2011年02月26日

皇子とレジスタンス 〜The promise ahead〜

 ルルーシュが半ば混乱状態に陥ったラティス王からマリアンヌ暗殺の真実の一部を知った、その頃…。
アヴァロンの中ではシュナイゼルがラティスへと急がせていた。
シュナイゼルの付けたSPの一人が緊急信号を送ってきたからだ。
詳しい事は解らないが、恐らく、シュナイゼルとしてもかなり先行きを見越しての策ではあったのだが…。
戦争とは生き物だ。
武器を取って戦う事だけが戦争ではない。
その武器を取る前にも様々な形で変化していき…。
シュナイゼルとしても計算外の事が起きたと…その可能性を考えている。
「どうされました?殿下…」
「否、先ほどの緊急信号…タイミング的にはまだ、ルルーシュと会談をしている時間帯だと云うのに…」
そう、会談中に争いがある事を考えていなかった訳ではないが、あのルルーシュがそう、短絡的にそう云った状況に陥らせる事は考えにくい。
元々、自分の目で血を見る事を嫌うのを知っている。
だからこそ、相手に卑怯者呼ばわりされても血を流さない方法を模索し、力と力のぶつかり合いを避ける策を取る。
「確かに…ルルーシュ殿下は…母君の暗殺の影響で、人が血を流すところを見るのを極端に嫌いますね…。尋問をするにしても肉体的な苦痛を与えると云う事はまずされない…」
「まぁ、そう云った尋問をする者が少ない分、そう云った訓練を受けている者が少ないからね…。効果は絶大だ…。ルルーシュが何故その様な方法を取るかを知られた時には厄介なのだけれどね…」
「まさか…『ルイ家』からルルーシュ殿下のその特性を知らされているのでは?」
「『ルイ家』はルルーシュにその様な精神的後遺症がある事を知らない。私の軍の中でも知っているのは殆どいないだろう…。そもそも、ルルーシュがそんな自分の弱点になり得る事を自分から誰かに話すと云う事は考えにくいからね…」
会話の中で様々な可能性が浮かび上がってくる。
嫌な予感が過って行くものだから、普段なら決して慌てると云う心理にはならないシュナイゼルもやや、焦りを見せている。
それでも、上に立つ者としてはここで焦りを周囲に見せる事は命取りになる事をしているから極力それを隠している。
「後は…枢木卿が…どこまでルルーシュ殿下の盾になれるか…ですね…」
「彼が私の云った事をきちんと理解していれば…いいのだけれど…。本当に稀有な星の下に生まれたものだ…。余りに皮肉で笑ってしまうよ…」
「殿下…」
シュナイゼルが本当に皮肉そうに笑うのを見ながら、カノンは言葉を出せなくなった。
確かに…シュナイゼルが認める程の実力を持つルルーシュ…。
ただ、彼が望んでそんな能力を持ち合わせて生まれてきた訳ではない。
まして、彼の性格を考えた時…余りに戦いに赴くには優し過ぎるし、気持ちも幼すぎる。
それでも、大人達は彼の実力を知り、彼を利用している状態だ。
「それでも…ルルーシュが皇帝となれば、前線に立つ事もなくなる…。宰相では必要に応じて前線に赴かなくてはならないからね…。ルルーシュ自身、それに気付いているのかどうか…」
シュナイゼルはそう云って再度、ため息を吐いた。

 そんなシュナイゼルを見ていて、カノンも一度、小さくため息を吐いた。
「殿下は…ルルーシュ殿下をどうされたいのです?」
これは、カノン=マルディーニ個人としての正直な疑問だった。
シュナイゼルはこれまで、誰の目から見ても将来、立派な皇帝になると思われていた。
今も恐らくはそうだろう。
決して感情に押し流される事無く、その学んできた帝王学をしっかりと身に付けている。
しかし…。
側近であるからこそ、解る事なのかもしれないが…。
ルルーシュへのここまでの執着は…。
確かにルルーシュはシュナイゼルのお気に入りであると云う事は周知の事実であり、ルルーシュ自身、その肩書を利用していた部分も否めない。
ルルーシュ自身にその自覚があったかどうかは知らないが、ルルーシュと対峙する者にとって『神聖ブリタニア帝国宰相、シュナイゼル=エル=ブリタニアのお気に入り』と云うその肩書は脅威であったであろう。
「どうしたい…とは?」
シュナイゼルが惚けた様に訊き返して来た。
この訊き方は確実にカノンの主旨を解っての事だろう。
「解っていらっしゃるのに…云わせたいのですか?」
「ふっ…カノンには敵わないね…。何故あの子は…異母弟だったの…だろうね…。これが禁忌であると云う事は…解っているのだけれどね…。それが叶わぬと云うのなら…せめて…間近であの子の笑顔だけでも…と望んでしまうのは…確かに私の我儘だ…」
シュナイゼルのその言葉は…。
恐らくルルーシュを失った時にはシュナイゼル自身も崩壊してしまうと云っている様に聞こえる。
その理性の強さは…寧ろ痛々しくさえ見える。
それでも…その言葉は…シュナイゼルはきちんと感情を持った人間であると示している。
それは…ほっとするべきところなのかもしれない。
「そうでしたか…。不躾な事をお訊きして申し訳ありません…」
「否…。君が私を皇帝に…と思っていた事は知っていたからね…。こんな形で君を裏切る形となってしまった…。せめてもの…詫びだよ…カノン…」
シュナイゼルが小さく笑った。
こうして笑みを顔に張り付けていても、今のこの状況の中で…気が気ではない筈だ。
恐らく、シュナイゼルはスザクがシュナイゼルと同じ感情をルルーシュに対して抱いていると判断して…あの様な形でスザクに言葉を告げたのだろう。
スザクにその自覚があるにしろ、ないにしろ、スザクの中にそう云った感情があるのであれば、無意識にでもルルーシュを守ろうとする。
騎士としてではなく…自分の気持ちで…。
そう云った忠誠は、何よりも強い事を知っているから…。
自分もその気持ちを抱いていて、自覚もしているのに、今は、ルルーシュの傍らにいる事が出来ない事に歯噛みしてしまう。
先ほどの『何故あの子は…異母弟だったの…だろうね…』と云う言葉の中にはその事も含まれているのかもしれない。
―――今のところ、全面的に君に頼らなくてはならない事が歯がゆくて仕方ないけれどね…。もし、ルルーシュにかすり傷一つでも負わせたら私の全てをかけて君を潰そう…枢木スザク…。

 完全に包囲されている状況の中…。
スザクがルルーシュの望む『自らの手でラティス王を捕らえる』為の道を開く為の画策をする。
流石に王の周囲の警護が一番堅い。
シュナイゼルの付けたSP達も今のところ、自分に割り当てられた兵たちの相手に精一杯だ。
流石にシュナイゼルの選んだ精鋭だけあって、優秀だ。
王の周囲を警護する者達は選りすぐられた精鋭たちの筈だ。
それでも、その精鋭たちを複数相手にほぼ対等に戦っている。
こうした場面の場合、数の問題ではなく、質の問題だと良く解る。
ラティス王がルルーシュを前にして怯んだ顔を見せた時点でその場の者達には動揺が広がる。
トップの動揺はあらゆる場面において致命傷になり得る程の要因となる。
「王の周囲には5人…そして、あの中で冷静だったあの大臣がついている…。あの大臣も見た限りではそれなりの手錬れと見た…」
「解るのか?」
「一応、俺も武道を習ってたんでね…。まぁ、半分は勘だけどな…。それでも、自分にとって不利な勘の方が遥かに役にたつぞ…こう云う場面では…」
「その前にあの5人もの兵は?」
「とりあえず、中央突破だな…。恐らく中央にいる奴が一番強い…。形としては偃(えん)月(げつ)の陣の形だな…」
「と云うか…この場面で背水の陣か…。どう考えてもおかしいな…」
ルルーシュとスザクがその相手を観察しながら会話している。
どう考えてもルルーシュを守る塀の方が少ないのだから、こうした形となった時、相手の頭を潰すのが手っ取り早い…と云う事だ。
正直、ルルーシュにしてみれば血みどろの戦いにしたくはないと云う気持ちは強いのだが…それは平常心でいる時の話しだ…。
今は…マリアンヌ暗殺の事が頭を支配している状態…。
「スザク…まずはあの大臣を討て…。恐らくあの男が司令塔だ…」
「そんな事をしたら…」
「私は大丈夫だ。非力な者には非力な者なりの身の守り方はある…。偃(えん)月(げつ)の陣であると云う事は背後を取ればいいと云う事だ…」
「お前…一体何を考えている…」
「何も…」
聞いている限りかなりきわどい会話である事は解るが…。
ただ、その会話の中で、ルルーシュがこれまで、どんなふうに生きて来たのか…垣間見る事が出来る。
そして、それは…生きなければならないと云う思いの中…ずっと、そんな過酷な環境の中、ルルーシュを生かし続けてきたものであったのだろう。
「時間がない…。私が合図したら…スザクはあの大臣に向かって突っ込め…」
その会話は恐らく目の前のルルーシュのターゲットにも聞こえている。
こんな形で聞かれていると云うのに平然としているルルーシュを見て、逆に大人達は心理的に迷いが生じる。
スザクがルルーシュの騎士となって、飛躍的にその結果を残している事は彼らの耳にも多少なりと入っているだろう。
それ故に…迷いが生じる。
―――本当に…この言葉の通りに動くのか…。それとも何か裏があるのか…。
と…。
『黒の死神』と呼ばれる子供に対してそのくらいの警戒は必ず持つものだ。
それがルルーシュの狙いでもある。

 衛兵と大臣に囲まれている王が…本当に小さく見える。
スザクの中でそんな事を思う。
戦いたくない癖に、ここまでの軍略、戦略の才能を持って生まれてきたルルーシュ…。
その才能ゆえに傷つき続けてきた事が…ここにいるたった数時間で多少なりとも解った気がした。
ただ…守るために…己の心を削り続けてきた事だけは確かだと…そう思った。
「お前たち!さっさとあの皇子と騎士を捕らえろ!それで全ては終わる!」
恐怖に耐えきれなくなったのか、ラティス王が叫んだ。
これが…器の差…と云うのかもしれないと思った一言だった。
ラティス王がどう云う形でマリアンヌ皇妃暗殺に関わっていたかは解らないが…。
いずれにしても、この状況の中ではいくら王を守る衛兵がいたとしても士気が落ちて行く一方だ。
こうした命のやり取りをする場合、確かに数も大切だが、なにより、一人一人の心持ちで結果が180°変わって来る。
その一言で更にこの場の空気が変わって行く。
「スザク…行くぞ…」
ルルーシュが低い声でスザクに命じた。
ルルーシュの目を見てスザクがこくりと頷く…。
そして、スザクはルルーシュの言葉通り、大臣に向かって走り込んだ。
ルルーシュがエリア11の総督に就任する前…どれだけブリタニア軍に追い詰められてもその身体能力でその命を守り続けてきたスザクの動きに…。
王を守る衛兵たちも刹那の時間、動きが遅れた。
こうした戦いの時…その刹那の時間が勝敗の分かれ目を作ることもしばしばだ。
そう思った時、ルルーシュがふっと笑った。
ルルーシュの傍らからスザクが離れた事で、王を守る大臣以外の衛兵たちが指示を待つ。
そう、兵たちは指揮官がいなければ動けない。
軍人は上からの命令がなければ動けないようになっている。
それに気づいた時には衛兵たちの指揮を執る筈の大臣はスザクと剣を交えていた。
そして、ルルーシュがゆっくりと王の許まで歩いて行く。
キングが動けなくなり、自身で動けないボーンなど、恐れる必要はない。
ルルーシュ自身、周囲をしっかり観察していた。
そう、ルルーシュ達を取り囲んでいたラティスの衛兵たちが…シュナイゼルの付けたSPによって8割程が倒れている。
シュナイゼルの付けたSPの数は10人…。
とすると、ルルーシュが彼らに『一人3人』と命じた中で、8割が倒れているとなれば、残っているのは6人だ…。
既に、ルルーシュの周囲を取り囲んでいた者達との勝負はついている。
SP達も疲労しているが、それでも、ルルーシュの援護射撃や前に出て行く事くらいは出来る。
SPの中でリタイヤした者は一人もいない。
そう云った状況を作り上げ…ルルーシュは王に近付いて行く。
ゆっくりと…
ルルーシュのその表情に…王を守る衛兵たちも顔を引き攣らせている。
しかし、王への忠誠もあり…その場を動く事も出来ず…。
ひたすらにその、『黒の死神』と呼ばれるルルーシュの放つそのオーラに耐えている。
その気迫は…本当に年端もいかない子供と思えない程の…。
否、純粋に怒りを感じる子供だからこそ、発する事が出来るのだろうか…。

 ルルーシュの口にした『非力な者』と云う言葉…。
確かに腕力はないかもしれないが…こうした形で内なる力を見せつけられるような状況の中で、敵であれば思うだろう…。
『どこが非力だ!まるで、何か魔の力を得たWitchだ…』
と…。
そして、あと、5歩で彼らの懐に入る距離まで来た時に…耐えきれなくなった衛兵たちがその場を逃げ出した。
しかし、その逃げ出した者達も既に戦いを終えていたSPたちの手によって捕らえられていく。
そして、ルルーシュと王が1対1で対峙する。
「王よ…私と一緒にブリタニアに来て頂こうか…。出来る事なら、私としてはこのラティスを再び火の海にはしたくない…」
ルルーシュが静かにそう、伝える。
しかし、一国の王が、こんな取り乱した状態でブリタニアに連行されると云うのは国の破滅を招く。
最後まで何とか、冷静さを保ち続けたスザクと戦っているラティスの大臣が力いっぱいスザクの剣を振り払い、王の前に立ちはだかった。
「そうはさせん!」
その目は…全く死んでいない。
ルルーシュが冷静に判断する。
「では…貴国は我が国と戦争でもなさるおつもりか?私の母、マリアンヌは出自がどうあれ、殺された当時、皇帝の后であり、皇族です。その皇族の暗殺事件に関わっていたとなれば、我が国としてはそれを放置しておく事は出来ませんが…」
「その様な事…証拠もないのに何を云う!そちらの方が我が国に対する侮辱だ!」
「王がその様に私に教えて下さったのですが?」
「あれは王が取り乱した時の言葉…。正式な言葉として受け止める貴殿の器量を疑うが…」
苦しい云い訳にしか聞こえない大臣の言葉…。
そこにスザクが大臣に向かって剣を振り上げるが…。
大臣が渾身の力を込めてその剣を振り払い、スザクの手から剣が放れる。
それを見て、大臣が一瞬の隙を見つけたのか…王を庇いながら、隠し通路の扉を開いて…中に入って行く。
その扉はすぐに閉まり、その後、開かなくなる。
流石に王宮内でこんな乱闘騒ぎがあっては簡単には捕まえる事が出来ないのは当然だろう…。
「くそっ!」
スザクがその隠し扉の場所を拳で力いっぱい叩くが…びくともしない。
そんなスザクの背後で…
「殿下!」
シュナイゼルのSP達がルルーシュの方へと駆けよって行くのが解り、振り返ると…
「ルルーシュ!」
その場に倒れた…。
スザクが青ざめながらルルーシュの許へ駆け寄って行くと…とりあえず、怪我をしていない事は解る。
余程の緊張状態だったのだろう。
そして、あれほどのショックを受けては確かに…仕方ないのかもしれない。
王宮内が騒がしくなっている。
やがて…王宮の広い庭から…大きな戦艦の音が聞こえてきた。
そして、その音に反応した一人が庭を見てすぐに戻ってきた。
「枢木卿…アヴァロンが到着した模様です…。あれは、シュナイゼル殿下の…」
「そうですか…。まずはアヴァロンの医務室へ殿下を運びます。誘導をお願いします。王宮内は混乱状態ですので…」
スザクが彼らに命じて、ルルーシュの身体を抱き上げる。
「お前…いい加減、一人で無理するのを…やめろよ…」
気を失っているルルーシュの顔を見つめながら…そんな事を呟いた。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 13:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 皇子とレジスタンス

2011年02月25日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 14

アーニャの王子さま 1



※設定:アニャ×ルルのパラレルです。
CP以外の設定を頂いていないので和泉綾の方で勝手に設定を作らせて頂きました。
『コード』『ギアス』は出て来ません。
マリアンヌが亡くなった時、ルルーシュは史上最年少且つ初の皇族からのナイトオブラウンズとなります。
ルルーシュがラウンズとなった後、アーニャ、スザクの順にラウンズの仲間入りをしてきますが…

このリクエストはacusclyneさまからのリクエストです。
この作品に年齢制限はありません。
リクエスト有難う御座居ました。

 7年前…神聖ブリタニア帝国にて、皇妃の一人が暗殺された。
完全に王宮内での事件だったが、様々な思惑の中、その皇妃の暗殺事件はテロリストの仕業であると云う、どう考えてもあり得ない発表が成された。
元々、その皇妃は庶民の出であり、本来、王宮に入る事さえ許されないと思っている者も多かった王宮の中で…。
皇帝の子供を二人も生んでいる程、皇帝の覚えもめでたく、寵愛されていた。
恐らくは、そんな皇妃を妬み、逆恨みしていた王宮に住まう誰かの仕業…。
そう、誰もが考えたが、権力が全てを決めるブリタニアの中でも、王宮内では更に身分と権力が物事を決めて行く。
身分と権力のある者が『白』と云えば『白』になるし、『黒』と云えば『黒』となる。
それがブリタニアでの当たり前だった。
母を失った皇子と皇女に残された道は…。
そのまま権力争いの中での道具に使われるか、自分で身を立てるか…。
二つに一つしかなかった。
どちらも過酷な、険しい道である事は確かであるのだが…。
前者の場合と後者の場合、その過酷な険しい道の種類が微妙に違ってくる。
権力争いの道具となった場合、自分が従うと決めた人間に切り捨てられ、最悪殺される。
自分で身を立てるとなった場合、自分と同じ立場の人間から蹴落とされる中で、成功者のみが生き残れる。
どっちみち、ろくな事にはならないと云う事はあるが…。
その殺された皇妃の皇子であったルルーシュ=ヴィ=ブリタニアは後者を選んだ。
ごくわずかな差ではあるのだが、自分で自分の身を守る術がある方を選んだのだ。
そこで自分が勝者になれば、たった一人残された自分と同腹の妹姫を安全で安心できる場所に置いておく事が出来るからだ。
ただし、失敗は許されない。
前者と後者、ほんのわずかの差だったが、ルルーシュは後者を選んだ。
恐らくそれは…自分自身に守るべきものがあると云うその思いからだったのだろう。
彼一人であったなら、その様な選択をせず、また、前者を選択する事もなく、流れのまま誰かにその道を整えられ、やがて死んでいく事になる運命となったに違いない。
ルルーシュの母であるマリアンヌは元々庶民であり、軍人であった。
その働きは誰もが目を奪われるほどの素晴らしい働きで、その働きはやがて、皇帝の目に止まり、寵愛を受ける事となった。
ルルーシュもその皇妃の血を受け継いでいたのか…そう云った立場に追いやられた時…その能力を十二分に発揮した。
マリアンヌ皇妃が殺されたのはルルーシュが9歳の時…。
その時、幼いながらルルーシュは父である皇帝を守る専属部隊であるロイヤルガードの入隊を希望した。
最初は誰もが驚いたが、その手腕はその知略によって発揮され、瞬く間に出世した。
そして、ルルーシュがロイヤルガードに入隊して2年半たった時…ルルーシュはたった12歳で…史上最年少のナイトオブラウンズに任命された。
その時に与えられたのは『ナイトオブゼロ』の称号…。
それまでにはなかったラウンズの地位であった。

