ご指摘を受けるまでエラーが起きていることに気付いておりませんでした。
現在、エラーチェックをしております。
しばらくお待ちくださいますよう、お願い申し上げます。
2014年10月08日
2013年07月29日
めちゃくちゃお久しぶりで御座居ます…
最近こんなんばっかですな…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
ギアス関連でお友達になって下さった方の中では和泉綾死亡説が流れていても仕方ない状態にあるのですが…。
一応、虫の息ながら生きています。
去年の9月から3回ほど入退院を繰り返しておりまして…現在も少々…というか、普通に並みの人間と同じことができない状態で御座居まする…。
えっとまぁ、簡単に説明すると…痩せすぎによる栄養失調とでもいうのでしょうか…。
延命のための仕事くらいしかできていない状態です。
リアルの和泉を見たことがある人はご存知かと思うのですが、まぁ、それほど肉付きがよくなかったのですが、おそらく最後にイベント参加してから何kgくらい減ったかなぁ…。
現在、40kgを切っている状態でして…とてもではないけど一人で上京するなんてことができない状態で御座居ます。
というか、原稿も途中で止まっているものがたくさんあり、何から手を付けていいのやら…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
とりあえず、生存報告はしてみましたが、だれか見てくれるのかいな…って感じです。
去年からの入院費を考えるととてもではないけど本を出せるような経済状況でもなく…それでもサーバーの更新はできたのでとりあえずは来年の7月末日まではこのブログもサイトも生きております。
まぁ、サーバーの方はメアド作りまくっているのでなくなっては困るのでサイトやブログはともかく…メアドのために必死に残すと思います。
最近はスカパーのアニメ中心に結構アニメは観ています。
ただ、現在身体の方がどうにもならない状態なので劇場版を観に行くとかはできておりませぬ…。
金作ってDVD出たら買おうという感じです。
あ、でも、アメーバの方で小説とか関係ないツールでは結構出没しております。
こちらの方で私のアメーバアカウントをご存知の方はいないので結局こちらでは生死不明状態になっていましたが…。
明日からちょっと10日ほど実家に帰省することになっているのでその時、体調が良ければ書きたいと思って途中まで書いてある長期連載の原稿を書こうかなと思っています。
ギアス愛がなくなったわけではないのです。
割と好きなギアス二次作家さんのサイトにはこそこそっとお邪魔して読ませて頂いています。
ご連絡の方はこちらのコメとか拍手の方は現在放置状態なんで直接メール送って頂ければと思います。
多分、この状態だと数年単位で体調を戻すために時間がかかりそうなのでイベント参加は難しいかな…と思っています。
ただ、できるだけオンラインでは何かをしたいと思っております。
気が向いたときにでものぞきに来ていただければ幸いで御座居ます。
和泉綾拝
ギアス関連でお友達になって下さった方の中では和泉綾死亡説が流れていても仕方ない状態にあるのですが…。
一応、虫の息ながら生きています。
去年の9月から3回ほど入退院を繰り返しておりまして…現在も少々…というか、普通に並みの人間と同じことができない状態で御座居まする…。
えっとまぁ、簡単に説明すると…痩せすぎによる栄養失調とでもいうのでしょうか…。
延命のための仕事くらいしかできていない状態です。
リアルの和泉を見たことがある人はご存知かと思うのですが、まぁ、それほど肉付きがよくなかったのですが、おそらく最後にイベント参加してから何kgくらい減ったかなぁ…。
現在、40kgを切っている状態でして…とてもではないけど一人で上京するなんてことができない状態で御座居ます。
というか、原稿も途中で止まっているものがたくさんあり、何から手を付けていいのやら…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
とりあえず、生存報告はしてみましたが、だれか見てくれるのかいな…って感じです。
去年からの入院費を考えるととてもではないけど本を出せるような経済状況でもなく…それでもサーバーの更新はできたのでとりあえずは来年の7月末日まではこのブログもサイトも生きております。
まぁ、サーバーの方はメアド作りまくっているのでなくなっては困るのでサイトやブログはともかく…メアドのために必死に残すと思います。
最近はスカパーのアニメ中心に結構アニメは観ています。
ただ、現在身体の方がどうにもならない状態なので劇場版を観に行くとかはできておりませぬ…。
金作ってDVD出たら買おうという感じです。
あ、でも、アメーバの方で小説とか関係ないツールでは結構出没しております。
こちらの方で私のアメーバアカウントをご存知の方はいないので結局こちらでは生死不明状態になっていましたが…。
明日からちょっと10日ほど実家に帰省することになっているのでその時、体調が良ければ書きたいと思って途中まで書いてある長期連載の原稿を書こうかなと思っています。
ギアス愛がなくなったわけではないのです。
割と好きなギアス二次作家さんのサイトにはこそこそっとお邪魔して読ませて頂いています。
ご連絡の方はこちらのコメとか拍手の方は現在放置状態なんで直接メール送って頂ければと思います。
多分、この状態だと数年単位で体調を戻すために時間がかかりそうなのでイベント参加は難しいかな…と思っています。
ただ、できるだけオンラインでは何かをしたいと思っております。
気が向いたときにでものぞきに来ていただければ幸いで御座居ます。
和泉綾拝
2012年11月05日
お久しぶりで御座居ます…&…
お久しぶりで御座居ます。
というか、更新するたびにこれ書いている状態な和泉綾で御座居ます。
実は…何を血迷ったのか…今年の夏の暑さで何か頭の中のねじが一本飛んでいたのか…。
冬コミの申し込みしていました。
そしたら…
これまであれほど相性の悪かったコミケット…冬コミのスペースを頂けました。
知っている今でもわずかに残るギアスサークルさんのサイトをいくつか見ていたのですが…個人的に顔を見知っているサークルさんも含めて『なぜだ???』と云うほど落選されていて…。
そんな時になぜに私のサークルがスペースを頂けたのかと思うのですが…。
体調がよろしければ…
今年、2回も入院していなけりゃそれこそ諸手を挙げて喜んでいたのですが…。
とりあえず、サークルは参加します。
本人はちょっと行けるかどうか微妙なところなのですが…。
もちろん、ギアスでスペースを頂いていますし、和泉はギアスしか書かないし、書けないのでギアス、スザルルで1冊新刊出します。
間に合えばフリーペーパーも出します。
締め切りまで約1ヶ月…
頑張ります…。
因みに本人がいけない時には大阪のイベントでお世話になっている遙祐樹さまが売り子さんをやって下さることになっておりますので…。
サークル自体はあります。
ってか、このサークルを覚えていらっしゃる方がいるのかどうか…(苦笑)
続きを読む
というか、更新するたびにこれ書いている状態な和泉綾で御座居ます。
実は…何を血迷ったのか…今年の夏の暑さで何か頭の中のねじが一本飛んでいたのか…。
冬コミの申し込みしていました。
そしたら…
これまであれほど相性の悪かったコミケット…冬コミのスペースを頂けました。
知っている今でもわずかに残るギアスサークルさんのサイトをいくつか見ていたのですが…個人的に顔を見知っているサークルさんも含めて『なぜだ???』と云うほど落選されていて…。
そんな時になぜに私のサークルがスペースを頂けたのかと思うのですが…。
体調がよろしければ…
今年、2回も入院していなけりゃそれこそ諸手を挙げて喜んでいたのですが…。
とりあえず、サークルは参加します。
本人はちょっと行けるかどうか微妙なところなのですが…。
もちろん、ギアスでスペースを頂いていますし、和泉はギアスしか書かないし、書けないのでギアス、スザルルで1冊新刊出します。
間に合えばフリーペーパーも出します。
締め切りまで約1ヶ月…
頑張ります…。
因みに本人がいけない時には大阪のイベントでお世話になっている遙祐樹さまが売り子さんをやって下さることになっておりますので…。
サークル自体はあります。
ってか、このサークルを覚えていらっしゃる方がいるのかどうか…(苦笑)
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2012年05月16日
History(前編)〜『It’s Destiny』(番外編)〜
『It’s Destiny』の過去のお話しです。『ゼロ・レクイエム』の後、スザクが『ゼロ』の仮面を被りながら世界を見続けている時のお話しです。
これは…ルルーシュとスザクが生まれ変わり、再会した時より遥かに時間が遡り…。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアが救世主『ゼロ』に倒されて…20年ほど経った頃の話しである。
既に、『ゼロ』の仮面を継承したスザクはルルーシュと出会ってから、自らの刃によってこの世界から排除した時までの時間の倍以上…『ゼロ』として存在している。
『ゼロ』の仮面の下の顔を知る者も確かにいる事はいるのだが…。
しかし、それを『ゼロ』であるスザク自身にその真実を知っていると云う事を彼自身に露わにしているのは…たった一人…。
『ゼロ・レクイエム』の時…その場に足を運ばず…神の祀られている礼拝堂で一人…涙を流していた魔女…C.C.…。
『ゼロ』の情報源と云うのは、あの時のインパクトの所為か…放っておいても情報が入って来る…。
ルルーシュがそう云った表には出て来ないシステムを作っていた事もあるが、それに気付いた、ルルーシュの『ギアス』によって『ゼロ』に尽くす様になったシュナイゼルと、ルルーシュに真の忠誠を誓ったジェレミアがそこに情報を流すようになっていた。
それは…ルルーシュの命令だったのか…彼らの何がそうさせているのかは…もはや確認のしようもない。
しかし、そのお陰でスザクは『ゼロ』としての活動の力になっている事は否定しようのない事実だった。
様々なデータは勿論、必要な人材や物資の手配などは彼らの協力なしにはとても出来るものではない。
そして、人材の手配に関してはかなりの注意が必要になる。
一般人の中で『ゼロ』の正体に勘付く者、そして、それを口外する者が出て来てしまっては、『ゼロ』の意思は関係なく、『ゼロ』を中心に世界が回る事になる。
もしくは、その『ゼロ』を利用しようと考える者が出て来る。
それは…ルルーシュが命を賭してまで『ゼロ・レクイエム』を施した意味をなくす事になってしまうと云う事だ。
だからこそ…ルルーシュは『ゼロ・レクイエム』後、シュナイゼルはどんな形であれ、世界を動かして行く立場に立つと考え、そして、その為に『ギアス』を施した。
シュナイゼルの意思はそこにはない事は…充分に承知していただろうし、今だって、どこかで違和感を抱きつつも、人ならざる力によって彼を動かしている。
それほどまでに認めた…シュナイゼルの才覚…。
ナナリーではそこまでできないと云う事を考えていた事なのだろう。
確かに、ナナリーがまだ、日本が『エリア11』だった頃、そこの総督であった時の彼女の手腕をきちんと見ていても、ルルーシュがどんな形であれ、シュナイゼルを政治に関わらせる事を考えざるを得なかったのだろう。
『ゼロ』の仮面を継承したスザクも…ここまで時間が経って、やっと、ルルーシュの先の先を読んだ策に感嘆のため息が出て来る。
あの後…世界は『民主主義』を標榜する中で『民主主義』『自由』の意味を既に忘れてしまっていた人々の間に様々な相違が生まれて来る。
『民主主義』も『自由』も『自分の望みのままに動かす事』ではない。
そして、それぞれの価値観、譲れない何かがある限り、『話し合い』で事が決まる世界にする為には多くのハードルがあることを失念していた世界は…そろそろ『ルルーシュ皇帝』に全ての悪を押し付ける事に限界が来ている事が…ひしひしと感じさせられてきていた。
様々な覚悟が足りない世界…。
結局は『ルルーシュ皇帝』を倒す戦いの際に、その国の代表となった人物があの、『ゼロ・レクイエム』の舞台となったあのパレードにおいて、『死刑宣告』を受け、人々の目に晒されていた人物が代表となっている国の発言権が強くなっていた。
どれだけ平等に、公平に、と訴えたところで、二者択一を迫られた時には誰かが決めなくてはならない。
そこで『黒の騎士団』のリーダーとして存在していた頃の『ゼロ』であれば、世界の代表者たちを一言で黙らせる事が出来るだけのカリスマと実績があった訳だが…。
しかし、『ルルーシュ皇帝』を倒した『ゼロ』はその後、一切、言葉を発しない。
