2010年06月30日

Novel Rebellion開設2周年記念リクエスト企画 25

つかまえていて 02



※設定:ルルーシュ(♀)とスザクは孤児院で出会った同じ歳で、現在恋人同士です。
ルルーシュには孤児院に入るまで複雑な環境にあり、5歳のときに両親と死に別れたスザクと出会ってから、少しずつ、変わって行きますが…。
ルルーシュの中のトラウマは…大学を卒業して、就職して、スザクと同棲している今でも中々消し去る事が出来ない様です。

このお話しは紫翠さまからのリクエストです。リクエスト、有難う御座居ました。なお、この作品で今企画の最後のリクエスト作品となります。リクエスト下さった皆様、有難う御座居ました。

 ルルーシュにとって、彼との出会いは、自分の人生の転機だったと思う。
スザクと初めて出会ったのは10歳の時…。
たった10歳で?などと、驚く事はない。
それ相応にそれまで、ルルーシュは普通の子供とはちょっと違った環境で生きて来たのだから。
ここで、『育てられてきた』という表現を使わないのは、使えないからだ。
ルルーシュの中で、誰かに育てられた…という記憶があるのは10歳以降だ。
それ以前は…。
8歳までは実の母と暮らしていたけれど…。
その母との思い出というのは、いつも、ルルーシュに対して怒っている印象しかなかった。
ルルーシュの父親というのは、母が仕事先で知り合った男との間に生まれた子供だった。
お互いに割り切った付き合い…のつもりでいたらしいが、その男はルルーシュの母が身ごもった事を知ると、さっさと上司のすすめる見合いを受けて結婚してしまった。
ルルーシュの母は夜の仕事を生業としていた。
だから、当時、母と付き合っていたそのエリートサラリーマンの男としてはそんな水障害の女と結婚という話しになるのはその先の出世を考えた時、邪魔になるだけだからだ。
勿論、母もその男の考えは解っていた。
その男は、さっさとルルーシュの母を捨てた。
理由に挙げられたのは…
『お前みたいな女の子供がいても困るんだよ…』
その一言だった。
それ故に、ルルーシュの母はルルーシュを疎ましく思った。
ならば、責任を持てない命などこの世に誕生させなければ…とも思うのだが…。
ルルーシュの母がどうしてもその男を自分に繋ぎとめていたかった。
それ故に、中絶をせずにいた。
既に法的に中絶出来ない時期になった時に…完全にその男は母の前から姿を消したのだ。
その男は、何でも…。
その会社の専務の娘と結婚した。
それによって、その男の将来は保証されたのだ。
本当は様々な要因があったのだけれど…。
ルルーシュの母親は身近にいた、ルルーシュにその責任を押しつけた。
物心の付いた頃には、ルルーシュの目の前に現れる母親はいつも酔っぱらっていた。
夜の仕事をしているのだから、仕方ないとは云え…。
そして、寄っている母はいつもルルーシュを責めた。
『あんたのせいで私は捨てられたのよ!あんたなんか生まれてこなければ良かった!』
そう、ルルーシュに怒鳴りつける母の顔が…ルルーシュにとっての母の顔だった。
大人の云っている事が理解出来ない時には…ただ、怖いと云う気持ちになっただけだったけれど…。
段々、大人の云っている事が理解出来始めると、怖いと思うと同時に、悲しくなった。
自分の存在を否定されていると…。
自分はここにはいちゃいけないと…。
そんな風に思えてしまったから。
ルルーシュが8歳のときに…学校から帰って来て、もぬけの殻になったアパートの中を見た時には…。
ただ、自分を責めた。
―――わたしのせいで…おかあさんはつらいおもいをしていたんだ…

 とりあえず、実年齢よりも遥かにしっかりしていたルルーシュは、時々、ルルーシュに夕食のおかずを分けてくれた隣の部屋のおばあさんのところに相談に行った。
流石に自分で何とか生活して行く…というにはルルーシュの出来る事があまりに少なかったからだ。
隣のおばあさんが一通りの話しを聴いてくれた直後、その部屋にアパートの管理人と大家がルルーシュとおばあさんの居る部屋に入って来たのだ。
『ルルーシュちゃん…お母さんは?』
いきなり入って来た大人二人の開口一番がその言葉だった。
随分慌てている表情だったけれど。
その時の大人達の表情は…ルルーシュにとってあまりいい答えをくれないと云う事を察した。
だから、学校から帰ってきたらもぬけの殻になっていた事をそのまま話したのだ。
その後…大人達は右往左往していた。
最初に話しを聞いてくれたおばあさんだけが、ルルーシュをそっと抱き締めて、頭を撫でていてくれた。
とりあえず、幼いながら、聞き耳を立てていると、ルルーシュの母親は一応、管理人には出て行く事を伝えたらしい。
但し、その日の朝、ルルーシュが学校へ出かけて行った直後…にだったけれど。
ただ、直接云われたのではなく、管理人の部屋の郵便受けに茶封筒が入っていたという。
中にはB5サイズの味気ない便箋に数行、書かれていただけだったという。
締めくくりは
『こちらの住所に親戚と呼べる者達が住んでおりますので、ルルーシュの事はそちらに相談して下さい。』
と書かれており、その下には3件程住所と電話番号と名前が書かれていた。
ルルーシュは自分の身に降りかかっている事なのだけれど、冷静に物事を分析していた。
まず、自分に親戚と呼べるような存在がいた事は初めて知った。
ルルーシュの父親の事は何も知らないし、母親の親戚だって、祖父母さえ知らない。
もう少し突っ込んで話を進めると、そこに書かれていた名前は全て母のいとこという続柄だと云う。
そんな遠い親戚に自分の事を相談される事になるのか…と、ルルーシュは優しいおばあさんの腕の中で考えていた。
元々、母親という存在はルルーシュを怒鳴りつけて、喚き散らすだけの存在に見えていたから。
いつか、自分を置いてどこかへ行くのではないかと思っていた。
寧ろ、現在の自分の年齢は8歳だ。
―――8年間…あの人がよく頑張った方だ…。
そんな事を考えていた。
ただ、8歳という年齢ではどうやって自力で生きて行くかが問題だ。
働くとしても、恐らく、芸能人の子役くらいしか仕事がないだろう。
そんな非現実的な選択は当然だけれど出来る訳がない。
だとすると、母が書き置きに残した親戚の家の厄介になるか、こうした、身寄りのない子供の世話をしてくれる施設に入るか…。
正直、子供らしくないと思う自分がいるけれど、ここで、子供らしさを発揮していたって、これから先、ルルーシュに生きて行く術はないのだ。
今、ルルーシュの頭を撫でてくれているおばあさんも来月、息子夫婦のところに行くと云っていた。
だとするなら、今ある情報の中で選択するしかない。
そして、ルルーシュはそのおばあさんの腕をすりぬけて、慌てて、厄介な残しものをしてくれた…という思いが隠しきれていない大人に対して口を開いたのだった。

 その後、ルルーシュは母の書き置きに書かれていたある、一軒の家の者に迎えに来られた。
あからさまに歓迎されていないと解る態度だ。
確かに、ルルーシュも知らない親戚で…。
いきなり、いとこの娘の母親が失踪したと云う話しを聞かされて、引き取って欲しいと云う連絡が入れば、戸惑うし、憤りも感じるだろう。
その、親戚が迎えに来た時、おばあさんだけが、泣いてくれていた。
『ごめん…ごめんねぇ…ルルちゃん…。私がルルちゃんを引き取って上げられれば良かったんだけど…』
『有難う…おばあさん。でも、おばあさんのその気持ちだけ頂いて行きます…』
その一言におばあさんはその場に崩れ落ちて泣いてしまったけれど、ルルーシュはそれ以上何も話さなかったし、表情も崩さなかった。
『すみません、母がご迷惑をおかけいたしまして…。お世話になります…』
ルルーシュは迎えに来た夫婦に頭を下げた。
そして、その夫婦に促されて車に乗り込んだ。
その時、決して後ろを振り返る事もなかったし、涙の一つを落とす事もなく…迎えに来た夫婦が驚いていた。
年相応に育っていない事が解るし、見る人によっては鼻に付く、生意気な子供に見えるだろう。
その少女の思いを知る者は、その時には既に、ルルーシュの周囲からはいなくなっていた。
あのおばあさんだけは、ルルーシュに優しかった。
完全にネグレクトとなっていた母の事に気付いていた学校も、自ら厄介事を抱え込まない為に見て見ぬ振りをしていた。
管理人も、母ではらちが明かないと云う事で、ルルーシュに家賃の請求に来た事もあった。
ルルーシュは最低限、母親から渡されていた『食費』の中から家賃を払っていた。
給食費も滞っていたし、学校で購入するように云われるものも、基本的にはその『食費』から出していた。
だから、ルルーシュがまともに食事を摂れたのは、学校の給食とおばあさんが時々おすそ分けしてくれる夕食くらいだった。
学校の転校手続きに行った親戚の夫婦がどんな状態でルルーシュが学校に通っていたのかを知って、驚愕していた。
給食費の滞納額が半端ではなくて…。
『まったく…とんだ疫病神が来たものだわ…』
『かといって、放り出して、ニュースにでもなったら俺の出世に響くんだよ…。母親の失踪に加えてメモに書かれていた親戚の誰もが少女を見放した…なんて…。最近のワイドショーネタとしてはこんなに美味しいネタはないだろ…』
『まぁ、くじ運が悪かっただけなんだけれど…それにしても、こうもひどいとわね…』
迎えに来た車の中での夫婦の会話だ。
どうやら、母のいとこって云うのはこちらの旦那さんの方らしいとルルーシュは分析する。
ルルーシュは結局、どこへ行っても厄介な疫病神でしかない…。
それまで、何となくそんな風に思っていたけれど、この時、ルルーシュははっきりと自覚し、その意識を自分に植え付けた。
その自覚のないままこの家の御厄介になっていたらきっと…追い出されると…そう思ったから。
だから…我儘を云わない、口答えしない、逆らわない…。
とにかく、云う事を聞く、いい子でいようと、心の中の自分に誓ったのだった。