 ルルーシュがナイトオブラウンズに任命されて3年後…。
ルルーシュがナイトオブラウンズに任命された都市と同じ歳の少女がナイトオブラウンズに任命された。
彼女の名前はアーニャ=アールストレイム…。
余り身分の高いとは云えない貴族の娘だった。
アールストレイム家と云う名前はルルーシュもかなり、貴族の事情を把握していたが、そのルルーシュでさえ、その名前を思い出すのに少々時間をかけた様な…その程度の貴族だった。
「僕は、『ナイトオブゼロ』のルルーシュ≂ランペルージだ…」
その少女がナイトオブワンであるビスマルク=ヴァルトシュタインに連れられてルルーシュのところに挨拶に来たのだが…。
先任であるルルーシュがそう挨拶しても彼女はなんだかおどおどしていると云う感じでもなく、無視していると云う感じでもないのだが…。
中々言葉を口にしなかった。
「殿下…申し訳御座居ません…。この者はまだ…」
「ヴァルトシュタイン卿…僕に対して『殿下』と呼ぶのはこうしたオフィシャルな場では勿論、プライベートでもやめて頂きたいとお願いした筈ですが…。ラウンズの皆さんは僕の出自を御存じですが…今の僕は…皇帝陛下を守るべき騎士である、ナイトオブラウンズなのですから…」
ルルーシュとビスマルクのやり取りに…アーニャがやっと少しだけ表情を変えた。
「でんか…?」
それが、ルルーシュが初めて聞いた彼女の言葉だった。
正直、やり難いと思ってしまうが…。
ただ、ルルーシュ同様、子供と云える様な年齢でのラウンズの就任…。
きっと、実力はとても高いのだろうと判断する。
「君は…知っておいた方がいいだろう…。彼は、本当は神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下だ…。しかし、様々な事情で現在はその事は皇帝陛下とナイトオブラウンズ、『ヴィ家』の後見をしていたアッシュフォード家、そして皇族の一部の方々以外には伏せられている…」
淡々と説明をしているビスマルクだったが…。
ルルーシュとしては既に自分が皇子であると云うのはこうした話しの時くらいにしか思い出さないようになっている。
そんな事を意識されてもこの先、自分の任務遂行の上で邪魔になるだけだからだ。
「別に…それを気にする必要はない。アールストレイム卿…今日から同じナイトオブラウンズとしてよろしく…」
ルルーシュが作っていると解る完璧な笑みを浮かべながらアーニャにそう告げる。
すると、それまで殆ど言葉を発して来なかったアーニャが口を開いた。
「よろ…しく…」
元々、他人との意思疎通があまり得意ではないのだろう…。
尤も、ナイトオブラウンズに任命される様な能力を持っている人間はどこ関わっている事が多い。
そのアーニャの言葉に…ビスマルクが少しだけ、驚いた顔をする。
他のラウンズ達への紹介は済んでいる。
ルルーシュへの挨拶が最後だった。
ここに来るまで、アーニャは口を開かなかったのだ。
確かに、遥かに年上のラウンズ達に挨拶する事は…難しかったのかもしれないが…。
一番年の近いルルーシュに対しては…何か他のラウンズ達とは違って見えたのかもしれない。

 その後…年が近い所為か…任務でもプライベートでも二人が一緒に行動を共にする事が多くなっていた。
と云うか、アーニャとのコミュニケーションが他のラウンズ達には中々難しかったようだ。
ルルーシュに対しては初めて会った時から、なんだか雰囲気が違っていたし、その後も、アーニャがルルーシュに対しては懐いたようだ。
その後、暫くしてジノ=ヴァインベルグと云う、貴族の息子がラウンズの仲間入りした。
ジノはルルーシュより一つ年下で同年代だった為、他のラウンズ達よりもアーニャとコミュニケーションを取れたようだが…ルルーシュほどではなかった。
そんな様子を見ていて…ある時、ジノはアーニャに訊ねた。
「アーニャ…。なんでアーニャはルルーシュと私とでそんなに態度が違うんだ?」
それは休憩室での世間話の中で持ち上がった話題であった。
相変わらず、ルルーシュの言葉に対してはきちんと返事するし、作戦指揮の担当であるルルーシュの命令はちゃんと聞く。
他の指揮官の場合、時々、独断先行してしまい、結果的に成功になっても、命令に従わなかったとして注意を受けることもしばしばだ。
ナイトオブラウンズとは皇帝以外の命令を受けないし、糾弾を受ける事もない。
だから、アーニャが指揮官として出動する事がないため、他のラウンズが同行しない任務の場合、その部隊の指揮官は非常に困っている様子だった。
しかし、ルルーシュが彼女を指揮する立場に立った時には決してルルーシュの命令を逆らうような真似はしない。
そして、何かにつけ、ルルーシュにべったりだ。
ルルーシュも、妹のナナリーの年頃のアーニャに対して、妹に接する様な気持ちで接していたから、このコンビはずっと…何か、見えない何かで繋がっている様に…。
彼らよりも大人のラウンズ達の目には見えていた。
当然、好意的に見る者もいれば、極端に年若い彼らに対して云い感情を持たない者もいる。
意識的に関わらない様にしている者もいるが…。
それは、ナイトオブラウンズの中ではあまり珍しくない事で…。
12人もいるそんな実力者たち…。
それだけの能力がある者達の集団だから、それぞれに強い意志があるし、結構癖の強い者もいる。
だから、気が合った者がいれば一緒にいる事があるとしても、そうでなければ皇帝の命令がない限り自己主義的に動く者が多いのだ。
「ルルーシュ…アーニャの『王子さま』だから…。だから、アーニャがルルーシュ…守る…」
特に表情を変える事もなく、ジノにそんな返事をした。
アーニャは良く、携帯電話のカメラ機能で写メを撮っているところをよく見かけるが、あの写メのデータの多くはルルーシュの写メだと…ジノは思っている。
彼女はブログも開いているらしく、そのブログを見せて貰ったが、ブログに使用している画像の中にルルーシュの画像は一枚もない。
余程、彼女の中ではルルーシュを一人占めしたいのだろうと…ジノは思っていた。
ルルーシュの方はどう思っているかは判断し兼ねていたが…。
それでも、ルルーシュを観察している限り、気に入らない相手を任務の時以外に傍に置いておくとも思えなかったから…。
―――意外と…心地いいのかもしれないな…

 そんな風に思っていたある日…。
「本日、ナイトオブセブンを任命された、枢木スザクであります…」
そう、挨拶してきた外国人…否、無血開城でブリタニアに膝を折った日本から一人のナイトオブラウンズが入ってきた。
彼は日本国の首相である枢木ゲンブの一人息子だと云う…。
ブリタニアに対して刃を向けないと云う証に首相の息子が送り込まれてきたと云う事だ。
日本国では国民選挙によって国会議員が決められ、その議員の中で選ばれた者が首相となる議院内閣制を執っている。
それ故に枢木ゲンブが未来永劫日本国の首相であるという保証はない。
しかし、ブリタニアに送られて来る人物が彼であったのには理由があった。
日本には『キョウト六家』と云う古来から裏になり、表になり、日本国を動かして来た存在があった。
枢木家はその『キョウト六家』の一つで、血筋から云っても日本の天皇家に縁があると云う。
日本の天皇はブリタニアの皇帝と違って実権はないが、権威としては絶大なものがある。
日本の天皇とは、世界最古の皇帝であり、日本に根付いている神道の法王なので、法皇である。
そう云った権威を持つ事から、ブリタニア以外では日本の天皇に対して最高の礼を払って出迎えるのが常識である。
ブリタニアはそう云った事を完全に無視して居る体制をとっているし、弱肉強食の世界…。
ブリタニア皇帝とて、弱いと判断すれば下の者達から排除される立場にある。
だからこそ、国際的にどう云われようと、国内で、他国の法皇に対して礼を払うと云う事はあり得ない…。
そして、それ故にその『キョウト六家』の一員である枢木家の長男がブリタニアに送られてきたと云う事は国際的にも大きなニュースとなる。
流石に人質扱いすると云うのも、まずいと判断したのか…それとも、日本はブリタニアの参加にあると云う事を事実上示したのか…。
枢木スザクをナイトオブセブンに任命した。
確かに地位は与えられているものの…
―――実際にその地位の力を使う事は出来ないだろうな…。まるで、ロイヤルガードに入ったばかりの頃の僕と同じように…。そして、彼は僕の様にのし上がって行く事も僕より困難になるだろうな…。
ルルーシュはそんな事を考えていた。
ルルーシュにしてみれば、生まれて初めて…自分の身近に同じ歳の少年が現れたのだ。
自分でどこまで自覚しているかは解らないが…。
枢木スザクに対して興味を持つ。
ただ…これまでラウンズの中で生活をしていたから…どう、彼に接すればいいのか解らずにいた。
確かに、任務の時にはラウンズとして接するが…。
任務から離れた時にはどう接していいか解らず…彼が就任して1ヶ月は任務以外に話しをする事はなかった。
そして、ラウンズの中でも任務以外の話しをしているところを誰も見た事がない。
ルルーシュの近くにいるアーニャは勿論、ラウンズの中では誰とでも話せるジノでさえ、プライベートで話しかけてもスルーされると云う事で、いつの間にか構う事をやめていた。

 しかし、アーニャにとって、この日本人のナイトオブラウンズ就任が…今まで退屈ではあったけれど、確実に得られるルルーシュの隣を脅かす存在となった。
「ねぇ…ルルーシュ…」
不機嫌になりながらルルーシュにこう、声をかける事が増えた。
と云うのも、確かに彼の立場は色々とややこしいし、云っては何だが、様々な事態において、ルルーシュはその場に立った時の作戦を考える立場であったから…仕方ない部分もあるのだが…。
それでも、アーニャにとっては、自分から他の事に興味関心を持つルルーシュをこの時になって初めて見たのだ。
アーニャだっていつも、アーニャからルルーシュを構っている。
ルルーシュの方からアーニャに任務の事以外で話しかけてきた事などない。
それでも、アーニャにとってはそれで良かったのだ。
アーニャにとってルルーシュは『王子さま』でその『王子さま』がアーニャにだけは笑いかけてくれるし、話しかけて、頼みごとをすれば叶えてくれる。
それなのに…
―――ルルーシュは…アーニャの『王子さま』なのに…
枢木スザクがラウンズに入って来てからそう思う事が増えたのだ。
ルルーシュが任務とは関係なく、スザクを構っているから…。
それが、これから先の任務の為に必要だとルルーシュが思っている事も知っている。
でも、それだけじゃないと云うのが…アーニャには解った。
「ねぇ…」
滅多にアーニャの方から誰かに声をかける事などなかったが…。
ある日、休憩室で一人、コーヒーを飲んでいたスザクにアーニャが声をかけた。
「……」
スザクからの返事はない。
本当にいくらこちらから声をかけても判事をしないと云うのは本当だったらしい。
その辺りはアーニャも人の事は云えないのであまり気にしない。
と云うか、とりあえず、自分の云いたい事を云いたいと云う気持ちの方が強かった。
「ルルーシュは…アーニャの『王子さま』…。だから…ルルーシュはアーニャの…」
アーニャがそこまで云った時…スザクがスクッと立ち上がった。
やはり無視を決め込むらしい。
何故…そこまで…とも思うが…。
それでも、アーニャとしては自分の大切な『王子さま』がスザクに興味を抱いている事に不安もあったし、そんなスザクがラウンズに対して、ルルーシュに対してこんな態度で居続ける事がまず、許せなかった。
「待って…」
そう云ってスザクを追いかけてその手首をつかんだ。
「いい加減に…」
アーニャが続けようとした時…スザクがふっと笑った。
「君って…本当に可愛いね…。でも、俺に関わらない方がいいと思うけどね…。ブリタニア人にとって俺は人質だろ?人質に情けをかけていい訳ないし、俺にとっても迷惑だ…」
そう云ったスザクの瞳は…冷たく、凍っていた。
思わずアーニャが手を話して…その場に尻もちを吐いてしまった。
そこへ…
「アーニャ!」
ルルーシュが入ってきた。
「ほら…『王子さま』の登場だよ?じゃあ、俺はこれで失礼する…」
そう云いながら…不信感を露わにしているルルーシュとアーニャの前からスザクは離れて行った。

To Be Continued

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2011年02月23日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 13

コードギアス メガ萌えのルルーシュ Final



 さて、ナナリーの登場によって話しがどんどん膨らみ、ルルーシュ自身、その話しの展開の速さについて行けなくなっており…。
と云うか、こんな話題の時にナナリーが現れた時点でルルーシュの勝機などある筈もない。
いっそ、スザク、ミレイ、ナナリーと三つ巴にでもなって、潰し合いにでもなってくれれば…あるいは…と云う事にもなるが…。
この3人が我の張り合いをしたら永遠にその争いが続き兼ねない。
「ねぇ…ナナリー…。ナナリーにとってルルーシュって…どう云う存在なの?」
ちょっと興味を持ってしまったカレンがナナリーにそんな質問をぶつけた。
これが良かったのか、悪かったのか…。
ナナリーが目を輝かせて熱弁をふるい始めた。
「それはもう…天使様です!」
「え?女神さまじゃなくて…?」
ナナリーの一言に食いついたのがシャーリーだった。
確かに…学園内のルルーシュの存在はナナリーの云う『天使様』じゃなくて『女神さま』だろうが…。
「え、だって…お兄様…誰かに何かを命じて…と云うのは似合いませんもの…。誰かにさりげな〜〜〜〜くお願いされて、それに逆らえず馬車馬のように働いている方がお兄様らしいですし…。それにお兄様は…やっぱり、天使の羽が似合うと思うんです…。あのスケスケ衣装に天使の輪っかと羽…。素敵じゃありませんか…」
ナナリーの言葉に…思わずその姿を想像してしまう面々…。
本当に、懲りないと云うか…なんと云うか…。
「あ…あの…ナナリー?それじゃあ…さっきの黒ビキニに兎耳としっぽと大して変わらないんじゃ…」
リヴァルが恐る恐るツッコミを入れてみるのだけれど…。
ナナリーがそんなやわなツッコミで怯む訳がない。
「あら…ウサギさんでは『襲ってくれ!』って云っている様なものですが…天使様なら…人間ごときが触れていい存在ではありませんし…。ああ、その時の女神さまは勿論私と云う事で…」
可愛い顔をして云う事は結構きつい…。
そんな印象を持ってしまう。
まぁ、あのマリアンヌの娘だ。
そうそう大人しくしているとは思えない。
あの母親から生まれて来て、何故に本編ではあんなに大人しくしていたのか…未だに謎である。
想像ではあるが、ルルーシュの愛情を独り占めする為の『仮面』を被っていた…と予想されるが…。
一応、予想の範囲を抜け出せないのだけれど、まぁ、政界からはそれほど遠くはあるまい。
本編から抜け出してしまえば、そう云ったルルーシュの愛情を守るために必死な姿を見ていると中々健気にも見える…(?)
しかし、ルルーシュの目の前でこんな事をやって大丈夫なのだろうか???
「ナナリー…お前は本当に俺の事を思ってくれているんだな…。そうだな…ウサギコスプレよりも天使コスプレなら襲ってくる奴もいないな…」
え?
いいのか?それで…
思わず出てくる言葉はそれだろう。
ぶっちゃけ、ルルーシュはナナリーを綺麗なオブラートに包み過ぎだと…恐らく、この場面を見ている者たちならみんな、そう思うに違いない…。
―――ルルーシュが天使コスプレをした時点で女神さまになってルルーシュをこき使うのは確実にナナリーだ…。

 ナナリーの独演場とルルーシュのこの大ボケに最早ツッコミを入れられる奴が現れるのだろうか???
何せ、コードギアス本編ではまさかのラスボスで登場!
それでもルルーシュはナナリーの為に献身的に皇帝陛下を続けたのだ。
涙ぐましいと云うべきか…『ルルーシュ…どこまでマゾ属性何だ???』と訊くべきか…と云う状況の中、本編のルルーシュは頑張っていた…。
しかし…ここで(多分)ルルーシュの味方となれる(かもしれない)騎士が現れた…。
姓は枢木、名はスザク…。
本編では結局何をしたかったのか解らないまま話しが進んで行き、それこそ、ギャグとも云える様な悲壮(悲愴?)なキャラにされてしまい、天敵である皇神楽耶には『裏切りの騎士』などと云うニックネームを賜ったキャラクター…。
ここはスザルル設定の場…。
思いのたけを存分に語って貰う事にしよう…。
「ルルーシュ!そんな風に騙されちゃダメでしょ!だからシュナイゼル殿下がナナリーを利用している様に見えて、しっかりナナリーがシュナイゼル殿下の手綱をとっていたと云う奇妙な設定に気づかなかったんだよ!」
スザク…云っている事は結構正しいが…。
ナナリーの前でそれを云っちゃって大丈夫か???と云うセリフだ…。
おまけにナナリーがいると爪も牙も抜かれてしまっているルルーシュも一緒にいるのに…。
あの設定…ナナリー自身、シュナイゼルがまともにナナリーの意思を尊重して…などと、楽観的に考えていること自体結構不自然さを感じる。
と云うのも、ダモクレスでルルーシュと対峙した時にはナナリーは一応、ダモクレスと心中する気でいたのだから…。
ただ、ナナリーには『ギアスキャンセラー』がなかったもんだから、ルルーシュの『ギアス』にかかってしまい…最後の詰めが甘かった…。
ルルーシュがナナリーを殺す気がなかったのと同様に、ナナリーもルルーシュを殺す気がなかったと仮定した時、割と奇妙な説が生まれて来るのだ。
と云うのも、ナナリーがあの時、ダモクレスと心中すると云う形を取ったとしよう…。
ナナリーだってあの場にルルーシュが来る事は想定していた筈だ。
だからこそ、シャルルパパの『ギアス』を破ってまでダモクレスの鍵を探していたわけだ。
そして、シュナイゼルがルルーシュをおびき出す為のえさとしてナナリーを利用していた事も気付かなかったとしたらどうしようもないバカとしか言いようがない。
もし、あの場にルルーシュが来る事が出来た時点でシュナイゼルはルルーシュの『ギアス』にかかってしまっている可能性が高い事は簡単に想像できる。
元々ナナリーは『絶対遵守のギアス』がルルーシュにある事を知っていた訳なのだから…。
ナナリーは最後の判断を誤ったのだ。
ルルーシュはナナリーに対しては絶対に『ギアス』を使わないと確信していたと思われる。
それゆえの誤算…。
その誤算がその先の運命をすっかり変えてしまったと云える。
本当はナナリーがダモクレスを憎しみの象徴とした上で、その後、確実に世界の批難はダモクレス…すなわちそのトップとして名を連ねていたナナリーに向けられる事を計算して糾弾されて、ルルーシュにその後の世界を押し付けようと考えていたのだと想像が出来る。