そして、国籍も持たず、敢えて持っている権限と云えば、騒乱が起きた地域での制圧隊の指揮権くらいのものだ。
つまり、世界の政治に対しての決定権はおろか、投票権、発言権さえ持たない状態となっている。
となると、それまで『黒の騎士団』の中で勝者となっていた者たちは権限と義務と責任を負う事となる訳だが…。
元々、『エリア11』…すなわち、現日本国の代表者となった者たちは一テロリスト集団を率いていた者達に過ぎない存在だ。
テロリストとしても『ゼロ』の助けなしに何も出来なかった彼ら…。
その時以上に力量を求められる国政を担う…否、世界への発言力の強くなった立場になった時…そのバランス感覚は足りていない…と云われても仕方ない状態だった。
それは、顕著に表れた。
首相の息子であったスザクの目から見ても…現在の日本の有り様には言葉がない。
『ゼロ・レクイエム』に置いての中心となった国の代表の中では日本の代表が最も力量に不安を覚えるところである。
中華連邦は確かに、天子である蒋麗華は幼かったし、それまでが大宦官たちの手によってほぼ、軟禁状態であり、経験も知識も不足していたが、彼女を支え続けた星刻たちが全力で支えて行くうちに彼女はそれを吸収していった。
ブリタニアはナナリーが代表となったが、常にルルーシュの『ギアス』の影響下にあったシュナイゼルが『ゼロ』の命令により、全力でナナリーを支え、ナナリー自身、あの『エリア11』の総督であった頃の経験を無駄にはしていなかった。
日本は…せめて暫定期間の間だけでも皇神楽耶がその権力を預かっていればあるいは…と云う事もあったかもしれないが、日本の経済はブリタニアから解放されてからの方が大変であった。
それ故に、神楽耶が経済面でも執政面でも…と云うには彼女の周囲には人材が少なすぎた。
それに、彼女自身、『ゼロ』を支える立場であったからこそ、その力を発揮する事が出来た。
扇たちでは彼女が陰から支えると云う形での執政はとても出来なかった。
あれから相応の時間が経っている今となっては…扇たちへの評価は日本国内がい通して『所詮は『ゼロ』がいなければ何も出来なかったテロリストのなりそこない』と云う評価が一般的となっていた。
扇たちがその辺りをどう、見ているか…そして、どのように考え、扱っているかを日本国民達はずっと見ていた。
蓬莱島に逃れた100万人の日本人と、日本列島に残ったその100倍近くいる日本人との間の確執も当然、生まれている。
そこまで考えて扇たちは『ゼロ』を…『ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア』を否定したのか…そう考えた時、力なく首を横に振ってしまいたくなるのは至極当然の話しである。
世界が『民主主義』を望んだ結果、ついて来たのは『言論の自由』…。
あの『ゼロ・レクイエム』の話題はあの時から20年経ってもジャーナリストにとっては興味深い話題であり…次々に『超合衆国』『黒の騎士団』の裏側が暴露されて行っているのだ…。
中には…
―――僕の知らなかった…事実まで…
執政者にとって不都合な暴露は…独裁統治であれば隠し通す事も出来た。
否、現在ではインターネットなどで簡単に暴露されて隠し通す事は難しくなってきてはいるが…。
しかし、インターネットだと発信者が特定出来るが故に、暴露した人間を厳罰に処する事は出来る。
確かに、国家機密を『言論の自由』を盾に取って世界中にばらまく事は『言論の自由』の反中ではなく『売国行為』となるが、執政者個人の暴露話しは国家機密でも何でもない。
逆に云えば、執政者の過去の話しを国家機密にしている国は既に『民主主義国家』ではない。
その現実を踏まえた上で…『黒の騎士団』における1度目の『ゼロ』の死亡発表…そして、『ゼロ・レクイエム』の時に現れた『ゼロ』の存在…。
それらの裏話しがちらほらと暴露され始めて…スザクは驚きを隠せなかった。
ルルーシュはあの時、斑鳩から脱出した時の話しを一切しなかった。
その時、ルルーシュの見張り役として存在したロロの話しも出ては来なかったが…何となくあの時、彼はルルーシュを守って死んだのだろう…そんな事を思った。
勿論、何か根拠となる何かがある訳ではなく、否、ルルーシュの記憶が戻ったであろう時期からロロが変化していった事はスザクにも解った。
そして、あの時、上官であったスザクに対してあからさまな反抗の色を見せ始めていた事も…。
それを考えた時…ルルーシュにしてみれば、コマの一つとして利用するつもりであったのだろうが…。
最終的には命を懸ける程、ロロはルルーシュに傾倒したのだと思われる。
その結果…ルルーシュは絶体絶命の危機から命を救い出されたのだろう…。
流石にその辺りの話しは出回ってはいないが、『黒の騎士団』の日本人幹部があの時、シュナイゼルと秘密裏に会談を行っていた事、そして、その後、『ゼロ』に銃口を向けたらしい…と云う話しが出回り始めたのは10年ほど前の話しだ。
それから…その話しは徐々に話しが大きくなりつつ、インターネット上ではかなりデフォルトされている部分もあるが、広まって行った…。
テレビやラジオ、新聞に情報統制は出来てもインターネットまではどんな独裁国家であっても情報の隠匿はし切れるものではなかった。
確かに中にはデフォルトが大き過ぎる情報もあるが、中にはほぼ真実に近い話しも出て来ている。
スザクはその情報の真偽を確かめる為にわざわざ内密にシュナイゼルと会ったくらいだ。
勿論、『ゼロ』として…だが…。
『ギアス』の力のお陰でシュナイゼルはその辺りの話しを全て事細かに話してくれた。
そして…スザクは愕然とした。
そんな事実があって、もし、決定的な証拠でも出てきたら日本国内はおろか、世界中が大混乱に陥るだろう。
元々の『ゼロ』の正体がブリタニアの皇子である『ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア』であり、その当時、17歳から18歳にかけての学生であった事…。
そこまでの奇跡を作り上げた『ゼロ』をいとも簡単に切り捨てた事。
現在、日本の政治を動かしている扇要が当時、敵将であったヴィレッタ=ヌゥの進言によって『ゼロ』を裏切り、『ゼロ』をシュナイゼルに売る見返りに日本を返して貰うと云う条件を出した事…。
様々な混乱の卵を抱えている話しだった。
それが…今、ちらほらと出回り始め…時々確認するインターネット上の情報の中には本当に真実に近い情報を掲載しているウェブサイトまで現れている。
恐らく、この情報は…『黒の騎士団』で陰から様々な情報操作をしていたディートハルト=リートが何らかの形で残していたに違いない…。
世界の首脳がなんとか話しを(表向きに)まとめたのは今から大体10年前…。
そして、『黒の騎士団』内部の暴露話しが出回り始めたのも大体10年前…。
その情報の真相を知る者は限られている。
シュナイゼルは元々、『黒の騎士団』と敵対勢力として存在していたのだから、云い訳のしようも、その場を切り抜けるだけの才覚もあったが…。
日本国政府代表団はその場で『ゼロ』に対して銃口を向けた立場だ。
スザクはその時の世界会議の場にいたが…。
仮面の下で驚愕を覚えるとともに、これから、自分が守らなくてはならないものの大きさに驚愕していた。
そして、あの時何故、スザクは『黒の騎士団』の内部を知ることが出来なかったのだろう…と…後悔の念も生まれていた。
知ろうと思えば知ることが出来た。
C.C.はあの時…ルルーシュの傍にいたのだから…。
少なくとも、スザクは自分の祖国を…『ゼロ』に銃口を向けた者達に委ねなくてはならなかった。
確かに『枢木スザク』は死んだ存在となってはいるものの、『スザク』個人はこうして生きている。
『枢木スザク』としての意思は…こうして生きている…。
何故…こんな事に…?
どうすれば…いい…?
そんな渦巻く思いの中で今、目の前に広がる夜の風景を見ている。
少し離れたところには…二つの陣営があると示す、灯かりが見えている。
片方はこの国の反乱分子を制圧する為の正規軍…。
もう片方は国に不満を持つレジスタンス達…。
睨み合いが続いている。
本来、こんな形で陣営を開くなど…正規軍とレジスタンスの間で行われる事は殆どない。
こうなると最早内戦である。
複雑な気持ちになる。
ルルーシュが望んだのは、こんな形で武力のぶつかり合いではなく、話し合いで物事を決める世界…。
かつて、スザクの主であったユーフェミアも、日本人の血を流さずに平和的に話しを進めたいと望んだ『行政特区日本』…。
―――あの時…ユフィが望んだ『行政特区日本』が成功していても…結局、同族同士の確執が生まれた事になるんだろうな…。日本列島に残った日本人と蓬莱島に逃れた日本人同士の確執が生まれたように…。
そんな事を思いながら…踵を返し、今夜の寝床に向かおうと歩を進めようとした時…。
「今になって気付く事が多い…と云う感じだな…。お前が首相の息子だったが、あの時、日本がブリタニアに敗れ、お前が政治家にならずに済んだ事を少しは感謝すべきか…?お前にとっては…」
この声は…。
そして、『ゼロ』の仮面を被っている彼に対してこのような話題を振って話しかけて来るのはたった一人しかいない…。
周囲に誰がいるか解ったものではないから『ゼロ』は黙ったまま歩を進める。
「安心しろ…。いつも云っているだろう?私だってそのくらいの事は弁えている…」
「……」
「ただ、ここで長話しをするのは無理だな…。今夜、お前の寝床を半分借りるぞ…」
初めて会って以来、その姿を変えない、その女は、外見は若いが現在のスザクの10倍以上は生きている。
仮面の下で小さくため息を吐いた後…すっと歩き出す。
そして、その女も彼の後について行く。
この世界で彼にこうした態度を許されるのは彼女しかいない。
そして、彼にとってそれは、複雑な思いを抱きつつも…束の間、『ゼロ』の仮面を完全に脱ぐ事のできる空間でもあった。
彼女がどこまで、その部分を承知しているかは…解らないが…。
やがて、その場所に辿り着く。
パタンと…今どき珍しい手動の扉を開き、そして閉める。
その後、そこから続く暗い階段を下りて、この建物の外観からは想像持つつかない様なハイテクのロックシステムを施された扉の前に立つ。
そこで、『ゼロ』は仮面の右目部分を開き、その後、手袋を外して指紋を当てる。
その後、入室者の人数をパネルで打ち込み扉を開いた。
ついて来た女は彼がその扉を開けたのを見届け、先に入り込み、そして、彼が後に続く。
中のモニターで再度、入り口で施したチェックを繰り返した。
ルルーシュが考えた『ゼロ』の秘密を守るためのシステムだ。
『ゼロ・レクイエム』の準備段階の時からロイド=アスプルンドとセシル=クルーミーの二人に命じて開発させていた。
その後のメンテナンスもスザクのいない間に彼らが続けている。
ここまで長く混乱状態が続き、『ゼロ』が最前線に立つと云う計算で作っていなかったものだから、その後、ロイドとセシルはこのロックシステムのメンテナンスと新システム開発に忙殺されている。
『ゼロ』の仮面をゆっくり脱ぐと…彼女がやっと少しだけ安心したような表情を見せた。
「久しぶりだな…。近頃はお前の居場所が見つけにくくてな…」
「仕方ないだろ…。ルルーシュの計算がここまで狂うとは思わなかったんだから…」
「元々アイツの計算など、アテにはならんと思っていたがな…。私のこれまでの経験上…」
皮肉なのか、心からの同情なのか…よく解らない表情でそう、云い放つ。
確かに…彼女がこれまで見てきた世界の中で…こうした繰り返しがあったのだろう…とスザクは思う。
「辛ければこんな世界、放り出してしまえばいい…。私の知る限り、これまでの世界は争いの後、束の間の平和が訪れ、すぐに争いが始まる…。その繰り返しだ。そして、お前の様な存在が大きいか小さいかの違いはあったものの、必ずいたよ…。世界で認められるような英雄はいなかったがな…」
「僕も…時間の許す限り、歴史は勉強してきた。そして、争いの繰り返しもその度に英雄が作り出されていた事も知った。でも、ルルーシュは…」
「あのボウヤはどうも、自分以外を性善説で考え過ぎだ…。『話し合い』で決められる世界が本当に出来るのなら既にそうなっている…。しかし、それが出来ないのは人間が人間たる所以だと私は思っている…」
彼女の…真をついている。
そう思えるのは…この20年間…違和感を覚えつつも、それぞれがそれぞれに譲れない何かを抱えている事を知った。
現在、この国で反旗を翻しているレジスタンス達だって絶対に譲れない部分を政府に押さえ付けられている事に耐えかねての蜂起だろう…。
「確かに…ね…。彼らだって…自分の譲れない部分があったから…ブリタニアに対して蜂起した筈…なのに…。今は、あの時、『イレヴン』を動物扱いしていたブリタニアのやっていた事と同じだ…」
「動物?奴隷ではなく?」
「奴隷はまだ人間だろ?あの時のブリタニアは植民エリアの人間を家畜扱いしていた…。家畜は…人間として扱われないだろう?」
