろう事が予想出来る。
ルルーシュの表情を見ていても…。
出迎えた、その、ブリタニアの貴族を見ていても…。
「して、殿下…そちらの『ナンバーズ』は…?」
その貴族がルルーシュに尋ねてきた。
恐らく全てを承知の上で、幼稚な嫌がらせの類だろう。
そんな、尋ね方はないだろうし、目上の者に対して、連れている人間を刺してその様な尋ね方をするのは不敬ともいえよう。
ただ、ここで、一々取り乱していたら、相手の思うつぼであるし、自分の品格や価値を下げる事になる。
それは、ルルーシュもスザクも良く解っていた。
相手も、スザクをただのナンバーズと侮っていたのかもしれない。
スザクだって、ブリタニアとの戦争に負ける事がなければ…。
日本の『キョウト六家』の枢木家と云う、由緒正しい家の生まれだ。
父親は日本の首相だったし、その実家も日本古来の『天皇家』と縁ある、本来なら、ブリタニアの貴族風情が合う事さえ許されない家の出だ。
「枢木スザク…。後ほど、改めて紹介しよう…。私の騎士となった男だ。その辺の家柄しか能のない貴族などよりもずっと由緒正しい家の出の者だ…」
ルルーシュがそう云った後、ルルーシュの隣に立ち、スザクが頭を下げて厭味ったらしい程礼を払って挨拶した。
「御挨拶が遅れて申し訳ありません。ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下の騎士を拝命致しました、枢木スザクです。なにとぞ、よろしくお願い申し上げます…」

 その姿は…流石に日本の古の家柄の出の者だと感心させるものがあった。
確かにブリタニア人ではない外国人だし、現在ではその『日本』と云う国も世界には存在していない。
それでも、その為に育てられた…その自覚と誇りを叩きこまれて来た人間のオーラと云うのは、ただの貴族風情が敵うものではない。
恐らく、ルルーシュに恥をかかせようと企んででもいたのだろう。
しかし、結局返り討ちにあった…と云う事だ。
どこの国であれ、民族であれ、その国、民族を代表する家の出の者はそれ相応のオーラを纏っている。
いくら、亡国となったと云う現実があったとしても、その人間のその培われて来たものまで消し去ることはできない。
それを消し去る事が出来るのは…その相手をこの世から消す事以外にないが…。
そう云った存在は、世界の中でも尊ばれる。
そして、そのオーラは隠して隠しきれるものではない。
「……」
その貴族は結局その後、声一つ出す事が出来なくなっていた。
結局、その貴族の品のなさが強調されただけであった。
その後、その貴族はルルーシュ達をアリエスの離宮へ連れて行く間…一言も口を聞く事が出来なかった。
ルルーシュも別に話す事はないと…敢えて、フォローを入れるつもりもなかったから、黙っていた。
ルルーシュが話しをしないのであれば、スザクもそこで話す理由がないから黙っていた。
車中…非常に重苦しい空気に包まれていたけれど…。
その重苦しさを一番感じていたのは、その貴族であった事は云うまでもない。
沈黙の中…ルルーシュとスザクはアリエスの離宮まで案内された。
「御苦労であった…」
「いえ…。中はすぐにお使い頂けるように整えて御座居ますゆえ…。必要な事があれば…なんなりと…」
「すぐにジェレミアも来る。気遣い、有難く思う…。心遣い下さった『ルイ家』によしなに伝えてくれ…」
そのルルーシュの一言に…その貴族がびくりとした。
相手の方は、その貴族がどの皇子、皇女に従っている貴族なのか、解らないようにしていたつもりらしい。
ただ、状況が状況だけに、そんな風に考えていたと云う事の方が愚かだ。
今回のエリア11の件では、ルルーシュ自身の名前が轟いているのだ。
シュナイゼルの名前でもなく、シュナイゼルのお気に入りとしてでもなく…。
ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアの名前が轟いたのだ。
それは…ある意味この王宮の中での影響力が変わったと云う事になる。
その証拠に、それまで騎士候補は現れなかったし、政略結婚の為に自分の娘を差し出す貴族や皇族周辺の人間は現れなかったのに、ルルーシュがうんざりするほど候補者が名乗り出て来たのだ。
尤も、そこに本人の意思など関係はない。
あくまで、家の都合だ。
権力争いとは…そう云った形で戦いが繰り広げられているのだ。
ルルーシュとしては、そんな形で巻き込まれるのはまっぴらだったから、婚約者に関してはあの、ルルーシュ殺害未遂事件を理由にさっさと姫君たちは取り調べがすべて終わった時点で、送り返している。
騎士候補に至っては、資料さえも見ていなかった。
それゆえもあって、様々な思惑の人間が王宮に戻ってきた時点で声をかけて来るのは、予想は出来ていた。

 やっと、アリエスの離宮の中に入って、一息ついた。
「お前…本当に皇子様なんだな…」
スザクがぼそりとそんな事を零した。
ルルーシュはその言葉に、少しだけ、ムッとした顔をした。
「スザクこそ…。本当に育ちも、血筋もいいんだな…」
「俺は…別に…」
「もし、日本にサクラダイトがなければ…お前とは、外交交渉相手として…出会っていたのかな…」
ルルーシュの言葉に…スザクは息が止まりそうになった。
確かに…戦争に負けて、そして、旧日本軍の残党が暫定的に就任した『エリア11』の総督を交替にまで追い詰めた事は事実だ。
そして、その結果、訪れたのが…ルルーシュだった。
戦争がなければ、日本は今でも主権国家として存在していた。
国力の差でブリタニアの方が有利な外交を続けていたかもしれないが…。
それでも、二人の立場は…違った関係となっていた事は否めない。
「そうかもしれないけれど…。ただ、ルルーシュはシュナイゼル殿下のお気に入りで…他のエリア開拓、もしくは総督をしていて…俺とは出会っていなかったかもしれないな…」
ルルーシュの立場では…。
確かに、いつも面倒な外交をしている国での交渉役であったり、今回の様に誰も総督になりたがらない様なエリアの総督に任命されたりと…。
少なくとも、日本自体が『厄介』な存在でなければ、ルルーシュが日本人に顔を知られる事もなかっただろう。
と云うか、ルルーシュが総督となるまで、ルルーシュのデータは本当に手に入らなくて…。
それこそ、本当に皇位継承権順位の低い皇子なのかと思う程、トップシークレット扱いだった。
と云うか、他の者が隠していた訳ではなく、ルルーシュが自ら、戦略の為にそうしていた事は解る。
確かに、変に情報が流れると云う事は戦いには不利だ。
「どうかな…。お前の事だ…どうせ、厄介な任地に赴いて、日本みたいに…うまく丸めこんでいたんじゃないのか?俺だって、日本に来るのが、お前だったから、最初は興味を持ったんだ…」
「と云うよりも、『黒の死神』ってのがどんな奴か…今日みあったんだろう?」
ルルーシュが苦笑しながら尋ねる。
スザクはそれを否定する事はない。
「まぁ、それはあったな…。あの、世界的に有名なシュナイゼル=エル=ブリタニアのお気に入りで、右腕だぞ?そりゃ、関心を持つのは当たり前だし、正直、厄介なのを相手しなけりゃならないのかと…思ったよ…」
「で、その相手の騎士をしている感想は…?」
少々、悪趣味な質問だとは思うけれど…。
ルルーシュがふざけて行っている事だと云うのは解る。
やっと、そうやって悪ふざけを口にできるようになった事に…スザク自身、ほっとする。
「こんなひょろひょろの、女みたいな奴だとは思わなかった…」
こっちも遠慮なしに返す。
その言葉に、冷静なようでいて、未だガキっぽいところのあるルルーシュがムッとした。
「ひょろひょろと云うのは、百歩譲って認めてやらんでもないが…。女みたいとはどういう意味だ!」
ルルーシュがスザクに怒鳴りつけるが…。
スザクの方は特に驚いた様子を見せる事もなければ、その表情を崩す事もない。

 そんなスザクを見ていてルルーシュは更に機嫌が悪くなってしまった様で…。
本当に云いたい放題だ…。
「言葉のまんまだ…。と云うか、これから、お前が自ら敵陣に乗り込んで行く時には女装して行けば…ある程度は戦闘なしでスルー出来る気がするけれどな…」
スザクがそれこそ、まったくもって遠慮と云う言葉を知らないかのように続ける。
日本人と云うのは控えめであると云うイメージを持っていたルルーシュにとっては、正直、そのイメージを始めて抱いた人間の顔を見てみたいと思ってしまう。
全ての日本人がスザクの様に遠慮なしに何でも云い放つとは思ってはいないのだけれど…。
「お前…本気で喧嘩を売っているのか?」
「俺、お前と口げんかして勝てる自信がないからな…。肉弾戦で行くぞ?」
「キサマ…」
なんだか…スザクに遊ばれている気分になって、ルルーシュが頗る機嫌が悪くなる。
まぁ、こんな風に云い負かされるのはシュナイゼル相手の時くらいだし、シュナイゼル相手の時にはこんな感じではないから…。
正直、ルルーシュとしても戸惑ってしまう。
「ま、そんな冗談はさておき…お前、これからの予定はどうなっているんだ?」
スザクがこれ以上云って、これ以上ルルーシュの機嫌を損ねるのはよろしくないと考えて…。
話しをさっさと切り替えた。
この切り替えの早さは…正直、見習いたいと思う反面…素でこんな事が出来るようになりたくはないと思えてしまう。
ルルーシュは一度、ため息をついてから口を開いた。
「明日は、色んな貴族がここに来る。私がエリア11に赴任する前であれば、そんな事はあり得ないんだが…それでも、騎士候補者の話しや花嫁候補にあれだけの写真が送られてきたとなると…。まぁ、それを放置しておくと云う訳にもいかないからな…。その時にお前を騎士として、皆に紹介する。本国ではお披露目パーティー的な事をするつもりもないからな…」
ルルーシュのパーティーをするつもりはないと云ったその言葉…。
スザクは思い切りほっとしてしまった。
先ほどの貴族一人に対してだって、正直、あれだけプレッシャーがあったのだ。
あんな連中が団体で押し寄せて来て、四面楚歌の状態になるのは御免だった。
「で、明後日、シュナイゼル異母兄上と一緒に皇帝に謁見する…。エリア11の様子を伝えるのと、お前を紹介する為にな…」
「俺…ブリタニア皇帝になんて会えるのか?」
「どうやら、皇帝直々の御所望らしい…。何を考えているのか知らんが…確かに『ナンバーズ』と呼ばれる人間から騎士を選んだのは私が初めてだからな…。何を云ってくるかは知らんがな…」
ルルーシュは本当に嫌そうにそう云った。
本当に…この王宮と云う場所が嫌いらしい…。
確かに、居心地がいいとは到底言えない。
「差別が当たり前かと思えば、そんなVIP待遇かよ…。日本だって、神楽耶に会える人間なんて限られているぞ…」
「私にも思惑が解らないからな…。とりあえず、余計な事を喋らないようにした方がいいな…」
そう云ったルルーシュの表情は…何か、悲しみ、憎しみ、様々な者が入り混じった様な…そんな風に見えたのだった…。
スザクの中にも…緊張が走って行くのであった…。

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posted by 和泉綾 at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年08月28日

皇子とレジスタンス 〜それぞれの出立〜

 その日…朝からルルーシュの執務室へは、蒋麗華と黎星刻が訪れていた。
と云うのも、この日はこの二人がブリタニアの植民エリアとなった中華連邦へ、総督とその補佐官として渡る日であったからだ。
「では、以上が総督としての任務である…」
ルルーシュが事務的に二人に対して告げる。
そして、ルルーシュの斜め前に立つシュナイゼルが総督としての証しとなる書面を蒋麗華に手渡すと、彼女がブリタニアの慣例に従って礼を払いながらシュナイゼルからその書面を受け取った。
「謹んで、お役目をお受けいたします…」
まだ、子供と云える彼女がこのような、殆ど必要なのかどうかも解らない儀式に則って礼を払っているところをみると…。
やはり、お飾りであったとはいえ、きちんと国家元首として育てられている事がよく解る。
それは、皇族として育ったルルーシュのそれとは明らかに違う。
彼女が生まれた時から彼女の道を定められていた事がよく解る…そんな風に見えた。
外国人の総督と云うのは初めての事例だ。
だから、シュナイゼルは簡易的にこうした叙任式を終える事にした。
ルルーシュも、叙任式と云っても、その任を与る為の書面を受け取っただけだった。
と云うのも、あの時にはそんな事をやっていられるだけの余裕もなかった。
スザクが中心となっていたレジスタンスグループの動きが非常に活発で、その時、エリア11に赴任していた総督では到底、抑えきれるものではなかった。
また、レジスタンスグループも数多く存在し…。
数が多いとなると色々なグループが存在していた。
スザク達のグループはそれでも、無関係の人間には被害を最小限にと云う…そんな気持ちを抱いてくれていたからまだ良かったが…。
そうでないグループも多く存在していて、ブリタニア人だけでなく、同じ日本人が日本人を踏みにじっているような状態であった事も確かで…。
確かに、反体制と云う事であるのであれば、ブリタニア人に対して無差別に殺意を抱く者がいても仕方ない部分は否めない。
ただ、同胞に対してまで傍若無人を働いていると云うのは、色々な意味で問題だ。
無差別に人を傷つけていると云う事になるのだ。
そんな状態を許していたら、確実に、争いが伝播していき、収拾つかなくなって行く。
その様な状態を何とかしなければならないと云うのは…ブリタニア側も、日本の中でレジスタンスグループに対して援助していた『キョウト六家』も一緒だった。
そして、ブリタニアが執った策が、総督の交替だった。
ルルーシュがこのエリアに入り、だいぶ、このエリア内は落ち着いてきた。
このエリアの中が多少落ち着いたかと思ったら、今度は元日本政府の要人だった者が中華連邦の援助を受けてエリア内を荒らし始めたと来た。
その中で紆余曲折を経て、現在、黎星刻はブリタニアの一貴族としての立場を確保して、蒋麗華はその妻として、そして、中華連邦の国家元首として存在し、ブリタニアの植民エリアとなった中華連邦を治める立場となった。

 一通りの儀式が終わり…出立の2時間前となった時…。
黎星刻の申し出でルルーシュはこの二人と話す時間を少しだけ作った。
「ルルーシュ総督…この度は、礼を云う…」
星刻はルルーシュに対して頭を下げた。
本来ならルルーシュに対しては礼を腹わなければならない立場ではあるのだけれど…。
プライベートであるとして、ルルーシュはそこで、堅苦しい礼を払う事を望まなかった。
と云うよりも、プライベートで一個人として星刻と話したいと云いだしたのはルルーシュの方だった。
「否…。もっと、穏やかな形で…とは思ったし、そなたに対しての扱いは…あまり望ましいものであったとは云い難い…。私の力不足で申し訳ない…」
ルルーシュも様々な騒ぎの中で何としても中華連邦の動きを封じ込めたかったのは事実だ。
そして、幼い中華連邦の国家元首である姫君を見た時に…。
どうしてもいたたまれなかった事は事実だ。
ルルーシュに力が足りなければ…ルルーシュが何をおいても守ろうとしているナナリーだって同じ事になるのだ。
蒋麗華の場合は、まだ、黎星刻と云う腹心と呼べる存在がいる。
彼女の中でどのように思っていたとしても、黎星刻は確実に彼女を守るだろう。
そして、彼女を守る為に中華連邦…否、今ではエリア18となったその地を治める為に全力を尽くしてくれるだろう。
彼の力と彼女の存在意義を考えた時、彼ら二人ならしっかりと治めて行ってくれるだろうと云うのはルルーシュの中の期待である。
正直、あれだけの広い国土を一つのエリアとして治めるのは難しい事と…と云う事で本国でも様々な議論がなされた。
しかし、中華連邦と云うのは天子と呼ばれる国家元首の下で一つの国家として成り立っている。
大宦官に対して反感を抱いていても、蒋麗華に対しての反感は皆無と云っても差し支えない程であった。
幼いとはいえ、国家元首であり、その、代々伝わっているその家に対しては特別な思いがあるらしい。
ブリタニアの皇家も長い歴史はあるが、中華連邦のそれとは違っている。
時代ごとに形を変えて行っているのであろうことは解るけれど…。
しかし、中華連邦の国家元首とブリタニア皇家とは確実に何かが違っている。
確かにブリタニアは皇帝が一番の兼職者で張るけれど…。
中華連邦の場合、実際に国の政を行っているのは国家元首の周囲にいる者たちだ。
だから、その周囲の者達が腐ると、今回の様に権力の為に国家元首、国を外国に売り払うような羽目になる。
ただ、今回、中華連邦と対峙したのがルルーシュであったからこの程度で済んだと云う事は付け加えておかねばなるまい。
他の皇族であったなら…否、ルルーシュ以外の者が中華連邦と対峙した場合、あのような腐った状態の政の中で負ける事はまずあり得ないし、相手がどれほど腐ったところで、大国である事は変わらない。
ブリタニアとしても絶対に負けない布陣を敷くのだから、結局のところ、あの時の中華連邦ではブリタニアに支配されていた。
ルルーシュ以外の者であった時…中華連邦から来た者達を総督とするなどと…恐らく考えもしなかったに違いない。

 ルルーシュのそんな態度に星刻も少々苦笑を零してしまう。
「今回の件…私はこれほどの策はなかったと思っている。そして、これからの私の責任の大きさを感じている。我々はどう繕ったところで、ブリタニア人からみれば、ナンバーズと云う存在だろう…。それ故に、これから先、そのナンバーズと呼ばれる存在の立場が私のやりようによっては左右されてしまう…と云う事だ…」
星刻の云っている事はその通りだ。
今回の事を決定する上でも、ルルーシュだけでは恐らく実現出来なかった。
シュナイゼルの力が大きい事は…ルルーシュも解っている。
「確かに…その通りだが…。ただ、君のやりようによっては、『ナンバーズ』への扱いが変わって来るだろう…。バランスを取るのが難しいとは思うが…」
ルルーシュのその言葉は…。
星刻にはその意味がよく解っている。
もし、あまりに功績を上げ過ぎれば、その力を恐れる者達によって、殲滅対象とされる。
しかし、無能であると烙印を押されてしまえば、そのまま潰される。
本当にバランス感覚のいる立場である。
「だからこそ…天子さまを総督としたのだろう?君は…本当に末恐ろしい存在だ…」
星刻が苦笑しながらそう云った。
実際に星刻の中でも味方でいるうちのルルーシュは非常に頼りになる存在だと思うし、この歳で、これだけの事をやってのけるのだから…将来、その能力は、実力は…どこまで伸びて行くのか…と云う期待がある反面、不安も生まれて来る。
それこそ、色んな意味で…。
「私が何を云ったところで、出来る事など何もないと云っていい…。シュナイゼル宰相閣下の力が大きいんだ…。本当に…。シュナイゼル宰相閣下が失脚した時、私もシュナイゼル宰相閣下と運命を共にする事になる。そして…君も…」
ルルーシュの言葉は…星刻自身も良く解っている事だ。
恐らく、ルルーシュが提案し、シュナイゼルがその権力を持って承認しなければ実現しなかった。
「解っている。だから、私は中華連邦の民の為に…そして、天子さまの為に…全てをかけよう。天子さまをお守りできるのであれば、私はこれからも、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア…君に従おう…」
「改まって云われると…困ってしまうな…。ただ、それは、私としても有難い申し出だ…。私としては別に中華連邦を戦乱に巻き込みたい訳ではない。隣のエリアを治める者として…どうか、私の留守中のこのエリアを…見守って欲しい…」
ルルーシュが頭を下げた。
正直、星刻自身、隣のエリアの事まで面倒みていられる程の余裕などありはしない。
それでも、こんな風に頼まれてしまうと…。
「私自身、ブリタニアの植民エリアとなったその地を守ることで、その言葉に報いよう…」
ルルーシュは『それで十分だ…』と笑った。
実際に隣のエリアで騒ぎになってくれば、確実にこのエリアにも影響が出て来るのだ。
いくら戦いに勝ったとはいえ、まだまだ、様々な火種が残っている状態での、蒋麗華と星刻の総督とその補佐の就任であるのだから…。

 その後、蒋麗華と星刻を中華連邦へ飛び立つ飛行機を見送った。
その飛行機には護衛艦もついていた。
と云うのも、流石に戦争が終わったばかりの状態での移動だ。
彼らでなくとも、それ相応の留意は必要である。
飛行機を見送って…戻ると…。
「お兄様!」
「ルルーシュ!」
部屋に入った時に懐かしい…心地いいその声が耳に飛び込んできた。
「ナナリー…ユフィ…」
部屋の中には…この二人に遊ばれていたらしいルルーシュの騎士達がいた。
外見上、あまりよく解らないけれど…。
しかし、二人ともぐったりしている感じだった。
「お久しぶりですわ…ルルーシュ…。この度は…有難う御座居ます…」
ユーフェミアの言葉に…ルルーシュは目を丸くした。
何の事か解らない…。
そう云う顔だ。
確かに…言葉だけ聞いていれば、何の事なのかさっぱり解らない。
そんな顔をしていると、ナナリーがくすくす笑いながら口を開いた。
「お兄様…この度のお役目…私達にお任せ下さって…有難う御座居ます…」
ルルーシュはその言葉に二人の顔を交互にみた。
今回の件…。
正直、ナナリーに対しては危険であるから本当はやらせたくなかったし、ユーフェミアに対しても同じ気持ちはあるし、『リ家』が恐らく相当反対した筈だ。
コーネリアだって、このエリアの総督代理など…可愛い妹姫にやらせたい訳がない。
「ルルーシュ…いつも、あなた一人で頑張ろうとして…悪い癖ですよ?お姉さまだって…本当は私をこのまま甘やかしていい筈はないと思いですし、何れ、私も何かの形で人を戴くことだってあるのです…」
ユーフェミアの言葉…。
ユーフェミアの真剣な声と表情…。
ナナリーもユーフェミアと同じ表情をルルーシュに見せている。
「お兄様…コーネリア異母姉さまは…お兄様がここまで頑張って治められているエリアだから…ユフィ異母姉さまがこのエリアに来る事をお許し下さったのですよ?ユフィ異母姉さまのお母君は…とっても怒っていらしたようですけれど…」
「お母さまは関係ありません!これから先、皇族として生きて行くためには必要なのですから…。お姉さまの御意向だけに縋っていては…自分で生きている事にはなりませんし、何れ私もお姉さまから一人立ちをしなくてはならないのですから…」
二人の言葉は…。
ルルーシュの胸に突き刺さる。
彼女達も…あのブリタニアの国是の中で皇族として存在しているのだ。
ただ、お姫さまをやっていればいいと云う訳ではない事を…彼女達も彼女たちなりに学んでいる…と云う事なのだろうか…。
そんな事を考えていると…ユーフェミアがにこりと笑った。
「だから…安心して行って来て下さいな…。そして、元気にこのエリアに戻ってきて下さい…。それまで…このエリアには…決して血を流させませんから…」
ユーフェミアのこの言葉…。
正直、こんな風に云われるとは思わなかった。
「お兄様…お兄様がスザクさんやライさんと一緒に守り続けたこのエリアを…私達は心の底から、お守りしたいと思っているんです…。確かに、至らない事は多いと思いますけれど…。だから、ライさんを…残して下さるのでしょう?」

 ナナリーの言葉…。
それは、ルルーシュにとっても、そこに控えていたルルーシュの騎士達にとっても、驚く言葉である。
ルルーシュは特に…ナナリーは守られる存在と思っていただけに…驚きは大きい。
「お兄様…私はお兄様に守って頂く存在であると同時に、お兄様をお守りできる存在になりたいと…ずっと思っていたのです…。シュナイゼル異母兄さまは…お兄様にどうお伝えになったかは知りませんが…今回の件は、私とユフィ異母姉さまと二人で話し合って、二人でお願いしたのです…。お兄様が…あの時、シュナイゼル異母兄さまに…シュナイゼル異母兄さまの軍に入れて欲しいと…お願いされた様に…」
ナナリーの言葉に…流石のルルーシュも驚きを隠せない。
「お前たち…なんて事を…」
「ルルーシュ!ナナリーをお荷物にしないで…。ナナリーはずっと…苦しんでいたのです。私はそれをよく知っている…。それに私もルルーシュの事が大好きなんです。だから…ナナリーとずっと話していたの…。どうしたら…ルルーシュに笑って貰えるか…って…」
ユーフェミアの言葉は…ルルーシュの心にぐさりと突き刺さった。
ルルーシュの中でナナリーがお荷物だなんて思った事はなかった。
でも、ナナリーにとって、ルルーシュが頑張れば頑張る程…居たたまれない気持ちになるものであった事は事実で…。
しかし、ナナリーにはルルーシュの様な働きが出来る訳ではない事は、彼女自身、解っていた。
だからこそ、ユーフェミアと話しをしていたし、出来る限り勉強も続けていた。
それこそ、ルルーシュがこのエリアに来てからと云うもの…ずっと…。
以前、コーネリアと一緒にこのエリアに来た時…ひょっとしたらその時には計画を着々と進めていたのかもしれない。
ルルーシュが刺された…と云う話しを聞いて…ナナリーは一体何を思ったのだろうか…。
「ルルーシュ…ルルーシュが築き上げたこのエリア…決して壊させないわ…。あなたが…命懸けで頑張ったのは…知っているもの…」
ユーフェミアのその言葉は…。
本当に力強く聞こえた。
いつも、頭で考えて、様々な可能性を考えて、怖くなる事もたくさんあるルルーシュだった。
彼女だって、きっと、怖くないと云ったらウソになるだろう事は解る。
「有難う…ナナリー、ユフィ…。君達がいるから…僕は安心して…ラティスに行ける…」
ルルーシュが、どうしてここまで力強くそんな事を云えるのか…解らないけれど。
ルルーシュ自身にも解らないけれど。
それでも、自然にそんな言葉が出てきた。
久しぶりに、自分の事を『僕』と云った気がする。
確かに久しぶりだ。
ルルーシュのその言葉にナナリーとユーフェミアがにこりと笑った。
「お兄様、留守は私達にお任せ下さい…」
「どうぞ…いってらっしゃいませ…総督閣下…」
二人がそう云って、ルルーシュに頭を下げた。
そんな二人を見て、ルルーシュは複雑な思いを抱えつつも…
「行ってくる…。留守を…頼む…」
そう云った後…二人が声をそろえた。
「「承知致しました。いってらっしゃいませ…」」

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年07月31日

皇子とレジスタンス 〜同志〜

 ルルーシュがこうやって、倒れるまで無茶をするのは、慣れては来たけれど…。
それでも、ルルーシュの騎士達のお陰で、随分、精神的負担が少なくなって行っている…。
そんな風に見える。
と云うのも、これまでなら、全ての事が一段落して、一人になった段階で、ジェレミアを呼びだしていたのだから…。
「ホントに…これまでのジェレミア卿の苦労が解る気がするよ…」
「あのタイプは確実に将来剥げて、胃潰瘍になって、過労死するタイプですね…」
確かに、あの、日本人に負けない実直さと真面目さを考えた時、あまりシャレに聞こえない様な気がしてきた。
その頃、ルルーシュの騎士達にこんな事を云われて、盛大にくしゃみをかまし、キューエルやヴィレッタに心配されているジェレミアの姿があったとか、なかったとか…。
「云いたい放題云ってくれるものだな…」
やっと、殆ど、ルルーシュが身動きとれないようにと輸液ポンプ付きで点滴を続けて来たルルーシュだったけれど、やっと、それも外して貰えて…。
結構じっとしている生活がしんどかったのか、やっと、解放された…と云う顔になっていた。
顔色も随分良くなっている。
「それはお前が勝手に無理をするからだろ!何の為に俺達がついているんだ…」
スザクがまたもルルーシュに説教を始める。
ルルーシュが点滴は外せないものの、起き上がることができるようになってからはスザクの説教が延々と続いていた。
それこそ、ルルーシュが
『お前…ジェレミアに説教されている内に、ジェレミアに似て来たな…』
と零したほどだ。
ルルーシュの場合は、それこそ、そのくらい説教をしないととてもじゃないけれど、周囲の物が大変だ。
これまで一人で説教役を買って出ていたジェレミアがある意味いだいに見えるし、イレヴンであるスザクや、どこの馬の骨かも解らないライを傍に置く事をあれほど反対していた理由が何となく解る。
「とにかく…点滴が抜けてしまったからにはちゃんと食事を摂って貰うからな!そうでなくてもお前、食べなくて困るんだからな…」
こんなスザクを見ていて、本当にジェレミアに似て来たと思う。
そして、ライはこれまでのジェレミアの苦労に、内心涙する程同情していた。
それでも、以前、こんな状態のルルーシュを看病した時よりも遥かに早く回復してくれたことは有難い。
この戦いを終えてから、まだまだ、やらなくてはならないことが山の用にあるのだ。
と云うのも、今回はテロ鎮圧ではなく外国との戦争だった。
その、相手国の戦後交渉に関してはブリタニア本国からシュナイゼルが来たから良かったけれど…。
これから、黎星刻を中華連邦の総督として就任させるための手続きが色々あるのだ。
そして、シュナイゼルがルルーシュを見舞った時に…ある提案をされたのだ。
『蒋麗華を総督とし、黎星刻をその補佐役として実質の権限は彼に一任すると云うのはどうかな?』
それが、シュナイゼルがルルーシュにした提案だった。
ルルーシュもそのシュナイゼルの提案に、同意した。
恐らく、今の時点でこれ以上の策はないと思ったからだ。

 ただ、ここでシュナイゼルに一つ貸しを作ってしまった…。
ルルーシュの中にはそんな思いがある。
一通り終わった時…何を云われるのか、何を要求されるのか解ったものではない。
と云うのも、戦略的、政略的な事であれば別にそんな風には思わないのだけれど…。
そう云う時、シュナイゼルはルルーシュに対して戯れの様な要求をして来るから困ったものだと思ってしまう。
ルルーシュが皇子だと云っても、シュナイゼルとルルーシュでは立場が違うのだ。
そして、シュナイゼルとルルーシュ…。
似ているところはあるけれど…立場的には正反対…とも云える。
シュナイゼルは常に、上にいなければならない。
ルルーシュは誰かの下に就いて、そして、その主と決めた存在の為に力を発揮する。
そんなシュナイゼルとルルーシュの中で、戯れなどと云う事があれば、色々と問題視する者が出てくるのに違いない。
そんな立場にいるルルーシュを妬む者、ルルーシュに対して特別な感情を抱いているシュナイゼルに付け込む者…。
普通の異母兄と異母弟として接する事が出来ないのが皇族と云う立場だ。
それでも、シュナイゼルはそんな事を気にすることなくルルーシュに対して、感情で接して来る。
流石に公の場で、あからさまに…と云う事はないけれど…。
でも、目立たないところで、ルルーシュに対しての配慮をしていて…それは周囲も気づいて居ている。
同じシュナイゼルの配下につく者達の中でも、それを許容できる者、出来ない物がいる。
コーネリアやクロヴィスはそう云った事を許容しているけれど、そのほかの皇族や貴族の中ではそれを許容している者などいない。
つまり、コーネリアやクロヴィスの様な立場にいる方が少数派なのだ。
ルルーシュもその事を承知している。
ルルーシュがシュナイゼルの下にいるのは、自分の立場を守るためだ。
ナナリーを守る為には自分の立場を確固たるものにする必要があったからだ。
だからこそ、変に、シュナイゼルが戯れでルルーシュに接して来るのは困る…と思っているのだけれど。
ただ、シュナイゼルの本心はルルーシュにはあまり伝わっていない。
この先、シュナイゼルは余程の事がなければ、次期皇帝の椅子は間違いないところまで来ているのは確かだ。
それだけの功績をあげているし、この先、第一皇子であるオデュッセウスとこう云争いをした際、『力こそ正義』と皇帝が云っているような国だ。
実際に力勝負した時には確実にシュナイゼルの方に分がある。
オデュッセウス自身、シュナイゼルと争う姿勢は見せていない。
その周囲の人間達はそうでもないようだけれど。
だから、今のところ、どちらかと云うと皇位争いよりもシュナイゼルに従っている者達の中での立場争いの様相が強くなっている。
ルルーシュも巻き込まれている状態だ。
このエリアに赴任した際、シュナイゼル肝入りの特派をルルーシュに譲り渡したと云うそんな事があった事もあるだろう。
ただ、このエリアに特派がなければあまり意味を成さないと云う事もある。
第七世代のKMFの開発をしているのだから、サクラダイトが手に入り易い所で研究をした方がいいに決まっているのだ。
で、エリア11などと云う厄介なエリアの総督は誰もが嫌がって、結局ルルーシュにお鉢が回ってきたのだから…。
その辺りは御都合主義のブリタニアの皇族と貴族達…とも云える。
その事で何も云わないルルーシュをコーネリアは少しイライラしているようだけれど。

 実際にどんな状態であれ、既に、ルルーシュはシュナイゼルのお気に入りである事は、周知の事実だ。
そして、その弱みに付け込もうとする者もいない訳ではないけれど。
そのお気に入りのルルーシュもかなりのやり手であり、そう簡単に崩す事が出来ないのだから…周囲も躍起になると云うものなのだけれど…。
尤も、ルルーシュがそれだけの実力者であるから、シュナイゼルも安心して自分のお気に入りとして、自分の片腕と出来るわけなのだけれど。
元々、ルルーシュがシュナイゼルの軍に入ったのは、ルルーシュがまだ10歳の時…。
普通に考えれば、シュナイゼルがお気に入りの異母弟皇子を自分の目の届く場所に置いた…と云うそう考えるのが自然だと云えるけれど。
実際は、ルルーシュが志願して、渋るシュナイゼルに強引に頼み込んだのだ。
そして、結果を出しているから、シュナイゼルも困ってしまっていたのだけれど。
怪我の功名と云うべきなのだろうか…。
そのお陰でシュナイゼルはルルーシュが自分のお気に入りであると云う事を周囲に示す事が出来たわけなのだけれど。
そもそも、シュナイゼルは自分の身くらい自分で守れない物を傍には置かないが…。
にしても、ルルーシュとしてはシュナイゼルの戯れもセーブして貰わないと困る…。
それは本音だ。
身体も回復してきて、次から次へとルルーシュへの面会が来た。
特に、今回の事でお役御免となるラウンズ達は真っ先に訪れた。
「殿下…ご機嫌麗しゅう…」
何とも嫌みな言葉だとは思うけれど、今更腹も立たない。
彼、ルキアーノ=ブラッドリーの場合、これが普通なのだ。
いちいち気にしていたら話しが先に進まない。
「我々ナイトオブラウンズ3名は、任務を終えましたので、これにてブリタニア本国へと戻ります。今後、また、殿下の御下で任務を果たせる日が来る事を…心から願っております…」
プライベートでルルーシュと接する時とは全く違うジノの挨拶に、ルルーシュも少し困った顔をする。
ただ、これがしきたりだとするなら仕方がないが…。
「ルルーシュ殿下のご回復が早からんことをお祈り申し上げます…」
あまり年相応に聞こえないアーニャの挨拶には…ルルーシュの傍に控えていた騎士達も苦笑してしまう。
ルルーシュの体調が悪いとはいえ、ルルーシュ直属の部下である訳ではないので、任務が終われば、事務手続きが終了次第、本国へ帰らなければならないのだ。
「このようなところで済まない。しかし、貴殿ら3人の働き…感謝している…」
ルルーシュもベッドに縛り付けられている状態ではあったけれど、強引に着替え、自室内で形式に則って彼らを送る…。
一通りの挨拶が終わって、一応、形式的にやらなければならない事が済んでから、ルルーシュ達全員がソファにかけて、話し始めた。
彼らがこのエリアにいた間の話しが…たくさん話されている。
「…。で、殿下はこれからは…?」
「ラティスに…行く事になるな…。一時的にではあるが、このエリアには代理の総督が来る…」