 まぁ、そう云った想像からくるスザクのセリフだった訳だが…。
ナナリーは一切顔色を変えたりはしない。
「何を仰っているのです?スザクさん…。結局お兄様の自殺願望を抑え込めなかった方に云われたくありません!」
「俺は別に…自殺願望なんて…」
「お兄様!あれを自殺と云わずして何を自殺と云うんです!スザクさんは自殺幇助…。これが平時だった時にはスザクさんは犯罪者ですよ?いくらお兄様が望んでいたからと云ってもお兄様を刺し貫いたのはスザクさんですし…。あの時、スザクさんはお兄様の『生きろ』と云う『ギアス』を使われていましたから、お兄様の『ギアス』で操られていたと云う云い訳も通用しませんし…」
まぁ、ここまで来るとナナリーの方が正論を語っている。
ここまで来ると周囲の視線は…
―――さっすがルルーシュの妹…。口を開かせたら絶対に勝てねぇ…
と云う感じである。
おまけにルルーシュと違って口八丁を使わないもんだから云い返す余地がない。
こうなると、とりあえず、何でもいいから『ゴネる』と云う手法に出るしかない。
「ナナリー…それはルルーシュの僕に対する究極の愛なんだよ…。あの方法ではどの道、ルルーシュは世界から糾弾される事になる…。他の者の手にかかるくらいなら…僕の手で…って事で…」
「それを何とかするのが騎士のお仕事なんじゃないんですか!結局、スザクさんは誰の騎士になってもイマイチ頼りなかったって事ですけれど…」
結構グッサリ繰る言葉を吐いたナナリー…。
まぁ、確かにユーフェミアの騎士をやっていても、シャルルパパの騎士をやっていても、ルルーシュの騎士をやっていても主の暴走を止められなかったと云うのは確かに云えている。
しかし、そんな事は云われ慣れてしまっているスザクにはそんな事はダメージにはならない。
寧ろ、ナナリーを宥める為にルルーシュが必死になっているその姿を見ている方がスザクにとってダメージが大きい…。
そして、そのダメージを軽減し、打ち消す為にスザクは必死に応戦している訳なのだが…。
あのマリアンヌの娘で、ルルーシュの妹…。
口で敵う筈がない。
「でも…ルルーシュは僕にナナリーの騎士に…って…」
スザクのその一言にナナリーが盛大に顔を引き攣らせた。
あそこまで言い切った相手を、最愛の兄が自分の騎士に…などと考えていたとは…。
確かに本編では『ゼロ』がナナリーの車いすを押していた。
本来、無国籍である筈の『ゼロ』がブリタニアの代表に付き添っていること自体おかしいのだ。
あの辺りの事は一切説明がないので想像の範囲を抜けきれず、どうして『ゼロ』がブリタニア代表と日本代表との会談でブリタニアの代表の車いすを押して寄り添っていたかと云う事…。
相当問題がある…。
『ゼロ』は世界にとって『悪逆皇帝』を討った英雄だ。
その英雄がどこか一つの国に肩入れしていると云う事は国際的なパワーバランスを確実に崩すと云う事である。
一つの国の中での革命で生まれた英雄であればその国のリーダーになったり、側近になったりする事は別に問題がないが世界の英雄である場合はそう云う訳にはいかない。
世界が一つの国になったと云うなら問題はないが、そんな事、どう考えても無理に決まっている。

 またも話しが横道にそれたが…。
もはや、この二人の争いに介入するのはミレイとしても無理と判断して…後のルルーシュイジリの為のネタ拾いに徹する事にした。
ここは某モビルスーツアニメじゃないが、武力介入でもしない限りとてもじゃないが喧嘩にならないだろう…。
しかし、あくまでもルルーシュをイジる事だけは諦めないらしい。
「公私混同も甚だしい騎士なんて要りません!」
「僕だってこんなじゃじゃ馬な主は嫌だよ…。ユフィの時で充分懲りたしね…」
「まぁ…ユフィ異母姉様の悪口を云うなんて…ユフィ異母姉様はお兄様の『萌え♪』のその素晴らしさを私に手とり足とり教えてくれた(一応)恩人なんですからね…私にとっては…」
「ユフィ…結構いらん事してくれていたんだね…」
ここで、ここにいるメンバー達の考えがまた一つになる。
―――ああ、ナナリーのこの歪んだルルーシュへの愛情の原因は…母親と異母姉の影響なんだな…
と…。
まぁ、どうしてルルーシュが男に生まれて来たのかよく解らないとは思うのだが…。
この二人の云い争いにルルーシュさえもどうしたらいいか解らず、口をつぐんでしまっている。
と云うか、ここで余計な事を云ったら自分に火の粉が降りかかると…ルルーシュの中の本能のどこかで訴えているのだろう。
どの道、この先、この云い争いの勝者によってルルーシュは連れ去られる。
その後の事は…きっと、スザクに連れ去られるか、ナナリーに連れ去られるかで変わって来るとは思うが…。
ここで変に彼らを刺激したら余計に酷い目に遭うと…ルルーシュの中の何かがルルーシュに訴えている。
「スザクさん!最初からどうにも私の本能が貴方は危険であると訴えていたのですよ…。やはり、本当でしたわね…」
「何を云うんだい?ラウンズになってから君をしっかり守っていたじゃないか…」
「何を云っているのです!本当の事を一切云わず、ウソがばれる事が怖くて私に手を触れさせなかったくせに…。あんなの、『僕はウソを吐いています!』っていている様なものです!」
「僕としては、ルルーシュ以外の誰かに触れられるのが嫌だっただけだよ…」
「そんな獣の手でお兄様に触れるなんて許せません!」
この二人…適当な事を云いたい放題である。
まぁ、見ている分には楽しそうな争いだ。
その場にいる人間は…当事者でなくともいつ、自分に火の粉が飛んで来るか解ったものではないが…。
ここで、この二人のどちらに分があるか…。
まぁ、力技で行くならスザクがルルーシュをそのまま担いで掻っ攫えばいいだろう。
ただ、ナナリーの場合、腹黒い白い仮面を持っている。
ナナリーの微笑みと悲しそうな表情…。
この二つがあれば、ルルーシュは確実に火事場の馬鹿力を発揮して体力バカのスザクの手から逃れる事が出来る…かもしれない…。
まぁ、どっちみちルルーシュとしては針の蓆だ。
助けてやる事は出来ないが、同情の余地は十分にある。
傍観者に徹している分には楽しい…。
だから、敢えて誰も口を出さないと心に決めている。
きっと、勝敗は一瞬でつく様な気もするので、暫くはこの争いを楽しんでいるのもいいだろうと云う、生徒会メンバー達の構えだ。
ルルーシュには、命をかけてもいいと思ってくれる友人と云うものが皆無である事がここで判明する。

 予想通り…勝敗は一瞬でついた。
こう云う時、口で云い負かされる方が体力バカであった場合、ブチ切れると、強引に力技で来ると云う習性がある。
枢木神社にいた頃のスザクはまさにそれだ。
ルルーシュに云い負かされそうになって殴りかかった事は結構ある。
その度にルルーシュが鼻先で笑うもんだから、結構ムカついたけれど…。
本編では少々大人になったのかと思いきや…。
ラウンズになってから追い詰めていた筈の『黒の騎士団』に反撃されて、驚いてしまい…。
ブチ切れてメタンガスが充満している海の上で銃撃戦をやろうとした結構危険な奴である。
あれは、制作者側が何を考えていたのかよく解らんのだが…。
あそこで『ゼロ』が介入して来なかったら『黒の騎士団』どころか、あの辺一帯が平地になる事は間違いなかったのである。
勿論、あそこに集結していたブリタニア軍はスザクを含めて全滅である。
と云うか、あそこにいたラウンズ達…。
メタンハイドレードを使われた時点で止めないとまずいだろ…。
潜水艦にいたラクシャータものんきに感心している場合じゃない…。
相手は枢木スザク…。
キレたら前後不覚になる危ない奴だ…。
あそこで誰か一人でもミサイルスイッチを押した時点で、あんたらも全滅だ…。
まぁ、相手はそんな枢木スザク…。
前後不覚になってしまえば怖いものなど何もない…。
「ルルーシュ…。君って…本当に苦労症なんだね…。大丈夫…。僕が全力でルルーシュを守ってあげるから…」
少々低い声で、小さくスザクが呟いた。
スザクが何かを云った事は生徒会室にいた者達には何となく解ったが…。
今のセリフの内容はどうやら届いていないらしい…。
「スザク…?」
誰かがスザクの異変に気づいて名前を呼んだ。
「そうだ…。『萌え♪』なルルーシュは全部僕のもの…。だから、ルルーシュは全部僕のもの…。だから…ルルーシュ…一緒に帰ろうね?」
結構ツッコミどころ満載な一言をかまし、そのままルルーシュを肩に担いだ。
その電光石火の動きに…誰もがきょとんとしてしまっている。
そのままスザクはルルーシュを抱えたまま猛ダッシュ…。
生徒会室から出て行った…。
そして、校庭を横切り、学園の外へと逃げ出して行く…。
何事かと学園内にいた生徒や教師達が追いかけようと思ったが…そのスザクの足の速さについて行けないと判断…。
そのまま見送る事となった。
その肩に担ぎあげられているルルーシュにちょっぴり同情しながら…。
「はっ…。迂闊でした…。今から皇帝専用のロイヤルガードを招集します…」
そう云ってナナリーがブリタニア代表専用回線の通信機を取り出し…兄を取り戻すべく完全職権乱用な発言をかます…。
その様子を見ながら…
―――結局ブリタニアって…全然民主主義になってないじゃん…。普通にトップが職権乱用しているし…。
と、言葉に出せなくとも心の中で思っていた。
この先…体力バカのスザクと職権乱用のナナリーの争いは…まだまだ続くのであった…。

END

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2011年02月22日

It's Destiny 41

とりあえず…



 退院したかと思ったら突然ユーフェミアが現れて、戸惑っているところでスザクに殆ど犯罪みたいな形で拉致されて…。
正直、頭の中はかなりスクランブル状態だ。
スザクが乗っていたバイクで連れて来られたのは…。
本当に単身者用と云うのが解るアパートだった。
「ここ…今僕が住んでいるところ…。ルルーシュのところみたいに豪華じゃないけど…とりあえず、寝泊まりは出来るよ…。ベッド一つしかないけどね…」
ルルーシュの意思など完全に無視して連れて来られた場所はスザクの住んでいるアパートだった。
ここまでの距離を考えた時…
―――確かに…通勤が大変そうだな…。
と、素直に思ってしまった。
「お前…今の両親は?」
「ああ、僕が大学に入る直前に事故で亡くなってる…。だから、天涯孤独の身って奴かな…」
結構、自然に答えるスザクを見ながらルルーシュは少し下を向いてしまう。
「ごめん…」
「ああ、別にルルーシュが謝る事じゃないでしょ…。僕、あの頃は10歳で両親死んじゃっていたんだしさ…。僕…確かに忘れる事は出来ないけれど…でも、あの時みたいにそう云った過去の罪に縛られるのは…やめたんだ…」
そう云いながらアパートの階段をすたすたと昇り始めた。
ルルーシュもその後について行く。
「狭いけど…」
そう云いながらスザクが玄関の鍵を開けてルルーシュを中へと促す。
この時代に生まれ変わって初めてスザクと話した時、結構な時間にルルーシュの住んでいるマンション近くのコンビニであった時の事を思い出すと…。
―――確かに…生活感がまるでないな…。と云うか、会長…どれだけスザクをこき使っているんだ…
そんな事を思う。
と云うのもどう考えても平日は寝に帰っているだけ、洗濯ものは休みの日にまとめて…と云うのが良く解る住まいだからだ。
「一体どんな生活をしているんだ…。と云うか、バイクで走っていた時間を考えると結構会社から遠いんじゃ…」
「まぁ…。だって、僕、大学卒業して『A物産』に入社したけどさ、基本的に親からの補助とかってなかったし…。ホントは社員寮のある会社に就職したかったんだけど…どう云う訳か、そう云う社員寮のあるところは全部だめでさ…。で、一番給料のいい『A物産』に就職したんだよ…」
まぁ、確かにそう云われると何となく理解出来てしまう。
大学を卒業して就職したところで就職当時は学生が社会人になったと云うだけで基本的には金などない。
大学の時にバイトして貯金していたと云ってもたかが知れているし、大学の時既に両親が他界しているとなれば苦学生をしていた筈だ。
それだけの貯金を作るだけの余裕などあるとは思えない。
で、家賃や敷金、礼金など融通の利く会社から離れている郊外にアパートを借りたと云う事なのだろう。
「相変わらず苦労しているんだな…色んな意味で…」
「まぁ、それでも今はちゃんとやっているし…。それに、これが普通だから別に苦じゃないよ…。僕、この時代では普通のサラリーマン家庭に生まれたしね…」

 スザクがそう云いながら殺風景な部屋に座布団を置いた。
「ごめんね…。ルルーシュのところみたいにソファとかなくって…。今のところ、ここから引っ越すとかも考える余裕すらなくって…」
少し困った様に笑って部屋の中を見回しているルルーシュを促した。
「別にそんな事は気にする事はない…。と云うか…どうするつもりだ?俺をこんなところに連れて来て…」
「あ、その先の事を考えていなくって…。ロイドさんとちょっと話をしていて…そのまま来ちゃったし…。だから、実は、ジノには連絡とってバイクを貸して貰ったけど…会社に戻ってなくって、サボりなんだよね…」
あはは…と笑いながらそんな事を云うスザクにルルーシュがため息を吐いた。
年上として現れても変わらない…と思った。
「どうせ会長の事だから…ジノがスザクからの連絡を受けた時に察したんじゃないのか?それか、ロイドが連絡しているかもしれないし…」
ルルーシュがそんな風に云ってはいるが…。
それでも根が変なところで真面目なスザクがそのまま放置しておく事が出来るとも思わない。
それ以前に、そんな就労時間中にロイドと話しをしてそのままルルーシュのところまで来てしまったと云う事が信じられない。
あの頃だって基本的にはルールに縛られている様なキャラだった。
スザクがルールを破る時にはやむにやまれない理由があった時だけだ。
だから、ルルーシュがそんな中スザクがあの場に現れた事に驚きを隠せない。
「それでも…連絡を入れておかないと…。ちょっとごめん…電話する…」
そう云ってスザクは自分の服のポケットから携帯電話を出した。
「あ、スザク…ここにあるの、洗濯物だろう?俺…洗濯しておくから…」
そう云ってルルーシュも立ち上がってかごに放り込んである洗濯物を指差した。
「あ、別に…」
「いいよ…このくらい…。それに仕事の話しになったら、俺、邪魔だろうしな…」
そう云って、さっさとユニットバスに通じる脱衣所代わりにしている狭い通路に置かれている洗濯機を操作し始めた。
本当に休みの日にまとめて洗濯しているらしく、量が多い…。
―――一度じゃ…終わらないな…
そんな事を考えながら洗濯機を回し始めた。
半分くらい残ってしまった洗濯物を洗濯機の隣に置いた。
そして、ルルーシュが暮らしているマンションよりも遥かに狭いこのアパートの中に…何か懐かしさみたいなものを感じる。
あの時のルルーシュは…日本に送られた時にはこんな近代的な建物に住んだ訳ではなく…。
本来なら住居としては認められない土蔵を改造した小さな建物の中に放り込まれたのだ。
あの時…スザクは自分の遊び場を奪ったと云う事でルルーシュに殴りかかってきた。
それを思い出した時…何となくくすりと笑ってしまった。
きっと…あの土蔵よりも面積的には狭いとも云えるようなこの空間が…
それでも、狭いながらも自分の力で生きている者が暮らしていると解るこの空間が…
―――今のスザクの暮らしている…場所…。

考えてみればこんな風に一般的な、平均的な住居に足を踏み入れること自体、あの頃から考えても殆どなかったと云える。
あの頃は生まれてから9年間はブリタニアの皇子として王宮で暮らしていたし、日本に送られた時にはどう考えても人の暮らす場所と云えるような場所ではなかったし、戦争の後はアッシュフォード家に匿われる生活で…。
その後は『黒の騎士団』の『ゼロ』としての生活と最後の数ヶ月はブリタニアの皇帝として…ブリタニアの王宮に帰った訳だが…。
生まれ変わったら生まれ変わったで、若手ながらも日本を動かす程の力を持つ父と世界的に名を馳せる企業グループのトップの母の間に生まれ、一般市民とかけ離れた生活を送っている。
広い部屋に全てを揃えられた環境…。
しかしそこには人との接点が殆どない生活…。
自分でもこうして『人間社会』を生きて行く中で色んなものが欠如していると自覚してしまう現状…。
そう思った時…思い切りため息を吐いてしまう。
ため息を吐いたところで何が変わる訳でもないのに、人とはどうしてこう云う時にため息が出てしまうのだろうと思ってしまう。
「また…何か難しい事考えている?ホント、君って昔から変に難しい事を考えて自分でドツボに嵌るのが得意だよね…」
ため息を吐いたルルーシュの背後から声をかけられる。
ここには他に一人しかいないのにビクリとなって背後を見る。
すると、呆れた顔をしたスザクがルルーシュを見ていた。
「また、色々難しい立ち位置にいるよね…。もし、あの時、僕と君が再会しなければきっと、あのままのこの世界での生活を続けていたんだとは思うんだけどさ…」
スザクが何を云おうとしているのか解らない…と云う感じでルルーシュがスザクを見る。
そんなルルーシュを見てスザクが軽く息を吐いた。
「とりあえず、こっちにおいでよ…。って云うか、別にそんな事…しなくていいのに…。少し、話そうよ…」
この世界ではスザクはルルーシュよりも10歳年上で、前世でだってあの時のルルーシュの生きた時間の数倍、スザクは生きている。
その所為だろうか…。
なんだかルルーシュが本当に自分は子供に思えてくる。
と云うよりも、スザクが自分よりはるかに大人に見える。
そんな事を考えているとまたもスザクがそんなルルーシュを見透かしたように笑った。
「僕はさ…あの時も君よりも人生経験をたくさん積んでいるし、この時代でも君より10年長く生きているんだから…。君よりも大人になっていたって別におかしくないんだよ?それに、君が気にしている事も何となく解るからさ…。その事も含めて、ちゃんと話したいんだ…僕は…」
スザクの言葉に…ルルーシュは苦笑する。
「お前…変わったな…」
つい出てきたその言葉…。
「そりゃ…長く生きていれば変わるよ…。君の知っている僕だけじゃない僕がたくさん詰まっているんだからさ…。あの時の話しも含めて、ちゃんと話したいんだ…。それと…僕の気持ちもさ…」
「スザクの…気持ち…?」
「そう…僕の気持ちを話したいし、君の気持ちも聞きたいんだ…」

 そう云ってスザクはルルーシュの手を引いて先ほどの部屋に戻った。
そして、座布団の上に座らせる。
「ごめん…ちょっとお湯沸かすから…。とは云ってもインスタントコーヒーしかないんだけど…」
「別にそんなものは…」
「いいから…。ちゃんと落ち着いて話そうよ…。ユフィの事も僕自身の事もちゃんと話しておきたいんだ…。あの時…世界から君が消えた後の事も含めてね…」
そう云いながら仕切られていないキッチンにやかんを乗せて火を点けた。
そしてすぐに戻ってきた。
「ルルーシュ…なんで僕達にあの前世の記憶が戻ったのかは知らない。僕はただのサラリーマンだし、君は確かにすごい家の息子だけれど、それでも一般市民だ…。勿論『コード』だの『ギアス』だのそんな訳の解らないものもない…」
「その二つの能力は…ある意味俺達の運命を変えている様にも見えるけれどな…。でも、俺は『ギアス』がなくともあの時点では無理だったかもしれないが、ブリタニアに刃を向ける気でいたんだ…」
会話の内容が…あの頃の二人の会話になって行く…。
多分、そこから話しを始めないと…二人ともスタートラインにすら立てない様な気がしていた。
「まぁ、そうだっただろうね…。って、今だからそう思えるんだけどね…。あの後…君がいなくなったところで…結局、争いそのものはなくならなかった…。そりゃ、一時的に戦争とかテロ活動とかは消えたけれどね…」
それは…今のルルーシュも教科書で学んでいる。
ただ、教科書に書かれている事、歴史資料に書かれている事は完璧ではない。
その場に立っていた者達でなければ解らない事がたくさんある。
「ルルーシュはあの時、KMFとサクラダイトをなくせば…と思ったんだろうけれどね…。それでもあの後、世界はめちゃくちゃになったんだ…。その時に思ったんだよね…。民主主義は完璧じゃないし、独裁ってのは別に独裁が悪いんじゃなくて独裁者として立つ者の問題だって…」
スザクが話し続けている…。
何を云いたいのか…今のところ解らない。
「あの後ね…日本は独裁国家になったんだよ…。あれほど独裁を否定していた扇が…そうした…。神楽耶でさえ、彼を止める事が出来ず…。そう云う意味ではあの時一番悲惨だったんじゃないかな…。『超合衆国』の中心に立っていた国の中ではさ…」
今の日本は…こんな形で民主主義、資本主義国家として豊かな国になっている。
あれから確かに数百年が経っているけれど…。
でも、スザクの表情を見ていると…それが真実であると解る。
そして…ルルーシュに何を伝えたいと思っているのか…ルルーシュが模索する。
「だから…ルルーシュがこの時代でまでそんな罪悪感を抱く必要はないんだよ…。罪を忘れてはいけないと思う…。でも、罪に縛られていたら誰も救われない…。そして、あの頃、ルルーシュに関わってきた人間もルルーシュの罪に甘えちゃいけないんだ…」
今のところ…スザクの云わんとしている事がルルーシュには解らない。
でも…なんだか、とても大切な事を伝えようとしている事は…・解る…。