「随分過激な事を云う様になったな…」
「こんな…血みどろの自分の国を見ていると…ね…。正直、しんどいよ…」
「確かに…気持ちは解らんでもないな…。ナナリーもかなり手を焼いている様だし…」
その言葉に二人は黙り込んでしまう。
下を向いてしまったスザクを見て…彼女は切なげに目を細めた。
「まぁいい…。とりあえず、お前を探していて疲れたから…寝床を借りる…」
そう云って彼女は立ち上がり、その部屋の奥にある扉を開いた。
「C.C.…暫く…。否、いい…」
スザクは彼女にそう云いかけて、その言葉の先を飲み込んだ。
そんなスザクを見てC.C.は一言置いて、扉を閉めた。
「お前を探すのに疲れたからな…。2、3日、寝床を借りるぞ…」
その一言に…スザクは下を向いたまま…その肩を震わせた…。
To Be Continued
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これは…ルルーシュとスザクが生まれ変わり、再会した時より遥かに時間が遡り…。
神聖ブリタニア帝国第99代皇帝、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニアが救世主『ゼロ』に倒されて…20年ほど経った頃の話しである。
既に、『ゼロ』の仮面を継承したスザクはルルーシュと出会ってから、自らの刃によってこの世界から排除した時までの時間の倍以上…『ゼロ』として存在している。
『ゼロ』の仮面の下の顔を知る者も確かにいる事はいるのだが…。
しかし、それを『ゼロ』であるスザク自身にその真実を知っていると云う事を彼自身に露わにしているのは…たった一人…。
『ゼロ・レクイエム』の時…その場に足を運ばず…神の祀られている礼拝堂で一人…涙を流していた魔女…C.C.…。
『ゼロ』の情報源と云うのは、あの時のインパクトの所為か…放っておいても情報が入って来る…。
ルルーシュがそう云った表には出て来ないシステムを作っていた事もあるが、それに気付いた、ルルーシュの『ギアス』によって『ゼロ』に尽くす様になったシュナイゼルと、ルルーシュに真の忠誠を誓ったジェレミアがそこに情報を流すようになっていた。
それは…ルルーシュの命令だったのか…彼らの何がそうさせているのかは…もはや確認のしようもない。
しかし、そのお陰でスザクは『ゼロ』としての活動の力になっている事は否定しようのない事実だった。
様々なデータは勿論、必要な人材や物資の手配などは彼らの協力なしにはとても出来るものではない。
そして、人材の手配に関してはかなりの注意が必要になる。
一般人の中で『ゼロ』の正体に勘付く者、そして、それを口外する者が出て来てしまっては、『ゼロ』の意思は関係なく、『ゼロ』を中心に世界が回る事になる。
もしくは、その『ゼロ』を利用しようと考える者が出て来る。
それは…ルルーシュが命を賭してまで『ゼロ・レクイエム』を施した意味をなくす事になってしまうと云う事だ。
だからこそ…ルルーシュは『ゼロ・レクイエム』後、シュナイゼルはどんな形であれ、世界を動かして行く立場に立つと考え、そして、その為に『ギアス』を施した。
シュナイゼルの意思はそこにはない事は…充分に承知していただろうし、今だって、どこかで違和感を抱きつつも、人ならざる力によって彼を動かしている。
それほどまでに認めた…シュナイゼルの才覚…。
ナナリーではそこまでできないと云う事を考えていた事なのだろう。
確かに、ナナリーがまだ、日本が『エリア11』だった頃、そこの総督であった時の彼女の手腕をきちんと見ていても、ルルーシュがどんな形であれ、シュナイゼルを政治に関わらせる事を考えざるを得なかったのだろう。
『ゼロ』の仮面を継承したスザクも…ここまで時間が経って、やっと、ルルーシュの先の先を読んだ策に感嘆のため息が出て来る。
あの後…世界は『民主主義』を標榜する中で『民主主義』『自由』の意味を既に忘れてしまっていた人々の間に様々な相違が生まれて来る。
『民主主義』も『自由』も『自分の望みのままに動かす事』ではない。
そして、それぞれの価値観、譲れない何かがある限り、『話し合い』で事が決まる世界にする為には多くのハードルがあることを失念していた世界は…そろそろ『ルルーシュ皇帝』に全ての悪を押し付ける事に限界が来ている事が…ひしひしと感じさせられてきていた。
様々な覚悟が足りない世界…。
結局は『ルルーシュ皇帝』を倒す戦いの際に、その国の代表となった人物があの、『ゼロ・レクイエム』の舞台となったあのパレードにおいて、『死刑宣告』を受け、人々の目に晒されていた人物が代表となっている国の発言権が強くなっていた。
どれだけ平等に、公平に、と訴えたところで、二者択一を迫られた時には誰かが決めなくてはならない。
そこで『黒の騎士団』のリーダーとして存在していた頃の『ゼロ』であれば、世界の代表者たちを一言で黙らせる事が出来るだけのカリスマと実績があった訳だが…。
しかし、『ルルーシュ皇帝』を倒した『ゼロ』はその後、一切、言葉を発しない。
そして、国籍も持たず、敢えて持っている権限と云えば、騒乱が起きた地域での制圧隊の指揮権くらいのものだ。
つまり、世界の政治に対しての決定権はおろか、投票権、発言権さえ持たない状態となっている。
となると、それまで『黒の騎士団』の中で勝者となっていた者たちは権限と義務と責任を負う事となる訳だが…。
元々、『エリア11』…すなわち、現日本国の代表者となった者たちは一テロリスト集団を率いていた者達に過ぎない存在だ。
テロリストとしても『ゼロ』の助けなしに何も出来なかった彼ら…。
その時以上に力量を求められる国政を担う…否、世界への発言力の強くなった立場になった時…そのバランス感覚は足りていない…と云われても仕方ない状態だった。
それは、顕著に表れた。
首相の息子であったスザクの目から見ても…現在の日本の有り様には言葉がない。
『ゼロ・レクイエム』に置いての中心となった国の代表の中では日本の代表が最も力量に不安を覚えるところである。
中華連邦は確かに、天子である蒋麗華は幼かったし、それまでが大宦官たちの手によってほぼ、軟禁状態であり、経験も知識も不足していたが、彼女を支え続けた星刻たちが全力で支えて行くうちに彼女はそれを吸収していった。
ブリタニアはナナリーが代表となったが、常にルルーシュの『ギアス』の影響下にあったシュナイゼルが『ゼロ』の命令により、全力でナナリーを支え、ナナリー自身、あの『エリア11』の総督であった頃の経験を無駄にはしていなかった。
日本は…せめて暫定期間の間だけでも皇神楽耶がその権力を預かっていればあるいは…と云う事もあったかもしれないが、日本の経済はブリタニアから解放されてからの方が大変であった。
それ故に、神楽耶が経済面でも執政面でも…と云うには彼女の周囲には人材が少なすぎた。
それに、彼女自身、『ゼロ』を支える立場であったからこそ、その力を発揮する事が出来た。
扇たちでは彼女が陰から支えると云う形での執政はとても出来なかった。
あれから相応の時間が経っている今となっては…扇たちへの評価は日本国内がい通して『所詮は『ゼロ』がいなければ何も出来なかったテロリストのなりそこない』と云う評価が一般的となっていた。
扇たちがその辺りをどう、見ているか…そして、どのように考え、扱っているかを日本国民達はずっと見ていた。
蓬莱島に逃れた100万人の日本人と、日本列島に残ったその100倍近くいる日本人との間の確執も当然、生まれている。
そこまで考えて扇たちは『ゼロ』を…『ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア』を否定したのか…そう考えた時、力なく首を横に振ってしまいたくなるのは至極当然の話しである。
世界が『民主主義』を望んだ結果、ついて来たのは『言論の自由』…。
あの『ゼロ・レクイエム』の話題はあの時から20年経ってもジャーナリストにとっては興味深い話題であり…次々に『超合衆国』『黒の騎士団』の裏側が暴露されて行っているのだ…。
中には…
―――僕の知らなかった…事実まで…
執政者にとって不都合な暴露は…独裁統治であれば隠し通す事も出来た。
否、現在ではインターネットなどで簡単に暴露されて隠し通す事は難しくなってきてはいるが…。
しかし、インターネットだと発信者が特定出来るが故に、暴露した人間を厳罰に処する事は出来る。
確かに、国家機密を『言論の自由』を盾に取って世界中にばらまく事は『言論の自由』の反中ではなく『売国行為』となるが、執政者個人の暴露話しは国家機密でも何でもない。
逆に云えば、執政者の過去の話しを国家機密にしている国は既に『民主主義国家』ではない。
その現実を踏まえた上で…『黒の騎士団』における1度目の『ゼロ』の死亡発表…そして、『ゼロ・レクイエム』の時に現れた『ゼロ』の存在…。
それらの裏話しがちらほらと暴露され始めて…スザクは驚きを隠せなかった。
ルルーシュはあの時、斑鳩から脱出した時の話しを一切しなかった。
その時、ルルーシュの見張り役として存在したロロの話しも出ては来なかったが…何となくあの時、彼はルルーシュを守って死んだのだろう…そんな事を思った。
勿論、何か根拠となる何かがある訳ではなく、否、ルルーシュの記憶が戻ったであろう時期からロロが変化していった事はスザクにも解った。
そして、あの時、上官であったスザクに対してあからさまな反抗の色を見せ始めていた事も…。
それを考えた時…ルルーシュにしてみれば、コマの一つとして利用するつもりであったのだろうが…。
最終的には命を懸ける程、ロロはルルーシュに傾倒したのだと思われる。
その結果…ルルーシュは絶体絶命の危機から命を救い出されたのだろう…。
流石にその辺りの話しは出回ってはいないが、『黒の騎士団』の日本人幹部があの時、シュナイゼルと秘密裏に会談を行っていた事、そして、その後、『ゼロ』に銃口を向けたらしい…と云う話しが出回り始めたのは10年ほど前の話しだ。
それから…その話しは徐々に話しが大きくなりつつ、インターネット上ではかなりデフォルトされている部分もあるが、広まって行った…。
テレビやラジオ、新聞に情報統制は出来てもインターネットまではどんな独裁国家であっても情報の隠匿はし切れるものではなかった。
確かに中にはデフォルトが大き過ぎる情報もあるが、中にはほぼ真実に近い話しも出て来ている。
スザクはその情報の真偽を確かめる為にわざわざ内密にシュナイゼルと会ったくらいだ。
勿論、『ゼロ』として…だが…。
『ギアス』の力のお陰でシュナイゼルはその辺りの話しを全て事細かに話してくれた。
そして…スザクは愕然とした。
そんな事実があって、もし、決定的な証拠でも出てきたら日本国内はおろか、世界中が大混乱に陥るだろう。
元々の『ゼロ』の正体がブリタニアの皇子である『ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア』であり、その当時、17歳から18歳にかけての学生であった事…。
そこまでの奇跡を作り上げた『ゼロ』をいとも簡単に切り捨てた事。
現在、日本の政治を動かしている扇要が当時、敵将であったヴィレッタ=ヌゥの進言によって『ゼロ』を裏切り、『ゼロ』をシュナイゼルに売る見返りに日本を返して貰うと云う条件を出した事…。
様々な混乱の卵を抱えている話しだった。
それが…今、ちらほらと出回り始め…時々確認するインターネット上の情報の中には本当に真実に近い情報を掲載しているウェブサイトまで現れている。
恐らく、この情報は…『黒の騎士団』で陰から様々な情報操作をしていたディートハルト=リートが何らかの形で残していたに違いない…。
世界の首脳がなんとか話しを(表向きに)まとめたのは今から大体10年前…。
そして、『黒の騎士団』内部の暴露話しが出回り始めたのも大体10年前…。
その情報の真相を知る者は限られている。
シュナイゼルは元々、『黒の騎士団』と敵対勢力として存在していたのだから、云い訳のしようも、その場を切り抜けるだけの才覚もあったが…。
日本国政府代表団はその場で『ゼロ』に対して銃口を向けた立場だ。
スザクはその時の世界会議の場にいたが…。
仮面の下で驚愕を覚えるとともに、これから、自分が守らなくてはならないものの大きさに驚愕していた。
そして、あの時何故、スザクは『黒の騎士団』の内部を知ることが出来なかったのだろう…と…後悔の念も生まれていた。
知ろうと思えば知ることが出来た。
C.C.はあの時…ルルーシュの傍にいたのだから…。
少なくとも、スザクは自分の祖国を…『ゼロ』に銃口を向けた者達に委ねなくてはならなかった。
確かに『枢木スザク』は死んだ存在となってはいるものの、『スザク』個人はこうして生きている。
『枢木スザク』としての意思は…こうして生きている…。
何故…こんな事に…?
どうすれば…いい…?