 ルルーシュのその言葉に、騎士達も驚いた。
知らなかったからだ。
ただ、ラティスに関しては、ルルーシュ自身も当事者になってしまっているから…実際にルルーシュの手で治めるのが最善である…それがシュナイゼルの判断だ。
「代理の総督…とは…?」
「聞きたいか?結構、このエリアに残る者は苦労すると思うがな…」
既にそこまで話しが進んでいたのか…などと思えてしまう。
これから、黎星刻と蒋麗華を中華連邦地区に送った後、すぐに出立する事になっている事まで全て説明した。
ただ、その、総督代行の名前が出て来ない。
そこにいた全員が、凄く気になっている様子を、ルルーシュが楽しんでいる様にも見えた。
「まぁ、そろそろ教えるか…。ライ…私がラティスにいる間、お前は総督代行の補佐を行ってくれ…。スザクは私に着いてこい…」
このルルーシュの言葉にもみんなが不思議そうな顔をしている。
単純に極秘事項などではなく、ルルーシュが周囲の様子を楽しんでいる…そんな感じだ。
「殿下…いい加減教えて下さいよ…」
「そうだな…。シュナイゼル宰相閣下とも話し合った結果で、本人の承諾も得たようだ。神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア=リ=ブリタニアがこの日本に来る事になる。それに伴い、スポークスマン役として神聖ブリタニア帝国第四皇女ナナリー=ヴィ=ブリタニアも同行する…」
その言葉に驚いた後、何故、ライをこのエリアに残す事を決めたのかが…解った。
「また…大胆な人事を…」
ジノがぼそりと零した。
しかしルキアーノの方は面白そうに笑いを堪えている。
きっと頭の中では『傑作だ…』などと考えているのだろう。
普段、あまり表に感情が出て来ないアーニャも驚いている様子だ。
「アーニャ…陛下にお願いして…まだ、エリア11にいる…」
アーニャがぼそりと呟いた。
確かに、気持ちは解ると思えてしまうけれど…。
「否、アーニャは父の補佐をしてくれ…。もし、父が必要だと判断して、アーニャを日本に派遣するならそうして欲しいが…。これまで、私はアメとムチの政策で一通りの枠組みを作ってきている。そして、激しい戦争の後だ。今必要なのは、戦略家でも政略家でもない。人々に希望を与えられる存在なんだ…」
ルルーシュの言葉は…確かに、そう云った部分もあるかもしれないけれど…。
そんな風には思えるのだけれど…。
実際にはそんなにうまく行くものではない事くらい、彼自身が一番よく解っているのではないかと…そんな風に思える。
「でも…ルルーシュ…お前…ナナリー殿下を…」
スザクがルルーシュに驚きを隠せないまま口を開いた。
「異母兄上が私の面会に来た時に…ナナリーとも通信で話した。その時、異母兄上がその提案をした時に、私も驚いて反対したら…ナナリーに怒られてしまったよ…。『私は…私はお兄様のお荷物なのですか!』とな…。その後、私がどんな言葉を並べても、彼女は絶対に引かなかったんだ…」
ルルーシュが、少し寂しげに…そう話した。
恐らく、ナナリー自身、ルルーシュの痛みや傷を…感じていたのだろう…。
そして、シュナイゼルからその提案をされた時に…ナナリーはシュナイゼルのその提案に感謝していたと云う…。

 その後…少しの間、静かな空間ができた。
「となると…恐らく、シュナイゼル宰相が皇帝陛下にラウンズの派遣を要請するでしょうね…」
そう云ったのは…ルキアーノだった。
その言葉…多分、ラウンズだからこその…言葉なのかもしれない。
それに、影の存在、表舞台には立たないと云ったところで、実際には様々な場面で実戦配備されている。
そして、功績をあげているのだ。
だからこそ、ナイトオブラウンズは帝国最強の騎士とされ、その姿を見た敵軍は恐れるのだろう。
「ルキアーノ…たまに、いい事云う…。なら、シュナイゼル殿下に…お願いすればいい…。私達、皇帝陛下の命令が絶対…。皇子殿下でもそう云う事、お願い出来る…」
結構無茶な事を云っている。
だいぶ、ルルーシュが施した政策のお陰でテロ活動そのものは沈静化しているけれど。
しかし、日本と云う国の隣国は…中々、曲者が多い…。
中華連邦が鎮まったとしても、この事に危機感を覚えた、ロシアがどうなるか解らない。
EU連合の一国ではあるけれど、この国は広い国土を持ち、元々軍事国家であるものの、ブリタニア軍のEU攻撃に対して多くの軍事力を提供していない。
恐らく、エリア11の誕生と中華連邦とエリア11とのにらみ合いを口実に、ロシアは軍を出し渋ったのだ。
それ故に、EU本体が崩れかけていても…それでも、ロシアは適当な理由をつけて動こうとしない。
また、ラティスからの武器輸入はこの国が一番多く、そして、現在のところ、どんな武器がロシアに渡っているのか解らない状態だ。
「私にお前たちのやることについて、何も云う権利を持たないが…あまり無茶をしてくれるな…。ブリタニアも確かにその国力は大きなものであるけれど…。なんだか戦線が広がり過ぎている気がするんだ…」
ルルーシュのその一言…。
確かにそんな気配はある。
シュナイゼルもコーネリアも殆ど休みなどない状態で戦場や交渉に出向いている状態だ。
きっと、皇位争いも激しくなりつつあるのかもしれない。
一応、皇位継承順位と云うものがあっても、皇帝が正式に次期皇帝を発表していないし、発表されたところで、そんなもの、守られる可能性の方が低い。
どの道、皇位争いでまた、様々な形で争いが起こって来る。
ルルーシュの暗殺未遂事件もその一つだ。
シュナイゼルとしても放っておくわけにはいかないし、裏で他のブリタニア皇族が絡んでいる話ともなれば…。
「大丈夫ですよ…殿下…。ルルーシュ殿下の事は、僕と枢木卿で必ずお守りしますから…」
憂いの顔を見せるルルーシュにライがそう、告げた。
「総督閣下がそこまで心配される必要はないでしょう?それに、あんまり広い視野で見過ぎていると、足元にある大切なものが見えなくなりますよ…。私としては、このエリアがどうなろうが知った事ではありませんが、せっかくの勝ちを負けにしないで頂きたいんですけどね…」
ルキアーノの乱暴な言葉に…。
確かに乱暴な言葉だけれど…少しだけルルーシュの顔から笑みが現れた。

 彼らを見送って、3人になる。
「この後、黎星刻と蒋麗華をブリタニアが派遣する総督とその補佐として送る。準備にかかってくれ…。彼らの出発は1週間後だ…」
ルルーシュが騎士達に指示を出す。
元々、この策を提案したのはルルーシュだったから、最後まで責任を持たなければならない。
自分のラティスへの出立や彼女達のエリア11赴任の日も迫っている状態だ。
「殿下…本当に自分を…日本に…?」
ライが少し不服そうに言った。
「本当はスザクの方がいいのかもしれないけれど…表向きにはスザクが私の正式な騎士の立場だからな…。それに、補佐役と云うのは…ただの名目だ…」
ルルーシュが一旦黙って、下を向いた。
そして、ライの顔を真っ直ぐに見た。
「頼む…ナナリーを…守ってほしい…。あの子は…まだ、何の経験もない。それに、私が強引に治めてしまったエリアだ。彼女に危険が及ぶ可能性が高い…。だから…私の騎士として…ナナリーを守ってほしい…」
そう云って、ルルーシュは頭を下げた。
ライは驚いた。
ルルーシュのこの功績は大きなものであるから…確かに最初は戸惑うかもしれないけれど、それでも日本人たちはきっと…。
だから…。
「殿下…顔をおあげ下さい。そのお役目…謹んでお受けいたします…」
そう云いながら、ライがルルーシュの前に膝をついた。
スザクもルルーシュのその言葉に、何か安心した様子だった。
「さて…まだ仕事が残っている…。ルルーシュ、無理にならない程度に片付けよう…。で、出発の準備をしなければな…」
スザクの言葉に促され、二人は次の仕事へと心を傾ける。
「そうだな…。では、今日中に、この資料に目を通し、各部署に回せ…。あと、シンジュクゲットーのスザクのグループにいた者たちと連絡をとってくれ。話しがある…」
ルルーシュが総督の顔となり、まだ、少々しんどさの残る身体で自分の執務用の机に向かうのだった…。

『皇子とレジスタンス〜第3部〜(戦闘編)』完
『皇子とレジスタンス〜第4部〜』へ続く

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2010年07月24日

皇子とレジスタンス 〜変化への戸惑い〜

 とりあえず、これまでルルーシュとジェレミアが秘密裏にやっていた事に…
スザクとライ、そしてスザクに脅されてメンバーに加えられたロイドとそのロイドのお目付け役のセシルが加わったことで…。
「こんなにも早く…終わるとは…な…」
勿論、先頭に立っていた者達以外の力も大きい。
スザクが随分現場で仕事をする者達を集めていたからだ。
「お前が何でも一人でやろうとするからだろ…。それに、お前は何でも自分でやろうとし過ぎだ。自分の騎士くらい信用しろ!」
終わってすぐに、スザクがルルーシュに怒鳴りつけた。
いつも、海外でこう云った事をしているから、実際に一番重要な現場で動いてくれる者達がなかなか集まらずに苦労しているのだけれど。
そして、周囲にいたこの辺りに住んでいるスザクが集めたと思われる人夫達が驚いた顔をしている。
確かに…。
ブリタニアの植民エリアとなってから、ブリタニア人相手にこれだけの口を聞いてしまった場合、何をされるか解ったものじゃない。
まして、相手はブリタニアの皇子で、このエリアの総督だ。
「べ…別に…信用していない訳では…。しかし、お前たちにも仕事があるだろう?これは私が私の個人的な都合でやっているだけだ!そこにお前たちの力を…」
ルルーシュがスザクに云い返していると、このままやらせると時間がかかりそうだと判断したライが口を挟む。
「殿下…僕も枢木卿と同感です。殿下の個人的感情で…と云う事でしたら、枢木卿をあなたさまの騎士としたのも貴方の感情でしょう?そして、彼にも僕にも貴方を守ると云う最優先にして、最重要な使命がある事を…お忘れなく…」
ライの口調も、少しだけ、怒っているような、寂しい様な、悲しい様な…。
そんな色が見える。
そして、周りで見ていたスザクが集めて来た者達は…。
この光景を不思議そうに見ているものもいれば、『やれやれ』と云った表情で見ているものもいる。
「ここにいるのは…」
「本当に…『黒の死神』なのか…?」
その様子をポカンと見ていた者達の中から最初に出て来た言葉が…それだった。
自分達の国がブリタニアの植民エリアとなり…。
そして、自分達の国を支配するブリタニアから派遣されてきたのが、ブリタニアの皇子で…。
でもって、その皇子と云うのはそのブリタニアの次期皇帝の椅子に一番近い皇子とされる第二皇子であり、宰相であるシュナイゼルのお気に入りの皇子で、おまけにたった15歳で世界に名をとどろかせているような…。
正直、どんな子供かと思っていたのだけれど…。
実際に、その存在を目にしてみると…
「普通の…と云うか、どちらかと云うと…優しいと云えるような子供じゃないか…」
そんな感想がぼろぼろ出てくる。
そして、そこまで云った時、はっとして、慌てて手で口を押さえる。
そんな彼らの発言、行動を見ていて…スザクは思わず笑いが零れてしまう。
確かに、彼らの云った事は、スザクもそう思ったのだから…。
それに、ジェレミアも最近、ルルーシュやスザクに感化されたのか…そんな彼らの他愛のない言葉くらいでは動じなくなっている。
「そうだ…。貴様らの期待を裏切って悪いが…これが、神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下だ…。そして、貴様らが『坊ちゃん』と呼んでいる枢木スザクが仕えるべき皇子殿下として選んだ方だ…」

 ジェレミアの言葉に…ルルーシュもスザクも驚いた。
まさか、ジェレミアの口からそんな言葉が出て来るとは思わなかったから…。
「へぇぇ〜〜〜ジェレミア卿も、スザク君の事…やっと認める気になったんだねぇ…」
茶化す様に口を出して来たのはロイドだった。
ロイドとしても、スザクはルルーシュの騎士であるから自分の手元でランスロットのデヴァイサーとして存在できる事をよく知っている。
元々、ロイドたちが所属する特派はシュナイゼルの配下にあった。
それを、シュナイゼルの計らいもあって、現在、ルルーシュの直属となっているわけなのだけれど。
「ふん…。殿下がこやつを必要としているのは本当だからな…。それに、こいつのお陰で…殿下が…年相応に笑えるようになったのは…確かだ…」
ジェレミアの言葉には…それまでのジェレミアの苦悩が現れている気がした。
ルルーシュがブリタニアの皇子とはいえ、自分の実力と功績以外に何も頼るものがなく、ただ、自分の立場を守り、最愛の妹姫を守る為だけに、全てを切り捨てて来た事を…彼は良く知っていたから…。
「ジェレミア…」
ルルーシュがジェレミアの言葉に思わず、彼の名前が口から漏れ出した。
最初の内はあれほど反対していたのに…。
それでも、ジェレミアはルルーシュのその、不安定な立場をよく知っていて…そして、それでもルルーシュに忠義を尽くしていた。
ルルーシュの立てる無茶な作戦でも彼は確実に結果を出して来た。
「殿下…。貴方様はやはり、マリアンヌ様の御子息だ…。本当に人を見る目がおありになる。この枢木スザクにしろ、ライにしろ…貴方様を決して裏切る事はないと…やっとこのジェレミアも確信させて頂きました…」
そう云って、ジェレミアが頭を下げる。
「「ジェレミア卿…」」
いつも口うるさいだけの教育係と思っていたけれど…。
それでも、きちんと認めるところは認めていてくれたのだと…スザクもライも思った。
そんな彼らを見ていて…。
他の者達は意外そうに見ているものもいれば、やっとここまで来たか…と云う目で見ているものもいる。
基本的にはここの中でこれまでのルルーシュの事を知っているものはあまりいないので、前者なのだけれど…。
「随分な変わりようだな…。あれほど、スザクを私の騎士とする事を反対していたのに…」
「人は変わって行くものです。目の前でその結果を見せられればそれを認めざるを得ません。だから、私も彼らの功績、存在意義を認めたのです。ですから…殿下も…そろそろお認め下さい…」
ジェレミアのセリフに…ルルーシュが驚いた顔を見せている。
「な…何も…こんなところで云う様な事では…」
「こんな風に、普段は貴方様と関わりのない者達がいるから云っているのです。こうして、証人がいれば、殿下も、いざと云う時には逃げる事が出来なくなりますからね…」
「誰が逃げている!」
「逃げているでしょう…。何でもご自身でやらなければいけないと云う気負いを抱き続けているのは…貴方様は本当に大切な存在を信じる事から逃げていらっしゃると云う事です…」

 ジェレミアの言葉にルルーシュはぐっと言葉を飲み込んでしまう。
と云うか、何も返せなくて自分の中で複雑な思いを噛み殺していると云う方が正しいか…。
「ジェレミア卿…そこまで殿下を苛めなくても…」
ライが遠慮がちに口を開く。
しかし、スザクがそのライの言葉を打ち消す様な言葉を吐きだした。
「苛めているんじゃなくて、本当の事だろ?大体、俺達がちょっと無茶するだけで怒るくせに、自分はいつも無茶、無理、無謀…。まったく、人の説教するならまず、自分が見本になれっての!最近の子供がグレるのはそうやって、大人が何でもかんでも『ああしろ!』『こうしろ!』って自分の出来ない事まで押しつけて来るからだろ!人に説教する前に自分でやって見せろっての!」
なんだか…。
スザクの声かけによって集まって来た人たちがそのスザクのセリフに
―――坊ちゃん…苦労されているんですね…。と云うか、あの、お父君が生きておられた頃のわがままな坊ちゃんはどこに行ったんですか…?
などと思ってしまう。
そして、そこで亡くなった枢木ゲンブ元日本国首相を思い出す。
彼はブリタニアに殺されたのではなく、日本国内の政治の争いで暗殺された事は…。
彼らも知っている。
そう思った時…。
今のこのエリアは…。
―――なんだか、この人になら…任せてもいいのかもしれない…。確かに、『日本』と云う名前は…必要だけれど…。それでも、確かに表向きにはなくなっている国だけれど…この総督がいれば…『日本人』は『日本人』でいられそうな気がするのは…何故だろう…
戦争をしていて、ブリタニアと国際的に緊張状態であったにもかかわらず…。
国民の中でも不安を感じていた、日本国内の政治情勢…。
あの状態でもし、あの戦争に勝てていたのなら、何かの間違いだった…と思える程だ。
そして、ちょっと前にあったシンジュクゲットーでの『リフレイン』が絡んでいたテロ事件も知っている。
ブリタニアに対するテロと云っても…。
あれは日本人の犠牲者が多過ぎて…彼らもあの沢崎達に対しては反感を抱いていた。
それは、ある意味仕方ないとも云える結果であったし、ルルーシュとしても、軍内部の不祥事まで全て公表したのだ。
だからこそ、彼らもルルーシュに対して負の感情を全てぶつける様な事はしないのだろうとは思うけれど。
ただ、その事実を知った時に、日本人たちの中で更なる戸惑いや困惑が生まれて来た事は確かだ。
日本人が…日本人を敵として見なければならなくなった…そんな事件でもあったから。
確かに…ブリタニアとの戦争の前から日本政府内に不穏な空気が流れていた事は…日本国民たちも知っていた事だけれど。
あんな状態を再現するくらいなら…スザクを騎士としているルルーシュにこのエリアにいて欲しいと思ってしまうのは…。
ある意味心情的に仕方ない。
確かに民族意識はあるけれど、それでもそれよりもまず先に、自分達の子供達が戦禍に巻き込まれない事や、あのような政情不安定な状態に陥ってその犠牲にならない事を考える必要がある。
そんな風に思うと…自分達のこのエリアは…運が良かったのかもしれないと思えて来てしまう。

 人夫の一人が…前に進み出て来た。
「ルルーシュ総督…我々は日本人でいる事をやめるつもりはないし、あんたがたが掲げている名誉ブリタニア人制度と云うのも、正直、納得出来ていない…」
その一人がルルーシュを真っ直ぐ見据えて、言葉を選びながら、音にする。
ルルーシュはその人物の目を真っ直ぐ見返した。
「ただ…我々の…否、私の知るブリタニアに占領される直前の日本の政情不安は…日本政府がいくら隠していても隠しきれるものではなかった。そして、あの、枢木首相が誰の手によって殺められたのかを…私は知っている。だからこそ…今はあなたに託したい…。枢木の坊ちゃんをあなたの側近と選んだ貴方に託したい…」
この人物は…恐らく、ルルーシュだけでなく、スザクにも…。
そんな期待を抱いているのだろう。
資料で呼んだだけだったけれど…スザクからもちゃんと話しを聞いた事がなかった。
それは、聞く事が出来なかった…と云うのが正解なのかもしれない。
本当は、このエリアを治めて行くとするなら…スザクから、その当時の情勢をしっかり聞いておいた方がいいに決まっている。
「私は…私がくる前の…この国の事を知らない…。日本がブリタニアに負けた時…私は他の国で陣頭指揮を執っていたし、正直、ここの総督になると云うのを告げられたのも…ここに来る、1ヶ月前だったんだ…」
ルルーシュがそう云うと…。
スザクは少し、苦い表情を見せる。
そして、そんな表情に、今、ルルーシュの目の前に立っている男が『仕方ない』と云う顔を見せた。
「確かに…坊ちゃんには辛い事でしょう…。だからこそ、澤崎を許せなかったと思う。あの、シンジュクでの騒ぎ…一番ショックを受けていたのは…坊ちゃんじゃないんですかね…。そして、あの男に対して、最も怒りを感じていたのも…」
その話しを聞いて、ルルーシュ自身、自分を責めそうになる。
ただ、それを制止したのは…スザクだった。
「ルルーシュ…あれは俺が弱かったから…だから、お前は何も悪くない。お前は騎士である俺に、俺のやるべき事を命じただけだ…」
本当にルルーシュの変化に気づくのは早くなった。
で、さっさと、その気配に気づいて、さっさと連れ戻してやらないと、要らない事を考える様になる。
「殿下…枢木卿の仰るとおりですよ…。もし、あの時、枢木卿が逃げ出していたら、僕が枢木卿を追い出して、僕が殿下の専任騎士になるつもりでしたから…」
普段、そんな事を云った事のないライの言葉に驚きを隠せないけれど。
この場の空気を何とかしようと云う気持ちもあったのだろうけれど、その言葉の中にはきっと、ライの本心も込められている事は…。
ルルーシュ以外は気付いていた。
「ライ…お前も冗談を云うんだな…」
ルルーシュのその言葉にうっかり苦笑してしまうけれど…。
確かに、権力にのみ固執する者達の中にいたのだから…ある意味、仕方ないと思える部分はあるのだけれど。
まだ、その辺りはこれからの努力が必要…だと云う事らしい。

 どこまで、ルルーシュに伝わったかは解らないけれど…。
ただ、ロイドが一瞬、何かに気づいた顔をして、また、いつものふにゃっとした表情になる。
「そろそろ、お開きにしませんかぁ〜?僕…そろそろお腹すいちゃいましたぁ〜」
「ロイドさん!」
セシルが突然のロイドの言葉にロイドを怒鳴りつけているけれど…。
その言葉にスザク達がルルーシュの方を見た時…
ロイドが何を伝えようとしたのか…解ったから…。
「ルルーシュ…とりあえず、そろそろ戻らないと、他の仕事、放り出して来ているんだからな…」
スザクの言葉に、ルルーシュが少しだけ驚いた顔をするが…
「そうですね…。ここまで、皆さん、お疲れ様でした。この後の事はジェレミア卿を通してのご連絡となりますので…」
ライもスザクに同調した。
ジェレミアも集まっている日本人たちを解散させる為…と云うよりも、ルルーシュを奥に引っ込めるために動き出した。
「これから、報酬に対しての話しをするから…こちらに来て頂きたい…」
そう云って、ジェレミアは彼らを連れて行ってしまった。
そして、彼らが見えなくなった時に…
「もう…無理しなくていいぞ…。と云うか、そこまで具合悪くなるまで頑張るなっての…」
スザクが云った時、さっき、ロイドに怒鳴りつけていたセシルが驚いた顔を見せる。
「え?え?…えっと…」
「セシル君も少しずつ覚えて行かないと、後々困るよ?殿下は自分の体調に関係なく仕事をしようとするからねぇ…」
ロイドの言葉にセシルが少し顔色を変える。
ふざけているようでいて、観察眼は確かなようだ。
「解らなくても仕方ありませんよ…。僕達も最近ですから…。それに今回はロイドさんが一番に気づいたみたいですし…。それに、セシルさんがそうやってくれないと、怪しまれちゃいますから…。これから、ロイドさんが気付いた時にはそうやって反応してあげて下さいね…」
ここまでの会話でルルーシュの周囲の複雑さが解る。
そして、ルルーシュの方を見れば…既にスザクがその身体を支えている状態だった。
周囲から人が少なくなって、ほっとしたのか…顔色も変わっている。
「殿下…。えっと…いつから…」
「多分、一通り終わって、彼らと話し始めた時には、具合悪くなっていたと思うよ…。と云うか、この場面に出くわすの…僕は初めてなんだけどね…。シュナイゼル殿下からとにかくしつこいほど殿下の事を注意して見ていてくれって云われているからねぇ…。僕としてはパトロンを失うのは困るしぃ…」
さらっと不敬罪に問われそうな口調で話しているのだけれど。
今の状態ではそんな事を云っていられないだろう。
「さて、セシルさん…すぐに基地内のルルーシュの個室を…準備して下さい。多分、ジェレミア卿から連絡が云っていると思いますので、もし、医師が来ていたら、手伝いをしていて下さい…」
スザクがそう指示すると…。
セシルの方が階級としては上なのだけれど…
「イエス、マイ・ロード」
自然とその言葉が出て来たのだった。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 18:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年07月17日

皇子とレジスタンス 〜騎士の役目〜

 これまではジェレミアに指示し、その場で集めた人夫を使って、作業をしていたのだけれど。
結局、スザクの勢いに押されたルルーシュは、これまで考えた事もなかったメンツを集めて、こんな事をしている。
というか、基本的にはスザクが勝手に手を回したらしいのだけれど。
現在、フクオカにいるわけなのだけれど、そこで、作業をする為の人材として集められているのは…。
「お久しぶりです!枢木の坊ちゃん…」
スザクの姿を見るなり、グループリーダーと思われる者達がそう云いながら頭を下げて来る。
その時、ルルーシュはスザクが元日本国首相の息子であると云う事を…実感する。
本当なら、ルルーシュは自分がこのエリアを離れた時、スザクをこのエリアに残して、彼にそれ相応の地位を与えて、総督にする事が、ルルーシュの中では今考え得る一番ベターな策だと思っていたけれど。
こんなところを見せられてしまうと更に、その考えが強くなってしまう。
「お久しぶりです…。皆さん、この度は有難う御座居ます…」
スザクも彼らに対して頭を下げている。
そして、その後ろからルルーシュが彼らに声をかけた。
「この度は…私事で恐縮ですが…」
ルルーシュがそこまで云った時、ここに集まっている人夫達の一人が口を開いた。
「一応、金は貰うんだしな…。それに、枢木の坊ちゃんから話しは聞いた。だから、俺達はあんたの行為自体を共感しているってことも事実だ。今まで、日本にだっていなかったよ…そんな風に考えてくれる人なんていなかったからな…」
「……」
まさか、自分を敵として見ている人間にそんな風に云われるとは思ってもいなかったから。
正直、面食らってしまっていると云っていい。
ルルーシュが驚いた顔を見せる。
いつも、戦後…自分に向けられる視線は、恨みを含んだものであったり、妬みが含まれているものであったり、ルルーシュにとってはあまり気持ちのいいと云えるものではない者ばかりだった。
それに、最近では互いに『負』の感情はだいぶ緩和されてきたとはいえ、ブリタニア人と日本人の確執と云うのは根強いものがあって…。
だから、正直、驚くと同時に、戸惑いも強く感じる。
そんなルルーシュを見て、スザクがこそこそと話しかけて来た。
「ルルーシュ…これがこれまで、お前がやってきた事の結果だ…。俺がお前の傍にいるのも、お前のやってきた事の結果だしな…」
スザクの言葉に…。
やはりルルーシュとしては戸惑いと云うか、何となく、自分の中では整理しきれない気持ちが渦巻いて来た。
これまで、自分の自己満足の為にやってきた事ばかりだったから。
だから、誰にも云わず、ジェレミアと共に、遂行してきたのだけれど。
ジェレミアも最初の内は反対していたけれど、ルルーシュが頑固者であると云う事をジェレミア自身、承知していたから、敢えて、口を挟まなくなった…と云うだけだ。
驚いているルルーシュを横目に、スザクはその場をし切り始めた。
「さぁ、みんな、協力してくれ!」

 その掛け声と同時にその場にいた者達がばらけて作業を開始した。
海に出て行く者、陸で作業する者…
今回はこれまでと違って、彼らは、ルルーシュのやろうとしている事、この目的を知っている者たちばかりだ。
「殿下…とりあえず、ここは枢木卿とジェレミア卿にお任せ致しましょう。我々は、身元確認ができている者達のデータを整理して、石碑を作る準備と、用地確保をします…」
スザクに連れて来られたライがルルーシュに声をかけた。
いつもは…自分が現場に立っていたから…。
「ルルーシュ、行ってこいよ…。ここは俺とジェレミア卿で頑張るから…」
「殿下…。ここで我々には向かう様な真似をすればこのジェレミア=ゴッドバルトが全員成敗致しましょう。だから、安心して行って来て下さい…」
ジェレミアの言葉に、色々思うところはあるようだけれど。
しかし、現状ではある意味仕方がない。
それに、ジェレミアの一言で怒りに我を忘れる様な人間がこんなところでルルーシュの私的な作業に協力する訳がない。
「そうだな…。頼む…スザク、ジェレミア…」
そう云って、ルルーシュはライをつれだってその場を離れて行った。
実際に、今回はシンジュクゲットーでのテロの時と違ってとにかく数が半端ではない。
中華連邦の者達であれば、後で星刻に頼んで、中華連邦の地に葬ってやった方がいいだろうと…今回、ルルーシュは一人一人の身元を調べる事にしたのだ。
ブリタニア人とアジア人であれば骨格の違いなどで解り易い部分もあるのだけれど、今回はぶりがニア軍の中に名誉ブリタニア人と呼ばれる日本人もいるのだ。
ブリタニア人から見ると同じアジア人と云う事で、判別がしにくい部分も出てくる。
だから、今回、ルルーシュ自身もそのデータ作成に携わる事にしたのだ。
専門外ではあるけれど。
それに、あの、マッドサイエンティストなら個人的な性格はともかく…
―――ランスロットとランスロット・クラブの開発費をチラつかせれば、非協力的な態度はとれまい…
と、意外とこれまでルルーシュが考えなかったような事を考えていた。
これも、このエリアに来てからの、ルルーシュの変化の一部だ。
これは…恐らく、このエリアに来てから、ルルーシュの周囲に現れた人物達の…影響と云えるのかもしれない。
静かに見守り続けるライと…。
強引に引っ張って行くスザクと…。
恐らく、どちらか一人だけ…であったなら、こうはいかなかったかもしれない。
そして、その二人が、心を閉ざしているルルーシュに、何かのファクターとなった。
まだ、年若いルルーシュは、この二人から様々な影響を受けた…と云う事だ。
これまで、皇族であるものの、その難しい立場に立たされ続けていて…。
頼る事を自ら拒否し続けていたルルーシュだったから。
ライと共に歩いて行くルルーシュと、テキパキと現場で作業指示をしているスザクを見ていて…。
最初はあれほど、スザクを騎士とする事を反対していたジェレミアだったけれど…。
少しだけ、肩の荷が下りた…という感じで目を細めて、そして、自分に任された仕事をこなして行くのだった。

 ルルーシュがロイドとセシルの元へ行き、そして…頭の中でシミュレートしていた通りに言葉を投げると…。
ロイドは意外にもあまり顔色を変える事はなかった。
「そう来ると思っていましたよ…。流石、シュナイゼル殿下の異母弟君ですねぇ…」
という言葉が返って来ただけだ。
確かに…ルルーシュもあの異母兄の性格を考えた時、ルルーシュの脅し程度なら、普通に受け流せるだろうとは…思う。
「但し、口外した時には…解っているな?」
「まぁ、殿下から資金を頂かなくっても…」
ロイドが半分ふざけた様な口調で返すと…。
ルルーシュは容赦なく、ロイドにとっては致命的な脅しを投げつけた。
「なら、スザクとライは他のKMF研究者に…」
そこまで云った時、ロイドの顔色が一気に変わった。
流石に、彼らほどのデヴァイサーはそうそう見つかるものではない。
その事をルルーシュ自身承知しているし、あの、ランスロットシリーズを乗りこなせるのは彼らだけだと云う事も解っているのだ。
ここまで、この二人の仕様で改良してきた機体だ。
今更他の者にパイロットを任せられるような状態ではない事は解っている。
というか、他のパイロット…などと云う事になったら、それこそ、一から作り直した方が早いくらいの者になってしまう。
そのくらい、今のランスロットシリーズは彼らの為の機体となっていたのだから…。
「ちょ…ちょっと待って下さいよ!今更、スザク君とライ君以外のパイロットなんて見つかる訳ないでしょう!解っていて…」
「ああ、解っている…。確かに私に対する風当たりが強い事は確かだが…研究者にとって私の肩書など関係ないからな…。そう云えば、ラクシャータ=チャウラーも相当この二人を欲しがって…」
ルルーシュがそこまで云った時…。
ロイドは悪ふざけで云い返していたとは云え…完全に白旗を上げた。
「解りましたよ…。まったく…殿下もお人が悪い…。僕が冗談で云っているって云うのに…」
「なら、私も冗談だ…。そう、気にするな…。ただ、ラクシャータは本当にこの二人を欲しがっているがな…」
「そりゃ…彼女だってKMFの開発者ですからね…。でも、横取りはさせませんから…」
珍しくロイドが真面目な顔をしてルルーシュに云い返している。
「殿下…本当に、変わられましたねぇ…。きっと、こんなルルーシュ殿下をご覧になれば…シュナイゼル殿下も、安心されるでしょうに…。その後、複雑な顔をされるでしょうけれどね…」
くくっと笑いながら、ロイドが云った。
そんなロイドの言葉に、ルルーシュが不思議そうな顔をする。
そんなルルーシュを見てロイドがまた、『やれやれ』と云った表情を見せるのだが…。
「殿下…シュナイゼル殿下は本当に、異母弟君として、貴方様を愛していらっしゃるのですよ?そして…こんな形でないと殿下をお守り出来ないご自身にいつも歯がゆさ肉のされていたんですよ…」
ロイドは、何かを思い出す様に、話しをしていた。
そんな話しを約1時間ほど聞く事になったけれど。
後でセシルからいわれたのは…。
ロイドがあんな風に自分の主について、口にしたのは初めて見たと…そう云っていた。

 作業は急ピッチで進んだ。
ルルーシュだって、実際には現在、在エリア11ブリタニア軍最高指揮官であり、確かに、戦後処理が一段落したとはいえ、やる事が終わったと云う事ではない。
本当に…時間を縫って…という形で現在、この場に立っているのだ。
「ロイド…身元不明者は後回しでいい…。とにかく、今は、身元が解った者の照会をして、ブリタニア人であれば本国へ通達し、家族への連絡等は本国の異母兄上の方でやってくれる筈だ。あと、ブリタニア人だと解る場合には、全てのデータを本国へ送って、照会して貰ってくれ…」
ルルーシュが次から次へと、ロイドとセシルに指示を出す。
そして、ライがロイドとセシルが出したデータの中から、同姓同名やIDカードの照合がうまく出来なかった者達のデータ処理をしていく。
今回の戦闘で死者が4ケタに上り…
こうした作業もかなりの時間がかかる。
確かに、軍の仕事ではあるけれど…。
その先にルルーシュの意思が絡んでいる為、ルルーシュはいつも、自分の身の回りの人間達を使ってやっていたのだけれど。
ただ…
「流石に…人員が足りませんよ?タイムリミットを考えると…」
「やるんだ…」
ライの言葉に、ルルーシュは即、答えて一刀両断した。
確かに時間がない事は確かだし、ここまでルルーシュ自身、あまり気持ちのいい二つ名ではないが、『黒の死神』と云う名前をそう簡単に崩される訳にはいかない。
その二つ名…利用価値があると云う事も…自覚しているのだ。
本当は、そんなもの…あれは、何も感じないわけはない。
しかし、利用価値があるのなら…。
これまで、そんな事、考える事もなかった。
きっと、それは、それまで、全てを自分でやろうとしていて…。
そんな事を考える余裕がなかったからだ。
でも…
今は…
―――こうして…勝手に首を突っ込んで来る者達がいて…。全てを自分でやる…と云う事ではなくなって…。だから…私に…こんな事を考えている…のか…?
自分の目の前で忙しく仕事をしているメンバー達を見ながら、そんな事を思う。
ルルーシュ自身も、データの打ち込みをしているけれど…。
いつもほど、やらなくてはならない仕事が多い訳じゃない。
全体の仕事を考えれば…。
規模の大きな戦闘だったから多いのは確かだけれど。
もし、この時、一人だったのなら…。
そう思った時…。
彼らに対しての気持ちは…。
『感謝』
これまで、それを感じた事があっただろうか?
誰に対しても…。
確かに、言葉にした事はある。
そこに気持ちが入っていたかどうかは…解らない。
というか、そんな事を考えた事なんてない。
ルルーシュの中で…。
そんな事を考えている事に、気付いているのかどうか…。
今の段階では解らないが…。
それでも、周囲は少しずつ気が付き、その変化に合わせ始めている。
それが…ルルーシュをこよなく愛しているシュナイゼルを含めて、次期皇位を狙う者達にとって、あまり喜ばしいとは云えない状態である事は確かであるけれど。
ルルーシュに、その気はなくても、この変化は…確実に周囲を巻き込んで行く事になる…。

