2010年06月26日

皇子とレジスタンス 〜Arm to which it can relieve it〜

 現在、枢木スザクは、ルルーシュと一緒に資料室にいた。
そして、少々困ってしまった。
と云うか、何故にこんな事になってしまったのかと…自分の頭の中で考えている。
―――確か…ルルーシュのバカ話しを聞いていて…それで一発ぶん殴って…それから…
と、ここまで来た経緯を自分の中で整理しているのだけれど…。
ルルーシュを抱きしめて、その耳元で言葉を反芻していて…。
最終的にはルルーシュは身体を震わせていたけれど。
ある段階でその震えが感じなくなった。
少し落ち着いたのかと、ルルーシュの様子を窺ってみたら…。
そのままスザクに自分の体を預けて眠ってしまっていたのだ。
寝息を立てているルルーシュを見ていて…恐らく、ルルーシュがこんな無防備でスザクの腕の中で眠っていたなどと本人の知るところとなったら…。
確実に口止めのためにあらゆることをされるだろう。
それこそ、手段を選ばず…。
そんな事よりも、ルルーシュがこんな風に眠っているのを見るのは…シンジュクゲットーでの騒ぎのとき、戦後処理が終わってから熱を出した時くらいだ。
否、あの時は完全に熱に浮かされている状態だったからこんな風に、無防備な眠り…と云う感じではない。
こうして間近で見ていると、綺麗な顔をしていると思う。
日本人でもこれほど真黒な黒髪はいないかもしれないと思うような、漆黒の黒髪…。
目を閉じるとよく解る、黒く長い睫毛。
一つ一つ整った顔のパーツ…。
そして、ブリタニアの皇族の姿はテレビやパソコンの画面で見た事があるけれど…。
色白なのは血筋なのか…。
その中でも
黙っていれば本当に女だと云ってもばれなさそうだ。
と云うか、こんな近くでルルーシュの顔を見た事のある人間が一体どれだけいるのだろうか…。
暗殺されたと云う、ルルーシュの母親が生きていた頃ならともかく、その後、こんな間近でルルーシュの顔を見る事が出来た人間がいたとは思えない。
おまけに…
この無防備な顔をして眠っている姿など…。
―――これは…どう捉えるべきなのだろうか…。
スザクの中出は真剣に悩んでしまう。
これまで、ルルーシュの存在が気になり、彼のやっている事が気になり、ずっと意識を傾けていたとは思うけれど。
こんな、他の何者に対しても警戒心剥き出しの野良猫みたいなルルーシュがこんな寝顔を見せるなど…想像できない。
と云うか、普通に眠っていても、人の気配がすれば目を醒ましそうな感じだ。
実際に普段のルルーシュはそんな感じだ。
誰に対しても弱みを見せてはならない、凛としていなければならない…。
そんな意識を持ち続けている様に見える。
実際そうだったのだろうとは思うけれど。
ルルーシュの傍にいて驚かされる事ばかりだ。
自分とルルーシュは同じ歳…。
誕生日だけで云えば、スザクの方が5ヶ月早く生まれているのだ。
それなのに…。
ルルーシュの方が遥かに大人びて見える。
―――と云うよりも、年相応に見えないと云った方が正確だよな…。
そんな事を思いながら、ルルーシュの顔を見て『はぁ』とため息を吐いてしまう。

