2011年04月10日

皇子とレジスタンス 〜心の中身〜

 倒れたルルーシュを抱いたままスザクがアヴァロンの医務室へと歩いて行く…。
本来、この艦の指揮官であり、ルルーシュの異母兄であり、ブリタニア帝国の宰相であるシュナイゼルに挨拶に行く事が、身分を重んじるブリタニアの習わしではあるが…。
ただ、今のこの状態でその様な事を云っていられないし、スザクの中の優先順位はそんな慣例よりも倒れたルルーシュの方が上だという事だ。
「スザク君…」
目の前に現れたのはロイドだった…。
「あ、ロイドさん…医務室…準備出来ていますか?多分、シュナイゼル殿下が付けて下さったSPの方から連絡が…」
「ああ、大丈夫だよぉぉぉ〜〜〜。医務室じゃなくて、ルルーシュ殿下に提供されるお部屋に連れて行くから…ついて来てねぇ〜〜〜〜」
そう云ってロイドは踵を返し、歩いて行く。
口調そのものはいつものようになにを考えているかよく解らない、ふざけている様にも聞こえるけれど、その足取りに関して云えば、口調をそのまま受け取る方がどうかしている足取りだ。
恐らく、その部屋は準備万端、整えられているだろう。
「後…シュナイゼル殿下への挨拶は別にいいってさ…。後で、殿下ご自身がルルーシュ殿下のお見舞いに居らっしゃるそうだからぁ〜〜〜」
半分くらいそんな事は頭から吹っ飛んでいたスザクではあったけれど…。
確かに今回の責任者であるルルーシュが倒れてしまったのであれば、その騎士であるスザクが報告しに行かなくてはならない訳なのだが…。
「あ…」
「報告に関してもその時に聞くらしいから…。一応、あのルルーシュ殿下に付けられていたSPの人達が色々報告するって事になっているけど…。だから、ルルーシュ殿下からの報告はただの儀式だよ…」
形だけとはいえ、倒れている状態の中でルルーシュはそんな事までしなくてはならない…と云う事に心が痛む。
仕方ないとは解っている。
それが最高責任者と云う立場の人間の義務だ。
それにしたって、こんな子供が自分の心を削り、自分の信念に逆らい、大人以上の成果を出さなくてはならない現状に…憤りを覚えずにはいられない。
やがて、ロイドがある部屋の前で立ち止まり、入口のパネルにパスワードを打ち込む。
どうやら、ルルーシュがブリタニア皇帝から次期皇帝に…と云う話しになったことで、シュナイゼルの軍の中でも嫌な動きがあることが推察される。
ロイドが部屋の中に入り、スザクもルルーシュを抱いた状態で入って行き、ベッドが目に入ってきたからすぐにそこへと歩き出し、ルルーシュを横たわらせた。
それを見てロイドがスザクにルルーシュの着替えを渡す。
「とりあえず、その窮屈な服を脱がせて…。これに着替えさせてね?それと、ここのタオルで身体をお拭きして…。点滴やら心電図やら色々くっつける事になるから…」
「解りました…」
スザクがその着替えを受け取ってルルーシュの衣服を脱がせ始める。
そして、その細い、白い身体が表に出て来ると…。
特に…身体に傷がついている訳でもないのに…本当にぼろぼろだと…スザクは思った。