そんな渦巻く思いの中で今、目の前に広がる夜の風景を見ている。
少し離れたところには…二つの陣営があると示す、灯かりが見えている。
片方はこの国の反乱分子を制圧する為の正規軍…。
もう片方は国に不満を持つレジスタンス達…。
睨み合いが続いている。
本来、こんな形で陣営を開くなど…正規軍とレジスタンスの間で行われる事は殆どない。
こうなると最早内戦である。
複雑な気持ちになる。
ルルーシュが望んだのは、こんな形で武力のぶつかり合いではなく、話し合いで物事を決める世界…。
かつて、スザクの主であったユーフェミアも、日本人の血を流さずに平和的に話しを進めたいと望んだ『行政特区日本』…。
―――あの時…ユフィが望んだ『行政特区日本』が成功していても…結局、同族同士の確執が生まれた事になるんだろうな…。日本列島に残った日本人と蓬莱島に逃れた日本人同士の確執が生まれたように…。
そんな事を思いながら…踵を返し、今夜の寝床に向かおうと歩を進めようとした時…。
「今になって気付く事が多い…と云う感じだな…。お前が首相の息子だったが、あの時、日本がブリタニアに敗れ、お前が政治家にならずに済んだ事を少しは感謝すべきか…?お前にとっては…」
この声は…。
そして、『ゼロ』の仮面を被っている彼に対してこのような話題を振って話しかけて来るのはたった一人しかいない…。
周囲に誰がいるか解ったものではないから『ゼロ』は黙ったまま歩を進める。
「安心しろ…。いつも云っているだろう?私だってそのくらいの事は弁えている…」
「……」
「ただ、ここで長話しをするのは無理だな…。今夜、お前の寝床を半分借りるぞ…」
初めて会って以来、その姿を変えない、その女は、外見は若いが現在のスザクの10倍以上は生きている。
仮面の下で小さくため息を吐いた後…すっと歩き出す。
そして、その女も彼の後について行く。
この世界で彼にこうした態度を許されるのは彼女しかいない。
そして、彼にとってそれは、複雑な思いを抱きつつも…束の間、『ゼロ』の仮面を完全に脱ぐ事のできる空間でもあった。
彼女がどこまで、その部分を承知しているかは…解らないが…。
やがて、その場所に辿り着く。
パタンと…今どき珍しい手動の扉を開き、そして閉める。
その後、そこから続く暗い階段を下りて、この建物の外観からは想像持つつかない様なハイテクのロックシステムを施された扉の前に立つ。
そこで、『ゼロ』は仮面の右目部分を開き、その後、手袋を外して指紋を当てる。
その後、入室者の人数をパネルで打ち込み扉を開いた。
ついて来た女は彼がその扉を開けたのを見届け、先に入り込み、そして、彼が後に続く。
中のモニターで再度、入り口で施したチェックを繰り返した。
ルルーシュが考えた『ゼロ』の秘密を守るためのシステムだ。
『ゼロ・レクイエム』の準備段階の時からロイド=アスプルンドとセシル=クルーミーの二人に命じて開発させていた。
その後のメンテナンスもスザクのいない間に彼らが続けている。
ここまで長く混乱状態が続き、『ゼロ』が最前線に立つと云う計算で作っていなかったものだから、その後、ロイドとセシルはこのロックシステムのメンテナンスと新システム開発に忙殺されている。
『ゼロ』の仮面をゆっくり脱ぐと…彼女がやっと少しだけ安心したような表情を見せた。
「久しぶりだな…。近頃はお前の居場所が見つけにくくてな…」
「仕方ないだろ…。ルルーシュの計算がここまで狂うとは思わなかったんだから…」
「元々アイツの計算など、アテにはならんと思っていたがな…。私のこれまでの経験上…」
皮肉なのか、心からの同情なのか…よく解らない表情でそう、云い放つ。
確かに…彼女がこれまで見てきた世界の中で…こうした繰り返しがあったのだろう…とスザクは思う。
「辛ければこんな世界、放り出してしまえばいい…。私の知る限り、これまでの世界は争いの後、束の間の平和が訪れ、すぐに争いが始まる…。その繰り返しだ。そして、お前の様な存在が大きいか小さいかの違いはあったものの、必ずいたよ…。世界で認められるような英雄はいなかったがな…」
「僕も…時間の許す限り、歴史は勉強してきた。そして、争いの繰り返しもその度に英雄が作り出されていた事も知った。でも、ルルーシュは…」
「あのボウヤはどうも、自分以外を性善説で考え過ぎだ…。『話し合い』で決められる世界が本当に出来るのなら既にそうなっている…。しかし、それが出来ないのは人間が人間たる所以だと私は思っている…」
彼女の…真をついている。
そう思えるのは…この20年間…違和感を覚えつつも、それぞれがそれぞれに譲れない何かを抱えている事を知った。
現在、この国で反旗を翻しているレジスタンス達だって絶対に譲れない部分を政府に押さえ付けられている事に耐えかねての蜂起だろう…。
「確かに…ね…。彼らだって…自分の譲れない部分があったから…ブリタニアに対して蜂起した筈…なのに…。今は、あの時、『イレヴン』を動物扱いしていたブリタニアのやっていた事と同じだ…」
「動物?奴隷ではなく?」
「奴隷はまだ人間だろ?あの時のブリタニアは植民エリアの人間を家畜扱いしていた…。家畜は…人間として扱われないだろう?」
「随分過激な事を云う様になったな…」
「こんな…血みどろの自分の国を見ていると…ね…。正直、しんどいよ…」
「確かに…気持ちは解らんでもないな…。ナナリーもかなり手を焼いている様だし…」
その言葉に二人は黙り込んでしまう。
下を向いてしまったスザクを見て…彼女は切なげに目を細めた。
「まぁいい…。とりあえず、お前を探していて疲れたから…寝床を借りる…」
そう云って彼女は立ち上がり、その部屋の奥にある扉を開いた。
「C.C.…暫く…。否、いい…」
スザクは彼女にそう云いかけて、その言葉の先を飲み込んだ。
そんなスザクを見てC.C.は一言置いて、扉を閉めた。
「お前を探すのに疲れたからな…。2、3日、寝床を借りるぞ…」
その一言に…スザクは下を向いたまま…その肩を震わせた…。
To Be Continued
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2012年03月05日
お久しぶりで御座居ます…
大変ご無沙汰致しております。
和泉綾で御座居ます。
去年の後半…まぁ、9月頃からなのですが…恐ろしく体調不良と仕事の多忙と人間関係の複雑化により完全にスザルルを書けない状態が続いておりました…。
1月のインテ、本人は参加していなかったのですが、サークルは確保して代理で売り子をして下さった方がおりまして、新刊を出しておりますが…こちらではまったくもって宣伝もしておりませんでした。
と云うか、自家通販できる本がいくつかあるのに、通販ページの更新すらままなっておりませぬ…。
やっと、神経性の摂食障害が回復し始めておりまして、御挨拶に参上させて頂いた次第で御座居ます…。
まぁ、事情の程はこちらにいらしていらっしゃる方は殆ど知らないと思われますが、一時期、ホントにシャレにならないほど身体が弱っている状態で、現在も栄養状態がボロボロなので無理が出来ない状態で御座居ます…。
でも、色々書きたいネタはあるし、オリジナル作品のプロットをメモ帳に作るくらいはできるようになっております。
なぜ、オリジナルになったかと云うと…ちょっと、スザルルネタでやるにはキャラクターにギャップがあるので…と云う事で…。
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和泉綾で御座居ます。
去年の後半…まぁ、9月頃からなのですが…恐ろしく体調不良と仕事の多忙と人間関係の複雑化により完全にスザルルを書けない状態が続いておりました…。
1月のインテ、本人は参加していなかったのですが、サークルは確保して代理で売り子をして下さった方がおりまして、新刊を出しておりますが…こちらではまったくもって宣伝もしておりませんでした。
と云うか、自家通販できる本がいくつかあるのに、通販ページの更新すらままなっておりませぬ…。
やっと、神経性の摂食障害が回復し始めておりまして、御挨拶に参上させて頂いた次第で御座居ます…。
まぁ、事情の程はこちらにいらしていらっしゃる方は殆ど知らないと思われますが、一時期、ホントにシャレにならないほど身体が弱っている状態で、現在も栄養状態がボロボロなので無理が出来ない状態で御座居ます…。
でも、色々書きたいネタはあるし、オリジナル作品のプロットをメモ帳に作るくらいはできるようになっております。
なぜ、オリジナルになったかと云うと…ちょっと、スザルルネタでやるにはキャラクターにギャップがあるので…と云う事で…。
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2011年06月28日
COMIC CITY 東京127お疲れ様でした。
今回、やる気の全くないオーラ全開で参加したCOMIC CITY東京127では御座居ましたが…。
昨日の携帯からの記事でも解りますかと思いますが…
ずっと、色々と悩んでいたというか、やる気が出ないというか、モチベーションの低さに悩まされている状態が続いていたのですが…。
一気に気持ちがハイテンションになる出来事が重なりまして…。
アメーバの『なう』ではその時のことを実況中継でつぶやいていたのですけれど…(笑)
ツイッターの方は携帯からつなげる仕様にしていなくて…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
ただ今、体力的にはボロボロ状態なのですが、気持ちがハイでして…興奮状態が収まった時にはちょっと怖いな…という状況で御座居ます。
まぁ、そのハイテンションの裏側には自分がテンパり過ぎてすっごい恥をかいてきたという結構アホな事もあるのですが…。
とにかく…これまでやる気満々でイベント参加した時よりもはるかに沢山の物を得てきたと思います。
落ち込んでいた事もあるから、余計に…ですね…。
ギアスサークルさん自体はすっごく少なくって…。
まぁ、6月ってイベントとイベントのはざまでこんなもんなのかな…と思ったり…。
去年はオンリーがあって凄く気合入っていたのですけれど…。
まぁ、前置きはこれくらいにして…今回のイベントの事をちょっと書いてみたいと思います。
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昨日の携帯からの記事でも解りますかと思いますが…
ずっと、色々と悩んでいたというか、やる気が出ないというか、モチベーションの低さに悩まされている状態が続いていたのですが…。
一気に気持ちがハイテンションになる出来事が重なりまして…。
アメーバの『なう』ではその時のことを実況中継でつぶやいていたのですけれど…(笑)
ツイッターの方は携帯からつなげる仕様にしていなくて…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
ただ今、体力的にはボロボロ状態なのですが、気持ちがハイでして…興奮状態が収まった時にはちょっと怖いな…という状況で御座居ます。
まぁ、そのハイテンションの裏側には自分がテンパり過ぎてすっごい恥をかいてきたという結構アホな事もあるのですが…。
とにかく…これまでやる気満々でイベント参加した時よりもはるかに沢山の物を得てきたと思います。
落ち込んでいた事もあるから、余計に…ですね…。
ギアスサークルさん自体はすっごく少なくって…。
まぁ、6月ってイベントとイベントのはざまでこんなもんなのかな…と思ったり…。
去年はオンリーがあって凄く気合入っていたのですけれど…。
まぁ、前置きはこれくらいにして…今回のイベントの事をちょっと書いてみたいと思います。
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2011年06月27日
COMIC CITY 東京 127お疲れ様でした。
パソコンからのレポートは明日改めて…
ついさっき、おうちに帰って来ました。
某つぶやきツールでは色々呟いていたんですが、ツイッター…携帯から接続出来るようにしとくの忘れていました…(-o-;)
今回のイベント…奇跡に奇跡が重なり、凄く幸せに浸っております。
本は告知を殆どしてなかったし、してても大してでないのはいつもの事です。
でも、本を完売させる事より遥かに価値のある奇跡が重なり…沢山の元気を頂いて来ました。
と云うのも…今、凄く書きたい!
そう思えるようにしてくれた沢山の奇跡がありました。
詳しくは、改めて書かせて頂きます。
後、新刊のコピー本はかなり残ったので自家通販ページ…ちゃんと更新して、ご希望の方に販売する事にしました。
改めて告知させて頂きます。
とりあえず…告知をろくにしなかったのに当サークルのスペースにお立ち寄り下さった皆様、有難う御座居ました。
そして、奇跡を下さった皆様…有難う御座居ました。
イベント、お疲れ様でした。
和泉綾拝
ついさっき、おうちに帰って来ました。
某つぶやきツールでは色々呟いていたんですが、ツイッター…携帯から接続出来るようにしとくの忘れていました…(-o-;)
今回のイベント…奇跡に奇跡が重なり、凄く幸せに浸っております。
本は告知を殆どしてなかったし、してても大してでないのはいつもの事です。
でも、本を完売させる事より遥かに価値のある奇跡が重なり…沢山の元気を頂いて来ました。
と云うのも…今、凄く書きたい!