 殆どその場の勢いでルルーシュの騎士となってから、どれほど時間が経っただろうか…。
よく考えてみると、それほど時間が経っていない事に気付く。
しかし、その短い時間の中で自分自身、凄く変わったと思う。
このエリア11のシンジュクゲットー内でレジスタンスのリーダーをやっていた頃から、思っていたよりも時間が経っていない。
それほど、ルルーシュの傍に来てからの時間と云うのは、本当に濃い日々を送っていた。
それこそ、数年分の経験をこの数ヶ月で経験させられている気分だ。
ルルーシュの中でも初めての経験はあったようだけれど。
でも、スザクにとっては更に驚かされる様な、本来なら絶対に経験できない事を重ねて来たと思う。
恐らく、望んで得られる経験でもないだろう。
やっている方は大変だと思うけれど。
そのど真ん中に立たされているルルーシュはそれを自ら背負っているのだ。
守りたい者…たった一人の存在の為に…。
そう思うと、ルルーシュが溺愛する妹だとは解っていても、ルルーシュに守られ、異母姉姫に間漏れられているルルーシュの妹姫に対して、様々な思いが過って行く。
本来、ナンバーズであるスザクがブリタニアの皇族の姫君に対してそんな事を考えてはいけないのかもしれないけれど。
彼女は…どの程度ルルーシュのやっている事、背負っている者を理解しているのだろうか…。
今、自分の腕の中で眠っているルルーシュの顔を見ていてそんな風に思えてしまう。
と云うか、恐らく、今のルルーシュに安心して眠れる場所などないのかもしれないと思えて来た。
常に、緊張状態の中、いつ、背後から刃を突き付けられるか解らない状況の中、恐らく、自分の寝室でさえ、安らげる時間ではないのだろうと思えてくる。
―――ブリタニアの皇族で、こうして皇帝の座を争っている者、自ら守りたいものがある者はみんな、こんな緊張状態にあるのか?と云うか、そんなんで、本当に普通の精神状態で居られるのだろうか?
スザクも元々は日本国首相の息子だ。
あの頃、ブリタニアとの外交摩擦がギリギリの状態にありながら、国内の政治も荒れていた。
その中で首相だった父は政治的に父とは違う考えを持つ者達に暗殺された。
その事実を知るのは、本当にわずかな者達だけだ。
ルルーシュは自分の母親が暗殺されて、その遺体を見つけたという。
スザクも自分の父親が殺されて、その亡骸を見つけた。
お互い、同じ傷を持つものだからなのだろうか…。
敵対して、相手を殺さなければいけないと云う認識があったにもかかわらず…。
『殺したくない…』
と思ってしまったのは…。
少なくとも、スザクはそう思った。
シンジュクゲットーで一人立ちつくして、ルルーシュが悲痛の思いを口に出していた時の事を思い出す。
ルルーシュ自身、戦いたくなんてないのだろう。
地を見るのが嫌いなのだろう。
でも、それでも、守る為には…必要だからと…自分を押し殺し、自分を抑えつけてやりたくない事を続けている状態なのだ。
見ていて痛々しいと思う。
そして、そんな彼が、何故、これほどまでに天才的な戦略を施せるだけの才を身につけて生まれて来てしまったのだろうか…と…。

 相変わらず、ルルーシュは眠っている。
相当疲れているのだろう。
しかし、これまでは決してそう云った事を周囲の者に見せたりはしなかっただろう。
だからこそ、あんな形で倒れていたのだろうとは思うけれど。
おまけに今は、まだ、戦後処理が完全に終わっていない状況だ。
それでも、これまでルルーシュが一人で抱え込んでいたものの中にあった、他の者でもできる事…であるわけで…。
だから、こうして眠ってくれる事は、騎士としては有難いと思う。
あんな形で何日も生死をさまよっているような熱発される方が心臓に悪い。
多分、あの状態に陥る事を知る者は本当のごく一部だろう。
と云うか、これまで、スザクとライが知る事になるまではジェレミアと、あの時の担当医師しかその真実を知らなかったかもしれない。
そのくらい、ルルーシュは周囲に対して警戒していた。
下手なところを見られて…シュナイゼルの敵対する者達…それこそ、国内外関係なく知られてしまっては色々不都合が出てくるのは解っている。
どうしてそこまで警戒心を持たなくてはならなくなったのか…。
正直、今のスザクには良く解らない。
ただ、話しで聞くだけではそこまで徹底せねばならないと云う事はないだろうにと思ってしまうからだ。
しかし、ルルーシュはそれをしているのだ。
スザクの知らない過去に、ルルーシュはそう云った経験をしているのだろう。
確かに、国会議員が選挙で選ばれ、その国会議員によって選ばれる首相の権力争いとは様相が違うだろう。
ルルーシュだって下位とはいえ、皇位継承権を持つ身だ。
本人には、皇帝になろうなどと云う意思は全くないようだけれど。
だから、ルルーシュの働きは基本的に皇位継承権は自分にあると云う意思表示の為のものではない。
自分の身を守る為に、自分を庇護する者の為に働いている…。
たまたま、その能力に長けていた為に、周囲からターゲットにされているフシはあるけれど。
実際に、皇位継承争いの皇子や皇女の名前が世界中に知られる事があっても、その下で皇位継承を望む者を支えている者達の名前が知られると云うのはよっぽどだ。
特にその名前が独立していて、二つ名まで付けられているのは珍しいと云わざるを得ない。
確かに、皇帝直属の騎士、ナイトオブラウンズであればそう云う者もいるけれど。
しかし、皇位継承を狙う者を守る立場にいる皇族…の中では珍しい。
特にルルーシュはまだ、子供と云える年齢だ。
そんな子供が『黒の死神』などと云われてしまう程、ルルーシュはこれまで様々な事を重ねて来ている。
その二つ名がいつの間にか、一人歩きをしているような気になってしまうのは、ルルーシュの傍にいる様になったからだろうか…?
ルルーシュを間近で見ていると、そんな二つ名がとても似合う様な皇子には見えない。
繊細で傷つきやすくて、そして、その傷を忘れる事が出来ずに、自分で自分を傷つけている印象を…今のスザクは抱いている。
そんな姿は…なんだか痛々しいけれど…その二つ名をもルルーシュは利用して戦っている。
暫くの間…ルルーシュの眠りを邪魔しないで欲しい…。
そんな風に思えて来てしまう。