 全ての着替えを済ませると、すぐにルルーシュの胸に心電図の電極を付けられ、二の腕に血圧計が巻かれ、反対の腕には点滴が施される。
体温を測り、脈をとりながら、ロイドがスザクに声をかけ始めた。
「エリア11の部隊も来ているよ…。ルルーシュ殿下がある程度回復したらルルーシュ殿下はそちらの部隊の指揮官になる…」
「え?」
ロイドの言葉にスザクが驚いた声を出した。
「何を驚いているの…。当然でしょぉ?ルルーシュ殿下はラティス攻略の最高指揮官だ…。今回はシュナイゼル殿下の方がオブザーバーなんだから…」
頭ではそんな事は解っているのだけれど…。
スザクの頭の中では理解しなければならないという部分と、こんな状態で…と云う感情が渦巻いていた。
「それに…これが成功しなかった場合…ルルーシュ殿下の立場は地の底に堕ちる事になるよ…。いくらシュナイゼル殿下が庇いだてしたとしてもね…。そうなった場合、ルルーシュ殿下もナナリー皇女殿下も…この先、命を狙われるだけならいいけれど…政治の道具として使い倒される羽目にもなるんだ…。そうなった時…ルルーシュ殿下の配下としている僕達は…」
ロイドの言葉にスザクがぐっと唇を噛んだ。
結局…この目の前の人間も…そう云ったルルーシュの立場の身に固執していたのかと…怒りを覚える。
「ロイドさん…」
我慢できなくなったところで…スザクが低い声でその人物の名前を呼んだ。
ロイドは特に驚く様子もなくスザクを見た。
「何かな?スザク君…」
「俺は…ルルーシュ自身に仕えているのであって…否…仕えていると云うのも違う…。俺は…ルルーシュがどんな立場だろうと、どんな窮地に立たされていようと、ルルーシュを守る事をやめるつもりはない…」
低い声で…ゆっくりとその言葉を紡いだ。
これは…あの時、ルルーシュの騎士と正式に決まった時から決めた事だ…。
別にルルーシュが皇子でなくたって、ルルーシュと共にいれば、日本は決して悪い方向に進む事はないと…そう考える事が出来たからだ。
あの、まだ敵同士として対峙していたあの無人島でルルーシュと交わした会話…。
あの中で自分の中にあったルルーシュのイメージがすっかり変わってしまった。
その事に最初は驚愕した。
でも、ルルーシュの騎士として共にいるうちに…あの短い時間の内にルルーシュへのイメージが変わった自分にはちゃんと人に対しての観察眼があると自負できるようになった。
あの時、あんな短い時間でルルーシュに対してのイメージが変わった事…何も間違っている事でもなく、思い違いでもなかったのだと…。
そう確信できるからこその…言葉…。
そして、あの時、出会った時の立場がルルーシュはブリタニアの皇子であり、スザクはレジスタンスのリーダーだった…ただそれだけの事だった。
もし、利害が一致していれば…望むものが同じであれば…
―――俺は…きっとルルーシュを守る立場に立っていた…
そう思うからこそ…今のロイドの言葉に対して憤りを覚えるのだ。

 そんなスザクの言葉に…ロイドが安心したように笑った。
「良かったよ…君がそう云う覚悟を持っていてくれて…。今回、まだ終わっちゃいないけど、ラティス王をその場で取り逃がしてしまった事を責める人間が出てくるよ…。必ずね…」
ロイドの言葉にスザクははっとした。
確かに…あの時は驚いてしまったが、可能性を考えれば至極当然の事だ。
王と云う立場は…国が安定していればそれほどそんな事を心配する必要はないが、こうした戦争状態、国内の政争状態が不安定な場合、退路を作っておく必要がある。
その隠し通路さえも他の誰かに口外するようになったのでは、その国のその時にある王室は最早末期状態の更に最後の最後と云う事だ。
そんな隠し扉がある事くらい…計算の上で動かなければならなかった。
―――あの時…偃月の陣の形を取っていた時点で何かあると踏まなければならなかった…。
今更な事であるとは解っていても、こうした形で考えてしまう。
後の祭りだと解っているが…。
「確かに…。俺自身、もっと…」
「何を云っているの…。君もルルーシュ殿下も自分の歳を考えなよ…。大の大人だってそんな可能性を、その場で考えられる人はあんまりいない…。それに、まだ途中経過なんだから…ルルーシュ殿下がそう云った訴追を受けた時には君がルルーシュ殿下を守り、窘め周囲を黙らせる事が出来る力が必要だって云ってるの…」
「……」
ロイドは元々シュナイゼルの配下にいて…今はシュナイゼルの命で主君がシュナイゼルからルルーシュに変わっている。
と云うか、ルルーシュの命令が第一となっている。
だからこそ、この先、ルルーシュがどちらの転ぶかによって彼の運命も変わって来る。
ロイドだけではない。
特派の人間もライもジェレミア達も…。
「スザク君…別に僕達はルルーシュ殿下がどのようなお立場になろうと仕えて行く心はあるよ…。ただ、ルルーシュ殿下の立場が変わって僕達の状況が変わった時、一番気にするのは…誰なのか解っているんだろう?スザク君なら…」
ロイドが、一体何からルルーシュを守らなくてはいけないのか…示唆している事が…解る。
そして、ロイド自身がルルーシュから離れて行く事はないと…そんな風に思えた。
スザクはロイドがシュナイゼルから受けている命令を知らないからこそ…そんな風に思えるのだろうが…。
「解ります…。ルルーシュが守りたいのは…ナナリー殿下…。ナナリー殿下を守るためには…」
「うん…そうだね…。多分、ルルーシュ殿下もそれを解っている。だからこそ、こんな風に無理をなさられるんだ…。だから、君はルルーシュ殿下が要らぬところで力を削がれないようにしなければいけないよ?」
ある意味…巧みと云うべきか…。
普段、ロイドはこんな形で人と人について話す事はあまりない。
だからこそ、こうした時の言葉は絶大だとも云えるのかもしれない。
「解って…います…」
そう、言葉にしながら…ふっと、スザクは眠っているルルーシュを見た…。
確かにルルーシュには守りたいものがある。
だからこそ、自分の心を押し殺してまで戦ってきた事も知っている。
―――でも…これ以上は…