 同じ頃…病院を含めてルルーシュの関係者達が大騒ぎとなっていた。
まぁ、当然と云えば当然だ。
世界的に影響力を持つランペルージ家の長男が病院まで拉致されたとなれば…。
ユーフェミアが泣きながらギネヴィアに連絡した。
流石にブリタニアにいるギネヴィアでは日本での事に直接かかわる事も出来ず…。
シュナイゼルの秘書であるカノンに連絡した。
カノンはその報告を聞いた時にピンと来た。
誰がルルーシュを連れ去ったのかを…。
シュナイゼルにその事を報告するが…ここで大騒ぎすると逆にルルーシュは警戒して要らぬ事をする事が簡単に予想出来る。
記憶が戻っているのがミレイとロイドだと考えた時…。
彼らは恐らく、ルルーシュとスザクに協力すると考えられる。
そうした時…カノンがすべき事とどうしたらそれをやり遂げられるかを考えた時には…やはり、主に報告し、主の力を使う事…。
カノン自身、様々な可能性が頭に過って行くが…。
そして、シュナイゼルに報告し、シュナイゼルが思うままに力を使って行けば…。
―――今の彼らなら…更に絆は深まるわね…
それが解っていて、それでもシュナイゼルに報告した時、シュナイゼルが自分の持つ力を使えばルルーシュがある時から離れて行く事は…解っている。
それでも、その力を使う事を止めようとしないのは…。
カノン自身に様々な思いがあるからだろう。
もし、この記憶がなければ…と考える事もあるが、結局愚問だと笑ってスルーする。
「カノン…」
連絡を受けてシュナイゼルが議員会館の自室に入ってきた。
今は他の秘書たちは出払っていてカノンだけだ。
「シュナイゼル様…」
「ルルーシュは…?本当に…」
シュナイゼルがこんな風に表情を崩すのはあの頃には見た事がない。
鎖も足かせも今のこの時代にはない。
だからこそ、あんな完璧な仮面を被り続ける必要がなくなったと云う事なのだ。
「はい…。どうやらアスプルンド医師がルルーシュ様の退院を許可したようです。そして、病院前でルルーシュ様が何者かに連れ去られたと…。その時、来日されていたユーフェミア様がたまたまルルーシュ様に会おうとして病院の前でルルーシュ様とお話しされていたそうですが…」
受けた報告を正確にシュナイゼルに伝える。
ここでルルーシュを攫ったのが誰であるのか、カノンは解っているが、それは伝えない。
伝えてしまった場合…逆にルルーシュに策を考える余地を与える事になるからだ。
「その、攫った人間とは…」
「バイクに乗っていてフルフェイスのヘルメットを被っていたそうです。一応、ユーフェミア様が現在日本にいるコーネリア女史に色々事情を話している様ですが、警察にはまだ…」
「警察…そうだね…。こんな時警察はあてにならない…。ランペルージの力を使え…。カノン…」
「私が指揮しましょう…。秘密裏にルルーシュ様を救い出した方がよろしいかと…。色々政界や財界でも動いていますから…微妙な時期ですし…。だから、ギネヴィア様もユーフェミア様を日本へ送ったのでしょう?」
「そうだね…任せたよ…カノン…」
「承知致しました…」
カノンは丁寧に頭を下げてそう返事する。
心の中で…『イエス、ユア・ハイネス…』と呟きながら…

To Be Continued

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2011年02月20日

ダメ人間とダメ悪魔 09

揄い人間と揄われ悪魔



 さてさて…前回、ルルーシュの前に新たなキャラクターが出てきた訳だが…。
あのロロによって更なるカオスがルルーシュとスザクを待ち受ける…。
「おはよう…ルルーシュ…」
何となく…いつもより元気がない朝の挨拶をするスザクに…。
ルルーシュは少し怪訝そうな顔を見せた。
「どうした?スザク…。なんだか疲れているな…」
まぁ、当然と云えば当然だろう。
人間界の悪魔と魔界の悪魔に散々脅しをかけられていたのだ。
これで、疲れない平凡な人間などいる訳がない…。
尤も、スザクの能力は、『運動能力』の点においては完全に人間離れしているが…。
ルルーシュだって魔界では『運動』に関しては『ヘタレ』の部類でも人間と比べればはるかに高い…筈…。
それでも、スザクはそんなルルーシュの『運動能力』を凌駕している。
ルルーシュは普通に認めたくはないらしいが…。
何故、人間が『魔』を恐れるかと云えば…。
自分たちにとって未知の能力を持ち、自分たちよりも遥かに優れた能力を持っていると思っているからだ。
まぁ、ある意味、当たっていると云っていいだろう。
実際問題、悪魔は人間よりはるかに長い時間を生き続ける。
それこそ、人間が聞いたら途方もない程の時間だ。
そう云う点においては神や天使も同じなのだが…。
人間が何故、神や天使を敬い、悪魔を恐れる様になったかと云えば…。
早い者勝ちである…。
元々、神と悪魔は犬猿の仲だ。
と云うか、そう云った関係性の中でバランスを保っている。
そんな中で人間に付け入るのが早かったのが神だっただけだ。
昨今の神様、『信じるものしか救わない』どころか、『信じなくていいから金持って来るもの大歓迎!』になってしまっている。
まぁ、ある意味、悪魔よりたちが悪い。
悪魔は一応、契約関係を結ぶ。
と云う事は、関係性と云う点で行けば契約を結んでいるので対等だ…。
ただ、その支払う物の代償が『魂』だって事で誤解されがちなのだけれど。
しかし、人間の世界で物を買う時にはその物の価値によって値段が付けられている。
牛肉だって輸入牛の切り落としであれば『100g100円』で売られている事に違和感はないだろうし、5Aランクの国産牛の霜降りであれば『100g10,000円』でも納得するだろう。
人間が悪魔に頼みごとをする時、人間の力ではどうにもならない事を頼む訳だから、そこにプレミアが付くのだ。
人間の身で、誰でも出来ることであればわざわざ悪魔を召喚して魂売ってまで頼みごとなんてしないだろう。
文無しの人間が楽して世界一の金持ちの一生を送りたい…なんてことを願うなら悪魔を召喚するに違いない。(まぁ、たまに10円のチロル○ョコの為に魂売っちゃう様なバカもいるが…(笑))←現在はバーコードによる読み取り形式となっているのでサイズが大きくなり一つ20円のものが小売されていますが、かつては袋入りのチロルが小分けで1つ10円で売られていたんです。今の10代、20代前半の人は知らないかもしれませんねぇ…(苦笑)そう云えば…最近、1つ30円のチロルが復刻されてた…♪あれも好き♪
これは、人間が悪魔に頼みごとをしての等価交換なので別に問題はあるまい。
ひたすら『貢げ!』と『ミツグクン』を強要する神様の方がよっぽど不条理だ。

 まぁ、そんな事はともかく…色んな意味で疲れているスザクを気遣うルルーシュだが…。
これもスザクと友達になると云う契約を結んでいる以上…ルルーシュもその友達として当たり前であろう事を実行している訳だが…。
随分自然にこうした振る舞いを出来る様になったものだとルルーシュが考えて入るのだが…。
それを陰から見つめている一人の堕天使が…ギリギリとハンカチの隅っこを噛みながら泣きそうになっていた。
―――兄さん…なんでそんな間抜けっぽい人間なんかに…
そう、ルルーシュにその命を救われ、ルルーシュに魂を抜かれて堕天使になったロロである。
今のところ、ルルーシュから
『どうしても必要な時には呼んでやるから…。それまでは姿を表すなよ?そうでなくてもシュナイゼル異母兄上までいて話しが面倒な事になっているし、シュナイゼル異母兄上はお前の事…目の敵にしているからな…』
と云われてしまっているからこうして陰からルルーシュを見守っている。
こんなロロの姿に…うっかり自己陶酔してしまっているロロもいる訳だが…。
―――嗚呼…僕は兄さんの為に…こんな風に陰から見守るしか出来ないなんて…。でも…兄さん…絶対に兄さんの事は僕が守るからね…
雰囲気に酔ってしまっている彼に声をかけると元天使の彼から悪魔の頬笑みが向けられるので注意しておこう…(笑)
すっかり自己陶酔している彼を止められるのは…恐らくルルーシュだけだろう。
まぁ、遠くから見ているだけなら無害なのだけれど…。
何となくちょっかいを出したくなると云う…奇妙な魔力があるものだから困ったものだ。
その危険性を知っている者であれば、その衝動をなんとか抑える術を覚える。
しかし、その術を覚える間もなく、地獄を見た者は…まぁ、数えるのはやめよう…。
彼は一応、元天使だ。
神の使いだった存在だ。
しかし、仲良く話している二人の姿に…ロロはある事に気付く…。
それこそ、一瞬で気付いた…。
―――あの人間めぇ…。人間の癖に僕の兄さんに惚れちゃうのは解らんでもないけれど…身の程知らずな願望なんて持っているし…。って云うか、絶対に兄さんと『友達』になりたいなんて願いはウソだよね…。あんなにあからさまなのになんで兄さん…気付かないの???ったく…。兄さんは頭いいのになんでそんなに鈍感なの?
ロロの心配は解らないでもないのだが…。
それでも、それにより、天使を籠絡しているルルーシュなので意外と魔界では歓迎されているのかもしれない。
と云うのも天使と悪魔…。
敵同士であり、天使は悪魔にとっては仕事を邪魔をしてくれる邪魔ものでしかないのだ。
ルルーシュが無自覚に天使を籠絡してくれるので、他の悪魔たちにとっては邪魔する天使達の数が減っている…と云う事だ。
これまでは力ずくで排除していたのが殆どだ。
力の弱い悪魔は天使の手によって消滅させられてしまう者だっているのだ。
ロロは…そう云う意味では天使の癖に悪魔並みに容赦なく悪魔を排除していたので彼がルルーシュに籠絡された時には悪魔たちの中で喜んだ者達は結構いたらしい。
勿論、ルルーシュはそんな気もなかったし、ロロがそれほど悪魔にとって邪魔な存在であった事は、ロロがルルーシュになついてから知った事だった。
しかもルルーシュの反応は…
『へぇ…そうだったのか…。天界も大きな損害を被ったな…』
と云う、結構あっさりしたものだった。
悪魔の中ではブラックリストの一人だったと云う事を…解っていての言葉だったのかどうかは…定かではない。

 そんなロロに目を付けられてしまったスザクだが…。
今は大ダメージを受けた後なのだけれど、それでもルルーシュが傍にいて、色々心配して貰っているのだから、ロロの目からは『世界で一番幸せな男』に見える。
ルルーシュがスザクを心配して訊ねた言葉に対して…。
「あ、えっと…なんて云うのかなぁ…。実は…」
スザクが神楽耶の事、シュナイゼルの事を話し始め、話しも中盤に差し掛かって来るとルルーシュの顔色も変わってきた。
まぁ、確かに…。
スザクにしてみれば、神楽耶が悪魔と契約したと云う事だけで普通に震えあがる程の恐怖だし、ルルーシュにしてみれば、シュナイゼルがいると云う事は人間界でも気の休まる時間が得られないと云う事だ。
スザクのどうなればその願いを叶えた事になるのか解らない願いと云う事で、適当な理由を付けて魔界に帰らなくてもいいと云う事で暫くはあの、ルルーシュをイジリ倒したくて仕方ない連中から避難できると思っていたのだが…。
それが不可能となったと云う事である。
シュナイゼルがこちらに来ていると云う事は恐らく…シュナイゼルも恐れる魔王殿の女どもが何をしかけて来るか解ったものじゃない。
「スザク…お前の…その、従妹と云うのはそんなに怖いのか?」
一応、ルルーシュは訊いてみる。
スザクが顔色を変える様な相手なのだけれど…スザクがこれほど顔色を変えてしまっているところを見ると、なんだか…ルルーシュは一応悪魔なのだけれど、その『神楽耶』と云う人間が怖いと思えて来てしまう。
と云うのも、悪魔であるルルーシュを見ても顔色を変えなかったし、怖がるそぶりも見せなかった。(←それって悪魔としていかがなものかとは思うが)
「あれは…人間と同じ世界に生きていていいのかと思うくらい…。僕…神楽耶が『スザク』って呼ぶ度に3時間くらい寿命が縮んでいる気がする…」
まぁ、3時間くらい…と云う考えは甘いだろう。
スザクと神楽耶は従兄妹同士なのだ。
スザクが神楽耶の名前を呼ぶのと同じくらい、もしくはそれ以上に神楽耶がスザクの名前を呼ぶのだ。
ちりも積もれば山となる…。
その3時間が神楽耶がまともに口を聞けるようになってから恐らく約12〜13年と云ったところか…。
離れて暮らしているとはいえ、年に数回はあう事があれば…計算していくとスザクの十秒は結構縮められているだろう…。

 そんなくだらない事についつい、下らない計算をしてしまうのは恐らく人間であるが故なのかもしれないが…。
「でも…スザクとその神楽耶って云う人間は別々に暮らしているんだろう?」
「だから…云ったじゃないか…。近所に引っ越して来たんだよ…。神楽耶って、何かある毎に僕の名前を呼ぶし…その度に僕、心臓が震えあがっちゃって…」
スザクのこの言葉に一体どんな人間なのだろうかと思ってしまう。
これが本当であれば、きっと、ルルーシュの父である魔王もさぞや気に入るだろうし、魔界への永住権を認めて彼女を悪魔にスカウトするかもしれない。
人間の中にはそう云った輩もそれなりにいるのだ。
歴史的に極悪非道を行った者以外にも、地味に悪の限りを尽くしている者が地獄に落とされそうになった時に悪魔が出向いてスカウトして、悪魔としての待遇を約束すると云う…。
まぁ、人間も悪を極めれば、別に神の作る極楽に行かずとも魔界へ行くと云う手段もある。
結局、中途半端な小悪党だけが地獄に落とされると云う感じなのだろうか…。
って、そんな事を考えている場合ではない。
「そうか…一回名前を呼ばれるごとに…しかも、やたらと名前を呼びまくると云うのか…。無自覚に名前を呼ばれてその度に3時間ずつ寿命が縮んで行くのは結構辛いだろうなぁ…人間の寿命では…」
ここで、ルルーシュの天然ボケをフル発揮されている模様である。
スザクのたとえ話を真剣に真面目に考えてしまっている。
ここまで純粋だと、逆にこれで大丈夫なのかとスザクとしても心配になって来るし…こんな風に騙す気もないのだけれど、そう云った言葉をうのみにしてしまっては結構危険なにおいがする。
正直、その辺の初心な子供より危なっかしいかもしれない。
と云うか、こんな天然ボケで…
―――今の人間界でまともに生きていけるのかなぁ…。結構お人好しっぽいし…。そう云えば…契約者の願い事を叶えて、魂取らないで魔界に帰っちゃったことあるって云ってたな…。あの様子だと一回や弐回じゃないよね…きっと…。
と思ってしまう。
現在の人間界…。
世界の中でも治安が良くて世界的に見てお人好しな日本人でさえあくどい詐欺行為をする様なご時世だ。
ルルーシュを放っておいたら普通に詐欺に遭って被害者になる事…間違いなし…に見える。
「ルルーシュ…そんな、僕の適当なたとえ話を本気で心配しなくてもいいって…。と云うか、ルルーシュ…ホントに悪魔なの?なんだか昨今のこましゃくれたその辺の子供よりずっと心が真っ白に見えるんだけど…」
スザクのその一言に…ルルーシュが眉をピクリと動かした。
流石に…悪魔としてのプライドを傷つけたのだろうか?
「スザク…俺をバカにしているのか!俺はこれでも悪魔だ!真っ白などと云う表現から一番遠い位置にいる存在だ!なのに…それは何の冗談だ!人間の癖に…」
うっかり、少々涙目になっているルルーシュを見て可愛いと思ってしまったりもして…。
口に出したらますますへそを曲げてしまいそうな勢いだ。

 そんなルルーシュに神楽耶とシュナイゼルの(ある意味)最強(最凶?)コンビの前につれて行ったら…。
きっと、スザクもろとも撃沈されそうだ。
と云うか、強引にスザクの願い事を叶えた事にしてルルーシュを連れて行かれてしまうかもしれない。
あのシュナイゼルの様子を見ているとそんな感じに見える。
「えっと…さっきも云ったけど…悪魔より悪魔みたいな人間もいるからね…。ルルーシュは立派に悪魔をやっているのかもしれないけどさ…。でも、人間って、力が弱い分、何かの恐怖を感じた時には必要以上に攻撃的になる事もあるし…」
その言葉の最後に『神楽耶はそんな事絶対ないと思うけどね…。少なくとも僕に対しては…』と付け加える。
「そう云うものなのか?人間とは、『神』を信じて『神』の示す通りに…」
「ルルーシュ…それ、一体いつの話し?今どき、そこまで敬虔な『神様』の信者なんていないし、僕だって、実際にルルーシュが自分の事を『悪魔』だって云うからその言葉に合わせているけれどさ…」
スザクの言葉にルルーシュがムッとした顔をする。
さっきから失礼な事ばかり云われている気分なのだろう。
「俺は悪魔だ!しかも魔界の王である魔王の血を引く皇子だ!由緒正しいんだ!」
まぁ、あんなシュナイゼルなどと云う胡散臭い奴が出て来ている時点で、ルルーシュが魔界とやらで結構重要なポジションにいるらしい事は解るのだが…。
しかし、こうしてルルーシュの行動を見ていると本当に悪魔としての行動から逸脱している様な気がしてくる。
そもそも、今どき、スザクの冗談を真剣に受け止めるなど…。
まずあり得ないだろうと思ってしまうのだ…。
「確かにね…ルルーシュのその身体は悪魔の身体かもしれないけど…。僕が云っているのは気持ちの問題だよ…。なんだか、人間でも珍しいくらい素直だし、純粋だし…。そんなルルーシュが悪魔だって云われても誰も怖いなんて思えないと思うんだけどなぁ…」
そこまでスザクが云った時…。
二人の間に人影が横切って行く…。
「おい!そこの人間!兄さんに対してなんて失礼な事を云うんだ!兄さんは最高の悪魔なんだ!僕を天界から解放してくれて、死にかけの僕を助けてくれた…」
「ロロ!?」
どうやら、二人の後について来たらしいロロの登場であった。
昔、死にかけのロロを助けてルルーシュになついてしまった堕天使である。
「ってか…天界ってどんなところなの?酷い云われようだなぁ…。って、君…誰?」
スザクが呆れた様に突然出てきたロロに訊ねる。
悪魔より悪魔みたいな人間と、その人間と契約した悪魔…押し売りで契約してきた悪魔を見ていれば大概の事では驚かない様だ…。
「僕は兄さんに助けられて、目が覚めて兄さんを心から敬愛する堕天使だ!お前みたいな人間なんかより兄さんを知っているんだぞ!さっさと兄さんに魂を渡して兄さんを解放しろ!」
普通に通学路でそんな事を云っているロロであるが…。
そんな事を云っていると周囲の目は…結構冷たいものを感じる…。
「あ、えっと…ロロ…。一体何をしに来たんだ…」
イレギュラーに弱いルルーシュはロロに訊ねるが…ロロはルルーシュの前から離れようとしないまま…スザクを睨みつけていた。
スザクとしても驚いてしまい、この一瞬の出来事でロロは自分の味方ではないと判断し…臨戦態勢に入る。
恐らく人はこれを…一触即発と云う…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 18:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ダメ人間とダメ悪魔

