2012年05月16日

History(前編)〜『It’s Destiny』(番外編)〜

『It’s Destiny』の過去のお話しです。『ゼロ・レクイエム』の後、スザクが『ゼロ』の仮面を被りながら世界を見続けている時のお話しです。

 これは…ルルーシュとスザクが生まれ変わり、再会した時より遥かに時間が遡り…。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアが救世主『ゼロ』に倒されて…20年ほど経った頃の話しである。
既に、『ゼロ』の仮面を継承したスザクはルルーシュと出会ってから、自らの刃によってこの世界から排除した時までの時間の倍以上…『ゼロ』として存在している。
『ゼロ』の仮面の下の顔を知る者も確かにいる事はいるのだが…。
しかし、それを『ゼロ』であるスザク自身にその真実を知っていると云う事を彼自身に露わにしているのは…たった一人…。
『ゼロ・レクイエム』の時…その場に足を運ばず…神の祀られている礼拝堂で一人…涙を流していた魔女…C.C.…。
『ゼロ』の情報源と云うのは、あの時のインパクトの所為か…放っておいても情報が入って来る…。
ルルーシュがそう云った表には出て来ないシステムを作っていた事もあるが、それに気付いた、ルルーシュの『ギアス』によって『ゼロ』に尽くす様になったシュナイゼルと、ルルーシュに真の忠誠を誓ったジェレミアがそこに情報を流すようになっていた。
それは…ルルーシュの命令だったのか…彼らの何がそうさせているのかは…もはや確認のしようもない。
しかし、そのお陰でスザクは『ゼロ』としての活動の力になっている事は否定しようのない事実だった。
様々なデータは勿論、必要な人材や物資の手配などは彼らの協力なしにはとても出来るものではない。
そして、人材の手配に関してはかなりの注意が必要になる。
一般人の中で『ゼロ』の正体に勘付く者、そして、それを口外する者が出て来てしまっては、『ゼロ』の意思は関係なく、『ゼロ』を中心に世界が回る事になる。
もしくは、その『ゼロ』を利用しようと考える者が出て来る。
それは…ルルーシュが命を賭してまで『ゼロ・レクイエム』を施した意味をなくす事になってしまうと云う事だ。
だからこそ…ルルーシュは『ゼロ・レクイエム』後、シュナイゼルはどんな形であれ、世界を動かして行く立場に立つと考え、そして、その為に『ギアス』を施した。
シュナイゼルの意思はそこにはない事は…充分に承知していただろうし、今だって、どこかで違和感を抱きつつも、人ならざる力によって彼を動かしている。
それほどまでに認めた…シュナイゼルの才覚…。
ナナリーではそこまでできないと云う事を考えていた事なのだろう。
確かに、ナナリーがまだ、日本が『エリア11』だった頃、そこの総督であった時の彼女の手腕をきちんと見ていても、ルルーシュがどんな形であれ、シュナイゼルを政治に関わらせる事を考えざるを得なかったのだろう。
『ゼロ』の仮面を継承したスザクも…ここまで時間が経って、やっと、ルルーシュの先の先を読んだ策に感嘆のため息が出て来る。
あの後…世界は『民主主義』を標榜する中で『民主主義』『自由』の意味を既に忘れてしまっていた人々の間に様々な相違が生まれて来る。
『民主主義』も『自由』も『自分の望みのままに動かす事』ではない。
そして、それぞれの価値観、譲れない何かがある限り、『話し合い』で事が決まる世界にする為には多くのハードルがあることを失念していた世界は…そろそろ『ルルーシュ皇帝』に全ての悪を押し付ける事に限界が来ている事が…ひしひしと感じさせられてきていた。