そう思えるようにしてくれた沢山の奇跡がありました。
詳しくは、改めて書かせて頂きます。
後、新刊のコピー本はかなり残ったので自家通販ページ…ちゃんと更新して、ご希望の方に販売する事にしました。
改めて告知させて頂きます。
とりあえず…告知をろくにしなかったのに当サークルのスペースにお立ち寄り下さった皆様、有難う御座居ました。
そして、奇跡を下さった皆様…有難う御座居ました。
イベント、お疲れ様でした。
和泉綾拝
2011年05月20日
幼馴染シリーズ 番外編
異父兄妹
※『幼馴染シリーズ』ルルーシュとゼロが少しずつ、異父兄妹として関係を築いて行く…最初の頃のお話しです。(今回、少々時間が空いてしまったのでリクエスト企画の作品を書く前にリハビリで書いたものです)
ルルーシュの異父兄であるゼロの件が一段落してやっと…落ち着いてきた頃…。
あの、バタバタ状態の中、ルルーシュとスザクは両想いとなった訳だが…。
その後、周囲の騒がしさの中、二人がそんな気持ちに浸っていられる余裕もなく、落ち着いた今になって…やっと、自分の頭の中でその事実を理解し始めていた。
「私が…スザクの…恋人…って…」
改めて言葉にしてみると自分が恐ろしく恥ずかしい言葉を口にしたかのように顔から火が出そうになった。
ゼロの事を知って、ランペルージ家と桐原家の間で色々な話し合いが行われ、ルルーシュがスザクの婚約者に…そして、スザクの従妹である皇神楽耶がルルーシュの義兄であるシュナイゼルの婚約者になるという事で話しは決着がついた。
ただ、それはあくまで、家同士の事であり、当人たちの意思や感情はそこにはない。
だから、そう云った肩書をつけられたという事は認識していても、ルルーシュとスザクの二人の問題として、二人が両想いとなった事をこうして落ち着いて実感するのはこの時、初めてだった。
そこにいたのがルルーシュだけだったから…救われたのかもしれないと…後になって冷静になったルルーシュは思った訳だが…。
それまで、ルルーシュ自身がスザクを好きであるという自覚はあったけれど、スザクはユーフェミアと付き合っていた事もあったし、告白をして失恋までいたのだから、落ち着かない時に両想いだという意識を持つ事自体少々難しい事なのではないかとも思える訳だが…。
あれだけの騒ぎの中で…二人が両想いとなった事に…。
なんだか、気持ち的には複雑だ。
あの時、ゼロがルルーシュを誘拐しなければこんな風に両想いになる事なんてなかったのではないかと思えてくる。
尤も、スザクから見れば、スザク自身にはルルーシュを好きであると云う自覚はしっかり持っていたのだ。
ユーフェミアとのことや過去にルルーシュを傷つけ続けていたという自覚もあったから、あれがいいきっかけであった事は確かだ。
結果がどうなるか解らなかったし、ルルーシュの気持ちがスザクから離れて行く事になってしまったかもしれないが、それでも、ルルーシュを見守り続けるつもりでいた訳なのだが…。
そんなスザクの気持ちなど、ルルーシュが知る由もない…訳なのだが…。
何れにせよ、相当な廻り道をして、ある意味、落ち着くところに落ち着いたという形になった訳だ…。
そうなった時点では周囲が騒がしい事になってしまっていて、二人がその事を意識できるようになったのはつい最近の事…であるという事だ。
初めの内はかなり頑なで、気持ちがうまくコントロールできずにいる状態が続いていたが、両親であるシャルルとマリアンヌ、そして、異母兄であるシュナイゼルがゼロの気持ちを落ち着かせた頃…漸くルルーシュもほっとして、心から力が抜けた。
力が抜けたと同時に…スザクと両想いとなった…と云う自覚が芽生えて困惑している…と云った経緯である。
―――コンコン…
扉をノックされた事でルルーシュが我に返る。
「誰だ?」
今、このマンションの中にはナナリーとロロとノネットとゼロがいるのだ。
ナナリーはロロと一緒にいるのだからとりあえず、今はルルーシュの部屋に来るとは思えない。
だとすると、ノネットかゼロだ…。
一応、ゼロの事は一通り知ったし、頭の中では理解しているけれど…。
未だに感情がついて行かない部分もあり…。
『俺だ…』
正直、どう接していいか解らない方の人物がノックしたようだ。
ここで追い返す理由が思いつかず…少々困っていると…
ルルーシュの返事を待たずに彼は部屋に入ってきた。
「な!入っていいなんて…」
「入るなとも云われていないからな…」
流石に…ルルーシュの血縁だけあってきちんと言葉の上げ足を取って返してくる。
ルルーシュが複雑な表情をしているとゼロがふっと笑った。
「参ったな…。まぁ、嫌われても仕方ないか…」
ゼロが自嘲気味に苦笑している。
別に嫌いな訳ではないのだが…。
ただ、気持ちの中でどうしたらいいのかが良く解らないのだ。
それだけなのだけれど、そう云った感情を表す事が苦手なルルーシュは表情では複雑な表情になってしまうらしい。
「別に…嫌ってなんて…」
ルルーシュが少し下を向いてゼロの言葉に返す。
「まぁ、無理しなくていい…。俺自身、ルルーシュを守るつもりだった事は否定しないが、ルルーシュに対して嫌な思いをさせた事は事実だ…」
ゼロの言葉…。
確かに…話しの流れでは『キョウト六家』と云う組織のトップである桐原泰三がルルーシュを攫おうとしていた事は事実らしい。
それを察知したゼロが先にルルーシュを攫ったのだ。
桐原が何を考えていたかは解らないが…。
ただ、ゼロの考えていた事を知るにつれてゼロがあの組織の中で自分の意思とは別の方向へ話しが進んでいた事は…解る。
その所為でルルーシュがその話しの流れの中で利用されそうになっていたのだ。
それこそ…ルルーシュ本人が傷つけられてしまいかねない様な…。
桐原としても別離した枢木家の事もあり、一石二鳥だと思ってしまってもある意味仕方ない状態でもあった。
「あ…。それは…。それに…あれは…貴方が…私を…」
どう呼んでいいか解らず…思わず『貴方』などと云う呼称になってしまった事にルルーシュは気付かなかったが、ゼロは敏感に反応した。
「一応…俺はルルーシュと血のつながった兄なんだけれどな…。半分だけだけれど…」
この部屋に入ってきてから一番切なそうな表情をルルーシュに見せた。
「あ…えっと…その…」
「無理しなくていい…。こちらにその気はなかったとはいえ、電話口でシュナイゼル異母兄さんを脅す為に君の服まで破いたんだ…。警戒されても仕方ない…」
あの瞬間、確かに恐怖を覚えた事は本当だけれど、それでも…
―――あの時のゼロは…
ルルーシュはそんな風に思い返した。
実際にゼロはルルーシュに危害を加える気は毛頭なかったし、母親のマリアンヌが今は義父であるシャルルと結婚するとなった時にルルーシュを攫った連中とはちょっと違うという事は…何となく解った。
結果的に、ゼロが何者であるか解った時点で色々な事に納得できた訳だけれど…。
それにしたって…あのシュナイゼルと対等に張り合えるだけの能力があるのであればあんな風にシュナイゼルの気持ちを逆なでするような方法を取らなくても脅しをかける事くらい出来たのではないかと思う…。
実際に、ゼロがランペルージ家に戻っては来たものの…相変わらず、『キョウト六家』にも出入りしていて…両家の調整役を行い、それまで『キョウト六家』の中で果たしていた役割もちゃんと果たしているのだ。
勿論、スザクが『キョウト六家』に戻り、形だけでもその仕事をこなせるようになるまでの間と云う事なのだが…。
それにしたって、それまでゼロが『キョウト六家』で果たしていた役割は大きなものであった事はうかがえる。
あれだけの騒ぎを起こしてゼロは不問となっていたのだ。
云ってみればあの組織の中でゼロがいなければ成り立たない部分があるという事だ。
何れ、スザクがそれを引き継いでいく事になる訳なのだけれど…。
「別に…警戒なんてしていない…。貴方の…ゼロの…事情を知ったら…多分、今のゼロの言葉は真実だと思えるから…。それに…今なら貴方が私の異父兄だって…信じられる…」
ルルーシュの言葉にゼロが不思議そうな顔をする。
そんなゼロの顔を見てルルーシュがくすりと笑った。
これまで、スザクやナナリーに指摘されても何となく自分の中で納得出来ていなかったけれど…。
こんな風に冷静になって、落ち着いてみると…彼らの言葉は正しいと思えるから…。
「ゼロは…母様にそっくりだ…。私も良く…母様に似ているって云われるけど…。私よりもゼロの方が母様に似ている…」
「そうか…」
ルルーシュの言葉にゼロはその一言を零して下を向いた。
そんなゼロを見ていてルルーシュとしては何か悪い事でも云ったのかと…少し心配になるのだが…。
「シュナイゼル異母兄さんがルルーシュに惚れたのが…解る様な気がするよ…」
ゼロが口の中でぼそりと呟いた。
その言葉の中になにが含まれているのか…ルルーシュには解らない。
だから、今度はルルーシュが不思議そうな顔をする。
ルルーシュのそんなアンバランスな鈍感さに苦笑してしまいそうになるゼロだが…。
それでも、その苦笑をかみ殺す。
「ルルーシュ…変な云い方だけれど…攫ったのがお前で良かった…」
言葉だけを見れば…ムッとしてしまう様な…そんな言葉だけれど…。
でも、ゼロの表情を見ていると…そんな気持ちもなくなって行く…。
それは…ゼロの複雑な過去を知ったからなのか…。
「なんだよ…それ…。まぁ、ナナリーを攫っていたら私が地獄の底まで追いかけて行って絶対に懲らしめてやるけどな…」
ルルーシュがプイッと横を向いてそう、云い放つ。
今となってはそんな事…考えてもいないし、本当にナナリーが攫われていたのだったら…逆に、こんな複雑な事になっていなかったかもしれない。
ナナリーは病弱だったせいか、他人の考えている事に敏感で…隠している事を察するのが早い。
あんな形で誰かを脅す前にナナリーはその相手を宥めてしまうかもしれない。
まして、相手が…その事実を知らなかったとしても…血を分けた兄であるというのなら…。
そんな風にそっぽ向くルルーシュにゼロは苦笑しつつ、複雑な感情を抱く。
こんな危なっかしい異父妹を…攫った事に色んな意味で複雑な気分になるからだ。
頭はいいくせに…バカだと云うのは確かに本当だ…。
「ルルーシュ…お前のその、なんて云うか…妙な強がりはやめておけ…。それに、自分の事を顧みないその悪い癖もな…」
ゼロとしては『あに』と云うカテゴリーの存在としてもこの危なっかしい『いもうと』が心配になる。
これまで、ナナリーがルルーシュに守られていると思っていたが…。
ゼロがランペルージに来てからめまぐるしく変わって行く状況の中で、この姉妹を見てきたが…。
どちらかと云うとナナリーの方が安定感がある様に見える。
彼女自身、自分自身が誰かの手を借りないと自分自身がままならない事を自覚していたから…と云う事もあるかもしれない。
彼女は非常に周囲を冷静に見つめている事が解った。
ルルーシュはナナリーの事となるとすぐに前後不覚となり、あたふたしているのを見ていたから…どうしても危なっかしいと思えて来るのだろう。
ルルーシュ自身は非常に能力のある人間だと思う。
男であったならそれこそ、シュナイゼルはルルーシュを絶対に自分の懐に抱え込んで放さないだろう。
しかし…精神的に…脆いところがあり…その一点を突かれると彼女自身がいとも簡単に崩れると云う…ある意味、ウィークポイントがあると云う事も事実ではあるのだが…。
―――物理的優秀さと…精神的弱さ…。本当にアンバランスだ…。
それが、ゼロのルルーシュに対する評価だ。
ルルーシュにとって大切な存在は全てを持って守ろうとする傾向があり…その中でもナナリーに対してはけた違いだ。
そして…そんなアンバランスなルルーシュを今、支えているのは…
―――あの、茶髪のクソガキか…
そう思うと何となく複雑な気分だった。
「ルルーシュ…お前は…どうして、『キョウト六家』の跡取りとしてのあのクソガキと婚約なんてしたんだ?」
ゼロが唐突にそんな問いをルルーシュに投げかける。
「え?」
「どう考えたって今更枢木家の人間が桐原の後を継承していくというにはかなりの茨の道を歩く事になる。俺を推していた連中だってそれなりにいたし、逆に俺を追い落とそうとする連中もいた…」
ゼロがなにを云いたいのかが解った。
スザクに対して『クソガキ』と云うその表現にはちょっと、ムッとしてしまったが…。