皇子とレジスタンス 〜暴かれる真実〜

 目の前の王を見据えている…。
正直、ルルーシュ本人もかなりの緊張状態だ。
それを表に出さない訓練は…自然にしてきた。
こうした緊張状態の中で自分の抱いている恐怖を悟られる事は命取りになると解っているからだ。
と云うか、そう云った事を思い知らされてきた。
ブリタニアの王宮の中でも、シュナイゼルの軍の中でも自分の能力だけでなんとかなる世界ではなかった。
常に周囲を観察し、冷静さを保ち、表向きには見方である存在であろうと決して心を許してはならず、気を張り続ける…。
そんな事を続けて来ていた。
それ故に自分自身の自覚なく、そんな術が身に付いてしまっていた。
これが好運であるのかそうでないのかは…その時々によって違う。
目の前に立つスザクの緊張が…ルルーシュにも伝わる。
確かに…スザク自身はレジスタンスとして活動していた頃には、多数のブリタニア軍を相手に戦った事もあるだろうが…。
しかし、その時には自分自身の身を守る事が目的であって、自分以外の存在を守ると云う目的ではなかった。
スザク自身が背負うそのルルーシュと云う存在の重さは…。
もし、ここでルルーシュの身に何かあった時にはルルーシュの妹姫にもその影響が及ぶし、何より、ルルーシュを誰よりも愛しているシュナイゼルが決して許さないだろう。
下手すれば、あのエリア11さえも全て滅ぼしてしまいかねない程の怒りを買う事になる。
ルルーシュがそれを自覚しているかどうかは解らないが…。
スザクの緊張はそう云ったものの重さからも来ている。
そして、スザク自身の…ルルーシュへの想い…。
スザクがどれほど自覚出来ているかは解らないが…。
それでも、そう云った自分でも自覚を持たないその感情がスザクに対して更なる緊張を与えている事は確かだ。
『ルルーシュ…』
スザクがルルーシュに声をかける。
『黒の死神』の仮面を被った状態のルルーシュをこんな間近で見るのは初めてだった。
そのルルーシュの顔を見た時…スザクはゾクリとした。
横から垣間見ている状態で…これほどの威圧を感じると云う事は、真正面から見据えられているラティス王は一体…どれほどの恐怖と闘っているのか…と思ってしまう程に…。
名前を呼んだだけで…それ以上声をかける事が出来ない。
そして、そんなルルーシュの視線を真正面から受けているラティス王がこんな形でルルーシュとスザクに銃口を向けてしまう理由が…何となく解った気がした。
恐怖からその行動に出ている。
ルルーシュの目はそれこそ、『撃ちたければ撃て…』と云っている。
そこにウソを感じられない程そのオーラは完璧だった。
しかし、ルルーシュを撃った後…このラティス王は決してその恐怖から逃れる事が出来ないだろう。
目の前でルルーシュが銃弾に倒れたとしても…。
「国王…貴国の方針をお伝え願えないだろうか?この先、ブリタニアとして貴国とどう向き合っていくべきか…貴方の返答にかかっている事は…解っているであろう?出来る事なら、我が国が日本に行った様な宣戦布告もしないまま開戦…と云う事はしたくはない…」

 ルルーシュが静かに言葉を並べる。
宣戦布告をしないままの開戦とは…解り易く云えばその国に対しての侵略であり無差別殺人と云う事なのだが…。
敢えて、ルルーシュはそう云った言葉を使う。
遠回しの言葉の方が恐怖心をあおる事になる。
正直、ルルーシュとしても戦争を始めずに済めば…と云う思いはある。
だからこそ、威圧的な態度をとり、国力をちらつかせながら相手から譲歩を引き出す…と云う事をしている訳だが…。
しかし、かつて、停戦する前にはブリタニア軍とギリギリまで戦っていた相手だ。
そう云った意味では日本よりも遥かに国土の狭い国ではあるが、日本とは違った形でブリタニアと戦い、ブリタニア側を驚かせていたという経緯がある。
日本の対応は先を見据えた英断…と評されるべきなのかもしれないが…。
戦いの際に、強力な武器を持つ相手よりも、その精神力によって決して引こうとしない気概を持つ戦士の方が戦い難い。
戦意を喪失させるためには相手に力の差を見せつける事…。
それでも相手の目から力がなくならない相手は…心理戦で戦うルルーシュとしては非常にやり難い。
そして、その気持ちの持ち方によってはこちらがどれだけ撃っても立ち向かって来る姿勢を生みだし、その内に撃たれている方よりも撃っている方が恐怖が大きくなって行くのだ。
こうした命をかけた戦いであれば最終的に気持ちで負けてしまった時にはどんな武器も役には立たなくなるのだ。
だからこそ…ルルーシュはルルーシュ側は決して引かないと云う姿勢を見せつつも、確実にルルーシュ側に分があると云う姿勢を崩さない。
実際にこの場ではルルーシュを守るのはスザクだけだが…もし、この場でルルーシュを撃ってしまった時…その後の自分達に降りかかるあらゆるものを想定させる。
それがハッタリであろうと、なんであろうと構わないのだ。
相手の戦意を削ぐ事が目的なのだから、あからさまに相手にウソと解る様なウソはただの愚策としか云えないが、明らかに真実であると錯覚させるか、本当かウソか…どちらとも判断がつかず相手の判断を狂わせるか…。
ルルーシュはこれまでの自分の置かれた立場の中でそう云った事を見に着けていた。
勿論、普通、ルルーシュの年齢でそんな事が出来ると云う事はそうそうない話しだ。
そのルルーシュの年齢も合わせて…こうした形での威圧は効力を発揮する。
そして、その噂が広がって行けば、ルルーシュを要注意人物として世界は評価する。
迂闊な事は出来ないと…。
そして、今はブリタニアの第一位皇位継承者であると云う事を納得させるだけのものを持ち合わせていると云う評価を得る事になる。
ルルーシュには皇帝の座に着くと云う意思はないが、今はそれを利用している状態だ。
「そ…そんな脅しを…」
国王が奥歯を強く噛み締めながらルルーシュを睨みつける。
しかし、その目は…確実にルルーシュのそれに負けている事は一目瞭然だ。
この場にいるラティスの衛兵たちも国王のその戸惑いや恐怖する姿に不安が広がって行く。
その空気が…手に取る様に解る…。

 今、見た目には確実にルルーシュとスザクが不利に見えるが、実質的に戦意が喪失し始めているラティス側に不利だ。
ルルーシュとしては再びこの地を戦火に晒したくはないと云う気持ちはあるのだろう。
元々、ルルーシュが『黒の死神』と呼ばれるきっかけとなったのが先のラティスとの戦いの場であったのだから…。
あの時は一部隊長として前線に立ち、血みどろの戦場を見ていた。
だからこそ、この場で…戦争と云う悲劇を終わらせる事が出来ればそれに越した事はないと云うのが…ルルーシュの思いだが…。
しかし、現実はそれほど甘いものではなく…。
「脅しと…貴方は判断なさるのか?」
ルルーシュは更に詰め寄る…。
この時、ルルーシュが状況判断を僅かに誤ったのか、それとも、ラティス王がこうした場でのやり取りに対して、思った以上に思慮が足りなかったのか…。
ひょっとしたらどちらとも云えるかもしれない。
窮鼠猫を噛む…。
ひょっとしたらそんな言葉で表現される様な状況なのかもしれない。
「脅しであれ、なんであれ…ラティスがそなたを亡き者にしようとした事は周知の事実…。そして、国同士の交渉の中でニセの姫を送りこんだ事も周知の事実…。ならば…その画策を正当化する為にはそなたを本当に亡き者にし、勝者として我が国が正義となればいいだけの事!」
半ば…自棄になっているとも判断され兼ねない様な言葉…。
ここでルルーシュを殺してしまったら本当にブリタニアとラティスは全面戦争となる。
その事を解って云っているのか、錯乱状態になっているのか…。
ラティス王の斜め後ろに控えていた大臣が顔色を変えている。
「陛下!」
焦りを見せているのはラティス王の側近だ…。
恐らく、この状況を王よりも冷静に見つめて、把握していた大臣にしてみれば最悪の方向に行ってしまっていると云う事が解ったのだろう。
「うるさい!どの道、このままではラティスが危ない…。再びブリタニアと戦えばラティスは滅びる…。『ルイ家』のこれまでの事…シュナイゼルに全て露呈したのだ…。しかも、マリアンヌ皇妃暗殺の証拠まで握られたのだぞ!」
「陛下!」
この場で…ルルーシュの表情が一変する…。
これまで、目の前の事に精一杯の力を注ぎこんで、その事を忘れていた訳ではないが、目を向ける事の出来なかった…悲劇の真実…。
ルルーシュの目が驚愕で見開いている。
ずっと…真実を突き止める事が出来なかった。
犯人の疑いのある皇族、貴族が多過ぎて絞り切る事も出来なかったその事実…。
このタイミングでこんな唐突に知る事になるとは…。
「母上の…暗殺…?」
ルルーシュの声が震えているのが解る。
ルルーシュがこのような形で戦場に立たなければならなくなった原因…。
それは…彼の母親の突然の死だったのは…誰もが知っている事実だ。
その異変にスザクが気がつくと、このままではまずいと思う。
その変化にスザクはルルーシュの立てたプランを変更せざるを得ない。
スザクは自分のポケットに入っている発信機ボタンを押し、この部屋の外に待機しているシュナイゼルの付けたSPたちを呼びだした。

 その合図と共にシュナイゼルのSPたちが続々と入ってきた。
数は少ないものの、シュナイゼルから任命された者たちだ。
その優秀さはその動きで解る。
「枢木卿…一体何が…」
「ラティス王が乱心したのかどうかは解らないのですが…。その…マリアンヌ皇妃の暗殺事件に…『ルイ家』が関わり、そして、そう云った一連の話しを王が知っていた…と云う事です。このままで殿下が普段の判断を下せるとは思いません。どうやら、王に対してブリタニアからの連絡が入った様ですので…間もなく…」
スザクは敢えて全てを云わない。
ただ、もう少し持ちこたえればエリア11の軍とシュナイゼルの軍が到着する…と云う事だけは解る。
時間が確定している訳ではないが…。
スザクの言葉にSP達も表情を変えた。
そして、その言葉をいち早く判断し、ルルーシュとスザクを守る様に周囲を固める。
「う…撃て!ここにいるブリタニア人一人も生きて帰す事は許さん!」
「陛下!御乱心召されたか!ここで彼らを撃ったとなれば…」
「もうここまで来れば同じ事…。ならば、ここで彼らを討ち、ルルーシュ皇子を亡き者にして皇帝の座を得ようと云うブリタニア皇族にその亡骸を渡せばまだ…」
王の言葉に大臣が軽く目を瞑った…。
事がここに至り、シュナイゼルに全てが露呈したとなれば…ルルーシュを殺したともなれば…。
ルルーシュの亡骸をその皇族に差し出す前にこのラティスが火の海になるだろう。
まして、ここにいるのはルルーシュの騎士とシュナイゼルが選んだ精鋭たち…。
元々全ての準備を整えて彼らは来ているのだ。
ギリギリの時間であろうが、確実にルルーシュをブリタニアに連れて帰るだけの策を練って来ていると判断するのが妥当だ。
「スザク…」
目を虚ろにさせながらルルーシュがスザクの名前を呼ぶ…。
「なんだ…」
ルルーシュの様子に驚きながらもスザクがなんとか平常心を保とうとして返事する。
周囲からは完全に銃口を向けられている状態…。
確かにシュナイゼルの付けたSPたちは確かに優秀ではあるが、ここは敵の中枢…。
危険である事は変わりはない…。
ルルーシュがこの様な状態の中で…ルルーシュが陣頭指揮を執れる状態ではない中で…。
―――最後まで凌げるのか…
そんな不安が生まれて来る。
それでも…そんな不安で迷っている時間はない。
「王を…捕らえてくれ…。恐らく…『ルイ家』の者達は…異母兄上の手の内に捕らえられているだろう…。関わった貴族の末端まで全て…。確実に捕らえてくれ…。私を…ナナリーを…このような状況に陥れた者達を…確実に裁くために…」
力のない声ではあったが…しっかりとした言葉…。
あの事件の後遺症で…あれほどアリエス宮の庭で、ユーフェミアと走り回っていたナナリーの足と目の自由を失ったのだ。
ナナリーとユーフェミアがルルーシュを構っては大きな声で笑いながら、ルルーシュを困らせて、駆け回って…。
そんな光景を母であるマリアンヌが目を細めて見ていた…。
あの幸せをぶち壊したのは…あの事件だった…。

 目の光を失っていたルルーシュだったが…スザクにそう言葉をかけた時には先ほどの冷たい目とはちょっと違う瞳をしていた。
冷たい瞳の中に…悲しい光を見た。
そこに…ルルーシュのここまで力を発揮せねばならなかった要因となった事件がルルーシュに残した傷の深さを知る。
「お前たちは周囲にいるラティスの護衛達の始末を頼む…。人数から見て一人3人だ…。誰一人死ぬ事も撃ち損じる事も許さん!死ぬ事も撃ち損じる事も大罪と思え!」
ルルーシュが入ってきたSPたちに命じた。
「スザク…お前は道を開け…。私が王の懐まで行き、私自ら王を捕らえる…」
「!」
ルルーシュの言葉にスザクは驚きを隠さない。
これまでそう云った実動隊としての仕事など、ルルーシュはした事がない。
確かに前線に立つが、その場ではルルーシュは指揮官であり、自ら戦いに身を投じると云う事はしてこなかった。
それはルルーシュが自分の役目を知っていたからだ。
そして、自分自身がやるべき事を理解して、自分自身の使命を自覚していたからだ。
常に冷静さを保ち、自分を律していたルルーシュが…こんな形で自らを縛りつけているものを断ち切っている。
否、断ち切らされたと云うべきか…。
「お前…そんな事…」
「母上の仇…そして、ナナリーの視力と足を奪った者達を…僕は決して許さない!」
完全にルルーシュの感情だと解る。
これまで大抵の事ではルルーシュは自分を『僕』と呼ぶ事がなかった。
それが…完全に理性が吹っ飛んでいると云える様な…そんな状態となっている。
しかし、ルルーシュがこんな状態でそんな風に王の前に突っ込ませてしまっては…ルルーシュは撃たれる事は…火を見るより明らかだ。
元々、そう云った実戦を得意としないルルーシュだ。
王のすぐ傍に立つ大臣の真正面に突っ込むともなれば確実に的になる。
大臣もこの状況を見れば王を守るために玉砕覚悟で向かって来る。
「ルルーシュ…道は開いてやる。でも、俺もルルーシュと一緒に行く…。全ての準備をして、お前の望み通り…お前の手で王を捕らえさせてやるさ…」
「スザク…」
スザクの言葉にルルーシュが多少なりと冷静さを取り戻したのか…少しだけ声が冷静さを取り戻した事を教えている。
「お前は…沢崎を捕らえてくれた。父さんの仇を…ちゃんと裁いてくれた…。だから、これはお前の騎士としてではなく、枢木スザク個人として…ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア個人に協力するんだ…。あの時の借りを返す為に…」
ルルーシュがシュナイゼルの軍に入った段階で…こんな形でルルーシュを『個』として扱われた事もルルーシュ自身が誰かを『個』として扱った事もない。
それ故に…驚きを隠せないが…。
そして、今はその事を自覚する事も出来ないが…。
後に、スザクのその言葉が…ルルーシュに対して大きな変化を齎す事となる。
「解った…。スザク…私はお前のその気持ちを借りよう…。ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア個人として…」
ルルーシュがそう云うと…
「ああ、解った…」
スザクは騎士としての言葉を返すのではなく、一人の『人』として言葉を返したのだった…

To Be Continued

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2011年02月18日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 12

コードギアス メガ萌えのルルーシュ 3



 ここである意味、このお話しの中で最強のラスボスの登場である。
どう考えてもあの本編のラスボスはシャルルパパでもなければシュナ兄でもない。
灯台もと暗しとはよく云ったもので、大どんでん返しとしてはまぁ…ありがちなパターンだろう。
ここでは恐らく、スザクにとって相当要注意な相手だと云える。
ミレイとは違った意味で…。
登場早々、確実にスザクをターゲットに牽制しているのだ。
しかし、間違ってはいけないのは彼女はルルーシュが思っている様なルルーシュの味方ではない。
あくまでも
『お兄様の愛は私一人のもの!それを邪魔する者はたとえ誰であろうと容赦はしません!』
と云う事なのだ。
最終的にはルルーシュファンの怒りを一身に浴びる羽目を食ったキャラクターとも云える。
最終回のあれは流石にないだろう…と思ったのは恐らく、この作品の書き手だけではあるまい。
あのままのキャラでは流石に話しが進まないので、ここではナナリーにとっての最大の敵は『最愛の兄を奪おうとする存在全て!』と云う事にしてある。
だから、その相手が父親であろうと、異母兄であろうと、自分達を匿ってくれている家の令嬢であろうと、兄の親友であろうと関係ないという事でお願いしたい。
そんなキャラクターが仲間入りした時点で…。
恐らくここにいる誰よりも窮地に立たされるのは他でもない…ルルーシュだろう。
「ナナリー?これは…企画として決定した訳じゃなくて…」
ルルーシュがなんとかナナリーに対して
『そんなもんに興味を持ってはダメだ!』
と云う気持ちをやんわりとした云い方で伝えようとするのだが…。
周囲にはそんなルルーシュの意図を完全に無視して、ルルーシュがその方向へ行かないようにしようと悪あがきをする事を阻止しようする輩が沢山だ…。
なんで、ここがアッシュフォード学園だったのだろうかと…。
いっそ、シャルルパパやシュナ兄がいたら更に面白い事に…(ゲフン、ゲフン)
まぁ、そんな面白妄想はともかく…現在のこの状況でも普通にルルーシュにとっては危機的状況である。
イレギュラーとナナリーに弱いルルーシュにとって、現在は最悪の状況と云えるだろう。
少なくとも…。
静観している人物達は素直にそう思っている。
ルルーシュ以外の当事者となっている人物達はこの先…どんなふうに料理しようかと…じゃなくて、収拾を付けて行こうかと模索中である。
勿論、そこにはその当人の意思しか含まれていないが…。
まぁ、こう云った話しの場合、ルルーシュの意思が尊重された事など一度もない訳だが…。
そんな状況の中、ナナリーの登場により更に窮地に立つ事となった訳だ。