 それから…
何時間、パソコンの前に座りながら、送られてくる資料とデータの照合をしていただろうか…。
「あ…あの…そろそろ、休憩にしませんか?」
ライが本人も疲れているようだけれど、こう云う時に中々休憩を取らない主に声をかける。
「もう少し…」
相変わらず、自分の身体を考えないのは、いつもの事の様だ…。
「いい加減にしろ…ルルーシュ…」
ルルーシュのその言葉の後に繋がった言葉は…。
それまで、そこにいなかった筈の人物の言葉…。
「あ、スザク君…」
その人物の名前を呼んだのはセシルだった。
セシルも相当疲れた顔をしている。
そんな彼らの顔を見て、スザクは苦笑するしかない。
―――まったく…自分の出来ることなら、他の人間にも出来るなんて思うなよな…。
スザクの中でそんな風に思ってしまう。
ルルーシュだって、それほど体力がある方じゃないのだ。
周囲でルルーシュの面倒を見ている方は大変である。
確実に、体力がないのに、無理をする。
周囲の方が確実にルルーシュの事を解っている…そんな事を表している光景だ。
―――ライじゃ、ルルーシュを止めるには優し過ぎるか…
そんな事をスザクの中で勝手に分析している。
「とりあえず、一旦、手を止めましょうよ…。ルルーシュ…お前もだ…」
スザクの一声で…ルルーシュ以外の人間がやっと、ほっと息を吐いた。
「スザクく〜〜〜ん…なんとか殿下を大人しくさせてね?僕、確かにコンピュータを弄る事は出来るけど…こう云う細かいデータ処理なんて、ぜぇんぶ、セシル君にまかせっきりだからさぁ…」
ロイドが泣きごとを云い始めている。
本当にこき使っていたらしい。
というか、ルルーシュ自身が頑張ってしまっている為に、他のメンバー達は席を断つことさえ出来ずにいたのだ。
確かに…
ブリタニアの国是を考えた時、自分の主が仕事をしている時に自分が席を立って休憩するなんて事はあり得ない。
―――下手すると…トイレにすら行っていないんじゃ…
多分、普通なら『あり得ないだろ…』と云う話しであるけれど…。
相手がルルーシュの場合、あまりシャレにならない気がしてきた。
「ルルーシュ…とりあえず、パソコンから離れろ…」
スザクが中に入って来て、強引にルルーシュを席から立ち上がらせる。
さっきから一言も声を出す様子がないので、また、熱でも出しているのではないかと心配になるけれど。
今のところはそう云う事ではないようだ。
ちょっとほっとするが、この、どこまでも限界を考えない仕事の仕方をする自分の主には頭が痛くなる。
「とりあえず、1時間くらい食事などを含めた休憩をして下さい…。ルルーシュの説教は俺が全部引き受けますから…」
スザクがそこまで云った時、ルルーシュがはっと我に返ったようだ。
「おい!何故お前が仕切っている!?というか、お前…どうしてここにいる?」
「後はジェレミア卿がやってくれるってさ…。ジェレミア卿が『どうも嫌な予感がするので、お前が殿下のところへ行ってくれ…。もし、無理をしている様なら、首根っこ掴んで休ませてくれ』って云われて来たんだ…」
スザクの言葉に…その場の空気は…驚きに満ち満ちていた…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年07月10日

皇子とレジスタンス 〜苦しいけれど…不思議な云い訳〜

 スザクの行きたい場所とは…。
ルルーシュにとっては皆目見当もつかない。
「一体どこに行きたいと云うんだ…。何故、私に云う?ああ、そうか、私の許を離れる時には私の許可がいると云う事か…。別にかまわないぞ?これで暫くは文官の仕事が続く…」
ルルーシュの言葉にスザクは思い切りため息を吐いた。
「お前…本当に人の話しを聞いていないな…。俺は『お前に連れて行って欲しい』と云ったんだけれどな?」
人の話しを中途半端に聞いたと云うよりも、何となく、ルルーシュはスザクが何を云いだすか予想して、そして、釘を刺そうとしたのか…。
ただ、そんな事でスザクが諦めるとでも思っていたのだろうか?
「……」
ルルーシュの沈黙に、スザクはまたもため息を吐いた。
そして、恐らく、ルルーシュとしては、誰にも知られたくはなかったのだろうとは思う事を…。
そして、誰にも云われたくないであろう事を言葉にした。
「なぁ、ルルーシュ…。俺さ、シンジュクゲットーのテロの時、お前から休みを貰っただろ?」
ルルーシュはいきなりスザクが何を言い出すのか…と云う顔をする。
そんなルルーシュにスザクは内心苦笑しているが、更に言葉を続けた。
本当に…戦いに向かない奴だと思ってしまう。
「その時にさ、コーネリア皇女殿下に連れて行って貰ったんだ…」
ルルーシュがスザクのその言葉に心当たりがあって、どこに連れていかれた時の事を放しているのか、察して、顔をそむけた。
ルルーシュのそんな様子もスザクは無視する。
「俺も…手伝わせてくれ…」
スザクが顔をそむけたルルーシュにそう云った。
いつにない真剣な声だ。
顔を見なくても解る。
「な…何の事だ…?」
この期に及んでまだ、とぼける気満々らしい。
正直、本当にめんどくさい皇子だと思う。
「とぼけるならいいさ…。俺はとてもお疲れになっている皇子殿下をこのまま寝室へ運んで、皇子殿下が眠っている間に政庁に連れて帰るだけだからな…」
スザクのその言葉にルルーシュがキッとスザクを睨んだ。
そんなルルーシュの睨みつけて来る視線もスザクは完全無視する。
「俺は、皇子殿下を政庁に連れて帰ってから、ライを皇子殿下の傍で殿下をお守りする様に云ってから、ジェレミア卿にお願いするさ…。どうにも、皇子殿下がいい顔をしてくれないしな…。というか、完全に俺の云う事、無視してくれているからな…」
スザクの言葉にルルーシュがぐっと奥歯を噛んでいる。
表情は…『こいつ…調子に乗りやがって…』と云っている。
そんなルルーシュを見て、スザクはニヤッと笑った。
そのスザクの表情に、まるで、猫が逆毛立たせているようなオーラをルルーシュが纏っている。
「ルルーシュ…連れて行ってくれるだろ?」
悔しそうにしているルルーシュにそう尋ねた。
「ふん…。嫌だと云っても無理矢理着いて来る気なのだろう?」
「そんな事はしないさ…。さっきも言っただろう?お疲れの皇子殿下にはトウキョウ租界の政庁に戻って頂き、俺がジェレミア卿と代理を務めさせて頂こうと…」
このスザクの言い草に頗る機嫌が悪くなるのだけれど…。
しかし、ここまで云っているスザクが引く訳がない。
「解った…着いてこい…」

 ルルーシュは基地内を回り、最後にシンジュクゲットーのスザクの仲間達を見舞った。
二部屋に行かなければならないかとは思ったのだけれど…。
「意外と元気そうだな…」
ルルーシュが少し、面食らった様に目の前にいる二人に声をかけた。
確かに、報告では彼らは何箇所か、骨折しているとの報告だったけれど…。
「カレン…お前…車いすに乗って朝比奈さんのところに遊びに来ているのかよ…」
スザクが呆れたように車いすに乗って部屋移動をして来ていたカレンに声をかける。
「いいじゃない!とりあえず、自力でここに来ているし、必要な時にはちゃんと部屋にいるわよ!」
カレンが少しムッとしたようにスザクに云い返す。
そんなカレンに言葉に、ルルーシュが少しだけ気がかりがある…と云った感じに声をかけた。
「何か…ブリタニア軍の者に云われたのか?それとも、理不尽な扱いを受けているのか?」
ルルーシュがまず心配したのはそこだった。
エリア11は確かに他のエリアと比べて、ナンバーズと呼ばれる人々への風当たりは少ないが…。
いくら、総督がそう云った差別を許していないと云っても、気持ちの部分にまで強制する事は出来ない。
だから、こう云った場所で何かの形で理不尽な事をされていないか心配になったのだ。
「ああ、大丈夫だよ…。ホント、君って、変わっているブリタニア人だよね…。まぁ、だから、ここまで今のエリア11が変わったんだろうけれどさ…」
ルルーシュの心配が何であるのか解った朝比奈が軽いノリで返した。
ルルーシュは朝比奈の方を見て、朝比奈の表情に、その言葉の中にウソはないと判断して、少し、ほっとした様な表情をした。
確かに、ブリタニア人としては変わっているかもしれない。
それに、以前の…。
このエリアに来る前のルルーシュが今のルルーシュを見たら…なんて思うだろうか…
そんな事を考えてしまう。
非常に客観的に自分の事を見ているようで、苦笑してしまうけれど。
「ブリタニア人にも色々いると云う事だ。色々な考え方がある。単にプレッシャーをかけて搾取するよりも、今のやり方の方がやり易いと判断しただけだ。それに、日本の技術と云うのは…確かに軍事面ではブリタニアに及ばないかもしれないが…他の部分では本当に目を見張るものがある…」
朝比奈の言葉に、ルルーシュがそう答えた。
その言葉に朝比奈も何か、納得したように笑った。
「よかったよ…。変な情にほだされての今のあんたのやり方ではなくて…。情にほだされた現在の施策であると云うのなら、このエリアからあんたが離れた時点でまた、地獄が始まるからな…」
ルルーシュはその言葉に驚いた表情を見せた。
日本軍の軍人だったと云う彼が、何故、ここまで云い切れるのか、少々不思議だったからだ。
そのルルーシュの表情の意味に気づいた朝比奈が言葉を続けた。
「あんたがやっている事が政治…だったからな…。単に情にほだされて、流されて強権を振るっていたら確実にこの先、ひずみが生まれた時に脆く崩れ去る。俺は軍人だけど、藤堂さんと一緒にいて、その事、結構学んできた様な気がするんだ…。日本がブリタニアに占領されてから…色んな形で、抵抗運動をして来て…さ…」

 朝比奈の言葉は…ルルーシュにとって不思議に思うと同時に、こんな風に考えてあの抵抗運動をしていた者達がいた事が意外だったし、ルルーシュも初めて知った事だ。
「そんな事を…考えていたのか…?」
ルルーシュが思わず声に出して疑問を投げかけた。
「まぁ、何も考えずに抵抗運動と称して武力を使っていたならただの殺人集団だ。俺達がやっていたのはその先の目的を達成する為の手段だろ?武力行使ってのは…。しかも、最終的手段だ…。それを行使するからにはやるべき事をやり、その後に行使しなければならないものだって、藤堂さんが教えてくれたし、ブリタニアに占領されてからあんたがこのエリアに来るまでの間の戦闘の中で、思い知らされていたからねぇ…」
朝比奈の言葉に、ルルーシュは言葉が出なくなる。
これまで、自分達に向かって来る者達がそんな風に考えていると思わず、ただ、その、不穏分子を消し去る事ばかりだった。
そして、その度に犠牲者がたくさん出て、傷ついていたものの…結局何をする事も出来ずにいて、その後、自己満足な事だけしていて…結局、自分の心が晴れる事はなかった。
「そうか…。私はまだ…未熟者…なのだな…」
ルルーシュが小さく呟いた。
ルルーシュがここまでやってきた事のすべての中心は『ナナリーを守る事』だった。
だからこそ、気持ちよりも先に結果を出す事を考えた。
これまで、ルルーシュが『黒の死神』と云われても結果を出す事に拘っていたのは…そこにあったからだ。
朝比奈が云っている様に情にほだされて…と云うのは、ルルーシュの場合、究極の形で情にほだされているような気もするけれど。
「あのさぁ…少し力抜いたら?少なくとも、今のこの日本、俺は少しずつだけど、いい方向に進んでいると思う。あんたがどんな思惑でこんな施策を執っているのかは知れないけど、政治に求められるのは結果だろ?あんたは今、この国の最高責任者だろ?なら、結果を求めればいいんじゃないのか?そして、俺達はあんたの向いてる方向に同調出来たから、俺もカレンもあんな、物騒なところに乗り込んで行けたんだしな…」
朝比奈がそう云ってくっと笑った。
正直、頭がいいのか、悪いのか、悩んでしまうと云った表情だ。
「そう!あんた!あんな危険なところに行かされるなんて聞いてなかったわよ!というか、なんでそこにこんなにか弱い私を放り込んだわけ?」
カレンが朝比奈の言葉に喚き散らした。
というか、カレンの人選は何もルルーシュがした訳ではない。
それに、報告ではカレンが一番暴れ…もとい、一番成果を上げていたと聞くが…。
「あ…否…紅月カレン…うまく情報伝達も出来ていなかったし、星刻からの情報も一通り渡しておいた筈なんだが…」
カレンの勢いに押されて、ルルーシュの腰が少々引けている。
普段は冷静沈着で、こいつに口で勝てる人間が思いつかないほどなのに…。
それとも、こうした態度で来た相手に対して、そんな風に腰が引けるくらい、物事を少し、気楽に見られるようになったのだろうか…。

 スザクはそんなルルーシュを見て、少しだけほっとする。
戦場で、ずっと緊張状態で…。
総指揮官と云う重責を全て一人で背負おうとしている姿が正直、見ていてハラハラさせられるし、イライラさせられるし、ドキッとさせられるし…。
確かにルルーシュの出自がどうであれ、一度は騎士になっても務まらない者が出て来そうだと思う程だった。
スザク自身、これほど難しい主に仕える事になるとは思いもしなかった。
と云うか、ずっと、将来は父の後を継いで政治家となり、日本を導く立場になると思っていた。
ブリタニアとの戦争でその運命が変わってしまい…。
今ではあの時、敵国として戦った国の皇子の騎士として存在しているのだ。
そして、その皇子がこのエリアを離れる時にはスザクの騎士としての称号を剥奪し、新たに騎士候の地位を与えてこのエリアの総督に就任させるつもりだったと云うから驚きだ。
確かに、日本人の手で日本を…。
そんな風に思うならルルーシュに云われた通りにした方が良かったのかもしれないと思うけれど…。
それでも、ルルーシュの傍にいて、自分がルルーシュほど見事な手腕を振るってこのエリアをまとめて行ける自信はなかったし、もし、スザクが総督となった段階でこのエリアが荒れる事を考えた時…。
少し怖くなる。
ルルーシュには今、日本人の支持者も多いのだ。
確かに日本の独立を願っている者達もいる事は確かだけれど。
スザクだって、『神聖ブリタニア帝国植民エリア』と云う呼称よりも『日本国』と云う方がいいに決まっている。
だから迷う。
日本はやはり日本人が物事を決めてこそ日本であり…。
今のルルーシュが総督でいると云う事は、どれ程素晴らしい統治を行っていても、『日本』ではないと云う事なのだ。
国、民族…。
スザク自身、こんな形で侵略されるまでは深く考えた事がない。
深く考える必要がなかった。
日本人であると云う事が、ごく自然なことだった。
日本と云うのは古今東西見て見ても、中々特殊な国で、基本的にどこかの国に侵略されてしまったと云う事は殆どなかった国だ。
歴史の中で『日本』と云う国が消えた事がないのだ。
確かに、国を守る為に他国に礼を払う事はあったけれど、それはあくまで『一国家』として礼を払うのであって、従属国としてでも、植民地としてでもなかった。
だから、こうして初めて『植民エリア』として支配を受けた時に、思い知る事になる。
独立国家とは…。
民族とは…。
主権とは…。
ルルーシュがどれほど人々が満足する執政を行っても…。
日本人が本当にブリタニア人にでもならない限り、結局、独立運動は起きるだろう。
それに、ルルーシュの様な総督は特別だ。
ルルーシュがこのエリアに来る前の総督…。
あちらの方が普通だろう。
個人の気持ちと、国を思う気持ちが…スザクの中で交錯する。
目の前でルルーシュと、スザクのレジスタンスグループの人物達がこんな風に笑って話しているのを…目の当たりにすると…。
「二人の顔を見られて、そして、怪我はしていても、命の別条がなさそうで良かった。私からも藤堂と『キョウト六家』に礼状と一緒に報告もしておこう。しっかりと身体を休めてくれ…」
そう云って、ルルーシュは病室を出て行き、スザクもその後を追った。

 基地内にある医療施設だけれど、立派に整えられている。
そして、名誉ブリタニア人と云う立場の兵士であっても、差別なく、充分な治療を施している。
きっと、こんな事をして、このエリア内の武官や文官からも不満の声が出て来ただろう。
相当、ルルーシュ自身、強引に事を進めていると云う自覚はあると思われる。
確かに、そう云った差別がないことは喜ばしい事ではあるのだけれど…。
「なぁ…ルルーシュ…。ジェレミア卿なんかを見ていると…その…」
スザクが云いにくそうにルルーシュに声をかけて来た。
ルルーシュの方は、スザクが何を云いたいのか…何となく解ったようで、一呼吸置いてから口を開いた。
「そのことなら心配するな…。ジェレミアの小言をくらうのも私の仕事だ。確かに、ジェレミアの様に、突っ走るものを止めるブレーキ役も必要だ。私自身が、王宮の中でその…蔑まれる側の立場だったからな…。やはり、ブリタニアと云う国は身分制度が強固に出来上がっているから…どうしても、そのしがらみから抜け出せない者が多い。しかし、ここまで侵略戦争をして、手に入れた植民エリアで差別政策を行って結果を…私は見ているし、お前も知っているだろう?」
ルルーシュの表情が…本当に総督としての表情がいたに着いてきた気がする。
それがいい事なのか…悪い事なのか、良く解らないけれど。
「そりゃ…まぁ…。だからこそ、俺だってレジスタンスをやっていたわけだからな…」
「そう…。そして、レジスタンス達の抵抗力が強ければ、互いに犠牲が増えるし、溝も深まって行く。綺麗事を云うつもりはないが…そんな悲劇は…出来るだけないに越した事はないと…思っている…」
ルルーシュの言葉には、説得力があった。
シンジュクゲットーでの騒ぎのときだって、あんな形で死者達に礼を払っていたのだ。
だからこそ、スザクはルルーシュの傍にいたいと思ったし、この危なっかしい皇子を守りたいと思ったわけなのだけれど。
「お前のやっている事をそれなりに見ているからな…。解っているよ…。だから、連れて行けって云っているんだろ?俺だって、多くの人々を手にかけているんだ…。自己満足であったとしても…ちゃんと…礼を払いたいと思う…。そうやって国の為に散って行った命に対して礼を払っているお前の姿って…凄いと思うよ…」
ルルーシュとしてはそんな風に云われても、自分の中で困惑してしまうのだが…。
と云うのも、元々が自分の気持ちの中に少しでも罪滅ぼしをしたいと云う気持ちがあってやっている事だ。
だから、スザクが云っているようなそんな大それたことでも、立派な事でもないと…ルルーシュは思っているから…。
「別に…私は…」
「お前がどう思っていたって、それをやっていない人間の方が多いんだ…。そうやって、礼を払ってくれる指揮官の下で任務を果たせるって云うのは…多分、気分的に違うと思う。戦争やっていれば、死ぬことだって当然あるけれど…。それでも、『命』を意識してくれている上官の下で任務出来るってのはやっぱり、気持ちが違うよ…。だから、これからもきっと、ルルーシュの下で戦っていく俺に、少し、安心感をくれたっていいだろ?俺、あんまり気持ち的に強くないからな…」
少々苦しい、スザクの『着いて来るためのいいわけ』にルルーシュは苦笑混じりに
「仕方ないな…。ジェレミアとライを呼んで来てくれ…」
そう云った。
そのルルーシュの言葉に、スザクは、
「イエス、ユア・ハイネス…」
そう答えて、その場から走り出したのだった…

To Be Continued


あとがきに代えて



何となく、これまた書いてみましたが…。
本当は、閉鎖までに掲載しない予定だったのですが、思いの他、この後の事を知っている人以外、スクロールされていないので、適当に更新しております。
スクロールして読んで下さっている方々は、基本的に和泉の作品を好きだと思って下さっている方々なので…。
恐らく、この続きの事を解っている方々だから、別にいいよね…って感じで…。
さて、今回、レジスタンス組の二人を出してみました。
朝比奈の性格付けって本編では『藤堂命』みたいな感じしか解らなくって…。
だから結構捏造です。
でもって、カレン、やたらと元気です。
ホントに終わりが見えてきましたね…。
恐らく、最終回はその先の方で…と云う事になります。
気にして下さっている方は、是非、その先で呼んでキャッてください。


☆拍手のお返事


はやのさま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
そして、ご無沙汰致しております。
お元気でしたでしょうか?
一応、はやのさまのウェブにはリンクを張って頂いていたので、改めて御挨拶に伺おうと思っておりました。
そのように思って頂けて本当に嬉しいです。
有難う御座居ます。
なお、今回の事は、このブログを見た人しか知らない形となっております。
和泉の知人のどなたにも個人的にはお知らせしておりません。

温かいお言葉、有難う御座居ます。
そんな風に思って頂けて大変光栄に思っております。
それでも、書く事をやめるわけではありませんので…。
また、時間のある時には覗いてやって下さいませ。

あと、8月のライブですか…。
まぁ、『ギアス』では苦しいので…参加するとしても一般参加でしょうね…。
ただ、8月の名古屋…死ぬ覚悟で行かないと…(-_-;)
22日のインテに申し込んでいるので、そちらのスペース次第ですね。
和泉は『ギアス』でしか活動していないので…困ったことに他ジャンルで申し込み出来ませんしね…(苦笑)
デュラララは現在、CS放送の録画を必死に追いかけつつ見ている状態です。
名古屋では『ギアス』は予めみんなで申し合わせしないと寂しい事になりますよね…。
それでもYou Clubブースにはギアス作品なりますし…。
もし、体調が大丈夫そうなら、はやのさまのお顔を見に行かせて頂きます。

紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
今日のスザクの誕生日…見事に晴れました。
こちらは夏日でした。
でも、スザクの誕生日に、集中豪雨なんて悲しすぎますからね…。
ホント、晴れてくれてよかった…。

『あの日のフォトグラフ(後編)』
シュナ兄は最初からこの役どころでおく予定でした。
まぁ、カノンとどっちがいいかなぁ…とは思ったのですが…。
ただ、社長シュナが仕事から逃げ出してここに居て…という設定は結構読んで下さった皆さんが面白妄想して下さるかも知れないと思いまして…。
そこに立つのは、カノンさんだったり、ロイドさんだったり…多分、色々でしょうね…(笑)

あと、ルルーシュの心境に関しては…これを少しスケールを小さくした感じ…って感じですね。
まぁ、そこまで大きい訳じゃないのですが…。
でも、重さとしては器が違うので同じくらいでしょうかね…。
それでもスザクの言葉は、多分、諸刃の剣…だと思います。
元気づけられるかもしれないけれど、逆に追い込んでしまうかもしれない可能性も秘めている…という…。
ルルーシュがどう受け取ってくれたのかは…どうなのかなぁ…という感じです。
多分、本人にしか解らないと思いますし。

悩む事は必要ですけれど…。
ヘンな悩み方をすると非常に周囲にご迷惑がかかりますよね。
和泉自身はもっと大人にならなくては…強くなりたいと思う昨今ではあります。
中々うまくいかなくって…。
それでも見捨てずに居て下さる紫翆さまにはとても感謝しております。
早く、落ち込む事に飽きるといいな…と思っております。


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posted by 和泉綾 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

皇子とレジスタンス 〜苦しいけれど…不思議な云い訳〜

 スザクの行きたい場所とは…。
ルルーシュにとっては皆目見当もつかない。
「一体どこに行きたいと云うんだ…。何故、私に云う?ああ、そうか、私の許を離れる時には私の許可がいると云う事か…。別にかまわないぞ?これで暫くは文官の仕事が続く…」
ルルーシュの言葉にスザクは思い切りため息を吐いた。
「お前…本当に人の話しを聞いていないな…。俺は『お前に連れて行って欲しい』と云ったんだけれどな?」
人の話しを中途半端に聞いたと云うよりも、何となく、ルルーシュはスザクが何を云いだすか予想して、そして、釘を刺そうとしたのか…。
ただ、そんな事でスザクが諦めるとでも思っていたのだろうか?
「……」
ルルーシュの沈黙に、スザクはまたもため息を吐いた。
そして、恐らく、ルルーシュとしては、誰にも知られたくはなかったのだろうとは思う事を…。
そして、誰にも云われたくないであろう事を言葉にした。
「なぁ、ルルーシュ…。俺さ、シンジュクゲットーのテロの時、お前から休みを貰っただろ?」
ルルーシュはいきなりスザクが何を言い出すのか…と云う顔をする。
そんなルルーシュにスザクは内心苦笑しているが、更に言葉を続けた。
本当に…戦いに向かない奴だと思ってしまう。
「その時にさ、コーネリア皇女殿下に連れて行って貰ったんだ…」
ルルーシュがスザクのその言葉に心当たりがあって、どこに連れていかれた時の事を放しているのか、察して、顔をそむけた。
ルルーシュのそんな様子もスザクは無視する。
「俺も…手伝わせてくれ…」
スザクが顔をそむけたルルーシュにそう云った。
いつにない真剣な声だ。
顔を見なくても解る。
「な…何の事だ…?」
この期に及んでまだ、とぼける気満々らしい。
正直、本当にめんどくさい皇子だと思う。
「とぼけるならいいさ…。俺はとてもお疲れになっている皇子殿下をこのまま寝室へ運んで、皇子殿下が眠っている間に政庁に連れて帰るだけだからな…」
スザクのその言葉にルルーシュがキッとスザクを睨んだ。
そんなルルーシュの睨みつけて来る視線もスザクは完全無視する。
「俺は、皇子殿下を政庁に連れて帰ってから、ライを皇子殿下の傍で殿下をお守りする様に云ってから、ジェレミア卿にお願いするさ…。どうにも、皇子殿下がいい顔をしてくれないしな…。というか、完全に俺の云う事、無視してくれているからな…」
スザクの言葉にルルーシュがぐっと奥歯を噛んでいる。
表情は…『こいつ…調子に乗りやがって…』と云っている。
そんなルルーシュを見て、スザクはニヤッと笑った。
そのスザクの表情に、まるで、猫が逆毛立たせているようなオーラをルルーシュが纏っている。
「ルルーシュ…連れて行ってくれるだろ?」
悔しそうにしているルルーシュにそう尋ねた。
「ふん…。嫌だと云っても無理矢理着いて来る気なのだろう?」
「そんな事はしないさ…。さっきも言っただろう?お疲れの皇子殿下にはトウキョウ租界の政庁に戻って頂き、俺がジェレミア卿と代理を務めさせて頂こうと…」
このスザクの言い草に頗る機嫌が悪くなるのだけれど…。
しかし、ここまで云っているスザクが引く訳がない。
「解った…着いてこい…」

 ルルーシュは基地内を回り、最後にシンジュクゲットーのスザクの仲間達を見舞った。
二部屋に行かなければならないかとは思ったのだけれど…。
「意外と元気そうだな…」
ルルーシュが少し、面食らった様に目の前にいる二人に声をかけた。
確かに、報告では彼らは何箇所か、骨折しているとの報告だったけれど…。
「カレン…お前…車いすに乗って朝比奈さんのところに遊びに来ているのかよ…」
スザクが呆れたように車いすに乗って部屋移動をして来ていたカレンに声をかける。
「いいじゃない!とりあえず、自力でここに来ているし、必要な時にはちゃんと部屋にいるわよ!」
カレンが少しムッとしたようにスザクに云い返す。
そんなカレンに言葉に、ルルーシュが少しだけ気がかりがある…と云った感じに声をかけた。
「何か…ブリタニア軍の者に云われたのか?それとも、理不尽な扱いを受けているのか?」
ルルーシュがまず心配したのはそこだった。
エリア11は確かに他のエリアと比べて、ナンバーズと呼ばれる人々への風当たりは少ないが…。
いくら、総督がそう云った差別を許していないと云っても、気持ちの部分にまで強制する事は出来ない。
だから、こう云った場所で何かの形で理不尽な事をされていないか心配になったのだ。
「ああ、大丈夫だよ…。ホント、君って、変わっているブリタニア人だよね…。まぁ、だから、ここまで今のエリア11が変わったんだろうけれどさ…」
ルルーシュの心配が何であるのか解った朝比奈が軽いノリで返した。
ルルーシュは朝比奈の方を見て、朝比奈の表情に、その言葉の中にウソはないと判断して、少し、ほっとした様な表情をした。
確かに、ブリタニア人としては変わっているかもしれない。
それに、以前の…。
このエリアに来る前のルルーシュが今のルルーシュを見たら…なんて思うだろうか…
そんな事を考えてしまう。
非常に客観的に自分の事を見ているようで、苦笑してしまうけれど。
「ブリタニア人にも色々いると云う事だ。色々な考え方がある。単にプレッシャーをかけて搾取するよりも、今のやり方の方がやり易いと判断しただけだ。それに、日本の技術と云うのは…確かに軍事面ではブリタニアに及ばないかもしれないが…他の部分では本当に目を見張るものがある…」
朝比奈の言葉に、ルルーシュがそう答えた。
その言葉に朝比奈も何か、納得したように笑った。
「よかったよ…。変な情にほだされての今のあんたのやり方ではなくて…。情にほだされた現在の施策であると云うのなら、このエリアからあんたが離れた時点でまた、地獄が始まるからな…」
ルルーシュはその言葉に驚いた表情を見せた。
日本軍の軍人だったと云う彼が、何故、ここまで云い切れるのか、少々不思議だったからだ。
そのルルーシュの表情の意味に気づいた朝比奈が言葉を続けた。
「あんたがやっている事が政治…だったからな…。単に情にほだされて、流されて強権を振るっていたら確実にこの先、ひずみが生まれた時に脆く崩れ去る。俺は軍人だけど、藤堂さんと一緒にいて、その事、結構学んできた様な気がするんだ…。日本がブリタニアに占領されてから…色んな形で、抵抗運動をして来て…さ…」

 朝比奈の言葉は…ルルーシュにとって不思議に思うと同時に、こんな風に考えてあの抵抗運動をしていた者達がいた事が意外だったし、ルルーシュも初めて知った事だ。
「そんな事を…考えていたのか…?」
ルルーシュが思わず声に出して疑問を投げかけた。
「まぁ、何も考えずに抵抗運動と称して武力を使っていたならただの殺人集団だ。俺達がやっていたのはその先の目的を達成する為の手段だろ?武力行使ってのは…。しかも、最終的手段だ…。それを行使するからにはやるべき事をやり、その後に行使しなければならないものだって、藤堂さんが教えてくれたし、ブリタニアに占領されてからあんたがこのエリアに来るまでの間の戦闘の中で、思い知らされていたからねぇ…」
朝比奈の言葉に、ルルーシュは言葉が出なくなる。
これまで、自分達に向かって来る者達がそんな風に考えていると思わず、ただ、その、不穏分子を消し去る事ばかりだった。
そして、その度に犠牲者がたくさん出て、傷ついていたものの…結局何をする事も出来ずにいて、その後、自己満足な事だけしていて…結局、自分の心が晴れる事はなかった。
「そうか…。私はまだ…未熟者…なのだな…」
ルルーシュが小さく呟いた。
ルルーシュがここまでやってきた事のすべての中心は『ナナリーを守る事』だった。
だからこそ、気持ちよりも先に結果を出す事を考えた。
これまで、ルルーシュが『黒の死神』と云われても結果を出す事に拘っていたのは…そこにあったからだ。
朝比奈が云っている様に情にほだされて…と云うのは、ルルーシュの場合、究極の形で情にほだされているような気もするけれど。
「あのさぁ…少し力抜いたら?少なくとも、今のこの日本、俺は少しずつだけど、いい方向に進んでいると思う。あんたがどんな思惑でこんな施策を執っているのかは知れないけど、政治に求められるのは結果だろ?あんたは今、この国の最高責任者だろ?なら、結果を求めればいいんじゃないのか?そして、俺達はあんたの向いてる方向に同調出来たから、俺もカレンもあんな、物騒なところに乗り込んで行けたんだしな…」
朝比奈がそう云ってくっと笑った。
正直、頭がいいのか、悪いのか、悩んでしまうと云った表情だ。
「そう!あんた!あんな危険なところに行かされるなんて聞いてなかったわよ!というか、なんでそこにこんなにか弱い私を放り込んだわけ?」
カレンが朝比奈の言葉に喚き散らした。
というか、カレンの人選は何もルルーシュがした訳ではない。
それに、報告ではカレンが一番暴れ…もとい、一番成果を上げていたと聞くが…。
「あ…否…紅月カレン…うまく情報伝達も出来ていなかったし、星刻からの情報も一通り渡しておいた筈なんだが…」
カレンの勢いに押されて、ルルーシュの腰が少々引けている。
普段は冷静沈着で、こいつに口で勝てる人間が思いつかないほどなのに…。
それとも、こうした態度で来た相手に対して、そんな風に腰が引けるくらい、物事を少し、気楽に見られるようになったのだろうか…。

 スザクはそんなルルーシュを見て、少しだけほっとする。
戦場で、ずっと緊張状態で…。
総指揮官と云う重責を全て一人で背負おうとしている姿が正直、見ていてハラハラさせられるし、イライラさせられるし、ドキッとさせられるし…。
確かにルルーシュの出自がどうであれ、一度は騎士になっても務まらない者が出て来そうだと思う程だった。
スザク自身、これほど難しい主に仕える事になるとは思いもしなかった。
と云うか、ずっと、将来は父の後を継いで政治家となり、日本を導く立場になると思っていた。
ブリタニアとの戦争でその運命が変わってしまい…。
今ではあの時、敵国として戦った国の皇子の騎士として存在しているのだ。
そして、その皇子がこのエリアを離れる時にはスザクの騎士としての称号を剥奪し、新たに騎士候の地位を与えてこのエリアの総督に就任させるつもりだったと云うから驚きだ。
確かに、日本人の手で日本を…。
そんな風に思うならルルーシュに云われた通りにした方が良かったのかもしれないと思うけれど…。
それでも、ルルーシュの傍にいて、自分がルルーシュほど見事な手腕を振るってこのエリアをまとめて行ける自信はなかったし、もし、スザクが総督となった段階でこのエリアが荒れる事を考えた時…。
少し怖くなる。
ルルーシュには今、日本人の支持者も多いのだ。
確かに日本の独立を願っている者達もいる事は確かだけれど。
スザクだって、『神聖ブリタニア帝国植民エリア』と云う呼称よりも『日本国』と云う方がいいに決まっている。
だから迷う。
日本はやはり日本人が物事を決めてこそ日本であり…。
今のルルーシュが総督でいると云う事は、どれ程素晴らしい統治を行っていても、『日本』ではないと云う事なのだ。
国、民族…。
スザク自身、こんな形で侵略されるまでは深く考えた事がない。
深く考える必要がなかった。
日本人であると云う事が、ごく自然なことだった。
日本と云うのは古今東西見て見ても、中々特殊な国で、基本的にどこかの国に侵略されてしまったと云う事は殆どなかった国だ。
歴史の中で『日本』と云う国が消えた事がないのだ。
確かに、国を守る為に他国に礼を払う事はあったけれど、それはあくまで『一国家』として礼を払うのであって、従属国としてでも、植民地としてでもなかった。
だから、こうして初めて『植民エリア』として支配を受けた時に、思い知る事になる。
独立国家とは…。
民族とは…。
主権とは…。
ルルーシュがどれほど人々が満足する執政を行っても…。
日本人が本当にブリタニア人にでもならない限り、結局、独立運動は起きるだろう。
それに、ルルーシュの様な総督は特別だ。
ルルーシュがこのエリアに来る前の総督…。
あちらの方が普通だろう。
個人の気持ちと、国を思う気持ちが…スザクの中で交錯する。
目の前でルルーシュと、スザクのレジスタンスグループの人物達がこんな風に笑って話しているのを…目の当たりにすると…。
「二人の顔を見られて、そして、怪我はしていても、命の別条がなさそうで良かった。私からも藤堂と『キョウト六家』に礼状と一緒に報告もしておこう。しっかりと身体を休めてくれ…」
そう云って、ルルーシュは病室を出て行き、スザクもその後を追った。

 基地内にある医療施設だけれど、立派に整えられている。
そして、名誉ブリタニア人と云う立場の兵士であっても、差別なく、充分な治療を施している。
きっと、こんな事をして、このエリア内の武官や文官からも不満の声が出て来ただろう。
相当、ルルーシュ自身、強引に事を進めていると云う自覚はあると思われる。
確かに、そう云った差別がないことは喜ばしい事ではあるのだけれど…。
「なぁ…ルルーシュ…。ジェレミア卿なんかを見ていると…その…」
スザクが云いにくそうにルルーシュに声をかけて来た。
ルルーシュの方は、スザクが何を云いたいのか…何となく解ったようで、一呼吸置いてから口を開いた。
「そのことなら心配するな…。ジェレミアの小言をくらうのも私の仕事だ。確かに、ジェレミアの様に、突っ走るものを止めるブレーキ役も必要だ。私自身が、王宮の中でその…蔑まれる側の立場だったからな…。やはり、ブリタニアと云う国は身分制度が強固に出来上がっているから…どうしても、そのしがらみから抜け出せない者が多い。しかし、ここまで侵略戦争をして、手に入れた植民エリアで差別政策を行って結果を…私は見ているし、お前も知っているだろう?」
ルルーシュの表情が…本当に総督としての表情がいたに着いてきた気がする。
それがいい事なのか…悪い事なのか、良く解らないけれど。
「そりゃ…まぁ…。だからこそ、俺だってレジスタンスをやっていたわけだからな…」
「そう…。そして、レジスタンス達の抵抗力が強ければ、互いに犠牲が増えるし、溝も深まって行く。綺麗事を云うつもりはないが…そんな悲劇は…出来るだけないに越した事はないと…思っている…」
ルルーシュの言葉には、説得力があった。
シンジュクゲットーでの騒ぎのときだって、あんな形で死者達に礼を払っていたのだ。
だからこそ、スザクはルルーシュの傍にいたいと思ったし、この危なっかしい皇子を守りたいと思ったわけなのだけれど。
「お前のやっている事をそれなりに見ているからな…。解っているよ…。だから、連れて行けって云っているんだろ?俺だって、多くの人々を手にかけているんだ…。自己満足であったとしても…ちゃんと…礼を払いたいと思う…。そうやって国の為に散って行った命に対して礼を払っているお前の姿って…凄いと思うよ…」
ルルーシュとしてはそんな風に云われても、自分の中で困惑してしまうのだが…。
と云うのも、元々が自分の気持ちの中に少しでも罪滅ぼしをしたいと云う気持ちがあってやっている事だ。
だから、スザクが云っているようなそんな大それたことでも、立派な事でもないと…ルルーシュは思っているから…。
「別に…私は…」
「お前がどう思っていたって、それをやっていない人間の方が多いんだ…。そうやって、礼を払ってくれる指揮官の下で任務を果たせるって云うのは…多分、気分的に違うと思う。戦争やっていれば、死ぬことだって当然あるけれど…。それでも、『命』を意識してくれている上官の下で任務出来るってのはやっぱり、気持ちが違うよ…。だから、これからもきっと、ルルーシュの下で戦っていく俺に、少し、安心感をくれたっていいだろ?俺、あんまり気持ち的に強くないからな…」
少々苦しい、スザクの『着いて来るためのいいわけ』にルルーシュは苦笑混じりに
「仕方ないな…。ジェレミアとライを呼んで来てくれ…」
そう云った。
そのルルーシュの言葉に、スザクは、
「イエス、ユア・ハイネス…」
そう答えて、その場から走り出したのだった…