「私も…スザクも…それを承知の上で決めた事だし…。うまくできるか解らないけれど…ランペルージも『キョウト六家』も途絶えてしまっては困る…と云う事だけは解るし…。それに…私は…ゼロにも幸せになって欲しい…」
ルルーシュの言葉に…ゼロの動きが止まる。
何を云われたのか…理解出来ないと云った感じだ。
「なに…を…」
「ゼロの過去を知ったからと云うのもあるけれど…。こうして、色んな形でゼロの『いもうと』として話しをしていて…素直にそう…思えるんだ…。私は…ずっと、シュナイゼル義兄さまたちのお陰で平凡な幸せに浸ってきたから…。だから…今度は私が出来る事でゼロに…平凡な幸せを少しでも味わってほしい…」
ルルーシュの言葉に…。
シュナイゼルもあの、ヴァインベルグ家の跡取りであるジノも…彼女に惹かれた理由が解った気がした。
ゼロとしても…ルルーシュが『異父妹』でなければ…と思えるくらいのモラルはあり…。
だからこそ、その先を考える事など出来ない訳なのだが…。
「お前なぁ…そんな他人の幸せを考える前に…自分の幸せを考えろよ…」
今のゼロにはその一言を口に出すのが精いっぱいだった。
「私は幸せだよ…。ナナリーが元気になって、ちょっと複雑だけど、ロロとうまく行っていて…。スザクも…私を大切にしてくれている…。ゼロはまだ…私たちの前で、心の底から笑っていないから…」
またも、予想外の言葉にゼロが目を丸くする。
元々、そんな風に心の底から笑えるような状況の中にいた訳ではなかったから…。
そして、そんな事を考えた事もなかった。
それ故に今の言葉は色んな意味できついと思った。
「俺が…バラエティ番組見ながら大笑いなんて…考えられないだろうが…」
「でも、私もナナリーも面白い番組を見れば大笑いするし、嬉しい事があれば笑う…。これから…少しずつでいい…。ゼロが嬉しいと思った時には…笑って欲しい…。そう望むくらいは…いいだろう?きっと…ナナリーもそう思っている…」
「お前…結構無茶ぶりする奴だったんだな…」
ゼロが苦笑しながらそう零す。
「そうか?当たり前の事だと思うぞ…。自分の大切な人間の事だと思えば…」
そんなセリフをさらりと口に出来る目の前の異父妹に対して、微笑ましいとか、嬉しいとか云う以前に…危なっかしさを感じてしまう。
「ルルーシュ…お前は警戒心がなさすぎだ…。少しは、自分のされた事に対して怒りを感じる事を覚えろ…。でないと、『キョウト六家』ではやっていけないぞ?」
それは…これまでのゼロの経験だ…。
正直、こんなルルーシュをあの中に放り込んでしまう事に色々不安を抱いてしまう。
あちらに行ってしまえば…ゼロもシュナイゼルも直接ルルーシュを守る事も出来ない。
「心配し過ぎだ…。それに、そんな事に怒りを抱いていたら…余計に敵を作る事になるんじゃないのか?それに…それで、『キョウト六家』から追い出されたって、私もスザクもなんとかやっていけるよ…。別に…そこまで肩肘を張る事はないじゃないか…」
ルルーシュの言葉に、少しだけ、心配そうにゼロが笑う。
正直、危なっかしいこの異父妹をあの中に放り込みたくないというのは正直な気持ちだ。
こんなに危なっかしい癖に云いだすと頑として引かない…。
「まぁ、本当に危なくなったら、俺もシュナイゼル異母兄さんも黙っていない事くらいはあっちも解っているからな…。それに、ランペルージの御当主のお気に入りだしな…お前は…」
「なんだよ…それ…」
「まぁ、好きにしろよ…。今、お前と話していて苦労させられそうな気がしてきたし、その覚悟もできた…。お前はお前のやり方で幸せになればいいさ…」
そう云って、ゼロはルルーシュの部屋から出て行った。
ルルーシュはそんなゼロの背中を何となくムッとした顔で見ていたが…。
扉を閉めて…ゼロはその場でふっと立ち止まり、苦笑した。
「『いもうと』じゃなければな…。ちゃんと…攫ってやれたのに…」
その呟きは誰にも聞かれる事はなかった。
そして、ゼロも二度とその事を口には出さなかった。
すぐに普段のゼロの表情に戻り…リビングにいるナナリー達の元へと戻って行った…。
END
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2011年05月08日
お久しぶりで御座居ます…
えっと…このブログにおいで下さっている方がいらっしゃるのかどうか、解らないのですが…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
お久しぶりで御座居ます。
和泉綾で御座居ます。
スパコミ…行きたかったのですが、様々な事情が重なって、今年のGWは殆どひきこもり状態でした。
まぁ、その事情を話し始めると長くなるので、割愛させて頂きますが…。
簡単に云うと、今回の震災で和泉の仕事の取引先などが部品調達が出来ずに4月の半ばあたりまで工場が動かなかった…などというところもありまして…。
ぶっちゃけると、予定外の収入減となり、本を出す事はおろか、交通費を出す事もままならない状態になりました。
まぁ、だいぶ取引先の方も落ち着きまして、飢え死にするという事態には陥らずに済みそうですが…。
こういう時にはホント、サラリーマンや公務員であった方が絶対に楽だな…と思いました。
スパコミ…行きたかった…。
次のイベント…いついけるのかなぁ…。
ターボは無理だし、6月のシティも…結構微妙だしなぁ…。
8月の関西は申し込み済みですが…。
あと、ダメもとで申し込んだ夏コミ…。
相性があまりいいとは言えないので夏コミはまぁ、無理だろうなぁ…。
後は、グッコミは悩み中…
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お久しぶりで御座居ます。
和泉綾で御座居ます。
スパコミ…行きたかったのですが、様々な事情が重なって、今年のGWは殆どひきこもり状態でした。
まぁ、その事情を話し始めると長くなるので、割愛させて頂きますが…。
簡単に云うと、今回の震災で和泉の仕事の取引先などが部品調達が出来ずに4月の半ばあたりまで工場が動かなかった…などというところもありまして…。
ぶっちゃけると、予定外の収入減となり、本を出す事はおろか、交通費を出す事もままならない状態になりました。
まぁ、だいぶ取引先の方も落ち着きまして、飢え死にするという事態には陥らずに済みそうですが…。
こういう時にはホント、サラリーマンや公務員であった方が絶対に楽だな…と思いました。
スパコミ…行きたかった…。
次のイベント…いついけるのかなぁ…。
ターボは無理だし、6月のシティも…結構微妙だしなぁ…。
8月の関西は申し込み済みですが…。
あと、ダメもとで申し込んだ夏コミ…。
相性があまりいいとは言えないので夏コミはまぁ、無理だろうなぁ…。
後は、グッコミは悩み中…
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2011年04月10日
皇子とレジスタンス 〜心の中身〜
倒れたルルーシュを抱いたままスザクがアヴァロンの医務室へと歩いて行く…。
本来、この艦の指揮官であり、ルルーシュの異母兄であり、ブリタニア帝国の宰相であるシュナイゼルに挨拶に行く事が、身分を重んじるブリタニアの習わしではあるが…。
ただ、今のこの状態でその様な事を云っていられないし、スザクの中の優先順位はそんな慣例よりも倒れたルルーシュの方が上だという事だ。
「スザク君…」
目の前に現れたのはロイドだった…。
「あ、ロイドさん…医務室…準備出来ていますか?多分、シュナイゼル殿下が付けて下さったSPの方から連絡が…」
「ああ、大丈夫だよぉぉぉ〜〜〜。医務室じゃなくて、ルルーシュ殿下に提供されるお部屋に連れて行くから…ついて来てねぇ〜〜〜〜」
そう云ってロイドは踵を返し、歩いて行く。
口調そのものはいつものようになにを考えているかよく解らない、ふざけている様にも聞こえるけれど、その足取りに関して云えば、口調をそのまま受け取る方がどうかしている足取りだ。
恐らく、その部屋は準備万端、整えられているだろう。
「後…シュナイゼル殿下への挨拶は別にいいってさ…。後で、殿下ご自身がルルーシュ殿下のお見舞いに居らっしゃるそうだからぁ〜〜〜」
半分くらいそんな事は頭から吹っ飛んでいたスザクではあったけれど…。
確かに今回の責任者であるルルーシュが倒れてしまったのであれば、その騎士であるスザクが報告しに行かなくてはならない訳なのだが…。
「あ…」
「報告に関してもその時に聞くらしいから…。一応、あのルルーシュ殿下に付けられていたSPの人達が色々報告するって事になっているけど…。だから、ルルーシュ殿下からの報告はただの儀式だよ…」
形だけとはいえ、倒れている状態の中でルルーシュはそんな事までしなくてはならない…と云う事に心が痛む。
仕方ないとは解っている。
それが最高責任者と云う立場の人間の義務だ。
それにしたって、こんな子供が自分の心を削り、自分の信念に逆らい、大人以上の成果を出さなくてはならない現状に…憤りを覚えずにはいられない。
やがて、ロイドがある部屋の前で立ち止まり、入口のパネルにパスワードを打ち込む。
どうやら、ルルーシュがブリタニア皇帝から次期皇帝に…と云う話しになったことで、シュナイゼルの軍の中でも嫌な動きがあることが推察される。
ロイドが部屋の中に入り、スザクもルルーシュを抱いた状態で入って行き、ベッドが目に入ってきたからすぐにそこへと歩き出し、ルルーシュを横たわらせた。
それを見てロイドがスザクにルルーシュの着替えを渡す。
「とりあえず、その窮屈な服を脱がせて…。これに着替えさせてね?それと、ここのタオルで身体をお拭きして…。点滴やら心電図やら色々くっつける事になるから…」
「解りました…」
スザクがその着替えを受け取ってルルーシュの衣服を脱がせ始める。
そして、その細い、白い身体が表に出て来ると…。
特に…身体に傷がついている訳でもないのに…本当にぼろぼろだと…スザクは思った。
全ての着替えを済ませると、すぐにルルーシュの胸に心電図の電極を付けられ、二の腕に血圧計が巻かれ、反対の腕には点滴が施される。
体温を測り、脈をとりながら、ロイドがスザクに声をかけ始めた。
「エリア11の部隊も来ているよ…。ルルーシュ殿下がある程度回復したらルルーシュ殿下はそちらの部隊の指揮官になる…」
「え?」
ロイドの言葉にスザクが驚いた声を出した。
「何を驚いているの…。当然でしょぉ?ルルーシュ殿下はラティス攻略の最高指揮官だ…。今回はシュナイゼル殿下の方がオブザーバーなんだから…」
頭ではそんな事は解っているのだけれど…。
スザクの頭の中では理解しなければならないという部分と、こんな状態で…と云う感情が渦巻いていた。
「それに…これが成功しなかった場合…ルルーシュ殿下の立場は地の底に堕ちる事になるよ…。いくらシュナイゼル殿下が庇いだてしたとしてもね…。そうなった場合、ルルーシュ殿下もナナリー皇女殿下も…この先、命を狙われるだけならいいけれど…政治の道具として使い倒される羽目にもなるんだ…。そうなった時…ルルーシュ殿下の配下としている僕達は…」
ロイドの言葉にスザクがぐっと唇を噛んだ。
結局…この目の前の人間も…そう云ったルルーシュの立場の身に固執していたのかと…怒りを覚える。
「ロイドさん…」
我慢できなくなったところで…スザクが低い声でその人物の名前を呼んだ。
ロイドは特に驚く様子もなくスザクを見た。
「何かな?スザク君…」
「俺は…ルルーシュ自身に仕えているのであって…否…仕えていると云うのも違う…。俺は…ルルーシュがどんな立場だろうと、どんな窮地に立たされていようと、ルルーシュを守る事をやめるつもりはない…」
低い声で…ゆっくりとその言葉を紡いだ。
これは…あの時、ルルーシュの騎士と正式に決まった時から決めた事だ…。
別にルルーシュが皇子でなくたって、ルルーシュと共にいれば、日本は決して悪い方向に進む事はないと…そう考える事が出来たからだ。
あの、まだ敵同士として対峙していたあの無人島でルルーシュと交わした会話…。
あの中で自分の中にあったルルーシュのイメージがすっかり変わってしまった。
その事に最初は驚愕した。
でも、ルルーシュの騎士として共にいるうちに…あの短い時間の内にルルーシュへのイメージが変わった自分にはちゃんと人に対しての観察眼があると自負できるようになった。
あの時、あんな短い時間でルルーシュに対してのイメージが変わった事…何も間違っている事でもなく、思い違いでもなかったのだと…。