 ここで、ナナリーの登場で確実に逃げ道を失ったと…周囲のメンバー達は思うのだが…ナナリーの一言にその登場を素直に喜んでいいのか、少々悩んでしまっている。
多少なりと人間的な良心の呵責が動いたのか、それとも、ルルーシュを怒らせると…と云うよりもルルーシュにへそを曲げられてしまうと困る人物達は複雑な顔をしている。
しかし、そこで空気の流れに逆らおうと思う者は一人もいないのだ。
現在、3人となってしまったこの場の支配者候補者を見比べながらいかに、自分への被害を減らして行くかを考えなくてはならないからだ。
ここにいる3人…それぞれ属性は違うが確実に世界をも支配できるのではないかと思われる様な人物達ばかりだ。
「お兄様…まさか…公衆の面前でその様な格好を…?」
「あ…何を云っているんだ!ナナリー…。俺がそんな…」
可愛がっている最愛の妹にその様な事を訊ねられてしまい、完全にしどろもどろになってしまうルルーシュだ…。
ぶっちゃけ、あの物語の中で最強のキャラクターである事を改めて認識させられる。
目が見えなかろうと、歩けなかろうと、KMFを操縦できなかろうと…。
そんな事は関係なかった。
その、優しげに笑いながら背後に背負う真っ黒で凍りつくような空気があるだけでその場にいる『人間』はそのオーラにひれ伏すだろう。
何故、ルルーシュにそのオーラを感じさせないのか…それを考えた時に少し考えると更に怖くなってしまうが…。
「お兄様…私の前でそう云った格好するのは構いません…。でも、お兄様を顎で使う様な女性やら、オオカミの皮を被ったオオカミの他にもまだまだ、見せてはいけない相手はいるのですよ?」
いきなりのナナリーの説教が生徒会室の中で繰り広げられている。
今、ナナリーの云った人物が誰であるのか…まぁ、すぐに解るので敢えて説明は割愛する事にしよう…。
ナナリーの説教はまだまだ続く…。
「よろしいですか?この学園には隠れオオカミがたくさんいるのですよ?お兄様が思っている以上にこの学園は危ないのです…。まぁ、ブリタニアの王宮のダメおやじやらむっつり兄貴よりは多少、マシでしょうが…」
え?
えっと…今、なんと仰られたのでしょうか?
この場にいらっしゃる女王様は…。
ちょっと…自分の耳を疑ってしまったのは…敢えて静観する側出居る事を選んだ面々である。
「いいですか?お兄様…。お兄様はアッシュフォード学園の制服を着ているだけでも大変危険な状態に晒されているのです。お兄様を狙う野獣どもはいつでも、どこでもお兄様の隙を狙ってお兄様の貞操を奪おうとしているのですよ?」
この言葉にルルーシュが凍りついてしまっている。
まぁ、気持ちは解らんでもないが…。
最愛の妹に…しかも、真綿でくるむように守らなくてはならないと思っている妹に…こんな事を云われているのだ。
ルルーシュの中でこれは悪い夢であると思い込みたいと云う気持ちが大きくなって行く。
「ナナリー…その辺りは確かに事実だけど…。そこまで露骨に云うのは…。流石の僕でもルルーシュのダメージを考えるととても云えないよ…」
ここで、ナナリーにとって最凶の敵であるスザクの登場だ。
とはいってもルルーシュにとって何のフォローにもなっていない。
「まぁ…お兄様の貞操を一番近くで狙っている一番の危険人物なスザクさんがそんな事を仰るなんて…」
「ナナリー…未来の『お義兄さま』に向かってそれはひどいんじゃないの???」

 ここで、結構大変な争いが勃発…。
ミレイは『ちっ…出遅れた…』と悔しそうな顔をしているが…。
「誰が『お義兄さま』ですか!お兄様は私と結婚するんです!だって、本編では私がブリタニアのトップに立っているんです。ブリタニアの法律をこの私の手で変えて、お兄様を私の後宮に…」
その、ツッコミどころ満載なナナリーの言葉に…。
誰も何も云えない…訳はない…。
「フン…僕は本編では『ゼロ』だからね…。『ゼロ』は無国籍だし、どこの国の法律にも縛られないよ…。それに、紙切れ一枚の契約なんてそんな薄っぺらな絆じゃないんだよ…僕達は…」
あ…云っちゃった…。
まぁ、婚姻届なんて、戸籍と住民票を作成して政府がとりあえず国民一人一人を整理整頓する為のシステムだ。
尤も、最近では戸籍も住民票もあんまりその役目をはたしていない。
既に死んでいる人間が役所に届けを出さなければそのまま生きている事になっているのだ…日本の場合…。
行政が国民の所在を把握する為のシステムである戸籍と住民票だが、時代の変化によってかなりの弊害が出ているし非嫡出子などが差別的扱いを受けるなどの問題なども棚上げされてしまっている。
そんな事はともかく…。
「何を仰っているのです!日本でもブリタニアでも同性同士の結婚は認められません!」
「だから…僕、本編じゃ無国籍…。ルルーシュだっていない事になっているんだから別にいいじゃない…」
どこまでも姑息に空気を読まない男…枢木スザク…。
周囲では
―――凍りついている場合じゃないぞ…ルルーシュ…。
と思う者もいる訳なのだけれど…。
そこに横やりを入れる勇気のある者はいない。
しかし、一体どこからルルーシュのコスプレの話しからこのような結婚話になってしまったのか…。
「あ…あの〜〜〜イベントでルルーシュにどんなカッコをさせようか…って云う話しじゃなかったのか…?」
隅っこでじゃんけんに負けたらしいリヴァルが口を挟んで来た。
少々、表情が恐怖なのか…引き攣っているのが解る。
「リヴァルさん…」
ナナリーがにっこり笑ってリヴァルの名前を呼んだ。
しかし、その笑顔がどす黒く…恐ろしく見えるのは多分、リヴァルの気の所為ではない…。
「は…はいぃぃぃぃ…」
まるで蛇に睨まれた蛙の様である。
この時、リヴァルはじゃんけんに負けてしまった自分の運命を呪う。
ルルーシュの妹、ナナリー…。
白い皮を被った魔女である。
しかも、周囲にそのオーラで牽制をかけながら、ルルーシュにはその気配を一切感じさせないと云う凄技をやってのけている。
「リヴァルさん…お兄様にそんな『萌え♪』…じゃなくて、『魅惑的』…じゃなくて、『卑猥』な格好をさせていいと思っているのですか?」
ここで…ここにいたメンバー全員が思う…。
―――ナナリー…ナナリーがルルーシュに対して一番如何わしい感情を抱いているんじゃ…
と…。
しかし、命が惜しいと思う者達はそれを言葉に出すなどと云う愚行には走らない。
今のナナリーならその眼力だけで人を殺める事が出来そうである。

 そんな生徒会室の中でのんきに放心状態になっていられるのはルルーシュだけだ。
と云うか、そんな放心状態の中、話しはどんどん先へと進んで行く…。
それこそ、ちょっと目を離した隙において行かれた方にはとてもではないが追いつけない程のスピードで…。
それに、あの本編…よっぽどストレスがたまっていたのか、ナナリーがフルパワー全開で本性を表している。
アッシュフォード学園高等部の生徒会室…。
現在の支配者はナナリーである事は間違いない。
見た目的にそう云った雰囲気がないものだからつい、勘違いしてしまうが…。
ナナリーは兄であるルルーシュに甘えられるポジションを維持する為にそれはそれは、並々ならぬ努力を重ねて来ているのだ。
血縁者、年下の女の子に弱いと云う…その属性をフル活用して…。
そして、ナナリーにしっかり騙されているルルーシュの誤解を決して解く事無く…。
否、更に誤解を深めてがんじがらめにし続けてきた。
そうやって完全シスコンなルルーシュを作り上げてきたのだ。
そう…結婚生活でも女性が主導権を握っていた方がうまく行くと云う…。
この兄妹の場合、妹が手綱をとり、ルルーシュがそう云った黒い欲望に対して何も気づかぬまま…妹を守る事に幸せを感じる様に作り変えて行ったのはナナリーである。
誰に何を云われようとそこだけは譲らないと云う…強い決意…。
それをナナリーは身につけ、決して兄から恨まれる事も憎まれる事もなく、最上級のポジションに着き続けてきたのだ。。
そう云った意味では結構努力しているスザクとミレイ…ちょっと悲哀を感じてしまう…。
さっきまでルルーシュを傍若無人にイジリ倒していた筈なのだけれど…。
上には上がいる…。
そして、濃い灰色も真っ黒が現れてしまえばその真っ黒に飲み込まれてしまう…と云う事だ。
―――ふっ…スザクさんもミレイさんも…お兄様の最愛の妹である私に敵う筈もないでしょう???
心の中でほくそ笑んでいる事を…ルルーシュ以外のメンツは気付いている。
ルルーシュが妹に対して自分好みの理想を自分の中に作り上げてしまった事に派委員があるのかもしれない…。
「お兄様?そう云った淫らな格好は私の前以外ではしないで下さいね?私はお兄様の妹ですし…そう云ったお兄様の御姿を堪能しても問題はないと思いますよ?」
えっと…どこから突っ込んでいいのか解らない程、色々突っ込みたいのだけれど…。
「それに…お兄様がビキニの水着でウサギさんの耳では…ちょっと『萌え♪』が足りません…」
ナナリーのその一言に…生徒会室の空気が更に固まった。
今…なんと云ったのか…もう一度巻き戻して聞きたいと思えてしまう様な言葉を聞いたと…その場にいるメンツは思った訳なのだけれど…。
「余り露骨に肌を見せるよりも…ちょっぴりきわどい衣装を着るとか、スケスケの布を軽く巻きつけるとか…そちらの方が…」

 ナナリーの言葉…。
確かに想像すると『萌え♪』なのだけれど…。
確かにその通りなのだけれど…。
ルルーシュにとってナナリーのおねだりは絶対だ。
何せ、ナナリーの『優しい世界でありますように…』と云う、余りに抽象的で解り難いその願いの為に…。
『黒の騎士団』などと云う不安定な組織を作ったかと思えば、あんなまとまりのない、役に立たない集団を世界に知らしめるほどの組織に作り上げ…。
結局そんな脆い集団ではナナリーにとっても兄をツケ狙う敵でしかないシュナイゼルの揺さぶりでルルーシュを裏切ったと云う…。
そんな頼りない集団をあそこまでまとめ上げてしまったのだ。
よくよく考えてみれば、ルルーシュ自身、『黒の騎士団』など、信用していなかったと思われる。
もし、ルルーシュが『黒の騎士団』の中で誰か一人でも信用していたのなら…自分が『ゼロ』である事を打ち明けていただろう…。
そう…『ロスカラ』のライに対してカミングアウトしたように…。
カレンの場合、単純にばれちゃっただけだし、ディートハルトの場合、『ゼロ』の正体が誰であろうと関係なく、『ゼロ』の作りだすカオスに執着していただけだ。
そんなルルーシュだ…。
ナナリーに目を潤ませながらお願いされては…きっと…。
その場で陥落するに違いない。
と云うか、断定できる。
「ちょっと…ナナリー…。ルルーシュにそんなカッコをさせて何をする気だい?せっかく記憶のない時のルルーシュの秘蔵(監視)ビデオ…ダビングしてあげたのに…ちょっとだけだけど…」
「スザクさん…あんなお兄様が授業中に居眠りしている時の映像だけよこして恩に着せるおつもりですか?私が欲しいのは…」
おっと…。
これ以上はちょっとまずいので…暫くはナナリーがどんな事を望んでいるのかを妄想して頂く事にしよう…。
そして、ナナリーのその熱弁が10分ほど続く…。
その話しだけできっと、オタクな腐女子たちは勝手に妄想をふくらませ、ネタを拾って行くだろうし、中にはそれでもだえて倒れてしまう者もいるかもしれない。
良く考えてみれば、記憶を書きかえられていた時のルルーシュは超激レア映像ばかりに違いない。
それは回想映像の中からでも容易に想像が出来る。
「あれは僕が命懸けで得たあの地位によって得られた貴重映像だ!あれは誰にも見せられないね…」
「では、皇帝であるお父様にはどうしていたのです?お兄様の監視に着いての報告は…」
「あんなもん、適当に報告書だけ書けば十分だって…。皇帝陛下だってあの時…僕にルルーシュの監視役を命じてくれればさ…普通に監禁して業を煮やしたC.C.をおびき出すって事も出来たのにさ…」
とんでもない会話が続く…。
スザクはあの時点で単純にあの地位を利用していただけなのだ。
それは日本の為ではなく、自分の為に…。
まぁ、確かに、軍に『ゼロ』を突き出してしまった場合、そのまま適当な軍事裁判にかけられて葬られてしまう可能性もあったわけだ。
ルルーシュは皇子とはいえ後ろ盾が一切ない状態だった訳だから…。
それなら、皇帝に突き出せば…あわよくば自分の監視下に置いて貰えちゃうかも…なんて考えていたようだが…。
シャルルパパもルルコンな訳で…こんなヨコシマな感情を抱いたラウンズに任せる訳にはいかなかったのだろう。
まぁ、解る…。
さて…ルルーシュ…。
このまま呆けていると…なんて心配は次回へ持ち越す事にしよう…。
妄想はまだまだ続く…(え?)

To Be Continued

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2011年02月13日

皇子とレジスタンス 〜兄を想う〜

 カノンが政庁の総督執務室へと歩いて行く。
流石にこの政庁の中心部に近付けば近付く程、ブリタニアの国是を叩き込まれたエリートたちが増えて来るから、先ほどのシンジュクゲットーのテロリストたちの様な態度をとる者はいない。
このエリアのナンバーズ達はルルーシュが総督となって、甘やかし続けてきたからブリタニア人とイレヴンが対等だと思っているようだが…。
現在のこのエリア11ではブリタニア人は支配者であり、イレヴンは被支配者である。
差別だの人権侵害だの、そんな状況の中で問える様な状況ではない。
ブリタニアに支配されるまでの日本は国民主権の民主主義国家であったのだ。
ルルーシュはその事を充分に理解し、利用してこのエリアを治めてきた訳だが…。
それがある意味、裏目に出ている部分がある。
それが、先ほどの扇の態度だろう。
―――これでは…枢木スザクの評価を下げてしまいかねないけれど…彼の年齢を考えれば仕方ないかしら…。ルルーシュ殿下と同じ事を…彼に出来るとは思う事が間違っているものね…。
自分の中でシュナイゼルやルルーシュを基準に物を見ている事に苦笑してしまった。
彼らはブリタニア皇族の中でもかなりの実力者だ。
シュナイゼルもルルーシュも環境は違えど、幼い頃からの自分を取り巻く環境の中でこうした形で実力を発揮する事となってしまった。
ルルーシュがあんな形で皇位継承者として指名されなければシュナイゼルが皇帝に…ルルーシュがその宰相に…と云う事になっていた筈だ。
カノンとしても、あの発表をされた時点ではシュナイゼルを皇帝の座に着かせるべく、ルルーシュの排除を行っていたかもしれない。
ただ、カノンにとってシュナイゼルの意思が最優先だ。
シュナイゼルがそんな身分や地位に興味がない事は解っていた。
ただ、その実力ゆえに彼の役割を果たしていた…と云う事も解っていた。
それでもカノンは望んでいた…。
シュナイゼルが皇帝の座に着き、その隣にルルーシュが宰相として立つその姿を…。
しかし、今、シュナイゼルが望んでいるのはその逆だ。
と云うのも、シュナイゼルが皇帝の座に着こうと思うとまずはルルーシュを排除しなければならない状態に陥ってしまったからだ。
現皇帝がルルーシュを自分の後継者に…と発表した時点でルルーシュがどのような立場であれ、どのような実力であれ、どのような出自であれ…。
ルルーシュが生きている限り、ルルーシュが現在の神聖ブリタニア帝国第一位皇位継承者だ。
ブリタニアは皇帝の言葉は絶対…。
ルルーシュが指名された時点でルルーシュ自身が死なない限り…その言葉が取り消される事はない。
皇帝自ら示される次期皇帝となる人物とは非常に危険な立場となる。
皇帝自身が『ヴィ家』に生まれた二人の皇子、皇女に対して特別な感情を抱いている事は…カノンもうすうす気づいていた。
元々母親が庶民の出であると云う時点でそこに政略的なものが含まれていると考える事が不自然だ。
となると…マリアンヌ皇妃が皇帝の寵愛を受けていたと云うのは…皇帝のその気持ちが彼女に向けられての事だと解る…。
―――確かに…他の皇妃としては気が気じゃないわね…

 そんな事を考えている内にその、皇帝が寵愛した皇妃が生んだ皇女のいる総督執務室の前まで来た。
―――コンコン…
ノックするとすぐに返事が来た。
『どなたですか?』
恐らく、あのニュースから警戒しているのだろう。
中からルルーシュが二人の皇女の守り手としてこのエリアに残して行ったライが答えてきた。
「カノン=マルディーニです。シュナイゼル宰相閣下からのお話しをお伝えに参りました…」
カノンがそう云うと、暫くして扉が開き、ライがカノンを出迎えた。
これは…現在のユーフェミアとナナリーが非常に危険な立場にいると云う事を示しているし、ライもその事をきちんと弁えている証拠だ。
本来であれば、帝国の宰相の使いに対して扉の前で待たせると云う行為は何の地位も持たない皇女に許される行為ではない。
現在のカノンは神聖ブリタニア帝国宰相、シュナイゼル=エル=ブリタニアの代理で来ている使者だ。
「お待たせしました。どうぞ…」
ライがカノンに頭を下げて執務室の中へと促す。
この雰囲気を見ると…あの発表以来、彼女達も危険な目に遭っていると云う事が解った。
「お久しぶりね…ライ准尉…」
「はい…。あの…」
立ち話しの状態でライがカノンに対して何かを訊ねようとしている。
何を訊ねようとしているかは…解る。
本来なら許されない事ではあるけれど、気持ちは解らなくもない。
「貴方が訊きたい事は解るわ…。私もその事を皇女殿下方にお話しする為に来たの…。貴方も…あの発表以来、よくナナリー皇女殿下とユーフェミア皇女殿下を守って下さったわ…」
カノンが笑みを見せながらライにそう語る。
そして、その後、執務室の机で執務をこなしている二人の皇女の前に跪いた。
「ナナリー皇女殿下、ユーフェミア皇女殿下…。此度の御役目、立派に果たされ、安堵致しました。ブリタニア本国にいるシュナイゼル宰相閣下からの御言葉をお知らせしたく、御前に参りました…」
その言葉に…二人の皇女がいち早く反応する。
否、ここまでカノンが来たと云う事を知って、そしらぬ振りをしていた事は解る。
カノンの言葉でやっと、そう云った反応を見せた事も…。
「あ…あの…。お兄様が…」
ナナリーが口を開いた。
その声にも顔にも色々と複雑な感情が入り込んでいる事が良く解る。
これまでナナリー自身、考えた事もない事が現実となっているのだろう。
ナナリー自身、自分の立場を解っていた。
ルルーシュがエリア11に赴任し、『リ家』にその身を預けられた時に…。
確かにユーフェミアもコーネリアもナナリーを大切に、大切にしてくれた。
しかし、周囲は…。
マリアンヌの遺児…皇帝の血が流れているとはいえ半分は庶民の血の流れるナナリーに対して…。
一応、皇族と云う事で表向きには恭しい態度を見せてはいたが…。
目の見えないナナリーは人の感情に敏感だ。
それ故に…自分達の立場を思い知らされ、それまでルルーシュがどれほど頑張ってナナリーを守っていたかを思い知ったのだった…。