 ただ、今の体制は結構辛い状態…かもしれない。
確かにルルーシュは男である事は解っているのだけれど。
普段とのギャップと、見れば見る程綺麗な顔をしていると思えてくる中…正直、自分でも複雑な思いを抱いてしまっている事に…。
意図的に気付かぬ振りをする。
普通に外交大使としての存在でいたなら…それこそ、ブリタニアに取っていのいい看板になるであろう顔の造りをしている。
一つ一つ、とても整っていて…。
きっと、世の女性なら、羨ましがるだろうと思える程だ。
否、ここまで超越していると、羨ましいとさえ思わないかもしれない。
そう思った時、本当に目のやり場に困ってしまう。
じっと見ていたら、変な気持ちになりそうで…。
―――バカか!ルルーシュは男だぞ!
スザクは自分で自分にツッコミを入れる。
そんな事、云われなくたって解っている事だけれど。
しかし、自分で自分の事を面食いだとは思った事無いけれど。
それでも、美人の基準はその時代、国によって違うと云われる。
確かに、太っている方が美しいとされている時代なら論外な程細いけれど。
でも、体型はともかく、それを除けば、太さだけ変えればこのままの造りでどの時代、どの国でも美しい人間として評価される様な気がする。
それはともかく…。
こうして、ルルーシュが子供みたいに眠っている姿は本当にレアだろうと思う。
正直、スザクだってルルーシュの騎士をしていて、こんな姿を見る日が来るなんて、思いもしなかった。
ルルーシュも目が覚めれば、
『私とした事が…不覚だ!』
などと騒ぎ始めそうだ。
それでも、こんな風に安心して貰える事は素直に嬉しい。
あの時、敵の指揮官と解っていながら、スザクはルルーシュに手をかける事はなかった。
まだ、ここまでエリア11となってしまった日本を安定させる前の話しだったから。
スザクがその気になっていれば、あの無人島で殺すことだってできたのだ。
―――その時はブリタニア軍に見つかって俺も殺されていただろうけれどな。
そんな事を考えながら、クスッと笑ってしまった。
本当に、結果とはどんな形で表れるか解らないものだと思う。
あの時、ルルーシュがスザクを騎士にした…などとブリタニア兵たちに宣言した時には驚いたし、憤りもした。
でも、今ではあの時のルルーシュの無意識の、咄嗟の言葉に感謝しているくらいだ。
あの時、ルルーシュ自身でも、何故そんな事を云ったのか、解らない様子だったけれど。
結果だけ見れば、スザクの中では感謝している。
知れば知るほど…ルルーシュと云う人間には傍に誰かが必要だと思った。
ルルーシュがどう考えていたかは解らないけれど。
あの時、ルルーシュはスザクが死ぬ事を望まなかった。
だから、あんな事を云ったのだ。
そう思うと…本当に嬉しいと思えてくる。
そんな事を考えていると…ルルーシュの瞼が小さく震えた事に気づいた。
どのくらい時間が経ったのかと、この資料室にある時計を見た時…。
あれから1時間程、経っていた。
「…ん…」