 日本では義務教育が終わらなければ、社会に出て一人立ちという奴が出来ないシステムになっている。
芸能人などをして仕事をしている子供でもちゃんと学校には在籍しているのだ。
親戚の家で厄介になる事になったルルーシュは、近所の小学校への転入手続きが成された。
最初の家はとにかく、旦那の方の出世の問題もあるからと、強引に働かせるとか、者を与えないとか云う事はしなかった。
ただ、ものは与えても、心の繋がりは一切なかった。
食事も、とりあえず、用意されていたけれど、ルルーシュは一人だけ自分に与えられた部屋で食べていた。
旦那さんの方はともかく、奥さんの方がルルーシュと折り合いが悪かったのだ。
ルルーシュの何でも見透かしているような目が嫌いだと云っていた。
ルルーシュにそんな自覚は全くない。
でも、そう思われてしまっているのなら、そうなのかもしれないとルルーシュ自身も、どうしたらいいか解らないながら、努力はしてのだけれど。
しかし、彼女にとっては幼いルルーシュがそんな風に頑張る姿が異様に苛立って仕方なくて…。
結局、ルルーシュが訪れて7ヶ月経ったときに、手をあげたのだ。
その時、彼女は完全に錯乱状態、ノイローゼとも云えるような状態で…。
元々、子供は得意ではないと云う事は旦那の方も解っていたけれど…。
旦那の出世の為に彼女は頑張っていたのだ。
そして、その頑張りがやがて、限界を達してルルーシュに全治1ヶ月と云う怪我を負わせる程、暴力を振るわせたのだ。
我に返った彼女は…ぐったりしているルルーシュを見て真っ青になっていた。
ルルーシュは一切抵抗しなかった。
逃げる事もしなかった。
彼女をここまで追い詰めたのは自分だと…。
ここまでの騒ぎになってしまい、流石に警察が介入しない訳にも行かなくなり、警察の事情聴取の時にも、ルルーシュは
『自分が悪い…。おばさんは悪くない…』
とだけ、繰り返していた。
そんな二人を見て、流石に引き取ると決めたその彼女の夫ではあったけれど…。
一緒にいさせてはお互いに不幸になると…あの時の手紙に書かれていた他の人物達に相談したのだ。
そして、ルルーシュは別の家に引き取られた。
次に引き取られた家は…
とにかく子供がたくさんいた。
どう見ても、ルルーシュの居場所などないと…そんな風に思えてしまう程…。
突然ルルーシュが入ってきたものの…。
前の家ほど歓迎されていないと云う感じはなかったけれど…。
物理的に無理があるだろうと…ルルーシュは思っていた。
それでも、流石に子だくさんの母親だと思えるのは…。
細かい事を機にしないと云う事だ。
子供が一人増えたところで、大して変わらないと云う態度で接してくれたし、そこにいたその家の兄弟達もルルーシュに対して冷たい態度を取る訳でもなかった。
ただ、何をするにも実力行使…早いもの勝ち…。
競争社会で競争に負ければ食事をする事さえできなくなるのだ。
そう云った事はあまり得意ではなかったけれど、その家の3女はルルーシュと同じ歳でお互いに協力し合っていた。
それはとても楽しいと思ったけれど…。
でも、その家の大黒柱であったその家の父親が仕事中の事故で亡くなったのだ。
そうなると…ルルーシュの状況は一変した。

 その、兄弟のたくさんいた家にいたのは僅か5ヶ月だった。
楽しかった。
でも、その家の子供ではないルルーシュは、その家の主であり、あの手紙の名前のあった人物が亡くなってしまっては、そこにいる事は出来なかった。
そこのおばさんも
『あんたは、ホントに料理も洗濯も掃除もたくさん手伝ってくれて、助かっていたんだけど…ごめんね…』
そう云ってくれた。
自分を厄介な疫病神だと思っていたルルーシュにとってこれ以上ない程嬉しい言葉だった。
でも、ここにいる事が出来なくなり…最後の家に引き取られる事になった。
ルルーシュと同じ歳の男の子がいると云う。
この家はルルーシュが来る事を最後の最後まで渋っていた。
と云うのも、その男の子の母親が息子を溺愛していて…他の存在が入って来る事が許せなかったのだ。
この家で…ルルーシュは心を封印した。
これまで引き取ってくれた家には、何かの形で救いがあった。
でも、ここには何の救いもなかった。
小学校には通わせて貰っていたし、お客さんがくると、体裁を取り繕う様に、ルルーシュを交えてお茶を飲んだりもするけれど。
人前でなければ、ルルーシュに対しての接し方は本当に酷いものだった。
大人から受ける苛めと云うのは…これほどまでに過酷なのか…とよく思った。
必要最低限のもの以外、全て取り上げられた。
持っているものもそれほど多くはなかったのだけれど。
家事を一通りこなす事は当たり前だったし、学校の成績でその家の息子より1点でも点数がいいと、ねちねちと苛められた。
ルルーシュ自身、その母親が責め立てる程、勉強できる時間などありはしないのだ。
ただ、授業中、一生懸命聞いているだけだった。
ルルーシュは将来、働きながら学校へ行きたかったから。
高校になれば、仕事をしながら夜間、学校に通う事が出来ると云う事なのだから…。
だとするなら、ちゃんとした成績は必要で…。
家に帰ってくれば、家の中の家事をさせられるのだ。
まだ10歳にも満たないルルーシュには学校と家の家事の両立は中々大変なものだ。
この時のルルーシュに自由時間と云えば、子供の睡眠時間と云うには成長段階でこれでは確実に支障が出ると云えるほど少ない睡眠時間だけだ。
栄養状態も決していいとは云えず…また、幼い頃からしっかりと栄養摂取が出来ていなかった為に成長障害が出て来ていた。
そんな状態が続いていたある日…
その家の息子と母親が外出していた時…。
ルルーシュをこの家に引き取ったこの家の主と二人きりになった。
その時…恐らく、その男性は息子にかかりきりの妻に不満があったのだろう…。
そして、二人きりの状態。
ルルーシュはその家の主に押し倒された。
ルルーシュはただ、声を殺して泣く事しか出来ず…ぶるぶる震えていた。
ルルーシュの服を全て脱がされた時…この家の息子とその母親が帰って来て…。
その場面を目撃されて…。
ルルーシュは最低限の服を身に纏った状態と、数少ない荷物を持って、ものすごい力でその母親に引っ張られて行った。
連れて行かれたのは…。
孤児院だった。
その時のルルーシュの顔に表情などなくなっていた。
いきなり、大人の男に押し倒され、それに怒り狂った女の怒りを全て受け止め、ここに連れて来られたのだから…。
その孤児院の庭には…一人の男の子がいた。
何か、土を弄っていたようだけれど…でも、ルルーシュにとっては、どうでもいい事だった。
心の中にあったのは…ただ…
―――死んでしまいたい…

To Be Continued


あとがきに代えて



凄い展開になりましたね。
と云うか、ルルーシュ、ここまで不幸を背負ってしまっていました。
スザクが苦労する訳です。
さて、過去話はここまでで、次から現在の恋人同士の二人のお話しになります。
このお話し、前段階がないと現在を書いていても解らないと云う感じだったので…。
ルルーシュの成長障害と云うのは、ヘ●バーンも、そうだったと云う事らしいのですが、成長期にきちんとした栄養を摂れていなかった為にいくら食べても体重が増えないと云うやつです。
ヘ●バーンも生涯、その体重が50kgを超える事はなかったそうです。
というか、体重を増やせるほど食べられなかったともいうのですが。
第二次世界大戦中の彼女のお話しを聞いていると、あんな、スクリーンではあんなに素敵な笑顔を見せているのに…と思う程壮絶な少女時代を過ごしているんですよね。
その事もあって、暴力シーンや戦闘シーンのある映画に関してはオファーが来ても全て断っていて…。
最後に一つだけ戦争に関連されてしまう仕事を受けているんですよね。
これは多分有名だったと思うんですが…
1990年にユニセフ主催のコンサートで『アンネの日記』を朗読しております。