 そんなナナリーを見て、ユーフェミアがナナリーを窘める。
彼女自身、ずっと姉姫に守られていたが…こうした形で執務を経験することで色々学習しているようだ。
「ナナリー…シュナイゼル異母兄さまからの御言葉があるのよ?まずは手を休めて、あちらできちんとお話しを聞きましょう…。ライ、お茶の用意を咲世子さんにお願いして下さい…」
あれから、アッシュフォード家も色々ナナリーの周囲の異変を予知したのか…イレヴンではあるが有能なメイドをナナリーの傍に置いているらしい。
「イエス、ユア・ハイネス…」
そう云ってライは室内のインターフォンを手に取った。
一時たりともこの二人から離れる事は危険であると…彼自身、自覚があるらしい。
それに、メイドは他にもいるが、状況がこのような状況なのでユーフェミアがアッシュフォード家から派遣されている篠崎咲世子を指名したところを見ると、どうやら、二人に与えられている居住区でも安心は出来ない様である。
「中々…大変な事になっているようですね…」
カノンがナナリーとユーフェミアが応接テーブルに着いたのを確認してから一礼してそのソファに腰掛けた。
「ええ…お姉さまも心配されて、お姉さまも戦場で大変なのに…グラストン・ナイツを送って下さいました…。詳しい事を…お話し頂けますか?カノン=マルディーニ伯爵…」
ユーフェミアが隣で腰かけているナナリーを横目で気遣いながらカノンにそう、告げる。
ルルーシュがナナリーの年齢の頃には前線に立っていたが…ナナリーにルルーシュと同じ強さを求める事は間違っている。
その恐怖を必死に押し隠そうとしているのが良く解る。
尤も、彼女がここでルルーシュの様に毅然とされてもカノンとしては複雑になるが…。
「まずは…結論からお話ししましょう…。今回のラティス公国との交渉…確実に決裂することが前提でのお話しです。それは…皇女殿下方も御承知でしょう?」
ルルーシュの花嫁候補として送られてきた姫がニセモノであり、そのニセモノの姫がルルーシュを殺そうとしたのだ。
そんな国相手にまともな交渉など出来る筈もなく、また、ブリタニア側もラティス側も互いに相手に妥協するつもりなど毛頭ないと云う事だ。
「解ります…。でも…そんな国にお兄様が…」
「これは…ある意味仕方のない事です。ラティス公国との戦いで結局今回の原因を残してしまったと云う事ですし…。確かに『ルイ家』の縁者となる国ですから…あの時点で完全に我が国のエリアにすると云うのは不可能な状態ではありましたし…」
状況説明されなくても…あの時点ではラティスを完全無力化する事は不可能だった。
それを解っていてラティスもブリタニアとの戦いを決めたのだろう。
「それに…お兄様が…その…」
ナナリーが云い難そうに…と云うよりも本当はその先を知るのが怖いと云った感じに言葉を紡いだ。
「ええ…私もその席に同席して居ました…。シュナイゼル宰相閣下と共に…。現在の神聖ブリタニア帝国第一位皇位継承者は…ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア殿下ですよ…。ナナリー皇女殿下…」

 カノンの言葉に…ナナリーが複雑そうは顔をするし、ユーフェミアも心配そうな顔をする。
マリアンヌが暗殺された経緯は…何となく知っているから…。
未だに犯人が誰かも解らないが…それでも、本来、庶民に頭を下げるなど…あり得ないブリタニア王宮の中でそれを不服に思っていた者達が多くいた。
皇族、貴族を問わず…。
マリアンヌは元々軍に所属し、自らの力で騎士侯にまで上り詰めた。
騎士侯とは貴族ではあるが、本人一代限りのものであり、貴族と呼ばれる存在の中では一番身分の低い存在であり、貴族の中では蔑まれる存在でもあった。
それでも、軍の中ではもっと厳しい戒律、身分や地位による差別区別があったのだから、マリアンヌ本人はそんな家の力のみので現在の身分と地位を守っている者達に対しては関心も持たなかったのだろう。
そんなマリアンヌの態度が他の皇族や貴族達の気に障った部分もあるし、コーネリアやジェレミアなどには非常に魅力を感じる存在となった理由ともなった。
しかし、コーネリアやジェレミアの様な存在は王宮内では稀有な存在で…策略、謀略駆け巡るこのブリタニア王宮の中ではそれだけでは自身を守る事が出来なかった。
そして…暗殺と云う卑劣な手段でその存在を消された。
「あの…マルディーニ伯爵…」
ナナリーがカノンの言葉の後…どれほど時間を置いてからなのか…カノンに声をかけた。
「なんでしょうか?ナナリー皇女殿下…」
「私も…お兄様も…自分達の出自の事は…良く理解しております…。だから…お兄様だってユフィ異母姉様よりも早く生まれた皇子なのに…ユフィ異母姉様よりも皇位継承順位の低い皇子でした…。だから…私達は…そんな事を考えた事もなくて…」
まさか…ナナリーからその様な言葉をかけられるとは思っていなかった。
だから今度はカノンの方が驚いてしまう。
それでもふっと笑みを漏らして応えた。
「確かに…ルルーシュ殿下も驚いておいででした…。皆の前で逆らう事は許されないと皇帝陛下の口からそう云われてしまっては…驚くのも無理ありません。恐らく、あの驚きの空気の中で一番驚いていたのはルルーシュ殿下だったと思います…。そして、一番冷静だったのはシュナイゼル殿下でした…」
カノンの言葉…。
不思議だと思った。
それは、ナナリーもユーフェミアも共通していた。
と云うのも、シュナイゼルは自らブリタニア皇帝となり、ルルーシュを宰相に…と思っていると…彼女達は思っていたからだ…。
「まぁ、驚かれるのは無理もないでしょう…。でも、シュナイゼル殿下は今、ルルーシュ殿下に皇帝の地位に着いて頂きたいと…お考えなのですよ…」
カノンの言葉…二人の皇女の頭に入ってきても…理解出来ない…と云った感じであるが…。
それはある意味仕方のない事なのかもしれない…。
これだけの急展開に着いて行けるのであれば、シュナイゼル並みに状況判断が早くそして、その先を見据える能力を持っていると云う事なのだから…

 二人の皇女がカノンの話しに驚いている間にも…。
ラティス公国の王宮では話しがどんどん進んでいる。
ラティス王のその表情の変化に…ルルーシュもスザクも…心の中では完全に臨戦態勢として身構えている状態だった。
これはシュナイゼルの云っていた『ルイ家』が今回の件に関わっていたと云う事が明白となり、そして、パラックスの身柄が捕獲された…と云う事だ。
となれば、現在、ブリタニアの皇位継承権第一位のルルーシュが手の内にあるラティスがどう動くか…。
パラックスがシュナイゼルに捕らえられたとなれば『ルイ家』の再興はまず、ないだろう。
パラックスが皇位継承する可能性は、ほぼ『0』に等しい…。
だから、ラティスとしてはブリタニアと交渉する上で最適な方法は…。
ルルーシュに対して媚を売る事はもう出来ない。
既に殺人未遂までしているのだから…。
しかし、ここでルルーシュを葬ってその亡骸をルルーシュを亡き者にして自らが皇帝に…と考える皇族に差し出せば、その先、ブリタニアとの太く強いパイプを作る事が出来る。
『スザク…』
ルルーシュが小声でスザクに声をかけた。
ラティス王の様子の変化に周囲がざわつき始めている。
恐らく、このような状況に陥ってルルーシュを葬る事は考えていなかったと思われる。
『ルイ家』はルルーシュの母であるマリアンヌの事を酷く妬み、恨んでいた。
それ故に…その経緯があった事はラティス王も知っていた。
ルルーシュは自分の母を殺した存在が今どこにいるのかも知らないが…。
そして、その皇子であるルルーシュの見事な働きに対して快く思っていなかった。
物理的理由、感情的理由が揃えば…彼らがルルーシュの命を狙うのは至極当然だろう。
ラティス王が怒りに打ち震えながら…右手を上げる…。
すると…それが合図だったのか…周囲にいた衛兵たちがルルーシュとスザクを取り囲む。
スザクはさっと、ルルーシュを守る様にルルーシュの前に立った。
これはルルーシュの中で見越していた事なのか…表情を変える事もない。
「ラティス王…貴方は国賓に対し、この様な振る舞いをされるとは…どう云ったご了見か?」
子供とは思えない程…酷く冷静で、そして、冷たい目でルルーシュがラティス王を見た。
その…『黒の死神』と呼ばれるようになった所以のその瞳…。
酷く冷たく…見据えられているだけで身体が凍りつくような錯覚を覚え、年端もいかない少年に対してラティス王が一歩、後ずさってしまう。
その冷たい瞳に加え…先ほどまでとは別人の様な…低い声に…周囲を取り囲んでいる兵たちも怯んでしまっている。
「これは…私が神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアと御承知の上での振る舞いであろう…?ならば…宣戦布告ととって問題はないと云う事かな?」
子供が話しているとは思えないその言葉と声に…周囲の空気が凍りついている。
しかし、ルルーシュとスザクが不利であると云う事は変わらない状況下の中…冷たく沈黙した空気の中…時間が流れて行くのだった…。

To Be Continued

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2011年02月09日

『Amethyst Eyes』開設2周年記念リクエスト 11

コードギアス メガ萌えのルルーシュ 2



 さてさて…。
スザクからの提案で話しが『ウサギ祭り』へと傾いて行く…。
まぁ、なんだ…。
色んな意味で妙な妄想をしてしまいそうになるのは気のせいか???
意外と探してみるとウサギキャラとは多種多様だ。
マイ○ロの様なすっとぼけキャラからピーター○ビットの様な絵本キャラ…果てはパンクハートポ○ク(これ知っている時点で歳がばれる…(; ̄― ̄川 アセアセ))の様なギャグキャラまで…。
「ウサギって…どんなカッコするの?」
その話しに真っ先に食いついて来たのは、(多分)アッシュフォード学園生徒会の中で一番好奇心の強いシャーリーだった。
確かに…キャラクターと云い、種類と云い、中々種類が豊富である。
「僕はオオカミのままでいいや…」
ここで空気を読まない枢木スザク…。
一体何を考えているのか解らない。
深読みすると…否、更に追求しようものなら…。
―――結構、色々と自分の身が危ういかも…。この男…『オオカミの皮を被ったオオカミだ!』なんて宣言しているし…。
と云う事になる。
きっと、ウサギのカッコをさせた誰かさんを襲う気満々である。
それだけはここにいるメンバー全員…口には出さなくとも共通して考えていた。
まぁ、そう云う展開を期待しているのは、ある意味自然の成り行きだ。(え?)
しかし、スザクが直球ストレートに『オオカミのカッコでいい』などと宣言してしまっていて…。
これをどう収拾付けるべきかはきっと、誰にも解らない。
ただ、この先、この話題の中心に来るのは…。
その本人含めて全員が何となく確信している。
完全に、狼に狙われた子羊…じゃなくて…狼たちに狙われた子兎…と云ったところか…。
今更誰も逃がすつもりはないだろうし、本人にその意思がなくとも、自分に災いが降りかかって来る事を回避する為に喜んで、この場にいるこの場の支配者に進呈差し上げるに違いない。
ただ…どちらの支配者に捧げるのかは…。
これからの攻防を見ながら決める事…の様な気がするが…。
現在、暫定的にいけにえとされたのは1名…。
そして、暫定的にこの場の支配者と認定されているのは2名…。
中々選択の厳しいところだが…。
ただ、支配者と認定されている片割れの方は…。
確実にここにいるメンバー達の援護などなくとも強引に『勝ち』を取りに行くだろう。
本編で『間違った方法で得た結果に価値はない…』などと、見事にヒーローものの主人公のお決まりであり、100点満点であり、ベタ過ぎるセリフを吐き続けていたが…。
しかし、この期に及んで手段など選んでいられるだけの余裕などない事は…。
その自分の相手となっている存在の実力を考えた時にないと云う事に自覚はある。
そして、本編でなければ結構おおらかになっているのか…。
―――まぁ、自分が確実に勝つための手段だよね…。
などと、色んなたった一人のいけにえなウサギさんを獲得する為に頭の中で色々と試行錯誤している。
そして、断っておこう…。
ここでいけにえ…もとい、ルルーシュの意思は確実に完全無視される事になる。

 まぁ、話しはそれまくっているが…。
「私、アメリカンファジーロップがいい…。って云うか、キャラクターじゃなくてもいいよね?」
そう云い放ったのがシャーリーだった。
結構乗り気の様である。
確実に、その着ぐるみを作るのはルルーシュと云う大前提だ。
こうしたイベントで、レンタル衣装で賄えない場合に誰を当てにするかと云えば、たった一人しかいない。
ミレイの場合、料理は出来るが、裁縫が出来るなどと云う話しを聞いた事がない。
他の女子は確実に出来ないと断言できる。
そして、男子もスザクとリヴァルでは全く当てにならない。
ともなると、こう云った事に凝るけれど、結構完璧主義なルルーシュは非常に役に立つ。
本当に役にたつ。
ルルーシュの場合、とりあえず、本気で迷惑だと云っているのは解るが…。
しかし、やり始めると…結局…
『もう、こんな事はやめて下さいね!』
とは云ってはいるものの…。
結局、云っただけに終わる…。
と云うか、ミレイが確実にその蟻地獄の様な罠を仕掛けて引きずり込んでいる…と云った感じか…。
ミレイ自身にその自覚は殆どない。
ただ、ルルーシュの事をよく理解しているという自覚は多少ある。
それは、ルルーシュを使う上でいい切り札となるのだ。
その為に、ルルーシュにとって不本意なイベントを何度、開催され、その度に準備の時には多大なる負担を押し付けられてきた。
今回もまた、その方向に傾いて行く事が簡単に予想される。
と云うか、こんな思いつき企画で一人、苦しむ羽目になるのかは…。
今となってはルルーシュ自身、考える事もなくなり…。
ルルーシュが考えなくなった時点で、ミレイは更に無理難題をエスカレートさせていった…。
「でもさぁ…。ルルーシュなら着ぐるみじゃなくても…」
ここで、もう一人の裏切り者が登場した。
いつもルルーシュを頼りにしていて、ルルーシュもなんだかんだ云いながら助けているリヴァルだった…。
こいつは
『愛の為なら…友達も敢えて売る!』
と宣言し、ルルーシュに云われたくないと…思ってしまう様な…。
『地味に最悪だ…』
と云われてしまっているキャラクターだ…。
こんな事で驚いていてはいけない…。
リヴァルはこのメンバーの中で自分の事を一番よく理解しているキャラクターだ。
平凡な人間にとって、それはこの世を生きて行く上で結構重要な要素である。
何せ、アッシュフォード学園の生徒会…。
化け物ぞろいだから…。
これだけのメンツがいた時に、自分自身を理解しているというのは…とても重要である。
リヴァルは誰に教わった訳でもなく、自分でそうしようと思った訳でもなく…。
自然とその術を身に付けた…ある意味、この先一番賢く生きていけるであろう人物だと思われる。
ただ、これだけのメンツが揃った場合、さっさと逃げないとかなり、彼の場合は泣きを見る事になりそうではあるが…。
そんな、どうでもいい能書きをこいている間にも話しはどんどんと進んで行く事になるが…。
当然…その矛先はルルーシュである事は…改めて云うまでもない。

 で、先ほどの『着ぐるみじゃなくてもいい…』の言葉…。
一体何を指しているのか…。
「着ぐるみじゃなくていいって…」
「ああ、そうか…。猫祭りの時みたいにうさぎ耳としっぽだけでもいいかもね…」
シャーリーのその言葉に…ルルーシュは一瞬だけほっとするのだけれど…。
しかし、その言葉に追随する他の者達の考えはそんなルルーシュに更なるダメージを与える事になる。
「じゃあ、『R2』本編のカレンが最初に来ていたみたいなバニーガール???」
そこで一番出されたくない提案…だと思っていたルルーシュが甘かった…。
「ちっちっちっ…リヴァルったら…それじゃあベタ過ぎじゃないの…」
そこで不穏過ぎる発言をかましたのはこの生徒会室…否、アッシュフォード学園の支配者であるミレイ=アッシュフォードだった…。
ミレイはルルーシュをイジリ倒す事に関しては『コードギアス』シリーズ内では1、2を争うであろう…。
なぜ、1番にならないかと云うと…『コードギアス 反逆のルルーシュ』には、シュナイゼル=エル=ブリタニア、シャルル=ジ=ブリタニアと云う、ある意味、ルルーシュの『萌え♪顔』を見る為になら何でもやってしまうルルーシュの肉親がいる…。
ルルーシュは決して認めたくはないのだろうが、彼らはルルーシュと血の繋がっている肉親である。
ついでに、今この場にはルルーシュの『萌え♪顔』の為に空気を読まないキャラに変貌してしまったスザクまでいるのだ。
実は、この『コードギアス 反逆のルルーシュ』とはルルーシュをねじ伏せながら『萌え♪顔』を引っ張り出す為の作品であったのではないのかという疑いさえ抱いてしまう。
まぁ、それはともかく…完全に追い詰められた子兎…もとい、追い詰められた野良ネコと化してしまっているルルーシュだが…。
「え?会長さん…何かいい案があるんですか?」
少々、期待、そして、思いっきり先を越された感を抱いてしまったスザクが訊ねた。
勿論、互いに(ルルーシュの意思は当然の様に無視して)この、ルルーシュを弄る為だけに話題に上がっているイベントについて話しをする上での主導権を握ろうと画策している状態だが…。
「ほら…クロヴィスランドのオープンイベントの時…。ルルちゃん、大胆な黒ビキニだったでしょう?あの恰好で兎耳としっぽを付ければいいんじゃないかと…」
「色は?」
「勿論、黒でいいじゃない…」
ここで、あの、ピクドラのルルーシュのカッコに兎耳としっぽを付けてみようか…。
想像してみると…。
かなり…腐女子貴腐人の皆々様方には喜ばれる格好になるのではないかと…。
「あ、でも、一応、何か飾りは欲しいですよねぇ…。例えば、首元に可愛い蝶ネクタイとか…」
「逆に首輪みたいなチョーカーみたいのも良くない?」
「それ…ちょっとシャレにならないかも…」
生徒会女子メンバー達が口々に楽しそうな妄想をし始める。
ニーナ…シャレにならないって…それ、きっとシャレにするつもりは毛頭ないと思われるが…と云ったら負けなのでしょうか?
まぁ、そう云った妄想をして許されるのはある意味、女子の特権だ。
男がそんな妄想をしていたら開き直っている人物でない限りヘンタイ扱いだろう…。

 そんな女子たちの妄想を聞いているルルーシュとスザクとリヴァルであったが…。
それぞれの表情が様々でそれを見ているのも楽しいと云えば楽しいだろう…。
ルルーシュは云うに及ばず…顔を隠す様に怒りに身体を震わせている。
この生徒会の中で鍛えられたせいか、相当我慢強くなったとは思われるが…。
どこまでその堪忍袋が持つか…解らないというところか…。
ただ、ルルーシュが怒りを爆発させたところで、基本的に痛くもかゆくもないという安心感があるからこそ、女子たちも云いたい放題なのだろう。
ここで、ナナリーの名前を出されてしまえば一発なのだから…。
スザクはそれを想像しつつも更に怪しげ(ゲフン、ゲフン)…もとい、『萌え♪』な方向に想像を膨らませる。
この男…既に『オオカミ宣言』をしているのでこの際、ルルーシュがどんなカッコにされようと最早どんとこいである。
と云うか、どんなカッコでもルルーシュがそんなカッコをしていたら普通に襲いかかる気満々である。
リヴァルは…この後、女子たちにその怒りを向けられないルルーシュの怒りを全てリヴァルに向けられる事を想像しながら…。
少々顔をひきつらせた笑顔を見せている。
確かに…リヴァルの一言でここまで話しが大きくなってしまったのだが…。
それにしたって…この生徒会の女子たち…
―――食いつき過ぎだよ…(涙)
今現在、諸悪の根源…じゃなくて、元凶となったリヴァルのこの上ない正直な気持ちである。
そこで、自分の一言がここまで話しが大きくなったという事はきれいさっぱり忘れられる男であるところはある意味、スザクと似ているとも云えなくもない…。
ただ、スザク程『強引にマイウェイ』に行けないと事が彼自身の首を絞めている部分でもあるのだが…。
まぁ、アッシュフォード学園高等部生徒会の男子どもはそんな状態であるが…。
女子たちの話しは盛り上がって行く…。
正直、ここで横やりを入れようとしても、きっと、通用はしない…。
妄想は女子にとってのエネルギー源だ。
それは、SE『妄想バトル ルルーシュvsスザク』でもしっかり証明されている。
尤も、あの話については色んな意味で変な方向に話しが飛び過ぎだ…。
昨今、マスコミを騒がせている『相撲』が出て来ているが…。
あれは『日本相撲○会』が勝手に名乗っているだけで別に相撲は日本の国技ではない。
日本人の中にも相撲を国技と認めていない人間は数多くいるが…。
ただ…あのレスリングにしてもそうだが…あの二人のヌルヌル合戦は見てみたい…(違うだろ!)
そんな事を妄想している内に…
「ねぇ…なら、ルルとスザク君で鬼ごっこするとか…。ウサギならオオカミに追いかけられて逃げなくちゃ…」
「あ、でも、それじゃあ…ルルちゃんに勝ち目がないじゃない…」
「なら…ルルーシュに30分、時間の猶予を与えてアッシュフォード学園内ならどこでも隠れていいという事にすれば…」
「でも、スザクの鼻って…犬よりいいとか…云ってなかった…?(←和泉の勝手な設定)」