 ここで、スザクが何とも複雑だけれど、悪い気はしなかった時間が終わった。
「目が覚めたか?ルルーシュ…」
スザクがまだ、はっきりと覚醒していないルルーシュに声をかけると…。
そのスザクの声で意識がバッチリとはっきりしたのか…、ぎょっとした顔でスザクの腕の中からすり抜けた。
「あ…済まない…。眠ってしまったとは…」
ルルーシュが状況の把握がしっかりできない状態で慌てている様子…。
これもレアなルルーシュの姿だと思う。
普段は大人相手に冷静沈着、冷酷無比を通していると云うのに…。
「別に…。お前…眠っている時は本当に年相応だよな…」
よせばいいのにスザクが茶化してルルーシュに云うと…。
ルルーシュの顔が真っ赤になり…
「私とした事が…不覚だ!」
そう云って、少々青ざめている。
まるで、見られたくない奴に弱みを見せてしまった…とでも云う様な…。
そんな感じだ。
そんな…青ざめなくても…と、スザクは思うのだけれど。
少なくとも、スザクはルルーシュの騎士であって、ルルーシュの敵ではないし、こう云った姿、状態を誰かに話しをして得する事もないのだ。
「そんな…青ざめる事じゃないだろ…。安心しろ…。誰にも云わないし…」
スザクが呆れ顔でそう云うと、ルルーシュの顔は真っ赤になった。
「お前がどうこう云っているわけではない!これでは…私のプライドが…」
スザクとしては、頓珍漢な発言にしか聞こえないルルーシュの言葉…。
それに、少々呆れてしまうのだけれど。
「お前…そこでそんな下らないプライド持つの…やめないと、何れ、幸せも逃す事になるぞ…」
色んな意味で子供としては欠陥品なルルーシュにスザクが呆れた顔で云ってやる。
本当に子供としては欠陥だらけだ。
ちっとも子供らしくない。
だからこそ、スザクもふざけモードになるとからかいたくなるわけだけれど。
「別に…私は…!それに、お前はこう云うネタを持つと絶対に後々まで、色々何かに利用して来そうな気がする…」
完全に憶測でものを云っているルルーシュに…。
なんだか、心外だと思ってしまう。
だいたい、見た目で判断していないだろうか?
と云うか、見た目で判断されていたとしても、そこまで自分は根性悪くはないとは思っている。
「俺、そこまで陰険な事をしないって…。どっちかって云うと、そうやって口でねちねちやるよりも実力行使だな…」
さらりと返してやると…ルルーシュがぐっとなって、言葉が出て来なくなった。
実際にその通りだ。
ルルーシュは頭脳労働向きだけれど、スザクは明らかに肉体労働向きだ。
さっきまでの可愛らしいルルーシュは一体どこへ行ってしまったのやら…と云う感じだ。
とりあえず、ルルーシュが自然に目を醒ますまで邪魔が入らなくてよかったと内心ホッとしている。
「そんなことより、資料整理が終わったら、あと、お前の仕事は?」
スザクが話しを切り替えた。
ルルーシュは一瞬驚いた顔を見せたけれど。
でも、そちらの話しに乗った方が得策と判断したのか、スザクの話しに乗った。
「後は、基本的にはないな…。書類整理などは殆ど終わっているし、後は文官たちの仕事になる…」
ルルーシュの言葉に、スザクはほっと息を吐いて、言葉を口にした。
「なら、俺がランスロットからの通信で云った、俺の行きたいところに…連れて行ってくれ…」
スザクのその言葉に…ルルーシュは不思議そうにきょとん死した顔を見せたのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて



前回からすっかりスザルルカラーになってしまって…。
あとは、和泉とスザクの妄想のまま、ルルーシュを観察しておりました(笑)
次回、スザクはルルーシュと一緒にスザクが行きたいと云った場所へと向かいます。
多分、細かいところを完全にすっ飛ばして描く予定ですが…。
所詮、予定は未定って事で…。

そう云えば、ワールドカップ…ここでは一切話しを出していなかったのですが…。
絶対に決勝トーナメントには行けないと思っていましたが…。
なんだかんだ云いながら、行っちゃいましたね…。
と云うか、欧州勢…一体どうしたんだ?
まぁ、イングランドとアルゼンチンの試合は見たいと思っていたので、ちゃんと両国決勝トーナメントに出てくれた様なので…。
日本は、決勝トーナメント…パラグアイ相手では勝てないでしょう…。
それでも、予選リーグ敗退と思っていた…と云うか、一生も出来ずに帰って来ると思っていたので、凄い事ですね…。
マスコミだけが騒いでいると思っていました。
でも、それなりに頑張っているみたいなので、少しだけ、頑張れ!と云う声援を送りたいと思います。


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posted by 和泉綾 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス
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