 様々な覚悟が足りない世界…。
結局は『ルルーシュ皇帝』を倒す戦いの際に、その国の代表となった人物があの、『ゼロ・レクイエム』の舞台となったあのパレードにおいて、『死刑宣告』を受け、人々の目に晒されていた人物が代表となっている国の発言権が強くなっていた。
どれだけ平等に、公平に、と訴えたところで、二者択一を迫られた時には誰かが決めなくてはならない。
そこで『黒の騎士団』のリーダーとして存在していた頃の『ゼロ』であれば、世界の代表者たちを一言で黙らせる事が出来るだけのカリスマと実績があった訳だが…。
しかし、『ルルーシュ皇帝』を倒した『ゼロ』はその後、一切、言葉を発しない。
そして、国籍も持たず、敢えて持っている権限と云えば、騒乱が起きた地域での制圧隊の指揮権くらいのものだ。
つまり、世界の政治に対しての決定権はおろか、投票権、発言権さえ持たない状態となっている。
となると、それまで『黒の騎士団』の中で勝者となっていた者たちは権限と義務と責任を負う事となる訳だが…。
元々、『エリア11』…すなわち、現日本国の代表者となった者たちは一テロリスト集団を率いていた者達に過ぎない存在だ。
テロリストとしても『ゼロ』の助けなしに何も出来なかった彼ら…。
その時以上に力量を求められる国政を担う…否、世界への発言力の強くなった立場になった時…そのバランス感覚は足りていない…と云われても仕方ない状態だった。
それは、顕著に表れた。
首相の息子であったスザクの目から見ても…現在の日本の有り様には言葉がない。
『ゼロ・レクイエム』に置いての中心となった国の代表の中では日本の代表が最も力量に不安を覚えるところである。
中華連邦は確かに、天子である蒋麗華は幼かったし、それまでが大宦官たちの手によってほぼ、軟禁状態であり、経験も知識も不足していたが、彼女を支え続けた星刻たちが全力で支えて行くうちに彼女はそれを吸収していった。
ブリタニアはナナリーが代表となったが、常にルルーシュの『ギアス』の影響下にあったシュナイゼルが『ゼロ』の命令により、全力でナナリーを支え、ナナリー自身、あの『エリア11』の総督であった頃の経験を無駄にはしていなかった。
日本は…せめて暫定期間の間だけでも皇神楽耶がその権力を預かっていればあるいは…と云う事もあったかもしれないが、日本の経済はブリタニアから解放されてからの方が大変であった。
それ故に、神楽耶が経済面でも執政面でも…と云うには彼女の周囲には人材が少なすぎた。
それに、彼女自身、『ゼロ』を支える立場であったからこそ、その力を発揮する事が出来た。
扇たちでは彼女が陰から支えると云う形での執政はとても出来なかった。
あれから相応の時間が経っている今となっては…扇たちへの評価は日本国内がい通して『所詮は『ゼロ』がいなければ何も出来なかったテロリストのなりそこない』と云う評価が一般的となっていた。
扇たちがその辺りをどう、見ているか…そして、どのように考え、扱っているかを日本国民達はずっと見ていた。
蓬莱島に逃れた100万人の日本人と、日本列島に残ったその100倍近くいる日本人との間の確執も当然、生まれている。
そこまで考えて扇たちは『ゼロ』を…『ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア』を否定したのか…そう考えた時、力なく首を横に振ってしまいたくなるのは至極当然の話しである。
世界が『民主主義』を望んだ結果、ついて来たのは『言論の自由』…。
あの『ゼロ・レクイエム』の話題はあの時から20年経ってもジャーナリストにとっては興味深い話題であり…次々に『超合衆国』『黒の騎士団』の裏側が暴露されて行っているのだ…。
中には…
―――僕の知らなかった…事実まで…

 執政者にとって不都合な暴露は…独裁統治であれば隠し通す事も出来た。
否、現在ではインターネットなどで簡単に暴露されて隠し通す事は難しくなってきてはいるが…。
しかし、インターネットだと発信者が特定出来るが故に、暴露した人間を厳罰に処する事は出来る。
確かに、国家機密を『言論の自由』を盾に取って世界中にばらまく事は『言論の自由』の反中ではなく『売国行為』となるが、執政者個人の暴露話しは国家機密でも何でもない。
逆に云えば、執政者の過去の話しを国家機密にしている国は既に『民主主義国家』ではない。
その現実を踏まえた上で…『黒の騎士団』における1度目の『ゼロ』の死亡発表…そして、『ゼロ・レクイエム』の時に現れた『ゼロ』の存在…。
それらの裏話しがちらほらと暴露され始めて…スザクは驚きを隠せなかった。
ルルーシュはあの時、斑鳩から脱出した時の話しを一切しなかった。
その時、ルルーシュの見張り役として存在したロロの話しも出ては来なかったが…何となくあの時、彼はルルーシュを守って死んだのだろう…そんな事を思った。
勿論、何か根拠となる何かがある訳ではなく、否、ルルーシュの記憶が戻ったであろう時期からロロが変化していった事はスザクにも解った。
そして、あの時、上官であったスザクに対してあからさまな反抗の色を見せ始めていた事も…。
それを考えた時…ルルーシュにしてみれば、コマの一つとして利用するつもりであったのだろうが…。
最終的には命を懸ける程、ロロはルルーシュに傾倒したのだと思われる。
その結果…ルルーシュは絶体絶命の危機から命を救い出されたのだろう…。
流石にその辺りの話しは出回ってはいないが、『黒の騎士団』の日本人幹部があの時、シュナイゼルと秘密裏に会談を行っていた事、そして、その後、『ゼロ』に銃口を向けたらしい…と云う話しが出回り始めたのは10年ほど前の話しだ。
それから…その話しは徐々に話しが大きくなりつつ、インターネット上ではかなりデフォルトされている部分もあるが、広まって行った…。
テレビやラジオ、新聞に情報統制は出来てもインターネットまではどんな独裁国家であっても情報の隠匿はし切れるものではなかった。
確かに中にはデフォルトが大き過ぎる情報もあるが、中にはほぼ真実に近い話しも出て来ている。
スザクはその情報の真偽を確かめる為にわざわざ内密にシュナイゼルと会ったくらいだ。
勿論、『ゼロ』として…だが…。
『ギアス』の力のお陰でシュナイゼルはその辺りの話しを全て事細かに話してくれた。
そして…スザクは愕然とした。
そんな事実があって、もし、決定的な証拠でも出てきたら日本国内はおろか、世界中が大混乱に陥るだろう。
元々の『ゼロ』の正体がブリタニアの皇子である『ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア』であり、その当時、17歳から18歳にかけての学生であった事…。
そこまでの奇跡を作り上げた『ゼロ』をいとも簡単に切り捨てた事。
現在、日本の政治を動かしている扇要が当時、敵将であったヴィレッタ=ヌゥの進言によって『ゼロ』を裏切り、『ゼロ』をシュナイゼルに売る見返りに日本を返して貰うと云う条件を出した事…。
様々な混乱の卵を抱えている話しだった。
それが…今、ちらほらと出回り始め…時々確認するインターネット上の情報の中には本当に真実に近い情報を掲載しているウェブサイトまで現れている。
恐らく、この情報は…『黒の騎士団』で陰から様々な情報操作をしていたディートハルト=リートが何らかの形で残していたに違いない…。