 そんな事を考えている時…部屋の扉が開いた。
「ルルーシュは…ルルーシュはどんな様子なんだい?」
そう云いながら入ってきたのは…ルルーシュがどんな立場に立とうと、ルルーシュを守ろうとする人間の中で最も力を持つ人物だった。
「シュナイゼル殿下…そんなに慌てて入って来なくても大丈夫です。ルルーシュ殿下の年齢も考えて差し上げて下さい…。本来なら熟練の将が出向いて交渉に当たらなければならないところです…」
そう、ロイドがシュナイゼルを窘めた。
静かに眠るルルーシュを見ながら、シュナイゼルも一度、大きく呼吸をして部屋の中に入ってきた。
「枢木君…報告はいいよ…。そんな儀式的な建前はいらない…。一通り聞いた…。確かに…君達の甘さだと云わざるを得ないね…」
シュナイゼルがスザクに対してある意味、責任を問うている様にも聞こえる様な言葉を投げかける。
しかし、そこで怯む訳にはいかない。
先ほどまでその事をロイドと話していたのだから…。
「今回の事…確かに甘さと云われればその通りでは御座居ますが…。しかし、あの時点で王を捕らえても恐らくは足りないピースがいくつか御座居ます。どの道、ラティス公国の武器を生産している工場を全て破壊する決断をしなければなりません…」
スザクは一応礼を払う形で頭を下げながらシュナイゼルに進言する。
そのスザクの言葉に…シュナイゼルは首をかしげる。
「シュナイゼル殿下は…ご存じだったかどうかは解りませんので、一応、御存じなかったという前提でお話しさせて頂きます…」
スザクが毅然とシュナイゼルに対してその見解を話し始めた。
「ラティス王はルルーシュ殿下の前でマリアンヌ皇妃暗殺に関して口に出しました。それがあの状況下の中で切羽詰まってのものであるという事は解りました。故に、そのラティス公国がマリアンヌ皇妃暗殺に関して関わりがあると、判断した場合…ラティス公国の武器生産は我がブリタニアにも大きな脅威です…」
スザク自身、こうした形での腹の探り合いの様な議論の中でシュナイゼルにこて先技が通用するとは思っていない。
だとすれば、単刀直入に…事実を踏まえた上での見解を話す方が得策に決まっている。
「マリアンヌ皇妃はルルーシュ殿下のお母君…。ルルーシュ殿下がこのように幼いながら戦場に立たなくてはならなくなったのはあの、マリアンヌ皇妃暗殺事件があったからだと…自分は浅慮致します…。それ故に…あの時のルルーシュ殿下の心中は普段の戦場に立たれている精神を保つ事は出来なかった…。それでも、シュナイゼル殿下のSPの方々が一人も命を落とす事がなかった事は…ルルーシュ殿下の英断があればこそです。確かに…あの時、自分以外の騎士…ライ准尉がいたならば…結果は違っていたかもしれませんが…。そんな過程の話しをしていても仕方ありません。今はまず、責任追及の前にこの先どうするかをどう判断するかが重要かと思われますが…。我々にとって、過程よりも結果がすべてなのですから…」