そう確信できるからこその…言葉…。
そして、あの時、出会った時の立場がルルーシュはブリタニアの皇子であり、スザクはレジスタンスのリーダーだった…ただそれだけの事だった。
もし、利害が一致していれば…望むものが同じであれば…
―――俺は…きっとルルーシュを守る立場に立っていた…
そう思うからこそ…今のロイドの言葉に対して憤りを覚えるのだ。
そんなスザクの言葉に…ロイドが安心したように笑った。
「良かったよ…君がそう云う覚悟を持っていてくれて…。今回、まだ終わっちゃいないけど、ラティス王をその場で取り逃がしてしまった事を責める人間が出てくるよ…。必ずね…」
ロイドの言葉にスザクははっとした。
確かに…あの時は驚いてしまったが、可能性を考えれば至極当然の事だ。
王と云う立場は…国が安定していればそれほどそんな事を心配する必要はないが、こうした戦争状態、国内の政争状態が不安定な場合、退路を作っておく必要がある。
その隠し通路さえも他の誰かに口外するようになったのでは、その国のその時にある王室は最早末期状態の更に最後の最後と云う事だ。
そんな隠し扉がある事くらい…計算の上で動かなければならなかった。
―――あの時…偃月の陣の形を取っていた時点で何かあると踏まなければならなかった…。
今更な事であるとは解っていても、こうした形で考えてしまう。
後の祭りだと解っているが…。
「確かに…。俺自身、もっと…」
「何を云っているの…。君もルルーシュ殿下も自分の歳を考えなよ…。大の大人だってそんな可能性を、その場で考えられる人はあんまりいない…。それに、まだ途中経過なんだから…ルルーシュ殿下がそう云った訴追を受けた時には君がルルーシュ殿下を守り、窘め周囲を黙らせる事が出来る力が必要だって云ってるの…」
「……」
ロイドは元々シュナイゼルの配下にいて…今はシュナイゼルの命で主君がシュナイゼルからルルーシュに変わっている。
と云うか、ルルーシュの命令が第一となっている。
だからこそ、この先、ルルーシュがどちらの転ぶかによって彼の運命も変わって来る。
ロイドだけではない。
特派の人間もライもジェレミア達も…。
「スザク君…別に僕達はルルーシュ殿下がどのようなお立場になろうと仕えて行く心はあるよ…。ただ、ルルーシュ殿下の立場が変わって僕達の状況が変わった時、一番気にするのは…誰なのか解っているんだろう?スザク君なら…」
ロイドが、一体何からルルーシュを守らなくてはいけないのか…示唆している事が…解る。
そして、ロイド自身がルルーシュから離れて行く事はないと…そんな風に思えた。
スザクはロイドがシュナイゼルから受けている命令を知らないからこそ…そんな風に思えるのだろうが…。
「解ります…。ルルーシュが守りたいのは…ナナリー殿下…。ナナリー殿下を守るためには…」
「うん…そうだね…。多分、ルルーシュ殿下もそれを解っている。だからこそ、こんな風に無理をなさられるんだ…。だから、君はルルーシュ殿下が要らぬところで力を削がれないようにしなければいけないよ?」
ある意味…巧みと云うべきか…。
普段、ロイドはこんな形で人と人について話す事はあまりない。
だからこそ、こうした時の言葉は絶大だとも云えるのかもしれない。
「解って…います…」
そう、言葉にしながら…ふっと、スザクは眠っているルルーシュを見た…。
確かにルルーシュには守りたいものがある。
だからこそ、自分の心を押し殺してまで戦ってきた事も知っている。
―――でも…これ以上は…
そんな事を考えている時…部屋の扉が開いた。
「ルルーシュは…ルルーシュはどんな様子なんだい?」
そう云いながら入ってきたのは…ルルーシュがどんな立場に立とうと、ルルーシュを守ろうとする人間の中で最も力を持つ人物だった。
「シュナイゼル殿下…そんなに慌てて入って来なくても大丈夫です。ルルーシュ殿下の年齢も考えて差し上げて下さい…。本来なら熟練の将が出向いて交渉に当たらなければならないところです…」
そう、ロイドがシュナイゼルを窘めた。
静かに眠るルルーシュを見ながら、シュナイゼルも一度、大きく呼吸をして部屋の中に入ってきた。
「枢木君…報告はいいよ…。そんな儀式的な建前はいらない…。一通り聞いた…。確かに…君達の甘さだと云わざるを得ないね…」
シュナイゼルがスザクに対してある意味、責任を問うている様にも聞こえる様な言葉を投げかける。
しかし、そこで怯む訳にはいかない。
先ほどまでその事をロイドと話していたのだから…。
「今回の事…確かに甘さと云われればその通りでは御座居ますが…。しかし、あの時点で王を捕らえても恐らくは足りないピースがいくつか御座居ます。どの道、ラティス公国の武器を生産している工場を全て破壊する決断をしなければなりません…」
スザクは一応礼を払う形で頭を下げながらシュナイゼルに進言する。
そのスザクの言葉に…シュナイゼルは首をかしげる。
「シュナイゼル殿下は…ご存じだったかどうかは解りませんので、一応、御存じなかったという前提でお話しさせて頂きます…」
スザクが毅然とシュナイゼルに対してその見解を話し始めた。
「ラティス王はルルーシュ殿下の前でマリアンヌ皇妃暗殺に関して口に出しました。それがあの状況下の中で切羽詰まってのものであるという事は解りました。故に、そのラティス公国がマリアンヌ皇妃暗殺に関して関わりがあると、判断した場合…ラティス公国の武器生産は我がブリタニアにも大きな脅威です…」
スザク自身、こうした形での腹の探り合いの様な議論の中でシュナイゼルにこて先技が通用するとは思っていない。
だとすれば、単刀直入に…事実を踏まえた上での見解を話す方が得策に決まっている。
「マリアンヌ皇妃はルルーシュ殿下のお母君…。ルルーシュ殿下がこのように幼いながら戦場に立たなくてはならなくなったのはあの、マリアンヌ皇妃暗殺事件があったからだと…自分は浅慮致します…。それ故に…あの時のルルーシュ殿下の心中は普段の戦場に立たれている精神を保つ事は出来なかった…。それでも、シュナイゼル殿下のSPの方々が一人も命を落とす事がなかった事は…ルルーシュ殿下の英断があればこそです。確かに…あの時、自分以外の騎士…ライ准尉がいたならば…結果は違っていたかもしれませんが…。そんな過程の話しをしていても仕方ありません。今はまず、責任追及の前にこの先どうするかをどう判断するかが重要かと思われますが…。我々にとって、過程よりも結果がすべてなのですから…」
スザクの言葉にシュナイゼルが不機嫌な顔を見せた。
確かに今は最終目的の為の過程に過ぎない…。
元々、ラティスとは一戦を交える気でいた訳だから…スザクの云っている事は尤もであると…納得するであろう…。
恐らく、シュナイゼルとルルーシュ以外には…
「しかし…」
シュナイゼルが口を開くとスザクも身構える。
ここでルルーシュの援護射撃なしに…なんとしてもルルーシュを守らなくてはならない。
「今回、王を捕らえていたのならその一戦を交える…と云う事を回避できたのではないかい?」
確かに…それは一理ある様には見えるが…
「あの状態の中、王の様子を見ている限り、あの王を連れ去ったところで意味を成さないでしょう。確かに王の名を持っているが…それはお飾りに過ぎない状態となった訳ですから…」
SPからシュナイゼルに報告された内容でも…シュナイゼルは今、スザクの云った言葉に同意できる部分を感じた。
―――ルルーシュの近くにいて…多少なりと観察眼と洞察力、考察力がついたのかな…
シュナイゼルは表情を変えずにその少年を見た。
心の中に…多少の悔しさと、嫉妬を抱きながら…。
「ふっ…。君は本当にルルーシュの近くにいるのだね…。こうした窮地に立った時…ルルーシュが云いそうな事を云って来る…」
「どう云う…意味でしょうか?」
シュナイゼルの言葉に怪訝な様子を見せてスザクが問う。
「否、なんでもないよ…。どの道戦闘は避けられない事は解っていたのだから…。さっさとルルーシュの回復を最優先に…。後、1時間くらいで中華連邦で合流したエリア11、中華連邦の連合軍が到着する…」
そう云いながらシュナイゼルは廊下に出て行った。
ロイドの顔を見ると『まぁまぁだったんじゃないの?』と、その目が訴えていた。
そのロイドの顔を見て、スザクの肩から力が抜けた…。
廊下に出たシュナイゼルが…目論見通りだと…ほくそ笑んでいる事を知らずに…。
ロイドだけは廊下に出たシュナイゼルがどんな事を考えていたのか…解っていた。
正直、色々と複雑な思いはあるのだが…。
―――スザク君…さっき、君が云っていた…ルルーシュ殿下を守る…と云うのが…どう云う事なのか…これから先…君はきっと思い知る…。君が守りたいのはルルーシュ殿下の御心も含めて…の事だからね…。それがどんなに困難な事なのか…君は…まだ解っていないよ…。
正直、ロイドにとってはルルーシュが皇帝に立つ方が色々とメリットがある。
ここまでスザクが単純に言葉を信じるところに不安を覚えたのは事実だが…。
それでも、この先、自分の立場云々は別にして…一人の大人として…この二人の行く末を見守りたいと思っている事も…事実であった。
ロイドはシュナイゼルの命を受けている。
そして、ルルーシュがどう思っていようと…ルルーシュを皇帝に…と云う方向で動いている。
今のところ、ルルーシュがナナリーを守りたいと思う限り…ルルーシュ自身は皇帝の座に就く以外方法はない…。
ただ一つ…方法があるとしたら…
―――ナナリー殿下が…どうお考えになって、どう動かれるか…にかかっているのかな…きっと…。
To Be Continued
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本来、この艦の指揮官であり、ルルーシュの異母兄であり、ブリタニア帝国の宰相であるシュナイゼルに挨拶に行く事が、身分を重んじるブリタニアの習わしではあるが…。
ただ、今のこの状態でその様な事を云っていられないし、スザクの中の優先順位はそんな慣例よりも倒れたルルーシュの方が上だという事だ。
「スザク君…」
目の前に現れたのはロイドだった…。
「あ、ロイドさん…医務室…準備出来ていますか?多分、シュナイゼル殿下が付けて下さったSPの方から連絡が…」
「ああ、大丈夫だよぉぉぉ〜〜〜。医務室じゃなくて、ルルーシュ殿下に提供されるお部屋に連れて行くから…ついて来てねぇ〜〜〜〜」
そう云ってロイドは踵を返し、歩いて行く。
口調そのものはいつものようになにを考えているかよく解らない、ふざけている様にも聞こえるけれど、その足取りに関して云えば、口調をそのまま受け取る方がどうかしている足取りだ。
恐らく、その部屋は準備万端、整えられているだろう。
「後…シュナイゼル殿下への挨拶は別にいいってさ…。後で、殿下ご自身がルルーシュ殿下のお見舞いに居らっしゃるそうだからぁ〜〜〜」
半分くらいそんな事は頭から吹っ飛んでいたスザクではあったけれど…。
確かに今回の責任者であるルルーシュが倒れてしまったのであれば、その騎士であるスザクが報告しに行かなくてはならない訳なのだが…。
「あ…」
「報告に関してもその時に聞くらしいから…。一応、あのルルーシュ殿下に付けられていたSPの人達が色々報告するって事になっているけど…。だから、ルルーシュ殿下からの報告はただの儀式だよ…」
形だけとはいえ、倒れている状態の中でルルーシュはそんな事までしなくてはならない…と云う事に心が痛む。
仕方ないとは解っている。
それが最高責任者と云う立場の人間の義務だ。
それにしたって、こんな子供が自分の心を削り、自分の信念に逆らい、大人以上の成果を出さなくてはならない現状に…憤りを覚えずにはいられない。
やがて、ロイドがある部屋の前で立ち止まり、入口のパネルにパスワードを打ち込む。
どうやら、ルルーシュがブリタニア皇帝から次期皇帝に…と云う話しになったことで、シュナイゼルの軍の中でも嫌な動きがあることが推察される。
ロイドが部屋の中に入り、スザクもルルーシュを抱いた状態で入って行き、ベッドが目に入ってきたからすぐにそこへと歩き出し、ルルーシュを横たわらせた。
それを見てロイドがスザクにルルーシュの着替えを渡す。
「とりあえず、その窮屈な服を脱がせて…。これに着替えさせてね?それと、ここのタオルで身体をお拭きして…。点滴やら心電図やら色々くっつける事になるから…」
「解りました…」