 世界の首脳がなんとか話しを(表向きに)まとめたのは今から大体10年前…。
そして、『黒の騎士団』内部の暴露話しが出回り始めたのも大体10年前…。
その情報の真相を知る者は限られている。
シュナイゼルは元々、『黒の騎士団』と敵対勢力として存在していたのだから、云い訳のしようも、その場を切り抜けるだけの才覚もあったが…。
日本国政府代表団はその場で『ゼロ』に対して銃口を向けた立場だ。
スザクはその時の世界会議の場にいたが…。
仮面の下で驚愕を覚えるとともに、これから、自分が守らなくてはならないものの大きさに驚愕していた。
そして、あの時何故、スザクは『黒の騎士団』の内部を知ることが出来なかったのだろう…と…後悔の念も生まれていた。
知ろうと思えば知ることが出来た。
C.C.はあの時…ルルーシュの傍にいたのだから…。
少なくとも、スザクは自分の祖国を…『ゼロ』に銃口を向けた者達に委ねなくてはならなかった。
確かに『枢木スザク』は死んだ存在となってはいるものの、『スザク』個人はこうして生きている。
『枢木スザク』としての意思は…こうして生きている…。
何故…こんな事に…?
どうすれば…いい…?
そんな渦巻く思いの中で今、目の前に広がる夜の風景を見ている。
少し離れたところには…二つの陣営があると示す、灯かりが見えている。
片方はこの国の反乱分子を制圧する為の正規軍…。
もう片方は国に不満を持つレジスタンス達…。
睨み合いが続いている。
本来、こんな形で陣営を開くなど…正規軍とレジスタンスの間で行われる事は殆どない。
こうなると最早内戦である。
複雑な気持ちになる。
ルルーシュが望んだのは、こんな形で武力のぶつかり合いではなく、話し合いで物事を決める世界…。
かつて、スザクの主であったユーフェミアも、日本人の血を流さずに平和的に話しを進めたいと望んだ『行政特区日本』…。
―――あの時…ユフィが望んだ『行政特区日本』が成功していても…結局、同族同士の確執が生まれた事になるんだろうな…。日本列島に残った日本人と蓬莱島に逃れた日本人同士の確執が生まれたように…。
そんな事を思いながら…踵を返し、今夜の寝床に向かおうと歩を進めようとした時…。
「今になって気付く事が多い…と云う感じだな…。お前が首相の息子だったが、あの時、日本がブリタニアに敗れ、お前が政治家にならずに済んだ事を少しは感謝すべきか…?お前にとっては…」
この声は…。
そして、『ゼロ』の仮面を被っている彼に対してこのような話題を振って話しかけて来るのはたった一人しかいない…。
周囲に誰がいるか解ったものではないから『ゼロ』は黙ったまま歩を進める。
「安心しろ…。いつも云っているだろう?私だってそのくらいの事は弁えている…」
「……」
「ただ、ここで長話しをするのは無理だな…。今夜、お前の寝床を半分借りるぞ…」
初めて会って以来、その姿を変えない、その女は、外見は若いが現在のスザクの10倍以上は生きている。
仮面の下で小さくため息を吐いた後…すっと歩き出す。
そして、その女も彼の後について行く。
この世界で彼にこうした態度を許されるのは彼女しかいない。
そして、彼にとってそれは、複雑な思いを抱きつつも…束の間、『ゼロ』の仮面を完全に脱ぐ事のできる空間でもあった。
彼女がどこまで、その部分を承知しているかは…解らないが…。