そんな事はどうでもいい事ですね。
また、続きを読んで頂ければ幸いです。



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posted by 和泉綾 at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel Rebellion開設2周年

Novel Rebellion開設2周年記念リクエスト企画 25

つかまえていて 02



※設定:ルルーシュ(♀)とスザクは孤児院で出会った同じ歳で、現在恋人同士です。
ルルーシュには孤児院に入るまで複雑な環境にあり、5歳のときに両親と死に別れたスザクと出会ってから、少しずつ、変わって行きますが…。
ルルーシュの中のトラウマは…大学を卒業して、就職して、スザクと同棲している今でも中々消し去る事が出来ない様です。

このお話しは紫翠さまからのリクエストです。リクエスト、有難う御座居ました。なお、この作品で今企画の最後のリクエスト作品となります。リクエスト下さった皆様、有難う御座居ました。

 ルルーシュにとって、彼との出会いは、自分の人生の転機だったと思う。
スザクと初めて出会ったのは10歳の時…。
たった10歳で?などと、驚く事はない。
それ相応にそれまで、ルルーシュは普通の子供とはちょっと違った環境で生きて来たのだから。
ここで、『育てられてきた』という表現を使わないのは、使えないからだ。
ルルーシュの中で、誰かに育てられた…という記憶があるのは10歳以降だ。
それ以前は…。
8歳までは実の母と暮らしていたけれど…。
その母との思い出というのは、いつも、ルルーシュに対して怒っている印象しかなかった。
ルルーシュの父親というのは、母が仕事先で知り合った男との間に生まれた子供だった。
お互いに割り切った付き合い…のつもりでいたらしいが、その男はルルーシュの母が身ごもった事を知ると、さっさと上司のすすめる見合いを受けて結婚してしまった。
ルルーシュの母は夜の仕事を生業としていた。
だから、当時、母と付き合っていたそのエリートサラリーマンの男としてはそんな水障害の女と結婚という話しになるのはその先の出世を考えた時、邪魔になるだけだからだ。
勿論、母もその男の考えは解っていた。
その男は、さっさとルルーシュの母を捨てた。
理由に挙げられたのは…
『お前みたいな女の子供がいても困るんだよ…』
その一言だった。
それ故に、ルルーシュの母はルルーシュを疎ましく思った。
ならば、責任を持てない命などこの世に誕生させなければ…とも思うのだが…。
ルルーシュの母がどうしてもその男を自分に繋ぎとめていたかった。
それ故に、中絶をせずにいた。
既に法的に中絶出来ない時期になった時に…完全にその男は母の前から姿を消したのだ。
その男は、何でも…。
その会社の専務の娘と結婚した。
それによって、その男の将来は保証されたのだ。
本当は様々な要因があったのだけれど…。
ルルーシュの母親は身近にいた、ルルーシュにその責任を押しつけた。
物心の付いた頃には、ルルーシュの目の前に現れる母親はいつも酔っぱらっていた。
夜の仕事をしているのだから、仕方ないとは云え…。
そして、寄っている母はいつもルルーシュを責めた。
『あんたのせいで私は捨てられたのよ!あんたなんか生まれてこなければ良かった!』
そう、ルルーシュに怒鳴りつける母の顔が…ルルーシュにとっての母の顔だった。
大人の云っている事が理解出来ない時には…ただ、怖いと云う気持ちになっただけだったけれど…。
段々、大人の云っている事が理解出来始めると、怖いと思うと同時に、悲しくなった。
自分の存在を否定されていると…。
自分はここにはいちゃいけないと…。
そんな風に思えてしまったから。
ルルーシュが8歳のときに…学校から帰って来て、もぬけの殻になったアパートの中を見た時には…。
ただ、自分を責めた。
―――わたしのせいで…おかあさんはつらいおもいをしていたんだ…

 とりあえず、実年齢よりも遥かにしっかりしていたルルーシュは、時々、ルルーシュに夕食のおかずを分けてくれた隣の部屋のおばあさんのところに相談に行った。
流石に自分で何とか生活して行く…というにはルルーシュの出来る事があまりに少なかったからだ。
隣のおばあさんが一通りの話しを聴いてくれた直後、その部屋にアパートの管理人と大家がルルーシュとおばあさんの居る部屋に入って来たのだ。
『ルルーシュちゃん…お母さんは?』
いきなり入って来た大人二人の開口一番がその言葉だった。
随分慌てている表情だったけれど。
その時の大人達の表情は…ルルーシュにとってあまりいい答えをくれないと云う事を察した。
だから、学校から帰ってきたらもぬけの殻になっていた事をそのまま話したのだ。
その後…大人達は右往左往していた。
最初に話しを聞いてくれたおばあさんだけが、ルルーシュをそっと抱き締めて、頭を撫でていてくれた。
とりあえず、幼いながら、聞き耳を立てていると、ルルーシュの母親は一応、管理人には出て行く事を伝えたらしい。
但し、その日の朝、ルルーシュが学校へ出かけて行った直後…にだったけれど。
ただ、直接云われたのではなく、管理人の部屋の郵便受けに茶封筒が入っていたという。
中にはB5サイズの味気ない便箋に数行、書かれていただけだったという。
締めくくりは
『こちらの住所に親戚と呼べる者達が住んでおりますので、ルルーシュの事はそちらに相談して下さい。』
と書かれており、その下には3件程住所と電話番号と名前が書かれていた。
ルルーシュは自分の身に降りかかっている事なのだけれど、冷静に物事を分析していた。
まず、自分に親戚と呼べるような存在がいた事は初めて知った。
ルルーシュの父親の事は何も知らないし、母親の親戚だって、祖父母さえ知らない。
もう少し突っ込んで話を進めると、そこに書かれていた名前は全て母のいとこという続柄だと云う。
そんな遠い親戚に自分の事を相談される事になるのか…と、ルルーシュは優しいおばあさんの腕の中で考えていた。
元々、母親という存在はルルーシュを怒鳴りつけて、喚き散らすだけの存在に見えていたから。
いつか、自分を置いてどこかへ行くのではないかと思っていた。
寧ろ、現在の自分の年齢は8歳だ。
―――8年間…あの人がよく頑張った方だ…。
そんな事を考えていた。
ただ、8歳という年齢ではどうやって自力で生きて行くかが問題だ。
働くとしても、恐らく、芸能人の子役くらいしか仕事がないだろう。
そんな非現実的な選択は当然だけれど出来る訳がない。
だとすると、母が書き置きに残した親戚の家の厄介になるか、こうした、身寄りのない子供の世話をしてくれる施設に入るか…。
正直、子供らしくないと思う自分がいるけれど、ここで、子供らしさを発揮していたって、これから先、ルルーシュに生きて行く術はないのだ。
今、ルルーシュの頭を撫でてくれているおばあさんも来月、息子夫婦のところに行くと云っていた。
だとするなら、今ある情報の中で選択するしかない。
そして、ルルーシュはそのおばあさんの腕をすりぬけて、慌てて、厄介な残しものをしてくれた…という思いが隠しきれていない大人に対して口を開いたのだった。