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年06月26日

皇子とレジスタンス 〜Arm to which it can relieve it〜

 現在、枢木スザクは、ルルーシュと一緒に資料室にいた。
そして、少々困ってしまった。
と云うか、何故にこんな事になってしまったのかと…自分の頭の中で考えている。
―――確か…ルルーシュのバカ話しを聞いていて…それで一発ぶん殴って…それから…
と、ここまで来た経緯を自分の中で整理しているのだけれど…。
ルルーシュを抱きしめて、その耳元で言葉を反芻していて…。
最終的にはルルーシュは身体を震わせていたけれど。
ある段階でその震えが感じなくなった。
少し落ち着いたのかと、ルルーシュの様子を窺ってみたら…。
そのままスザクに自分の体を預けて眠ってしまっていたのだ。
寝息を立てているルルーシュを見ていて…恐らく、ルルーシュがこんな無防備でスザクの腕の中で眠っていたなどと本人の知るところとなったら…。
確実に口止めのためにあらゆることをされるだろう。
それこそ、手段を選ばず…。
そんな事よりも、ルルーシュがこんな風に眠っているのを見るのは…シンジュクゲットーでの騒ぎのとき、戦後処理が終わってから熱を出した時くらいだ。
否、あの時は完全に熱に浮かされている状態だったからこんな風に、無防備な眠り…と云う感じではない。
こうして間近で見ていると、綺麗な顔をしていると思う。
日本人でもこれほど真黒な黒髪はいないかもしれないと思うような、漆黒の黒髪…。
目を閉じるとよく解る、黒く長い睫毛。
一つ一つ整った顔のパーツ…。
そして、ブリタニアの皇族の姿はテレビやパソコンの画面で見た事があるけれど…。
色白なのは血筋なのか…。
その中でも
黙っていれば本当に女だと云ってもばれなさそうだ。
と云うか、こんな近くでルルーシュの顔を見た事のある人間が一体どれだけいるのだろうか…。
暗殺されたと云う、ルルーシュの母親が生きていた頃ならともかく、その後、こんな間近でルルーシュの顔を見る事が出来た人間がいたとは思えない。
おまけに…
この無防備な顔をして眠っている姿など…。
―――これは…どう捉えるべきなのだろうか…。
スザクの中出は真剣に悩んでしまう。
これまで、ルルーシュの存在が気になり、彼のやっている事が気になり、ずっと意識を傾けていたとは思うけれど。
こんな、他の何者に対しても警戒心剥き出しの野良猫みたいなルルーシュがこんな寝顔を見せるなど…想像できない。
と云うか、普通に眠っていても、人の気配がすれば目を醒ましそうな感じだ。
実際に普段のルルーシュはそんな感じだ。
誰に対しても弱みを見せてはならない、凛としていなければならない…。
そんな意識を持ち続けている様に見える。
実際そうだったのだろうとは思うけれど。
ルルーシュの傍にいて驚かされる事ばかりだ。
自分とルルーシュは同じ歳…。
誕生日だけで云えば、スザクの方が5ヶ月早く生まれているのだ。
それなのに…。
ルルーシュの方が遥かに大人びて見える。
―――と云うよりも、年相応に見えないと云った方が正確だよな…。
そんな事を思いながら、ルルーシュの顔を見て『はぁ』とため息を吐いてしまう。

 殆どその場の勢いでルルーシュの騎士となってから、どれほど時間が経っただろうか…。
よく考えてみると、それほど時間が経っていない事に気付く。
しかし、その短い時間の中で自分自身、凄く変わったと思う。
このエリア11のシンジュクゲットー内でレジスタンスのリーダーをやっていた頃から、思っていたよりも時間が経っていない。
それほど、ルルーシュの傍に来てからの時間と云うのは、本当に濃い日々を送っていた。
それこそ、数年分の経験をこの数ヶ月で経験させられている気分だ。
ルルーシュの中でも初めての経験はあったようだけれど。
でも、スザクにとっては更に驚かされる様な、本来なら絶対に経験できない事を重ねて来たと思う。
恐らく、望んで得られる経験でもないだろう。
やっている方は大変だと思うけれど。
そのど真ん中に立たされているルルーシュはそれを自ら背負っているのだ。
守りたい者…たった一人の存在の為に…。
そう思うと、ルルーシュが溺愛する妹だとは解っていても、ルルーシュに守られ、異母姉姫に間漏れられているルルーシュの妹姫に対して、様々な思いが過って行く。
本来、ナンバーズであるスザクがブリタニアの皇族の姫君に対してそんな事を考えてはいけないのかもしれないけれど。
彼女は…どの程度ルルーシュのやっている事、背負っている者を理解しているのだろうか…。
今、自分の腕の中で眠っているルルーシュの顔を見ていてそんな風に思えてしまう。
と云うか、恐らく、今のルルーシュに安心して眠れる場所などないのかもしれないと思えて来た。
常に、緊張状態の中、いつ、背後から刃を突き付けられるか解らない状況の中、恐らく、自分の寝室でさえ、安らげる時間ではないのだろうと思えてくる。
―――ブリタニアの皇族で、こうして皇帝の座を争っている者、自ら守りたいものがある者はみんな、こんな緊張状態にあるのか?と云うか、そんなんで、本当に普通の精神状態で居られるのだろうか?
スザクも元々は日本国首相の息子だ。
あの頃、ブリタニアとの外交摩擦がギリギリの状態にありながら、国内の政治も荒れていた。
その中で首相だった父は政治的に父とは違う考えを持つ者達に暗殺された。
その事実を知るのは、本当にわずかな者達だけだ。
ルルーシュは自分の母親が暗殺されて、その遺体を見つけたという。
スザクも自分の父親が殺されて、その亡骸を見つけた。
お互い、同じ傷を持つものだからなのだろうか…。
敵対して、相手を殺さなければいけないと云う認識があったにもかかわらず…。
『殺したくない…』
と思ってしまったのは…。
少なくとも、スザクはそう思った。
シンジュクゲットーで一人立ちつくして、ルルーシュが悲痛の思いを口に出していた時の事を思い出す。
ルルーシュ自身、戦いたくなんてないのだろう。
地を見るのが嫌いなのだろう。
でも、それでも、守る為には…必要だからと…自分を押し殺し、自分を抑えつけてやりたくない事を続けている状態なのだ。
見ていて痛々しいと思う。
そして、そんな彼が、何故、これほどまでに天才的な戦略を施せるだけの才を身につけて生まれて来てしまったのだろうか…と…。

 相変わらず、ルルーシュは眠っている。
相当疲れているのだろう。
しかし、これまでは決してそう云った事を周囲の者に見せたりはしなかっただろう。
だからこそ、あんな形で倒れていたのだろうとは思うけれど。
おまけに今は、まだ、戦後処理が完全に終わっていない状況だ。
それでも、これまでルルーシュが一人で抱え込んでいたものの中にあった、他の者でもできる事…であるわけで…。
だから、こうして眠ってくれる事は、騎士としては有難いと思う。
あんな形で何日も生死をさまよっているような熱発される方が心臓に悪い。
多分、あの状態に陥る事を知る者は本当のごく一部だろう。
と云うか、これまで、スザクとライが知る事になるまではジェレミアと、あの時の担当医師しかその真実を知らなかったかもしれない。
そのくらい、ルルーシュは周囲に対して警戒していた。
下手なところを見られて…シュナイゼルの敵対する者達…それこそ、国内外関係なく知られてしまっては色々不都合が出てくるのは解っている。
どうしてそこまで警戒心を持たなくてはならなくなったのか…。
正直、今のスザクには良く解らない。
ただ、話しで聞くだけではそこまで徹底せねばならないと云う事はないだろうにと思ってしまうからだ。
しかし、ルルーシュはそれをしているのだ。
スザクの知らない過去に、ルルーシュはそう云った経験をしているのだろう。
確かに、国会議員が選挙で選ばれ、その国会議員によって選ばれる首相の権力争いとは様相が違うだろう。
ルルーシュだって下位とはいえ、皇位継承権を持つ身だ。
本人には、皇帝になろうなどと云う意思は全くないようだけれど。
だから、ルルーシュの働きは基本的に皇位継承権は自分にあると云う意思表示の為のものではない。
自分の身を守る為に、自分を庇護する者の為に働いている…。
たまたま、その能力に長けていた為に、周囲からターゲットにされているフシはあるけれど。
実際に、皇位継承争いの皇子や皇女の名前が世界中に知られる事があっても、その下で皇位継承を望む者を支えている者達の名前が知られると云うのはよっぽどだ。
特にその名前が独立していて、二つ名まで付けられているのは珍しいと云わざるを得ない。
確かに、皇帝直属の騎士、ナイトオブラウンズであればそう云う者もいるけれど。
しかし、皇位継承を狙う者を守る立場にいる皇族…の中では珍しい。
特にルルーシュはまだ、子供と云える年齢だ。
そんな子供が『黒の死神』などと云われてしまう程、ルルーシュはこれまで様々な事を重ねて来ている。
その二つ名がいつの間にか、一人歩きをしているような気になってしまうのは、ルルーシュの傍にいる様になったからだろうか…?
ルルーシュを間近で見ていると、そんな二つ名がとても似合う様な皇子には見えない。
繊細で傷つきやすくて、そして、その傷を忘れる事が出来ずに、自分で自分を傷つけている印象を…今のスザクは抱いている。
そんな姿は…なんだか痛々しいけれど…その二つ名をもルルーシュは利用して戦っている。
暫くの間…ルルーシュの眠りを邪魔しないで欲しい…。
そんな風に思えて来てしまう。

 ただ、今の体制は結構辛い状態…かもしれない。
確かにルルーシュは男である事は解っているのだけれど。
普段とのギャップと、見れば見る程綺麗な顔をしていると思えてくる中…正直、自分でも複雑な思いを抱いてしまっている事に…。
意図的に気付かぬ振りをする。
普通に外交大使としての存在でいたなら…それこそ、ブリタニアに取っていのいい看板になるであろう顔の造りをしている。
一つ一つ、とても整っていて…。
きっと、世の女性なら、羨ましがるだろうと思える程だ。
否、ここまで超越していると、羨ましいとさえ思わないかもしれない。
そう思った時、本当に目のやり場に困ってしまう。
じっと見ていたら、変な気持ちになりそうで…。
―――バカか!ルルーシュは男だぞ!
スザクは自分で自分にツッコミを入れる。
そんな事、云われなくたって解っている事だけれど。
しかし、自分で自分の事を面食いだとは思った事無いけれど。
それでも、美人の基準はその時代、国によって違うと云われる。
確かに、太っている方が美しいとされている時代なら論外な程細いけれど。
でも、体型はともかく、それを除けば、太さだけ変えればこのままの造りでどの時代、どの国でも美しい人間として評価される様な気がする。
それはともかく…。
こうして、ルルーシュが子供みたいに眠っている姿は本当にレアだろうと思う。
正直、スザクだってルルーシュの騎士をしていて、こんな姿を見る日が来るなんて、思いもしなかった。
ルルーシュも目が覚めれば、
『私とした事が…不覚だ!』
などと騒ぎ始めそうだ。
それでも、こんな風に安心して貰える事は素直に嬉しい。
あの時、敵の指揮官と解っていながら、スザクはルルーシュに手をかける事はなかった。
まだ、ここまでエリア11となってしまった日本を安定させる前の話しだったから。
スザクがその気になっていれば、あの無人島で殺すことだってできたのだ。
―――その時はブリタニア軍に見つかって俺も殺されていただろうけれどな。
そんな事を考えながら、クスッと笑ってしまった。
本当に、結果とはどんな形で表れるか解らないものだと思う。
あの時、ルルーシュがスザクを騎士にした…などとブリタニア兵たちに宣言した時には驚いたし、憤りもした。
でも、今ではあの時のルルーシュの無意識の、咄嗟の言葉に感謝しているくらいだ。
あの時、ルルーシュ自身でも、何故そんな事を云ったのか、解らない様子だったけれど。
結果だけ見れば、スザクの中では感謝している。
知れば知るほど…ルルーシュと云う人間には傍に誰かが必要だと思った。
ルルーシュがどう考えていたかは解らないけれど。
あの時、ルルーシュはスザクが死ぬ事を望まなかった。
だから、あんな事を云ったのだ。
そう思うと…本当に嬉しいと思えてくる。
そんな事を考えていると…ルルーシュの瞼が小さく震えた事に気づいた。
どのくらい時間が経ったのかと、この資料室にある時計を見た時…。
あれから1時間程、経っていた。
「…ん…」

 ここで、スザクが何とも複雑だけれど、悪い気はしなかった時間が終わった。
「目が覚めたか?ルルーシュ…」
スザクがまだ、はっきりと覚醒していないルルーシュに声をかけると…。
そのスザクの声で意識がバッチリとはっきりしたのか…、ぎょっとした顔でスザクの腕の中からすり抜けた。
「あ…済まない…。眠ってしまったとは…」
ルルーシュが状況の把握がしっかりできない状態で慌てている様子…。
これもレアなルルーシュの姿だと思う。
普段は大人相手に冷静沈着、冷酷無比を通していると云うのに…。
「別に…。お前…眠っている時は本当に年相応だよな…」
よせばいいのにスザクが茶化してルルーシュに云うと…。
ルルーシュの顔が真っ赤になり…
「私とした事が…不覚だ!」
そう云って、少々青ざめている。
まるで、見られたくない奴に弱みを見せてしまった…とでも云う様な…。
そんな感じだ。
そんな…青ざめなくても…と、スザクは思うのだけれど。
少なくとも、スザクはルルーシュの騎士であって、ルルーシュの敵ではないし、こう云った姿、状態を誰かに話しをして得する事もないのだ。
「そんな…青ざめる事じゃないだろ…。安心しろ…。誰にも云わないし…」
スザクが呆れ顔でそう云うと、ルルーシュの顔は真っ赤になった。
「お前がどうこう云っているわけではない!これでは…私のプライドが…」
スザクとしては、頓珍漢な発言にしか聞こえないルルーシュの言葉…。
それに、少々呆れてしまうのだけれど。
「お前…そこでそんな下らないプライド持つの…やめないと、何れ、幸せも逃す事になるぞ…」
色んな意味で子供としては欠陥品なルルーシュにスザクが呆れた顔で云ってやる。
本当に子供としては欠陥だらけだ。
ちっとも子供らしくない。
だからこそ、スザクもふざけモードになるとからかいたくなるわけだけれど。
「別に…私は…!それに、お前はこう云うネタを持つと絶対に後々まで、色々何かに利用して来そうな気がする…」
完全に憶測でものを云っているルルーシュに…。
なんだか、心外だと思ってしまう。
だいたい、見た目で判断していないだろうか?
と云うか、見た目で判断されていたとしても、そこまで自分は根性悪くはないとは思っている。
「俺、そこまで陰険な事をしないって…。どっちかって云うと、そうやって口でねちねちやるよりも実力行使だな…」
さらりと返してやると…ルルーシュがぐっとなって、言葉が出て来なくなった。
実際にその通りだ。
ルルーシュは頭脳労働向きだけれど、スザクは明らかに肉体労働向きだ。
さっきまでの可愛らしいルルーシュは一体どこへ行ってしまったのやら…と云う感じだ。
とりあえず、ルルーシュが自然に目を醒ますまで邪魔が入らなくてよかったと内心ホッとしている。
「そんなことより、資料整理が終わったら、あと、お前の仕事は?」
スザクが話しを切り替えた。
ルルーシュは一瞬驚いた顔を見せたけれど。
でも、そちらの話しに乗った方が得策と判断したのか、スザクの話しに乗った。
「後は、基本的にはないな…。書類整理などは殆ど終わっているし、後は文官たちの仕事になる…」
ルルーシュの言葉に、スザクはほっと息を吐いて、言葉を口にした。
「なら、俺がランスロットからの通信で云った、俺の行きたいところに…連れて行ってくれ…」
スザクのその言葉に…ルルーシュは不思議そうにきょとん死した顔を見せたのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて



前回からすっかりスザルルカラーになってしまって…。
あとは、和泉とスザクの妄想のまま、ルルーシュを観察しておりました(笑)
次回、スザクはルルーシュと一緒にスザクが行きたいと云った場所へと向かいます。
多分、細かいところを完全にすっ飛ばして描く予定ですが…。
所詮、予定は未定って事で…。

そう云えば、ワールドカップ…ここでは一切話しを出していなかったのですが…。
絶対に決勝トーナメントには行けないと思っていましたが…。
なんだかんだ云いながら、行っちゃいましたね…。
と云うか、欧州勢…一体どうしたんだ?
まぁ、イングランドとアルゼンチンの試合は見たいと思っていたので、ちゃんと両国決勝トーナメントに出てくれた様なので…。
日本は、決勝トーナメント…パラグアイ相手では勝てないでしょう…。
それでも、予選リーグ敗退と思っていた…と云うか、一生も出来ずに帰って来ると思っていたので、凄い事ですね…。
マスコミだけが騒いでいると思っていました。
でも、それなりに頑張っているみたいなので、少しだけ、頑張れ!と云う声援を送りたいと思います。


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posted by 和泉綾 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

皇子とレジスタンス 〜Arm to which it can relieve it〜

 現在、枢木スザクは、ルルーシュと一緒に資料室にいた。
そして、少々困ってしまった。
と云うか、何故にこんな事になってしまったのかと…自分の頭の中で考えている。
―――確か…ルルーシュのバカ話しを聞いていて…それで一発ぶん殴って…それから…
と、ここまで来た経緯を自分の中で整理しているのだけれど…。
ルルーシュを抱きしめて、その耳元で言葉を反芻していて…。
最終的にはルルーシュは身体を震わせていたけれど。
ある段階でその震えが感じなくなった。
少し落ち着いたのかと、ルルーシュの様子を窺ってみたら…。
そのままスザクに自分の体を預けて眠ってしまっていたのだ。
寝息を立てているルルーシュを見ていて…恐らく、ルルーシュがこんな無防備でスザクの腕の中で眠っていたなどと本人の知るところとなったら…。
確実に口止めのためにあらゆることをされるだろう。
それこそ、手段を選ばず…。
そんな事よりも、ルルーシュがこんな風に眠っているのを見るのは…シンジュクゲットーでの騒ぎのとき、戦後処理が終わってから熱を出した時くらいだ。
否、あの時は完全に熱に浮かされている状態だったからこんな風に、無防備な眠り…と云う感じではない。
こうして間近で見ていると、綺麗な顔をしていると思う。
日本人でもこれほど真黒な黒髪はいないかもしれないと思うような、漆黒の黒髪…。
目を閉じるとよく解る、黒く長い睫毛。
一つ一つ整った顔のパーツ…。
そして、ブリタニアの皇族の姿はテレビやパソコンの画面で見た事があるけれど…。
色白なのは血筋なのか…。
その中でも
黙っていれば本当に女だと云ってもばれなさそうだ。
と云うか、こんな近くでルルーシュの顔を見た事のある人間が一体どれだけいるのだろうか…。
暗殺されたと云う、ルルーシュの母親が生きていた頃ならともかく、その後、こんな間近でルルーシュの顔を見る事が出来た人間がいたとは思えない。
おまけに…
この無防備な顔をして眠っている姿など…。
―――これは…どう捉えるべきなのだろうか…。
スザクの中出は真剣に悩んでしまう。
これまで、ルルーシュの存在が気になり、彼のやっている事が気になり、ずっと意識を傾けていたとは思うけれど。
こんな、他の何者に対しても警戒心剥き出しの野良猫みたいなルルーシュがこんな寝顔を見せるなど…想像できない。
と云うか、普通に眠っていても、人の気配がすれば目を醒ましそうな感じだ。
実際に普段のルルーシュはそんな感じだ。
誰に対しても弱みを見せてはならない、凛としていなければならない…。
そんな意識を持ち続けている様に見える。
実際そうだったのだろうとは思うけれど。
ルルーシュの傍にいて驚かされる事ばかりだ。
自分とルルーシュは同じ歳…。
誕生日だけで云えば、スザクの方が5ヶ月早く生まれているのだ。
それなのに…。
ルルーシュの方が遥かに大人びて見える。
―――と云うよりも、年相応に見えないと云った方が正確だよな…。
そんな事を思いながら、ルルーシュの顔を見て『はぁ』とため息を吐いてしまう。

 殆どその場の勢いでルルーシュの騎士となってから、どれほど時間が経っただろうか…。
よく考えてみると、それほど時間が経っていない事に気付く。
しかし、その短い時間の中で自分自身、凄く変わったと思う。
このエリア11のシンジュクゲットー内でレジスタンスのリーダーをやっていた頃から、思っていたよりも時間が経っていない。
それほど、ルルーシュの傍に来てからの時間と云うのは、本当に濃い日々を送っていた。
それこそ、数年分の経験をこの数ヶ月で経験させられている気分だ。
ルルーシュの中でも初めての経験はあったようだけれど。
でも、スザクにとっては更に驚かされる様な、本来なら絶対に経験できない事を重ねて来たと思う。
恐らく、望んで得られる経験でもないだろう。
やっている方は大変だと思うけれど。
そのど真ん中に立たされているルルーシュはそれを自ら背負っているのだ。
守りたい者…たった一人の存在の為に…。
そう思うと、ルルーシュが溺愛する妹だとは解っていても、ルルーシュに守られ、異母姉姫に間漏れられているルルーシュの妹姫に対して、様々な思いが過って行く。
本来、ナンバーズであるスザクがブリタニアの皇族の姫君に対してそんな事を考えてはいけないのかもしれないけれど。
彼女は…どの程度ルルーシュのやっている事、背負っている者を理解しているのだろうか…。
今、自分の腕の中で眠っているルルーシュの顔を見ていてそんな風に思えてしまう。
と云うか、恐らく、今のルルーシュに安心して眠れる場所などないのかもしれないと思えて来た。
常に、緊張状態の中、いつ、背後から刃を突き付けられるか解らない状況の中、恐らく、自分の寝室でさえ、安らげる時間ではないのだろうと思えてくる。
―――ブリタニアの皇族で、こうして皇帝の座を争っている者、自ら守りたいものがある者はみんな、こんな緊張状態にあるのか?と云うか、そんなんで、本当に普通の精神状態で居られるのだろうか?
スザクも元々は日本国首相の息子だ。
あの頃、ブリタニアとの外交摩擦がギリギリの状態にありながら、国内の政治も荒れていた。
その中で首相だった父は政治的に父とは違う考えを持つ者達に暗殺された。
その事実を知るのは、本当にわずかな者達だけだ。
ルルーシュは自分の母親が暗殺されて、その遺体を見つけたという。
スザクも自分の父親が殺されて、その亡骸を見つけた。
お互い、同じ傷を持つものだからなのだろうか…。
敵対して、相手を殺さなければいけないと云う認識があったにもかかわらず…。
『殺したくない…』
と思ってしまったのは…。
少なくとも、スザクはそう思った。
シンジュクゲットーで一人立ちつくして、ルルーシュが悲痛の思いを口に出していた時の事を思い出す。
ルルーシュ自身、戦いたくなんてないのだろう。
地を見るのが嫌いなのだろう。
でも、それでも、守る為には…必要だからと…自分を押し殺し、自分を抑えつけてやりたくない事を続けている状態なのだ。
見ていて痛々しいと思う。
そして、そんな彼が、何故、これほどまでに天才的な戦略を施せるだけの才を身につけて生まれて来てしまったのだろうか…と…。

 相変わらず、ルルーシュは眠っている。
相当疲れているのだろう。
しかし、これまでは決してそう云った事を周囲の者に見せたりはしなかっただろう。
だからこそ、あんな形で倒れていたのだろうとは思うけれど。
おまけに今は、まだ、戦後処理が完全に終わっていない状況だ。
それでも、これまでルルーシュが一人で抱え込んでいたものの中にあった、他の者でもできる事…であるわけで…。
だから、こうして眠ってくれる事は、騎士としては有難いと思う。
あんな形で何日も生死をさまよっているような熱発される方が心臓に悪い。
多分、あの状態に陥る事を知る者は本当のごく一部だろう。
と云うか、これまで、スザクとライが知る事になるまではジェレミアと、あの時の担当医師しかその真実を知らなかったかもしれない。
そのくらい、ルルーシュは周囲に対して警戒していた。
下手なところを見られて…シュナイゼルの敵対する者達…それこそ、国内外関係なく知られてしまっては色々不都合が出てくるのは解っている。
どうしてそこまで警戒心を持たなくてはならなくなったのか…。
正直、今のスザクには良く解らない。
ただ、話しで聞くだけではそこまで徹底せねばならないと云う事はないだろうにと思ってしまうからだ。
しかし、ルルーシュはそれをしているのだ。
スザクの知らない過去に、ルルーシュはそう云った経験をしているのだろう。
確かに、国会議員が選挙で選ばれ、その国会議員によって選ばれる首相の権力争いとは様相が違うだろう。
ルルーシュだって下位とはいえ、皇位継承権を持つ身だ。
本人には、皇帝になろうなどと云う意思は全くないようだけれど。
だから、ルルーシュの働きは基本的に皇位継承権は自分にあると云う意思表示の為のものではない。
自分の身を守る為に、自分を庇護する者の為に働いている…。
たまたま、その能力に長けていた為に、周囲からターゲットにされているフシはあるけれど。
実際に、皇位継承争いの皇子や皇女の名前が世界中に知られる事があっても、その下で皇位継承を望む者を支えている者達の名前が知られると云うのはよっぽどだ。
特にその名前が独立していて、二つ名まで付けられているのは珍しいと云わざるを得ない。
確かに、皇帝直属の騎士、ナイトオブラウンズであればそう云う者もいるけれど。
しかし、皇位継承を狙う者を守る立場にいる皇族…の中では珍しい。
特にルルーシュはまだ、子供と云える年齢だ。
そんな子供が『黒の死神』などと云われてしまう程、ルルーシュはこれまで様々な事を重ねて来ている。
その二つ名がいつの間にか、一人歩きをしているような気になってしまうのは、ルルーシュの傍にいる様になったからだろうか…?
ルルーシュを間近で見ていると、そんな二つ名がとても似合う様な皇子には見えない。
繊細で傷つきやすくて、そして、その傷を忘れる事が出来ずに、自分で自分を傷つけている印象を…今のスザクは抱いている。
そんな姿は…なんだか痛々しいけれど…その二つ名をもルルーシュは利用して戦っている。
暫くの間…ルルーシュの眠りを邪魔しないで欲しい…。
そんな風に思えて来てしまう。

 ただ、今の体制は結構辛い状態…かもしれない。
確かにルルーシュは男である事は解っているのだけれど。
普段とのギャップと、見れば見る程綺麗な顔をしていると思えてくる中…正直、自分でも複雑な思いを抱いてしまっている事に…。
意図的に気付かぬ振りをする。
普通に外交大使としての存在でいたなら…それこそ、ブリタニアに取っていのいい看板になるであろう顔の造りをしている。
一つ一つ、とても整っていて…。
きっと、世の女性なら、羨ましがるだろうと思える程だ。
否、ここまで超越していると、羨ましいとさえ思わないかもしれない。
そう思った時、本当に目のやり場に困ってしまう。
じっと見ていたら、変な気持ちになりそうで…。
―――バカか!ルルーシュは男だぞ!
スザクは自分で自分にツッコミを入れる。
そんな事、云われなくたって解っている事だけれど。
しかし、自分で自分の事を面食いだとは思った事無いけれど。
それでも、美人の基準はその時代、国によって違うと云われる。
確かに、太っている方が美しいとされている時代なら論外な程細いけれど。
でも、体型はともかく、それを除けば、太さだけ変えればこのままの造りでどの時代、どの国でも美しい人間として評価される様な気がする。
それはともかく…。
こうして、ルルーシュが子供みたいに眠っている姿は本当にレアだろうと思う。
正直、スザクだってルルーシュの騎士をしていて、こんな姿を見る日が来るなんて、思いもしなかった。
ルルーシュも目が覚めれば、
『私とした事が…不覚だ!』
などと騒ぎ始めそうだ。
それでも、こんな風に安心して貰える事は素直に嬉しい。
あの時、敵の指揮官と解っていながら、スザクはルルーシュに手をかける事はなかった。
まだ、ここまでエリア11となってしまった日本を安定させる前の話しだったから。
スザクがその気になっていれば、あの無人島で殺すことだってできたのだ。
―――その時はブリタニア軍に見つかって俺も殺されていただろうけれどな。
そんな事を考えながら、クスッと笑ってしまった。
本当に、結果とはどんな形で表れるか解らないものだと思う。
あの時、ルルーシュがスザクを騎士にした…などとブリタニア兵たちに宣言した時には驚いたし、憤りもした。
でも、今ではあの時のルルーシュの無意識の、咄嗟の言葉に感謝しているくらいだ。
あの時、ルルーシュ自身でも、何故そんな事を云ったのか、解らない様子だったけれど。
結果だけ見れば、スザクの中では感謝している。
知れば知るほど…ルルーシュと云う人間には傍に誰かが必要だと思った。
ルルーシュがどう考えていたかは解らないけれど。
あの時、ルルーシュはスザクが死ぬ事を望まなかった。
だから、あんな事を云ったのだ。
そう思うと…本当に嬉しいと思えてくる。
そんな事を考えていると…ルルーシュの瞼が小さく震えた事に気づいた。
どのくらい時間が経ったのかと、この資料室にある時計を見た時…。
あれから1時間程、経っていた。
「…ん…」

 ここで、スザクが何とも複雑だけれど、悪い気はしなかった時間が終わった。
「目が覚めたか?ルルーシュ…」
スザクがまだ、はっきりと覚醒していないルルーシュに声をかけると…。
そのスザクの声で意識がバッチリとはっきりしたのか…、ぎょっとした顔でスザクの腕の中からすり抜けた。
「あ…済まない…。眠ってしまったとは…」
ルルーシュが状況の把握がしっかりできない状態で慌てている様子…。
これもレアなルルーシュの姿だと思う。
普段は大人相手に冷静沈着、冷酷無比を通していると云うのに…。
「別に…。お前…眠っている時は本当に年相応だよな…」
よせばいいのにスザクが茶化してルルーシュに云うと…。
ルルーシュの顔が真っ赤になり…
「私とした事が…不覚だ!」
そう云って、少々青ざめている。
まるで、見られたくない奴に弱みを見せてしまった…とでも云う様な…。
そんな感じだ。
そんな…青ざめなくても…と、スザクは思うのだけれど。
少なくとも、スザクはルルーシュの騎士であって、ルルーシュの敵ではないし、こう云った姿、状態を誰かに話しをして得する事もないのだ。
「そんな…青ざめる事じゃないだろ…。安心しろ…。誰にも云わないし…」
スザクが呆れ顔でそう云うと、ルルーシュの顔は真っ赤になった。
「お前がどうこう云っているわけではない!これでは…私のプライドが…」
スザクとしては、頓珍漢な発言にしか聞こえないルルーシュの言葉…。
それに、少々呆れてしまうのだけれど。
「お前…そこでそんな下らないプライド持つの…やめないと、何れ、幸せも逃す事になるぞ…」
色んな意味で子供としては欠陥品なルルーシュにスザクが呆れた顔で云ってやる。
本当に子供としては欠陥だらけだ。
ちっとも子供らしくない。
だからこそ、スザクもふざけモードになるとからかいたくなるわけだけれど。
「別に…私は…!それに、お前はこう云うネタを持つと絶対に後々まで、色々何かに利用して来そうな気がする…」
完全に憶測でものを云っているルルーシュに…。
なんだか、心外だと思ってしまう。
だいたい、見た目で判断していないだろうか?
と云うか、見た目で判断されていたとしても、そこまで自分は根性悪くはないとは思っている。
「俺、そこまで陰険な事をしないって…。どっちかって云うと、そうやって口でねちねちやるよりも実力行使だな…」
さらりと返してやると…ルルーシュがぐっとなって、言葉が出て来なくなった。
実際にその通りだ。
ルルーシュは頭脳労働向きだけれど、スザクは明らかに肉体労働向きだ。
さっきまでの可愛らしいルルーシュは一体どこへ行ってしまったのやら…と云う感じだ。
とりあえず、ルルーシュが自然に目を醒ますまで邪魔が入らなくてよかったと内心ホッとしている。
「そんなことより、資料整理が終わったら、あと、お前の仕事は?」
スザクが話しを切り替えた。
ルルーシュは一瞬驚いた顔を見せたけれど。
でも、そちらの話しに乗った方が得策と判断したのか、スザクの話しに乗った。
「後は、基本的にはないな…。書類整理などは殆ど終わっているし、後は文官たちの仕事になる…」
ルルーシュの言葉に、スザクはほっと息を吐いて、言葉を口にした。
「なら、俺がランスロットからの通信で云った、俺の行きたいところに…連れて行ってくれ…」
スザクのその言葉に…ルルーシュは不思議そうにきょとん死した顔を見せたのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて



前回からすっかりスザルルカラーになってしまって…。
あとは、和泉とスザクの妄想のまま、ルルーシュを観察しておりました(笑)
次回、スザクはルルーシュと一緒にスザクが行きたいと云った場所へと向かいます。
多分、細かいところを完全にすっ飛ばして描く予定ですが…。
所詮、予定は未定って事で…。

そう云えば、ワールドカップ…ここでは一切話しを出していなかったのですが…。
絶対に決勝トーナメントには行けないと思っていましたが…。
なんだかんだ云いながら、行っちゃいましたね…。
と云うか、欧州勢…一体どうしたんだ?
まぁ、イングランドとアルゼンチンの試合は見たいと思っていたので、ちゃんと両国決勝トーナメントに出てくれた様なので…。
日本は、決勝トーナメント…パラグアイ相手では勝てないでしょう…。
それでも、予選リーグ敗退と思っていた…と云うか、一生も出来ずに帰って来ると思っていたので、凄い事ですね…。
マスコミだけが騒いでいると思っていました。
でも、それなりに頑張っているみたいなので、少しだけ、頑張れ!と云う声援を送りたいと思います。


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posted by 和泉綾 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年06月19日