 スザクの言葉にシュナイゼルが不機嫌な顔を見せた。
確かに今は最終目的の為の過程に過ぎない…。
元々、ラティスとは一戦を交える気でいた訳だから…スザクの云っている事は尤もであると…納得するであろう…。
恐らく、シュナイゼルとルルーシュ以外には…
「しかし…」
シュナイゼルが口を開くとスザクも身構える。
ここでルルーシュの援護射撃なしに…なんとしてもルルーシュを守らなくてはならない。
「今回、王を捕らえていたのならその一戦を交える…と云う事を回避できたのではないかい?」
確かに…それは一理ある様には見えるが…
「あの状態の中、王の様子を見ている限り、あの王を連れ去ったところで意味を成さないでしょう。確かに王の名を持っているが…それはお飾りに過ぎない状態となった訳ですから…」
SPからシュナイゼルに報告された内容でも…シュナイゼルは今、スザクの云った言葉に同意できる部分を感じた。
―――ルルーシュの近くにいて…多少なりと観察眼と洞察力、考察力がついたのかな…
シュナイゼルは表情を変えずにその少年を見た。
心の中に…多少の悔しさと、嫉妬を抱きながら…。
「ふっ…。君は本当にルルーシュの近くにいるのだね…。こうした窮地に立った時…ルルーシュが云いそうな事を云って来る…」
「どう云う…意味でしょうか?」
シュナイゼルの言葉に怪訝な様子を見せてスザクが問う。
「否、なんでもないよ…。どの道戦闘は避けられない事は解っていたのだから…。さっさとルルーシュの回復を最優先に…。後、1時間くらいで中華連邦で合流したエリア11、中華連邦の連合軍が到着する…」
そう云いながらシュナイゼルは廊下に出て行った。
ロイドの顔を見ると『まぁまぁだったんじゃないの?』と、その目が訴えていた。
そのロイドの顔を見て、スザクの肩から力が抜けた…。
廊下に出たシュナイゼルが…目論見通りだと…ほくそ笑んでいる事を知らずに…。
ロイドだけは廊下に出たシュナイゼルがどんな事を考えていたのか…解っていた。
正直、色々と複雑な思いはあるのだが…。
―――スザク君…さっき、君が云っていた…ルルーシュ殿下を守る…と云うのが…どう云う事なのか…これから先…君はきっと思い知る…。君が守りたいのはルルーシュ殿下の御心も含めて…の事だからね…。それがどんなに困難な事なのか…君は…まだ解っていないよ…。
正直、ロイドにとってはルルーシュが皇帝に立つ方が色々とメリットがある。
ここまでスザクが単純に言葉を信じるところに不安を覚えたのは事実だが…。
それでも、この先、自分の立場云々は別にして…一人の大人として…この二人の行く末を見守りたいと思っている事も…事実であった。
ロイドはシュナイゼルの命を受けている。
そして、ルルーシュがどう思っていようと…ルルーシュを皇帝に…と云う方向で動いている。
今のところ、ルルーシュがナナリーを守りたいと思う限り…ルルーシュ自身は皇帝の座に就く以外方法はない…。
ただ一つ…方法があるとしたら…
―――ナナリー殿下が…どうお考えになって、どう動かれるか…にかかっているのかな…きっと…。

To Be Continued

あとがきに代えて



御無沙汰いたしております…。
そして、東日本大震災において、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
また、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈り申し上げます。

震災以前から本当に更新が途絶えていた状態でしたが…。
なんとか浮上してまいりました。
正直、未だに連絡のつかない方々もいるのですが…少しずつ、和泉の方は通常に戻して行こうと思います。
で、まず最初に『皇子とレジスタンス』を再開させて頂きました。
頭の中では話しの展開が出来ております。
なので、文章が書ける状態でしたら、この作品が一番掲載され易い作品だと思います。
今回はスザク視点で書かせて頂きました。
あと、去る4月6日に3ヶ月ぶりに拍手お礼の入れ替えをさせていただきました。
よろしければそちらも読んで頂ければ幸いで御座居ます。
色々と落ち着かなくて申し訳ありません。
この先の余震などの情報に耳を傾けつつ、出来る限り行使にしてまいりたいと思います。


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posted by 和泉綾 at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス
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