 その後、ルルーシュは母の書き置きに書かれていたある、一軒の家の者に迎えに来られた。
あからさまに歓迎されていないと解る態度だ。
確かに、ルルーシュも知らない親戚で…。
いきなり、いとこの娘の母親が失踪したと云う話しを聞かされて、引き取って欲しいと云う連絡が入れば、戸惑うし、憤りも感じるだろう。
その、親戚が迎えに来た時、おばあさんだけが、泣いてくれていた。
『ごめん…ごめんねぇ…ルルちゃん…。私がルルちゃんを引き取って上げられれば良かったんだけど…』
『有難う…おばあさん。でも、おばあさんのその気持ちだけ頂いて行きます…』
その一言におばあさんはその場に崩れ落ちて泣いてしまったけれど、ルルーシュはそれ以上何も話さなかったし、表情も崩さなかった。
『すみません、母がご迷惑をおかけいたしまして…。お世話になります…』
ルルーシュは迎えに来た夫婦に頭を下げた。
そして、その夫婦に促されて車に乗り込んだ。
その時、決して後ろを振り返る事もなかったし、涙の一つを落とす事もなく…迎えに来た夫婦が驚いていた。
年相応に育っていない事が解るし、見る人によっては鼻に付く、生意気な子供に見えるだろう。
その少女の思いを知る者は、その時には既に、ルルーシュの周囲からはいなくなっていた。
あのおばあさんだけは、ルルーシュに優しかった。
完全にネグレクトとなっていた母の事に気付いていた学校も、自ら厄介事を抱え込まない為に見て見ぬ振りをしていた。
管理人も、母ではらちが明かないと云う事で、ルルーシュに家賃の請求に来た事もあった。
ルルーシュは最低限、母親から渡されていた『食費』の中から家賃を払っていた。
給食費も滞っていたし、学校で購入するように云われるものも、基本的にはその『食費』から出していた。
だから、ルルーシュがまともに食事を摂れたのは、学校の給食とおばあさんが時々おすそ分けしてくれる夕食くらいだった。
学校の転校手続きに行った親戚の夫婦がどんな状態でルルーシュが学校に通っていたのかを知って、驚愕していた。
給食費の滞納額が半端ではなくて…。
『まったく…とんだ疫病神が来たものだわ…』
『かといって、放り出して、ニュースにでもなったら俺の出世に響くんだよ…。母親の失踪に加えてメモに書かれていた親戚の誰もが少女を見放した…なんて…。最近のワイドショーネタとしてはこんなに美味しいネタはないだろ…』
『まぁ、くじ運が悪かっただけなんだけれど…それにしても、こうもひどいとわね…』
迎えに来た車の中での夫婦の会話だ。
どうやら、母のいとこって云うのはこちらの旦那さんの方らしいとルルーシュは分析する。
ルルーシュは結局、どこへ行っても厄介な疫病神でしかない…。
それまで、何となくそんな風に思っていたけれど、この時、ルルーシュははっきりと自覚し、その意識を自分に植え付けた。
その自覚のないままこの家の御厄介になっていたらきっと…追い出されると…そう思ったから。
だから…我儘を云わない、口答えしない、逆らわない…。
とにかく、云う事を聞く、いい子でいようと、心の中の自分に誓ったのだった。

 日本では義務教育が終わらなければ、社会に出て一人立ちという奴が出来ないシステムになっている。
芸能人などをして仕事をしている子供でもちゃんと学校には在籍しているのだ。
親戚の家で厄介になる事になったルルーシュは、近所の小学校への転入手続きが成された。
最初の家はとにかく、旦那の方の出世の問題もあるからと、強引に働かせるとか、者を与えないとか云う事はしなかった。
ただ、ものは与えても、心の繋がりは一切なかった。
食事も、とりあえず、用意されていたけれど、ルルーシュは一人だけ自分に与えられた部屋で食べていた。
旦那さんの方はともかく、奥さんの方がルルーシュと折り合いが悪かったのだ。
ルルーシュの何でも見透かしているような目が嫌いだと云っていた。
ルルーシュにそんな自覚は全くない。
でも、そう思われてしまっているのなら、そうなのかもしれないとルルーシュ自身も、どうしたらいいか解らないながら、努力はしてのだけれど。
しかし、彼女にとっては幼いルルーシュがそんな風に頑張る姿が異様に苛立って仕方なくて…。
結局、ルルーシュが訪れて7ヶ月経ったときに、手をあげたのだ。
その時、彼女は完全に錯乱状態、ノイローゼとも云えるような状態で…。
元々、子供は得意ではないと云う事は旦那の方も解っていたけれど…。
旦那の出世の為に彼女は頑張っていたのだ。
そして、その頑張りがやがて、限界を達してルルーシュに全治1ヶ月と云う怪我を負わせる程、暴力を振るわせたのだ。
我に返った彼女は…ぐったりしているルルーシュを見て真っ青になっていた。
ルルーシュは一切抵抗しなかった。
逃げる事もしなかった。
彼女をここまで追い詰めたのは自分だと…。
ここまでの騒ぎになってしまい、流石に警察が介入しない訳にも行かなくなり、警察の事情聴取の時にも、ルルーシュは
『自分が悪い…。おばさんは悪くない…』
とだけ、繰り返していた。
そんな二人を見て、流石に引き取ると決めたその彼女の夫ではあったけれど…。
一緒にいさせてはお互いに不幸になると…あの時の手紙に書かれていた他の人物達に相談したのだ。
そして、ルルーシュは別の家に引き取られた。
次に引き取られた家は…
とにかく子供がたくさんいた。
どう見ても、ルルーシュの居場所などないと…そんな風に思えてしまう程…。
突然ルルーシュが入ってきたものの…。
前の家ほど歓迎されていないと云う感じはなかったけれど…。
物理的に無理があるだろうと…ルルーシュは思っていた。
それでも、流石に子だくさんの母親だと思えるのは…。
細かい事を機にしないと云う事だ。
子供が一人増えたところで、大して変わらないと云う態度で接してくれたし、そこにいたその家の兄弟達もルルーシュに対して冷たい態度を取る訳でもなかった。
ただ、何をするにも実力行使…早いもの勝ち…。
競争社会で競争に負ければ食事をする事さえできなくなるのだ。
そう云った事はあまり得意ではなかったけれど、その家の3女はルルーシュと同じ歳でお互いに協力し合っていた。
それはとても楽しいと思ったけれど…。
でも、その家の大黒柱であったその家の父親が仕事中の事故で亡くなったのだ。
そうなると…ルルーシュの状況は一変した。

 その、兄弟のたくさんいた家にいたのは僅か5ヶ月だった。
楽しかった。
でも、その家の子供ではないルルーシュは、その家の主であり、あの手紙の名前のあった人物が亡くなってしまっては、そこにいる事は出来なかった。
そこのおばさんも
『あんたは、ホントに料理も洗濯も掃除もたくさん手伝ってくれて、助かっていたんだけど…ごめんね…』
そう云ってくれた。
自分を厄介な疫病神だと思っていたルルーシュにとってこれ以上ない程嬉しい言葉だった。
でも、ここにいる事が出来なくなり…最後の家に引き取られる事になった。
ルルーシュと同じ歳の男の子がいると云う。
この家はルルーシュが来る事を最後の最後まで渋っていた。
と云うのも、その男の子の母親が息子を溺愛していて…他の存在が入って来る事が許せなかったのだ。
この家で…ルルーシュは心を封印した。
これまで引き取ってくれた家には、何かの形で救いがあった。
でも、ここには何の救いもなかった。
小学校には通わせて貰っていたし、お客さんがくると、体裁を取り繕う様に、ルルーシュを交えてお茶を飲んだりもするけれど。
人前でなければ、ルルーシュに対しての接し方は本当に酷いものだった。
大人から受ける苛めと云うのは…これほどまでに過酷なのか…とよく思った。
必要最低限のもの以外、全て取り上げられた。
持っているものもそれほど多くはなかったのだけれど。
家事を一通りこなす事は当たり前だったし、学校の成績でその家の息子より1点でも点数がいいと、ねちねちと苛められた。
ルルーシュ自身、その母親が責め立てる程、勉強できる時間などありはしないのだ。
ただ、授業中、一生懸命聞いているだけだった。
ルルーシュは将来、働きながら学校へ行きたかったから。
高校になれば、仕事をしながら夜間、学校に通う事が出来ると云う事なのだから…。
だとするなら、ちゃんとした成績は必要で…。
家に帰ってくれば、家の中の家事をさせられるのだ。
まだ10歳にも満たないルルーシュには学校と家の家事の両立は中々大変なものだ。
この時のルルーシュに自由時間と云えば、子供の睡眠時間と云うには成長段階でこれでは確実に支障が出ると云えるほど少ない睡眠時間だけだ。
栄養状態も決していいとは云えず…また、幼い頃からしっかりと栄養摂取が出来ていなかった為に成長障害が出て来ていた。
そんな状態が続いていたある日…
その家の息子と母親が外出していた時…。
ルルーシュをこの家に引き取ったこの家の主と二人きりになった。
その時…恐らく、その男性は息子にかかりきりの妻に不満があったのだろう…。
そして、二人きりの状態。
ルルーシュはその家の主に押し倒された。
ルルーシュはただ、声を殺して泣く事しか出来ず…ぶるぶる震えていた。
ルルーシュの服を全て脱がされた時…この家の息子とその母親が帰って来て…。
その場面を目撃されて…。
ルルーシュは最低限の服を身に纏った状態と、数少ない荷物を持って、ものすごい力でその母親に引っ張られて行った。
連れて行かれたのは…。
孤児院だった。
その時のルルーシュの顔に表情などなくなっていた。
いきなり、大人の男に押し倒され、それに怒り狂った女の怒りを全て受け止め、ここに連れて来られたのだから…。
その孤児院の庭には…一人の男の子がいた。
何か、土を弄っていたようだけれど…でも、ルルーシュにとっては、どうでもいい事だった。
心の中にあったのは…ただ…
―――死んでしまいたい…

To Be Continued

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見た目が重要!? (今日のテーマ)