皇子とレジスタンス 〜Uneasiness〜

 戦闘の上で、指揮官クラスともなると、戦闘中も相当な緊張感を強いられるが、戦後処理に関しても、相当神経を使う。
一つ間違ってしまうと、様々なところで問題が生じるからだ。
論功行賞に関してせっついて来る者に対しては正直…
―――張り倒してやりたい!
と考えてしまう。
実際には、そんな事を云っていられるような状態じゃない事を解っているのか、解っていないのか、敢えて知らぬ振りをしているのか解らないが…。
どちらにしろ、ここで、総責任者となっている人物にとって、そんな事を云ってくる輩に関しては、どれ程の功績があったとしても、評価を下げたくなるものだ。
確かに、その論功行賞によって、その人物の周囲が一変してしまう程の場合には気になっても仕方ないだろうが…。
それまでどんな指揮官の下で働いていたのか…と考えてしまう。
実際に、こうした軍事行動の場合、論功行賞の不平不満は付きものだし、その、論功行賞を決める人物によっても違いが出て来るものだ。
軍事行動の場合、実際の働きを全て把握出来る者など中々いない。
それが不満で仕える主を替える者さえいる。
ブリタニアの中ではごく当たり前の事…。
力ない者に仕えていても先が望めないどころか、自分達が生きて行く事も出来ないと云う事ともなれば、そう考えてしまっても仕方ない。
ルルーシュ自身、それをよく理解していた。
力ない者に誰も付いて来る事はない…。
ここまで、ずっと、そう思っていた。
だからこそ、自分の目で状況把握、物事の動向をしっかりと見極める事を学んできた。
自分の置かれている立場、自分の今いる立ち位置、自分を取り巻く環境、存在達…。
全てを見て、把握する能力が否応なしに培われてきたと云う事だ。
ルルーシュ自身、その事を自覚しているかどうかは解らない。
相手に、自分の考えを察知されれば自分の立場、やがては自分の命さえ危うくなると云う危険も孕んでいる中、ルルーシュ自身は、周囲に対して無関心を装う術さえも身に付けた。
ルルーシュを表向きにではないにしろ、『彼のお気に入り』と云う肩書を与えて見守ってきたシュナイゼルが無言で与えた教育の一つかもしれない。
シュナイゼルにその意識があったとしても、ルルーシュの中にその意識が芽生えたのは多分、ごく最近の事だろう。
だからこそ…ルルーシュは自分の立場を更に自覚する事になった。
エリア11への赴任もシュナイゼルが与えたルルーシュの生きる術であり、これから必要になるであろう経験を積ませるものなのだと…。
そして、それがやがて、シュナイゼルの目指す先で必要な力になるとルルーシュは思っていた。
ルルーシュにとって、周囲から見ると、非常に危うい強さとも云えるが、シュナイゼルに対してのその、忠実さが力となっている事は否めない事実だ。
そして、シュナイゼルと対立している勢力はそんなルルーシュの姿勢と、それに伴う力を恐れている事も事実だ。
それ故に、こう云った時のルルーシュの緊張感は傍目で見ているよりも遥かにルルーシュに圧し掛かっているのである。

 とりあえず、アヴァロン内で出来る事が全て終わり、フクオカ基地の本部へと入った。
これだけの騒ぎとなってしまったので、流石にてんやわんやの大騒ぎだった。
「流石に…私が連れて来た者達がお前たちくらいだからな…。私と一緒にいた者ならともかく、元々、このエリアで任務をこなしていた者達には酷な状況だな…」
てんやわんやの基地内の状況を見て、ルルーシュがぼそりと呟いた。
実際に、ルルーシュの部下と呼べるものは元々数が少ない。
このエリアに連れて来たのだって、ジェレミアをはじめとする、マリアンヌが生きていた頃からルルーシュの事を知る者達ばかりだ。
「確かに…あの時、私達がどれほど云っても殿下は騎士を持とうとされませんでしたしね…」
ジェレミアが呆れ顔で云うと、更にルルーシュはさらりと返した。
「何を云っている…。私がエリア11の総督になって、無駄に名前だけ広がってからだろうが…。騎士候補が一気に増えたのは…」
ルルーシュ自身、自分の生まれの事もあり、ひょっとしたら一升騎士を持つ事は出来ないと考えていた事だってあった。
出来れば、ナナリーには騎士を付けたい…そんな風に考えていた事もあったけれど、一応、自分がシュナイゼルの下で働きを見せていてもその詳細がこうした形で広まるまではルルーシュにさえ騎士候補が皆無だったのだ。
身体が不自由で、大した後見もない母親が平民の、この先を望めない皇女の騎士になりたいと思う者は、そうはいないだろう。
基本的に、ナナリーは王宮から外に出る事のない生活を送っているのだ。
だから、時々、ブリタニア国内を驚かせる騎士叙任があるのだけれど、それを望む事も出来ない。
ルルーシュとナナリーの母であるマリアンヌが皇帝の騎士となった時には、確かに大騒ぎとなったわけだが。
どれだけ有能であっても、その身分がなければ、その地位を得られる事は実質的には無理だとされている地位だった。
確かに皇帝の騎士であるナイトオブラウンズは国籍は問わないし、その実力だけがその地位を得る資格を持つ。
それでも、その周囲には様々な力が働く。
結局、身分のない者がそう云った高い地位を望む事は基本的に不可能に近い状態にあった。
ルルーシュも本来なら貴族出身者、もしくはその実力が認められて騎士候となった者が騎士となる筈なのだ。
ナナリーもそうだが。
しかし、彼らの騎士になろうと思うのは、相当彼らに対しての思い入れがあるか、彼らの意思に関係なく、何かの力が働いた時くらいだ。
後者の場合、そんな輩が命を懸けて彼らを守る事なんて出来る訳がない。
騎士と云うのは、それこそ、その気持ちの強さも要求される。
だから、後見の強い皇族で、後見貴族の中から騎士を指名して、騎士としての働きが出来ずにその仕えた主が死亡したり、その騎士が解任させられたり辞任したり…と云う話も珍しい話しではないのだ。
そう云った事情も知るから、自らを守るための盾は欲しいとは思うし、何より、ナナリーを守ってくれる存在はルルーシュにとって何よりも必要な存在だった。
―――今のところ望むべくもないが…
そんな状態だったから、ルルーシュ自身、このエリアで対外国相手の戦いの後の後始末の込んだん状態を知る者を連れて来る事が出来なかったので、こんな形でパニック状態となってしまうのだ。

 ルルーシュが基地内のデータを調べるべく、スザクを連れて資料室へと入った。
中のパソコンには膨大な量のデータが送られて来ているし、それまでの報告ログも膨大な量だった。
「スザク…日本国内での反体制運動はここまで規模が大きい者はなかったのか?」
ルルーシュが付いて来て、その資料の多さに呆然としているスザクに声をかけた。
「ルルーシュ…そこまでの騒ぎを起こせる程の力があるなら、日本はブリタニアに負けてないよ…。勝てたかどうかは別問題だけどな…」
スザクが呆れ顔でルルーシュに返した。
その答えにルルーシュが『なるほど』と云いながら息を吐いた。
その、吐き出された息の意味は…一体何だったのか…。
少なくとも、スザクの目には、人間の生命維持の意味だけしかない呼吸には見えなかった。
「となると、対外戦力にもう少し、力を割ける…と云う事か…」
ルルーシュが独り言のように呟いたその言葉に、スザクがまた、はっとした顔をした。
「おい…ルルーシュ…」
「なんだ?」
スザクが何かを思って、ルルーシュに声をかけた。
ルルーシュはそんなスザクの思うところを知ってか、知らずか、静かに反応しただけだった。
スザクの中では、ルルーシュはスザクが何を云おうとしているのか、何となく解っている様に見えた。
「まだ…こんな事があるのか?少なくとも、今の中華連邦にそこまでの力はない。そもそも、これでブリタニアのエリアになったんだろう?」
スザクがそう思うのは尤もな話だ。
しかし、ルルーシュはそんな考えはまだ、甘いと云っているような表情をした。
「何を云っている?これからあのエリアを治めるのは、確かにブリタニアに亡命し、帰化した黎星刻だが…彼はブリタニアに忠誠を誓っているわけではない。勿論、私とも対等という立場で臨んでいる…」
確かに、ルルーシュの云っている事はその通りだ。
ただ、そこまで考えているルルーシュを見ていて、スザクは少し、怖くなった。
否、ルルーシュがそんな風に考えねばならない現実に怖くなった…と云うべきなのだろうか…。
「ルルーシュ…?」
スザクの中に、僅かに過って行く不安を…まだ、具体的には解らない。
でも、漠然としているものではあるけれど、不安がスザクの中に生まれる。
「当たり前だろう?確かに、あの時は急を要して、時間がなかったからあのような措置をとった。しかし、彼が最も大切に思っているのは、あの幼い姫君であり、中華連邦だ…」
ルルーシュの云っている事は…確かにその通りだ。
その通りだと解る。
でも…それは…
―――俺は…俺の事も云っているのか?それは…
スザクは日本人とか、ブリタニア人とかではなく、ルルーシュ個人に仕えて来たつもりだった。
仕えていると云っても、それは表向きの事で、対等だと思っていた。
しかし、その想いが過った時…更にその先ほど過った不安が大きくなる。
「ルルーシュ…それは…」
「彼らに対しての監視体制は変わらない。まして、中華連邦のその地の総督となれば、権限もかなり大きいのだから、この先、このエリアを守る為にも出来る限りの事を施すのは当たり前だ…」

 ルルーシュは、このエリアを守る為には…とは云っているけれど。
それでも、やはり、彼に対しての信用はその程度しか持てずにいる。
多分、頭の中では解るのだけれど、感情の中で、どう、咀嚼していいかが解らない。
竜胆奪還の時、あんな危ない橋を渡っているのだ。
それは、ルルーシュにも解っている筈なのだ。
そんな事を考えているスザクに対して、ルルーシュはふっと笑った。
「スザク…やはり、お前は私の騎士には向いていない…。まぁ、どの道、私がこのエリアを離れる時には…お前を開放するつもりだった。このエリアがお前の望む形となる様にしてから…」
ルルーシュの…その一言…。
スザクの中では大きなショックを与えられている。
ルルーシュの中では自分の中にある迷いを断ち切ろうと必死になっている。
「お前…本気で…そんな事を…?」
スザクが声を震わせてルルーシュに尋ねる。
ルルーシュは少しだけ驚いた顔を見せるけれど、すぐにいつもの冷静なルルーシュの顔に戻る。
「スザク…元々お前が私の騎士となったのはただの成り行きだ…。私がお前に興味を持った…それだけの理由だった。そして、私はもうじき、このエリアを離れる事になる…」
幾つも衝撃を受ける告白に…。
スザクはただ目を見開く事しか出来ない。
「な…んで…」
「異母兄上がそろそろ戻ってこいとうるさくてね…。それに、ラティスの件もあって、本国に戻らなくてはならないんだ…。その決定によっては、私はまた、ラティス攻略の前線に立たされることになる…」
淡々と話しているルルーシュに、スザクは信じられないと云った顔をしている。
「だったら…何故俺がお前から…」
「さっきも云った。お前は私の騎士には向かない…。それに、このエリアのトップに立つのは私ではなく、お前の方がいいだろう?幸い、スザクならこのエリアに赴任しているブリタニア軍やスタッフの信頼も厚い。だから…」
―――バキッ!
ルルーシュが言葉を紡いでいる最中…耐えきれなくなって、スザクの左拳がルルーシュの右頬を殴りつけた。
ここで、利き手が出て来なかったのは、最後に残された僅かな理性だったのだろうか?
しかし、スザクの力で殴られて、ルルーシュは耐えきれずに床に倒れた。
そんなルルーシュの襟首を掴んで怒鳴りつけた。
「お前!本気で云っているのか?俺は…そんなつもりでお前の騎士としていたわけじゃない!大体!シンジュクゲットーの仲間ともコンタクトを取れる状態なら、ランスロットを奪取していつだってここから飛び出す事は出来たんだ!俺にそのつもりがあったならな!」
スザクがルルーシュに怒鳴りつけるが、ルルーシュは殴られた拍子に口の中を切って、唇の端から血が滲んでいるが、それを気にする風でもなく、スザクの顔を表情を変えずに見つめている。
ただ、ルルーシュの心の中は…
―――そうやって…僕を軽蔑しろ…
そんな、自分を騙すような言葉を紡ぎ続けていた。
「なら…そうすればよかったじゃないか…。私を騙したともなれば、お前の名声はさらに上がる事になり、ブリタニアも迂闊には手を出せなくなるぞ…」

 ルルーシュのその言葉に、スザクは怒りを露わにする。
こんな風に素直に感情を表に出し、自分の正義を貫けるスザクを見ていて羨ましかった。
自分にないものをたくさん持っていて、いつの日にか…手放したくはないと思ってしまっていた。
それでも、そんな事は…
―――スザクの足かせにしかならない…。僕の騎士なんて…きっと、スザクの命を削るだけの、過酷な立場でしかなくなる…。スザクには…そんなところにいて欲しくはない…。
という思いで振り切ろうと自分の中で必死に何かと戦っている。
ルルーシュの今、目に映っているスザクは…。
本当に自分の気持ちの正直で、まっすぐで…。
闇の中を歩き続けて来たルルーシュにとって眩しいもので…。
憧れてしまうもので…。
近くにいて…更にその輝きを失いたくないと思いつつも、自分の傍にいたら、きっと、そのスザクの真っ直ぐな翡翠の瞳が濁ってしまう…。
そう思うと怖かったから。
こんな風にストレートにルルーシュに感情をぶつけてくれた人は…これまでにはいなかった。
―――これを…『友達』と呼ぶのだろうか…。昔、母上が読んでくれた本の中には『友達』と云う言葉がたくさん出て来たけれど…。実際に見た事はなかったな…。でも、僕は、スザクに対して『友達』と云う幻影を抱いてしまったのかもしれない…。
自分の立場を忘れてはならない。
自分の役目を忘れてはならない。
自分の守るべき者を忘れてはならない。
ずっとその想いを抱きながら、どんな戦場でも立ってきた。
どんな政略の渦の中でも飛び込んできた。
でも、このエリアに来て、自分は変わってしまったと思う。
そんな大切な事を忘れているのではないか…。
そんな風に思えてしまう事が増えた。
ふっと我に返ると、それを忘れて居て事を思い出した。
そして、星刻達を見ていて…。
それを自覚させられた。
―――僕には…守らなくてはならないものがあるんだ。命を懸けて…守らなくてはならないものが…。だから、これ以上、辛くなる前に…
そう思った時…
「お前…ウソを吐いている…」
ルルーシュの襟首を掴んでいたスザクがぼそりと呟いた。
「な!私はウソなど…」
ルルーシュが反論しようとした時…。
今度はスザクがルルーシュのその細い身体を抱きしめた。
「なら…なんで…そんな自分を責める様な顔をしているんだよ…。なんで、泣いているんだよ…」
スザクのその言葉に…ルルーシュはやっと、自分の目がかすんで見えている事が解る。
強く抱きしめられているそのスザクの腕は…。
凄く心地よくて…そこに飲み込まれてしまいそうになって…。
怖くなって、ルルーシュの身体がカタカタと震え始めた。
そんなルルーシュを感じて、スザクが更に腕の力を強めた。
「ルルーシュ…俺は、お前の騎士だろ?そんな事…云うなよ…。俺は、お前の騎士をやめる気はないよ…。お前が地獄の果てに赴任するって云ってもな…」
スザクの言葉に、ルルーシュの中で『甘えてはいけない…。スザクは優しいから…だから…これは、スザクを犠牲にする事になる…』そんな思いが過って行くけれど…
「ルルーシュ、俺は俺のしたい事しかしない…。お前が命令したって、俺は、俺のしたい事しかしない。だから、俺はルルーシュの騎士を続けるんだ…」
スザクがルルーシュの耳元で…暫くの間、そう、小さな声で云い続けていた。

To Be Continued


あとがきに代えて



緊張の糸が切れて、ルルーシュが変な壊れ方して、スザクがブチ切れて…。
ベタだなぁ…と思いつつ、ベタはやっぱり、美味しいからベタになれるんですよね…。
サプライズばかりだと考える方も大変ですしねぇ…。
やっと、このお話しもスザルルっぽくなってきましたねぇ…。
ずっと、何となくスザルルカラーの薄かったお話だったのですが…。
皇子を殴った時点で、もし露見すれば不敬罪じゃすみませんよね…。
皇族への暴行は下手すると反逆罪扱いになりかねない重罪ですし…。
スザクがそんな事を意識していたかはともかく、スザクはそれで罪を問われたとしてもきっと何一つ言い訳しないんでしょうね…。
これでこそ、忠実なる騎士っぽいかなぁ…と…。
身体はって主を諌めているわけですしね。

さて、ここで一つご報告です。
自家通販の方ですが、無配本もペーパーも終わってしまったので、本当は23日まで…って事になっていましたが、今後の通販の方にはそれらをお付けする事は出来ません。
但し、23日までにお申し込み、ご入金された方にはまぁ、別の形でお配りします。
申し訳ありません。(まぁ、もう自家通販のお申し込みはなさそうですが)
あと、『Amethyst Eyes』のinformationページの書店さんで取り扱いされている本に関しましては、直通リンクを作りましたので…。(と云うか、出来たんですねぇ…)
多分、サイトから書店さんで和泉の本をお買い上げ頂く際には少し楽になると思います。

あと、この1週間、超体たらくで申し訳ありません。
少しずつ、元に戻したいと思います。
また、毎日更新に戻る様に頑張ります。



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posted by 和泉綾 at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

皇子とレジスタンス 〜Uneasiness〜

 戦闘の上で、指揮官クラスともなると、戦闘中も相当な緊張感を強いられるが、戦後処理に関しても、相当神経を使う。
一つ間違ってしまうと、様々なところで問題が生じるからだ。
論功行賞に関してせっついて来る者に対しては正直…
―――張り倒してやりたい!
と考えてしまう。
実際には、そんな事を云っていられるような状態じゃない事を解っているのか、解っていないのか、敢えて知らぬ振りをしているのか解らないが…。
どちらにしろ、ここで、総責任者となっている人物にとって、そんな事を云ってくる輩に関しては、どれ程の功績があったとしても、評価を下げたくなるものだ。
確かに、その論功行賞によって、その人物の周囲が一変してしまう程の場合には気になっても仕方ないだろうが…。
それまでどんな指揮官の下で働いていたのか…と考えてしまう。
実際に、こうした軍事行動の場合、論功行賞の不平不満は付きものだし、その、論功行賞を決める人物によっても違いが出て来るものだ。
軍事行動の場合、実際の働きを全て把握出来る者など中々いない。
それが不満で仕える主を替える者さえいる。
ブリタニアの中ではごく当たり前の事…。
力ない者に仕えていても先が望めないどころか、自分達が生きて行く事も出来ないと云う事ともなれば、そう考えてしまっても仕方ない。
ルルーシュ自身、それをよく理解していた。
力ない者に誰も付いて来る事はない…。
ここまで、ずっと、そう思っていた。
だからこそ、自分の目で状況把握、物事の動向をしっかりと見極める事を学んできた。
自分の置かれている立場、自分の今いる立ち位置、自分を取り巻く環境、存在達…。
全てを見て、把握する能力が否応なしに培われてきたと云う事だ。
ルルーシュ自身、その事を自覚しているかどうかは解らない。
相手に、自分の考えを察知されれば自分の立場、やがては自分の命さえ危うくなると云う危険も孕んでいる中、ルルーシュ自身は、周囲に対して無関心を装う術さえも身に付けた。
ルルーシュを表向きにではないにしろ、『彼のお気に入り』と云う肩書を与えて見守ってきたシュナイゼルが無言で与えた教育の一つかもしれない。
シュナイゼルにその意識があったとしても、ルルーシュの中にその意識が芽生えたのは多分、ごく最近の事だろう。
だからこそ…ルルーシュは自分の立場を更に自覚する事になった。
エリア11への赴任もシュナイゼルが与えたルルーシュの生きる術であり、これから必要になるであろう経験を積ませるものなのだと…。
そして、それがやがて、シュナイゼルの目指す先で必要な力になるとルルーシュは思っていた。
ルルーシュにとって、周囲から見ると、非常に危うい強さとも云えるが、シュナイゼルに対してのその、忠実さが力となっている事は否めない事実だ。
そして、シュナイゼルと対立している勢力はそんなルルーシュの姿勢と、それに伴う力を恐れている事も事実だ。
それ故に、こう云った時のルルーシュの緊張感は傍目で見ているよりも遥かにルルーシュに圧し掛かっているのである。

 とりあえず、アヴァロン内で出来る事が全て終わり、フクオカ基地の本部へと入った。
これだけの騒ぎとなってしまったので、流石にてんやわんやの大騒ぎだった。
「流石に…私が連れて来た者達がお前たちくらいだからな…。私と一緒にいた者ならともかく、元々、このエリアで任務をこなしていた者達には酷な状況だな…」
てんやわんやの基地内の状況を見て、ルルーシュがぼそりと呟いた。
実際に、ルルーシュの部下と呼べるものは元々数が少ない。
このエリアに連れて来たのだって、ジェレミアをはじめとする、マリアンヌが生きていた頃からルルーシュの事を知る者達ばかりだ。
「確かに…あの時、私達がどれほど云っても殿下は騎士を持とうとされませんでしたしね…」
ジェレミアが呆れ顔で云うと、更にルルーシュはさらりと返した。
「何を云っている…。私がエリア11の総督になって、無駄に名前だけ広がってからだろうが…。騎士候補が一気に増えたのは…」
ルルーシュ自身、自分の生まれの事もあり、ひょっとしたら一升騎士を持つ事は出来ないと考えていた事だってあった。
出来れば、ナナリーには騎士を付けたい…そんな風に考えていた事もあったけれど、一応、自分がシュナイゼルの下で働きを見せていてもその詳細がこうした形で広まるまではルルーシュにさえ騎士候補が皆無だったのだ。
身体が不自由で、大した後見もない母親が平民の、この先を望めない皇女の騎士になりたいと思う者は、そうはいないだろう。
基本的に、ナナリーは王宮から外に出る事のない生活を送っているのだ。
だから、時々、ブリタニア国内を驚かせる騎士叙任があるのだけれど、それを望む事も出来ない。
ルルーシュとナナリーの母であるマリアンヌが皇帝の騎士となった時には、確かに大騒ぎとなったわけだが。
どれだけ有能であっても、その身分がなければ、その地位を得られる事は実質的には無理だとされている地位だった。
確かに皇帝の騎士であるナイトオブラウンズは国籍は問わないし、その実力だけがその地位を得る資格を持つ。
それでも、その周囲には様々な力が働く。
結局、身分のない者がそう云った高い地位を望む事は基本的に不可能に近い状態にあった。
ルルーシュも本来なら貴族出身者、もしくはその実力が認められて騎士候となった者が騎士となる筈なのだ。
ナナリーもそうだが。
しかし、彼らの騎士になろうと思うのは、相当彼らに対しての思い入れがあるか、彼らの意思に関係なく、何かの力が働いた時くらいだ。
後者の場合、そんな輩が命を懸けて彼らを守る事なんて出来る訳がない。
騎士と云うのは、それこそ、その気持ちの強さも要求される。
だから、後見の強い皇族で、後見貴族の中から騎士を指名して、騎士としての働きが出来ずにその仕えた主が死亡したり、その騎士が解任させられたり辞任したり…と云う話も珍しい話しではないのだ。
そう云った事情も知るから、自らを守るための盾は欲しいとは思うし、何より、ナナリーを守ってくれる存在はルルーシュにとって何よりも必要な存在だった。
―――今のところ望むべくもないが…
そんな状態だったから、ルルーシュ自身、このエリアで対外国相手の戦いの後の後始末の込んだん状態を知る者を連れて来る事が出来なかったので、こんな形でパニック状態となってしまうのだ。

 ルルーシュが基地内のデータを調べるべく、スザクを連れて資料室へと入った。
中のパソコンには膨大な量のデータが送られて来ているし、それまでの報告ログも膨大な量だった。
「スザク…日本国内での反体制運動はここまで規模が大きい者はなかったのか?」
ルルーシュが付いて来て、その資料の多さに呆然としているスザクに声をかけた。
「ルルーシュ…そこまでの騒ぎを起こせる程の力があるなら、日本はブリタニアに負けてないよ…。勝てたかどうかは別問題だけどな…」
スザクが呆れ顔でルルーシュに返した。
その答えにルルーシュが『なるほど』と云いながら息を吐いた。
その、吐き出された息の意味は…一体何だったのか…。
少なくとも、スザクの目には、人間の生命維持の意味だけしかない呼吸には見えなかった。
「となると、対外戦力にもう少し、力を割ける…と云う事か…」
ルルーシュが独り言のように呟いたその言葉に、スザクがまた、はっとした顔をした。
「おい…ルルーシュ…」
「なんだ?」
スザクが何かを思って、ルルーシュに声をかけた。
ルルーシュはそんなスザクの思うところを知ってか、知らずか、静かに反応しただけだった。
スザクの中では、ルルーシュはスザクが何を云おうとしているのか、何となく解っている様に見えた。
「まだ…こんな事があるのか?少なくとも、今の中華連邦にそこまでの力はない。そもそも、これでブリタニアのエリアになったんだろう?」
スザクがそう思うのは尤もな話だ。
しかし、ルルーシュはそんな考えはまだ、甘いと云っているような表情をした。
「何を云っている?これからあのエリアを治めるのは、確かにブリタニアに亡命し、帰化した黎星刻だが…彼はブリタニアに忠誠を誓っているわけではない。勿論、私とも対等という立場で臨んでいる…」
確かに、ルルーシュの云っている事はその通りだ。
ただ、そこまで考えているルルーシュを見ていて、スザクは少し、怖くなった。
否、ルルーシュがそんな風に考えねばならない現実に怖くなった…と云うべきなのだろうか…。
「ルルーシュ…?」
スザクの中に、僅かに過って行く不安を…まだ、具体的には解らない。
でも、漠然としているものではあるけれど、不安がスザクの中に生まれる。
「当たり前だろう?確かに、あの時は急を要して、時間がなかったからあのような措置をとった。しかし、彼が最も大切に思っているのは、あの幼い姫君であり、中華連邦だ…」
ルルーシュの云っている事は…確かにその通りだ。
その通りだと解る。
でも…それは…
―――俺は…俺の事も云っているのか?それは…
スザクは日本人とか、ブリタニア人とかではなく、ルルーシュ個人に仕えて来たつもりだった。
仕えていると云っても、それは表向きの事で、対等だと思っていた。
しかし、その想いが過った時…更にその先ほど過った不安が大きくなる。
「ルルーシュ…それは…」
「彼らに対しての監視体制は変わらない。まして、中華連邦のその地の総督となれば、権限もかなり大きいのだから、この先、このエリアを守る為にも出来る限りの事を施すのは当たり前だ…」

 ルルーシュは、このエリアを守る為には…とは云っているけれど。
それでも、やはり、彼に対しての信用はその程度しか持てずにいる。
多分、頭の中では解るのだけれど、感情の中で、どう、咀嚼していいかが解らない。
竜胆奪還の時、あんな危ない橋を渡っているのだ。
それは、ルルーシュにも解っている筈なのだ。
そんな事を考えているスザクに対して、ルルーシュはふっと笑った。
「スザク…やはり、お前は私の騎士には向いていない…。まぁ、どの道、私がこのエリアを離れる時には…お前を開放するつもりだった。このエリアがお前の望む形となる様にしてから…」
ルルーシュの…その一言…。
スザクの中では大きなショックを与えられている。
ルルーシュの中では自分の中にある迷いを断ち切ろうと必死になっている。
「お前…本気で…そんな事を…?」
スザクが声を震わせてルルーシュに尋ねる。
ルルーシュは少しだけ驚いた顔を見せるけれど、すぐにいつもの冷静なルルーシュの顔に戻る。
「スザク…元々お前が私の騎士となったのはただの成り行きだ…。私がお前に興味を持った…それだけの理由だった。そして、私はもうじき、このエリアを離れる事になる…」
幾つも衝撃を受ける告白に…。
スザクはただ目を見開く事しか出来ない。
「な…んで…」
「異母兄上がそろそろ戻ってこいとうるさくてね…。それに、ラティスの件もあって、本国に戻らなくてはならないんだ…。その決定によっては、私はまた、ラティス攻略の前線に立たされることになる…」
淡々と話しているルルーシュに、スザクは信じられないと云った顔をしている。
「だったら…何故俺がお前から…」
「さっきも云った。お前は私の騎士には向かない…。それに、このエリアのトップに立つのは私ではなく、お前の方がいいだろう?幸い、スザクならこのエリアに赴任しているブリタニア軍やスタッフの信頼も厚い。だから…」
―――バキッ!
ルルーシュが言葉を紡いでいる最中…耐えきれなくなって、スザクの左拳がルルーシュの右頬を殴りつけた。
ここで、利き手が出て来なかったのは、最後に残された僅かな理性だったのだろうか?
しかし、スザクの力で殴られて、ルルーシュは耐えきれずに床に倒れた。
そんなルルーシュの襟首を掴んで怒鳴りつけた。
「お前!本気で云っているのか?俺は…そんなつもりでお前の騎士としていたわけじゃない!大体!シンジュクゲットーの仲間ともコンタクトを取れる状態なら、ランスロットを奪取していつだってここから飛び出す事は出来たんだ!俺にそのつもりがあったならな!」
スザクがルルーシュに怒鳴りつけるが、ルルーシュは殴られた拍子に口の中を切って、唇の端から血が滲んでいるが、それを気にする風でもなく、スザクの顔を表情を変えずに見つめている。
ただ、ルルーシュの心の中は…
―――そうやって…僕を軽蔑しろ…
そんな、自分を騙すような言葉を紡ぎ続けていた。
「なら…そうすればよかったじゃないか…。私を騙したともなれば、お前の名声はさらに上がる事になり、ブリタニアも迂闊には手を出せなくなるぞ…」

 ルルーシュのその言葉に、スザクは怒りを露わにする。
こんな風に素直に感情を表に出し、自分の正義を貫けるスザクを見ていて羨ましかった。
自分にないものをたくさん持っていて、いつの日にか…手放したくはないと思ってしまっていた。
それでも、そんな事は…
―――スザクの足かせにしかならない…。僕の騎士なんて…きっと、スザクの命を削るだけの、過酷な立場でしかなくなる…。スザクには…そんなところにいて欲しくはない…。
という思いで振り切ろうと自分の中で必死に何かと戦っている。
ルルーシュの今、目に映っているスザクは…。
本当に自分の気持ちの正直で、まっすぐで…。
闇の中を歩き続けて来たルルーシュにとって眩しいもので…。
憧れてしまうもので…。
近くにいて…更にその輝きを失いたくないと思いつつも、自分の傍にいたら、きっと、そのスザクの真っ直ぐな翡翠の瞳が濁ってしまう…。
そう思うと怖かったから。
こんな風にストレートにルルーシュに感情をぶつけてくれた人は…これまでにはいなかった。
―――これを…『友達』と呼ぶのだろうか…。昔、母上が読んでくれた本の中には『友達』と云う言葉がたくさん出て来たけれど…。実際に見た事はなかったな…。でも、僕は、スザクに対して『友達』と云う幻影を抱いてしまったのかもしれない…。
自分の立場を忘れてはならない。
自分の役目を忘れてはならない。
自分の守るべき者を忘れてはならない。
ずっとその想いを抱きながら、どんな戦場でも立ってきた。
どんな政略の渦の中でも飛び込んできた。
でも、このエリアに来て、自分は変わってしまったと思う。
そんな大切な事を忘れているのではないか…。
そんな風に思えてしまう事が増えた。
ふっと我に返ると、それを忘れて居て事を思い出した。
そして、星刻達を見ていて…。
それを自覚させられた。
―――僕には…守らなくてはならないものがあるんだ。命を懸けて…守らなくてはならないものが…。だから、これ以上、辛くなる前に…
そう思った時…
「お前…ウソを吐いている…」
ルルーシュの襟首を掴んでいたスザクがぼそりと呟いた。
「な!私はウソなど…」
ルルーシュが反論しようとした時…。
今度はスザクがルルーシュのその細い身体を抱きしめた。
「なら…なんで…そんな自分を責める様な顔をしているんだよ…。なんで、泣いているんだよ…」
スザクのその言葉に…ルルーシュはやっと、自分の目がかすんで見えている事が解る。
強く抱きしめられているそのスザクの腕は…。
凄く心地よくて…そこに飲み込まれてしまいそうになって…。
怖くなって、ルルーシュの身体がカタカタと震え始めた。
そんなルルーシュを感じて、スザクが更に腕の力を強めた。
「ルルーシュ…俺は、お前の騎士だろ?そんな事…云うなよ…。俺は、お前の騎士をやめる気はないよ…。お前が地獄の果てに赴任するって云ってもな…」
スザクの言葉に、ルルーシュの中で『甘えてはいけない…。スザクは優しいから…だから…これは、スザクを犠牲にする事になる…』そんな思いが過って行くけれど…
「ルルーシュ、俺は俺のしたい事しかしない…。お前が命令したって、俺は、俺のしたい事しかしない。だから、俺はルルーシュの騎士を続けるんだ…」
スザクがルルーシュの耳元で…暫くの間、そう、小さな声で云い続けていた。

To Be Continued


あとがきに代えて



緊張の糸が切れて、ルルーシュが変な壊れ方して、スザクがブチ切れて…。
ベタだなぁ…と思いつつ、ベタはやっぱり、美味しいからベタになれるんですよね…。
サプライズばかりだと考える方も大変ですしねぇ…。
やっと、このお話しもスザルルっぽくなってきましたねぇ…。
ずっと、何となくスザルルカラーの薄かったお話だったのですが…。
皇子を殴った時点で、もし露見すれば不敬罪じゃすみませんよね…。
皇族への暴行は下手すると反逆罪扱いになりかねない重罪ですし…。
スザクがそんな事を意識していたかはともかく、スザクはそれで罪を問われたとしてもきっと何一つ言い訳しないんでしょうね…。
これでこそ、忠実なる騎士っぽいかなぁ…と…。
身体はって主を諌めているわけですしね。

さて、ここで一つご報告です。
自家通販の方ですが、無配本もペーパーも終わってしまったので、本当は23日まで…って事になっていましたが、今後の通販の方にはそれらをお付けする事は出来ません。
但し、23日までにお申し込み、ご入金された方にはまぁ、別の形でお配りします。
申し訳ありません。(まぁ、もう自家通販のお申し込みはなさそうですが)
あと、『Amethyst Eyes』のinformationページの書店さんで取り扱いされている本に関しましては、直通リンクを作りましたので…。(と云うか、出来たんですねぇ…)
多分、サイトから書店さんで和泉の本をお買い上げ頂く際には少し楽になると思います。

あと、この1週間、超体たらくで申し訳ありません。
少しずつ、元に戻したいと思います。
また、毎日更新に戻る様に頑張ります。



細々と、ランキングに参加中…。この記事を読んで、お気に召して頂いた方は、お手数ですが、バナーを一回クリックしてください。拍手ページは10ページほどの対談(2010/05/26更新)を用意しています。
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posted by 和泉綾 at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年06月12日

皇子とレジスタンス 〜戦いの後の心〜

 アヴァロンに戻ると…中は慌しい事になっていた。
とにかく、様々な隊から多くの通信が入って来て、戦後処理に入っているようだ。
相手に指揮官、最高責任者のいない状態だと、完全にこちらが全てを把握し、処理しなければならないと云う事になる。
敵であった者であっても、味方の将兵であっても。
ルルーシュの場合、基本的に殺す事を好まない性質があるから、相手に犯行の意思がないと判断されれば、そのままブリタニア軍の捕虜として拘束するのだけれど。
今回の場合、国と国…おまけに相手は中華連邦と云う大きな国を相手に戦争をしていただけに、それこそ、捕虜の数も、味方将兵のけが人も半端な数ではないのだ。
その受け入れの管理さえもパニックに近い様な状態となっている。
既に、フクオカ基地からは『捕虜の収容が追いつきません!』と云う泣き言まで云われてしまう始末だ。
殲滅作戦でなければ確かに、それなりに捕虜の収容施設が必要なのだけれど。
このエリア11と云うのはブリタニアから見ても辺境のエリアと云われている、いわば、ブリタニアにとって隅っこのエリアだ。
それでも、ルルーシュが派遣されたのは、このエリアでの何バースの抵抗運動の激しさからだ。
だから、対テロ対策に対しての施設は充実しているものの、対外国との戦争に対する施設はまだ限られており、そして、慣れていない者も多い為に混乱が生じていると云う事だ。
「本当に…凄い騒ぎだな…」
格納庫から更衣室へ向かう廊下を歩いているだけで、バタバタと走って行くアヴァロンの専任文官たちを何人見た事か…。
スザクは思わずそんな風に零してしまう程、現在、旗艦であり、総指揮官であるルルーシュが乗っているこのアヴァロンは混乱状態だった。
おまけに、竜胆を回収した後の、乗組員たちとキューエル達が中華連邦に潜入して連れだした竜胆の乗組員の家族達の取り調べもある事から…それこど、パニック状態と云ってもおかしくない状態だ。
こんな処理になれてしまう人間ばかりと云うのも問題だとは思うけれど、見ていて、その文官たちが気の毒に見えて来た。
恐らく、機密事項もあるからオンラインでのやり取りができないのだろう。
当然、通信機器を使っての連絡のやり取りも難しい。
軍であるのだから、そう云った機密事項を取り扱う為のオンラインもあるのだろうけれど、現在のところ、あまりにそのデータが多くてとてもではないが追いつかないと云った感じだ。
さっきから、他の艦からメッセンジャーが何度も行き来している形跡もある。
「本来、ルルーシュはこっちの方が専門なんだろうなぁ…」
そんな事を呟いてしまうのは…彼がこのエリアに来てからの政治手腕の見事さにある。
スザクも政治家の息子をやって来たのだから、親のやっている事を見ている程度の学習しかしていないが、それでもルルーシュのやっている事の凄さは具体的にどう…と云う事は云えなくとも、何となく感覚で解る。
そして、自分には真似は出来ないな…と思う。