 話しはまだまだ盛り上がっている…。
ウサギ祭りは…どんどん現実味を増して行く…。
って云うか、オフィシャルでみたいと思っても『ルルーシュ萌え♪』なら別に当然だよね…と云う事で…。
「ホントにやっちゃう?」
ミレイがそんな事を云った時点で、くらくら状態となっていたルルーシュが我に返る。
「ちょっと!待って下さい!嫌ですよ!『男女逆転祭り』と同じくらい嫌ですよ!」
ここで、『男女逆転祭り』よりいやだと云った時点で…。
きっと、『第二回男女逆転祭り』の開催が決定されるに違いない。
それに、別に『ウサギ祭り』が決定した訳でもないのだが…。
「あらぁ…別にまだ…決定事項だなんて言ってないんだけどなぁ…」
まるで上げ足を取る様にミレイがルルーシュを見た。
ルルーシュの顔が引きつる。
それこそ、盛大に…。
そして、その様子を見ていたメンバー達が一斉に『あ〜あ…。本と成長しないなぁ…』と云う顔をしてこの二人の顔を見ている。
そんなところへ…
「こんにちは…みなさん…」
ここで、天の助けとなるか、追い打ちをかける存在となるかは…結構解らない存在…ルルーシュの妹のナナリーが生徒会室にやってきた。
生徒会室の結構慣れた空気ではあるが、結構微妙な空気に…ナナリーが表情を変える…。
「どうか…されたのですか?」
怪訝そうに訊ねてきたナナリーに応えるのは…。
当然、ルルーシュはこんな状況の中、どうやって説明をすればいいか解らない。
一方ミレイは心の中でナナリーに『グッジョブ!』と親指を立てている。
「あら…ナナリー…授業の方は終わったの?」
朗らかに話すのはミレイである。
当然、この機を逃すまいと…。
スザクはこのままその企画に乗ってしまってもいいと思っているのでニコニコしているだけだ。
他のメンバーは『触らぬ神に…』ではなく『触らぬミレイにたたりなし』と云う事で生還中である。
ルルーシュだけがその場の空気だけでその相手の様子を敏感に読みとり、手を触れられては確実に心の中さえ読まれてしまうナナリーに対してどうする事も出来ず…。
黙ったままである。
「はい…。せっかくなので…よらせて頂いたのですが…。お邪魔でしたか?」
「何を云っているの…。ナナリーだって生徒会の準会員でしょう?ノープロブレムよ…。今ね、次のイベント企画を考えていたのよ…」
ミレイがこの機会を逃すまいとこれまでの経緯を話すと…
「まぁ…お兄様がウサギさんでスザクさんがオオカミさんですか…?楽しそうですけれど…お兄様の貞操の危機を感じるのですが…」
さりげなぁぁぁくナナリーの口から飛び出してきた言葉に…。
アッシュフォード学園生徒会室は…一瞬静まり返る…。
それは…新たなる嵐の序章に過ぎなかったのは…云うまでもない…。

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2011年02月01日

It's Destiny40

唐突な出来事



 ルルーシュが病室で着替え、そして、ロイドからの退院許可証を手にする。
何か持っていく…としても、携帯電話くらいか…。
それと…
―――マンションに行かないと…あれを持って来られない…。
そう思い、正直、まともにマンション内に入れるのかどうか、不安でもあったけれど…。
それでも、決して手放したくないもの…だから…。
頭の中で色々考える。
あの頃だって、様々な策略を巡らせていたのだから…。
こんな民間のマンションに忍び込む事など何ともない…。
考えている事がおかしいと、少々笑ってしまうが…。
あのマンションは自分の住まいだ。
確かに自分自身で金を稼いで、借りているものではないにしても…。
それでも、今の自分の帰るべき家はあのマンションなのだが…。
あの頃の記憶があると、奇妙な気持ちが生まれて来るものだ。
しかし、どの道、未成年…しかも中学生と云う状態の中で…。
あの頃とは違う時代背景で…どうやって…生活基盤を確保するべきかを考えなくてはならない。
これまで、大金持ちで権力者の両親の下、なんだかんだ不満を抱きながらもその保護下で生活していたのだ。
現在のこの日本で、中学生が自分で生活すると云うのは難しい…。
と云うか、殆ど不可能に近い。
両親の保護下で生活をしているという事は、両親の監視の下、生活をしているということだ。
確かに、普段、両親ともに多忙で一緒に暮らすという事もないが…。
ただ、シュナイゼルもギネヴィアも時々、部下を通してルルーシュの様子を見に来ている事は知っている。
学校へ色々話しを聞きに来ている事も…。
彼らの部下がルルーシュの様子を聞きに来た日の翌日の担任は…顔色が悪くなっている事も多い。
それに、校長がルルーシュに話しかけて来る事さえある。
だからこそ、ルルーシュは現在の立場を思い知らされているという事でもあるのだが…。
そう云った立場にずっと、慣れられず…また、そう云った大人たちに対して嫌な感情を抱き続けてきたが…。
―――俺が…あのまま、皇子のままだったら、ああ云うのも…受け流せていたのだろうか…。まぁ、どうでもいい事だが…。
そうでなくとも大人びていたルルーシュが…。
記憶を取り戻して更に年齢を考えた時には不相応な雰囲気を醸し出すようになっていた。
そんなものはルルーシュ自身が気付く筈もないが…。
ただ、この病院で、以前からルルーシュの事を知っているスタッフ達はそんなルルーシュの変化に多少なりとも気付いていたが…。
特にその事をルルーシュに指摘する者もいなかった訳だが…。
ただ、ルルーシュがその自覚がなかった事によって、この先…ルルーシュ自身が追い込まれていく事にもなる訳だが…。
記憶を取り戻している人間がルルーシュとスザク以外にいて…しかも、それぞれが複雑な立場にいる事を…。
この時にルルーシュの頭の中になかった事が…大きな要因となった訳だが…。

 ルルーシュは一通り身支度を終えて、病室を出た。
ロイドの退院許可証があるから別に問題はないが…。
ただ、荷物そのものはそのままだ。
変に持ちだすのは一人では無理だと判断したから…。
それに、そう云った時には確実にシュナイゼルかギネヴィアが動くから…と云う事で、病院側も特に気にしない。
「あ…ランペルージさん…」
廊下を歩いていれば、確実に人と会う事も多い訳で…。
そんな時もルルーシュは動じない。
「あ、アスプルンド医師から退院許可証を頂きましたので…。俺、受験生だし…そろそろ帰らないと…」
そう云いながらにこりと笑ってみせる。
相変わらず、こうした時に対応が出来たというのは正直苦笑ものであるが。
それでも、あの頃に培ったスキルの一つだ。
ロイドからの退院許可証を見て、看護師がふっと笑った。
「そう、良かったわね…。いつも急だからびっくりしちゃうわ…」
「父さんが心配し過ぎなんですよ…。ただの風邪なのにこんな風に入院させるなんて…」
「でも…栄養状態とかあんまりよくなかったし、おうちに帰ってもあんまり無理しちゃだめよ?あと、退院手続きは後でお父様かお母様がいらっしゃるのかしら?」
「ええ、いつもの通りです…」
こうしたシュナイゼルやギネヴィアによって強引に入院させられる事は何度かあった。
ただ、それまではこんな形で策略を巡らせながらの退院の仕方はした事がなかった。
これまで、シュナイゼルもギネヴィアも忙しいという事で、退院の時にはルルーシュを迎えに来た事はなかったし、大抵の場合、マオが病院に来るか、一人で帰るか…だった…。
病院側としてはきちんと誰かが迎えに来る事が望ましいのだが、そう云う事の出来ない患者も増えている中、帰宅時の事故などは病院に責任を問わないという形で一人で帰るという事を黙認しているところも多い。
「お世話になりました…。俺のせいで、本当に入院の必要な方が入院出来なくなっているのを考えると…いつも心苦しくて…」
とりあえず、悪い印象を与えないようにと愛想を振りまいておく。
こうした形である程度、味方にもならないが、敵にもならない存在は必要だったから…。
シュナイゼルとギネヴィアの持つ財力、権力を考えた時に、いざという時には確実にルルーシュよりもシュナイゼル、ギネヴィアに情報を渡す人間の方が多い。
それは、あの、ブリタニアの独裁の頃ほど酷くはなくとも、そう云った傾向は確実にある。
現在、この時代ではある程度熟した民主主義で資本主義が根付いている。
少なくとも、この日本では…。
それでも、権力と財力は人を動かす力となるのは…。
これまでこの世界で、そして、前世で学んできた事だ。
だとするなら、何も持たない自分がどう生きて行かなければならないか…。
自分の意思に反する事からどうやって抗うか…。
それを考えるのは至極当然であり…頭を悩まさなければならない事だ。
相手は、記憶は戻っていないとは云ってもシュナイゼルだし、シュナイゼルの側近であるカノンが記憶を取り戻しているのだから…。
正直、自分も含めて何故、こうした形であの頃の記憶を持つ者が存在しているのか…と思えてくるが…。
何故…記憶があるのか…。
記憶がないままでも…あの時、自分のやったことで涙を流した者達にとって、不幸とならない形で幸せになることだってできたと思うのに…。

 そう思いながら…病院の玄関を出て行く…。
すると…そこにちょうど到着した車が…一台…。
そして、ルルーシュの姿を見つけたからなのか…その車がルルーシュの目の前で停まった。
―――見付かったのか…?しかし…父さんはこんな時間にこんなところに来られる状態じゃない…。母さんだって…。
頭の中で様々な可能性を巡らせるが…。
その答えはその後部座席のドアが開いて解る事となる。
「ルルーシュ!」
その明るい声がルルーシュに驚愕の表情を作らせる。
まさか…ここに来るとは…。
「ユ…ユフィ…」
声が震える。
記憶が戻ったからこその…複雑な感情…。
彼女の存在は…ルルーシュの中で大きく、重く圧し掛かっている。
それは、ルルーシュの中にある…罪悪感…。
彼女に前世の記憶がないのは解るが…。
でなければ…
―――ユフィが俺に対してこんな笑顔を作る訳がない…。
「お嬢様…このような人の往来では…」
そう云ってユーフェミアの後、車から降りて来たのがニーナだった。
こうして、記憶を取り戻してから改めてみると…。
本当にあの時、自分に深く関わった者達が周囲を取り巻いている事が良く解る。
こう云った状況も…まるで、自分に対する嫌がらせなのか…。
思わず、そんな事を頭に過って行くほど…ルルーシュにとっては、過去をほじくり返され、抉られているような気分になる。
それでも…彼女はずっと、ルルーシュの婚約者としてルルーシュに対して笑顔を向け続けてきた。
でも…あの時の事を知ったら…きっと彼女は…。
そう思えてしまう程、あの時の出来事は、ルルーシュの心に深い傷を負わせている。
それは…不可抗力だった…なんて云ったところで何も救われないし、云い訳にもならない。
人ならざる力によってユーフェミアの気持ちを強引に捻じ曲げて…あの様な結果に至らせてしまった…。
ユーフェミアの望まない事をさせて、ユーフェミアの望まない結果を招いた…。
「あ、そうね…。ね、ルルーシュ…今日退院だったの?私、知らなかったわ…」
ユーフェミアが少し、不思議そうな顔で訊ねてきた。
知らないのは当たり前だ。
両親であるシュナイゼルとギネヴィアだって知らないのだ。
事後報告と云う形で報告する事にはなっているが…。
忙しい二人に報告するのはいつも、こんな感じだ。
ただ、今回は…。
ユーフェミアを利用しているのは…ギネヴィアであるが…。
それにしても…
―――このタイミングとは…
思わず、そんな事を思ってしまう…。
せっかく…この先…あの時、互いの言葉が足りず…互いに誤解し合ったスザクと…。
解り合えるかもしれないと…そんな希望を持ち始めたのに…。
そうあろうと…努力しようと思い始めていたのに…。
それが…こんな形で…。
「どうしたの?ルルーシュ…。ね?乗って?マンションまで送るわ…。それに、私もね、お引っ越しの準備も兼ねて日本に来たのよ?」
「引っ越し?」
ルルーシュが怪訝そうに訊ねると…
「ええ、実はね…来年から日本の学校に通うの…。ルルーシュと同じ高校に通う為に、日本で受験生をするのよ…」

 嬉しそうに話すユーフェミアに…驚愕の表情を強引に隠そうとするが…。
顔が引きつっている事が解る。
流石に…財力と権力を使い、ルルーシュを自分の許に…と思う母親のやる事だ…。
前世でギネヴィアがルルーシュに対してそんな愛情を抱いていたとは思わない。
と云うよりも、接触自体それほどあった訳でもないし、寧ろ、出自の関係でさげすまれている立場だった。
「そ…そうなのか…。どこに…引っ越すんだ?」
大体、答えは解っているが…。
ここでそれを訊ねないのはあまりに不自然だ。
表情をうまく誤魔化せていない事は解っているが…。
それでも…。
「流石のルルーシュも驚いたみたいね…。でも、私の引っ越し先を聞いたらきっと、もっと驚くわ…」
その答えに…やはりと思う。
「へぇ…どこだい?」
平坦な道のりではない事くらいは解っている。
しかし、ここで、ルルーシュにとってもスザクにとっても…。
様々な思いを抱えるユーフェミアが現れた事によってルルーシュの気持ちも…ひょっとしたらユーフェミアにあったらスザクの気持ちも…。
―――動くに違いない…。
ルルーシュの中でまた…あの時の様な思いをしなければならないのかと…そんな思いに駆られる。
スザクが…ユーフェミアの騎士となった時の…あの時の様な思いを…。
無邪気で、優しくて、慈愛に満ちていて、そして…残酷な…。
あの時…ルルーシュから全てを奪い去って行った…。
あの頃…ナナリーの次に愛した異母妹…。
そして、ルルーシュが初めて女性として好きになった相手…。
「ルルーシュが暮らしている部屋のお隣よ…。おばさまがね…私の為に用意して下さったの…」
決定的な言葉に…。
ルルーシュの目の前が真っ暗になる。
「あら…ルルーシュ…顔色が…」
「お嬢様…。ルルーシュ様は今さっき、退院されたばかりなのです…。このようなところで立ち話をしていては…お疲れになって当然です…」
先ほどから嬉しそうに話しているユーフェミアを諭したのはユーフェミアの世話役であるニーナだった。
「あ、大丈夫だ…。ちょっと、色々驚いてしまっただけだ…」
「とりあえず、車に乗って下さい。マンションまでお送りしますから…」
そうニーナがルルーシュを促す。
流石に、イレギュラーに弱いルルーシュとしてはこのタイミングでユーフェミアが現れる事を想定などしていなかったし、そこまでギネヴィアが考えていたとは思わなかった。
「そうね…。ルルーシュ…荷物はそれだけ?」
ユーフェミアも、ルルーシュがこう云う時に荷物は基本的に後からシュナイゼルかギネヴィアの部下がマンションまで運ぶ事は知っている。
だから、答えの解っている質問だ。
「あ…ああ…」
「じゃあ、ルルーシュ…車に乗って?早くおうちに帰ってゆっくり休んだ方がいいわ…」
ユーフェミアがそう云い終えた時…車の後方から大きなバイクのエンジン音が聞こえてきた…。
そして、ルルーシュの身体がふわりと…浮き上がった。
本当に…あっという間の…出来事だった…。

 何が起きたのか…。
ユーフェミア達も解らないと云った感じだし、ルルーシュも状況を飲み込めない。
ただ…解るのは…警察に見つかれば普通に道路交通法違反と未成年略取だ…。
それは解る…。
しかし、病院の角を曲がった細い通りでそのルルーシュをあの場から攫ったバイクの運転手がルルーシュを下した。
「遅くなってごめん…」
フルフェイスヘルメットを脱ぎながら、そう、ルルーシュに謝って来たのは…。
「スザク…お前…相変わらず…無茶な奴だ…」
流石に先ほどまでの様々な驚愕など吹っ飛んでしまう。
あんな拉致の仕方があるか…と云う思いはあるが…。
と云うか、何故、あのタイミングでスザクが現れるのだ…と云う気持ちもある。
本当に…イレギュラーばかりだ…。
確かに、あの頃も色んな意味でイレギュラーな事ばかりするコンビだったが…。
そんな事より気になるのは…。
「スザク…さっき…」
ルルーシュがそう云いかけた時にスザクが言葉を遮った。
「ユフィ…だろ?偶然だけど、ばったり会って、僕も驚いたよ…。で、その後、カノンが現れて、色々教えて貰った。ブチ切れそうになった時にロイドさんが現れて…」
スザクがそこまで云った時…背後から多数の人間の声がしてくる。
「話しは後…。このヘルメット被って、後ろに乗って…」
「お前…バイクなんて…」
「免許くらいは持ってる。因みにこのバイクはジノから借りた…。レンタルは無期限って事で…」
こいつは…あっけらかんと何を云っているのやら…。
損な事を考えている暇もなく、スザクはルルーシュにヘルメットを被せて、自分もヘルメットを被り直して…。
その細い路地を猛スピードで走り抜けていく。
―――こいつ…昔も無茶な奴だとは思っていたが…。それは今も同じなのか…。と云うか、流石にあの時の車みたいに無免許って事はなかったな…。
免許を持っているとは云われていても…。
やはり、蘇る過去の、恐怖体験…。
思わず、スザクの身体をぎゅっと強く抱きしめてしまう。
この恐怖から解放される方法はただ一つ…。
とりあえず、逃げ切ってこのバイクから降りる事だ…。
あの頃は一応、四方、ボディがあって、とりあえず、ささやかながらの防御へ気があったが…。
バイクの場合、全身が完全に外に出てしまっている状態…。
落ちたら確実に死ぬ…。
―――いくらなんでも…こんなところでバイクから落ちて死ぬのは…御免だ…。
過去の恐怖体験の記憶がそれほど鮮明であるのか…。
少々涙目になっている事にルルーシュはまだ…気付いていない。
それほどまでに…あの時の…思い出は忘れられないものになっている…と云う事か…。
どちらにせよ…今は猛スピードで風を切っている(恐怖と認めたくはないのだが)恐怖と真正面から向き合わなくてはならなくなっている。
と云うか、今回のこのイレギュラーでとにかく…自分自身が振り回されっぱなしになっている事に…。
後になって気付く訳だが…。
その時のルルーシュの複雑な気持ちはいかばかりか…。
今のところ、誰にもその時の気持ちを知る事など出来ないのであった…。

To Be Continued

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posted by 和泉綾 at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | It's Destiny