BlogPet 今日のテーマ 見た目が重要!?
「年上に見られますか?年上に見られますか?」
最近では、リップサービスなのかな…とも思いますけれど。
割と年下に見られますね。
入院中も、真ん中の妹と並んで歩いていたら、『あら?お姉さん?』と、妹が尋ねられて居ましたし。
まぁ、母親が非常に天然若作りだったので。
今でも、かなり若く見られているし、父と年が離れている所為か、夫婦として見られない事もしばしばです。
私の場合、オンラインでは年齢を知っている人が殆どいないので、イベントなどで直接私と面識のある人には尋ねてみたい気もしますけれど…
私の外見年齢…。
普段は、それこそ疲れたおばさんなかっこをして居ますけれどね。
家で仕事をしていると服とか気にしなくて困ります。
もちろん、出かける時には多少気を使いますけれど、普段、適当なかっこをしているので、ちゃんと年相応のかっこが出来て居るかどうかは定かではありません。
薬の副作用でぶつぶつがいっぱいありますけれど、普段、化粧をしていないので、化粧による肌荒れは少ないと思います。
私と面識のある方…
ぱっと見の私の外見年齢を教えて下さい。
意外とショックな答えが返ってきそうですが…ヾ(▽^;)ゞうへへ


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今でも、かなり若く見られているし、父と年が離れている所為か、夫婦として見られない事もしばしばです。
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普段は、それこそ疲れたおばさんなかっこをして居ますけれどね。
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もちろん、出かける時には多少気を使いますけれど、普段、適当なかっこをしているので、ちゃんと年相応のかっこが出来て居るかどうかは定かではありません。
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Novel Rebellion開設2周年記念リクエスト企画 24

つかまえていて 01



※設定:ルルーシュ(♀)とスザクは孤児院で出会った同じ歳で、現在恋人同士です。
ルルーシュには孤児院に入るまで複雑な環境にあり、5歳のときに両親と死に別れたスザクと出会ってから、少しずつ、変わって行きますが…。
ルルーシュの中のトラウマは…大学を卒業して、就職して、スザクと同棲している今でも中々消し去る事が出来ない様です。

このお話しは紫翠さまからのリクエストです。リクエスト、有難う御座居ました。なお、この作品で今企画の最後のリクエスト作品となります。リクエスト下さった皆様、有難う御座居ました。

 出会いは…10歳の時…。
彼女はある日、突然やってきた。
スザクがいた、孤児院に…それこそ、魂が抜けきった様な少女が入ってきた。
両親を亡くして、スザクはここに来たのだけれど…。
確かに物理的には不自由はあったけれど、ここの生活はそれほど苦痛だとは思わなかった。
同じ境遇の友人がたくさんいて、スザクの生来の人懐っこさや面倒見の良さのお陰で周囲にはたくさん友達がいた。
両親や里親に引き取られる友達がいると…確かに寂しいとも思ったし、羨ましいとも思ったけれど。
それでも、その事を喜んでやれる広い心があった。
スザクがこの孤児院にいて一人になると云う事がなかったのは、そんな性格のお陰だろう。
年上にも年下にも信頼、信用されていた。
勿論、孤児院という施設にいるのだから、普通の家庭で成長して行くのと同じという訳にはいかないけれど。
それでも、彼一人がいるだけで、孤児院の雰囲気が全く違うと云う事は、誰の目から見ても解る。
当然だけれど、このテの施設への支援というのは非常に少ない。
公的に支給される支援金だけで賄える訳はないし、だとすると、個人、企業からの支援が頼りだけれど。
そう云った支援も世知辛い世の中で中々寄付金が集まる事がなく…。
だからこそ、孤児院の経済状況は火の車で…。
勘のいいスザクはその事に気が付いて…孤児院の庭の一部を開墾し始めた時には流石にこの孤児院の院長も驚いていたけれど。
更に驚いたのはスザクが始めたことで、孤児院にいる子供達がそれを手伝い始めて…。
スザクの影響力と人望の厚さに感心したものだ。
彼女がここに訪れたのは…スザクが畑の収穫物を収穫し終えて、残ったつるやら発破やらを回収している時だった。
スザクは顔を泥だらけにして作業をしていて…。
他の子供達は建物の中で他の仕事を仰せつかっていた。
だから、庭にいたのはスザクだけで…。
彼女は、(多分)親戚のおばさんらしき人に手を引かれて連れられていた。
そのおばさんが彼女の荷物らしきものを持っている様だったけれど…。
この孤児院の経済状況を知っていても、あまりに少ない荷物に驚いた。
確かにこの孤児院は経済的に困窮しているからたくさんの者を持っているものは少ないし、服だって『社会福祉目的』という名目の下に行われるバザーの売れ残りの服などが殆どだ。
それでも、着ている服もなんだか、あまり綺麗とは云えない。
荷物だって驚くほど少なくて…。
そして、持っているものより何より、そのガリガリに痩せた、スカートを穿いているから女のこと解るけれど、そうでなければ男か女かも解らない程の貧弱な体格で…。
そして、目は完全に死んでいた…。
その死んでいる目を見た時…スザクは何故かドキリとしたのだった。
確かに、体格は貧弱だし、アンバランスな程手足が細くて、顔色も悪い。
でも、その死んでいる瞳の色がとても印象的で。
スザクは彼女の姿を見て、何かを感じた。
彼女の何かに惹かれた。
そして、あんな風に死んだような、焦点の合っていない様なアメジストの瞳に、光を宿してみたい…そんな風に思ったのだった。

 それから…15年ほどが経った。
二人とも身寄りがなくて…孤児院の入所資格年齢ギリギリの高校卒業まで、孤児院で過ごしていた。
二人に里親の話しがなかった訳ではなかった。
しかし、二人は常に、他の誰かに譲ってきた。
個人指名での里親に対してはきっぱり断ってきた。
いつ頃からか、二人は惹かれるようになり、また、この孤児院を離れがたくなっていたと云う事もある。
特にルルーシュの場合、ここに来るまでの環境がとても複雑だったから、ここから出る事をとにかく嫌がった。
それにつられる様に、スザクも里親の話しは全て断った。
年齢での指名、性別での指名であった場合、他の子供に譲ってきた。
院長はそんな二人を心配していたけれど。
でも、二人から感じる何か、触れる事も、踏み込む事も出来ない何かを感じ取って、ある時からその事を何も云わなくなっていた。
二人とも、本当に優秀で、奨学金で高校に通った上に、時間があるとアルバイトをして、孤児院に入れていた。
院長は二人に対して
『他の子が気にすると行けないから…ルルーシュもスザクも、そんな風にお金を入れる必要はない。勿論、有難い事ではあるけれど、二人の本当にやらなくてはならない事は、勉学に勤しむ事だし、学校で社会性を身につける事じゃないのかい?』
と、口を酸っぱくして云っていたのだけれど。
彼らはそれをやめる事はしなかった。
院長としては中々複雑な事に、二人とも、そんな生活を送りながら奨学金を普通に受け取れる程…。
というか、個人ではあり得ない私学に通って優秀な成績を収めている為に学費免除という超VIP待遇で高校に通っていたのだ。
二人とも、私学お金がかかると渋っていて、公立高校に進もうとしていたのだけれど。
学校側が事情を察して二人には全ての学費、必要経費を出すと云う事で二人はその高校に通った。
私学なので、優秀な生徒がいると云う事がこれ以上ない生徒を集めるための宣伝となる。
だから、学力は他の追随を許さないルルーシュと、学力はルルーシュには及ばないものの、その運動能力も全国レベルのスザクをその高校の生徒としたかったのだ。
そして、二人は期待を裏切らず、大学も全国的に有名な国立大学に合格したのだ。
大学進学を機に、二人は慣れ親しんだ孤児院を離れた。
勿論、勉学と生活費を稼ぐと云う、中々ハードな生活ではあったけれど。
高校を卒業と同時に、ルルーシュとスザクは同居し始めた。
高校の時、既に二人は両想いとなっていた。
ルルーシュの方は、最初は何かに怯える様に、スザクの告白を拒絶していたけれど。
ただ、ルルーシュの中でスザクの存在が大きい事はルルーシュも認めざるを得ない事実で…。
何度目かのスザクの告白に本当に、本当に恐る恐ると云った感じで頷いた時…。
スザクは本当に驚いた顔をして。
そして、顔をくしゃくしゃにして喜んでいた。
これまでもずっと、スザクはルルーシュを大切にしてくれていたけれど。
でも、頷いたルルーシュに抱きついた時、スザクがルルーシュにしか聞こえない声で云った言葉は…。
ルルーシュを幸せにして、そして不安にもさせた。
『有難う…ルルーシュ…。絶対、絶対一生…大事にするから…』