 ひとまず、着替えてからブリッジに行くと…こちらもこちらで、凄い事になっている。
「殿下!医師の数が足りないとの報告が…」
「捕虜の数が増え過ぎて現在の第5エリアにはもう収容できないとの事です!」
「医薬品がどこも不足しているとのことですが…」
入ってきた途端に耳に入ってきたのは、そんな叫び声の様な報告だ。
恐らく、全てルルーシュに向けられてのものだろう。
「キュウシュウ地区の医師は?軍に出なくてもかまわん!」
「現在、民間人に必要最低限の数だけ残して全てこちらに集まっています!」
「なら、チュウゴク地区、シコク地区からも招集しろ!」
「イエス、ユア・ハイネス!」
一つ一つの報告はルルーシュに入って来て、それを全てルルーシュ一人で判断し、命令を下している様に見えるのは、多分気のせいではない。
―――こいつ…こんなんで、よく目が回らないな…。と云うか、こいつが戦後処理の後熱出すのって、精神的なものもあるだろうけれど、確実にこんな事を一人でやらなくちゃいけない環境もあるよな…
スザクはその場を見ていて素直にそう思った。
実際、指示を出しているのはルルーシュ一人に見える。
「ルルーシュ…俺、何か手伝う。何かできる事はあるか?」
ルルーシュの後ろからスザクが声をかけた。
いくら総指揮官と云ったって子供に対してこれだけの事をいっぺんにやれと云っているのは見ていて、痛々しいと思うし、これではルルーシュの方が壊れてしまいそうだ。
「じゃあ、ここのリストにある薬品メーカーの者達を呼びだして、こちらのリストの医薬品を全てあるだけ持って来させてくれ!」
ルルーシュはスザクのその問いかけにただ、指示を出すだけだった。
実際、スザク個人への返事をしていられるだけの余裕はないのだろう。
「解った…」
「もし、お前が交渉してうまく動かない場合は私の名前を出せ!それから、これが私の専用回線だ!この通信を使え!」
もはや、猫の手も借りたいと云う状態なのだろう。
セシルも外から入って来る通信の内容をルルーシュに伝えるのが精いっぱいという状態だ。
手渡された、専用の通信機を手に取り、少し離れたデスクでリストを見つつ、医薬品メーカーに連絡を入れた。
流石に海上での戦闘だったから、基地周辺の住民などの死者はゼロ、けが人も軽いけがで済んでいるようだ。
スザクはルルーシュのその指示をしている姿を横目に見ながら、云われたリストの医薬品メーカーに連絡を入れた。
驚くことに、スザクも知っている日本の医薬品メーカーも入っている。
しかも、一度はブリタニアに接収されて、ブリタニア企業の孫請けくらいにまで下げられていたメーカー名もある。
―――アイツ…いつの間に…
スザクは更に驚きを隠せない。
しかし、今は驚いて、呆然としている暇はない。
戦後処理で医薬品が足りないとなれば、中には一刻を争う人間もいるかもしれないのだ。
色々考えている暇はない…と、スザクは指示された事を始めた。
それでも、時々、ルルーシュの方を見る事を忘れない。
どう考えても、こう云った処理の時に無理している事が殆どだと思われるからだ。
―――後で懲罰対象となってもその時は必ず俺が止める…

 戦場の戦後処理をしているライとジノは…とにかく、数の多さに、驚く。
確かに、ジノは確かに様々な戦場を踏んで来たが、ここまで残骸、生き残りの敵兵が多い戦いの終わった戦場は見た事がない。
「これはまた…全てを回収する前に死んでしまっている者もいそうだな…」
ジノがぼそりと呟いた。
人を探すことだって難しいし、もし、探せ出せたとしても、死んでいるかもしれないし、逆にこう云った場面で銃口を向けられる事もある。
『ヴァインベルグ卿!とにかく、時間との勝負です。ヴァインベルグ卿だって…殿下の事が心配でこのエリアに来たのでしょう?』
ジノの通信からライの言葉が聞こえて来た。
何かあった時の為に、互いの通信をオープンにしていた。
だから、聞こえてしまったのだろう。
「そう…だな…。と云うか、私はお前たちにすっかり先を越されてしまった気分だよ…。こんなことなら、ラウンズになんてならなければ良かったよ…」
『ヴァインベルグ卿?』
ジノのそんな一言に、ライが不思議そうに声をかけて来た。
ナイトオブラウンズと云うのは、ブリタニア軍に所属していれば、誰でも一度はあこがれる地位だ。
「否、まぁ、忘れてくれ…。もう、私がいなくても、殿下は、ちゃんと立っておられる…」
少し、ジノとしては寂しいと思うのは…仕方ないか…。
何れ、ルルーシュの役に立てるようにと…軍の中でも上の地位を願ったけれど。
皇帝の騎士となってしまっては、ルルーシュ個人を守る事は出来ない。
ただ、皇帝以外の命令は聞く義務はない。
それは、皇族であろうが、身分の高い貴族であろうが、関係ない。
それが、ナイトオブラウンズだ。
『よく解りませんが…さっさと片付けないと、恐らく、アヴァロンに先に戻った枢木卿も、ルルーシュ殿下も、色々と忙殺されているかと思うのですが…』
海面にたくさん浮いている戦闘後の残骸を見て、ライがそう云った。
確かに、これだけの数だと、人手も物資も足りない状態だろう。
戦争は…やっている時も大変だが、終わった後の後始末も大変なのだ。
地上戦をしていた後に、不発弾が見つかったり、敵の掃討作戦の為に埋められた地雷が爆発したり…と云うのはあまり珍しくない話だ。
それに、その後、使われた武器の所為で土地が死んでしまうことだってある。
その為の復旧作業などを考えた時…
―――人は何故…ここまでして自己顕示欲を示して、欲っするものの為に、こんなバカげたことを続けるのだろうか…。この海だって、元々は、資源豊富な海だった筈なのに…
ルルーシュがいつでもこうした戦いに対して心を痛めているのは、知っている。
ルルーシュの事だ。
こう云った事まで考えて、そして、作戦を練っているのだろうけれど。
完全に何も被害のない状態と云う訳にはいかないのが、戦争と云うものだ。
これは、一人が何にもならない事だ。
それでも、ルルーシュがこうした形で力を示して来ていると云う事は…。
軍の中でもルルーシュの意思を遵守して、なるべく敵兵を殺さないように…と云う医師が浸透して来ているのだろう。
だからこそ、この戦後処理が大変となるのだから。

 殆どがKMFや戦艦の残骸と解った時点で、ライとジノもアヴァロンへと向かった。
戻った時には…
「遅かったねぇ〜ヴァインベルグ卿?」
相変わらず、軽い口調で声をかけて来たのは、ルキアーノ=ブラッドリー、ナイトオブテンだった。
「ブラッドリー今日はずいぶん早かったんですね…。ルルーシュ殿下の言いつけを守らずに片っ端から一刀両断みたいな撃沈の仕方をして…」
ジノが少し、不愉快そうにルキアーノに云った。
「あの戦場の中で、殺さず…なんて、無理に決まっているじゃないか…。それに、私がこんな前線に出て来るのは、こうして、合法的に実力の差を見せつけながら、相手を叩き潰せるからねぇ…」
相変わらず、悪趣味だとは思うけれど。
それでも、ナイトオブラウンズのメンバーであり、ルルーシュだって、彼のやった事に対して罰を与える事は出来ない。
と云うよりも、この場合、罪ではないのだから、与えようもないのだけれど。
それでも、ルルーシュの意思を尊重しようとする者にとってはあまり愉快な話とは云えないだろう。
「テンは…相変わらず、悪趣味…」
そこにぼそりと呟くように一言零したのはアーニャだった。
戦闘の後で、神経が高揚している状態だから、あまり刺激をしたい訳ではない。
戦後のこの興奮状態と云うのは、中々厄介なもので…。
時に、理性を失い、とんでもない事をしでかす事もある。
「あの…こんなところで油を売っていないで、ルルーシュ殿下のフォローに…」
相手は格上の地位にいる相手だ。
まして、ナイトオブラウンズなら、ちょっとやそっとの事ではルルーシュもバッする事が出来ないし、抑止力にならない場合もあるのだ。
身分的にはルルーシュの方が上だけれど、皇帝直属の騎士であると云う事で、皇帝以外の命令に関しては自分の判断で聞かなくともいい…と云う事になっている。
実際には、ルキアーノ程あからさまに好き放題やる人間も少ないが…。
と云うのも、皇帝直属の騎士が、変にその名を貶める様な行動をとる事を自分で戒めている場合が多いからだ。
「そうだな…。まだ、戦後処理がある。ブラッドリー卿?手伝う気がないのでしたら、せめて、邪魔はしないで下さい…」
ジノがルキアーノに対してそう云って、通り過ぎようとすると、ルキアーノが大笑いし始める。
「ヴァインベルグ卿はどうやら、あの、平民の母を持つ皇子殿下が本当に大事らしい…。あの皇子殿下の事は嫌いじゃない。皇子殿下の母君も、皇子殿下自身も、平民の辛さ、身分のない苦労をよく知っていらっしゃるからな…」
ルキアーノの言葉にジノがかっとなった。
そして…
「ブラッドリー卿!そう思うなら、殿下の邪魔をなさられぬよう…。殿下は戦争の本質を知りつつも、我々の力を信用し、そして、あのような命令を下されているのだ!それが出来ないと云うのは、ブラッドリー卿は皇子殿下の御命令を遂行する事も出来ない無のもの…と認めているようなものですよ?」
ライがそう云いながらルキアーノを睨んだ。
戦闘の後で、全員が、普段とは違う気持ちになっているようだ。
この場の空気が、なんだか…冷たい者に包まれながら渦巻いている。

 そこに…
「あ、どうされました?それにライ…戻ったのなら、すぐに殿下の元へ…」
フクオカ基地の本部にいたジェレミアが通りかかり、その場の空気が和らいだ。
「あ、はい、すぐに着替えて来ます…」
そう云って、ライがその場から去って行った。
それを見送って、ジェレミアが3人の前に立ち、頭を下げた。
「どうやら、私の教育がうまく行き届いておらず、無礼を申し上げた事、このジェレミアに免じてお許し頂きたい…」
そのジェレミアにジノとアーニャが驚いた顔をしている。
「別にライは…間違った事は云っていないよ…ジェレミア…」
「そう…ライはただ、ルルーシュ殿下の事を大切に思っているだけ…」
そして、ルキアーノは面白くなさそうな顔をしている。
「ふん…少しからかったくらいで、目くじら立てる事はないだろう?」
「ならば…なぜ、戦場であのような戦闘を?ラウンズの皆さまは皇帝陛下の御命令でルルーシュ殿下の指揮に従う様に…と命ぜられている筈です。このエリア11に赴任している以上は、ラウンズの皆様といえど、ルルーシュ殿下の御命令は絶対の筈…」
一つ一つ、ジェレミアが諭す様に彼らに告げる。
確かに、ルルーシュもルキアーノが赴任してきたと云う時には嫌な顔をしていたが…。
シュナイゼルの命令さえも時に独断専行で破る事があったと云う相手だ…。
それでも、その地位ゆえに罰則規定があってないに等しい。
つまり、一人一人のその心の持ち方にかけられているのだ。
―――陛下も何故…このような輩をラウンズになど…
ジェレミアは諭しながらもそんな事を思った。
ナイトオブラウンズに対して、完璧な品行方正を求める訳ではないが、こうした、戦闘時などの命令などは忠実に守って貰わなければ、軍全体に影響を及ぼすことだってあるのだ。
今回は、大きな問題は起きなかったが、総指揮官の命令には必ず意味があるのだ。
「ならば訊こうか?そうやって敵兵たちの命を救って、感謝どころか、復讐の種を増やす事になる…。シュナイゼル殿下の片腕とも謳われる皇子殿下がそんな甘っちょろい事をして何になる!」
ルキアーノのその言葉に…ジェレミアは大きく息を吐いた。
「ブラッドリー卿…このエリア11の現状をご存知ですか?今は枢木のお陰でだいぶテロが減りましたが、今もなお、不安定な状態にあるのです。そんなところに、敵軍だからと無差別に敵兵を全て殺していたら、やっとテロが落ち着いてきたこのエリアにまた不安が蔓延します。そうなっては、対外的な事以前に、内部がまた崩壊しかねません…」
ジェレミアが理路整然と言葉を並べる。
実際に正しい部分があるから何とも言えない。
甘いと云えば甘いのだけれど。
「その、お優しい気持ちの所為で、殿下自身が潰れてしまわない様に気をつける事だな…」
ルキアーノはその一言を置いて、その場を去って行った。
こちらもこちらで正しい部分があるから…その場に残った3人は複雑な表情を葛事が出来なかった。
そして、心の中に、ルルーシュのその、あらゆることに対して本質部分で甘さを見せている事に不安を抱かない訳にはいかなかった。

To Be Continued


あとがきに代えて



済みません。
昨日の分の原稿は来週に回す事にしました。
と云うか、明日と月曜日も更新できるか怪しいところなので…
どう云う訳か、AHLの翌日に早起きして通院なので…Σ( ̄◇ ̄;;;;
これの掲載が終わったら、お風呂入って出かけます。
明日、AHLに参加される皆さん、宜しくお願いします。


☆拍手のお返事


紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
えっと、ちゃんと更新続けられなくてすみません。

『皇子とレジスタンス』
頭を使わない口げんかの場合、スザクの勝ちですよね。
ルルーシュは色々考えて、物事を組み立てて話をしようとするから、大人に対しては効果的かもしれないけれど、ストレートに来ると多分、困ってしまうと思うんです。
まぁ、今回の場合、勝ち負けじゃありませんでしたけれど。
で、スザクと云い合いをしていてルルーシュが何かに気がついて…これで少し、大きくなるのだと思います。
ロイドさん、ときどき凄く役に立ってくれるんですよね(笑)
というか、この人がいない連載ものってないんですよね…そう云えば…
まぁ、非常に重要部分でいろんな形でサプライズを起こしてくれるので、重宝出来るキャラです。
ルルーシュがスザクを解任しようと考えている…という事で、又一つネタが出来ています(笑)
まだ、ルルーシュがエリア11を離れることはできそうにありませんけれど。
ただ、その気持ちを持った状態ではスザクももやもやしてしまいますから…一回衝突させてみようかなと思っています。(え?)

『幼馴染シリーズ』
スザクの家の話…まぁ、少し触れなくてはいけなくなってきたので、結構文章にするにはややこしい事になりそうですが、ちゃんと出します。
でないと、ルルーシュとちゃんとゴールイン出来ませんしね。
他にも、ルルーシュがさらわれていた事で潜っていたキャラたちも出てきます。
最終回に向けて色々やりたい事があって…
少々長めのスパンになるのかなぁ…と思いつつも、秋には終わりそうな気配です。
この後もどうしようかなぁ…と思いつつ、書いてみたいものもあるし…。
オフラインにしようか、オンラインにしようか、考えているものが一つあります。
基本的にオンラインの再録は要望の声がなければやらないと思うので…。
『皇子とレジスタンス』もあの頃、出して欲しいと仰って下さった有難い方がいらっしゃったので、出したのですが…

『It's Destiny』
客観的に見る事が出来るキャラクターがどうしても必要な話だったので…
ロイドさんの場合、そう云う意味ではこういうキャラが欲しい時には重宝しますね。
ミレイさんはどうしてもルルーシュよりになってしまうし、カノンはシュナ兄寄りになってしまうので。
その中でもロイドさんは非常に客観的に物事を見てくれそうなので…

ミレイさんがどうしてくれるのかは…まぁ、この先の話なので…。
ただ、ルルーシュとスザクの二人は前途多難…って事で…。
それでも、それを全て解決、解放されなければきっと、二人にとって本当の意味で笑える日が来ないと思うんで…。
少し、ルルーシュにもスザクにも、目を覚まして欲しいと思う事がありますので…
暫くは彼らにとっての試練の日々が続きそうです。

『stiff neck』
この話…少々設定を変えさせて頂いちゃってすみません。
ちょっと書いていくうえで、清い仲の方が、書きやすくなってしまって…
というか、咲世子さん、和泉の現在の心境を描写してくれています(笑)
やっぱり、女性は潤いのない生活をしていると、すぐに疲れた顔になってしまいます。
とにかく、咲世子さんと一緒に『萌え♪』と潤いを共有しながら…と思いつつ、書いておりました。
咲世子さんの部分を書いている時は凄いスムーズに話が進みました。

ここのスザク…ルルーシュフリークの皆様全員を敵に回している様な…(爆)
まぁ、これはこれで笑えるネタなので…
えっと、続きは来週となってしまいますが…ご了承ください。
いつも有難う御座居ます。
色々バタバタしていてすみません。


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posted by 和泉綾 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

皇子とレジスタンス 〜戦いの後の心〜

 アヴァロンに戻ると…中は慌しい事になっていた。
とにかく、様々な隊から多くの通信が入って来て、戦後処理に入っているようだ。
相手に指揮官、最高責任者のいない状態だと、完全にこちらが全てを把握し、処理しなければならないと云う事になる。
敵であった者であっても、味方の将兵であっても。
ルルーシュの場合、基本的に殺す事を好まない性質があるから、相手に犯行の意思がないと判断されれば、そのままブリタニア軍の捕虜として拘束するのだけれど。
今回の場合、国と国…おまけに相手は中華連邦と云う大きな国を相手に戦争をしていただけに、それこそ、捕虜の数も、味方将兵のけが人も半端な数ではないのだ。
その受け入れの管理さえもパニックに近い様な状態となっている。
既に、フクオカ基地からは『捕虜の収容が追いつきません!』と云う泣き言まで云われてしまう始末だ。
殲滅作戦でなければ確かに、それなりに捕虜の収容施設が必要なのだけれど。
このエリア11と云うのはブリタニアから見ても辺境のエリアと云われている、いわば、ブリタニアにとって隅っこのエリアだ。
それでも、ルルーシュが派遣されたのは、このエリアでの何バースの抵抗運動の激しさからだ。
だから、対テロ対策に対しての施設は充実しているものの、対外国との戦争に対する施設はまだ限られており、そして、慣れていない者も多い為に混乱が生じていると云う事だ。
「本当に…凄い騒ぎだな…」
格納庫から更衣室へ向かう廊下を歩いているだけで、バタバタと走って行くアヴァロンの専任文官たちを何人見た事か…。
スザクは思わずそんな風に零してしまう程、現在、旗艦であり、総指揮官であるルルーシュが乗っているこのアヴァロンは混乱状態だった。
おまけに、竜胆を回収した後の、乗組員たちとキューエル達が中華連邦に潜入して連れだした竜胆の乗組員の家族達の取り調べもある事から…それこど、パニック状態と云ってもおかしくない状態だ。
こんな処理になれてしまう人間ばかりと云うのも問題だとは思うけれど、見ていて、その文官たちが気の毒に見えて来た。
恐らく、機密事項もあるからオンラインでのやり取りができないのだろう。
当然、通信機器を使っての連絡のやり取りも難しい。
軍であるのだから、そう云った機密事項を取り扱う為のオンラインもあるのだろうけれど、現在のところ、あまりにそのデータが多くてとてもではないが追いつかないと云った感じだ。
さっきから、他の艦からメッセンジャーが何度も行き来している形跡もある。
「本来、ルルーシュはこっちの方が専門なんだろうなぁ…」
そんな事を呟いてしまうのは…彼がこのエリアに来てからの政治手腕の見事さにある。
スザクも政治家の息子をやって来たのだから、親のやっている事を見ている程度の学習しかしていないが、それでもルルーシュのやっている事の凄さは具体的にどう…と云う事は云えなくとも、何となく感覚で解る。
そして、自分には真似は出来ないな…と思う。

 ひとまず、着替えてからブリッジに行くと…こちらもこちらで、凄い事になっている。
「殿下!医師の数が足りないとの報告が…」
「捕虜の数が増え過ぎて現在の第5エリアにはもう収容できないとの事です!」
「医薬品がどこも不足しているとのことですが…」
入ってきた途端に耳に入ってきたのは、そんな叫び声の様な報告だ。
恐らく、全てルルーシュに向けられてのものだろう。
「キュウシュウ地区の医師は?軍に出なくてもかまわん!」
「現在、民間人に必要最低限の数だけ残して全てこちらに集まっています!」
「なら、チュウゴク地区、シコク地区からも招集しろ!」
「イエス、ユア・ハイネス!」
一つ一つの報告はルルーシュに入って来て、それを全てルルーシュ一人で判断し、命令を下している様に見えるのは、多分気のせいではない。
―――こいつ…こんなんで、よく目が回らないな…。と云うか、こいつが戦後処理の後熱出すのって、精神的なものもあるだろうけれど、確実にこんな事を一人でやらなくちゃいけない環境もあるよな…
スザクはその場を見ていて素直にそう思った。
実際、指示を出しているのはルルーシュ一人に見える。
「ルルーシュ…俺、何か手伝う。何かできる事はあるか?」
ルルーシュの後ろからスザクが声をかけた。
いくら総指揮官と云ったって子供に対してこれだけの事をいっぺんにやれと云っているのは見ていて、痛々しいと思うし、これではルルーシュの方が壊れてしまいそうだ。
「じゃあ、ここのリストにある薬品メーカーの者達を呼びだして、こちらのリストの医薬品を全てあるだけ持って来させてくれ!」
ルルーシュはスザクのその問いかけにただ、指示を出すだけだった。
実際、スザク個人への返事をしていられるだけの余裕はないのだろう。
「解った…」
「もし、お前が交渉してうまく動かない場合は私の名前を出せ!それから、これが私の専用回線だ!この通信を使え!」
もはや、猫の手も借りたいと云う状態なのだろう。
セシルも外から入って来る通信の内容をルルーシュに伝えるのが精いっぱいという状態だ。
手渡された、専用の通信機を手に取り、少し離れたデスクでリストを見つつ、医薬品メーカーに連絡を入れた。
流石に海上での戦闘だったから、基地周辺の住民などの死者はゼロ、けが人も軽いけがで済んでいるようだ。
スザクはルルーシュのその指示をしている姿を横目に見ながら、云われたリストの医薬品メーカーに連絡を入れた。
驚くことに、スザクも知っている日本の医薬品メーカーも入っている。
しかも、一度はブリタニアに接収されて、ブリタニア企業の孫請けくらいにまで下げられていたメーカー名もある。
―――アイツ…いつの間に…
スザクは更に驚きを隠せない。
しかし、今は驚いて、呆然としている暇はない。
戦後処理で医薬品が足りないとなれば、中には一刻を争う人間もいるかもしれないのだ。
色々考えている暇はない…と、スザクは指示された事を始めた。
それでも、時々、ルルーシュの方を見る事を忘れない。
どう考えても、こう云った処理の時に無理している事が殆どだと思われるからだ。
―――後で懲罰対象となってもその時は必ず俺が止める…

 戦場の戦後処理をしているライとジノは…とにかく、数の多さに、驚く。
確かに、ジノは確かに様々な戦場を踏んで来たが、ここまで残骸、生き残りの敵兵が多い戦いの終わった戦場は見た事がない。
「これはまた…全てを回収する前に死んでしまっている者もいそうだな…」
ジノがぼそりと呟いた。
人を探すことだって難しいし、もし、探せ出せたとしても、死んでいるかもしれないし、逆にこう云った場面で銃口を向けられる事もある。
『ヴァインベルグ卿!とにかく、時間との勝負です。ヴァインベルグ卿だって…殿下の事が心配でこのエリアに来たのでしょう?』
ジノの通信からライの言葉が聞こえて来た。
何かあった時の為に、互いの通信をオープンにしていた。
だから、聞こえてしまったのだろう。
「そう…だな…。と云うか、私はお前たちにすっかり先を越されてしまった気分だよ…。こんなことなら、ラウンズになんてならなければ良かったよ…」
『ヴァインベルグ卿?』
ジノのそんな一言に、ライが不思議そうに声をかけて来た。
ナイトオブラウンズと云うのは、ブリタニア軍に所属していれば、誰でも一度はあこがれる地位だ。
「否、まぁ、忘れてくれ…。もう、私がいなくても、殿下は、ちゃんと立っておられる…」
少し、ジノとしては寂しいと思うのは…仕方ないか…。
何れ、ルルーシュの役に立てるようにと…軍の中でも上の地位を願ったけれど。
皇帝の騎士となってしまっては、ルルーシュ個人を守る事は出来ない。
ただ、皇帝以外の命令は聞く義務はない。
それは、皇族であろうが、身分の高い貴族であろうが、関係ない。
それが、ナイトオブラウンズだ。
『よく解りませんが…さっさと片付けないと、恐らく、アヴァロンに先に戻った枢木卿も、ルルーシュ殿下も、色々と忙殺されているかと思うのですが…』
海面にたくさん浮いている戦闘後の残骸を見て、ライがそう云った。
確かに、これだけの数だと、人手も物資も足りない状態だろう。
戦争は…やっている時も大変だが、終わった後の後始末も大変なのだ。
地上戦をしていた後に、不発弾が見つかったり、敵の掃討作戦の為に埋められた地雷が爆発したり…と云うのはあまり珍しくない話だ。
それに、その後、使われた武器の所為で土地が死んでしまうことだってある。
その為の復旧作業などを考えた時…
―――人は何故…ここまでして自己顕示欲を示して、欲っするものの為に、こんなバカげたことを続けるのだろうか…。この海だって、元々は、資源豊富な海だった筈なのに…
ルルーシュがいつでもこうした戦いに対して心を痛めているのは、知っている。
ルルーシュの事だ。
こう云った事まで考えて、そして、作戦を練っているのだろうけれど。
完全に何も被害のない状態と云う訳にはいかないのが、戦争と云うものだ。
これは、一人が何にもならない事だ。
それでも、ルルーシュがこうした形で力を示して来ていると云う事は…。
軍の中でもルルーシュの意思を遵守して、なるべく敵兵を殺さないように…と云う医師が浸透して来ているのだろう。
だからこそ、この戦後処理が大変となるのだから。

 殆どがKMFや戦艦の残骸と解った時点で、ライとジノもアヴァロンへと向かった。
戻った時には…
「遅かったねぇ〜ヴァインベルグ卿?」
相変わらず、軽い口調で声をかけて来たのは、ルキアーノ=ブラッドリー、ナイトオブテンだった。
「ブラッドリー今日はずいぶん早かったんですね…。ルルーシュ殿下の言いつけを守らずに片っ端から一刀両断みたいな撃沈の仕方をして…」
ジノが少し、不愉快そうにルキアーノに云った。
「あの戦場の中で、殺さず…なんて、無理に決まっているじゃないか…。それに、私がこんな前線に出て来るのは、こうして、合法的に実力の差を見せつけながら、相手を叩き潰せるからねぇ…」
相変わらず、悪趣味だとは思うけれど。
それでも、ナイトオブラウンズのメンバーであり、ルルーシュだって、彼のやった事に対して罰を与える事は出来ない。
と云うよりも、この場合、罪ではないのだから、与えようもないのだけれど。
それでも、ルルーシュの意思を尊重しようとする者にとってはあまり愉快な話とは云えないだろう。
「テンは…相変わらず、悪趣味…」
そこにぼそりと呟くように一言零したのはアーニャだった。
戦闘の後で、神経が高揚している状態だから、あまり刺激をしたい訳ではない。
戦後のこの興奮状態と云うのは、中々厄介なもので…。
時に、理性を失い、とんでもない事をしでかす事もある。
「あの…こんなところで油を売っていないで、ルルーシュ殿下のフォローに…」
相手は格上の地位にいる相手だ。
まして、ナイトオブラウンズなら、ちょっとやそっとの事ではルルーシュもバッする事が出来ないし、抑止力にならない場合もあるのだ。
身分的にはルルーシュの方が上だけれど、皇帝直属の騎士であると云う事で、皇帝以外の命令に関しては自分の判断で聞かなくともいい…と云う事になっている。
実際には、ルキアーノ程あからさまに好き放題やる人間も少ないが…。
と云うのも、皇帝直属の騎士が、変にその名を貶める様な行動をとる事を自分で戒めている場合が多いからだ。
「そうだな…。まだ、戦後処理がある。ブラッドリー卿?手伝う気がないのでしたら、せめて、邪魔はしないで下さい…」
ジノがルキアーノに対してそう云って、通り過ぎようとすると、ルキアーノが大笑いし始める。
「ヴァインベルグ卿はどうやら、あの、平民の母を持つ皇子殿下が本当に大事らしい…。あの皇子殿下の事は嫌いじゃない。皇子殿下の母君も、皇子殿下自身も、平民の辛さ、身分のない苦労をよく知っていらっしゃるからな…」
ルキアーノの言葉にジノがかっとなった。
そして…
「ブラッドリー卿!そう思うなら、殿下の邪魔をなさられぬよう…。殿下は戦争の本質を知りつつも、我々の力を信用し、そして、あのような命令を下されているのだ!それが出来ないと云うのは、ブラッドリー卿は皇子殿下の御命令を遂行する事も出来ない無のもの…と認めているようなものですよ?」
ライがそう云いながらルキアーノを睨んだ。
戦闘の後で、全員が、普段とは違う気持ちになっているようだ。
この場の空気が、なんだか…冷たい者に包まれながら渦巻いている。

 そこに…
「あ、どうされました?それにライ…戻ったのなら、すぐに殿下の元へ…」
フクオカ基地の本部にいたジェレミアが通りかかり、その場の空気が和らいだ。
「あ、はい、すぐに着替えて来ます…」
そう云って、ライがその場から去って行った。
それを見送って、ジェレミアが3人の前に立ち、頭を下げた。
「どうやら、私の教育がうまく行き届いておらず、無礼を申し上げた事、このジェレミアに免じてお許し頂きたい…」
そのジェレミアにジノとアーニャが驚いた顔をしている。
「別にライは…間違った事は云っていないよ…ジェレミア…」
「そう…ライはただ、ルルーシュ殿下の事を大切に思っているだけ…」
そして、ルキアーノは面白くなさそうな顔をしている。
「ふん…少しからかったくらいで、目くじら立てる事はないだろう?」
「ならば…なぜ、戦場であのような戦闘を?ラウンズの皆さまは皇帝陛下の御命令でルルーシュ殿下の指揮に従う様に…と命ぜられている筈です。このエリア11に赴任している以上は、ラウンズの皆様といえど、ルルーシュ殿下の御命令は絶対の筈…」
一つ一つ、ジェレミアが諭す様に彼らに告げる。
確かに、ルルーシュもルキアーノが赴任してきたと云う時には嫌な顔をしていたが…。
シュナイゼルの命令さえも時に独断専行で破る事があったと云う相手だ…。
それでも、その地位ゆえに罰則規定があってないに等しい。
つまり、一人一人のその心の持ち方にかけられているのだ。
―――陛下も何故…このような輩をラウンズになど…
ジェレミアは諭しながらもそんな事を思った。
ナイトオブラウンズに対して、完璧な品行方正を求める訳ではないが、こうした、戦闘時などの命令などは忠実に守って貰わなければ、軍全体に影響を及ぼすことだってあるのだ。
今回は、大きな問題は起きなかったが、総指揮官の命令には必ず意味があるのだ。
「ならば訊こうか?そうやって敵兵たちの命を救って、感謝どころか、復讐の種を増やす事になる…。シュナイゼル殿下の片腕とも謳われる皇子殿下がそんな甘っちょろい事をして何になる!」
ルキアーノのその言葉に…ジェレミアは大きく息を吐いた。
「ブラッドリー卿…このエリア11の現状をご存知ですか?今は枢木のお陰でだいぶテロが減りましたが、今もなお、不安定な状態にあるのです。そんなところに、敵軍だからと無差別に敵兵を全て殺していたら、やっとテロが落ち着いてきたこのエリアにまた不安が蔓延します。そうなっては、対外的な事以前に、内部がまた崩壊しかねません…」
ジェレミアが理路整然と言葉を並べる。
実際に正しい部分があるから何とも言えない。
甘いと云えば甘いのだけれど。
「その、お優しい気持ちの所為で、殿下自身が潰れてしまわない様に気をつける事だな…」
ルキアーノはその一言を置いて、その場を去って行った。
こちらもこちらで正しい部分があるから…その場に残った3人は複雑な表情を葛事が出来なかった。
そして、心の中に、ルルーシュのその、あらゆることに対して本質部分で甘さを見せている事に不安を抱かない訳にはいかなかった。

To Be Continued


あとがきに代えて



済みません。
昨日の分の原稿は来週に回す事にしました。
と云うか、明日と月曜日も更新できるか怪しいところなので…
どう云う訳か、AHLの翌日に早起きして通院なので…Σ( ̄◇ ̄;;;;
これの掲載が終わったら、お風呂入って出かけます。
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☆拍手のお返事


紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
えっと、ちゃんと更新続けられなくてすみません。

『皇子とレジスタンス』
頭を使わない口げんかの場合、スザクの勝ちですよね。
ルルーシュは色々考えて、物事を組み立てて話をしようとするから、大人に対しては効果的かもしれないけれど、ストレートに来ると多分、困ってしまうと思うんです。
まぁ、今回の場合、勝ち負けじゃありませんでしたけれど。
で、スザクと云い合いをしていてルルーシュが何かに気がついて…これで少し、大きくなるのだと思います。
ロイドさん、ときどき凄く役に立ってくれるんですよね(笑)
というか、この人がいない連載ものってないんですよね…そう云えば…
まぁ、非常に重要部分でいろんな形でサプライズを起こしてくれるので、重宝出来るキャラです。
ルルーシュがスザクを解任しようと考えている…という事で、又一つネタが出来ています(笑)
まだ、ルルーシュがエリア11を離れることはできそうにありませんけれど。
ただ、その気持ちを持った状態ではスザクももやもやしてしまいますから…一回衝突させてみようかなと思っています。(え?)