スザクがその着替えを受け取ってルルーシュの衣服を脱がせ始める。
そして、その細い、白い身体が表に出て来ると…。
特に…身体に傷がついている訳でもないのに…本当にぼろぼろだと…スザクは思った。
全ての着替えを済ませると、すぐにルルーシュの胸に心電図の電極を付けられ、二の腕に血圧計が巻かれ、反対の腕には点滴が施される。
体温を測り、脈をとりながら、ロイドがスザクに声をかけ始めた。
「エリア11の部隊も来ているよ…。ルルーシュ殿下がある程度回復したらルルーシュ殿下はそちらの部隊の指揮官になる…」
「え?」
ロイドの言葉にスザクが驚いた声を出した。
「何を驚いているの…。当然でしょぉ?ルルーシュ殿下はラティス攻略の最高指揮官だ…。今回はシュナイゼル殿下の方がオブザーバーなんだから…」
頭ではそんな事は解っているのだけれど…。
スザクの頭の中では理解しなければならないという部分と、こんな状態で…と云う感情が渦巻いていた。
「それに…これが成功しなかった場合…ルルーシュ殿下の立場は地の底に堕ちる事になるよ…。いくらシュナイゼル殿下が庇いだてしたとしてもね…。そうなった場合、ルルーシュ殿下もナナリー皇女殿下も…この先、命を狙われるだけならいいけれど…政治の道具として使い倒される羽目にもなるんだ…。そうなった時…ルルーシュ殿下の配下としている僕達は…」
ロイドの言葉にスザクがぐっと唇を噛んだ。
結局…この目の前の人間も…そう云ったルルーシュの立場の身に固執していたのかと…怒りを覚える。
「ロイドさん…」
我慢できなくなったところで…スザクが低い声でその人物の名前を呼んだ。
ロイドは特に驚く様子もなくスザクを見た。
「何かな?スザク君…」
「俺は…ルルーシュ自身に仕えているのであって…否…仕えていると云うのも違う…。俺は…ルルーシュがどんな立場だろうと、どんな窮地に立たされていようと、ルルーシュを守る事をやめるつもりはない…」
低い声で…ゆっくりとその言葉を紡いだ。
これは…あの時、ルルーシュの騎士と正式に決まった時から決めた事だ…。
別にルルーシュが皇子でなくたって、ルルーシュと共にいれば、日本は決して悪い方向に進む事はないと…そう考える事が出来たからだ。
あの、まだ敵同士として対峙していたあの無人島でルルーシュと交わした会話…。
あの中で自分の中にあったルルーシュのイメージがすっかり変わってしまった。
その事に最初は驚愕した。
でも、ルルーシュの騎士として共にいるうちに…あの短い時間の内にルルーシュへのイメージが変わった自分にはちゃんと人に対しての観察眼があると自負できるようになった。
あの時、あんな短い時間でルルーシュに対してのイメージが変わった事…何も間違っている事でもなく、思い違いでもなかったのだと…。
そう確信できるからこその…言葉…。
そして、あの時、出会った時の立場がルルーシュはブリタニアの皇子であり、スザクはレジスタンスのリーダーだった…ただそれだけの事だった。
もし、利害が一致していれば…望むものが同じであれば…
―――俺は…きっとルルーシュを守る立場に立っていた…
そう思うからこそ…今のロイドの言葉に対して憤りを覚えるのだ。
そんなスザクの言葉に…ロイドが安心したように笑った。
「良かったよ…君がそう云う覚悟を持っていてくれて…。今回、まだ終わっちゃいないけど、ラティス王をその場で取り逃がしてしまった事を責める人間が出てくるよ…。必ずね…」
ロイドの言葉にスザクははっとした。
確かに…あの時は驚いてしまったが、可能性を考えれば至極当然の事だ。
王と云う立場は…国が安定していればそれほどそんな事を心配する必要はないが、こうした戦争状態、国内の政争状態が不安定な場合、退路を作っておく必要がある。
その隠し通路さえも他の誰かに口外するようになったのでは、その国のその時にある王室は最早末期状態の更に最後の最後と云う事だ。
そんな隠し扉がある事くらい…計算の上で動かなければならなかった。
―――あの時…偃月の陣の形を取っていた時点で何かあると踏まなければならなかった…。
今更な事であるとは解っていても、こうした形で考えてしまう。
後の祭りだと解っているが…。
「確かに…。俺自身、もっと…」
「何を云っているの…。君もルルーシュ殿下も自分の歳を考えなよ…。大の大人だってそんな可能性を、その場で考えられる人はあんまりいない…。それに、まだ途中経過なんだから…ルルーシュ殿下がそう云った訴追を受けた時には君がルルーシュ殿下を守り、窘め周囲を黙らせる事が出来る力が必要だって云ってるの…」
「……」
ロイドは元々シュナイゼルの配下にいて…今はシュナイゼルの命で主君がシュナイゼルからルルーシュに変わっている。
と云うか、ルルーシュの命令が第一となっている。
だからこそ、この先、ルルーシュがどちらの転ぶかによって彼の運命も変わって来る。
ロイドだけではない。
特派の人間もライもジェレミア達も…。
「スザク君…別に僕達はルルーシュ殿下がどのようなお立場になろうと仕えて行く心はあるよ…。ただ、ルルーシュ殿下の立場が変わって僕達の状況が変わった時、一番気にするのは…誰なのか解っているんだろう?スザク君なら…」
ロイドが、一体何からルルーシュを守らなくてはいけないのか…示唆している事が…解る。
そして、ロイド自身がルルーシュから離れて行く事はないと…そんな風に思えた。
スザクはロイドがシュナイゼルから受けている命令を知らないからこそ…そんな風に思えるのだろうが…。
「解ります…。ルルーシュが守りたいのは…ナナリー殿下…。ナナリー殿下を守るためには…」
「うん…そうだね…。多分、ルルーシュ殿下もそれを解っている。だからこそ、こんな風に無理をなさられるんだ…。だから、君はルルーシュ殿下が要らぬところで力を削がれないようにしなければいけないよ?」
ある意味…巧みと云うべきか…。
普段、ロイドはこんな形で人と人について話す事はあまりない。
だからこそ、こうした時の言葉は絶大だとも云えるのかもしれない。
「解って…います…」
そう、言葉にしながら…ふっと、スザクは眠っているルルーシュを見た…。
確かにルルーシュには守りたいものがある。
だからこそ、自分の心を押し殺してまで戦ってきた事も知っている。
―――でも…これ以上は…
そんな事を考えている時…部屋の扉が開いた。
「ルルーシュは…ルルーシュはどんな様子なんだい?」
そう云いながら入ってきたのは…ルルーシュがどんな立場に立とうと、ルルーシュを守ろうとする人間の中で最も力を持つ人物だった。
「シュナイゼル殿下…そんなに慌てて入って来なくても大丈夫です。ルルーシュ殿下の年齢も考えて差し上げて下さい…。本来なら熟練の将が出向いて交渉に当たらなければならないところです…」
そう、ロイドがシュナイゼルを窘めた。
静かに眠るルルーシュを見ながら、シュナイゼルも一度、大きく呼吸をして部屋の中に入ってきた。
「枢木君…報告はいいよ…。そんな儀式的な建前はいらない…。一通り聞いた…。確かに…君達の甘さだと云わざるを得ないね…」
シュナイゼルがスザクに対してある意味、責任を問うている様にも聞こえる様な言葉を投げかける。
しかし、そこで怯む訳にはいかない。
先ほどまでその事をロイドと話していたのだから…。
「今回の事…確かに甘さと云われればその通りでは御座居ますが…。しかし、あの時点で王を捕らえても恐らくは足りないピースがいくつか御座居ます。どの道、ラティス公国の武器を生産している工場を全て破壊する決断をしなければなりません…」
スザクは一応礼を払う形で頭を下げながらシュナイゼルに進言する。
そのスザクの言葉に…シュナイゼルは首をかしげる。
「シュナイゼル殿下は…ご存じだったかどうかは解りませんので、一応、御存じなかったという前提でお話しさせて頂きます…」
スザクが毅然とシュナイゼルに対してその見解を話し始めた。
「ラティス王はルルーシュ殿下の前でマリアンヌ皇妃暗殺に関して口に出しました。それがあの状況下の中で切羽詰まってのものであるという事は解りました。故に、そのラティス公国がマリアンヌ皇妃暗殺に関して関わりがあると、判断した場合…ラティス公国の武器生産は我がブリタニアにも大きな脅威です…」
スザク自身、こうした形での腹の探り合いの様な議論の中でシュナイゼルにこて先技が通用するとは思っていない。
だとすれば、単刀直入に…事実を踏まえた上での見解を話す方が得策に決まっている。
「マリアンヌ皇妃はルルーシュ殿下のお母君…。ルルーシュ殿下がこのように幼いながら戦場に立たなくてはならなくなったのはあの、マリアンヌ皇妃暗殺事件があったからだと…自分は浅慮致します…。それ故に…あの時のルルーシュ殿下の心中は普段の戦場に立たれている精神を保つ事は出来なかった…。それでも、シュナイゼル殿下のSPの方々が一人も命を落とす事がなかった事は…ルルーシュ殿下の英断があればこそです。確かに…あの時、自分以外の騎士…ライ准尉がいたならば…結果は違っていたかもしれませんが…。そんな過程の話しをしていても仕方ありません。今はまず、責任追及の前にこの先どうするかをどう判断するかが重要かと思われますが…。我々にとって、過程よりも結果がすべてなのですから…」
スザクの言葉にシュナイゼルが不機嫌な顔を見せた。
確かに今は最終目的の為の過程に過ぎない…。
元々、ラティスとは一戦を交える気でいた訳だから…スザクの云っている事は尤もであると…納得するであろう…。
恐らく、シュナイゼルとルルーシュ以外には…
「しかし…」
シュナイゼルが口を開くとスザクも身構える。
ここでルルーシュの援護射撃なしに…なんとしてもルルーシュを守らなくてはならない。
「今回、王を捕らえていたのならその一戦を交える…と云う事を回避できたのではないかい?」
確かに…それは一理ある様には見えるが…
「あの状態の中、王の様子を見ている限り、あの王を連れ去ったところで意味を成さないでしょう。確かに王の名を持っているが…それはお飾りに過ぎない状態となった訳ですから…」
SPからシュナイゼルに報告された内容でも…シュナイゼルは今、スザクの云った言葉に同意できる部分を感じた。
―――ルルーシュの近くにいて…多少なりと観察眼と洞察力、考察力がついたのかな…
シュナイゼルは表情を変えずにその少年を見た。
心の中に…多少の悔しさと、嫉妬を抱きながら…。
「ふっ…。君は本当にルルーシュの近くにいるのだね…。こうした窮地に立った時…ルルーシュが云いそうな事を云って来る…」
「どう云う…意味でしょうか?」
シュナイゼルの言葉に怪訝な様子を見せてスザクが問う。
「否、なんでもないよ…。どの道戦闘は避けられない事は解っていたのだから…。さっさとルルーシュの回復を最優先に…。後、1時間くらいで中華連邦で合流したエリア11、中華連邦の連合軍が到着する…」
そう云いながらシュナイゼルは廊下に出て行った。
ロイドの顔を見ると『まぁまぁだったんじゃないの?』と、その目が訴えていた。
そのロイドの顔を見て、スザクの肩から力が抜けた…。
廊下に出たシュナイゼルが…目論見通りだと…ほくそ笑んでいる事を知らずに…。
ロイドだけは廊下に出たシュナイゼルがどんな事を考えていたのか…解っていた。
正直、色々と複雑な思いはあるのだが…。
―――スザク君…さっき、君が云っていた…ルルーシュ殿下を守る…と云うのが…どう云う事なのか…これから先…君はきっと思い知る…。君が守りたいのはルルーシュ殿下の御心も含めて…の事だからね…。それがどんなに困難な事なのか…君は…まだ解っていないよ…。
正直、ロイドにとってはルルーシュが皇帝に立つ方が色々とメリットがある。
ここまでスザクが単純に言葉を信じるところに不安を覚えたのは事実だが…。
それでも、この先、自分の立場云々は別にして…一人の大人として…この二人の行く末を見守りたいと思っている事も…事実であった。
ロイドはシュナイゼルの命を受けている。
そして、ルルーシュがどう思っていようと…ルルーシュを皇帝に…と云う方向で動いている。
今のところ、ルルーシュがナナリーを守りたいと思う限り…ルルーシュ自身は皇帝の座に就く以外方法はない…。
ただ一つ…方法があるとしたら…
―――ナナリー殿下が…どうお考えになって、どう動かれるか…にかかっているのかな…きっと…。
To Be Continued
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