 その後、スザクはその言葉の通り、ルルーシュを本当に大切にした。
ルルーシュは親の愛を知らずに育っていた事をある時、知ったスザクだった。
スザクは両親が健在だった頃は、一人っ子という事もあったのだろうけれど、本当に両親に大切にされていた。
甘やかす…という事ではなく、勿論、甘やかす事もあったけれど、愛情をこめての叱責もあった。
スザクが5歳の時の話しだから、はっきりと覚えているわけじゃないけれど。
ただ、新しく買って貰った補助輪付きの自転車を
『危ないから、家の庭だけで乗るんですよ…』
という母親の言葉に背いて、家の前の道路で乗っていて…。
そして、近所のおばさんの乗っていた原付バイクが接触しそうになった時…。
母親はスザクを叱った。
幸い、接触した訳じゃなくて、ちょっと転んですりむいた程度で済んだけれど。
その原付バイクに乗っていたおばさんは真っ青になっていて、後になって高級な菓子折を持ってきていたけれど。
母親は真剣にスザクを叱った。
何故、道路で自転車に乗ってはいけないのかとか、何が危ないのかとか、とにかく、多少感情は入っていたかもしれないけれど。
真剣に叱ってくれた。
起こるのではなく、叱ってくれた。
それを今でも覚えている。
そう云う意味ではスザクは両親と死に別れるまでは本当に平凡な家庭の一人っ子の子供だった。
その事を覚えているから、ルルーシュに対しても、嬉しい時は全力で嬉しいと表現したし、自分が悪い事をした場合には心の底から謝ったし、ルルーシュが間違った事をしそうになった時には真剣に叱った。
ここに来たばかりの頃のルルーシュには本当に初めての事ばかりで、戸惑っていたようだったけれど。
それを繰り返して行くうちに、ルルーシュは心を開いてくれた。
それでも、スザクの告白を受け入れてくれるようになるまで相当時間がかかってしまったけれど。
だからこそ、スザクの中でルルーシュを頷いた時のその時の事は、今でもはっきりと覚えている。
その事をはっきりと覚えている限り、スザクはルルーシュの事を手放さない…。
漠然とそんな事を思っていた。
ルルーシュはどこまで信用してくれているのか…解らないけれど。
でも、スザクのこの気持ちは、本物だし、ルルーシュを手放してやる気は全くない。
心にたくさんの者を抱えているルルーシュを一人で放りだしたら、きっと、ロクな事にならないから。
きっと、スザクの望むところに行かないから。
スザクと一緒にいる事がルルーシュの幸せであって欲しいと…それが一番の希望だけれど。
ルルーシュの中でスザクよりももっと大きな存在が現れて、ルルーシュが幸せそうに笑っていてくれるなら…。
そんな風に思い切る事は出来なかったものの…。
それでも、ルルーシュの幸せと天秤にかけた時には、
―――顔くらい取り繕って見せるさ…
などと考えていた。
それでも、きっと、心の中では絶対に認められずにいたに違いないのだけれど。
でも、ルルーシュと両想いになってからは絶対に放してやらないと云う…そちらに考えが切り替わっていた。

 大学を卒業して、そろそろ3年だ。
ここまで来るのにも、両想いになったとは云っても、ルルーシュは中々複雑な状況にあったようで…。
何度もルルーシュから別れを切り出された。
その度に、ルルーシュのウソが見えたから、とっとと突っぱねた。
ルルーシュの中にある心の傷は…相変わらずあるのだと…。
とにかくルルーシュが諦めるまで辛抱強く頑張るしかないのだと…スザクの方が腹をくくっていたからここまで続いたのかもしれない。
これが、ルルーシュの外見や、表向きに見えるルルーシュに惹かれた相手であれば、絶対にルルーシュに別れを切り出されたら受け入れていただろう。
それか、逆恨みでDVに走るか…。
どの道、ロクな事にはならない。
ルルーシュの心の傷の深さを誰よりも知っていると云う自覚があってこそ、ここまで続いて来たのだとスザクの中で自負はあるのだ。
理解は出来ていないと思う。
ただ、知ってはいるのだ。
これまで、知りたくなくとも、そう云った事を知らされる現実を目の前に突き付けられてきた事が一度、あったから…。
その現実を見たから、スザクはとにかく、一刻も早くルルーシュを自分のものとしたかった。
自分のルルーシュとしたかったのだ。
高校に入って間もなくの頃…。
ルルーシュは初めての定期試験でトップの成績を取った。
上位20位までは廊下に張り出される事になっていて…。
その名前を見た生徒の中に…。
ルルーシュをあの孤児院に連れて来たおばさんの子供がいたのだ。
同じ歳の…男だった。
ルルーシュの名前を見つけて、云いがかりを付けて来たのだ。
どうやら、そのおばさんは教育ママゴンという生き物らしくて…。
彼に必ずトップを取る様にとの絶対命令を下していたらしい。
ただ、そこにルルーシュの名前があった。
もし、ルルーシュでなければ、あんな形でルルーシュを呼びだす事も、嫌がらせをする事もなかったに違いない。
ルルーシュは2番だったその男子生徒の名前を見た時…。
顔は青ざめていて、小刻みに身体が震えていた。
すぐ傍にスザクがいて、どうしたのか尋ねようとした時、その男子生徒らしき男子が後ろから声をかけて来たのだ。
『久しぶりだな…ルルーシュ…』
その声にルルーシュの身体の震えは更に大きくなった。
スザクもそれは普通じゃないと思って、自分の背中にルルーシュを庇ったけれど、その男子生徒は言葉を続けたのだ。
『お前がトップなんてな…。母さんが云っていたよ…。あのあばずれの娘なんだから…お前もあばずれだってな…。ひょっとして、教師にその身体売ってトップを買ったのか?』
そのセリフにスザクの中で何かが音を立ててブチ切れた。
そして、気が付いた時には…その男子生徒を殴っていたのだ。
その騒ぎは…周囲にたくさんの生徒の目撃があったから、その男子生徒の母親が乗り込んではきたものの、周囲の生徒たちの証言でその母親が恥をかいただけの話しで済んだけれど。
しかし、これから、そいつがいる限りルルーシュは高校生活に怯えなければならないと思った時…。
ルルーシュを守るための地位が欲しいと…スザクは思った。
だから、何度も告白し続けていたのだ。
ルルーシュを守るための地位を貰った時、どんな勲章をもらうよりも誇らしかった。

 その後…高校でもルルーシュが孤児である事、スザクが孤児である事を知っても彼らに声をかけて来る生徒も増えて…。
平凡とは云えなくとも、充実した高校生活を送る事が出来た。
中には差別的な目で見る者もいたけれど。
それでも、それは彼らにとって慣れっこだったし、ルルーシュにとっては、親戚に『あばずれの娘』というレッテルを張られているのだから。
それに比べれば『孤児』というレッテルの方が遥かにマシだった。
ルルーシュの母親はシングルマザーでルルーシュが8歳のときに恋人を作って出て行ったとか…。
その後、あの孤児院に来るまでは親戚と称する家に盥回しにされていたという。
その間、どんな事がルルーシュの身に起きていたのか、親戚の家をたらいまわしにされる前にはどんな生活を送っていたのか…。
よくは知らないけれど。
でも、ルルーシュが孤児院に初めて訪れた時のあの時の様子を見ている限り…。
孤児院に入ってからの方が遥かに幸せだったに違いないと思える。
孤児院というのはとにかく、窮屈なところだし、我儘も言えない。
中には耐えられずに飛び出して行く子供だっている。
結局、行く場所がなくて戻って来るけれど。
経済的にも、人員的にも決して恵まれている環境だとは思えない。
それでも、そんな、孤児院の環境でも、ルルーシュにとってはそれまでの生活と比べると、ずっとマシだと思っていた…と、スザクには見えた。
最初の内は全然口もきかなかったけれど。
それこそ、何に対しても、誰に対しても人間に苛め倒された野良猫みたいだった。
誰に寄せつけようとしなくて、誰にも近寄ろうとしなくて。
見ていて痛々しいと云うのはこう云う事なのだと思った。
細い身体で、きっと、あの時のスザクがちょっと手首を掴んでしまえば身動き一つ取れなさそうなそんな細い腕で…。
必死に周囲に牙をむいていた。
孤児院の子供達はそんなルルーシュには近寄りがたかったようで…。
ルルーシュと一緒にいるのはいつもスザクだけだった。
スザクはその、ルルーシュという野良猫に、無視されても、時に引っかかれてもめげることなく手を差し伸べていた。
スザクの中で一つの野望があったから。
―――笑った顔が見たい…
ただ、それだけの為にその野良猫に振り向いてもらう努力をし続けて…。
その努力が実るまでに2年くらいかかった。
その努力が実を結んだ時、周囲のルルーシュを見る目も変わり始め…。
ルルーシュ自身は本当は他人に対して凄く優しくて、細かい事に気づいて…。
心が開いた時、ルルーシュはその優しさを周囲の子供たちに分け与えた。
ただ、玉にきずだったのは…
『素直にそう云った優しさを表現出来ない事…』
だった。
最初の頃は全くその事に気づいて貰えずに誤解ばかりされていたけれど。
孤児院という空間の中でずっと一緒にいれば、いずれ、周囲にも知られることとなり、ルルーシュが高校を卒業して、孤児院を出て行く頃にはルルーシュを慕っていた子供達が泣いて縋って来ていたのを…スザクの記憶の中では鮮明に残っているのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて



最後のリク企画作品となりました。
随分、時間がかかりましたけれど、このお話しが最後となります。
紫翠さま、お待たせいたしました。
少々さわりの部分がごちゃごちゃしてしまっていますが…。
全部話しが終わる頃にはまとまっているといいなぁ…。

因みに、このお話し…
下にニコニコ動画を張り付けておきますが、この歌をイメージしながら書いております。
これを聴いた時、ホントにピンと来たんで…。
でもって、ニコニコ動画のこの画像…
みずき健さん…ホントに神ですね…
今見てもうっとりです…

鎧伝サムライトルーパー OVA『Massage』ED 『つかまえていて』 本間かおり




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つかまえていて 01



※設定:ルルーシュ(♀)とスザクは孤児院で出会った同じ歳で、現在恋人同士です。
ルルーシュには孤児院に入るまで複雑な環境にあり、5歳のときに両親と死に別れたスザクと出会ってから、少しずつ、変わって行きますが…。
ルルーシュの中のトラウマは…大学を卒業して、就職して、スザクと同棲している今でも中々消し去る事が出来ない様です。

このお話しは紫翠さまからのリクエストです。リクエスト、有難う御座居ました。なお、この作品で今企画の最後のリクエスト作品となります。リクエスト下さった皆様、有難う御座居ました。

 出会いは…10歳の時…。
彼女はある日、突然やってきた。
スザクがいた、孤児院に…それこそ、魂が抜けきった様な少女が入ってきた。
両親を亡くして、スザクはここに来たのだけれど…。
確かに物理的には不自由はあったけれど、ここの生活はそれほど苦痛だとは思わなかった。
同じ境遇の友人がたくさんいて、スザクの生来の人懐っこさや面倒見の良さのお陰で周囲にはたくさん友達がいた。
両親や里親に引き取られる友達がいると…確かに寂しいとも思ったし、羨ましいとも思ったけれど。
それでも、その事を喜んでやれる広い心があった。
スザクがこの孤児院にいて一人になると云う事がなかったのは、そんな性格のお陰だろう。
年上にも年下にも信頼、信用されていた。
勿論、孤児院という施設にいるのだから、普通の家庭で成長して行くのと同じという訳にはいかないけれど。
それでも、彼一人がいるだけで、孤児院の雰囲気が全く違うと云う事は、誰の目から見ても解る。
当然だけれど、このテの施設への支援というのは非常に少ない。
公的に支給される支援金だけで賄える訳はないし、だとすると、個人、企業からの支援が頼りだけれど。
そう云った支援も世知辛い世の中で中々寄付金が集まる事がなく…。
だからこそ、孤児院の経済状況は火の車で…。
勘のいいスザクはその事に気が付いて…孤児院の庭の一部を開墾し始めた時には流石にこの孤児院の院長も驚いていたけれど。
更に驚いたのはスザクが始めたことで、孤児院にいる子供達がそれを手伝い始めて…。
スザクの影響力と人望の厚さに感心したものだ。
彼女がここに訪れたのは…スザクが畑の収穫物を収穫し終えて、残ったつるやら発破やらを回収している時だった。
スザクは顔を泥だらけにして作業をしていて…。
他の子供達は建物の中で他の仕事を仰せつかっていた。
だから、庭にいたのはスザクだけで…。
彼女は、(多分)親戚のおばさんらしき人に手を引かれて連れられていた。
そのおばさんが彼女の荷物らしきものを持っている様だったけれど…。
この孤児院の経済状況を知っていても、あまりに少ない荷物に驚いた。
確かにこの孤児院は経済的に困窮しているからたくさんの者を持っているものは少ないし、服だって『社会福祉目的』という名目の下に行われるバザーの売れ残りの服などが殆どだ。
それでも、着ている服もなんだか、あまり綺麗とは云えない。
荷物だって驚くほど少なくて…。
そして、持っているものより何より、そのガリガリに痩せた、スカートを穿いているから女のこと解るけれど、そうでなければ男か女かも解らない程の貧弱な体格で…。
そして、目は完全に死んでいた…。
その死んでいる目を見た時…スザクは何故かドキリとしたのだった。
確かに、体格は貧弱だし、アンバランスな程手足が細くて、顔色も悪い。
でも、その死んでいる瞳の色がとても印象的で。
スザクは彼女の姿を見て、何かを感じた。
彼女の何かに惹かれた。
そして、あんな風に死んだような、焦点の合っていない様なアメジストの瞳に、光を宿してみたい…そんな風に思ったのだった。

 それから…15年ほどが経った。
二人とも身寄りがなくて…孤児院の入所資格年齢ギリギリの高校卒業まで、孤児院で過ごしていた。
二人に里親の話しがなかった訳ではなかった。
しかし、二人は常に、他の誰かに譲ってきた。
個人指名での里親に対してはきっぱり断ってきた。
いつ頃からか、二人は惹かれるようになり、また、この孤児院を離れがたくなっていたと云う事もある。
特にルルーシュの場合、ここに来るまでの環境がとても複雑だったから、ここから出る事をとにかく嫌がった。
それにつられる様に、スザクも里親の話しは全て断った。
年齢での指名、性別での指名であった場合、他の子供に譲ってきた。
院長はそんな二人を心配していたけれど。
でも、二人から感じる何か、触れる事も、踏み込む事も出来ない何かを感じ取って、ある時からその事を何も云わなくなっていた。
二人とも、本当に優秀で、奨学金で高校に通った上に、時間があるとアルバイトをして、孤児院に入れていた。
院長は二人に対して
『他の子が気にすると行けないから…ルルーシュもスザクも、そんな風にお金を入れる必要はない。勿論、有難い事ではあるけれど、二人の本当にやらなくてはならない事は、勉学に勤しむ事だし、学校で社会性を身につける事じゃないのかい?』
と、口を酸っぱくして云っていたのだけれど。
彼らはそれをやめる事はしなかった。
院長としては中々複雑な事に、二人とも、そんな生活を送りながら奨学金を普通に受け取れる程…。
というか、個人ではあり得ない私学に通って優秀な成績を収めている為に学費免除という超VIP待遇で高校に通っていたのだ。
二人とも、私学お金がかかると渋っていて、公立高校に進もうとしていたのだけれど。
学校側が事情を察して二人には全ての学費、必要経費を出すと云う事で二人はその高校に通った。
私学なので、優秀な生徒がいると云う事がこれ以上ない生徒を集めるための宣伝となる。
だから、学力は他の追随を許さないルルーシュと、学力はルルーシュには及ばないものの、その運動能力も全国レベルのスザクをその高校の生徒としたかったのだ。
そして、二人は期待を裏切らず、大学も全国的に有名な国立大学に合格したのだ。
大学進学を機に、二人は慣れ親しんだ孤児院を離れた。
勿論、勉学と生活費を稼ぐと云う、中々ハードな生活ではあったけれど。
高校を卒業と同時に、ルルーシュとスザクは同居し始めた。
高校の時、既に二人は両想いとなっていた。
ルルーシュの方は、最初は何かに怯える様に、スザクの告白を拒絶していたけれど。
ただ、ルルーシュの中でスザクの存在が大きい事はルルーシュも認めざるを得ない事実で…。
何度目かのスザクの告白に本当に、本当に恐る恐ると云った感じで頷いた時…。
スザクは本当に驚いた顔をして。
そして、顔をくしゃくしゃにして喜んでいた。
これまでもずっと、スザクはルルーシュを大切にしてくれていたけれど。
でも、頷いたルルーシュに抱きついた時、スザクがルルーシュにしか聞こえない声で云った言葉は…。
ルルーシュを幸せにして、そして不安にもさせた。
『有難う…ルルーシュ…。絶対、絶対一生…大事にするから…』