『幼馴染シリーズ』
スザクの家の話…まぁ、少し触れなくてはいけなくなってきたので、結構文章にするにはややこしい事になりそうですが、ちゃんと出します。
でないと、ルルーシュとちゃんとゴールイン出来ませんしね。
他にも、ルルーシュがさらわれていた事で潜っていたキャラたちも出てきます。
最終回に向けて色々やりたい事があって…
少々長めのスパンになるのかなぁ…と思いつつも、秋には終わりそうな気配です。
この後もどうしようかなぁ…と思いつつ、書いてみたいものもあるし…。
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『皇子とレジスタンス』もあの頃、出して欲しいと仰って下さった有難い方がいらっしゃったので、出したのですが…

『It's Destiny』
客観的に見る事が出来るキャラクターがどうしても必要な話だったので…
ロイドさんの場合、そう云う意味ではこういうキャラが欲しい時には重宝しますね。
ミレイさんはどうしてもルルーシュよりになってしまうし、カノンはシュナ兄寄りになってしまうので。
その中でもロイドさんは非常に客観的に物事を見てくれそうなので…

ミレイさんがどうしてくれるのかは…まぁ、この先の話なので…。
ただ、ルルーシュとスザクの二人は前途多難…って事で…。
それでも、それを全て解決、解放されなければきっと、二人にとって本当の意味で笑える日が来ないと思うんで…。
少し、ルルーシュにもスザクにも、目を覚まして欲しいと思う事がありますので…
暫くは彼らにとっての試練の日々が続きそうです。

『stiff neck』
この話…少々設定を変えさせて頂いちゃってすみません。
ちょっと書いていくうえで、清い仲の方が、書きやすくなってしまって…
というか、咲世子さん、和泉の現在の心境を描写してくれています(笑)
やっぱり、女性は潤いのない生活をしていると、すぐに疲れた顔になってしまいます。
とにかく、咲世子さんと一緒に『萌え♪』と潤いを共有しながら…と思いつつ、書いておりました。
咲世子さんの部分を書いている時は凄いスムーズに話が進みました。

ここのスザク…ルルーシュフリークの皆様全員を敵に回している様な…(爆)
まぁ、これはこれで笑えるネタなので…
えっと、続きは来週となってしまいますが…ご了承ください。
いつも有難う御座居ます。
色々バタバタしていてすみません。


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posted by 和泉綾 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年06月05日

皇子とレジスタンス 〜feel relieved〜

 突然繋がって来た通信は…
(恐らくロイドからルルーシュにとっていらぬ事を吹き込まれた)スザクの怒鳴り声だった。
流石に…この通信が聞こえている全ての人間がどうしたらいいのか、困った顔をしている。
これまで、どんな戦場であっても冷静沈着に物事を治めて来た皇子が…
自分の騎士と通信を使っての口喧嘩をしているのだから…
「スザク!お前、今、戦闘中だと云う自覚はあるのか!」
『戦闘中にいらん事を考えているお前が悪い!』
「何を云っている!大体、誰だ!お前にいらない事を吹き込んだのは!」
『そんな事はどうだっていい!いい加減にしないとお前の判断一つ一つが遅れて行くんだぞ!今、戦闘中だと解っているなら…まず、お前に従っている全ての将兵の事を考えろ!このバカ!』
スザクのその言葉に…ルルーシュは後頭部をガンと殴られた気がした。
大体、今の通信での云い合いでルルーシュは自分の言葉を分析する。
―――私はさっき…スザクになんと云った???
『大体、誰だ!お前にいらない事を吹き込んだのは!』
この言葉は…この戦闘中に知られてはならない自分の迷いやためらいを誰かに悟られていたと云う事だ。
こんな事、シュナイゼルと敵対する皇族に仕えている貴族や将兵に知られたら…
「わ…私は一体…」
『ルルーシュ!今は戦闘中だ。お前は指揮官なんだから、確かに今は悩む事は許されない。でも、お前がどうしても辛いってんなら、そこまで頑張るなよ…。それに、俺もライも、ヴァインベルグ卿もお前の気持ちをちゃんと理解している。すぐに捕虜の輸送艦、送ってくれ…』
そう云って、スザクが通信を切った。
一瞬、思考が止まったが、ロストしている敵KMFや戦闘艦を考えた時、もし、スザク達が本当に人命尊重で頑張っていたと云うのなら、対処が遅れれば、死傷者を増やす事になってしまう。
「今から、会場で救援を待っている者達の救助艦を出してくれ。敵、味方問わず、必要な応急処置は行ってくれ!」
ルルーシュがアヴァロンの通信士に命じた。
先ほどまで子供の喧嘩をしていた存在とは思えないほどの切り替えの早さだったけれど…
あの姿を間近で見たと云うのは、ある意味レアな体験だ。
ルルーシュの事をよく知る、ルルーシュに近しい者達は本来ならこう云うのがルルーシュの年齢では当たり前なのだと…
そんな風に思うけれど、実際にはそんな事をしていられない自分の仕える皇子に対して(ばれたらいろいろ面倒な事になるが)痛々しさを感じだ。
と、同時に、スザクがルルーシュの騎士になった事で、ルルーシュの心のバランスが少しずつ、子供らしさ、年相応さを取り戻して行っているような気もしてきた。
確かに、有能な上官は有難い。
それでも、見ていて痛々しい姿を見ているのは、いつ、壊れてしまうか解らない機会を強引に使っているようで怖い。
ルルーシュのそれまでの姿は、どこか、無理のあるものだったから…
そんなところに…
「あ〜面白かったぁ〜〜♪でぇんかぁ…とっても楽しい…」
入って来た人物がそこまで云った時…ルルーシュはその人物に対してぎろりと睨んだ。
「お前か…?スザクに余計な通信を送ったのは…。おまけに、私も知らないところで…」

 そう見ても怒り心頭なルルーシュの姿に、ロイドも『あら?』と云う感じでルルーシュを見ているけれど…
ついでに、額にきっと、冷たい汗が流れているに違いないけれど。
ロイドは変人と云う事もあって、どうフォローを入れていいか解らない。
ロイドのやった事に対して絶賛している者もいるのだけれど…
それ以前に、ルルーシュの体から発せられている怒りのオーラの方が怖い。
それに、ロイドなら適当にかわすだろうと…あんまり根拠はないけれど、説得力のありそうな理由が生まれて来て、その場は静まり返った。
「あら?殿下…そんな風に青筋を立てていては、シュナイゼル宰相閣下のお気に入りの綺麗な顔が台無しですよぉ〜〜」
相変わらずマイペースな…と云うよりも、確実に空気を意図的に読んでいない。
ルルーシュとしても、自分の配下の者達にあんな子供の喧嘩をしている姿を見られて、色々な意味でプライドが傷つけられたのだろう。
正直、このような状態で、この場にいる周囲の人間の方がこの、空気の温度差がしんどくなって来ているフシもあるが…
「お前…スザクに何を吹き込んだ!なんであんな通信が、お前がここからいなくなった直後にタイミングよく入って来るのか…きっちり説明して貰おうか…」
さっきの事でかなり、頭に血が上ってしまった様で…
ルルーシュはロイドに掴みかからんばかりだ。
そして、そんなルルーシュの怒りのオーラに恐れおののいて、誰もそこに口出ししようとしない。
普段、決してこんな形で表情を崩す事のない皇子だったので、この変化に驚いていると云うのもあるかもしれない。
「え〜〜〜っとですねぇ…『さっきの御命令で、ルルーシュ殿下がなぁんだか、また、一人で落ち込んじゃっているみたいだからぁ〜スザク君のランスロットでささっと片付けちゃって、君の主を慰めてやってねぇ〜〜〜』って…」
これだけのルルーシュの怒りのオーラを受けながら…流石に変人と名高いロイド=アスプルンドと云うべきか…
この場にいる人物達は、更なる緊張感を抱くことになる。
勿論、命じられた任務は遂行しながら…ではあるのだけれど。
普段の前線の緊張感と、もう一つ…別の緊張感を抱いている者達は…
いつ、自分に火の粉が降りかかって来るか…と云う事が今のところの最重要事項だったりする。
この場にいる第三者の存在達は、
―――この変態科学者め!いらん事云って殿下の機嫌を損ねてどうする!というか、こんな好き勝手な事をシュナイゼル宰相閣下のところでもやっていたのか?この人は…
と云う、恐らく、言葉は違えど同じ意味合いの感想を抱いている。
それにしても、確かに最近になってルルーシュは変わったと思う。
以前からルルーシュの下で任務をこなしている者達はそれを感じている。
ルルーシュにその自覚があるにしろ、ないにしろ、こうして、感情を表に出す様になっただけでも、安心感が生まれて来るようになるのは何故だろうか…
少なくとも、それまではいつ壊れてもおかしくない…そんな不安感を常に抱えていた様な気がする。

 ひとしきりルルーシュと口喧嘩をしていたスザクの方は…
『枢木卿…一体何を考えていらっしゃるんです?ここは戦場ですよ?おまけに殿下と云い合っている最中、相当イラついていて相手を片っ端から感情に任せて叩き切ってしまって…』
「でも、コックピットはみんな無事だぞ?それに、これなら星刻達を守る上でも…」
ライの言葉にさらりとスザクが答えた。
『何を云っているんですか!そもそも、通信を私物化なんて…確実に軍法会議ものですよ!』
「そんな事を云ったらルルーシュも同じだ…」
『枢木卿!貴方と云う人は!』
ライの説教がスザクの『ランスロット』のコックピット内に響き渡った。
ライの方はあんな通信でルルーシュに何かが及んだ時には恐らく、全面的にスザクの責任として、突き出すに違いない。
そのくらいの勢いを感じる。
「そんなことより!お前も通信の内容を聞いていたなら、状況、解っているんだろ?こっちはいいから、後は、救助作業に回ってくれ…。あと、救援物資の内容が解ったら連絡をくれ…竜胆に運ぶ!」
スザクの切り替えに、ライは何か云いたそうだったけれど、自分達が今いる場所を承知しているだけに無視する事は出来ないと云った様子だ。
『イエス、マイ・ロード。後で覚えておいてくださいね!』
恨めしげにライが云いきった後、通信が切れた。
実際問題、こうして、勝敗に決着が付きそうな時が一番危険な時間帯でもある。
相手に総指揮官、決定責任者がいないと云うのであればなおさらだ。
ルルーシュがあの時点で投降の応じなかったKMF、戦艦に関しては撃沈を命じているのだ。
だから、注意深く行動しなければ、危機感がピークに達している中華連邦の兵士達から返り討ちに遭ってしまう。
さっきから、他のブリタニア軍のKMFや戦艦から投降を呼びかける声が聞こえて来るけれど…
結果的に撃沈している状態が多い。
他の兵士達はスザク達の様に考えていないし、そこまでの腕もないから、撃破している者が多い。
攻撃を仕掛けて来る相手に対して、殺さずに落とす…と云うのは相当の技術が必要だ。
ここの腕は決して悪い訳ではない。
だからこそ、スザク自身、ルルーシュの為になんとか殺さずに済めば…と思うけれど、それでも、相手の強さによっては殺すしかない場合もある。
「自分が死んでしまったら…何にもならない…」
一人、呟いて、また、グリップを握る。
だいぶ数は減った。
それでも、こうした最後の、『ピリオド』が確実に打たれるその瞬間までが一番大変で神経を使う。
勝っている側も、既に相当疲れを抱えているのだ。
そして、相手も最後の抵抗として、死に物狂いでかかって来る。
お互い、この時が一番命がけの状態なのかもしれない。
今回のこの戦闘…
正直、中華連邦のやり方に対して、酷く憤りを感じる。
それは、自分で何を思っていても仕方ない事だし、今はそんな事を考えている時じゃない事も解っている。
―――星刻が…あの幼い国家元首を連れて、あまり国家間の状態がいいとは云えなかったブリタニアに亡命を決断させるわけだな…
スザクが敵KMFに攻撃をしつつ、そんな事を考えてしまっていた。
今が…恐らく過度期なのかもしれない…そんな風にも思えてくる。

 時代の変わり目と云うのは混乱状態になる。
基本的に国家の根幹が腐って、国民たちも苦しい生活を強いられ、トップに立つ特権階級者達も危ういその基盤を守るべく必死になり、なりふりを構わなくなる。
ルルーシュが判断した、星刻を中華連邦の総督に…と云うのは、色んな意味で、星刻にとっても試練はあるかもしれないが…
それでも、今の中華連邦よりは遥かにマシになる。
それだけは、スザクの中で確信できる。
非常に難しい局面がたくさん出てくる可能性が高い…と云うか、ほぼ確実だろう。
中華連邦をブリタニアの植民エリアに…と云う話しは随分以前からあったようだけれど。
その前に周囲を固めて行くと云う策に出たのだろう。
実際に、ブリタニアの植民エリアの広げ方は中華連邦を包囲して行く形を取っていた。
ほぼ、包囲した段階で中華連邦へのかなり強気の要求や強引な外交をし続けて…
また、国内の状態も決して安定しているとは云えない状態の中、今度は国家元首である天子をブリタニアに売り渡す様な形で大宦官たちは自分達の既得権益を守ろうとした。
そして、その中に、スザクの父である枢木ゲンブの政権の中で官房長官をしていた男までその中で利用されていた。
それこそ、その事を知った時にはあまりのバカさ加減にあの時、自分の父親がどんな思いで日本を憂いていたのかが…解った気がした。
ルルーシュが総督となった事で、『エリア11』と呼ばれるようになった日本も、占領地ではあるものの、日本人たちの暮らしは中華連邦に暮らす人々ほど逼迫した状態ではない。
それに、体勢も変わりつつあり、ブリタニア人であれ、日本人であれ、実力があれば主要なポストにつく事もできるシステムを少しずつ構築している。
勿論、ブリタニアの国是の中では強いものが弱いものを虐げる事を悪としないところがあるから、日本人たちが上にのし上がって行くのは大変な事…
でも、その分、日本人たちがブリタニア人と同じ地位を得る為にはブリタニア人よりも優れた能力を必要とするので、中には同じ事をして貰うにしても日本人の方がいいと云うブリタニア人さえ出て来ている。
これも、ルルーシュが成そうとしたこのエリアのあり方…と云う事なのか。
ルルーシュがこの先、何を考えているのか、よく解らない。
ただ、ブリタニア人達の憤りも確実にルルーシュは受け止めている筈だ。
だからこそ、同じ地位を得る時には日本人の方が難しいという現状に対して何一つ言う事がないのかもしれない。
元々、強いものが上に行く…
それがブリタニアの国是だ。
ブリタニア人が実力で負けてしまったと云うのなら、それを納得しなければ、自国の国是を否定する事になる。
だからこそ、日本人が上に昇って来るのが難しい状態だけれど。
だから、そこまで昇って来た日本人の実力は本物となる。
そう云った日本人が増えた事によって、ブリタニア人の中にも当然の様に気持ちを切り替える者達が増えて来る。
今のところ、いい循環をしている様だから…
―――ただ…中華連邦で、日本の様に行くのかは…甚だ疑問だけれどな…。実際にあちらに渡った時、星刻はどうするつもりなんだろう?

 気がつくと、本当に探しても空を飛べている機体は見えなくなった。
「ヴァインベルグ卿!こちらの方はほぼ、自分の目の前にいる敵機はいなくなりました。恐らく、現在ライが救助艦の援護をしている筈ですが…」
スザクが一番近くにいるジノに対して通信チャンネルを開いた。
すると、
『竜胆は今、フクオカ基地の方に入った。そこで、恐らく、中にいる者達の取り調べなどが行われる。枢木も一旦、アヴァロンに戻れ!』
「イエス、マイ・ロード」
スザクがそう答えて、機体を反転させる。
下を見ると、本当に多くの機体の残骸が見える。
『あと、これだけの残骸があるから、下から売って来る奴も出て来るかもしれない。こうして、戦後処理の時に怪我をする奴が多いから、気をつけろよ!相手は既に指揮官のいない状態で、交渉相手もいない状態で、命令系統もないからな!』
「解っています。ところで、一応、レーダーからはまだ起動している敵機の姿はないんですけれど…こう云う場合、起動させずに潜んでいる奴もいる事は?」
『そりゃ、ないとは云わないよ…。確かにその辺りも気をつけろよ?』
「解りました。周囲の状況把握だけして、自分も帰還します…」
そう云って、通信を切った。
これだけ残骸が浮いている状態で、全ての回収と云うのは中々大変そうだ。
それに、これだけ隠れる場所があった場合、それこそ、油断も隙もない…と云う事だ。
レーダーを見つつ、熱反応を感知した時の対処を考える。
戦艦が落とされて動けない状態になっているのだ。
戦艦自体が完全に沈んでくれていればまだ、そんな可能性を考える事もあまりないのかもしれないが…
『スザク!』
通信を送ってきたのは、さっき、軍の通信を使って子供の喧嘩をした相手だった。
「ルルーシュか…。こっちは大体済んだ。状況把握だけして既刊する!」
スザクがそう答えた時、スピーカーの向こうから安堵の息を吐いた様子が窺えた。
「そう云えば、ライは?」
『今、救助艦を先導してこちらに向かっている。お前も早く戻って来い!』
ルルーシュのその声にスザク自身、少し、緊張の糸が緩んでしまった。
力が抜けて行くのが解る。
ずっと、緊張状態だったから…
「ったく…お前が無茶な命令ばっかりするから…流石に疲れた…」
『そのくらい出来なくてどうする?シュナイゼル異母兄上の側近など、毎日が大変らしいぞ…』
「ロイドさんを見ていると、それ、説得力無いって…」
今なら…こんな風にふざけた会話に通信を使ってもあまり気が咎める事がない。
否、さっきもそんな気は毛頭なかったが…
『とにかく…帰ってこい…。後は文官の仕事だ。それに、スザクの『ランスロット』を見たいそうだ。この、変人科学者がな…』
最後の一言だけ少し、とげがあった様に聞こえたのは気のせいにしておく。
「解った…。あ、でも、後で行きたいところがあるんだ…ルルーシュ…」
『行きたいところ?まぁ、いいが…。どこに行きたいんだ?』
「今は…内緒だ…。戻ったら、云うから…」
スザクはそこまで云って、通信を切った。
そして、『ランスロット』をアヴァロンへと向けて動かし始めたのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて


やっと、戦闘が終わりました。
途中、最後にスザクが生き残っていて潜んでいた中華連邦兵に撃たれる…と云う設定を入れようかと思ったのですが…
ちょっと、尺を考えた時にやめました。
それに、スザクをけがさせてしまうと、元々考えていた設定が吹き飛んでしまう事になるので…
もうすぐこのターンも終わります。
その続きはどうしようかなぁ…と思っています。
ラティス公国関連もあるんですけれど…
あんまり長く続くと読んで下さっている方々も飽きが来るかなぁ…なんて思っちゃって…。
これ、ネタが思いつけば、5ヶ月くらい連載が継続されてしまう話なので、そろそろ、真剣に考えております。
割と、この作品、再録本もちびちびと出て行っているくらい皆さまからは割と隙になって頂けていると思っている作品なのですが…
この作品自体、和泉は結構好きなのですけれど…
ただ…相当長いんですよ…。ブログテーマのところを見て頂くと解るのですが…既に70回を超えているんですよ…(凄い長編になりました。当初の予定では半年くらいのつもりでした)
再録本も、第三部…出すかどうか、迷うところなのですけれど…
第二部までは出しています。
未だに少しずつ出て行っているこの作品…
有難いことです。
読みたいと思って下さる方がいらっしゃれば、続きも割と『こんな風にしたいなぁ…』と云うのがあるので、連載を続けて行きたいと思いますが…
ご意見をお聞かせ願えれば幸いです。


☆拍手のお返事


紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
昼間は暑くなりましたが、流石にこれまで気候がめちゃくちゃだっただけの事があり、夜は結構涼しくて…昼と夜の服装が違っています。

『Be Together Final』
ルルーシュ達が身をひそめる場所…
色々考えたのですけれど、ルルーシュが『ゼロ』をやるうえでも便利且つ、ルルーシュが生活していくうえで緊張感の消えうせる事のない場所…という事で、桐原のところにしました。
絶対にルルーシュは緊張を緩める事は出来ません。
桐原も同じ事を言えますが。
ルルーシュも実際には経済力自体はあるし、『ギアス』があるのだから、生活するだけならなんとでもなるのですが…
でも、『ゼロ』をやらなくてはならないと云うその現実を踏まえた場合、ただ生活が出来る…という事だけではだめだと思ったので…

アッシュフォード学園でも色々騒ぎになり、そして、こんな学校という小さな社会の中でもスザクがこうした立場に立つことで混乱を招く事はある意味当然なんですよね。
日本でも高校生で何か、凄い事をした場合には学校にまでマスコミは押しかけるし、学校の中でもその人に対しての見方が確実に変わると思います。
そもそも、スザクがユーフェミアの騎士になった時点でアッシュフォード学園はマスコミ対策でさぞ大変だったのではないかと思ったのですが…本編ではスルーでしたね。
学生たちも完全にお祝いムードになっていましたけれど…それでも、素直にお祝いという気分でスザクを見ていた人が一体どれだけいたのでしょうか?
そう思った時、アッシュフォード学園も動いて貰いたいと思った訳です。

シュナ兄は確実に自分の言葉の重みも意味も解ってやっています。
あのシュナ兄の事です。
本編でだって、ユーフェミアを利用して…という意識はあったと思います。
だからこそ、コーネリアは最後まで『行政特区日本』に対しては納得していませんでしたから。
そう云う意味ではユーフェミアは本当に何も知らないお姫さま…だったと云う事な訳ですけれど。
ただ、真っ白な分、今回の話のように落とすと云う点でもかなり楽なんですよね。
スザクが本編よりも現実を見ていて、『ゼロ』がユーフェミアに対してこの弁舌の才をフル活用して諭している訳ですから。
でも、ユーフェミアは多分、『ゼロ』がそう云った事を云ったからこそ、嗚呼やって折れてくれた…という部分も含めたつもりでした。
その辺りも気づいていただけたでしょうか?

この話は和泉自身、書いていて非常に勉強になりました。。
自分の中で色々整理しながら新たな着眼点と云うものを発見できましたし。
読んで下さっている方の中で、そう仰っていただけたのはとても嬉しいです。
次の作品も楽しみにして頂けると幸いです。


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posted by 和泉綾 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

皇子とレジスタンス 〜feel relieved〜

 突然繋がって来た通信は…
(恐らくロイドからルルーシュにとっていらぬ事を吹き込まれた)スザクの怒鳴り声だった。
流石に…この通信が聞こえている全ての人間がどうしたらいいのか、困った顔をしている。
これまで、どんな戦場であっても冷静沈着に物事を治めて来た皇子が…
自分の騎士と通信を使っての口喧嘩をしているのだから…
「スザク!お前、今、戦闘中だと云う自覚はあるのか!」
『戦闘中にいらん事を考えているお前が悪い!』
「何を云っている!大体、誰だ!お前にいらない事を吹き込んだのは!」
『そんな事はどうだっていい!いい加減にしないとお前の判断一つ一つが遅れて行くんだぞ!今、戦闘中だと解っているなら…まず、お前に従っている全ての将兵の事を考えろ!このバカ!』
スザクのその言葉に…ルルーシュは後頭部をガンと殴られた気がした。
大体、今の通信での云い合いでルルーシュは自分の言葉を分析する。
―――私はさっき…スザクになんと云った???
『大体、誰だ!お前にいらない事を吹き込んだのは!』
この言葉は…この戦闘中に知られてはならない自分の迷いやためらいを誰かに悟られていたと云う事だ。
こんな事、シュナイゼルと敵対する皇族に仕えている貴族や将兵に知られたら…
「わ…私は一体…」
『ルルーシュ!今は戦闘中だ。お前は指揮官なんだから、確かに今は悩む事は許されない。でも、お前がどうしても辛いってんなら、そこまで頑張るなよ…。それに、俺もライも、ヴァインベルグ卿もお前の気持ちをちゃんと理解している。すぐに捕虜の輸送艦、送ってくれ…』
そう云って、スザクが通信を切った。
一瞬、思考が止まったが、ロストしている敵KMFや戦闘艦を考えた時、もし、スザク達が本当に人命尊重で頑張っていたと云うのなら、対処が遅れれば、死傷者を増やす事になってしまう。
「今から、会場で救援を待っている者達の救助艦を出してくれ。敵、味方問わず、必要な応急処置は行ってくれ!」
ルルーシュがアヴァロンの通信士に命じた。
先ほどまで子供の喧嘩をしていた存在とは思えないほどの切り替えの早さだったけれど…
あの姿を間近で見たと云うのは、ある意味レアな体験だ。
ルルーシュの事をよく知る、ルルーシュに近しい者達は本来ならこう云うのがルルーシュの年齢では当たり前なのだと…
そんな風に思うけれど、実際にはそんな事をしていられない自分の仕える皇子に対して(ばれたらいろいろ面倒な事になるが)痛々しさを感じだ。
と、同時に、スザクがルルーシュの騎士になった事で、ルルーシュの心のバランスが少しずつ、子供らしさ、年相応さを取り戻して行っているような気もしてきた。
確かに、有能な上官は有難い。
それでも、見ていて痛々しい姿を見ているのは、いつ、壊れてしまうか解らない機会を強引に使っているようで怖い。
ルルーシュのそれまでの姿は、どこか、無理のあるものだったから…
そんなところに…
「あ〜面白かったぁ〜〜♪でぇんかぁ…とっても楽しい…」
入って来た人物がそこまで云った時…ルルーシュはその人物に対してぎろりと睨んだ。
「お前か…?スザクに余計な通信を送ったのは…。おまけに、私も知らないところで…」

 そう見ても怒り心頭なルルーシュの姿に、ロイドも『あら?』と云う感じでルルーシュを見ているけれど…
ついでに、額にきっと、冷たい汗が流れているに違いないけれど。
ロイドは変人と云う事もあって、どうフォローを入れていいか解らない。
ロイドのやった事に対して絶賛している者もいるのだけれど…
それ以前に、ルルーシュの体から発せられている怒りのオーラの方が怖い。
それに、ロイドなら適当にかわすだろうと…あんまり根拠はないけれど、説得力のありそうな理由が生まれて来て、その場は静まり返った。
「あら?殿下…そんな風に青筋を立てていては、シュナイゼル宰相閣下のお気に入りの綺麗な顔が台無しですよぉ〜〜」
相変わらずマイペースな…と云うよりも、確実に空気を意図的に読んでいない。
ルルーシュとしても、自分の配下の者達にあんな子供の喧嘩をしている姿を見られて、色々な意味でプライドが傷つけられたのだろう。
正直、このような状態で、この場にいる周囲の人間の方がこの、空気の温度差がしんどくなって来ているフシもあるが…
「お前…スザクに何を吹き込んだ!なんであんな通信が、お前がここからいなくなった直後にタイミングよく入って来るのか…きっちり説明して貰おうか…」
さっきの事でかなり、頭に血が上ってしまった様で…
ルルーシュはロイドに掴みかからんばかりだ。
そして、そんなルルーシュの怒りのオーラに恐れおののいて、誰もそこに口出ししようとしない。
普段、決してこんな形で表情を崩す事のない皇子だったので、この変化に驚いていると云うのもあるかもしれない。
「え〜〜〜っとですねぇ…『さっきの御命令で、ルルーシュ殿下がなぁんだか、また、一人で落ち込んじゃっているみたいだからぁ〜スザク君のランスロットでささっと片付けちゃって、君の主を慰めてやってねぇ〜〜〜』って…」
これだけのルルーシュの怒りのオーラを受けながら…流石に変人と名高いロイド=アスプルンドと云うべきか…
この場にいる人物達は、更なる緊張感を抱くことになる。
勿論、命じられた任務は遂行しながら…ではあるのだけれど。
普段の前線の緊張感と、もう一つ…別の緊張感を抱いている者達は…
いつ、自分に火の粉が降りかかって来るか…と云う事が今のところの最重要事項だったりする。
この場にいる第三者の存在達は、
―――この変態科学者め!いらん事云って殿下の機嫌を損ねてどうする!というか、こんな好き勝手な事をシュナイゼル宰相閣下のところでもやっていたのか?この人は…
と云う、恐らく、言葉は違えど同じ意味合いの感想を抱いている。
それにしても、確かに最近になってルルーシュは変わったと思う。
以前からルルーシュの下で任務をこなしている者達はそれを感じている。
ルルーシュにその自覚があるにしろ、ないにしろ、こうして、感情を表に出す様になっただけでも、安心感が生まれて来るようになるのは何故だろうか…
少なくとも、それまではいつ壊れてもおかしくない…そんな不安感を常に抱えていた様な気がする。

 ひとしきりルルーシュと口喧嘩をしていたスザクの方は…
『枢木卿…一体何を考えていらっしゃるんです?ここは戦場ですよ?おまけに殿下と云い合っている最中、相当イラついていて相手を片っ端から感情に任せて叩き切ってしまって…』
「でも、コックピットはみんな無事だぞ?それに、これなら星刻達を守る上でも…」
ライの言葉にさらりとスザクが答えた。
『何を云っているんですか!そもそも、通信を私物化なんて…確実に軍法会議ものですよ!』
「そんな事を云ったらルルーシュも同じだ…」
『枢木卿!貴方と云う人は!』
ライの説教がスザクの『ランスロット』のコックピット内に響き渡った。
ライの方はあんな通信でルルーシュに何かが及んだ時には恐らく、全面的にスザクの責任として、突き出すに違いない。
そのくらいの勢いを感じる。
「そんなことより!お前も通信の内容を聞いていたなら、状況、解っているんだろ?こっちはいいから、後は、救助作業に回ってくれ…。あと、救援物資の内容が解ったら連絡をくれ…竜胆に運ぶ!」
スザクの切り替えに、ライは何か云いたそうだったけれど、自分達が今いる場所を承知しているだけに無視する事は出来ないと云った様子だ。
『イエス、マイ・ロード。後で覚えておいてくださいね!』
恨めしげにライが云いきった後、通信が切れた。
実際問題、こうして、勝敗に決着が付きそうな時が一番危険な時間帯でもある。
相手に総指揮官、決定責任者がいないと云うのであればなおさらだ。
ルルーシュがあの時点で投降の応じなかったKMF、戦艦に関しては撃沈を命じているのだ。
だから、注意深く行動しなければ、危機感がピークに達している中華連邦の兵士達から返り討ちに遭ってしまう。
さっきから、他のブリタニア軍のKMFや戦艦から投降を呼びかける声が聞こえて来るけれど…
結果的に撃沈している状態が多い。
他の兵士達はスザク達の様に考えていないし、そこまでの腕もないから、撃破している者が多い。
攻撃を仕掛けて来る相手に対して、殺さずに落とす…と云うのは相当の技術が必要だ。
ここの腕は決して悪い訳ではない。
だからこそ、スザク自身、ルルーシュの為になんとか殺さずに済めば…と思うけれど、それでも、相手の強さによっては殺すしかない場合もある。
「自分が死んでしまったら…何にもならない…」
一人、呟いて、また、グリップを握る。
だいぶ数は減った。
それでも、こうした最後の、『ピリオド』が確実に打たれるその瞬間までが一番大変で神経を使う。
勝っている側も、既に相当疲れを抱えているのだ。
そして、相手も最後の抵抗として、死に物狂いでかかって来る。
お互い、この時が一番命がけの状態なのかもしれない。
今回のこの戦闘…
正直、中華連邦のやり方に対して、酷く憤りを感じる。
それは、自分で何を思っていても仕方ない事だし、今はそんな事を考えている時じゃない事も解っている。
―――星刻が…あの幼い国家元首を連れて、あまり国家間の状態がいいとは云えなかったブリタニアに亡命を決断させるわけだな…
スザクが敵KMFに攻撃をしつつ、そんな事を考えてしまっていた。
今が…恐らく過度期なのかもしれない…そんな風にも思えてくる。

 時代の変わり目と云うのは混乱状態になる。
基本的に国家の根幹が腐って、国民たちも苦しい生活を強いられ、トップに立つ特権階級者達も危ういその基盤を守るべく必死になり、なりふりを構わなくなる。
ルルーシュが判断した、星刻を中華連邦の総督に…と云うのは、色んな意味で、星刻にとっても試練はあるかもしれないが…
それでも、今の中華連邦よりは遥かにマシになる。
それだけは、スザクの中で確信できる。
非常に難しい局面がたくさん出てくる可能性が高い…と云うか、ほぼ確実だろう。
中華連邦をブリタニアの植民エリアに…と云う話しは随分以前からあったようだけれど。
その前に周囲を固めて行くと云う策に出たのだろう。
実際に、ブリタニアの植民エリアの広げ方は中華連邦を包囲して行く形を取っていた。
ほぼ、包囲した段階で中華連邦へのかなり強気の要求や強引な外交をし続けて…
また、国内の状態も決して安定しているとは云えない状態の中、今度は国家元首である天子をブリタニアに売り渡す様な形で大宦官たちは自分達の既得権益を守ろうとした。
そして、その中に、スザクの父である枢木ゲンブの政権の中で官房長官をしていた男までその中で利用されていた。
それこそ、その事を知った時にはあまりのバカさ加減にあの時、自分の父親がどんな思いで日本を憂いていたのかが…解った気がした。
ルルーシュが総督となった事で、『エリア11』と呼ばれるようになった日本も、占領地ではあるものの、日本人たちの暮らしは中華連邦に暮らす人々ほど逼迫した状態ではない。
それに、体勢も変わりつつあり、ブリタニア人であれ、日本人であれ、実力があれば主要なポストにつく事もできるシステムを少しずつ構築している。
勿論、ブリタニアの国是の中では強いものが弱いものを虐げる事を悪としないところがあるから、日本人たちが上にのし上がって行くのは大変な事…
でも、その分、日本人たちがブリタニア人と同じ地位を得る為にはブリタニア人よりも優れた能力を必要とするので、中には同じ事をして貰うにしても日本人の方がいいと云うブリタニア人さえ出て来ている。
これも、ルルーシュが成そうとしたこのエリアのあり方…と云う事なのか。
ルルーシュがこの先、何を考えているのか、よく解らない。
ただ、ブリタニア人達の憤りも確実にルルーシュは受け止めている筈だ。
だからこそ、同じ地位を得る時には日本人の方が難しいという現状に対して何一つ言う事がないのかもしれない。
元々、強いものが上に行く…
それがブリタニアの国是だ。
ブリタニア人が実力で負けてしまったと云うのなら、それを納得しなければ、自国の国是を否定する事になる。
だからこそ、日本人が上に昇って来るのが難しい状態だけれど。
だから、そこまで昇って来た日本人の実力は本物となる。
そう云った日本人が増えた事によって、ブリタニア人の中にも当然の様に気持ちを切り替える者達が増えて来る。
今のところ、いい循環をしている様だから…
―――ただ…中華連邦で、日本の様に行くのかは…甚だ疑問だけれどな…。実際にあちらに渡った時、星刻はどうするつもりなんだろう?

 気がつくと、本当に探しても空を飛べている機体は見えなくなった。
「ヴァインベルグ卿!こちらの方はほぼ、自分の目の前にいる敵機はいなくなりました。恐らく、現在ライが救助艦の援護をしている筈ですが…」
スザクが一番近くにいるジノに対して通信チャンネルを開いた。
すると、
『竜胆は今、フクオカ基地の方に入った。そこで、恐らく、中にいる者達の取り調べなどが行われる。枢木も一旦、アヴァロンに戻れ!』
「イエス、マイ・ロード」
スザクがそう答えて、機体を反転させる。
下を見ると、本当に多くの機体の残骸が見える。
『あと、これだけの残骸があるから、下から売って来る奴も出て来るかもしれない。こうして、戦後処理の時に怪我をする奴が多いから、気をつけろよ!相手は既に指揮官のいない状態で、交渉相手もいない状態で、命令系統もないからな!』
「解っています。ところで、一応、レーダーからはまだ起動している敵機の姿はないんですけれど…こう云う場合、起動させずに潜んでいる奴もいる事は?」
『そりゃ、ないとは云わないよ…。確かにその辺りも気をつけろよ?』
「解りました。周囲の状況把握だけして、自分も帰還します…」
そう云って、通信を切った。
これだけ残骸が浮いている状態で、全ての回収と云うのは中々大変そうだ。
それに、これだけ隠れる場所があった場合、それこそ、油断も隙もない…と云う事だ。
レーダーを見つつ、熱反応を感知した時の対処を考える。
戦艦が落とされて動けない状態になっているのだ。
戦艦自体が完全に沈んでくれていればまだ、そんな可能性を考える事もあまりないのかもしれないが…
『スザク!』
通信を送ってきたのは、さっき、軍の通信を使って子供の喧嘩をした相手だった。
「ルルーシュか…。こっちは大体済んだ。状況把握だけして既刊する!」
スザクがそう答えた時、スピーカーの向こうから安堵の息を吐いた様子が窺えた。
「そう云えば、ライは?」
『今、救助艦を先導してこちらに向かっている。お前も早く戻って来い!』
ルルーシュのその声にスザク自身、少し、緊張の糸が緩んでしまった。
力が抜けて行くのが解る。
ずっと、緊張状態だったから…
「ったく…お前が無茶な命令ばっかりするから…流石に疲れた…」
『そのくらい出来なくてどうする?シュナイゼル異母兄上の側近など、毎日が大変らしいぞ…』
「ロイドさんを見ていると、それ、説得力無いって…」
今なら…こんな風にふざけた会話に通信を使ってもあまり気が咎める事がない。
否、さっきもそんな気は毛頭なかったが…
『とにかく…帰ってこい…。後は文官の仕事だ。それに、スザクの『ランスロット』を見たいそうだ。この、変人科学者がな…』
最後の一言だけ少し、とげがあった様に聞こえたのは気のせいにしておく。
「解った…。あ、でも、後で行きたいところがあるんだ…ルルーシュ…」
『行きたいところ?まぁ、いいが…。どこに行きたいんだ?』
「今は…内緒だ…。戻ったら、云うから…」
スザクはそこまで云って、通信を切った。
そして、『ランスロット』をアヴァロンへと向けて動かし始めたのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて


やっと、戦闘が終わりました。
途中、最後にスザクが生き残っていて潜んでいた中華連邦兵に撃たれる…と云う設定を入れようかと思ったのですが…
ちょっと、尺を考えた時にやめました。
それに、スザクをけがさせてしまうと、元々考えていた設定が吹き飛んでしまう事になるので…
もうすぐこのターンも終わります。
その続きはどうしようかなぁ…と思っています。
ラティス公国関連もあるんですけれど…
あんまり長く続くと読んで下さっている方々も飽きが来るかなぁ…なんて思っちゃって…。
これ、ネタが思いつけば、5ヶ月くらい連載が継続されてしまう話なので、そろそろ、真剣に考えております。
割と、この作品、再録本もちびちびと出て行っているくらい皆さまからは割と隙になって頂けていると思っている作品なのですが…
この作品自体、和泉は結構好きなのですけれど…
ただ…相当長いんですよ…。ブログテーマのところを見て頂くと解るのですが…既に70回を超えているんですよ…(凄い長編になりました。当初の予定では半年くらいのつもりでした)
再録本も、第三部…出すかどうか、迷うところなのですけれど…
第二部までは出しています。
未だに少しずつ出て行っているこの作品…
有難いことです。
読みたいと思って下さる方がいらっしゃれば、続きも割と『こんな風にしたいなぁ…』と云うのがあるので、連載を続けて行きたいと思いますが…
ご意見をお聞かせ願えれば幸いです。


☆拍手のお返事


紫翆さま:こんばんは、コメント有難う御座居ます。
昼間は暑くなりましたが、流石にこれまで気候がめちゃくちゃだっただけの事があり、夜は結構涼しくて…昼と夜の服装が違っています。

『Be Together Final』
ルルーシュ達が身をひそめる場所…
色々考えたのですけれど、ルルーシュが『ゼロ』をやるうえでも便利且つ、ルルーシュが生活していくうえで緊張感の消えうせる事のない場所…という事で、桐原のところにしました。
絶対にルルーシュは緊張を緩める事は出来ません。
桐原も同じ事を言えますが。
ルルーシュも実際には経済力自体はあるし、『ギアス』があるのだから、生活するだけならなんとでもなるのですが…
でも、『ゼロ』をやらなくてはならないと云うその現実を踏まえた場合、ただ生活が出来る…という事だけではだめだと思ったので…

アッシュフォード学園でも色々騒ぎになり、そして、こんな学校という小さな社会の中でもスザクがこうした立場に立つことで混乱を招く事はある意味当然なんですよね。
日本でも高校生で何か、凄い事をした場合には学校にまでマスコミは押しかけるし、学校の中でもその人に対しての見方が確実に変わると思います。
そもそも、スザクがユーフェミアの騎士になった時点でアッシュフォード学園はマスコミ対策でさぞ大変だったのではないかと思ったのですが…本編ではスルーでしたね。
学生たちも完全にお祝いムードになっていましたけれど…それでも、素直にお祝いという気分でスザクを見ていた人が一体どれだけいたのでしょうか?
そう思った時、アッシュフォード学園も動いて貰いたいと思った訳です。

シュナ兄は確実に自分の言葉の重みも意味も解ってやっています。
あのシュナ兄の事です。
本編でだって、ユーフェミアを利用して…という意識はあったと思います。
だからこそ、コーネリアは最後まで『行政特区日本』に対しては納得していませんでしたから。
そう云う意味ではユーフェミアは本当に何も知らないお姫さま…だったと云う事な訳ですけれど。
ただ、真っ白な分、今回の話のように落とすと云う点でもかなり楽なんですよね。
スザクが本編よりも現実を見ていて、『ゼロ』がユーフェミアに対してこの弁舌の才をフル活用して諭している訳ですから。
でも、ユーフェミアは多分、『ゼロ』がそう云った事を云ったからこそ、嗚呼やって折れてくれた…という部分も含めたつもりでした。
その辺りも気づいていただけたでしょうか?