 やがて、その場所に辿り着く。
パタンと…今どき珍しい手動の扉を開き、そして閉める。
その後、そこから続く暗い階段を下りて、この建物の外観からは想像持つつかない様なハイテクのロックシステムを施された扉の前に立つ。
そこで、『ゼロ』は仮面の右目部分を開き、その後、手袋を外して指紋を当てる。
その後、入室者の人数をパネルで打ち込み扉を開いた。
ついて来た女は彼がその扉を開けたのを見届け、先に入り込み、そして、彼が後に続く。
中のモニターで再度、入り口で施したチェックを繰り返した。
ルルーシュが考えた『ゼロ』の秘密を守るためのシステムだ。
『ゼロ・レクイエム』の準備段階の時からロイド=アスプルンドとセシル=クルーミーの二人に命じて開発させていた。
その後のメンテナンスもスザクのいない間に彼らが続けている。
ここまで長く混乱状態が続き、『ゼロ』が最前線に立つと云う計算で作っていなかったものだから、その後、ロイドとセシルはこのロックシステムのメンテナンスと新システム開発に忙殺されている。
『ゼロ』の仮面をゆっくり脱ぐと…彼女がやっと少しだけ安心したような表情を見せた。
「久しぶりだな…。近頃はお前の居場所が見つけにくくてな…」
「仕方ないだろ…。ルルーシュの計算がここまで狂うとは思わなかったんだから…」
「元々アイツの計算など、アテにはならんと思っていたがな…。私のこれまでの経験上…」
皮肉なのか、心からの同情なのか…よく解らない表情でそう、云い放つ。
確かに…彼女がこれまで見てきた世界の中で…こうした繰り返しがあったのだろう…とスザクは思う。
「辛ければこんな世界、放り出してしまえばいい…。私の知る限り、これまでの世界は争いの後、束の間の平和が訪れ、すぐに争いが始まる…。その繰り返しだ。そして、お前の様な存在が大きいか小さいかの違いはあったものの、必ずいたよ…。世界で認められるような英雄はいなかったがな…」
「僕も…時間の許す限り、歴史は勉強してきた。そして、争いの繰り返しもその度に英雄が作り出されていた事も知った。でも、ルルーシュは…」
「あのボウヤはどうも、自分以外を性善説で考え過ぎだ…。『話し合い』で決められる世界が本当に出来るのなら既にそうなっている…。しかし、それが出来ないのは人間が人間たる所以だと私は思っている…」
彼女の…真をついている。
そう思えるのは…この20年間…違和感を覚えつつも、それぞれがそれぞれに譲れない何かを抱えている事を知った。
現在、この国で反旗を翻しているレジスタンス達だって絶対に譲れない部分を政府に押さえ付けられている事に耐えかねての蜂起だろう…。
「確かに…ね…。彼らだって…自分の譲れない部分があったから…ブリタニアに対して蜂起した筈…なのに…。今は、あの時、『イレヴン』を動物扱いしていたブリタニアのやっていた事と同じだ…」
「動物?奴隷ではなく?」
「奴隷はまだ人間だろ?あの時のブリタニアは植民エリアの人間を家畜扱いしていた…。家畜は…人間として扱われないだろう?」
「随分過激な事を云う様になったな…」
「こんな…血みどろの自分の国を見ていると…ね…。正直、しんどいよ…」
「確かに…気持ちは解らんでもないな…。ナナリーもかなり手を焼いている様だし…」
その言葉に二人は黙り込んでしまう。
下を向いてしまったスザクを見て…彼女は切なげに目を細めた。
「まぁいい…。とりあえず、お前を探していて疲れたから…寝床を借りる…」
そう云って彼女は立ち上がり、その部屋の奥にある扉を開いた。
「C.C.…暫く…。否、いい…」
スザクは彼女にそう云いかけて、その言葉の先を飲み込んだ。
そんなスザクを見てC.C.は一言置いて、扉を閉めた。
「お前を探すのに疲れたからな…。2、3日、寝床を借りるぞ…」
その一言に…スザクは下を向いたまま…その肩を震わせた…。

To Be Continued
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posted by 和泉綾 at 19:12| Comment(0) | TrackBack(0) | It's Destiny