 その後、スザクはその言葉の通り、ルルーシュを本当に大切にした。
ルルーシュは親の愛を知らずに育っていた事をある時、知ったスザクだった。
スザクは両親が健在だった頃は、一人っ子という事もあったのだろうけれど、本当に両親に大切にされていた。
甘やかす…という事ではなく、勿論、甘やかす事もあったけれど、愛情をこめての叱責もあった。
スザクが5歳の時の話しだから、はっきりと覚えているわけじゃないけれど。
ただ、新しく買って貰った補助輪付きの自転車を
『危ないから、家の庭だけで乗るんですよ…』
という母親の言葉に背いて、家の前の道路で乗っていて…。
そして、近所のおばさんの乗っていた原付バイクが接触しそうになった時…。
母親はスザクを叱った。
幸い、接触した訳じゃなくて、ちょっと転んですりむいた程度で済んだけれど。
その原付バイクに乗っていたおばさんは真っ青になっていて、後になって高級な菓子折を持ってきていたけれど。
母親は真剣にスザクを叱った。
何故、道路で自転車に乗ってはいけないのかとか、何が危ないのかとか、とにかく、多少感情は入っていたかもしれないけれど。
真剣に叱ってくれた。
起こるのではなく、叱ってくれた。
それを今でも覚えている。
そう云う意味ではスザクは両親と死に別れるまでは本当に平凡な家庭の一人っ子の子供だった。
その事を覚えているから、ルルーシュに対しても、嬉しい時は全力で嬉しいと表現したし、自分が悪い事をした場合には心の底から謝ったし、ルルーシュが間違った事をしそうになった時には真剣に叱った。
ここに来たばかりの頃のルルーシュには本当に初めての事ばかりで、戸惑っていたようだったけれど。
それを繰り返して行くうちに、ルルーシュは心を開いてくれた。
それでも、スザクの告白を受け入れてくれるようになるまで相当時間がかかってしまったけれど。
だからこそ、スザクの中でルルーシュを頷いた時のその時の事は、今でもはっきりと覚えている。
その事をはっきりと覚えている限り、スザクはルルーシュの事を手放さない…。
漠然とそんな事を思っていた。
ルルーシュはどこまで信用してくれているのか…解らないけれど。
でも、スザクのこの気持ちは、本物だし、ルルーシュを手放してやる気は全くない。
心にたくさんの者を抱えているルルーシュを一人で放りだしたら、きっと、ロクな事にならないから。
きっと、スザクの望むところに行かないから。
スザクと一緒にいる事がルルーシュの幸せであって欲しいと…それが一番の希望だけれど。
ルルーシュの中でスザクよりももっと大きな存在が現れて、ルルーシュが幸せそうに笑っていてくれるなら…。
そんな風に思い切る事は出来なかったものの…。
それでも、ルルーシュの幸せと天秤にかけた時には、
―――顔くらい取り繕って見せるさ…
などと考えていた。
それでも、きっと、心の中では絶対に認められずにいたに違いないのだけれど。
でも、ルルーシュと両想いになってからは絶対に放してやらないと云う…そちらに考えが切り替わっていた。

 大学を卒業して、そろそろ3年だ。
ここまで来るのにも、両想いになったとは云っても、ルルーシュは中々複雑な状況にあったようで…。
何度もルルーシュから別れを切り出された。
その度に、ルルーシュのウソが見えたから、とっとと突っぱねた。
ルルーシュの中にある心の傷は…相変わらずあるのだと…。
とにかくルルーシュが諦めるまで辛抱強く頑張るしかないのだと…スザクの方が腹をくくっていたからここまで続いたのかもしれない。
これが、ルルーシュの外見や、表向きに見えるルルーシュに惹かれた相手であれば、絶対にルルーシュに別れを切り出されたら受け入れていただろう。
それか、逆恨みでDVに走るか…。
どの道、ロクな事にはならない。
ルルーシュの心の傷の深さを誰よりも知っていると云う自覚があってこそ、ここまで続いて来たのだとスザクの中で自負はあるのだ。
理解は出来ていないと思う。
ただ、知ってはいるのだ。
これまで、知りたくなくとも、そう云った事を知らされる現実を目の前に突き付けられてきた事が一度、あったから…。
その現実を見たから、スザクはとにかく、一刻も早くルルーシュを自分のものとしたかった。
自分のルルーシュとしたかったのだ。
高校に入って間もなくの頃…。
ルルーシュは初めての定期試験でトップの成績を取った。
上位20位までは廊下に張り出される事になっていて…。
その名前を見た生徒の中に…。
ルルーシュをあの孤児院に連れて来たおばさんの子供がいたのだ。
同じ歳の…男だった。
ルルーシュの名前を見つけて、云いがかりを付けて来たのだ。
どうやら、そのおばさんは教育ママゴンという生き物らしくて…。
彼に必ずトップを取る様にとの絶対命令を下していたらしい。
ただ、そこにルルーシュの名前があった。
もし、ルルーシュでなければ、あんな形でルルーシュを呼びだす事も、嫌がらせをする事もなかったに違いない。
ルルーシュは2番だったその男子生徒の名前を見た時…。
顔は青ざめていて、小刻みに身体が震えていた。
すぐ傍にスザクがいて、どうしたのか尋ねようとした時、その男子生徒らしき男子が後ろから声をかけて来たのだ。
『久しぶりだな…ルルーシュ…』
その声にルルーシュの身体の震えは更に大きくなった。
スザクもそれは普通じゃないと思って、自分の背中にルルーシュを庇ったけれど、その男子生徒は言葉を続けたのだ。
『お前がトップなんてな…。母さんが云っていたよ…。あのあばずれの娘なんだから…お前もあばずれだってな…。ひょっとして、教師にその身体売ってトップを買ったのか?』
そのセリフにスザクの中で何かが音を立ててブチ切れた。
そして、気が付いた時には…その男子生徒を殴っていたのだ。
その騒ぎは…周囲にたくさんの生徒の目撃があったから、その男子生徒の母親が乗り込んではきたものの、周囲の生徒たちの証言でその母親が恥をかいただけの話しで済んだけれど。
しかし、これから、そいつがいる限りルルーシュは高校生活に怯えなければならないと思った時…。
ルルーシュを守るための地位が欲しいと…スザクは思った。
だから、何度も告白し続けていたのだ。
ルルーシュを守るための地位を貰った時、どんな勲章をもらうよりも誇らしかった。

 その後…高校でもルルーシュが孤児である事、スザクが孤児である事を知っても彼らに声をかけて来る生徒も増えて…。
平凡とは云えなくとも、充実した高校生活を送る事が出来た。
中には差別的な目で見る者もいたけれど。
それでも、それは彼らにとって慣れっこだったし、ルルーシュにとっては、親戚に『あばずれの娘』というレッテルを張られているのだから。
それに比べれば『孤児』というレッテルの方が遥かにマシだった。
ルルーシュの母親はシングルマザーでルルーシュが8歳のときに恋人を作って出て行ったとか…。
その後、あの孤児院に来るまでは親戚と称する家に盥回しにされていたという。
その間、どんな事がルルーシュの身に起きていたのか、親戚の家をたらいまわしにされる前にはどんな生活を送っていたのか…。
よくは知らないけれど。
でも、ルルーシュが孤児院に初めて訪れた時のあの時の様子を見ている限り…。
孤児院に入ってからの方が遥かに幸せだったに違いないと思える。
孤児院というのはとにかく、窮屈なところだし、我儘も言えない。
中には耐えられずに飛び出して行く子供だっている。
結局、行く場所がなくて戻って来るけれど。
経済的にも、人員的にも決して恵まれている環境だとは思えない。
それでも、そんな、孤児院の環境でも、ルルーシュにとってはそれまでの生活と比べると、ずっとマシだと思っていた…と、スザクには見えた。
最初の内は全然口もきかなかったけれど。
それこそ、何に対しても、誰に対しても人間に苛め倒された野良猫みたいだった。
誰に寄せつけようとしなくて、誰にも近寄ろうとしなくて。
見ていて痛々しいと云うのはこう云う事なのだと思った。
細い身体で、きっと、あの時のスザクがちょっと手首を掴んでしまえば身動き一つ取れなさそうなそんな細い腕で…。
必死に周囲に牙をむいていた。
孤児院の子供達はそんなルルーシュには近寄りがたかったようで…。
ルルーシュと一緒にいるのはいつもスザクだけだった。
スザクはその、ルルーシュという野良猫に、無視されても、時に引っかかれてもめげることなく手を差し伸べていた。
スザクの中で一つの野望があったから。
―――笑った顔が見たい…
ただ、それだけの為にその野良猫に振り向いてもらう努力をし続けて…。
その努力が実るまでに2年くらいかかった。
その努力が実を結んだ時、周囲のルルーシュを見る目も変わり始め…。
ルルーシュ自身は本当は他人に対して凄く優しくて、細かい事に気づいて…。
心が開いた時、ルルーシュはその優しさを周囲の子供たちに分け与えた。
ただ、玉にきずだったのは…
『素直にそう云った優しさを表現出来ない事…』
だった。
最初の頃は全くその事に気づいて貰えずに誤解ばかりされていたけれど。
孤児院という空間の中でずっと一緒にいれば、いずれ、周囲にも知られることとなり、ルルーシュが高校を卒業して、孤児院を出て行く頃にはルルーシュを慕っていた子供達が泣いて縋って来ていたのを…スザクの記憶の中では鮮明に残っているのだった。

To Be Continued


あとがきに代えて



最後のリク企画作品となりました。
随分、時間がかかりましたけれど、このお話しが最後となります。
紫翠さま、お待たせいたしました。
少々さわりの部分がごちゃごちゃしてしまっていますが…。
全部話しが終わる頃にはまとまっているといいなぁ…。

因みに、このお話し…
下にニコニコ動画を張り付けておきますが、この歌をイメージしながら書いております。
これを聴いた時、ホントにピンと来たんで…。
でもって、ニコニコ動画のこの画像…
みずき健さん…ホントに神ですね…
今見てもうっとりです…

鎧伝サムライトルーパー OVA『Massage』ED 『つかまえていて』 本間かおり




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posted by 和泉綾 at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Novel Rebellion開設2周年