この話は和泉自身、書いていて非常に勉強になりました。。
自分の中で色々整理しながら新たな着眼点と云うものを発見できましたし。
読んで下さっている方の中で、そう仰っていただけたのはとても嬉しいです。
次の作品も楽しみにして頂けると幸いです。


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posted by 和泉綾 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2010年05月22日

皇子とレジスタンス 〜気づく変化〜

 これまで…ルルーシュはこちらが思いつかない様な方法で戦闘を行ってきた。
敵の時も…味方になってからも…
スザク自身、ルルーシュの考えていることは良く解らない。
近くにいるけれど…まだ、ルルーシュがいつも何を考えているのか解らない。
確かに…人間、誰かの事を完璧に知りつくす…などと云うことはあり得ない。
自分の事だって、一生かけたって、解らない事だらけだ。
だから…
自分が進もうと決めた道…信じようと思ったその相手のやろうとしている事を信じて…引き金を引く。
『道が開いたら、そこから竜胆の背後について、竜胆を援護!恐らく、さっきの砲撃で竜胆にはもう、残弾はない筈だ!』
ルルーシュの言葉が通信のスピーカーを通して聞こえてくる。
「イエス、ユア・ハイネス…」
普段はルルーシュと対等に立っているスザクだけれど…
こう云う時にはルルーシュを自らの主として据えている。
その事にスザクが気づいてるかどうかは解らない。
スザクはルルーシュの命令通りに竜胆の背後につく。
竜胆を見ると…本当に満身創痍…と云う言葉がピタリと当てはなる様な状態だ。
「星刻!聞こえるか!?」
スザクが回線を開く。
これは、竜胆に向けた共通チャンネル…
『枢木か…どうしてここに…』
サウンドオンリーでの会話…
それでも、星刻の驚いた様子が良く解る。
「ルルーシュの命令で…な…。本当に満身創痍だな…。とにかく、このまま前方に進め!俺が後方からの攻撃を守ってやる!距離5000のところにヴァインベルグ卿の隊がいる筈だ!」
『解った…。背後を…頼む…』
「誰に云っているんだ…お前にもお前を待っている存在がいるんだろう?俺にもやらなければならないことがある…それだけだ…」
そう云いながら、竜胆の援護をしつつ、ブリタニア軍本隊に合流するべく、進んで行く。
さっきのヴァリスは相当効いたようで、この周辺は総崩れになっている。
それでも…
―――本当に…数だけは多いな…
流石に、次から次に出て来る鋼髏の数の多さにイライラしてきたようだ。
ライも取り囲まれた状態でいるようだ。
「星刻、この鋼髏は一体どのくらいいるんだ?」
スザクが竜胆に向けて尋ねる。
『恐らく、ブリタニアのKMFの1.5倍いると考えていい…。おまけにあの総督の指揮と違って今、指揮官らしい指揮官がいないからそれこそ、個人の手柄しか考えていない…。おまけに相手の戦力を解っている連中が散り散りになってしまっているから、本当に何も考えずに突っ込んで来ている…』
「そうか…」
本当なら、それこそ、一蹴してさっさと片を付けたい…
そんな風に考えるけれど…
それでも、スザクの中ではいろいろな思いがある。
自分がレジスタンスのリーダーとしてシンジュクにいた頃…
あの頃だって、犠牲は最小限に…と云うことは考えていた。
ただの破壊者では、意味がない…
そして…もう一つ大きなそれは…
「ったく…俺もほとほとバカだな…」
そんな事を云いつつも、襲いかかって来る鋼髏だけ落として行く。
コックピットを狙わない…
いつ頃からか、スザクが意識しているかどうかはともかく…
それが、スザクの戦い方になっていた…

 竜胆と合流してどれ程時間が経ったか…
多分、それほどの時間は経っていない。
『枢木卿!』
「ライ…か?」
『大丈夫ですか?』
「俺は大丈夫…。ただ、俺自身は後方部分しか護衛出来ていない。だから、他の個所に被弾が多いんだ…。通信を寄こして来たって事は合流できるんだろう?」
『はい…』
「なら、竜胆の前方について、ヴァインベルグ卿の隊への合流の道を作ってくれ…」
『イエス、マイ・ロード…』
漸く、1機合流できるものが現れて、知らず知らずのうちに息が漏れた。
確かに、個々のレベルそのものは大したことはない。
ただ、それは1対1で戦った場合だ。
早いところ、本隊に合流しないと、こちらも危ない。
竜胆には既に残弾がないのであればなおさらだ。
「ヴァインベルグ卿…枢木スザクです…」
スザクがジノの回線を開いた。
『どうした?』
「ルルーシュから…連絡は行っていますか?」
『ああ、あの方も相変わらず無茶振りをしてくれる…』
「そうですか…。今、自分とライが竜胆と合流して、現在、ヴァインベルグ卿の部隊の、キューエル卿達を援護に着いている隊から距離3500の地点に我々は居ます…」
『なるほど…解った。キューエル達の方はジェレミア卿に任せれば大丈夫だ…。私がトリスタンでそちらに向かおう…』
「よろしいので?」
『ここで竜胆を落とす方が問題だ。それに、キューエル達も本隊の守備範囲に入っているからもう大丈夫だ…』
「そうですか…宜しくお願いします。出来るだけ急いで下さい…」
『主従共に強引な無茶ぶりをしてくれるな…』
苦笑しながらそんな事を云い放った後、通信が切れた。
そんなジノの言葉にスザクも苦笑する。
―――あの無茶振りな皇子様と一緒にしないで欲しいけれどな…
なとと思ってしまうけれど…
とりあえず、道を開く為の布石は出来た。
レーダーを見ながら、味方の部隊が近付いて来ているのが解った。
「星刻、すぐにヴァインベルグ卿の隊がこちらに駆けつける。ライも間もなく合流する。何とか、凌いでくれ…」
『お前も…単騎で来てどうするつもりだったんだ!』
尤もな星刻の言葉だけれど…
「仕方ないだろ…。このランスロットに追いつける機体が今はライのクラブくらいだからな…」
『だったら、何故一緒に動かん!』
「これだけ数がいて、そんな事を考えていられるか!とにかく、後方は守ってやるから、前方は何とかしろ!」
まるで、喧嘩の様なやり取りをしているわけだけれど…
これを…(どうせ、ルルーシュはこの会話の内容を知っているだろうけれど)ルルーシュの目の前でやったら…
―――また、呆れた顔をするんだろうな…。あの、大人ぶった皇子様は…
そんな事を考えつつ、本当に何も考えていないで突っ込んで来ているようにしか見えない敵KMFを落として行く。
とりあえず、脱出出来る形で落として行ってるから…
―――恐らく、命を落としている奴は最小限に抑えられている…筈…
何となく、自信の持てない自己評価だけれど…
それでも、襲って来るものを薙ぎ払わなくてはどうにもならないことは事実だ。
「多少の事は…勘弁な…ルルーシュ!」

 一方、アヴァロンの方では…
会話が聞こえて来て…
スザクの予想は外れていなかった。
「本当に…子供の喧嘩のようだな…」
ルルーシュが呆れ果てた様に零した。
「なぁに云っているんですか…。殿下だって十分子供なんですから…そこで呆れていちゃダメですよぉ…。楽しそうだなぁ…くらいに思わないとぉ…」
こいつの発言は…
どこまで本気で取り合えばいいのか…正直悩む。
「ロイドさん!」
そんな事を考えている間にロイドの脳天にはセシルのげんこつが降ってきた。
「いたたた…酷いよ…セシル君…」
「だったら、そうやって、余計な事を云わない事です!」
ここで、夫婦漫才(?)が始まる。
戦場に立っていると云うのに…緊張感と云うものがないのだろうか…
そんな風に考えてしまうのだけれど…
しかし…
「セシル…そのくらいにしてやれ…。まぁ、実は私もスザクと同じ歳なんだな…とは思うよ…。そう云われると…」
少し自嘲気味に笑う。
自分の年齢など…殆ど意識した事はない。
意識していられるだけの余裕がなかったとも云えるけれど…
「殿下…」
この二人は、二人でいるから…バランスがとれているのだと思う。
見ていてそんな感じだ。
あの、異母兄にさえも、こんな口調を崩さないロイド…
そして、そんな態度を見せる度に怒りだすセシル…
ルルーシュの中で…
自分が何か、変わったことが解る。
そう…
こうした光景を見て…自分の周囲にそんな存在がいるだろうか…
そんな事を考えるようになっていた。
その変化が…自分にどんな影響を与えているのか…
正直、その気持ちの変化が不安だと思っている事も確かだ。
しかし…
―――ここは…戦場だ…
そんな風に自分を諌める。
解っている。
頭では解っている。
それでも…こんな風に考えてしまうのは…何故だろうか…
そんな疑問…
と云うよりも、以前のルルーシュなら愚問と切って捨てる様な…
そんな事を考えてしまっている。
解っていて…何故、こんなことを考えてしまうのだろうか…
最近…
一体いつからだろうか…
自分が…どんどん変わって行くのが解る。
怖いと…思う事もある。
このまま…この自分の変化が進んで行くことが怖い…
本当にそんな事を思えて来てしまうのだから…
―――自分でも気付くと云うことは…他の者には…既にばれている…
そんな事を思うと更に、危機感を覚える。
正直、こんな風に自分が不安になった事など…
自分の記憶の中にないのだから…
「でぇんかぁ…難しい顔をしている間に…スザク君とライ君が、次々に敵KMFを落としていますよぉ?これが終わったら、階級、一つずつ上がるでしょうねぇ…これだけの働きをしていればぁ…」
ロイドのその言葉に…
ルルーシュがびくりとなった。
彼らがその実力を発揮していく…と云うことは、彼らの存在が他の皇子、皇女たちの耳にも入る事になる。
その中から、ルルーシュよりも好条件で、自分の騎士としたいと考える者が出て来るかもしれない。
スザクは…まだ、ナンバーズだから、いいかもしれないけれど…
ライの場合は…
否、スザクだって、元々実力主義の…強い者が上に行くシステムとなっているブリタニアでは…そのナンバーズと云う障壁があったとしても…
―――私の下を…離れる日が来る…

 元々、スザクに対しては、ルルーシュがこのエリアの総督と云う立場から離れる時には、スザクを騎士から外して、このエリアに残して行くと決めていた。
それなのに…
―――私は…スザクを…手放したくないと…そう…思っているのか…?
モニタを見れば、竜胆に襲いかかって来る鋼髏をロストして行っている。
確かに…
竜胆を守るようにと…命じたのはルルーシュだ。
ただ…
その働き…
ずば抜けた実力に…ルルーシュ自身、不安を抱えているのだ。
―――私が…ナナリー以外の誰かを失う事に…不安になっている…?
これまで、感じたことがなかった…
自覚した事がなかった…
そんな感覚だった。
「ルルーシュ殿下!竜胆とヴァインベルグ卿のトリスタン率いる小隊が合流したようです。これで、竜胆はブリタニア軍の勢力圏に入ってきました…」
セシルのアシスタントをしているCICがそう、報告してきた。
「そうか…で、現在の竜胆の被害状況は解るか?」
「まだ…報告が入っておりませんので…。しかし、現在、ヴァインベルグ卿の小隊と枢木、ライ両准尉の援護の下に進行しており、竜胆からの砲撃はありません!」
「なるほど…やはり先ほどの砲撃で全弾を撃っていたか…。ブラッドリーに援護をするように伝えろ…。あと、その分のフォローをアーニャに…」
「イエス、ユア・ハイネス…」
これで…間もなく、この戦闘も終わる…
最後まで気を抜くことはできないが…これで、最大のヤマを凌いだと…判断出来る。
「それと、現在、敵軍は誰がトップとなっている?竜胆がこちらに向かった為に、恐らく、総責任者が変わっている筈だが…」
ルルーシュが気になっていた事をCICの女性武官に尋ねる。
「あの…現在、中華連邦の指揮は、あの、前線には…いない模様です…」
言いにくそうに、その女性武官が答えるが…
「何!それでは…停戦交渉も出来ないではないか…」
「恐らく、竜胆を失い、その後は中華連邦の中枢に指揮権が移譲されている模様です。現場にいない為に、殆ど、前線にいる者たちの判断に任されている様ですが…」
その言葉に、ルルーシュはギリリと奥歯をかみしめた。
交渉する為の人物がいないのだ…
指揮官はいる…
いるけれど…この場にいない…
となれば、停戦交渉するにも話しが遠すぎる。
「現場責任者がいないのでは…」
「中華連邦も結構やることが大胆ですねぇ…。ひょっとして…ここにぶつけられたのは、全員捨て駒ですかぁ???」
「ロイドさん!」
セシルもロイドの言葉に対して、叱責するものの…
確実にその通りなので、それ以上とがめる事も出来ない。
ルルーシュ自身もそれが解ったから…
「恐らく…こちらから投降を進めても来る事はないのだろうな…」
「多分そうでしょうねぇ…」
「私が…甘かった…」
ルルーシュがぐっと拳を握り締めて、その拳を震わせた。
これまでにだって、経験してきたのだ。
ラティスのときだってそうだ…
こうして…相手にとって撃ちにくい状況を作り上げられて…挑まれる。
そうして…ルルーシュは彼らを撃ち…世界に名をとどろかせてきた。

 どれ程の時間が経ったか…
大して経ってはいないだろう。
ルルーシュはそう云った判断に時間をかけることはしない。
自身の体感時間は…どれ程のものかは…解らないが…
「全軍に命じる…。現在…投降を呼びかけて投降しない敵機に関しては…すべて撃ち落とせ…。返答がない場合も…投降の意思はなしと判断して…呼びかけから5分経ったら…撃ち落とせ…」
ルルーシュがやや震えた声で、ブリッジにいる武官たちに命じた。
その姿に…周囲の大人たちは痛々しさを覚えるが…
それでも…それが、総指揮官の仕事だ。
役目だ。
そして…彼らの中で、誰も…それを代わってやることが出来ないのだ。
どれ程苦しんでも…
確実にルルーシュは決断を下す。
だからこそ、シュナイゼルに敵対する皇族たちがルルーシュを恐れるのだろう。
そして、ルルーシュを暗殺しようと企んだり、こうした戦いに出向かせて、難しい判断を下させたりする。
大人でも…この状況で…
力の差がはっきりしていることが解っていながら…
もう、雌雄を決して居る戦いの中で…下さなければならない命令…
「殿下…」
こんなところで自分に従っている者たちに心配をかけるのはルルーシュとしては許すことはできない。
だから、凛としようとするけれど…
いつもなら、その気持ちで凛とするのだけれど…
―――何故だ…
自分の悩んでいる姿を…周囲に晒している。
ここに、もし、シュナイゼルを陥れようとする一派の者がいたとしたら…
これを好機として、その、主に報告するに違いない。
そうなれば…
ルルーシュを庇護しているシュナイゼルの立場が揺らぐ原因になってしまうかもしれない。
シュナイゼルがルルーシュを庇護する理由は…
シュナイゼルの意思がどうであれ、表向きにはルルーシュのその、有能な力を必要としているから…
と云うことなのだから…
だから、ルルーシュはこれまで自分の失敗を許さなかったのだから…
そんな時…ふと、見回すと…ロイドがいなくなっていた…
「ロイドはどうした?」
ルルーシュがさっきまで好きな事を云っていたくせに…と思いつつ、セシルに尋ねた。
「なんだか解りませんけれど…出て行きました…」
「そうか…。機体の不備でも見つけたか…。それとも、新パーツのアイディアでも浮かんだか…」
ルルーシュがそんな風に口にした時…
「ルルーシュ殿下!殿下に枢木卿より通信が入っています…」
このタイミングで何故…
そんな事を思いつつ、通信を繋ぐと…
『このバカルルーシュ!一人で何考えているんだ!』
戦場にいる筈の騎士から…
送られてきた怒鳴り声…
一体何の事だと…ルルーシュは目を丸くする。
「い…いきなりなんだ!お前…前線で…」
『ああ…今前線でごちゃごちゃやってるよ!ったく…この頭でっかちが!』
スザクのその言葉にルルーシュはむっとするが…
その先の言葉をスザクの言葉が遮った。
『お前なぁ…頭いいくせにバカなこと…少しは自覚しろ!考えても仕方ない事を考えるな!』
「な!戦闘中に繋いできたかと思えば、いきなり何を云いだす!」
『お前…いい加減に自分がまだ子供だって事を自覚しろよ!お前がそんな風なら、ライを前線に出さずにお前の傍にへばりつかせておくぞ!』
ここから始まった…
前線での…通信を使った…皇子と騎士の口喧嘩だった…

To Be Continued


あとがきに代えて



先週は…ごちゃごちゃしてしまい、掲載をお休みしてしまったので、何としてもこれだけは…と思いまして…
多分、23日24日は小説更新をお休みさせて頂きます。
最近、なんだか、体力低下が著しくて…(;-_-) =3 フゥ
今回、何とか、間に合ったので掲載する事が出来ましたが…
その内、イベント前になると…『暫くお休みします…』なんて事が出て来るんでしょうか…
流石にそれは嫌だなぁ…

さて、今回の『皇子とレジスタンス』…
まだまだ、子供らしさを取り戻せていないルルーシュがうだうだ考え込んでしまい…
で、スザクがそんなルルーシュを怒鳴りつけるところで終わりました。
この話でのルルーシュがスザクに怒鳴りつける…
これ、楽しくなってきました。
だって、普段のスザクだと、ルルーシュの説教されることはあっても、ルルーシュに怒鳴りつけるって…中々ないんですもの…
で、ここの場合、怒鳴りつけても欠航し全体に見えちゃうから不思議です。
書いていて…
体力的には辛いんですが…最期の怒鳴り散らしているところは楽しかったです。



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posted by 和泉綾 at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

皇子とレジスタンス 〜気づく変化〜

 これまで…ルルーシュはこちらが思いつかない様な方法で戦闘を行ってきた。
敵の時も…味方になってからも…
スザク自身、ルルーシュの考えていることは良く解らない。
近くにいるけれど…まだ、ルルーシュがいつも何を考えているのか解らない。
確かに…人間、誰かの事を完璧に知りつくす…などと云うことはあり得ない。
自分の事だって、一生かけたって、解らない事だらけだ。
だから…
自分が進もうと決めた道…信じようと思ったその相手のやろうとしている事を信じて…引き金を引く。
『道が開いたら、そこから竜胆の背後について、竜胆を援護!恐らく、さっきの砲撃で竜胆にはもう、残弾はない筈だ!』
ルルーシュの言葉が通信のスピーカーを通して聞こえてくる。
「イエス、ユア・ハイネス…」
普段はルルーシュと対等に立っているスザクだけれど…
こう云う時にはルルーシュを自らの主として据えている。
その事にスザクが気づいてるかどうかは解らない。
スザクはルルーシュの命令通りに竜胆の背後につく。
竜胆を見ると…本当に満身創痍…と云う言葉がピタリと当てはなる様な状態だ。
「星刻!聞こえるか!?」
スザクが回線を開く。
これは、竜胆に向けた共通チャンネル…
『枢木か…どうしてここに…』
サウンドオンリーでの会話…
それでも、星刻の驚いた様子が良く解る。
「ルルーシュの命令で…な…。本当に満身創痍だな…。とにかく、このまま前方に進め!俺が後方からの攻撃を守ってやる!距離5000のところにヴァインベルグ卿の隊がいる筈だ!」
『解った…。背後を…頼む…』
「誰に云っているんだ…お前にもお前を待っている存在がいるんだろう?俺にもやらなければならないことがある…それだけだ…」
そう云いながら、竜胆の援護をしつつ、ブリタニア軍本隊に合流するべく、進んで行く。
さっきのヴァリスは相当効いたようで、この周辺は総崩れになっている。
それでも…
―――本当に…数だけは多いな…
流石に、次から次に出て来る鋼髏の数の多さにイライラしてきたようだ。
ライも取り囲まれた状態でいるようだ。
「星刻、この鋼髏は一体どのくらいいるんだ?」
スザクが竜胆に向けて尋ねる。
『恐らく、ブリタニアのKMFの1.5倍いると考えていい…。おまけにあの総督の指揮と違って今、指揮官らしい指揮官がいないからそれこそ、個人の手柄しか考えていない…。おまけに相手の戦力を解っている連中が散り散りになってしまっているから、本当に何も考えずに突っ込んで来ている…』
「そうか…」
本当なら、それこそ、一蹴してさっさと片を付けたい…
そんな風に考えるけれど…
それでも、スザクの中ではいろいろな思いがある。
自分がレジスタンスのリーダーとしてシンジュクにいた頃…
あの頃だって、犠牲は最小限に…と云うことは考えていた。
ただの破壊者では、意味がない…
そして…もう一つ大きなそれは…
「ったく…俺もほとほとバカだな…」
そんな事を云いつつも、襲いかかって来る鋼髏だけ落として行く。
コックピットを狙わない…
いつ頃からか、スザクが意識しているかどうかはともかく…
それが、スザクの戦い方になっていた…

 竜胆と合流してどれ程時間が経ったか…
多分、それほどの時間は経っていない。
『枢木卿!』
「ライ…か?」
『大丈夫ですか?』
「俺は大丈夫…。ただ、俺自身は後方部分しか護衛出来ていない。だから、他の個所に被弾が多いんだ…。通信を寄こして来たって事は合流できるんだろう?」
『はい…』
「なら、竜胆の前方について、ヴァインベルグ卿の隊への合流の道を作ってくれ…」
『イエス、マイ・ロード…』
漸く、1機合流できるものが現れて、知らず知らずのうちに息が漏れた。
確かに、個々のレベルそのものは大したことはない。
ただ、それは1対1で戦った場合だ。
早いところ、本隊に合流しないと、こちらも危ない。
竜胆には既に残弾がないのであればなおさらだ。
「ヴァインベルグ卿…枢木スザクです…」
スザクがジノの回線を開いた。
『どうした?』
「ルルーシュから…連絡は行っていますか?」
『ああ、あの方も相変わらず無茶振りをしてくれる…』
「そうですか…。今、自分とライが竜胆と合流して、現在、ヴァインベルグ卿の部隊の、キューエル卿達を援護に着いている隊から距離3500の地点に我々は居ます…」
『なるほど…解った。キューエル達の方はジェレミア卿に任せれば大丈夫だ…。私がトリスタンでそちらに向かおう…』
「よろしいので?」
『ここで竜胆を落とす方が問題だ。それに、キューエル達も本隊の守備範囲に入っているからもう大丈夫だ…』
「そうですか…宜しくお願いします。出来るだけ急いで下さい…」
『主従共に強引な無茶ぶりをしてくれるな…』
苦笑しながらそんな事を云い放った後、通信が切れた。
そんなジノの言葉にスザクも苦笑する。
―――あの無茶振りな皇子様と一緒にしないで欲しいけれどな…
なとと思ってしまうけれど…
とりあえず、道を開く為の布石は出来た。
レーダーを見ながら、味方の部隊が近付いて来ているのが解った。
「星刻、すぐにヴァインベルグ卿の隊がこちらに駆けつける。ライも間もなく合流する。何とか、凌いでくれ…」
『お前も…単騎で来てどうするつもりだったんだ!』
尤もな星刻の言葉だけれど…
「仕方ないだろ…。このランスロットに追いつける機体が今はライのクラブくらいだからな…」
『だったら、何故一緒に動かん!』
「これだけ数がいて、そんな事を考えていられるか!とにかく、後方は守ってやるから、前方は何とかしろ!」
まるで、喧嘩の様なやり取りをしているわけだけれど…
これを…(どうせ、ルルーシュはこの会話の内容を知っているだろうけれど)ルルーシュの目の前でやったら…
―――また、呆れた顔をするんだろうな…。あの、大人ぶった皇子様は…
そんな事を考えつつ、本当に何も考えていないで突っ込んで来ているようにしか見えない敵KMFを落として行く。
とりあえず、脱出出来る形で落として行ってるから…
―――恐らく、命を落としている奴は最小限に抑えられている…筈…
何となく、自信の持てない自己評価だけれど…
それでも、襲って来るものを薙ぎ払わなくてはどうにもならないことは事実だ。
「多少の事は…勘弁な…ルルーシュ!」

 一方、アヴァロンの方では…
会話が聞こえて来て…
スザクの予想は外れていなかった。
「本当に…子供の喧嘩のようだな…」
ルルーシュが呆れ果てた様に零した。
「なぁに云っているんですか…。殿下だって十分子供なんですから…そこで呆れていちゃダメですよぉ…。楽しそうだなぁ…くらいに思わないとぉ…」
こいつの発言は…
どこまで本気で取り合えばいいのか…正直悩む。
「ロイドさん!」
そんな事を考えている間にロイドの脳天にはセシルのげんこつが降ってきた。
「いたたた…酷いよ…セシル君…」
「だったら、そうやって、余計な事を云わない事です!」
ここで、夫婦漫才(?)が始まる。
戦場に立っていると云うのに…緊張感と云うものがないのだろうか…
そんな風に考えてしまうのだけれど…
しかし…
「セシル…そのくらいにしてやれ…。まぁ、実は私もスザクと同じ歳なんだな…とは思うよ…。そう云われると…」
少し自嘲気味に笑う。
自分の年齢など…殆ど意識した事はない。
意識していられるだけの余裕がなかったとも云えるけれど…
「殿下…」
この二人は、二人でいるから…バランスがとれているのだと思う。
見ていてそんな感じだ。
あの、異母兄にさえも、こんな口調を崩さないロイド…
そして、そんな態度を見せる度に怒りだすセシル…
ルルーシュの中で…
自分が何か、変わったことが解る。
そう…
こうした光景を見て…自分の周囲にそんな存在がいるだろうか…
そんな事を考えるようになっていた。
その変化が…自分にどんな影響を与えているのか…
正直、その気持ちの変化が不安だと思っている事も確かだ。
しかし…
―――ここは…戦場だ…
そんな風に自分を諌める。
解っている。
頭では解っている。
それでも…こんな風に考えてしまうのは…何故だろうか…
そんな疑問…
と云うよりも、以前のルルーシュなら愚問と切って捨てる様な…
そんな事を考えてしまっている。
解っていて…何故、こんなことを考えてしまうのだろうか…
最近…
一体いつからだろうか…
自分が…どんどん変わって行くのが解る。
怖いと…思う事もある。
このまま…この自分の変化が進んで行くことが怖い…
本当にそんな事を思えて来てしまうのだから…
―――自分でも気付くと云うことは…他の者には…既にばれている…
そんな事を思うと更に、危機感を覚える。
正直、こんな風に自分が不安になった事など…
自分の記憶の中にないのだから…
「でぇんかぁ…難しい顔をしている間に…スザク君とライ君が、次々に敵KMFを落としていますよぉ?これが終わったら、階級、一つずつ上がるでしょうねぇ…これだけの働きをしていればぁ…」
ロイドのその言葉に…
ルルーシュがびくりとなった。
彼らがその実力を発揮していく…と云うことは、彼らの存在が他の皇子、皇女たちの耳にも入る事になる。
その中から、ルルーシュよりも好条件で、自分の騎士としたいと考える者が出て来るかもしれない。
スザクは…まだ、ナンバーズだから、いいかもしれないけれど…
ライの場合は…
否、スザクだって、元々実力主義の…強い者が上に行くシステムとなっているブリタニアでは…そのナンバーズと云う障壁があったとしても…
―――私の下を…離れる日が来る…

 元々、スザクに対しては、ルルーシュがこのエリアの総督と云う立場から離れる時には、スザクを騎士から外して、このエリアに残して行くと決めていた。
それなのに…
―――私は…スザクを…手放したくないと…そう…思っているのか…?
モニタを見れば、竜胆に襲いかかって来る鋼髏をロストして行っている。
確かに…
竜胆を守るようにと…命じたのはルルーシュだ。
ただ…
その働き…
ずば抜けた実力に…ルルーシュ自身、不安を抱えているのだ。
―――私が…ナナリー以外の誰かを失う事に…不安になっている…?
これまで、感じたことがなかった…
自覚した事がなかった…
そんな感覚だった。
「ルルーシュ殿下!竜胆とヴァインベルグ卿のトリスタン率いる小隊が合流したようです。これで、竜胆はブリタニア軍の勢力圏に入ってきました…」
セシルのアシスタントをしているCICがそう、報告してきた。
「そうか…で、現在の竜胆の被害状況は解るか?」
「まだ…報告が入っておりませんので…。しかし、現在、ヴァインベルグ卿の小隊と枢木、ライ両准尉の援護の下に進行しており、竜胆からの砲撃はありません!」
「なるほど…やはり先ほどの砲撃で全弾を撃っていたか…。ブラッドリーに援護をするように伝えろ…。あと、その分のフォローをアーニャに…」
「イエス、ユア・ハイネス…」
これで…間もなく、この戦闘も終わる…
最後まで気を抜くことはできないが…これで、最大のヤマを凌いだと…判断出来る。
「それと、現在、敵軍は誰がトップとなっている?竜胆がこちらに向かった為に、恐らく、総責任者が変わっている筈だが…」
ルルーシュが気になっていた事をCICの女性武官に尋ねる。
「あの…現在、中華連邦の指揮は、あの、前線には…いない模様です…」
言いにくそうに、その女性武官が答えるが…
「何!それでは…停戦交渉も出来ないではないか…」
「恐らく、竜胆を失い、その後は中華連邦の中枢に指揮権が移譲されている模様です。現場にいない為に、殆ど、前線にいる者たちの判断に任されている様ですが…」
その言葉に、ルルーシュはギリリと奥歯をかみしめた。
交渉する為の人物がいないのだ…
指揮官はいる…
いるけれど…この場にいない…
となれば、停戦交渉するにも話しが遠すぎる。
「現場責任者がいないのでは…」
「中華連邦も結構やることが大胆ですねぇ…。ひょっとして…ここにぶつけられたのは、全員捨て駒ですかぁ???」
「ロイドさん!」
セシルもロイドの言葉に対して、叱責するものの…
確実にその通りなので、それ以上とがめる事も出来ない。
ルルーシュ自身もそれが解ったから…
「恐らく…こちらから投降を進めても来る事はないのだろうな…」
「多分そうでしょうねぇ…」
「私が…甘かった…」
ルルーシュがぐっと拳を握り締めて、その拳を震わせた。
これまでにだって、経験してきたのだ。
ラティスのときだってそうだ…
こうして…相手にとって撃ちにくい状況を作り上げられて…挑まれる。
そうして…ルルーシュは彼らを撃ち…世界に名をとどろかせてきた。

 どれ程の時間が経ったか…
大して経ってはいないだろう。
ルルーシュはそう云った判断に時間をかけることはしない。
自身の体感時間は…どれ程のものかは…解らないが…
「全軍に命じる…。現在…投降を呼びかけて投降しない敵機に関しては…すべて撃ち落とせ…。返答がない場合も…投降の意思はなしと判断して…呼びかけから5分経ったら…撃ち落とせ…」
ルルーシュがやや震えた声で、ブリッジにいる武官たちに命じた。
その姿に…周囲の大人たちは痛々しさを覚えるが…
それでも…それが、総指揮官の仕事だ。
役目だ。
そして…彼らの中で、誰も…それを代わってやることが出来ないのだ。
どれ程苦しんでも…
確実にルルーシュは決断を下す。
だからこそ、シュナイゼルに敵対する皇族たちがルルーシュを恐れるのだろう。
そして、ルルーシュを暗殺しようと企んだり、こうした戦いに出向かせて、難しい判断を下させたりする。
大人でも…この状況で…
力の差がはっきりしていることが解っていながら…
もう、雌雄を決して居る戦いの中で…下さなければならない命令…
「殿下…」
こんなところで自分に従っている者たちに心配をかけるのはルルーシュとしては許すことはできない。
だから、凛としようとするけれど…
いつもなら、その気持ちで凛とするのだけれど…
―――何故だ…
自分の悩んでいる姿を…周囲に晒している。
ここに、もし、シュナイゼルを陥れようとする一派の者がいたとしたら…
これを好機として、その、主に報告するに違いない。
そうなれば…
ルルーシュを庇護しているシュナイゼルの立場が揺らぐ原因になってしまうかもしれない。
シュナイゼルがルルーシュを庇護する理由は…
シュナイゼルの意思がどうであれ、表向きにはルルーシュのその、有能な力を必要としているから…
と云うことなのだから…
だから、ルルーシュはこれまで自分の失敗を許さなかったのだから…
そんな時…ふと、見回すと…ロイドがいなくなっていた…
「ロイドはどうした?」
ルルーシュがさっきまで好きな事を云っていたくせに…と思いつつ、セシルに尋ねた。
「なんだか解りませんけれど…出て行きました…」
「そうか…。機体の不備でも見つけたか…。それとも、新パーツのアイディアでも浮かんだか…」
ルルーシュがそんな風に口にした時…
「ルルーシュ殿下!殿下に枢木卿より通信が入っています…」
このタイミングで何故…
そんな事を思いつつ、通信を繋ぐと…
『このバカルルーシュ!一人で何考えているんだ!』
戦場にいる筈の騎士から…
送られてきた怒鳴り声…
一体何の事だと…ルルーシュは目を丸くする。
「い…いきなりなんだ!お前…前線で…」
『ああ…今前線でごちゃごちゃやってるよ!ったく…この頭でっかちが!』
スザクのその言葉にルルーシュはむっとするが…
その先の言葉をスザクの言葉が遮った。
『お前なぁ…頭いいくせにバカなこと…少しは自覚しろ!考えても仕方ない事を考えるな!』
「な!戦闘中に繋いできたかと思えば、いきなり何を云いだす!」
『お前…いい加減に自分がまだ子供だって事を自覚しろよ!お前がそんな風なら、ライを前線に出さずにお前の傍にへばりつかせておくぞ!』
ここから始まった…
前線での…通信を使った…皇子と騎士の口喧嘩だった…

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス